控除・ライフイベントの相談前に整理すべき論点|医療費・住宅・扶養・退職・災害の確定申告

病気や出産で医療費が増えた。住宅を購入した。寄附をした。結婚、離婚、出産、退職、転職、親族の扶養、災害といった出来事があった。

こうした年は、普段なら年末調整だけで完結する給与所得者であっても、確定申告が必要になる、あるいは確定申告をした方が有利になることがあります。

ただし、控除証明書や領収書が手元にそろっているだけでは、控除を適用できるかどうかまでは判断できません。

たとえば医療費控除では、「誰の医療費か」だけでは足りません。実際に支払ったのは誰か、支払った親族と生計を一にしているか、保険金等で補填されていないか、といった点まで確認していきます。扶養控除でも、親族の給与収入だけを見て終わりにはできず、年金、事業、副業、配当などを含めた合計所得金額を確かめる必要があります。住宅ローン控除に至っては、住宅を取得したという事実だけでなく、入居日、住宅の性能、床面積、本人の所得、借入れと持分の関係、他の住宅税制との関係が、いずれも論点になってきます。

また、医療費控除のために提出する確定申告書は、「医療費控除だけを申請する書類」ではありません。その年の給与、副業、不動産、株式、退職金その他の所得を含めて、年間の所得税を改めて計算し直す手続です。

ですから、相談前の整理では、控除額を先に計算しようとするより、次の順番で押さえておくことの方が大切です。

  1. 何が起きた年なのか
  2. 誰が支払い、誰が控除の対象になるのか
  3. その年の所得をどこまで把握しているか
  4. 年末調整で何が処理済みか
  5. すでに確定申告をしているか
  6. 確定申告による住民税等への影響も確認したか

本稿では、医療費、住宅ローン、寄附、保険料、扶養、退職・転職、災害、控除漏れについて、税理士へ相談する前に整理しておきたい事実と資料を、順にお話しします。

目次

控除相談では「証明書」より先に全体像を確認する

控除の相談で最初にご用意いただきたいのは、証明書を並べたファイルではありません。まず必要なのは、その年の出来事を示す年表と、家族・所得・支払関係を示す一覧表です。

相談前に作成したい年表

確認項目記載する内容税務判断との関係
対象年分何年分の申告か適用される制度、所得要件、申告期限が変わる
医療費診療日、支払日、給付金受領日支払年と補填金の対応を確認する
住宅契約日、取得日、入居日、借入日住宅ローン控除の適用年と住宅区分に関係する
寄附寄附日、寄附先、ワンストップ申請日寄附金控除と住民税の手続に関係する
家族関係結婚、離婚、出生、死亡、別居、海外転居配偶者・扶養親族等の判定に関係する
就労入社日、退職日、転職日、休職期間年末調整の有無、給与所得の集計に関係する
退職金支給日、支払者、申告書提出の有無退職所得の申告要否に関係する
災害発生日、被害確認日、修繕・撤去日雑損控除等の対象年に関係する
過去の申告当初申告日、訂正日、税務署からの連絡日還付申告、更正の請求、修正申告を切り分ける

「年末に住宅へ入居した」「退職後に再就職した」「12月に離婚した」「医療費は年内に発生したが支払は翌年だった」。こうした日付のわずかな違いによって、結論が変わることがあります。

家族・所得・支払関係表

家族ごとに、次の事項を一行ずつ整理していきます。

氏名続柄年齢居住地主な収入年間所得の見込み誰が生活費を負担したか誰が医療費・保険料等を払ったか他の人が扶養申告していないか

控除の多くは、単に「家族であること」ではなく、所得、生計、実際の支払者、他の納税者との重複といった前提の上に成り立っています。

とりわけ、夫婦や親子の口座が混在している場合は、名義だけを見ても支払者を判断できません。口座振替、クレジットカード、家族間送金などの実態まで確認できるようにしておくと、その後の判断がスムーズです。

相談前にそろえる共通資料

控除の種類にかかわらず、まずは次の資料を集めていきます。

資料区分主な資料
所得資料勤務先ごとの源泉徴収票、年金の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票、報酬の支払調書、証券資料、副業・不動産等の収支資料
年末調整資料扶養控除等申告書、基礎控除・配偶者控除等申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除申告書、年末調整結果
過年度資料過去の確定申告書、収支内訳書・青色申告決算書、更正の請求書、修正申告書
家族関係資料住民票、戸籍関係資料、親族の源泉徴収票・年金資料、国外親族関係書類、送金関係書類
支払資料領収書、振込記録、預金通帳、カード明細、電子決済履歴
控除証明医療費通知、保険料控除証明書、住宅ローン残高証明書、寄附金受領証明書、災害関係証明書
住民税関係住民税決定通知書、ふるさと納税ワンストップ特例の申請控え
その他税務署・自治体・勤務先から届いた通知、マイナポータルから取得したデータ

年末調整の電子化により、生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料、地震保険料、住宅ローン、扶養・配偶者等に関する資料を、電子データで扱えるようになっています。もっとも、発行元から取得した電子データと、紙を単に撮影しただけの画像とでは、手続上の扱いが異なることがあります。相談の際にはデータの取得元まで分かるようにしておくと、確認が早く進みます。

1.医療費控除の相談前に整理すべきこと

医療費控除については、「家族の医療費をまとめればよい」と考えられがちです。しかし実際には、家族全員分を自由に選んで申告できるわけではありません。

判断の中心になるのは、誰が、誰のために、その年中に医療費を支払ったかという点です。

誰が実際に支払ったのか

医療費控除の対象となるのは、納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費です。

そこで、相談前には次の事実を整理しておきます。

  • 病院や薬局の領収書上の患者名
  • 現金を出した人
  • 振込口座の名義人
  • クレジットカードの名義人
  • カード利用代金を実質的に負担した人
  • 家族間で精算したか
  • 別居親族に生活費や療養費を継続的に送金していたか

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を意味するものではありません。勤務、修学、療養などの事情で別居していても、生活費、学資金、療養費などを継続的に送金しているといった実態があれば、生計を一にすると判断されることがあります。
出典:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
出典:国税庁|同居していない母親の医療費を子供が負担した場合

診療日ではなく、実際の支払日を確認する

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費を基礎とします。

12月に治療を受けていても、支払が翌年であれば、原則として翌年分の医療費です。逆に、前年の治療費をその年に支払った場合は、その支払年の対象になります。

分割払いやクレジットカード払いがある場合は、契約内容と支払時点を確認する必要があります。領収書だけでなく、カード利用明細やローン契約書も併せてご準備ください。

保険金・給付金・助成金を対応させる

入院給付金、高額療養費、出産育児一時金、医療費助成などがある場合は、その給付がどの医療費を補填するものなのかを対応させていきます。

医療費を支払った人と給付金の受取人が異なっていても、その給付が当該医療費を補填する目的で支払われたものであれば、医療費控除の計算上は差し引く必要があります。

相談前には、次の資料をご用意ください。

  • 保険会社の給付金支払通知書
  • 高額療養費の決定通知
  • 出産育児一時金の支給資料
  • 自治体の助成金通知
  • 勤務先や互助会からの給付通知
  • 未確定の給付金について、請求内容と見込額が分かる資料

出典:国税庁|医療費の支払者と保険金等の受領者が異なる場合

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制を分ける

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は、選択適用です。同じ年に両方を重ねて適用することはできません。

相談前には、医療費と対象医薬品購入費を分けて集計し、どちらが有利かを比較できる状態にしておきます。セルフメディケーション税制については、一定の健康診査、予防接種などを行った事実と、対象医薬品の購入資料も必要になります。

一度選択して申告した後は、修正申告や更正の請求によって、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の選択を変更することはできません。だからこそ、申告前の比較が重要になります。
出典:国税庁|医療費控除を受ける方へ

なお、令和8年度税制改正では、セルフメディケーション税制について、スイッチOTC医薬品に係る部分の適用期限の撤廃や、対象医薬品の見直しが示されています。対象範囲の見直しは令和9年分以後の所得税から適用されるため、購入した年分に対応する対象品目を確認しておく必要があります。
出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱

医療費控除の資料チェック

  • 医療費控除の明細書
  • 医療費通知
  • 病院、歯科医院、薬局等の領収書
  • 通院交通費の記録
  • 患者名・支払者・支払日が分かる一覧
  • 保険金、給付金、助成金等の資料
  • セルフメディケーション対象医薬品のレシート
  • 健康診査、予防接種等の資料
  • 家族間送金がある場合の通帳・振込記録

医療費控除の明細書は確定申告書に添付し、領収書は原則としてご自宅で5年間保存します。
出典:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

2.住宅ローン控除の相談前に整理すべきこと

住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高証明書さえあれば自動的に適用される、という制度ではありません。

次の事実を、一体のものとして確認していきます。

  • 売買契約日または請負契約日
  • 住宅の取得日
  • 実際の入居日
  • 新築、既存住宅、買取再販住宅、増改築等の区分
  • 床面積
  • 住宅の省エネ性能
  • 本人の合計所得金額
  • 住宅の取得価額
  • 住宅ローンの債務者
  • 共有持分と借入負担割合
  • 自宅部分と店舗・事務所・賃貸部分の割合
  • 親族からの取得ではないか
  • 住宅取得資金の贈与を受けていないか
  • 以前の自宅を売却し、譲渡特例を利用していないか

とりわけ夫婦共有の住宅では、登記持分、取得資金の負担、住宅ローンの債務割合が一致しているかを確認します。負担関係に不自然な差がある場合には、住宅ローン控除だけでなく、贈与税の問題が生じる可能性もあります。

初年度と2年目以後を分ける

住宅ローン控除を初めて受ける年は、住宅の区分に応じた資料を添付して確定申告をする必要があります。給与所得者については、2年目以後は一定の手続により、年末調整で適用を受けられます。

「勤務先へ残高証明書を出したので処理済みだと思っていたが、初年度の確定申告をしていなかった」という事例も見受けられます。初年度かどうかは、必ず確認しておきましょう。
出典:国税庁|住宅ローン控除を受ける方へ
出典:国税庁|マイホームを持ったとき

令和8年以後に入居する住宅は改正内容を確認する

令和8年度税制改正では、住宅ローン控除の適用期限が令和12年12月31日まで延長されました。一方で、借入限度額、控除期間、床面積要件などは、入居年、住宅の性能、新築・既存の別、子育て世帯等に該当するかどうかによって変わります。

したがって、過年度のパンフレットや、住宅会社から受けた古い説明だけで判断するのは避けるべきです。実際の入居年に対応する制度を、その都度確認する必要があります。
出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱

住宅ローン控除の相談資料

  • 売買契約書
  • 建築請負契約書
  • 変更契約書、追加工事契約書
  • 登記事項証明書
  • 住宅ローン年末残高証明書
  • 金銭消費貸借契約書
  • 住宅性能に関する証明書
  • 補助金、給付金の資料
  • 住宅取得資金贈与の資料
  • 住民票等、入居時期が分かる資料
  • 共有者ごとの取得資金負担表
  • 以前の住宅を売却した場合の契約書・申告書
  • 自宅兼事業用・賃貸用の場合の図面と利用割合

住宅の取得は、控除額だけの話にとどまりません。借入返済、固定資産税、修繕費、管理費などを含む、家計全体の資金負担につながっていきます。税額控除を受けられるかという単年度の確認だけでなく、取得後の手元資金まで整理しておくことをおすすめします。

3.寄附金控除・ふるさと納税の相談前に整理すべきこと

寄附金控除では、寄附金受領証明書の有無に加えて、次の事項を確認します。

  • 誰が寄附を申し込んだか
  • 誰の名義で決済したか
  • 実際に寄附金を負担した人
  • 寄附先が控除対象となる団体か
  • 寄附日
  • 寄附金の種類
  • 返礼品等とは別に経済的利益を受けていないか
  • ワンストップ特例を申請したか
  • その年に確定申告をする予定があるか

確定申告をするとワンストップ特例だけでは完結しない

ふるさと納税についてワンストップ特例を申請していても、医療費控除、住宅ローン控除の初年度、雑損控除、副業所得などのために確定申告をする場合は、ワンストップ特例だけでは控除を受けられません。

その年に行ったふるさと納税の全額を、確定申告書へ含める必要があります。

医療費控除だけを入力し、ワンストップ申請済みの寄附を申告書へ記載しなかったために、住民税の控除が反映されない。こうした事態を防ぐには、寄附先一覧とワンストップ申請状況を一緒に確認しておくことが欠かせません。
出典:国税庁|No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)

寄附金控除の相談資料

  • 寄附金受領証明書
  • 寄附金控除に関する証明書
  • 寄附先・寄附日・金額の一覧
  • クレジットカード等の決済資料
  • ワンストップ特例申請書の控え
  • 自治体から届いた受付通知
  • 政党、公益法人、認定NPO法人等への寄附資料
  • 過去に提出した確定申告書
  • 住民税決定通知書

4.社会保険料・生命保険料等の相談前に整理すべきこと

保険料控除では、証明書の宛名だけでなく、誰が実際に保険料を負担したかを確認します。

社会保険料控除

自己または生計を一にする配偶者その他の親族が負担すべき社会保険料を、納税者が支払った場合には、その納税者が控除を受けられることがあります。

一方で、配偶者本人の給与や公的年金から天引きされた社会保険料を、もう一方の配偶者が控除することはできません。天引きされた保険料は、その給与または年金を受け取った本人が支払ったものとして整理されるためです。

相談前には、次の資料をそろえておきます。

  • 給与・年金の源泉徴収票
  • 国民年金保険料控除証明書
  • 国民健康保険料の納付済額通知
  • 介護保険料、後期高齢者医療保険料の資料
  • 口座振替履歴
  • 親族分を代わりに支払ったことが分かる資料
  • 年末調整で申告した金額

出典:国税庁|No.1130 社会保険料控除

生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料

生命保険料控除では、契約者名義だけでなく、保険料の実際の支払者と保険金受取人を確認します。

妻名義の契約であっても、夫が保険料を負担したことを明らかにでき、受取人などの要件を満たしていれば、夫の生命保険料控除の対象となる場合があります。

ただし、保険料を誰が負担したかは、将来の満期保険金、死亡保険金、解約返戻金などの課税関係にも影響します。目先の控除だけに合わせて支払者を説明するのではなく、契約当初からの実際の負担関係を確認しておくことが大切です。
出典:国税庁|No.1140 生命保険料控除
出典:国税庁|妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除

保険料関係の相談資料

  • 生命保険料控除証明書
  • 介護医療保険料控除証明書
  • 個人年金保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 保険証券
  • 契約者、被保険者、受取人が分かる資料
  • 保険料引落口座・カード明細
  • 年末調整の保険料控除申告書
  • 契約変更、名義変更、受取人変更の資料
  • 解約、満期、保険金受領がある場合の支払通知書

年末調整ですでに控除を受けた金額を、確定申告で重ねて控除してしまわないよう、証明書だけでなく、源泉徴収票と年末調整時の申告内容を照合します。

5.扶養控除・配偶者控除等の相談前に整理すべきこと

扶養・配偶者関係の控除は、家族の年収だけを聞いて判断できるものではありません。

少なくとも、次の事項を確認します。

  • 親族関係
  • 年齢
  • 婚姻、離婚、出生、死亡の日
  • 同居・別居の状況
  • 生活費、学費、療養費等の負担状況
  • 給与収入
  • 公的年金
  • 事業・副業・不動産所得
  • 配当、株式売却等
  • 一時的な収入
  • 青色事業専従者給与等の有無
  • 国外居住親族か
  • 他の親族が同じ人を扶養親族として申告していないか
  • 納税者本人の合計所得金額

「収入」と「所得」を混同しない

扶養親族等の判定は、原則として「合計所得金額」で行います。

給与だけであれば、給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。給与以外の収入があれば、それも含めなければなりません。

アルバイト先の給与収入だけを見て基準内だと思っていても、ネット収入、原稿料、年金、株式・暗号資産取引などがあれば、所得要件を超えてしまうことがあります。

令和8年分は改正後の所得要件を使う

令和8年度税制改正により、令和8年分以後の所得税について、扶養親族等の所得要件が改正されました。

区分令和8・9年分の合計所得金額収入が給与のみの場合の給与収入
扶養親族・同一生計配偶者等62万円以下136万円以下
特定親族特別控除の対象となる特定親族62万円超123万円以下136万円超197万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者62万円超133万円以下136万円超207万円以下

ただし、金額基準を満たせば必ず控除できるというわけではありません。親族関係、生計、年齢、納税者本人の所得、事業専従者への該当性なども併せて確認します。

令和8年分の改正は、原則として令和8年12月1日に施行され、同年12月の年末調整から反映されます。令和8年11月までの源泉徴収事務は従前どおりとされているため、月々の源泉徴収額だけを見て年税額を判断しないよう注意が必要です。
出典:国税庁|令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
出典:国税庁|令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし

別居親族では送金実態を確認する

別居している親や子について、生計を一にしていると説明するには、単なる親族関係だけでは足りません。生活費、学費、療養費などを継続して負担している事実が重要になります。

現金を手渡ししているだけでは、後から金額や時期を説明しにくくなります。振込記録、通帳、家賃・学費の直接支払資料などを保存しておきましょう。

国外居住親族については、親族関係書類や送金関係書類など、国内親族とは異なる資料が必要になる場合があります。
出典:国税庁|No.1180 扶養控除

扶養・配偶者関係の相談資料

  • 家族一覧
  • 親族の源泉徴収票
  • 公的年金等の源泉徴収票
  • 副業・事業・不動産・投資等の所得資料
  • 婚姻、離婚、出生、死亡等の日付が分かる資料
  • 別居親族への送金記録
  • 国外親族関係書類・送金関係書類
  • 障害者手帳等
  • 学生証、在学証明書
  • 他の家族が提出した扶養控除等申告書の内容
  • 過年度の確定申告書・源泉徴収票

「家族の所得見込み」を口頭だけで伝えて済ませるのではなく、給与明細や源泉徴収票、事業帳簿などに基づいて年間額を見積もることが大切です。

6.退職・転職・複数勤務がある年に整理すべきこと

退職・転職があった年は、年末調整が完了しているかどうかを、まず最初に確認します。

年内に再就職した場合

年の途中で転職し、年末まで新しい勤務先に在職している場合は、原則として新しい勤務先で、前職分を含めて年末調整を行います。

ただし、前勤務先の源泉徴収票を新勤務先へ提出していない場合には、前職分が年末調整へ含まれていないことがあります。
出典:国税庁|No.2674 中途就職者の年末調整

退職後、年内に再就職していない場合

年の途中で退職し、その年に再就職していない場合は、年末調整を受けていないため、給与から源泉徴収された税額が、年間の正しい税額より多くなっていることがあります。

医療費、社会保険料、生命保険料などを含めて確定申告を行うことで、還付になる可能性があります。ただし、副業、不動産、年金その他の所得があれば、それらも含めて申告要否を判断します。
出典:国税庁|No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき

退職金を受け取った場合

退職所得は、原則として他の所得と分離して税額を計算します。

「退職所得の受給に関する申告書」を支払者へ提出している場合は、通常、支払時の源泉徴収で課税関係が完結し、退職金だけを理由とする確定申告は不要です。

ただし、医療費控除や寄附金控除などを受けるために確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額も記載する必要があります。

申告書を提出していない場合は、退職金の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算する仕組みになります。複数の勤務先から退職金を受け取った場合や、同一年・近接年に複数回の退職金がある場合は、計算関係が複雑になります。すべての退職所得の源泉徴収票をご提示ください。
出典:国税庁|No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

退職・転職相談の資料

  • すべての勤務先の給与所得の源泉徴収票
  • 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
  • 退職所得の受給に関する申告書の控え
  • 雇用契約書、退職日・入社日が分かる資料
  • 年末調整の有無が分かる資料
  • 退職後に自分で支払った国民年金・健康保険料
  • 失業給付、休業給付等の受給資料
  • 複数勤務先の給与明細
  • 副業、報酬、不動産、投資等の資料

失業等給付を受けた、退職金を受け取った、企業年金を受け取った。これらをまとめて「退職時の入金」として扱わず、それぞれの支払原因と資料を分けておくことが大切です。

7.災害・盗難等があった場合に整理すべきこと

災害による損害については、雑損控除、または災害減免法による所得税の軽減・免除を検討できる場合があります。

相談前には、被害額を先に決めてしまうのではなく、次の事実を整理しておきます。

  • 災害・盗難等の発生日
  • 損害の原因
  • 被害を受けた資産の所有者
  • 住宅、家財、事業用資産等の区分
  • 取得時期・取得価額
  • 被害前の利用状況
  • 被害後の残存価値
  • 修繕、撤去、除去等の支出
  • 保険金、共済金、自治体給付金等
  • 被害を受けた親族との生計関係
  • 事業所得等の必要経費・資産損失として処理していないか

雑損控除は、原則として生活に通常必要な住宅・家財などを対象とし、棚卸資産や事業用固定資産などは別の所得計算で整理します。個人事業者や不動産オーナーの方は、家計の被害と事業用資産の被害を分けておく必要があります。
出典:国税庁|No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)

被害直後から残したい資料

  • 被害状況の写真・動画
  • 罹災証明書、被災証明書
  • 警察への届出資料
  • 修繕、撤去、消毒等の見積書・請求書
  • 資産の購入時資料
  • 家財一覧
  • 保険会社の査定・給付通知
  • 自治体等の支援金資料
  • 被害前後の不動産・動産の状態が分かる資料
  • 事業用・家事用の利用区分資料

災害減免法は、住宅・家財の損害が一定以上で、所得金額が一定以下の場合に適用を検討でき、雑損控除とのいずれか有利な方法を選択します。単に被害額が大きい方の制度を選ぶのではなく、所得金額、控除しきれない損失の繰越、翌年以後の所得見込みまで含めて比較することが大切です。
出典:国税庁|No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除

8.給与所得者の資格取得費・研修費等も確認する

転職、転勤、資格取得、研修などがあった年には、給与所得者の特定支出控除が関係することがあります。

対象となり得る支出には、一定の通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、そして図書費・衣服費・交際費等の勤務必要経費があります。

ただし、給与所得者が自費で支払った仕事関連費を、すべて控除できる制度ではありません。

適用には、特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超えること、職務に直接必要な支出として勤務先等の証明を受けること、支出証明を保存していることなどが必要です。

相談前には、領収書だけでなく、勤務先へ証明書を依頼できるかどうかを確認しておきます。退職後では証明の取得に時間がかかることがあるため、早めの準備が欠かせません。
出典:国税庁|No.1415 給与所得者の特定支出控除

9.控除漏れに気づいたときは手続を切り分ける

過去の控除漏れに気づいた場合、「確定申告をやり直せばよい」と一括りに考えないことが大切です。

状況によって、とるべき手続は異なります。

現在の状況主に検討する手続
もともと確定申告をしておらず、源泉徴収税額の還付を求める還付申告
確定申告済みで、控除漏れ等により税額が多過ぎた更正の請求
確定申告済みで、所得漏れ等により税額が少な過ぎた修正申告
法定申告期限前に誤りに気づいた期限内の訂正申告を検討
所得税額は変わらず、住民税だけに影響する自治体への手続を確認

更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内に行います。ただし、所得控除を追加しても最終的な所得税額や純損失の金額に変動がない場合には、更正の請求ができないことがあります。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき

医療費控除や寄附金控除などの適用漏れは、更正の請求の対象となり得ます。もっとも、申告時に選択した制度を、後から自由に変更できるとは限りません。

たとえば、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の選択は、修正申告や更正の請求では変更できません。また、ふるさと納税のワンストップ特例を申請した後に確定申告をしたものの、寄附金を申告書へ記載し忘れた場合には、更正の請求などを検討します。

控除漏れを直す際も、控除だけを追加して終わりにするのではなく、当初申告に含まれていなかった副業、配当、資産売却などがないかを、同時に確認する必要があります。

10.「還付になるか」だけで相談を始めない

控除相談では、還付見込額を先に知りたい、というご希望が出ることがあります。しかし、還付額は控除証明書だけでは計算できません。

確認すべきものは、少なくとも次の四つです。

その年の全所得

給与だけでなく、副業、不動産、年金、退職金、配当、株式売却、保険金、資産売却などを確認します。

源泉徴収済み税額

控除額が大きくても、源泉徴収された所得税が少なければ、還付額は限られます。

年末調整で処理済みの控除

社会保険料、生命保険料、扶養、配偶者、住宅ローン控除などが、すでに源泉徴収票へ反映されていないかを確認します。

所得税以外への影響

確定申告書は、住民税の計算にも使われます。ふるさと納税、配当、株式等を含む申告では、所得税だけでなく、住民税欄の記載や、申告後の負担変化まで確認します。
出典:国税庁|No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)

相談前チェックシート

次の質問に一つでも「分からない」がある場合は、その事項を相談時の確認論点として明示しておくと、判断が進みやすくなります。

質問確認
何年分の申告・控除か分かっているか
その年のすべての源泉徴収票があるか
給与以外の収入・所得を一覧にしたか
年末調整で処理済みの控除を確認したか
控除対象の支出を誰が実際に負担したか分かるか
家族の収入ではなく合計所得金額を確認したか
親族との生計関係を説明できるか
保険金、助成金、給付金等を確認したか
ふるさと納税のワンストップ申請状況を確認したか
住宅の入居日、持分、借入負担を整理したか
退職所得の源泉徴収票を保管しているか
災害資産を家事用・事業用に区分したか
過年度の確定申告書を用意したか
控除漏れを直す手続と期限を確認したか
住民税等への影響も確認する予定か

早めに専門家へ相談した方がよいケース

次のような場合は、申告期限の直前ではなく、資料を集め始めた段階でご相談いただく意義が大きくなります。

  • 医療費を複数の家族が負担している
  • 別居親族の医療費・生活費を負担している
  • 医療保険金や高額療養費が未確定である
  • 通常の医療費控除とセルフメディケーション税制で迷っている
  • 住宅を夫婦共有で取得した
  • 住宅取得資金の贈与や旧居の売却がある
  • 自宅の一部を事業・賃貸に使用している
  • ふるさと納税のワンストップ申請後に確定申告が必要となった
  • 配偶者や子の所得が控除基準付近にある
  • 別居・国外居住の親族を扶養にしている
  • 退職・転職・複数勤務が同じ年に重なった
  • 複数の退職金を受け取った
  • 災害で家計用資産と事業用資産の双方に被害が出た
  • 数年分の控除漏れに気づいた
  • 控除を追加すると他の未申告所得も明らかになる
  • 住民税や翌年以降への影響まで確認したい

控除・ライフイベントの確定申告について相談したい方へ

控除の相談は、領収書や証明書を集計すれば終わり、というものではありません。

誰が支払い、誰が対象となり、その年にどの所得があり、年末調整で何が処理され、確定申告によって何が変わるのか。これらを一つずつ確認していく必要があります。

とりわけ、医療費を家族で負担している場合、住宅取得と贈与・売却が重なる場合、扶養親族に複数の所得がある場合、退職・転職・複数勤務がある場合、災害損失や過年度の控除漏れがある場合には、申告書へ入力する前に前提を整理しておくことが大切です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、控除をできるだけ多く計上することだけを目的とはしていません。支払実態、家族関係、所得資料、年末調整、過年度申告との整合性を確認し、後から説明できる申告へつなげることを重視しています。

何を用意すべきか分からない段階でも、現在ある資料と不足している資料を区分してご相談いただけます。当事務所HPのお問い合わせページから、対象年分、主なライフイベント、すでに確定申告をしているかどうかを添えて、お問い合わせください。

※本稿は2026年6月26日現在の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。実際の適用関係は、対象年分、所得、支払者、家族関係、住宅の取得・入居時期、災害の内容、過年度申告等により異なります。令和8年度税制改正を含め、申告する年分に対応した最新の制度をご確認ください。

重要事項の振り返り

論点相談前に確認すること主な資料見落とした場合の影響
申告全体その年の全所得、源泉徴収、年末調整全勤務先の源泉徴収票、過年度申告書控除だけを追加した不完全な申告になる
医療費支払者、対象者、支払日、生計関係医療費通知、領収書、通帳、家族一覧控除する人や対象年を誤る
医療費の補填保険金、高額療養費、助成金等給付・支給通知医療費控除額を過大に計算する
セルフメディケーション通常の医療費控除との比較対象レシート、健診資料申告後に選択を変更できない
住宅ローン入居日、住宅区分、性能、床面積、持分、借入負担契約書、登記、残高証明、性能証明控除額・適用可否や贈与関係を誤る
寄附寄附者、寄附先、ワンストップ申請受領証明、寄附一覧住民税を含む控除が反映されない
社会保険料誰が実際に支払ったか源泉徴収票、納付証明、口座履歴家族間で控除を重複・誤帰属させる
生命保険料等支払者、契約者、受取人、年末調整済みか控除証明、保険証券、支払明細控除の誤りや将来の保険金課税に影響する
扶養・配偶者所得、年齢、生計、他者との重複親族の所得資料、送金記録控除要件を誤り、後日修正が必要になる
令和8年改正改正後の所得要件を使っているか国税庁の改正資料過年度の「年収の壁」で誤判定する
退職・転職年末調整、前職給与、退職所得給与・退職所得の源泉徴収票給与や退職所得の申告漏れが生じる
災害被害原因、資産区分、損害額、補填金写真、罹災証明、修繕・保険資料雑損控除と事業損失を混同する
特定支出控除職務上の必要性、勤務先等の証明領収書、証明書、明細書自費支出だけでは控除を受けられない
控除漏れ当初申告の有無、税額の増減、期限当初申告書、控除資料還付申告・更正の請求・修正申告を取り違える
将来への影響住民税、翌年の手続、資料保存住民税通知、申告書控え所得税の還付だけを見た不十分な判断になる

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