無道路地・私道・セットバックがある土地の評価|接道・建築制限が相続税評価に与える影響

相続税の申告で土地を評価するとき、「道路に面しているかどうか」は、地図上で道路らしきものに接しているかを確かめるだけでは足りません。

前面の道は、建築基準法上の道路なのか。 その土地は、建物を建て替えられるのか。 私道部分は、誰が所有し、誰が通行できるのか。 将来、道路後退、いわゆるセットバックが必要になるのか。 路線価が付されていない道路に接している場合、特定路線価を検討すべきなのか。 そして、接道の問題を、相続税評価にどこまで反映できるのか。

こうした点は、相続税評価だけにとどまりません。遺産分割、代償金、売却の可能性、納税資金、将来の建替え、相続人どうしの公平感にまで、そのまま影響していきます。

とりわけ、古い住宅地、旗竿地、袋小路の私道、幅員の狭い2項道路、位置指定道路、再建築不可の可能性がある土地では、「評価額が下がるか」だけを見ていては不十分です。「その土地を誰が取得すべきか」「将来きちんと管理できるか」「売却して納税資金にできるか」というところまで含めて整理しておく必要があります。

この記事では、相続税・贈与税の土地評価における無道路地、私道、位置指定道路、セットバックについて、財産評価基本通達と、建築基準法上の道路・接道の考え方を踏まえながら、実務で判断していく順序を整理します。

目次

道路に問題がある土地は、評価額だけでなく承継判断も難しい

道路に問題がある土地については、相続税評価上、一定の評価減が認められる場合があります。

ただ、その評価減が認められる理由は、裏を返せば、その土地の利用価値や換金性に制約があることの表れでもあります。

たとえば、次のような土地です。

土地の状況税務評価上の論点承継・分割上の論点
建築基準法上の道路に接していない無道路地評価、特定路線価、利用価値低下再建築不可、売却困難、金融機関担保評価
接道幅が2m未満無道路地、間口狭小、43条2項認定・許可建替え可否、取得者の不利益
私道に接している私道評価、特定路線価、通行権、掘削承諾管理負担、共有者・近隣との関係
位置指定道路に接している建築基準法上の道路として扱うか私道持分、維持補修、上下水道管
2項道路に接しているセットバック部分の評価有効宅地面積の減少、建替え時の制約
路線価のない道路に接している特定路線価の申出、無道路地評価評価根拠の説明、税務署との見解相違

相続税評価では、どうしても「いくら下がるか」に目が向きがちです。

しかし、実際に相続する側の立場で考えると、「その土地を取得した後に使えるか」「売れるか」「維持できるか」のほうが、ずっと切実な問題になることもあります。

道路に問題がある土地は、評価額だけを見て分け方を決めてしまうと、あとから不満が生じやすい土地です。「低い評価額で取得したつもりだったが、実際には負担が大きかった」「代償金が高すぎた」「売ろうとしても売れなかった」といった声は、こうした土地で繰り返し見られます。

最初に確認すべきは「建築基準法上の道路」かどうか

相続税評価で道路を確認するとき、まず押さえておきたいのは、日常用語としての「道」と、建築基準法上の「道路」は同じではない、という点です。

建築基準法43条1項は、建築物の敷地は原則として道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。そして、同法42条で、建築基準法上の道路の定義が置かれています。

出典:e-Gov法令検索|建築基準法

国土交通省も、建築基準法上の道路を、単なる通行の場にとどまらないものとして説明しています。建築物の利用、災害時の避難、消防活動、日照・採光・通風など、安全で良好な市街地を形づくるうえで重要な機能を担うものとされています。指定道路に関する情報は、指定道路図や指定道路調書によって管理され、特定行政庁で整備・公開が進められています。

出典:国土交通省|建築基準法上の道路情報の整備について

相続税評価では、次のような分類を確認していきます。

道路・通路の種類確認すべきこと
建築基準法42条1項1号道路道路法上の道路か、幅員は足りているか
建築基準法42条1項5号道路位置指定道路か、指定内容・幅員・延長はどうか
建築基準法42条2項道路セットバックが必要か、中心線・道路境界はどこか
建築基準法42条3項道路後退距離の特例があるか、特定行政庁の指定内容はどうか
建築基準法上の道路でない通路建替え可能性、43条2項認定・許可、通行権を確認
私道建築基準法上の道路か、通行利用の範囲、所有関係を確認
路線価のない道路特定路線価の申出が必要か、無道路地評価かを確認

ここで大切なのは、「公道か私道か」という切り口だけでは判断しきれない、ということです。

私道であっても、建築基準法上の道路である場合があります。反対に、見た目は道路でも、建築基準法上の道路ではない通路もあります。

ですから土地評価では、現地写真や公図だけに頼らず、自治体の建築指導課などで道路種別を確認しておくことが欠かせません。

無道路地とは何か

無道路地とは、道路に接していない宅地をいいます。財産評価基本通達20-3の注では、接道義務を満たしていない宅地も、この無道路地に含まれるとされています。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利(20-3 無道路地の評価)

国税庁のタックスアンサーでも、無道路地は、一般に道路に接していない宅地であり、接道義務を満たしていない宅地を含むものとされています。その価額は、実際に利用している路線の路線価に基づいて、不整形地の評価または地積規模の大きな宅地の評価によって計算した価額から、その40%の範囲内で相当と認める金額を控除して評価するものとされています。

出典:国税庁|No.4620 無道路地の評価

無道路地に該当し得る典型例

無道路地と聞くと、完全に他人地に囲まれて道路へ出られない土地を思い浮かべがちです。

しかし実務では、次のような土地でも、無道路地評価が論点になります。

状況無道路地評価の検討ポイント
建築基準法上の道路に接していない通行できても再建築できるかを確認する
道路に接している幅が2m未満接道義務を満たしているか確認する
複数箇所で合計2m以上接している1か所で有効に2m接しているか確認する
旗竿地の路地状部分が狭い条例上の路地状敷地規制も確認する
他人地を通って出入りしている通行権と建築可能性を分けて確認する
建築基準法43条2項の認定・許可が必要その土地で再建築可能かを自治体に確認する

ここで気をつけたいのは、「人が通れる」ことと、「建築基準法上、建物を建てられる」ことは、別の問題だという点です。

相続税評価では、通行の実態、通行権の有無、建築基準法上の接道義務、そして43条2項の認定・許可の可能性を、それぞれ分けて確認していく必要があります。

建築基準法43条2項の認定・許可がある場合の注意点

接道義務を形式的に満たしていない土地であっても、建築基準法43条2項に基づく認定または許可によって、例外的に建築が可能となる場合があります。

現行制度では、43条2項1号の認定と、43条2項2号の許可が論点になります。地方公共団体の案内でも、平成30年9月25日施行の建築基準法改正により、従来の43条ただし書き許可の対象のうち一定のものが認定制度へ、その他が許可制度へ移行したと説明されています。

出典:埼玉県|建築基準法第43条第2項第1号認定及び第2号許可に関すること

この点は、相続税評価でも見過ごせません。

形式的には建築基準法上の道路に接していないように見えても、43条2項の認定・許可によって再建築が可能であれば、再建築不可の土地と同じ評価減を当然に行えるとは限りません。

逆に、認定・許可の可能性が低い土地であれば、売却・担保・建替えのいずれの面でも大きな制約を抱えることになります。評価上も、慎重に減価要因を検討する必要があります。

確認事項評価・承継への影響
43条2項認定の対象か一定要件を満たせば建築可能性がある
43条2項許可の対象か建築審査会同意等を要する場合がある
過去に建築確認が下りているかただし将来も同じとは限らない
再建築時に同じ条件で認定・許可を得られるか売却価格・担保評価に影響する
自治体の包括同意基準・取扱基準地域ごとの運用差が出やすい
建替えではなく新築・用途変更の場合可否が変わることがある

相続税申告では、単に「43条2項の可能性あり」と記すだけでは足りません。

自治体への照会結果、道路相談の記録、過去の建築確認資料、接道状況、通路幅員、関係者の承諾状況を確認し、評価判断の根拠を形に残しておくことが大切です。

無道路地評価の基本構造

財産評価基本通達20-3では、無道路地の評価について、実際に利用している路線の路線価に基づいて不整形地評価等を行った価額から、40%の範囲内で相当と認める金額を控除するとされています。控除する金額は、接道義務に基づいて最小限度の通路を開設する場合の、その通路相当部分の価額です。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利(20-3 無道路地の評価)

国税庁の質疑応答事例でも、無道路地評価の流れが示されています。無道路地と前面宅地を合わせた土地の価額から前面宅地の価額を控除して無道路地部分の価額を求め、不整形地補正等を行ったうえで、さらに通路部分の価額を控除する、という順序です。

出典:国税庁|無道路地の評価

実務上の確認順序を整理すると、次のようになります。

順序確認事項実務上の意味
1実際に利用している道路・通路どの路線価を基礎にするか
2その道路が建築基準法上の道路か無道路地か、通常の接道地か
3接道義務を満たしているか2m接道、条例上の追加要件を確認
443条2項認定・許可の可能性再建築可能性を確認
5不整形地評価等形状による評価減を反映
6想定通路の位置・地積控除額の基礎になる
7控除額の上限評価額の40%以内かを確認
8評価根拠の記録申告後の説明資料を残す

無道路地評価でとくに注意したいのは、「最大40%減」ではない、という点です。

40%はあくまで上限であり、実際に控除できるのは、接道義務を満たすための最小限度の通路相当部分の価額にとどまります。

また、通路部分の価額は、実際に利用している路線の路線価に通路部分の地積を乗じた金額とされ、奥行価格補正等の画地調整は行わないものとされています。

出典:国税庁|No.4620 無道路地の評価

路線価のない道路に接している場合と特定路線価

路線価地域にある宅地が、路線価の設定されていない道路だけに接していることがあります。

このような場合には、特定路線価の申出を検討します。

財産評価基本通達14-3では、路線価地域内で、路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合、その道路を路線とみなして宅地を評価するための路線価、すなわち特定路線価を、納税義務者からの申出等に基づいて設定できるとされています。特定路線価は、接続する路線や付近の路線の路線価を基に、道路の状況や地区区分等を考慮して、税務署長が評定するものです。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利(14-3 特定路線価)

ここで悩ましいのは、路線価のない通路が「建築基準法上の道路」なのか、「建築基準法上の道路ではない通路」なのかによって、判断が変わり得ることです。

状況検討する評価方法
建築基準法上の道路で、路線価がない特定路線価の申出を検討
建築基準法上の道路ではないが通行利用されている無道路地評価、43条2項認定・許可、利用価値低下を検討
路線価が付された私道に接している原則としてその路線価を確認し、道路状況も検討
特定路線価が設定された評定が不合理でない限り、その採用を前提に検討
特定路線価が高く、実態と乖離している道路種別、幅員、通行状況、建築可能性を資料化して慎重に判断

特定路線価は、申出をすれば必ず有利になる、というものではありません。

特定路線価が設定された結果、かえって評価額が高くなる場合もあります。ですから申出の前に、周辺路線価、固定資産税路線価、道路幅員、通り抜けの有無、位置指定道路かどうか、行き止まりかどうかを確認し、評価額への影響を試算しておくことが望ましいといえます。

私道の評価|ゼロ評価か、30%評価か

私道は、大きく分けると、不特定多数の者の通行の用に供されているものと、専ら特定の者の通行の用に供されているものとに分かれます。

財産評価基本通達24では、私道の用に供されている宅地の価額は、通常の評価額の30%相当額で評価するとされています。ただし、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しないものとされています。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利(24 私道の用に供されている宅地の評価)

国税庁のタックスアンサーでも、同じ整理がなされています。通り抜け道路のように不特定多数の者の通行の用に供される私道は評価しない一方、袋小路のように専ら特定の者の通行の用に供される私道は、私道でないものとして評価した価額の30%相当額で評価するとされています。

出典:国税庁|No.4622 私道の評価

私道評価で確認する視点

確認事項評価上の意味
通り抜けできるか不特定多数利用かを判断する重要要素
行き止まりか特定の者の通行用と判断されやすい
利用者が限定されているか30%評価の対象になり得る
公道と公道をつないでいるかゼロ評価の検討余地
道路として固定資産税評価されているか倍率地域では補正が必要な場合がある
私道持分があるか相続財産として申告対象になる
分有形式か共有形式か各所有者の評価単位・管理関係に影響
上下水道・ガス管が埋設されているか掘削承諾・将来工事に影響

私道評価で避けたいのは、「私道だからゼロ」「私道だから必ず30%」という、短絡的な判断です。

評価しないのは、あくまで不特定多数の者の通行の用に供されている私道です。

袋小路で、その先の数軒だけが利用している私道であれば、通常は30%評価となります。

一方で、外形上は私道であっても、事実上の公共通路として不特定多数の通行に使われている場合には、ゼロ評価を検討する余地があります。その際は、通り抜けの状況、道路標識、通行制限の有無、門扉・車止めの有無、近隣の利用状況などを資料化しておくことが大切です。

専用通路は「私道評価」ではなく、一画地評価になる場合がある

私道評価で見落としやすいのが、路地状敷地や専用通路の部分です。

国税庁のタックスアンサーでは、宅地への通路として専用利用している路地状敷地については、私道として評価するのではなく、隣接する宅地とともに1画地の宅地として評価するとされています。

出典:国税庁|No.4622 私道の評価

たとえば、旗竿地の竿部分は、道路として不特定多数や近隣住民に利用されているわけではなく、その奥の宅地へ出入りするための専用通路です。

こうした部分を「私道」として30%評価にしてしまうと、評価単位そのものを誤る可能性があります。

土地の形態原則的な考え方
袋小路の私道持分特定者利用なら30%評価を検討
通り抜け私道不特定多数利用ならゼロ評価を検討
旗竿地の路地状部分宅地本体と一体の一画地として評価
自宅専用の通路部分私道評価ではなく宅地評価が基本
アパート入居者用の敷地内通路利用実態・評価単位を確認
貸家建付地内の私道貸家建付地評価との関係を確認

私道かどうかの判断は、登記地目や固定資産税上の扱いだけで決まるものではありません。実際の利用状況と評価単位に立ち返って整理する必要があります。

位置指定道路に接する土地の評価

位置指定道路とは、建築基準法42条1項5号に基づいて、特定行政庁から道路の位置の指定を受けた道路をいいます。

位置指定道路は私道であることが多いものの、建築基準法上の道路です。

そのため、位置指定道路に2m以上有効に接していれば、接道義務を満たす土地として、通常の評価を行う方向で検討します。路線価が付されていればその路線価を確認し、付されていなければ特定路線価の申出を検討することになります。

ただし、位置指定道路だからといって、何も問題がないわけではありません。

確認事項実務上の意味
位置指定の有無建築基準法上の道路かを確認
指定幅員・延長現況幅員と一致しているか
道路境界敷地が有効に接しているか
接道幅2m以上有効に接しているか
私道持分相続財産に含まれるか、通行利用に支障がないか
掘削承諾上下水道・ガス工事に影響
通行承諾売却時・建替え時の障害にならないか
道路維持管理補修費用、排水、舗装の負担

相続税評価上は通常評価であっても、いざ売却となると話は別です。私道持分がない、掘削承諾がない、道路境界が未確定、道路の一部が他人名義のまま、といった事情が、価格交渉や融資審査で不利に働くことがあります。

ですから位置指定道路に接する土地では、「建築基準法上の道路だから評価は終わり」と考えるのではなく、私道の権利関係と将来の利用まで確認しておくことが重要です。

セットバックが必要な土地の評価

幅員4m未満の道路に接する土地では、将来、建物を建て替える際に、道路中心線から一定距離を後退し、その部分を道路敷として提供しなければならないことがあります。これがセットバックです。

国税庁のタックスアンサーでは、建築基準法の規定により、将来の建替え時に一部を道路として提供しなければならない宅地について、そのセットバックすべき部分は、通常どおりに評価した価額から70%相当額を控除して評価するとされています。

出典:国税庁|No.4604 路線価方式による宅地の評価

財産評価基本通達24-6でも、建築基準法42条2項道路に面し、将来の建替え時等に道路敷として提供しなければならない部分を有する宅地について整理されています。その宅地を道路敷として提供する必要がないものとした場合の価額から、セットバック部分の地積割合に0.7を乗じた割合に相当する金額を控除して評価するとされています。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第2節 宅地及び宅地の上に存する権利(24-6 セットバックを必要とする宅地の評価)

計算の構造を簡略化すると、次のような考え方になります。

項目内容
まず通常の宅地として評価路線価方式または倍率方式で評価
セットバック部分の地積を把握道路後退が必要な面積を確認
総地積に占める割合を計算セットバック部分地積 ÷ 宅地総地積
その割合に0.7を乗じる70%相当を控除
結果としてセットバック部分は実質30%評価ただし計算は全体価額から控除する形

セットバック評価で確認すべき事項

確認事項注意点
2項道路かどうか自治体の道路種別確認が必要
道路中心線どこを中心線と見るかで面積が変わる
反対側が崖・川・線路等か後退方法が通常と異なる場合がある
既に後退済みか現況と登記・固定資産資料が一致しないことがある
分筆済みか未分筆かセットバック部分の評価単位・地積確認に影響
固定資産税評価既に減価が織り込まれているか確認
建替え予定将来利用可能面積に影響
遺産分割取得者の実質利用可能面積に影響

セットバック部分は、相続税評価では減額の要因になります。

しかし、取得する側にとっては、将来使える敷地面積がそれだけ減る、ということでもあります。

遺産分割でこの土地を特定の相続人が取得する場合には、相続税評価額だけでなく、有効宅地面積、建替え後の建物規模、駐車場の配置、売却の可能性まで含めて説明しておく必要があります。

2項道路・3項道路・条例による追加制限

セットバックというと、道路中心線から2m後退する2項道路が典型例です。

ただ、実務では、3項道路、自治体条例による路地状敷地規制、建築協定、開発許可、最低敷地面積などが論点になることもあります。

財産評価基本通達24-6は、建築基準法42条2項道路を対象とした規定です。しかし、実際の建築可能性や土地利用の制限は、これだけで完結するわけではありません。

とくに、次のような点を確認しておきます。

論点確認内容
42条2項道路原則として中心線から2m後退するか
42条3項道路特定行政庁により道路境界線がどこに指定されているか
路地状敷地路地部分の幅員について条例上の追加要件があるか
用途・規模建物用途や延床面積により接道要件が加重されないか
防火・準防火地域建物計画への影響
建ぺい率・容積率セットバック後の敷地面積で計算する必要
道路斜線・高さ制限狭あい道路では建物計画に影響しやすい

相続税評価は税務の作業ですが、道路に問題がある土地では、建築法規の確認を省くわけにはいきません。

税務上の評価減が認められるかどうかだけでなく、「その評価減の理由となる建築制限が何か」まで説明できるようにしておくことが重要です。

道路に問題がある土地の評価判断順序

無道路地・私道・セットバックが絡む土地では、次の順序で確認していくと、論点の抜け漏れを防ぎやすくなります。

順序確認事項判断内容
1評価単位どの土地を一画地として評価するか
2現況地目宅地、雑種地、農地等の現況を確認
3利用状況自宅、貸家、駐車場、私道、空地など
4道路種別建築基準法42条の道路か
5接道幅有効に2m以上接しているか
6条例・個別制限路地状敷地、用途・規模による制限
743条2項認定・許可により建築可能か
8路線価前面道路に路線価があるか
9特定路線価路線価のない道路の場合に申出を検討
10無道路地評価接道義務を満たさない場合に検討
11私道評価私道部分がゼロ評価か30%評価か
12セットバック道路後退部分の地積と減額を確認
13分割・納税評価額、取得者、売却可能性を検討
14記録化役所調査・写真・計算根拠を残す

こうして並べてみると、道路に関する土地評価は、単に「補正率を探す作業」ではないことが見えてきます。

むしろ、法務、建築、登記、税務、そして将来の利用に関する情報を一つひとつ積み上げながら、評価額に反映できる制約と、遺産分割で説明すべき制約とを切り分けていく作業だといえます。

遺産分割で注意すべきこと

道路に問題がある土地は、相続税評価額が低くなることがあります。

しかし、評価額が低いというだけで、その土地を取得する相続人が有利とは限りません。

無道路地の場合

無道路地や、再建築に不安のある土地は、売却できたとしても価格が大きく下がることがあります。

金融機関の担保評価が厳しくなることもあります。

相続人の一人がこの土地を取得し、他の相続人に代償金を支払う場合、相続税評価額だけを基準にすると、実際の負担と合わなくなることがあります。

私道がある場合

私道持分がある土地では、相続人が土地だけでなく私道持分も取得する必要があるかどうかを確認します。

私道持分が分散している場合、将来の売却や建替えの際に、通行・掘削・上下水道工事をめぐって近隣の所有者との調整が必要になることがあります。

セットバックがある場合

セットバック部分を含む土地では、登記地積や相続税評価額だけでなく、実際に建物敷地として使える面積を確認しておく必要があります。

将来の建替え時に建物の規模が制限される場合、取得者にとっては大きな不利益となることがあります。

評価上の減価要因分割時に説明すべきこと
無道路地評価再建築可否、売却価格、担保評価
私道30%評価私道持分、維持管理、掘削承諾
私道ゼロ評価公共的利用、管理負担の有無
セットバック減額有効宅地面積、建替え後の建物規模
特定路線価路線価設定の妥当性、道路状況
43条2項認定・許可将来も建築可能といえるか

相続税評価は、あくまで申告のための評価です。

遺産分割では、それに加えて、時価、流動性、利用上の制約、管理負担、将来の売却可能性まで整理しておく必要があります。

税務調査で説明できるように残すべき資料

道路に問題がある土地の評価では、評価根拠の記録がとくに重要になります。

補正や評価減を行った場合、申告書の数字だけでは、その判断過程までは伝わりません。

資料確認できること
固定資産税課税明細書地番、地積、評価額、課税地目
登記事項証明書所有者、地目、地積、私道持分
公図道路・隣地・筆の位置関係
地積測量図間口、奥行、通路部分、セットバック地積
建築計画概要書過去の建築確認、接道状況
道路台帳公道幅員、道路区域
指定道路図・指定道路調書建築基準法上の道路種別
位置指定道路図面指定幅員、延長、位置
自治体への道路相談記録42条道路、43条2項、セットバック確認
現地写真道路幅員、舗装、通行状況、門扉等
路線価図路線価、地区区分、借地権割合
特定路線価関係資料申出書、評定結果、試算
私道利用資料通行承諾、掘削承諾、管理規約
上下水道・ガス管図インフラ整備状況
評価計算メモ採用した評価方法と不採用理由

とくに、無道路地評価、私道ゼロ評価、セットバック減額、特定路線価を採用しない判断などは、税務署との見解相違が生じやすいところです。

「なぜその評価方法を採用したのか」「なぜ別の方法を採用しなかったのか」を文章で残しておくことが、申告後の説明可能性を高めてくれます。

避けたい短絡的判断

「道路に見えるから接道している」と考える

通路のように見えても、建築基準法上の道路とは限りません。

道路種別は、自治体の指定道路図、道路台帳、建築指導課などで確認します。

「私道だから必ず評価減できる」と考える

私道には、ゼロ評価、30%評価、宅地本体との一体評価など、複数の処理があります。

通行利用の範囲と評価単位を確認します。

「路線価がないから安く評価できる」と考える

路線価のない道路に接している場合、特定路線価が設定されることがあります。

特定路線価の申出の前に、評価額への影響を試算します。

「無道路地なら40%減」と考える

40%は控除の上限です。

実際の控除額は、接道義務を満たすための最小限度の通路相当部分の価額を基礎に検討します。

「セットバック部分だけを勝手に低く評価する」

セットバック評価は、道路種別、後退距離、セットバック部分の地積を確認したうえで行います。

とくに、中心線、反対側の状況、既後退部分、分筆状況を確認する必要があります。

「評価額が低いから取得者に有利」と考える

道路に問題がある土地は、利用・売却・建替えのいずれの面でも不利になることがあります。

遺産分割では、相続税評価額だけでなく、時価・換金性・管理負担も説明する必要があります。

相談前に整理しておきたい情報

無道路地・私道・セットバックがある土地について相談する場合は、次の情報を整理しておくと、評価の判断が進みやすくなります。

整理する情報具体例
土地の所在地・地番固定資産税課税明細書、登記簿
土地の利用状況自宅、貸家、駐車場、空き地、私道
道路との接し方間口、幅員、通路状部分
道路種別42条1項道路、2項道路、位置指定道路等
建替えの可否過去の建築確認、43条2項相談
私道の権利関係持分、通行承諾、掘削承諾
セットバック後退距離、対象地積、既後退の有無
路線価前面道路の路線価、特定路線価の有無
売却予定納税資金、換価分割、取得費加算との関係
相続人の意向誰が取得したいか、誰が管理できるか

道路に問題がある土地は、資料が少ないまま評価を進めると、あとから大きな論点が表に出てくることがあります。

とくに、相続税の申告期限が近い場合であっても、道路調査、現地確認、評価根拠の記録だけは省略しないことが大切です。

まとめ|道路に問題がある土地評価は、税務と建築法規を分けずに確認する

無道路地、私道、位置指定道路、セットバックがある土地の評価は、相続税評価のなかでも、とりわけ判断の難しい分野です。

道路に面しているように見えても、建築基準法上の道路とは限りません。 私道であっても、建築基準法上の道路である場合があります。 接道義務を満たさない土地でも、43条2項の認定・許可によって建築の可能性が残ることがあります。 そしてセットバックが必要な土地では、相続税評価額だけでなく、将来使える敷地面積そのものが変わってきます。

大切なのは、「評価減できるか」だけにとらわれず、次の点を順序立てて整理していくことです。

  • 評価単位は正しいか
  • 現況地目と利用状況は確認できているか
  • 前面の道は建築基準法上の道路か
  • 接道義務を満たしているか
  • 43条2項の認定・許可の可能性はあるか
  • 私道部分はゼロ評価か30%評価か、それとも一体評価か
  • 位置指定道路の権利関係は整理されているか
  • セットバック部分の地積は客観的に把握できるか
  • 評価額と将来の売却可能性を分けて説明できるか
  • 税務調査で評価根拠を説明できる資料を残しているか

土地評価は、税額計算だけで完結するものではありません。

道路に問題がある土地では、将来の建替え、売却、納税資金、そして遺産分割の納得感まで含めて、税務と建築法規を横断しながら判断していく必要があります。

無道路地・私道・セットバックがある土地評価のご相談について

犬飼公認会計士・税理士事務所では、相続税申告や生前贈与における土地評価について、路線価や補正率の確認にとどまらず、道路種別、接道義務、私道持分、位置指定道路、セットバック、特定路線価、そして遺産分割への影響まで含めて整理いたします。

道路に問題がある土地は、評価額への影響が大きい一方で、将来の利用や売却にも制約が生じやすい土地です。

相続税申告の前に評価方法を確認したい場合、相続人のあいだで不動産の分け方を検討している場合、私道や再建築の可否に不安がある場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

振り返り|無道路地・私道・セットバック評価の重要ポイント

論点押さえるべきポイント
建築基準法上の道路見た目の道ではなく、42条道路かを確認する
接道義務原則として道路に2m以上接する必要がある
無道路地道路に接しない宅地だけでなく、接道義務を満たさない宅地も含む
無道路地評価実際に利用している路線の路線価を基に評価し、40%の範囲内で通路相当額を控除する
43条2項認定・許可接道義務を満たさない土地でも例外的に建築可能となる場合がある
特定路線価路線価のない道路のみに接する宅地では申出を検討する
私道30%評価専ら特定の者の通行用である私道は通常評価額の30%相当額で評価する
私道ゼロ評価不特定多数の者の通行の用に供される私道は評価しない
専用通路旗竿地の路地状部分などは私道評価ではなく宅地本体と一体評価する
位置指定道路私道であっても建築基準法上の道路であり、権利関係も確認する
セットバック2項道路等では将来道路提供が必要な部分の評価減を検討する
遺産分割評価減は利用・売却・建替え制約の裏返しである
税務調査対応道路種別、現地写真、役所調査、計算根拠を記録する
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