相続税の課税財産・非課税財産・みなし相続財産|民法上の遺産との違いと申告漏れを防ぐ視点

相続税の申告で最初につまずきやすいのは、「何を相続税の対象に含めるのか」という、財産範囲の判断です。

相続税の対象となるのは、被相続人名義の預金や不動産だけではありません。たとえば生命保険金や死亡退職金は、民法上は遺産分割の対象にならないことが多い財産です。それでも相続税の世界では、「相続等により取得したもの」とみなされ、課税対象に含まれることがあります。

反対に、墓地や墓石、仏壇、仏具のように、相続税がかからない財産もあります。ただ、非課税といっても、似たような財産がすべて無条件に除かれるわけではありません。骨とう的な価値があるもの、投資目的で持っているもの、商品として所有しているものなどは、また別の判断が必要になります。

つまり相続税の申告では、単に「遺産かどうか」ではなく、次の3つを分けて整理しておくことが大切です。

区分基本的な意味代表例
本来の相続財産相続や遺贈により承継される、経済的価値のある財産現金、預貯金、不動産、有価証券、貸付金、著作権など
みなし相続財産民法上の遺産とは限らないが、相続税法上、相続等により取得したものとみなされる財産死亡保険金、死亡退職金、一定の定期金に関する権利など
非課税財産相続税法上、一定の政策的・社会的な理由から課税対象から除かれる財産墓地・墓石・仏壇など、一定額までの死亡保険金・死亡退職金など

この記事では、相続税の課税財産・非課税財産・みなし相続財産について、民法上の遺産との違い、申告実務で見落とされやすい点、税務調査で問題になりやすい点を中心に整理していきます。

目次

「民法上の遺産」と「相続税上の課税財産」は一致しない

財産範囲を考えるうえで、まず押さえておきたい前提があります。「民法上の遺産」と「相続税上の課税財産」は、同じではないということです。

民法上、相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし、被相続人の一身に専属したものは承継されません。また、系譜・祭具・墳墓の所有権など、祭祀に関する権利は、通常の相続財産とは異なる扱いを受けます。

出典:e-Gov法令検索|民法

これに対して相続税では、相続や遺贈によって取得した財産に加えて、相続税法の規定により相続等により取得したものとみなされる財産、さらには生前贈与のうち一定の加算対象となるものなども、課税価格に関係してきます。国税庁も、相続税がかかる財産として、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋のほか、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もることのできる経済的価値のあるものを広く挙げています。

出典:国税庁|No.4105 相続税がかかる財産

実務では、次のようなズレがしばしば問題になります。

場面民法上の見方相続税上の見方
死亡保険金受取人固有の財産と整理されることが多く、遺産分割の対象外となる場合がある被相続人が保険料を負担していた場合、みなし相続財産として課税対象になる
死亡退職金受給権者の固有財産と整理される場合がある死亡後3年以内に支給が確定したものなどは、みなし相続財産として課税対象になる
家族名義の預金名義上は家族の財産に見える資金の原資や管理状況によっては、実質的に被相続人の財産と判断されることがある
墓地・墓石・仏壇祭祀承継の問題として扱われる一定のものは相続税の非課税財産となる
未支給年金年金法上、遺族固有の請求権として整理される場合がある国民年金の未支給年金請求権については、相続税の課税対象にならないとする国税庁の質疑応答事例がある

「遺産分割協議書に載せる財産」と「相続税申告書に載せる財産」は、重なる部分も多いのですが、完全には一致しません。

この違いを理解しないまま、遺産分割の感覚だけで財産を拾ってしまうと、申告漏れや特例適用の誤りにつながりかねません。

本来の相続財産とは何か

本来の相続財産とは、被相続人が死亡時に有していた財産的価値のある権利のうち、相続や遺贈によって取得されるものをいいます。

代表的なものとして、次のような財産が挙げられます。

財産区分具体例実務上の注意点
金融資産現金、預貯金、定期預金、外貨預金死亡直前の引き出し、家族名義口座、未記帳取引を確認する
有価証券上場株式、投資信託、債券、外国株式相続開始日時点の評価資料、配当・利息、国外資産を確認する
不動産土地、建物、借地権、底地、共有持分登記だけでなく、現況、利用状況、権利関係、評価単位を確認する
事業・会社関係非上場株式、出資金、役員貸付金、事業用資産会社資料、株主名簿、決算書、貸借関係を確認する
債権貸付金、未収家賃、未収報酬、売掛金回収可能性、契約書、入金履歴、債務者の状況を確認する
知的財産・その他著作権、特許権、ゴルフ会員権、貴金属、美術品金銭評価の可否、換金性、保有目的を確認する

ここで大切なのは、「名義が被相続人であるもの」だけを拾えばよいわけではない、という点です。

たとえば家族名義の預金であっても、資金の原資が被相続人で、通帳・印鑑・キャッシュカードを被相続人が管理し、名義人が自由に使えない状態であれば、実質的に被相続人の財産と判断される可能性があります。

逆に、被相続人名義の財産であっても、実質的な権利関係や契約関係をきちんと確認しなければならない場合があります。共有不動産、借地権、同族会社への貸付金、保証債務、未収金、仮名・借名の口座などは、名義だけで単純に判断できるものではありません。

相続税申告の品質は、この入口の財産把握によって、大きく左右されます。

みなし相続財産とは何か

みなし相続財産とは、民法上の遺産そのものではない場合でも、相続税法上は相続や遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象になる財産です。

代表的なものは、死亡保険金と死亡退職金です。

みなし相続財産は、次のように捉えると理解しやすくなります。

被相続人の死亡をきっかけとして特定の人が経済的利益を受けるため、相続税の計算上は、相続等によって取得した財産と同じように扱うもの。

ここで意識しておきたいのは、「遺産分割の対象かどうか」と「相続税の課税対象かどうか」を分けて考える、ということです。

生命保険金は、受取人が指定されている場合、民法上は受取人固有の財産として扱われることが多く、遺産分割協議の対象に入れないことがあります。しかし、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続税ではみなし相続財産として扱われます。

この違いを見落とすと、「遺産分割協議書に載せていないから、相続税申告にも載せない」という誤りが生じてしまいます。

死亡保険金は、保険料負担者・受取人・相続人該当性を確認する

死亡保険金は、相続税申告のなかでも、特に確認が必要な財産です。

国税庁は、被相続人の死亡によって取得した生命保険金や一定の損害保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続等により取得したものとみなされ、相続税の課税対象になるとしています。

出典:国税庁|No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

死亡保険金を見るときは、少なくとも次の4点を確認します。

確認項目見るべき内容
被保険者誰の死亡により保険金が支払われる契約か
保険料負担者実際に保険料を負担していたのは誰か
契約者保険契約上の契約者は誰か
受取人死亡保険金を受け取る人は誰か

相続税で特に重要になるのは、契約者の名義だけではなく、保険料を実際に負担していた人です。

契約者が子であっても、実際には親が保険料を負担していた場合には、課税関係が変わることがあります。反対に、契約者が被相続人であっても、保険料の負担実態に別の事情があるときには、改めて確認が必要です。

また、死亡保険金には非課税限度額があります。

死亡保険金の受取人が相続人である場合、すべての相続人が受け取った死亡保険金の合計額について、次の金額までが非課税とされます。

500万円 × 法定相続人の数

ただし、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、この非課税の適用はありません。また、相続を放棄した人や相続権を失った人は、この非課税枠の適用上の「相続人」には含まれません。

出典:国税庁|No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

こうした点を踏まえると、死亡保険金については、次のような短絡的な判断を避ける必要があります。

誤解正しい整理
生命保険金はすべて非課税である非課税になるのは一定の限度額までであり、相続人以外の取得には非課税枠がない
遺産分割協議書に載せないから相続税申告にも不要民法上の遺産分割の対象外でも、相続税上のみなし相続財産になることがある
契約者名義だけ見れば課税関係が分かる保険料負担者、受取人、契約者変更履歴を確認する必要がある
保険金は納税資金として常に有効である受取人が誰かによって、納税資金として使える人が変わる

生命保険は、相続税の非課税枠だけでなく、納税資金、代償分割、特定の相続人への資金確保、遺産分割の公平感にも関わってきます。

ですから、保険契約を相続対策として活用する場合には、「非課税枠があるから有利」という単純な判断にとどめず、誰が保険金を受け取り、その人がどの税負担や代償金を担うのかというところまで確認しておく必要があります。

死亡退職金は、支給確定の時期と受取人を確認する

死亡退職金もまた、みなし相続財産として重要な財産です。

国税庁は、被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象になるとしています。

出典:国税庁|No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

死亡退職金については、次の点を確認します。

確認項目実務上の意味
支給根拠退職金規程、役員退職慰労金規程、株主総会・取締役会決議など
支給確定の時期死亡後3年以内に支給が確定しているか
受取人相続人が取得するのか、相続人以外が取得するのか
金額の妥当性同族会社の場合、役員退職金の過大性や法人税側の論点も確認する
非課税限度額相続人が取得した場合、500万円×法定相続人の数までの非課税枠を検討する

死亡退職金にも、死亡保険金と同じように、相続人が受け取った部分について一定の非課税限度額があります。

500万円 × 法定相続人の数

ただし、相続人以外の人が取得した死亡退職金には、非課税の適用はありません。

出典:国税庁|No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

同族会社のオーナー経営者が亡くなった場合、死亡退職金は、相続税だけにとどまらず、法人税、会社法、資金繰り、後継者の経営権にまで関係してきます。

会社が退職金を支払えるのか。退職金規程や決議は整っているのか。役員退職金として過大ではないか。受け取った相続人にとって、納税資金として機能するのか。非上場株式の評価や会社の純資産に、どう影響するのか。

こうした複数の視点を、あわせて確認していく必要があります。

非課税財産とは何か

相続税がかからない財産もあります。

国税庁は、相続税がかからない主な財産として、墓地、墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物、一定の公益目的財産、心身障害者共済制度に基づく給付金を受ける権利、一定額までの生命保険金・退職手当金等、一定の公益法人等への寄附財産などを挙げています。

出典:国税庁|No.4108 相続税がかからない財産

主な非課税財産は、次のとおりです。

非課税財産内容注意点
墓地・墓石・仏壇・仏具など日常礼拝の対象となるもの骨とう的価値があるもの、投資対象、商品として保有するものは課税対象になり得る
一定の公益目的財産宗教、慈善、学術その他公益目的事業に確実に使われるもの取得者や使用目的の要件確認が必要
心身障害者共済制度の給付金を受ける権利地方公共団体の条例に基づく一定の給付金制度内容と受給権の性質を確認する
死亡保険金の非課税部分500万円×法定相続人の数まで相続人が取得した死亡保険金に限られる
死亡退職金の非課税部分500万円×法定相続人の数まで相続人が取得した死亡退職金に限られる
国・地方公共団体・一定の公益法人等への寄附財産相続や遺贈で取得した財産を、申告期限までに一定先へ寄附したものなど寄附先、期限、手続、証明書類を確認する

非課税財産で気をつけたいのは、「相続税がかからないのだから、何も確認しなくてよい」というわけではない、という点です。

たとえば死亡保険金や死亡退職金は、非課税限度額を計算するために、誰がいくら受け取ったのか、法定相続人の数はいくつか、相続放棄をした人がいるか、受取人が相続人にあたるかを確認する必要があります。

墓地や仏壇なども、日常礼拝の対象なのか、それとも投資・換金目的の美術品や骨とう品に近いものなのかによって、判断が変わってきます。

非課税財産は、申告から単純に除外する財産ではありません。「なぜ非課税と整理したのか」を、きちんと説明できるようにしておくべき財産です。

生前贈与や相続時精算課税財産も、課税財産の範囲に影響する

相続税の対象を考えるときは、死亡時点の財産だけを見れば足りる、というわけではありません。

被相続人から生前に贈与を受けていた財産のうち、一定のものは、相続税の課税価格に加算されます。

国税庁は、相続、遺贈または相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人から加算対象期間内に暦年課税に係る贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算するとしています。令和6年1月1日以後の暦年課税贈与については、加算対象期間が相続開始前7年以内に延長され、相続開始日ごとに段階的な取扱いが設けられています。

出典:国税庁|No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

また、相続時精算課税を選択して取得した贈与財産は、相続時に相続税の課税価格へ反映されます。令和6年1月1日以後の贈与については、相続時精算課税に係る基礎控除の取扱いも含めて確認が必要です。

出典:国税庁|No.4103 相続時精算課税の選択

したがって、財産範囲を整理する際には、次の履歴確認が欠かせません。

確認すべき贈与履歴実務上の意味
暦年贈与加算対象期間内の贈与が、相続税の課税価格に加算される可能性がある
相続時精算課税贈与時点で終わらず、相続時に精算される
教育資金・結婚子育て資金の一括贈与管理残額が相続税の対象になる場合がある
贈与税の配偶者控除民法上の持戻し、二次相続、小規模宅地等との関係を確認する
名義預金・名義株式そもそも贈与が成立していたか、実質的な所有者を確認する

「すでに贈与したのだから相続財産ではない」と考える前に、その贈与が民法上成立しているか、税務上も説明できるか、相続税の計算に加算されるかを、改めて確認しておく必要があります。

相続税の申告要否は、非課税や特例適用前の確認が必要になる

相続税の申告が必要かどうかを判断するときにも、財産範囲の整理は重要です。

国税庁は、相続税の申告と納税が必要な場合について、相続や遺贈により取得した財産および相続時精算課税適用財産の価額の合計額から債務等を控除し、一定の贈与財産を加算した額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合と説明しています。また、申告期限は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

出典:国税庁|No.4205 相続税の申告と納税

ここで注意したいのは、小規模宅地等の特例などを適用した結果、納税額が出ない場合でも、申告そのものは必要になることがある、という点です。

また、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠を適用する場合も、そもそも受取人、金額、法定相続人の数、相続放棄の有無を確認しておかなければなりません。

申告要否を判断するときは、次の順番で考えていくと、整理しやすくなります。

  1. 本来の相続財産を洗い出す
  2. みなし相続財産を確認する
  3. 非課税財産を区分する
  4. 債務・葬式費用を確認する
  5. 生前贈与の加算対象を確認する
  6. 特例適用前の課税価格が基礎控除を超えるか確認する
  7. 特例・税額控除を適用した後の納税額を確認する

この順番を飛ばして、「預金と不動産だけをざっと足したら基礎控除以下だった」と判断してしまうのは、危険です。

税務調査で見られやすい、財産範囲の論点

相続税の税務調査では、財産範囲の漏れが、重要な確認対象になります。

なかでも問題になりやすいのは、次のような財産です。

論点確認されやすい内容
名義預金資金の原資、通帳・印鑑の管理、入出金の意思決定者、贈与契約・贈与税申告の有無
死亡直前の出金出金の目的、現金残高、葬儀費用・医療費等への使用状況
生命保険金保険料負担者、契約者変更履歴、受取人、非課税枠の適用可否
死亡退職金支給確定の時期、退職金規程、受取人、同族会社での決議・支払原資
家族・同族会社への貸付金金銭消費貸借契約、返済状況、回収可能性、会社帳簿との整合性
未収金・還付金未収家賃、未収報酬、税金の還付金、配当金・利息
海外財産海外口座、外国証券、国外不動産、外貨換算資料
デジタル資産ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネー、ポイント

相続税申告では、財産を「知っている範囲で書く」のではなく、合理的な方法で調査し、その結果をきちんと説明できるようにしておくことが大切です。

特に、家族が長年管理していた預金、被相続人が高齢期に家族へ移した資金、保険契約者の変更、同族会社への貸付金などは、申告後に説明を求められる可能性があります。

財産範囲を整理するときの実務チェック視点

相続税の課税財産・非課税財産・みなし相続財産を整理するときは、次の視点で確認していくと、漏れを防ぎやすくなります。

1. 名義ではなく実質を確認する

預金や有価証券は、名義だけで判断しないことが重要です。

資金を出した人は誰か。管理していた人は誰か。名義人は自由に使えたのか。贈与契約や贈与税申告はあるのか。収益や配当は誰に帰属していたのか。

こうした点を確認したうえで、実質的に誰の財産なのかを整理していきます。

2. 遺産分割の対象外でも、相続税の対象にならないとは限らない

生命保険金や死亡退職金は、遺産分割協議書に記載されないことがあります。

しかし、相続税上はみなし相続財産となる場合があります。

「分割の対象ではないから申告不要」という判断は避け、税務上の取扱いを別途確認しておきます。

3. 非課税財産は、非課税の理由を説明できるようにする

墓地、仏壇、仏具などは非課税財産になり得ますが、似たような資産がすべて当然に非課税になるわけではありません。

日常礼拝の対象か。骨とう的価値があるか。投資目的か。事業用・商品として所有していないか。

非課税と判断した根拠は、資料やメモとして残しておくことが望ましいといえます。

4. 生前贈与は「渡した事実」と「相続税への戻り」を分けて確認する

生前贈与については、次の2段階で考えます。

まず、贈与が本当に成立していたか。次に、成立していたとしても、相続税の課税価格に加算されるか。

贈与契約書、振込記録、贈与税申告、受贈者による管理、使途、収益の帰属などを確認していきます。

5. 申告要否は、特例適用後の納税額だけで判断しない

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使えば、納税額がゼロになることがあります。

しかし、それでも申告が必要な場合があります。

申告要否は、特例適用後の納税額ではなく、課税価格、基礎控除、特例適用の要件、申告要件を踏まえて判断する必要があります。

財産範囲の整理に必要な資料

課税財産・非課税財産・みなし相続財産を整理するには、次の資料を早めに集めておくことが有効です。

資料確認できる内容
戸籍・法定相続情報法定相続人、非課税限度額、基礎控除の前提
遺言書遺贈、受遺者、遺言執行、財産取得者
預貯金通帳・残高証明・取引履歴本来の相続財産、名義預金、死亡直前の出金
証券会社資料上場株式、投資信託、債券、配当・利息
固定資産税課税明細書不動産の所在、評価対象、土地建物の把握
登記事項証明書・公図・測量図権利関係、共有持分、地積、評価単位
保険証券・支払通知書死亡保険金、契約者、受取人、保険料負担者
退職金規程・会社決議書類死亡退職金、支給確定の時期、支給根拠
贈与契約書・贈与税申告書生前贈与、贈与加算、名義財産の確認
同族会社の決算書・申告書・内訳書非上場株式、役員貸付金、退職金、土地貸付
借入金・未払金資料債務控除、納税資金、限定承認・放棄の判断
葬儀費用資料控除対象となる葬式費用の確認
海外口座・国外財産資料国際相続、外貨換算、外国税額控除の検討

資料が不足している場合でも、すぐに結論を出すのではなく、何が不足しているのか、それがどの論点に影響するのかを整理しておくことが大切です。

相続税の財産範囲は、税額だけでなく家族の納得にも影響する

課税財産・非課税財産・みなし相続財産の整理は、相続税額を計算するためだけの作業ではありません。

たとえば生命保険金は、受取人固有の財産として扱われることが多い一方で、相続税ではみなし相続財産になります。受取人だけが多額の保険金を受け取り、ほかの相続人が不公平感を抱くこともあります。

名義預金も同様です。ある子名義の預金について、本人は「親からもらったもの」と考えていても、ほかの相続人や税務署から見れば、被相続人の財産ではないかと問題になる場合があります。

死亡退職金も、会社の後継者、配偶者、ほかの相続人、会社の資金繰りといった関係のなかで、単なる税務処理にとどまらない広がりを持ちます。

ですから財産範囲の整理では、次の3つを同時に考えていく必要があります。

視点確認すべきこと
税務課税対象か、非課税か、みなし相続財産か、贈与加算があるか
法務遺産分割の対象か、受取人固有財産か、遺留分・特別受益との関係はどうか
家族・資金誰が取得し、誰が納税し、ほかの相続人にどう説明できるか

相続税申告を「税額を出す作業」としてだけ進めてしまうと、家族間の納得感、納税資金、税務調査での説明可能性が、どうしても後回しになりがちです。

財産範囲の整理は、相続全体の土台になるものです。

課税財産・非課税財産・みなし相続財産の判断に不安がある方へ

相続税の対象財産は、被相続人名義の財産を一覧にするだけでは、整理しきれません。

生命保険金、死亡退職金、名義預金、家族名義の有価証券、同族会社への貸付金、過去の贈与、相続時精算課税、海外口座、デジタル資産などがある場合には、申告要否や税額に大きな影響が生じます。

また、非課税財産やみなし相続財産は、遺産分割、納税資金、二次相続、家族間の公平感にも関わってきます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、相続税申告や相続対策の初期段階で、財産範囲、課税関係、資料の不足、税務調査リスクを整理し、後から説明できる申告・承継の判断につなげる支援を行っています。

「相続税の対象に含めるべき財産が分からない」 「生命保険金や退職金をどう扱うべきか確認したい」 「家族名義の預金や過去の贈与が、税務調査で問題にならないか不安」 「申告が必要かどうか、早い段階で整理したい」

このような場合は、財産資料、保険資料、預金履歴、贈与履歴、戸籍関係、遺言書、同族会社資料などを整理したうえで、当事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

財産範囲を早めに確認しておくことは、申告漏れを防ぐだけでなく、家族に説明できる相続を進めるための、大切な一歩になります。

重要事項の振り返り

項目押さえるべきポイント
民法上の遺産と相続税上の課税財産完全には一致しない。遺産分割の対象外でも、相続税の対象になる財産がある
本来の相続財産現金、預貯金、不動産、有価証券、貸付金、著作権など、金銭に見積もれる経済的価値のある財産
みなし相続財産死亡保険金、死亡退職金など、死亡を契機に取得する経済的利益で、相続税法上課税対象となるもの
死亡保険金被相続人が保険料を負担していた場合、相続税の対象。相続人が受け取る場合は500万円×法定相続人の数まで非課税枠あり
死亡退職金死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金等は、みなし相続財産として課税対象になり得る
非課税財産墓地・墓石・仏壇・仏具、一定額までの死亡保険金・死亡退職金、一定の公益目的財産など
非課税財産の注意点骨とう的価値、投資目的、商品としての保有などがある場合は、非課税とは限らない
名義財産家族名義でも、資金の原資・管理状況によっては、被相続人の財産と判断される可能性がある
生前贈与加算対象期間内の暦年贈与や相続時精算課税財産は、相続税の計算に影響する
申告要否特例適用後の納税額だけで判断しない。課税価格、非課税、贈与加算、基礎控除を順に確認する
税務調査対策財産を拾うだけでなく、なぜ課税・非課税・対象外と判断したのかを説明できる資料を残す
実務上の本質財産範囲の整理は、税額計算だけでなく、遺産分割、納税資金、家族間の納得、申告後の説明可能性に直結する
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