当事務所と相性のよい確定申告相談の進め方|資料と事実から「説明できる申告」を整える

税理士との相性というと、「話しやすい」「返信が早い」「説明が分かりやすい」といった印象面がまず思い浮かぶかもしれません。

安心して相談できることは、もちろん大切です。ただ、個人の確定申告という場面で、より深いところで相性を左右するのは、どのような事実と資料をもとに、どのような手順で結論をつくっていくか。その相談への向き合い方が一致しているかどうかだと考えています。

たとえば、次の二つの相談は、表面上はどちらも「自宅家賃を経費にできますか」という同じ質問です。

一つは、「一般的に何割までなら問題ありませんか」と、結論だけを知りたい相談です。

もう一つは、「自宅のうち、どの部屋を、いつ、どの業務に使っているのか。面積、使用時間、来客の有無、他の家族の利用状況まで確認したうえで、きちんと説明できる按分方法を考えたい」という相談です。

当事務所と相性がよいのは、後者のように、望む結論から数字を逆算するのではなく、取引の実態から妥当な結論を組み立てていきたい方です。

この記事では、料金表や個別のサービス内容ではなく、当事務所が確定申告の相談で大切にしている考え方をお伝えします。相談の進め方、資料の共有、役割分担、率直な指摘、そして報酬に対する考え方まで、順を追って整理してみます。

目次

当事務所が重視するのは「希望どおりの申告」ではなく「説明できる申告」

税理士は、依頼者の希望を無条件に申告書へ反映する立場ではありません。

税理士法上、税理士は税務に関する専門家として「独立した公正な立場」に立ち、納税義務の適正な実現を図ることを使命としています。
出典:国税庁|税理士の使命

ですから、相談者にとって有利な取扱いを検討することと、相談者が望む取扱いをそのまま採用することは、同じではありません。

適用できる控除や特例を見落とさず、必要経費を適切に計上することは、確かに重要です。その一方で、事業実態の乏しい活動を事業所得として扱う、生活費を根拠なく必要経費へ含める、実際には存在しない契約や支払を前提に処理する、といった対応はできません。

当事務所が目指すのは、単に税額が低い申告ではなく、次の問いに答えられる申告です。

  • その収入は、なぜその所得区分になるのか
  • その支出は、どの収入を得るために必要だったのか
  • 事業用部分と私用部分を、どの基準で分けたのか
  • その金額は、契約書、通帳、請求書等と一致しているか
  • 今年の処理は、過年度や翌年以降と整合しているか
  • 税務署や金融機関から質問されたとき、どの資料で説明するか

こうした考え方は、税務調査への備えだけを目的とするものではありません。働き方の見直し、資金調達、不動産の保有・売却、法人成り、家族への事業承継など、将来の意思決定に使える数字を整えることにもつながっていきます。

相性のよい相談は「事実・資料・目的・期限」の四つから始まる

確定申告の相談では、いきなり税額計算へ進むわけではありません。

まず確認するのは、次の四つです。

確認する事項主な内容
事実何を、いつ、誰と、どのような条件で行ったか
資料契約書、請求書、通帳、領収書、明細、過年度申告書等があるか
目的申告要否の確認、申告書作成、過年度是正、将来取引の検討など、何を解決したいか
期限申告期限、納期限、契約日、決済日、届出期限等がいつか

この四つは、どれか一つ欠けるだけでも、結論が変わってしまうことがあります。

たとえば、「不動産を売る予定がある」という情報だけでは、税務判断はできません。

自宅なのか賃貸物件なのか、取得時期はいつか、相続で取得したのか、共有者はいるのか、売買契約はすでに締結済みか、建物を解体する予定があるか。こうした点によって、確認すべき制度も資料も変わってくるためです。

相談の質は、会計記録と証拠資料について、網羅性、真実性、適時性をどこまで確保できるかで、大きく変わってきます。

当事務所と相性のよい方の相談姿勢

1.有利・不利を問わず、事実を共有できる

税理士へ共有していただきたいのは、経費になりそうな領収書だけではありません。

次のような、申告上むしろ不利になりうる情報も、同じように重要です。

  • 現金で受け取った収入
  • 家族名義の口座に入金された事業収入
  • プラットフォーム内に残っている売上
  • 海外口座への入金
  • 私的利用を含む車両や住宅
  • 親族から受け取った金銭
  • 過年度に申告していない収入
  • 契約書と実際の取引条件が異なる取引
  • 申告後に売却・法人化・海外転居を予定している事実

「税理士に話すと課税されてしまう」と考えて不利な情報を伏せたまま相談しても、判断の精度は上がりません。それどころか、後から取引が判明すれば、当初の所得区分、経費、控除、消費税、住民税等をまとめて見直すことになりかねません。

税理士には、税理士業務に関して知り得た秘密を、正当な理由なく他へ漏らしたり利用したりしてはならないという守秘義務があります。
出典:国税庁|税理士法違反行為

不安な事実ほど、早い段階で率直に共有していただくことが、適切な整理への近道になります。

2.資料が不足している場合に、不足していること自体を共有できる

相談の前に、すべての資料を完璧にそろえていただく必要はありません。

大切なのは、資料がないのに「たぶんこの金額だった」と断定したり、推測した数字を確定値として扱ったりしないことです。

資料が不足している場合は、次のように整理していきます。

状況相談時の伝え方
契約書が見つからない契約日、相手方、取引内容を説明し、再発行・代替資料の可能性を確認する
領収書を紛失した通帳、カード明細、メール、注文履歴、業務記録の有無を確認する
取得費が分からない購入時期、取得経緯、登記、借入れ、過去資料の所在を整理する
家族口座を使っている誰の収入か、誰が管理し、誰が費用を負担したかを説明する
過年度処理が不明過年度申告書、決算書、固定資産台帳、届出書を確認する

「分からない」と正確に伝えることは、相談の準備ができていない、という意味ではありません。

むしろ不明な事項をはっきりさせることで、追加で探すべき資料、代替的に確認する方法、一定の留保を置くべき判断を、それぞれ切り分けられるようになります。

3.都合のよい結論だけでなく、判断理由を知りたい

当事務所では、「できます」「できません」という回答だけで終わらせず、できる限り次の点まで整理してお伝えします。

  • 判断の前提となった事実
  • 適用する制度や考え方
  • 結論が変わる可能性のある事実
  • 追加で必要となる資料
  • 他の処理方法がある場合の選択肢
  • 所得税以外への影響
  • 翌年以降に継続すべき処理
  • 税務署等へ説明するときの根拠

ただし、依頼者にとって望ましくない結論を避けるために、事実を別の形へ見せることはできません。

たとえば、雑所得に該当する可能性が高い活動について、赤字を給与所得と相殺したいという理由だけで事業所得として扱うことはできません。家族への支払についても、実際の勤務や支払がなければ、届出書や振込記録があるというだけで必要経費になるわけではないのです。

税理士による申告書の作成は、単なる転記や代書ではなく、税理士自身の判断に基づく作成と位置づけられています。
出典:国税庁|税理士の業務

だからこそ、専門家へ依頼する価値は、数字を入力することそのものよりも、どの事実を、どの税務処理へ結びつけるかという判断の過程にあると考えています。

4.今年だけでなく、翌年以降の影響も確認したい

今年の申告だけを整えても、翌年以降に同じ問題が繰り返されてしまうことがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 事業口座と家計口座が混在している
  • 売上計上が入金時だけになっている
  • 家事関連費の按分基準が毎年変わっている
  • 固定資産台帳が更新されていない
  • 消費税の届出状況が分からない
  • 不動産ごとの収支を分けていない
  • 株式損失の繰越を継続管理していない
  • 納税資金を申告期限直前に準備している

当事務所との相談では、今年の申告を完成させることに加えて、来年から何を変えれば同じ確認作業を減らせるかも、重要な論点になります。

不動産をお持ちの方の場合は、家賃収入の所得税だけでなく、固定資産税、修繕、空室、借入金返済、売却、共有関係、将来の承継といった要素を切り離せないことも少なくありません。

5.役割分担と期限を守ることに価値を感じる

税理士へ依頼したからといって、本人にしか分からない事実まで、税理士が自動的に把握できるわけではありません。

申告納税制度は、納税者が自ら所得等を申告し、確定した税額を納付する制度です。
出典:国税庁|申告と納税

実務上の役割分担は、次のように整理できます。

本人が担う領域当事務所が担う領域
取引・生活実態の説明課税関係に影響する事実の抽出
収入・支出・資産の網羅的な申告所得区分、計上時期、経費性等の判断
契約書、通帳、証憑等の提供資料同士の整合性の確認
不明事項への回答追加確認事項の提示
将来予定の共有現在の処理が将来へ与える影響の整理
申告内容の事実確認申告書・決算書等の作成またはレビュー
納税資金の確保税額見込み、納付時期等の案内

双方がそれぞれの役割を果たすことで、申告書の数字と実際の取引を、しっかり結びつけられます。

当事務所における確定申告相談の基本的な流れ

お問い合わせ → 現状と期限の確認 → 資料共有 → ヒアリング → 論点の可視化 → 追加資料の確認 → 判断方針・業務範囲の説明 → 申告書等の作成・レビュー → 内容確認・申告 → 翌年以降の整理

個別の事情によって順序や内容は変わりますが、基本的な考え方は次のとおりです。

STEP1.お問い合わせ時に、相談の全体像を確認する

最初のお問い合わせで、すべての事情を詳しく書いていただく必要はありません。

まずは、次の事項を分かる範囲でお知らせください。

  • 相談したい内容
  • 主な収入の種類
  • 対象となる年分
  • 申告期限や取引予定日
  • これまでの申告方法
  • 税務署からの連絡の有無
  • 特に不安を感じている点

たとえば「副業があります」だけでなく、「給与所得のほか、2025年から業務委託による収入があり、年間入金は約500万円、取引先は4社、帳簿は未作成」と分かれば、初期段階で確認すべき資料を絞りやすくなります。

一方で、初回の連絡で長い税務上の主張を組み立てる必要はありません。税務上の結論は、契約、入出金、活動の実態等を確認してから整理していきます。

STEP2.過年度申告と届出状況を確認する

個人の税務は、単年だけを見ても判断できないことがあります。

初回相談の前後には、可能な範囲で次の資料を確認します。

  • 過去の確定申告書
  • 青色申告決算書または収支内訳書
  • 消費税申告書
  • 青色申告承認申請書
  • 消費税に関する選択・届出書
  • 開業・廃業等届出書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書
  • 過年度の固定資産台帳
  • 純損失や株式損失等の繰越資料
  • 税務署から届いた通知書

過年度に選択した制度や処理方法が、当年の申告に影響してくることがあるためです。

資料が手元にない場合は、「提出したと思う」という記憶だけで処理を進めず、控えやe-Taxのメッセージボックス等で確認する必要があります。

STEP3.事実関係を時系列で整理する

税務判断が複雑な案件では、時系列表を作成します。

たとえば不動産売却であれば、次のような流れになります。

時期事実確認資料
取得時購入・相続・贈与等で取得売買契約書、相続資料、登記
保有中自宅、賃貸、空き家等として利用賃貸借契約、住民票、家賃明細
改修時修繕、増築、解体等を実施工事契約書、見積書、請求書
売却前仲介、測量、退去、解体等媒介契約、測量資料
売却時契約・引渡し・代金受領売買契約書、精算書、通帳

時系列に並べると、所有期間、取得費、居住実態、収入計上、修繕・資本的支出、特例適用など、判断に必要な事実が見えやすくなります。

STEP4.「確定していること」と「判断が必要なこと」を分ける

相談内容は、次の四つに分類します。

  1. 資料から確定できる事実
  2. 本人の説明によって確認する事実
  3. 追加資料がなければ判断できない事項
  4. 法令解釈や選択判断が必要な事項

たとえば自宅兼事務所の家賃按分であれば、家賃総額や床面積は資料から確認できます。しかし、各部屋の使い方、家族の利用、業務時間については、本人の説明が欠かせません。

この区分をせずに申告書作成へ進んでしまうと、推測と確認済みの事実が混ざってしまいます。

当事務所では、曖昧な事項について形式的に数字を埋めるよりも、何が不明なのか、何を確認すれば判断できるのかを明らかにすることを大切にしています。

STEP5.論点ごとに、結論・根拠・留保を説明する

判断の結果をお伝えするときは、可能な限り次の形で整理します。

説明項目内容
結論現時点で妥当と考える処理
根拠契約、取引実態、法令、資料との関係
前提どの事実を前提にしているか
留保未確認事項、資料不足、見解差があり得る部分
代替案他の処理や今後の改善方法
波及影響住民税、消費税、国保、翌年以降等への影響
必要行動追加資料、届出、資金準備、保存事項

特に、税務上の結論に幅がある場合は、単に「ケースバイケース」で終わらせるのではなく、どの事実が変われば結論も変わるのかをお示しします。

STEP6.業務範囲と責任分担を明確にする

「確定申告を依頼した」という言葉だけでは、業務範囲は決まりません。

ご依頼の前には、少なくとも次の事項を確認します。

  • 対象となる年分
  • 対象となる税目
  • 記帳を誰が行うか
  • 帳簿の修正・再作成を含むか
  • 所得税申告書の作成のみか
  • 消費税、贈与税、源泉所得税等を含むか
  • 不動産や株式等の譲渡所得を含むか
  • 過年度申告の確認を含むか
  • 税額試算や納税資金の案内を含むか
  • 税務代理を行うか
  • 税務署からの照会対応を含むか
  • 申告後の継続支援を含むか

税務代理を行う場合、税理士または税理士法人は、代理権限を有することを示す税務代理権限証書を税務官公署へ提出します。
出典:国税庁|税務代理の権限の明示

どこまでご依頼いただくかは、申告の難易度、資料の状況、本人が対応できる範囲によって変わってきます。

STEP7.申告案は、本人にも確認してもらう

税理士が申告書を作成しても、その内容の基礎となる事実は、本人に確認していただく必要があります。

特に確認していただきたいのは、次の点です。

  • 収入に漏れがないか
  • 家族名義・海外口座等の入金を含めたか
  • 事業用と私用の区分は実態に合っているか
  • 固定資産、在庫、借入金等に漏れがないか
  • 扶養親族や控除対象者の情報は正しいか
  • 売却資産や金融取引を網羅しているか
  • 申告後に予定している取引を共有したか
  • 税額と納付方法を理解しているか

正確な申告を支えるには、提示された資料の範囲だけでなく、取引が網羅されているか、実在するか、適法な処理かを、一つひとつ具体的に確かめる視点が欠かせません。

STEP8.申告後に、資料と判断過程を残す

申告が終わったら、申告書の控えだけを保存して終わり、ではありません。

少なくとも、次のものを一体で保存しておきます。

  • 提出した申告書・決算書
  • 受信通知
  • 納付記録
  • 添付・提示した資料
  • 所得区分の判断メモ
  • 家事按分の計算根拠
  • 固定資産の取得・売却資料
  • 特例適用の要件資料
  • 税務署との連絡記録
  • 翌年へ引き継ぐ事項
  • 届出期限・予定納税等の予定

後から説明できる状態をつくっておくことは、税務署への対応だけでなく、金融機関への説明や将来の事業判断にも役立ちます。

相談の際に、率直に伝えていただきたいこと

次の事項は、相談の早い段階で共有していただくほど、対応方針を整理しやすくなります。

共有してほしい事項共有が必要な理由
希望する結論希望と税務上の結論を区別して説明するため
最も不安な点優先して確認すべき論点を絞るため
資料がない取引代替資料や留保の必要性を検討するため
過年度の誤り当年だけでなく過年度是正の要否を確認するため
税務署からの連絡回答期限、調査・行政指導の区別を確認するため
家族・親族との取引所得の帰属、支払実態、時価等を確認するため
海外との関係居住者区分、国外所得、外国税額等を確認するため
今後の予定売却、設備投資、法人化、転居等を事前に検討するため
資金上の制約納税資金、予定納税、分割支出等を検討するため

不利な事情を伝えることは、相談者ご自身を不利にする行為ではありません。

むしろ先に事実を把握できれば、適切な是正方法、必要な資料、資金の準備、今後の改善策を、落ち着いて検討できます。

当事務所が「率直な指摘」を重視する理由

確定申告の相談では、相談者が安心できる言葉だけをお伝えすることが、必ずしも適切な支援とは限りません。

たとえば、次のような指摘をすることがあります。

  • その支出は私的性質が強く、全額を必要経費にすることは難しい
  • その副業は、現在の資料と活動実態では事業所得としての説明が弱い
  • その不動産の赤字は、すべてを給与所得と通算できるとは限らない
  • その工事代金は、修繕費ではなく資本的支出として扱う可能性がある
  • その家族への支払は、勤務実態や金額の相当性を確認する必要がある
  • その取引は、所得税だけでなく消費税や贈与税の検討も必要である
  • 申告期限の直前では、十分に確認できる範囲が限られる
  • 希望する特例は、居住実態や所有関係の要件を満たさない可能性がある

これは、節税を軽視しているからではありません。

適用できる制度は適切に利用しつつ、使えない制度を使えるように見せたり、事実の裏付けがない数字を採用したりしない。それが、結果として将来のリスクを抑えることにつながるからです。

税理士には、不正な税負担の回避や還付について指示・相談等を行わない義務があり、真正の事実に反する申告書作成等についても懲戒制度が設けられています。
出典:国税庁|税理士法違反行為

率直な指摘を受けた結果、当初の想定より税額が増えることもあります。ただ、その段階で事実を整理できていれば、申告後に突然指摘を受けるよりも、納税資金や翌年以降の対応を、はるかに計画しやすくなります。

当事務所の報酬に対する考え方

税理士報酬は、申告書の枚数や入力件数だけで決まるものではありません。

同じ売上額、同じ不動産所得であっても、次の条件によって、必要な確認作業は大きく変わってきます。

  • 収入の種類と所得区分
  • 取引件数
  • 帳簿の整備状況
  • 事業と家計の混在状況
  • 契約書・証憑の有無
  • 固定資産や在庫の有無
  • 不動産・株式等の売却
  • 消費税申告の有無
  • 海外取引の有無
  • 過年度申告の修正要否
  • 申告期限までの期間
  • 税務署対応の有無
  • 将来取引に関する検討範囲

当事務所では、報酬を「いくら節税できたか」だけで捉えることはしません。

報酬の対象には、資料の確認、事実の整理、法令の確認、所得区分、経費性、特例、消費税、過年度との整合、申告書のレビュー、期限管理、説明資料の整備などが含まれます。

資料を整理すると報酬を抑えられるのか

資料が整理されていれば、確認作業を効率化できる可能性はあります。

ただし、報酬を抑えるために、判断が必要な取引や不利な資料を除外してしまっては本末転倒です。

有効なのは、次のような整理です。

  • 口座別に通帳データを用意する
  • 収入先別に年間金額を一覧化する
  • 不明な入出金へ印を付ける
  • 契約書と入金を対応させる
  • 物件別に不動産収支を分ける
  • 高額な支出を一覧化する
  • 家事按分の対象を明示する
  • 過年度申告書・届出書をまとめる
  • 質問事項を1枚に整理する

資料を「税理士が好みそうな形」に加工していただく必要はありません。原資料を残したうえで、どの取引が不明なのかを分かるようにしておくことが重要です。

相性が合いにくい可能性がある相談

次のような場合には、相談の進め方や業務範囲を調整する必要があります。法令に沿った対応や必要な品質を確保できないときは、ご依頼をお受けできないこともあります。

1.採用してほしい結論が最初から固定されている

「事業所得にすることが依頼の条件」「全額を経費にできる税理士を探している」といった相談では、実態に基づく判断ができません。

ご希望はお聞きしますが、最終的な処理は、事実と法令から検討します。

2.不利な資料を提示しないことを前提としている

一部の通帳、契約、売上を意図的に除外した状態では、申告内容の網羅性を確認できません。

資料が不足していることと、意図的に開示しないことは、まったく異なります。

3.実態のない書類を後から作ることを求めている

実際には行っていない業務について契約書を作成する、支払っていない給与について領収書を作る、過去の日付へ遡って取引を装う。こうした対応はできません。

実態はあるものの書類化が不足している場合は、現存する資料と事実を確認し、今後の記録方法を整えていきます。

4.期限直前でも、無制限の確認を求めている

期限が近い案件では、対応できる範囲を限定せざるを得ないことがあります。

特に、不動産売却、複数年の無申告、消費税、海外取引、資料が未整理の事業所得などは、短期間で十分な確認を行うことが難しい場合があります。

期限が迫っているときほど、まず事実、資料、未確認事項を整理し、期限内に行う対応と、期限後に行う確認とを分けておく必要があります。

5.税理士への依頼を、判断責任の全面移転と考えている

税理士は、提示された事実と資料をもとに専門的な判断を行います。

本人しか知り得ない取引を申告しないまま、後から「税理士へ任せていた」と説明しても、適切な申告体制にはなりません。

当事務所と相性がよいのは、税理士を作業の丸投げ先ではなく、本人が持つ事実と、専門家が持つ税務知識を組み合わせる相談相手として活用したい方です。

初回相談前に作成すると有効な「1枚メモ」

相談内容が複雑であっても、最初から長い説明書を作る必要はありません。

次の項目をA4用紙1枚程度にまとめておくと、相談の入口を整理しやすくなります。

項目記載する内容
相談目的何を判断・解決したいか
対象年分何年分の申告か
収入の種類給与、副業、事業、不動産、売却等
金額の概算収入、経費、売却額等
重要な日付開業、契約、取得、売却、退職、転居等
現在の処理自分ではどのように考えているか
不明点判断できない事項
資料状況ある資料、ない資料
過年度これまでの申告方法、届出状況
今後の予定設備投資、売却、法人化、海外転居等
期限申告・納付・契約・届出の期限

ご自身の見解を書く場合は、「確定事項」ではなく「現時点の認識」として記載してください。

申告期限直前よりも、取引前の相談が有効な場面

次のような取引は、申告時ではなく実行の前にご相談いただく方が、検討できる選択肢が多くなります。

  • 不動産の売却
  • 親族や同族会社との資産売買
  • 相続不動産の分割・売却
  • 高額な設備投資
  • 建物の改修・解体
  • インボイス登録
  • 消費税の課税方法の選択
  • 個人事業から法人への移行
  • 家族への給与支払開始
  • 海外転居・帰国
  • 事業の廃止・承継
  • 空き家の賃貸・民泊・売却

取引後に税額を計算することはできても、契約相手、名義、価格、実行の時期、資金の流れといった、すでに確定した事実を税務上都合よく変更することはできません。

相談は、問題が起きた後の処理だけでなく、問題が起きにくい取引設計のためにも活用していただけます。

相性を確認するために、相談時に聞いておきたいこと

税理士へ依頼するかどうかを判断するときは、次のような質問をしてみるとよいでしょう。

  • この案件では、何を確認しなければ結論が出ないか
  • 現時点で最も大きな税務上の論点は何か
  • 私の認識と異なる部分はあるか
  • 追加で必要な資料は何か
  • 結論が変わる可能性のある事実は何か
  • 所得税以外に確認すべき税金はあるか
  • 今年の処理は翌年以降にどう影響するか
  • 依頼業務に含まれるものと含まれないものは何か
  • 申告後の税務署対応はどこまで含まれるか
  • 本人側で行うべき作業は何か
  • いつまでに何を提出すべきか
  • 報酬は、どの作業・判断に対するものか

回答の内容そのものだけでなく、分からないことを分からないと伝えるか、追加確認が必要な事項を明示するか、相談者に不利な可能性まで説明するか。そうした姿勢を見ることが大切です。

重要事項の振り返り

重要事項当事務所が重視する考え方
相談の出発点希望する結論ではなく、事実・資料・目的・期限から確認する
税理士の立場依頼者へ迎合するのではなく、独立した公正な立場で判断する
資料共有有利・不利を問わず、収入、契約、口座、資産等を網羅的に共有する
資料不足推測で埋めず、不足を明示して代替資料や留保を検討する
所得区分・経費名称や希望ではなく、契約、継続性、利用実態、資金の流れから判断する
率直な指摘経費にできない、特例を使えない等の不利な可能性も説明する
役割分担本人が事実と資料を提示し、税理士が税務上の判断と申告へ落とし込む
業務範囲対象年分、税目、記帳、申告、税務署対応等を事前に明確にする
報酬入力件数だけでなく、判断、資料確認、期限管理、レビュー等を含めて考える
将来影響翌年の申告、消費税、納税資金、売却、法人化、承継等へ接続する
相談時期申告期限直前だけでなく、契約・売却・投資等の実行前に相談する
相性の本質話しやすさだけでなく、事実に基づく判断姿勢を共有できるかで考える

※本稿は2026年6月26日現在の法令、公表情報および一般的な実務を前提としています。実際の申告要否、所得区分、必要経費、特例、消費税、届出期限等は、契約内容、取引実態、利用状況、過年度申告・届出によって異なります。

事実と資料から、今後につながる確定申告を整理したい方へ

確定申告について、相談内容を完全に整理してからお問い合わせいただく必要はありません。

「どの所得に当たるのか分からない」「資料が一部見つからない」「経費と家計が混ざっている」「過去の申告も確認したい」「不動産や資産を売る前に整理したい」。こうした段階でも、分かる範囲の事実と、いま感じている不安をお知らせください。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、結論を先に決めてしまうのではなく、取引の実態、契約、入出金、証憑、過年度申告、将来の予定を確認し、何が確定していて、何を追加で確認すべきかを整理します。

ご自身にとって都合のよい申告ではなく、税務署、金融機関、そして将来のご自身に対して説明できる申告を整えたい方は、お問い合わせページからご相談ください。

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