取消事由・免除事由・出口対応|事業承継税制を使う前に確認すべき将来リスクの論点地図

事業承継税制を検討するとき、まず関心が向くのは、贈与税や相続税の納税猶予によって当面の納税負担をどこまで抑えられるか、という点でしょう。

ただ、実務の判断としては、それだけでは足りません。

事業承継税制は、非課税制度ではありません。一定の要件を満たしている間、贈与税・相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等の一定事由によって免除される制度です。国税庁も、法人版事業承継税制について、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与や相続等により取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等により納付が免除される制度である、と説明しています。
出典:国税庁|法人版事業承継税制

つまり、この制度を使うということは、税負担そのものを消すことではありません。将来にわたって制度の要件を守り続けることを前提に、税務上の猶予を受ける、ということです。

後継者が代表を退く。対象株式を譲渡する。議決権要件を満たせなくなる。資産管理会社に該当してしまう。報告や届出を怠る。会社を売却し、再編し、あるいは廃業する。こうした場面では、猶予されていた税額の全部または一部について、納付が必要になることがあります。

第10テーマで扱うのは、事業承継税制の「出口」です。

ここでいう出口とは、制度が終わる場面だけを指すものではありません。制度を維持できなくなる場面、猶予税額が免除される場面、売却・M&A・組織再編・解散・清算といった将来の経営判断が制度に影響する場面、さらには取消後に相続税・贈与税・所得税・法人税へ波及する場面まで含みます。

事業承継税制の適用を判断する前に、このテーマを読む意味ははっきりしています。

「使えるか」だけでなく、「将来、どのような経営判断をしたときに、どの税務リスクが生じるか」を把握しておくためです。

このテーマで理解できること

第10テーマでは、納税猶予の取消、免除、一部納付、利子税、そして売却・廃業・組織再編時の影響を、経営判断と税務判断の両面から整理します。

対象となる主な論点は、次のとおりです。

  • 代表退任、株式譲渡
  • 同族過半・同族内筆頭要件の喪失、黄金株
  • 資産保有型会社・資産運用型会社、報告漏れ
  • 合併・会社分割・株式交換・株式移転、解散・清算、M&Aへの移行
  • 先代死亡・後継者死亡、猶予継続贈与
  • 一部取消、利子税、取消後の複数税目への波及

中小企業庁の認定取消しに関する資料でも、後継者の死亡、代表者の退任、議決権同族過半数要件や同族内筆頭要件の喪失、納税猶予対象株式の譲渡、黄金株、解散、資産保有型会社・資産運用型会社への該当、年次報告の未提出、組織変更、合併、株式交換・株式移転などが、認定取消事由として整理されています。
出典:中小企業庁|第4章 認定の取消しについて

このテーマは、制度への不安を煽るためのものではありません。むしろ逆です。どのような場合に取消・一部納付・免除・再計算が起こり得るのかを、あらかじめ理解しておく。それによって、承継後の経営判断を落ち着いて行えるようにするためのものです。

なぜ「出口」を先に見ておく必要があるのか

事業承継税制は、承継時点の制度適用だけで完結するものではありません。

適用後も、後継者の代表者としての地位、株式の保有、議決権の構成、会社の事業実態、資産構成、年次報告、継続届出、組織再編、そして売却・廃業の可能性まで、継続的に管理していく必要があります。

実務の感覚として、事業承継は単に代表者を交代することではありません。経営権と会社支配を裏付ける株式の移転を伴うものとして整理すべきものです。後継者が経営に専念できるかどうかは、代表者という肩書だけでなく、議決権と株主構成に左右されます。

そのため、出口対応を考えないまま事業承継税制を使うと、次のような問題が後から顕在化します。

  • 後継者の健康状態や経営適性に不安が生じたものの、代表を退けば取消リスクが出てしまう
  • 事業環境が変わり、会社売却や一部事業譲渡を検討したいが、納税猶予への影響が分からない
  • 不動産や有価証券が増え、資産管理会社化のリスクが出てくる
  • 金融機関から再編や事業整理を求められたが、合併・分割・株式交換が猶予税額にどう影響するのかが分からない
  • 会社を畳む可能性があるのに、解散・清算時の納付資金を試算していない
  • 取消後に贈与税・相続税だけでなく、譲渡所得、みなし配当、法人税まで波及することを見落としていた

納税猶予は、資金繰りを助ける制度です。その一方で、将来の会社行動に一定の制約を課すものでもあります。

だからこそ出口は、「適用後に問題が起きたら考えるもの」ではなく、「適用前から比較検討しておくべきもの」なのです。

第10テーマの推奨読書順

第10テーマは、10-1から10-8まで順に読み進めていただくと、取消事由の全体像から、代表退任・株式譲渡、組織再編、廃業、M&A、免除、一部納付、そして取消後の複数税目への波及まで、段階的に理解できる構成になっています。

まず、10-1で納税猶予の取消事由の全体像を確認します。ここで、何が取消リスクになるのかを広く把握しておきます。

次に、10-2で代表退任・株式譲渡・議決権喪失という、日常的な経営判断に近い取消パターンを確認します。

その後、10-3で合併・会社分割・株式交換等の組織再編、10-4で解散・清算・廃業、10-5で売却・M&Aへの移行を読みます。将来の選択肢が制度にどう影響するのかが、ここで見えてきます。

10-6では、先代死亡・後継者死亡・猶予継続贈与など、猶予税額が免除される場面を整理します。

最後に、10-7で一部取消・利子税・納付資金、10-8で取消後の相続税・贈与税・所得税・法人税への波及を確認します。

最初からすべてを読む時間がない場合でも、10-1、10-7、10-8は先に読むことをおすすめします。取消事由、資金負担、複数税目への波及を押さえておけば、制度適用後のリスクの輪郭が見えやすくなるためです。

10-1. 納税猶予の取消事由の全体像

10-1では、事業承継税制における取消事由を俯瞰します。

代表退任、株式譲渡、議決権要件の喪失、資産管理会社化、報告漏れ、解散、組織再編など、納税猶予の継続に影響する主な事由を、全体像として整理します。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「どのような場合に猶予が取り消されるのかを、まず一覧的に理解したい」という方です。

事業承継税制を検討している段階では、どうしても「要件を満たして適用できるか」に目が向きがちです。しかし実際に重要なのは、「適用後に何をしてはいけないのか」「どの行為が税務上の期限確定につながるのか」を把握しておくことです。ここが曖昧なままでは、制度を選択した後の経営判断が不安定になってしまいます。

中小企業庁の認定取消しに関する資料では、贈与税の納税猶予について、先代経営者が再び代表者になった場合、後継者が代表者を退任した場合、議決権同族過半数要件・同族内筆頭要件を満たさなくなった場合、納税猶予対象株式を譲渡した場合などが、事業継続期間内か経過後かに応じて、全部納税・一部納税・免除に整理されています。
出典:中小企業庁|第4章 認定の取消しについて

このコラムは、第10テーマの入口にあたります。まずここで、取消リスクの全体地図を確認してください。

10-2. 代表退任・株式譲渡・議決権喪失による取消

10-2では、取消事由のなかでも、後継者の日常的な経営判断に直結しやすいものを扱います。

後継者が代表を退く場合、対象株式を譲渡する場合、同族関係者で議決権の過半数を維持できなくなる場合、同族内筆頭株主でなくなる場合、後継者以外の者が黄金株を保有する場合などです。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「後継者はいつまで代表でいる必要があるのか」「株式を一部動かした場合、どこまで取消されるのか」「議決権の変動が制度にどう影響するのか」を確認したい方です。

代表退任や株式譲渡は、税務上の特別な行為には見えないかもしれません。後継者の健康、経営の交代、金融機関への対応、親族間の調整、少数株主対策。そうした流れのなかで、ごく自然に検討されることがあります。

しかし、事業承継税制の適用後は、こうした会社運営上の判断が、猶予税額の全部取消または一部取消につながる可能性があります。

経営判断として妥当であっても、制度上の影響を確認しないまま実行してよい、とは限らないのです。

10-3. 合併・会社分割・株式交換等と納税猶予

10-3では、事業承継税制を適用した後の組織再編を扱います。

合併、会社分割、株式交換、株式移転、組織変更、グループ内再編。これらが納税猶予の継続や取消にどう影響するのかを整理します。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「承継後に持株会社化したい」「兄弟会社を整理したい」「不採算事業を分割したい」「グループ内再編を行いたい」とお考えの方です。

組織再編は、事業承継後の経営改善や資本政策として有効に働く場合があります。その一方で、会社法上の手続、法人税法上の適格・非適格の判定、株式評価、株主構成、納税猶予の継続要件が、複雑に絡み合います。

会社分割についても、会社法上は事業に関する権利義務の全部または一部の承継として整理される一方、法人税では分割型分割・分社型分割といった税務上の区分を踏まえて検討する必要があります。

10-3で整理するのは、組織再編スキームそのものの詳細設計ではありません。事業承継税制を適用した後に再編を行う前に、確認しておくべき制度上の境界です。

10-4. 解散・清算・廃業と納税猶予

10-4では、会社を継続できなくなった場合、あるいは将来の廃業可能性がある場合に、事業承継税制へどのような影響が及ぶのかを扱います。

解散、清算、残余財産の分配、事業継続困難、倒産、廃業時の再計算、免除・納付、届出などが主な論点です。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「将来、会社を畳む可能性がある」「後継者はいるが、事業環境の変化が大きい」「廃業や清算を視野に入れながら制度を使ってよいか判断したい」という方です。

清算の実務では、会社財産の調査、財産目録等の作成、債務の弁済、残余財産の分配、清算結了と、会社法・税務の手続が連続します。解散・清算は、単なる事業の終了ではありません。会社財産と株主への分配を整理していく手続です。

事業承継税制は、事業の継続を前提に設計された制度です。そのため、承継の時点で将来の撤退可能性がある会社では、制度適用のメリットだけでなく、解散・清算時の納付資金と手続負担まで検討しておく必要があります。

10-5. 売却・M&Aへ移行する場合の税務上の境界

10-5では、事業承継税制を適用した後に、第三者への売却やM&Aへ移行する場合の、税務上の境界を扱います。

株式譲渡、事業譲渡、譲渡対価による再計算、猶予税額、売却後の納付資金、将来の選択肢への影響が主な論点です。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「いったんは親族内・従業員承継を進めるが、将来的にM&Aもあり得る」「後継者への承継後に第三者売却する可能性がある」「売却時に猶予税額がどうなるかを事前に知っておきたい」という方です。

中小企業庁は、法人版特例措置のポイントとして、将来、事業を売却・廃業する際に株価が下落していた場合には、その株価を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免する仕組みを説明しています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ただし、M&Aそのものの相手探し、企業価値評価、デューデリジェンス、契約交渉、PMIについては、このテーマでは扱いません。10-5で整理するのは、事業承継税制を適用した後に売却へ移行する場合、納税猶予にどのような影響があるか、という点です。

M&Aを具体的に進める段階では、あらためてM&A・企業価値評価の論点として検討する必要があります。

10-6. 先代死亡・後継者死亡・免除事由

10-6では、猶予税額が免除される場面を扱います。

先代の死亡、後継者の死亡、贈与税猶予から相続税猶予への切替え、猶予継続贈与、会社の倒産、一定の譲渡、届出などが主な論点です。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「どのような場合に猶予税額が免除されるのか」「贈与後に先代が死亡した場合の取扱いを知りたい」「二代目から三代目へ承継する場合の、制度上の考え方を確認したい」という方です。

実務では、免除事由は「制度が最終的に有利になる場面」として語られがちです。しかし、免除事由が発生したとしても、その後に相続税課税へ接続する場面、次の後継者への承継が必要になる場面、届出や確認を失念してはならない場面があります。

事業承継税制の実務資料でも、免除事由として、先代経営者の死亡、後継者の死亡、猶予継続贈与、会社の倒産、経営承継期間経過後の一定の譲渡・解散などが整理されています。

10-6は、制度の終わり方を正しく理解するための記事です。取消事由だけでなく、免除事由まで理解しておくことで、事業承継税制の長期的な運用イメージが明確になります。

10-7. 一部取消・利子税・納付資金の考え方

10-7では、取消時にどの程度の資金負担が生じるのかを整理します。

全部取消、一部取消、利子税、納期限、担保、納付資金、会社資金との関係、後継者個人の資金繰りが主な論点です。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「取消時にいくら必要になるのか」「一部譲渡なら、一部だけの納付で済むのか」「利子税や担保はどう考えればよいのか」「納付資金をどこから用意するのか」を確認したい方です。

国税庁は、法人版事業承継税制の継続届出書について、提出がない場合には、猶予されている贈与税・相続税の全額と利子税を納付する必要がある、と案内しています。
出典:国税庁|法人版事業承継税制の適用を受けられている方に~継続届出書の提出について~

取消リスクは、制度上のリスクであると同時に、資金繰りのリスクでもあります。

猶予税額を納める資金が後継者個人にない場合、役員報酬、配当、自己株式取得、会社貸付、役員退職金、資産売却などを検討することがあります。ただし、それぞれが別の税務・会社法・金融機関対応を伴います。

10-7で整理するのは、個別の利子税計算ではありません。取消時に必要となる資金負担を、どう考えるかという視点です。

10-8. 取消後の相続税・贈与税・所得税への波及

10-8では、納税猶予が取り消された後、他の税目へどのように波及していくのかを扱います。

贈与税、相続税、譲渡所得、みなし配当、法人税、関連者課税、自己株式取得、低額譲渡、高額譲渡などが主な論点です。

この詳細コラムを読んでいただきたいのは、「取消後に猶予税額を払えば、それで終わりなのか」「株式譲渡や自己株式取得をした場合、所得税やみなし配当が出るのか」「会社側に法人税や源泉税の問題が生じるのか」を確認したい方です。

取消後の税務は、猶予税額だけでは完結しません。

対象株式を第三者へ売却すれば、譲渡所得の問題が出てきます。発行会社が自己株式として買い取れば、みなし配当や源泉徴収、会社法上の財源規制が問題になります。親族や同族会社へ低額・高額で移転すれば、贈与税・法人税・関連者課税が問題になることがあります。

実務上、株式の異動には、相続・贈与、みなし贈与、売買、時価評価、法人間・個人間の取引、自己株式取得など、複数の課税関係が絡み合います。

10-8は、第10テーマの最後に読んでいただきたい記事です。取消後の税務を、相続税・贈与税だけでなく、所得税・法人税まで横断して確認します。

このテーマを読むときの視点

第10テーマを読むにあたっては、単に「取消されるかどうか」を確認するだけでは不十分です。

次のような視点で読み進めていただくと、自社の判断に引き寄せて理解しやすくなります。

まず、制度適用後に、後継者がどれだけ長く経営を続けられるか。健康、能力、家族関係、社内体制、金融機関との関係が不安定であれば、代表退任や株式移転の可能性を早めに検討しておく必要があります。

次に、株主構成が今後も安定するか。少数株主、名義株、相続人、従業員持株会、種類株式、黄金株などがある会社では、議決権要件の維持が重要になります。

さらに、会社の資産構成が大きく変わる可能性はないか。不動産、有価証券、余剰資金、事業外資産が増える会社では、資産管理会社化のリスクが出てきます。

また、将来の再編・売却・廃業の可能性はどうか。いまは親族内承継を考えていても、10年後にM&Aや清算が必要になる可能性は否定できません。

そして最後に、取消時の納付資金です。取消事由が発生するかどうかだけでなく、発生した場合に誰が、いつ、どの資金で納付するのかを考えておく必要があります。

第10テーマで扱わない範囲

第10テーマでは事業承継税制の出口対応を扱いますが、周辺の論点をすべて詳細に扱うわけではありません。

M&Aの相手探し、企業価値評価、デューデリジェンス、基本合意書、最終契約、表明保証、PMIについては、M&A領域の詳細テーマに委ねます。

組織再編税制の詳細な適格要件の判定、合併比率・分割比率の算定、再編スキームの設計は、組織再編・資本政策の詳細テーマに委ねます。

清算申告、破産手続、特別清算、事業再生計画の詳細は、解散・清算・事業再生の専門領域に委ねます。

また、個別案件における猶予税額、利子税、譲渡所得、みなし配当、法人税の具体的な計算については、本テーマトップや各コラムの一般解説ではなく、個別相談のなかで会社資料に基づいて検討する必要があります。

このテーマを読む前に整理しておきたい資料

第10テーマを自社に引き寄せて読むためには、次のような資料が手元にあると理解しやすくなります。

  • 特例承継計画、認定申請書、認定書
  • 贈与税・相続税申告書、継続届出書、年次報告書
  • 株主名簿、議決権割合表、定款、登記簿
  • 決算書、非上場株式評価明細書、担保提供資料
  • 借入金一覧、金融機関との契約
  • 過去の株式譲渡契約書、贈与契約書、遺産分割協議書
  • 組織再編の検討資料、会社の将来事業計画

とりわけ、対象株式と対象外株式の区分、誰が何株をどの制度で取得したのか、現在の議決権割合はどうなっているか、将来株式を動かす予定があるか。これらは、取消・一部取消の判断に直結します。

事業承継税制の特例措置については、特例承継計画を提出した事業者で、平成30年1月1日から令和9年12月31日までに贈与・相続により会社の株式を取得した経営者が対象とされています。また、特例承継計画は、平成30年4月1日から令和9年9月30日までに都道府県へ提出する必要があります。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

期限のある制度である以上、適用前の検討、適用後の管理、出口の判断を分断せず、同じ資料と時系列のなかで管理していくことが重要です。

相談を検討すべき場面

第10テーマに関して、次のような場面では、早めに専門家へ相談する価値があります。

  • 後継者が代表を退く可能性がある
  • 対象株式を一部でも譲渡・贈与する可能性がある
  • 親族内で議決権構成が変わる可能性がある
  • 会社に不動産・有価証券・余剰資金が増えている
  • 会社分割、合併、株式交換、持株会社化を検討している
  • M&Aや第三者承継への切替えを検討している
  • 廃業・解散・清算の可能性がある
  • 継続届出・年次報告の管理に不安がある
  • 取消時の納付資金を試算していない
  • 自己株式取得、役員退職金、会社貸付、配当で納付資金を作ろうとしている
  • 取消後に所得税・法人税・みなし配当まで含めた影響を確認したい

とくに、事業承継税制の適用後に会社行為を予定している場合は、実行の前に確認しておく必要があります。実行してから取消や課税関係が判明しても、元に戻せないことがあるためです。

第10テーマのまとめ

第10テーマは、事業承継税制の「不都合な側面」を扱うテーマです。

しかし、不都合な論点を避けることは、会社を守ることにはつながりません。

制度の適用時にはメリットが大きく見えても、将来、後継者が退任する、株式を動かす、会社を再編する、M&Aへ移行する、廃業する、報告を失念する。そうした場面で、猶予税額の納付や複数税目への波及が生じる可能性があります。

事業承継税制を使うかどうかは、承継時点の税額だけで判断すべきものではありません。

承継後も維持できるか。 将来の選択肢を狭めないか。 取消時に納付資金を確保できるか。 後から関係者に説明できるか。 会社の経営判断と税務判断が矛盾しないか。

このテーマは、その判断のための論点地図です。

重要事項の振り返り

振り返り項目確認すべき観点
第10テーマの役割納税猶予の取消、免除、一部納付、利子税、売却・廃業・組織再編時の影響を俯瞰する
最初に読む記事10-1で取消事由の全体像を確認する
日常的に注意すべき取消リスク代表退任、株式譲渡、議決権要件喪失、黄金株、報告漏れ
将来の経営判断との関係合併、会社分割、株式交換、M&A、廃業・清算は納税猶予に影響する可能性がある
免除事由の理解先代死亡、後継者死亡、猶予継続贈与、倒産、一定の譲渡・解散などを確認する
資金繰り上の注意取消時には猶予税額だけでなく利子税、担保、納付資金を検討する
取消後の税務波及相続税・贈与税だけでなく、譲渡所得、みなし配当、法人税、関連者課税も確認する
適用前に考えるべきこと将来売却・再編・廃業の可能性、後継者体制、株主構成、資金余力
資料管理の重要性認定資料、申告書、継続届出、株主名簿、評価資料、議事録、契約書を整理する
相談すべき場面代表退任、株式移動、再編、M&A、廃業、納付資金対策を実行する前

事業承継税制の出口対応は、制度を適用してから初めて考えるものではありません。むしろ、適用の前から出口を見ておくことで、制度を使うべきかどうかの判断精度が高まります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継税制の適用判断だけでなく、取消事由、免除事由、組織再編・M&A・廃業時の影響、一部取消・利子税・納付資金、取消後の複数税目への波及まで含めて、会社の状況に応じた論点整理をご支援しています。

制度を使う前に出口リスクを確認しておきたい場合、適用後に株式移動や再編を検討している場合、取消時の納付資金や税務波及を整理したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。