仮装経理・粉飾決算と節税判断|利益を多く見せた過去処理をどう整理するか

「昔、銀行対策で少し売上を多めに計上したことがある」

「本当は赤字だったが、黒字決算にして法人税もきちんと払った。税金を多く払っているのだから、税務上は問題ないのではないか」

「今期の利益で過去の粉飾を消せば、税務上も損金にできるのではないか」

こうしたご相談は、決して珍しいものではありません。

節税という言葉からは、「利益を少なく見せる処理」が思い浮かびがちです。ところが実務では、その逆、つまり利益を多く見せる処理もまた、深刻な税務問題になります。これが粉飾決算であり、税務の世界では仮装経理として扱われる領域です。

粉飾決算は、税金を少なくする行為ではありません。むしろ、税金を多く払ってしまう処理です。だからこそ、「脱税ではない」「税務署に損はさせていない」と受け止められることがあります。

しかし、この理解は危険です。

仮装経理は、通常の申告誤りとは性質が異なります。会計処理、法人税の減額更正、還付、金融機関対応、過年度修正、税務調査、そしてM&Aや事業承継にまで波及していきます。過去の粉飾をどう消すかを誤れば、税金を払い過ぎた状態が続くだけでは済みません。今後の申告においても、新たな否認リスクを抱え込むことになります。

この記事では、仮装経理・粉飾決算を「過去の悪い処理」として片付けてしまうのではなく、税務・会計・資金繰り・信用の問題として、どの順番で整理していくべきかをお話しします。

目次

仮装経理・粉飾決算とは何か

粉飾決算とは、会社の経営成績や財政状態を実態より良く見せるために、会計処理基準や事実に反して利益や純資産を過大に表示する処理を指します。税務の場面では、これが仮装経理という言葉で問題になります。会計処理基準や事実に反して故意に利益を計上し、経営成績や財務状態を都合のよい姿に変えるもの、と整理していただくとよいでしょう。

典型例を挙げると、次のようなものです。

粉飾の方法決算書上の見え方実態
架空売上を計上する売上・売掛金が増える実際の取引はない
売上を前倒し計上する当期利益が増える収益認識時期が早過ぎる
期末棚卸を水増しする売上原価が減り利益が増える実在しない在庫、過大評価の在庫がある
本来費用処理すべき支出を資産計上する費用が減り資産が増える回収可能性や資産性が乏しい
貸倒れ・減損・評価損を計上しない資産が維持され利益が増える実質的には価値が低下している
債務や未払費用を計上しない負債が少なく利益が増える実際には支払義務がある
関係会社取引で利益を付け替える特定会社だけ利益が出ているグループ全体では実態が伴わない

粉飾決算の目的は、税金ではなく、外部への見せ方にあることが多いものです。

たとえば、銀行融資を継続したい、借入条件を悪化させたくない、公共工事の経営事項審査で不利になりたくない、取引先に信用不安を持たれたくない、補助金・許認可・入札資格を維持したい、あるいはM&Aや事業承継の前に会社を良く見せておきたい、といった事情です。

ただ、どのような事情があったとしても、実態のない利益を計上することは、会計上も税務上も安全な処理にはなりません。

「税金を多く払っているから問題ない」は誤り

粉飾決算について、経営者の方が最初に誤解されやすいのが、まさにこの点です。

利益を多く見せれば、その分だけ法人税も多く払うことになります。税務署からすれば税収が増えているように見えるため、「税務上は問題にならないのではないか」と考えてしまうのです。

しかし、仮装経理は、単なる税額の過大とは違います。

通常、申告書の計算に誤りがあり、税金を多く申告していた場合には、更正の請求や税務署長による減額更正によって是正される可能性があります。ところが、過大申告の原因が「事実を仮装して経理したところ」にある場合には、通常の過大申告とは異なる制限が法人税法上設けられています。

法人税法第129条は、確定申告書に記載された所得金額が本来の課税標準となるべき所得金額を超えており、その超える金額のうちに事実を仮装して経理したものがある場合について定めています。この場合、法人が後続事業年度でその事実に係る修正の経理をし、かつ、その修正経理をした事業年度の確定申告書を提出するまでの間、税務署長は更正をしないことができる、という取り扱いです。
出典:e-Gov法令検索|法人税法
出典:国税不服審判所|平17.2.24裁決、裁決事例集No.69 186頁

つまり、粉飾によって税金を多く払っていたとしても、会社が後から「本当は利益がなかったので返してください」と言えば、すぐに減額更正や還付が受けられるわけではないのです。

ここが、通常の申告誤りと大きく違うところです。

仮装経理の税務上の基本構造

仮装経理がある場合の税務上の流れは、一般的に次のように整理できます。

段階内容実務上の注意点
第1段階粉飾した事業年度で過大な所得・税額を申告架空売上、在庫水増し等により法人税を多く納付している
第2段階後続事業年度で修正経理を行う会計上、粉飾部分を消す処理が必要
第3段階修正経理をした事業年度の確定申告書を提出修正経理損をそのまま当期損金にする処理とは別問題
第4段階粉飾した過年度について減額更正を求める更正可能期間、証拠資料、仮装経理該当性を確認
第5段階減少税額の控除・還付を整理する直ちに全額還付されるとは限らない
第6段階金融機関・株主・後継者等への説明を行う税務だけでなく信用管理の問題になる

国税庁は、法人税法第135条第4項等に基づく仮装経理法人税額等の還付を請求する手続を案内しています。これは、当該事実が生じた日以後1年以内に提出する手続とされています。
出典:国税庁|C1-54 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額・地方法人税額の還付の請求

また、公表されている裁決事例では、仮装経理に基づく過大申告額の是正について、法人がまず修正経理をした確定申告書を提出し、その後に税務署長による各事業年度の更正という方法で是正するもの、と整理されています。修正経理をしたからといって、その修正損が直ちに当期の損金や繰越欠損金の対象になるわけではありません。この点には、特に注意が必要です。
出典:国税不服審判所|平17.2.24裁決、裁決事例集No.69 186頁

修正経理をすれば、すぐ損金になるわけではない

過去の粉飾を消そうとするとき、とりわけ危ういのが、次のような発想です。

「過去に架空売上を500万円計上した。今期、その売掛金を貸倒損失や雑損失として落とせばよい」

「過去に在庫を水増ししていた。今期に棚卸廃棄損として処理すればよい」

「過去の費用を資産計上していた。今期に除却損として落とせばよい」

これらの処理は、実態に合っていない可能性があります。

架空売上によって計上された売掛金は、そもそも実在する債権ではありません。実在した債権が回収不能になったわけではないため、通常の貸倒損失とは性質が違います。

水増しされた棚卸資産についても、実在する在庫が今期に廃棄されたわけではありません。過去に存在しない在庫を計上していたのであれば、今期の棚卸廃棄損として処理してよいのかは、慎重に検討する必要があります。

本来費用だったものを資産にしていた場合も同じです。今期に急に価値がなくなったのか、それとも過年度からそもそも資産性がなかったのかを、切り分けて考えなければなりません。

粉飾の内容安易な処理問題点
架空売上・架空売掛金今期の貸倒損失実在債権の貸倒れではない
在庫水増し今期の棚卸廃棄損今期に実在在庫を廃棄したわけではない
費用の資産計上今期の除却損・償却費過年度の費用処理誤りである可能性
債務未計上今期の費用計上いつ債務が確定していたかが問題
関係会社利益付替え今期の値引き・返金取引実態と契約関係の整理が必要

修正経理は、粉飾を「今期の損失に置き換える処理」ではありません。

過年度に何を仮装したのか。その仮装が、どの事業年度の所得をいくら過大にしたのか。現在の会計上はどう消すのか。そして、税務上その損失を当期に認識できるのか。これらを分けて考える必要があります。

粉飾決算と利益圧縮は、税務上のリスクが反対方向に出る

粉飾決算は、利益を多く見せる処理です。これに対して、税金を減らす目的で利益を少なく見せる処理もあります。

両者は、外から見ればどちらも「実態と違う決算」です。しかし、税務上の問題の出方が正反対になります。

区分目的典型例税務上の主な問題
粉飾決算・仮装経理利益・純資産を良く見せる架空売上、在庫水増し、費用資産化過大申告、減額更正制限、還付制限、金融機関対応
利益圧縮・逆粉飾税金を減らす売上除外、架空外注費、経費水増し過少申告、重加算税、青色取消、脱税リスク
通常の誤り意図せず処理を誤る計上時期誤り、区分誤り、計算誤り修正申告、更正の請求、加算税の検討
会計上の見積り差異合理的見積りの変更貸倒引当、棚卸評価、減損判断判断根拠と資料の妥当性

売上除外や架空外注費のように、所得を少なくする処理は、税務調査で過少申告として問題になります。帳簿書類への虚偽記載や資料の改ざんがある場合には、重加算税の対象となり得ます。

一方、利益を多く見せる粉飾は、過大申告の問題です。しかし、過大に納めた法人税をすぐに取り戻せるとは限らず、会計と税務の両面で整理が求められます。

実務では、粉飾決算のなかに過少申告要因が混ざっていることがあります。たとえば、架空売上で利益を増やしている一方、棚卸計上漏れや経費処理の誤りによって税額が少なくなっている、といったケースです。この場合、粉飾部分を当然に過少申告部分と相殺できるわけではありません。粉飾による過大申告部分は、一定の要件を満たすまで減額更正の対象とせず、通常の過少申告部分だけを是正する、という実務判断が問題になります。

税務調査で見られるポイント

税務調査では、粉飾決算も利益圧縮も、帳簿、原始資料、資金移動、取引実態の整合性から検証されます。

粉飾決算で特に見られやすいのは、次の項目です。

調査ポイント見られる資料
売上の実在性契約書、注文書、納品書、検収書、請求書、入金記録
売掛金の回収可能性入金予定表、督促記録、残高確認、相手先の実在
棚卸資産の実在性棚卸表、実地棚卸記録、倉庫資料、仕入・販売履歴
原価との対応売上に対応する仕入、外注費、労務費、工事原価
資産計上の妥当性見積書、契約書、稟議書、事業供用、資産性の説明
未払債務の網羅性請求書、支払予定、契約、締後請求、翌期支払
関係会社取引契約、価格設定、役務提供、資金移動、決裁資料
役員・親族との取引議事録、契約書、時価、資金の流れ、私的流用の有無

法人は、帳簿を備え付けて取引を記録し、帳簿や取引等に関して作成・受領した書類を、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。青色繰越欠損金が生じた事業年度等では、10年間の保存が必要となる場合もあります。
出典:国税庁|No.5930 帳簿書類等の保存期間

粉飾決算を整理する場面では、この帳簿保存期間の問題も重要になります。粉飾が古い年度に及んでいる場合、資料が残っていないために、金額、原因、時期、責任者、取引実態を説明できないことがあるからです。

この状態で「昔の粉飾だから今期に落としたい」と主張しても、税務上も会計上も説明が難しくなります。

金融機関対応は、税務処理より先に整理すべき場合がある

粉飾決算の動機として多いのが、金融機関対応です。

赤字を出すと融資が止まる。債務超過になるとリスケが難しくなる。借入条件に抵触する。新規融資を受けられない。信用保証や経営事項審査に影響する。

こうした事情から、架空売上や在庫水増しに手を出してしまうケースがあります。

しかし、過去の粉飾を修正すると、決算書上には次のような影響が出ます。

修正内容決算書への影響
架空売上の取消し利益剰余金の減少、売掛金の減少
在庫水増しの取消し棚卸資産の減少、利益剰余金の減少
架空資産の除却資産・純資産の減少
簿外債務の計上負債の増加、純資産の減少
過年度修正損の計上当期損益または利益剰余金への影響
税務上の減額更正税金資産・控除・還付の整理

その結果、実態ベースでは債務超過になる、自己資本比率が大きく悪化する、借入契約上の報告義務が問題になる、金融機関から追加説明を求められる、といったことが起こり得ます。

ですから、粉飾の修正にあたって、税務申告だけを先に動かすのは避けるべきです。

少なくとも、次の資料を準備したうえで、金融機関対応を考える必要があります。

準備すべき資料内容
粉飾額の一覧年度別、勘定科目別、原因別の金額
実態貸借対照表粉飾を除いた資産・負債・純資産
実態損益計算書本来の売上、原価、利益
資金繰り表修正後も返済可能か
納税・還付見込み法人税、消費税、地方税、附帯税
再発防止策承認フロー、帳簿整備、月次管理、専門家レビュー
今後の経営計画粉飾修正後の収益改善、返済計画、資本政策

金融機関に対して、「粉飾がありました」とだけ伝えるのでは足りません。

いつから、どの勘定で、いくら、なぜ発生したのか。修正後の実態財務はどうなるのか。今後の返済原資は何か。再発防止策は何か。税務上はどのように是正するのか。

ここまで整理して、はじめて説明可能な状態になります。

M&A・事業承継では、粉飾は後から必ず問題になる

粉飾決算は、会社の売却や事業承継の場面で、大きな障害になります。

M&Aでは、買い手が財務・税務デューデリジェンスを行います。売掛金の回収可能性、棚卸資産の実在性、売上計上時期、関係会社取引、簿外債務、税務リスクは、重点的に確認される項目です。

粉飾があると、次のような問題が生じます。

M&Aでの影響内容
企業価値の減額EBITDA、純資産、運転資本が修正される
表明保証違反財務諸表の正確性に関する違反となり得る
補償条項粉飾に起因する損害・税務負担の補償対象になり得る
クロージング条件修正決算、金融機関同意、税務整理が条件になる
取引中止信頼性の問題として買い手が撤退する可能性
税務DD指摘仮装経理、過少申告、還付制限、附帯税が論点になる

事業承継でも、事情は変わりません。

後継者が会社を引き継ぐとき、過去の粉飾を知らないまま承継してしまうと、後継者は架空資産、過大な利益剰余金、実態と合わない借入条件を、そのまま背負うことになります。

「先代の時代の処理だから」と言ったところで、会社の帳簿に残っている限り、将来それを説明する立場に立たされるのは後継者です。

事業承継の前には、少なくとも次の確認が欠かせません。

承継前の確認事項目的
実態純資産の把握架空資産・簿外債務を除いた会社価値を確認
税務リスクの棚卸し修正申告、更正の請求、仮装経理の有無を確認
金融機関借入の確認返済可能性、保証、担保、財務制限条項を確認
役員貸付金・借入金オーナー取引と粉飾の関係を確認
後継者への説明将来の経営判断に耐える情報開示
資本政策債務超過、増資、DES、債権放棄等の可能性

粉飾を隠したまま承継することは、後継者にとって大きなリスクになります。

「仮装経理か、単なる誤りか」を分ける

過去の処理を整理するとき、すべての誤りを仮装経理と決めつける必要はありません。

実務上は、次のように切り分けていきます。

区分典型例判断の方向
仮装経理架空売上、実在しない在庫、意図的な費用資産化修正経理、減額更正制限、金融機関対応を検討
会計処理の誤り収益認識時期、棚卸評価、減価償却、引当金通常の修正申告・更正の請求を検討
見積りの変更貸倒見積り、減損兆候、棚卸評価損当期処理か過年度誤謬かを検討
判断の相違修繕費か資本的支出か、売上時期の解釈資料・基準・専門家判断を整理
利益圧縮の不正売上除外、架空外注、資料改ざん過少申告、重加算税、青色取消等を検討

仮装経理に当たるかどうかを判断するうえでは、次の視点が重要になります。

判断視点確認内容
事実と違う処理か実在しない売上・資産・取引を計上していないか
意図があったか赤字回避、融資維持、入札資格維持等の目的があったか
原始資料との整合性契約書、納品書、入金記録、棚卸表と一致するか
経営者・経理担当者の認識誰が、いつ、どのように指示したか
継続性一時的ミスか、複数年度にわたる処理か
外部説明金融機関、株主、税務署にどう説明していたか
修正方法当期損失で処理できるのか、過年度修正が必要か

「昔のことだから分からない」で終わらせるのではなく、どこまで資料で確認できるのかを明確にすることが大切です。

過去の粉飾を整理する実務手順

粉飾の疑いがある場合、いきなり修正申告や更正の請求を検討するのではなく、次の順番で進めていきます。

1. まず資料を保全する

過去の帳簿、総勘定元帳、補助元帳、決算書、申告書、勘定科目内訳書、銀行提出資料、借入契約、棚卸資料、請求書、契約書、稟議書を保全します。

電子取引データや電子帳簿については、電子帳簿保存法上の保存制度にも注意が必要です。国税庁は、電子帳簿保存法について、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存、スキャナ保存、電子取引情報の電磁的記録の保存に関する情報を案内しています。
出典:国税庁|電子帳簿・電子書類関係

2. 粉飾の種類を分類する

年度別、勘定科目別、処理別に整理していきます。

年度勘定科目粉飾内容金額根拠資料税務影響
X1期売掛金・売上架空売上500万円請求書のみ、契約・納品なし所得過大
X2期棚卸資産在庫水増し800万円実地棚卸と不一致所得過大
X3期建物附属設備費用資産化300万円修繕工事の内容確認要償却・損金時期
X4期未払金債務未計上200万円翌期支払あり所得過大または過少

3. 実態ベースの財務諸表を作る

粉飾を除いた貸借対照表と損益計算書を作成します。

ここでの目的は、税務申告用の数字ではなく、まず実態を把握することにあります。

項目表示上の金額粉飾修正実態金額
売掛金3,000万円△500万円2,500万円
棚卸資産2,000万円△800万円1,200万円
固定資産5,000万円△300万円4,700万円
未払金700万円+200万円900万円
純資産2,500万円△1,800万円700万円

この作業を通じて、粉飾修正後も債務超過ではないのか、金融機関への返済に耐えられるのか、事業承継やM&Aでどの程度の影響が出るのかが、見えてきます。

4. 会計上の修正方法を検討する

会計上、過年度誤謬として扱うのか、当期の損益として扱うのか、それとも利益剰余金を修正するのか。これは、会社の規模、適用している会計基準、監査の有無、重要性、関係者への報告体制によって、検討が必要になります。

中小企業であっても、単に「前期損益修正損」として処理すれば足りるとは限りません。金融機関提出用、株主説明用、税務申告用で、それぞれ数字の整合性を保つ必要があります。

5. 税務上の処理を検討する

税務上は、次の論点を整理していきます。

税務論点確認事項
仮装経理該当性事実を仮装して経理したものか
対象年度どの事業年度の所得が過大になったか
金額仮装経理に基づく過大申告額はいくらか
更正可能期間減額更正が可能な期間内か
修正経理後続年度の確定決算で修正しているか
確定申告修正経理した年度の申告書を提出しているか
法人税額控除・還付法人税法70条・135条等の適用関係
地方税法人住民税・事業税の取扱い
消費税架空売上・架空仕入が消費税に影響していないか
附帯税過少申告要因が混在する場合の加算税・延滞税

6. 金融機関・株主・後継者への説明を設計する

粉飾の修正は、税務署にだけ説明すればよい問題ではありません。

金融機関、株主、後継者、M&Aの買い手、主要取引先に対して、どの範囲で、どのタイミングで、どの資料を使って説明するのか。これを設計しておく必要があります。

説明を先送りすると、修正後の決算書と過去に提出した資料との不一致が残り、かえって信用を損なうことにもなりかねません。

粉飾を消すときに避けるべき対応

過去の粉飾に気づいたとき、次のような対応は危険です。

避けるべき対応なぜ危険か
今期の損失として一括処理する過年度の仮装経理を当期損金に付け替えることになる
税務署には説明せず、決算書だけ直す申告書との整合性が崩れる
金融機関には説明せず、税務だけ直す過去提出資料との不一致が残る
架空売掛金を貸倒損失にする実在債権の貸倒れではない
在庫水増しを棚卸廃棄損にする実在在庫の廃棄ではない可能性がある
粉飾額を役員貸付金に振り替える実際の資金移動がなければ別の仮装になる
後継者に説明しない将来の承継・M&A・調査で問題が顕在化する
税理士に一部資料だけ見せる判断の前提が欠け、税務リスクが残る

粉飾は、隠したまま消すことはできません。

正しく消すためには、事実を特定し、数字を復元し、会計上の修正と税務上の是正を分けたうえで、関係者に説明できる状態を作る必要があります。

仮装経理と重加算税の関係

仮装経理という言葉には「仮装」が含まれるため、すぐに重加算税を連想されるかもしれません。

しかし、ここは整理が必要です。

利益を多く見せる粉飾決算は、法人税を過大に申告しているものです。したがって、その粉飾部分だけを見れば、通常は税額を少なく申告した問題ではありません。

一方で、同じ会社のなかに、売上除外、架空外注費、資料改ざん、私的流用、簿外資金の役員還流などがあれば、過少申告や重加算税の問題が生じ得ます。

状況主な税務リスク
架空売上で利益を増やした仮装経理、過大申告、減額更正制限
売上除外で利益を減らした過少申告、重加算税
架空外注費を計上した損金否認、消費税否認、重加算税
納品書・契約書の日付を改ざんした隠蔽・仮装、重加算税
粉飾を消すためにさらに虚偽処理をした新たな仮装経理または過少申告リスク
簿外資金を役員に流した役員賞与、源泉税、重加算税

重加算税は、単なる誤りではなく、課税標準等または税額等の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装した場合に問題になります。粉飾決算の処理を検討するときは、「過大申告の是正」と「過少申告・隠蔽仮装の有無」を、分けて検討する必要があります。

粉飾決算を整理する前に確認すべきチェックリスト

過去の粉飾が疑われる場合、次の資料と論点を整理してください。

確認項目内容
対象年度いつから粉飾が始まり、いつまで続いたか
発生原因融資、入札、経審、株主対応、業績評価、M&A等
勘定科目売上、売掛金、棚卸、固定資産、未払金、借入金等
金額年度別・科目別の粉飾額
指示者経営者、経理責任者、外部関係者の関与
原始資料契約書、請求書、納品書、棚卸表、通帳、稟議書
申告書法人税、地方法人税、消費税、地方税
納税額過大納付、過少申告、附帯税の可能性
修正経理どの年度でどのように修正するか
金融機関資料過去に提出した決算書、試算表、資金繰り表
会社法対応計算書類、株主総会、取締役責任、説明資料
将来影響M&A、事業承継、借入、保証、株価評価
再発防止月次決算、承認権限、外部レビュー、資料保存

このチェックリストを埋めていくだけでも、単なる「過去の処理ミス」なのか、それとも税務・会計・金融機関対応を伴う重大な論点なのかが、見えてきます。

粉飾決算の修正は、節税ではなく会社を守る作業である

過去の粉飾を修正すると、一時的には厳しい数字が出ます。

利益剰余金が減る。純資産が減る。債務超過が見える。金融機関に説明が必要になる。後継者や株主にも説明が必要になる。

そのため、粉飾を消すことを先送りしたくなる気持ちは、よく分かります。

しかし、粉飾決算は、時間が経つほど処理が難しくなっていきます。資料が失われ、担当者が退職し、金融機関提出資料との差異が広がり、後継者が実態を把握できなくなる。M&Aの直前や税務調査の最中に発覚すれば、選択肢は大きく狭まってしまいます。

節税判断の本質は、税金を減らすことだけにあるのではありません。

実態と資料が一致しているか。資金の流れを説明できるか。税務調査で守り切れるか。金融機関や後継者に説明できるか。そして、将来の選択肢を残せるか。

この観点から見れば、粉飾決算を放置することは、節税以前の問題だと言えます。

まとめ|仮装経理・粉飾決算で振り返るべき重要事項

論点実務上のポイント
粉飾決算とは実態より利益・純資産を良く見せる処理
税務上の位置づけ仮装経理として通常の過大申告とは別に扱われる
税金を多く払っている場合直ちに還付されるとは限らない
法人税法129条修正経理とその年度の確定申告書提出まで減額更正が見送られ得る
修正経理粉飾を会計上正す処理だが、当期損金処理とは別問題
法人税額の控除・還付法人税法70条・135条等の適用関係を確認する
架空売掛金通常の貸倒損失として処理できるとは限らない
在庫水増し今期の廃棄損ではなく過年度粉飾の修正として整理する
粉飾と過少申告の混在粉飾部分と過少申告部分は当然に相殺できない
重加算税売上除外、資料改ざん、架空外注等があれば別途問題になる
金融機関対応実態財務、資金繰り、再発防止策を準備して説明する
M&A・事業承継粉飾はデューデリジェンスや後継者説明で重大論点になる
資料保存帳簿・契約・請求書・棚卸資料・金融機関提出資料の保全が重要
専門家相談税務、会計、金融機関対応を同時に整理する必要がある

過去の粉飾・仮装経理をどう整理すべきか迷っている方へ

仮装経理・粉飾決算は、「昔の処理を直すだけ」の問題ではありません。

どの年度に、どの勘定科目で、いくら粉飾があったのか。それは仮装経理なのか、それとも通常の誤りなのか。会計上どう修正するのか。税務上、減額更正や還付を求められるのか。今期の損金にしてよいのか。金融機関や後継者にどう説明するのか。M&Aや事業承継の前に、どこまで整理しておくべきか。

これらを分けて整理しないまま処理を進めてしまうと、粉飾を解消するつもりが、かえって新たな税務リスクや信用問題を生むことにもなりかねません。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、過去の粉飾決算、仮装経理、架空売上、在庫水増し、過年度修正、減額更正、金融機関対応、M&A・事業承継前の財務整理について、会計と税務の両面から論点を整理します。

過去の決算に不安を抱えている方、粉飾を修正したいものの税務処理や金融機関対応に迷っている方、後継者や買い手に説明できる状態へ整えておきたい方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、ぜひご相談ください。

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