共有不動産を解消・整理する方法|持分売買・共有物分割・交換・換価分割と税務上の注意点

相続で不動産を共有にしたものの、時間が経つにつれて、その管理や売却の判断が難しくなっていく。そうした場面は、実務のなかで決して珍しくありません。

たとえば、こうした悩みです。

固定資産税や修繕費を、誰が負担するのか。 賃貸不動産の賃料収入を、どう分けるのか。 一人だけが住んでいる場合、ほかの共有者との公平をどう考えるのか。 売却したい人と残したい人が分かれたとき、どう整理するのか。 そして、次の相続で共有者がさらに増えてしまう前に、何をしておくべきか。

共有不動産の整理は、単に「名義を変える」というだけの話ではありません。実際には、法律上の権利移転、登記、時価評価、譲渡所得税、贈与税、相続税申告との整合性、そして家族間の納得感が、同時に問題になります。

とりわけ相続で取得した不動産では、相続税評価額、固定資産税評価額、実勢価格、共有持分そのものの売買価値が、必ずしも一致しません。共有解消の場面で「評価額どおりに分けたつもり」であっても、税務上は譲渡、交換、贈与、低額譲渡、代償金の支払として整理し直す必要が出てくることがあるのです。

本記事では、すでに共有になっている不動産をどのように解消・整理していくかについて、持分売買、共有物分割、交換、換価分割、代償金、譲渡課税を中心に、実務判断の順序を整理していきます。

目次

まず確認すべきは「遺産共有」なのか「通常の共有」なのか

共有不動産を整理する前に、最初に確かめておきたいことがあります。

それは、その共有が遺産分割前の共有状態なのか、それとも、すでに遺産分割協議や登記を経て成立した通常の共有状態なのか、という点です。

相続が発生したあと、遺産分割がまだ完了していない段階では、不動産は共同相続人による遺産共有の状態にあります。この段階であれば、原則として遺産分割協議、調停、審判という枠組みのなかで、「誰が取得するか」「代償金をどうするか」「売却して分けるか」を整理していきます。

一方、遺産分割協議によって相続人が共有持分を取得し、共有登記まで終わっている場合には、共有関係を解消するために、共有持分の売買、共有物分割協議、共有物分割訴訟、換価分割などを検討することになります。共有物分割の目的は、共有持分をさらに細かく分けることではなく、共有状態そのものを解消して、単独所有または金銭分配などに整理することにあります。共有物分割の主な分割類型には、現物分割、換価分割、価格賠償があり、これらを組み合わせることもあります。

ここを混同すると、税務上も法務上も判断を誤ります。遺産分割として処理すべきものを、共有持分売買として扱ってしまう。反対に、すでに成立した共有を、相続時の分け直しのように扱ってしまう。こうした整理不足は、譲渡所得税や贈与税、登記、そして相続税申告後の説明に、そのまま影響していきます。

共有解消の前に整理する5つの情報

共有不動産を解消する方法は複数ありますが、どの方法を選ぶにせよ、その前に、少なくとも次の情報を整理しておく必要があります。

1つ目は、権利関係です。 登記事項証明書で、共有者、共有持分割合、抵当権、仮差押え、買戻特約、借地権、地役権などを確認します。共有物分割の後には権利関係に変動が生じるため、換価分割では競売や売却手続に伴う移転登記が、現物分割や価格賠償では当事者による登記申請が必要になります。

2つ目は、利用状況です。 誰かが居住しているのか、賃貸しているのか、空き家なのか、駐車場なのか、借地権や使用貸借があるのか。共有解消の方法は、この利用状況によって大きく変わってきます。

3つ目は、時価と評価額です。 固定資産税評価額、相続税評価額、実勢価格、不動産鑑定評価、売却査定額を、それぞれ分けて考えます。共有者間で持分を買い取る場合や価格賠償を行う場合には、「いくらを基準にするか」が最も大きな論点になります。

4つ目は、取得費と税務履歴です。 相続で取得した場合には、被相続人の取得時期や取得費を確認します。売却や価格賠償で譲渡所得税が生じる可能性があるため、購入契約書、建築請負契約書、過去の譲渡申告書、相続税申告書、取得費加算の適用可否などを確認しておきます。

5つ目は、共有者の意思と資金力です。 誰が取得したいのか、誰が売りたいのか、誰が代償金を払えるのか、金融機関から借入れできるのか、相続税や代償金を支払う資金があるのか。ここを整理します。

共有解消では、法的に可能な方法と、実際に資金・感情・税務の面で実行できる方法とが、必ずしも一致しません。先に手続の名前を選ぶのではなく、「不動産を残すのか、売るのか、誰が使うのか、誰が資金を出せるのか」を確認することが、出発点になります。

方法1|共有者間で持分を売買する

最も直接的な方法は、共有者の一人が、ほかの共有者の持分を買い取る方法です。

たとえば、兄弟2人で実家を2分の1ずつ共有している場合に、長男が二男の持分2分の1を買い取り、長男の単独所有にする。賃貸不動産であれば、管理を担っている人がほかの共有者の持分を買い取り、単独で賃貸経営を続けていく。こうした形です。

この方法の利点は、比較的分かりやすいことです。買主、売主、売買価格、支払時期、登記手続を決めれば、共有を解消できます。

ただし、税務上はそれほど単純ではありません。持分を売った人には、原則として譲渡所得税の検討が必要になります。土地や建物の譲渡所得は、譲渡価額から取得費・譲渡費用等を差し引いて計算し、ほかの所得とは区分して計算されます。さらに、所有期間が売却年の1月1日時点で5年を超えるかどうかによって、長期・短期の区分も変わってきます。

出典:国税庁|土地や建物を売ったとき

親族間の持分売買では、価格設定にも注意が必要です。実勢価格より著しく低い価格で売買すると、買主側に経済的利益が移転したものとして、贈与税やみなし贈与の問題が生じる可能性があります。逆に、相続税評価額だけを基準にすると、実勢価格や共有持分の市場性と乖離してしまう場合もあります。

持分売買を検討する場合は、次の点を整理しておきます。

  • 売買価格の根拠
  • 支払方法と支払時期
  • 売主側の譲渡所得税
  • 買主側の資金調達
  • 登録免許税、不動産取得税、司法書士費用
  • 低額譲渡・贈与税のリスク
  • 賃貸不動産の場合の敷金、保証金、未収賃料、修繕債務の承継
  • 相続税申告書や過去の評価額との整合性

共有持分の売却は、共有関係からスピーディーに離脱できる方法ではありますが、買い手が第三者業者に限られる場合には、共有持分特有のリスクが価格に反映され、売却価額が低くなりやすい点にも注意が必要です。

方法2|不動産全体を売却して代金を分ける

共有者全員が売却に合意できる場合には、不動産全体を第三者に売却し、その売却代金を共有持分割合などに応じて分配する方法があります。

これは、実務上は非常に有力な解決策です。誰か一人が不動産を取得する必要がなく、共有者全員が金銭で清算できるためです。相続税の納税資金を確保したい場合や、誰も不動産を利用しない場合にも適しています。

ただし、売却代金の分配だけを考えていては足りません。各共有者には、それぞれ譲渡所得税の申告が必要になる可能性があります。取得費は共有者ごとに異なることもあります。相続で取得した人、贈与で取得した人、自分で購入した人が混在していれば、所有期間や取得費、特例適用の可否も、それぞれ変わってくるからです。

また、売却代金を代表者が受け取る場合には、分配義務を明確にしておく必要があります。共有不動産を共有者全員の合意で第三者に売却した場合、各共有者は持分に応じた代金債権を取得します。代表者が代金全額を受け取ったときには、ほかの共有者へ持分相当額を交付する、という整理が問題になります。

売却する場合は、次の点を事前に合意しておくべきです。

  • 売却価格の最低ライン
  • 仲介会社の選定
  • 測量・境界確定費用の負担
  • 建物解体の有無
  • 残置物処分費用
  • 賃借人への対応
  • 抵当権抹消費用
  • 売却代金の入金口座
  • 譲渡所得税の各人負担
  • 売却後の取得費加算や居住用財産特例などの検討

「売れば公平に分けられる」と考えがちです。しかし、売却時の税金・費用・入金管理を誤ると、売却後にかえって不満が残ってしまいます。

方法3|共有物分割協議で現物分割・換価分割・価格賠償を選ぶ

共有者全員で話し合い、共有物分割協議として整理していく方法もあります。

共有物分割には、主に次の3つの分割類型があります。

ひとつは現物分割で、不動産を物理的に分ける方法です。土地を分筆し、それぞれが単独所有にする場面が典型です。

次に換価分割で、不動産を売却して代金を分ける方法です。共有者全員で任意売却する場合もあれば、裁判手続を経て形式的競売に進む場合もあります。

そして価格賠償は、共有者の一人が不動産全体を取得し、ほかの共有者に金銭を支払う方法です。相続の代償分割に近い発想ですが、共有物分割では、共有持分の処分として整理されます。

共有物分割の手続は、まず共有者全員による協議から始まります。協議がまとまらない場合には、最終的に裁判所へ共有物分割訴訟を提起し、判決または和解で整理していく流れになります。

民法上も、各共有者は共有物の分割を請求でき、協議が調わないときは裁判所に分割を請求できる仕組みが設けられています。

出典:e-Gov法令検索|民法

ただし、本記事では訴訟手続の詳細には立ち入りません。実務上重要なのは、共有物分割を「裁判で勝つか負けるか」として捉えることではありません。どの分割類型が、家族関係・税務・資金・将来利用に最も耐えられるかという観点で考えることです。

現物分割|「税務上の非課税」と「建築上の利用可能性」は分けて考える

土地であれば、分筆して共有を解消する方法があります。

たとえば、兄弟2人で共有している一つの土地を、東側と西側に分け、それぞれ単独所有にするようなケースです。

税務上、個人がほかの者と共有している一の土地について、その共有持分に応ずる現物分割があったときは、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます。分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分割合におおむね等しい場合も、共有持分に応ずる現物分割に該当するものとして扱われます。

出典:国税庁|所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係

しかし、ここで注意したいのは、税務上の取扱いだけで現物分割を決めてはいけない、という点です。たとえば、次のような問題です。

  • 分筆後の土地が接道義務を満たさない
  • 道路後退が必要になる
  • 上下水道やガスの引込みが一方の土地にしかない
  • 建ぺい率・容積率が想定どおりに使えない
  • 旗竿地になり、売却しにくい
  • 一方の土地だけ、大幅に利用価値が低くなる
  • 分割が不合理分割と見られる可能性がある
  • 小規模宅地等の特例や、将来の売却に影響する

こうした問題があると、現物分割はかえって不公平になってしまいます。共有物分割における現物分割は、実質的に共有持分の交換・売買に近い性質を持つため、持分割合から逸脱する場合には、課税関係が生じることがあります。

現物分割を選ぶ場合は、測量士、司法書士、税理士、不動産会社、そして場合によっては建築士や不動産鑑定士を交え、分筆後の利用可能性と税務を、同時に検討していく必要があります。

換価分割|売却代金で分ける方法は分かりやすいが、譲渡所得税を忘れない

換価分割は、共有不動産を売却し、その代金を共有者間で分ける方法です。

共有者全員が売却に合意している場合には、任意売却による換価分割が現実的です。任意売却であれば、売却時期や価格、買主、条件について、共有者が主体的に判断できます。

一方、共有者間で合意できず、共有物分割訴訟に進むと、最終的に形式的競売となることがあります。競売は、任意売却に比べて価格が低くなる可能性があります。共有不動産の解消を裁判に委ねると、法的には整理できても、経済的にはかえって全員にとって不利になることがあるのです。

税務上、換価分割は一般的な不動産売却と同様に、資産の譲渡として譲渡所得税が問題になります。共有物分割のうち、換価分割や全面的価格賠償については、課税関係は一般的な売買と同じ方向で考える必要があります。

換価分割を検討する場合は、次の点を比較します。

  • 任意売却で進められるか
  • 共有者全員が売買契約に協力できるか
  • 売却価格の最低ラインを決められるか
  • 共有者のうち、誰かが買い取る可能性はないか
  • 相続税や固定資産税の支払に間に合うか
  • 譲渡所得税を差し引いた手取り額で納得できるか
  • 相続税の取得費加算や、居住用財産の特例などが使える余地があるか

「売却代金を分けるから税務は簡単」とは限りません。共有者ごとに、取得費や所有期間、特例の可否が違うこともあるからです。

価格賠償|一人が取得して、ほかの共有者へ代償金を支払う

不動産を残したい人がいる場合には、価格賠償が有力です。

価格賠償とは、共有者の一人が不動産全体を取得し、ほかの共有者に持分相当額の金銭を支払う方法です。相続でいえば代償分割に似ていますが、共有物分割の局面では、共有持分を実質的に買い取る方法として考えます。

この方法の利点は、不動産を売らずに共有を解消できることです。実家を残したい、賃貸不動産を継続したい、事業用地を一人に集約したい。そうした場合に向いています。

ただし、最大の問題は資金です。取得者が代償金を支払えなければ、そもそも成立しません。金融機関から借入れを行う場合には、単独所有への登記、担保設定、返済原資、賃貸収入、相続税や固定資産税の負担を確認します。共有物分割の価格賠償では、融資による賠償金の調達も、実務上は検討されます。

税務上は、持分を手放す共有者に譲渡所得税が生じる可能性があります。価格賠償は、実質的には共有者間での持分売買と同じように整理される場面があるためです。全面的価格賠償は、実質的な共有持分の処分を伴うことから、売買と同様に譲渡所得税の課税が問題になると整理されます。

価格賠償を選ぶ場合は、次の点を明確にしておきます。

  • 取得者は誰か
  • 代償金の基準価額をどう決めるか
  • 不動産鑑定評価や複数査定を取得するか
  • 代償金を一括で支払うか、分割で支払うか
  • 分割払いの場合、担保や期限の利益喪失をどう定めるか
  • 売主側の譲渡所得税を試算しているか
  • 買主側の借入可能性を確認しているか
  • 将来の二次相続で、再び共有化しないか

代償金の金額を「相続税評価額の持分割合」で機械的に決めてしまうと、実勢価格との乖離や税負担の差から、不満が残ることがあります。家族間の納得と、税務上の説明可能性の両方を意識しておく必要があります。

交換|複数不動産がある場合は有力だが、税務上の要件確認が必須

共有不動産が複数ある場合には、持分を交換して単独所有化する方法があります。

たとえば、兄弟2人がA土地とB土地をそれぞれ2分の1ずつ共有している場合に、兄がA土地を単独取得し、弟がB土地を単独取得する、といった整理です。

一見すると、等価で交換すれば課税がないように見えます。しかし、税務上は慎重な検討が必要です。

国税庁の質疑応答事例では、複数の不動産について、A不動産は一方が全部取得し、B土地は他方が取得するような共有物の分割は、「一の土地についてその持分に応ずる現物分割」ではないため、持分の交換として課税関係が生じると整理されています。そのうえで、固定資産の交換の特例の要件を満たす場合には、同特例の適用があるとされています。

出典:国税庁|共有物の分割

固定資産の交換の特例は、土地と土地、建物と建物のように、同じ種類の固定資産を交換した場合に、一定の要件のもとで譲渡がなかったものとする制度です。土地建物と土地を交換するような場合には、総額が等価であっても、建物部分について特例を受けられないことがあるなど、資産の種類ごとの確認が欠かせません。

出典:国税庁|No.3511 土地建物と土地を等価で交換したとき

また、交換差金を受け取る場合には、その交換差金に対して、譲渡所得として所得税がかかります。交換差金が一定割合を超えると、交換した資産全体について、固定資産の交換の特例を受けられないことがあります。

出典:国税庁|No.3508 交換差金を受け取ったとき

交換を検討する場合は、次の点を確認します。

  • 交換対象が、同じ種類の固定資産か
  • 双方が1年以上所有している固定資産か
  • 交換後も同一用途に供するか
  • 交換差金があるか
  • 土地と建物が混在していないか
  • 時価評価の根拠は何か
  • 交換特例の申告要件を満たすか
  • 低額譲渡や贈与税の問題がないか

交換は有効な共有解消策ですが、「等価だから税金はない」と短絡的に判断してはいけません。税務上は、資産の種類、用途、所有期間、交換差金、そして申告手続が問題になります。

共有持分放棄|簡単に見えるが、税務・登記・債務負担に注意

共有持分を放棄して、共有関係から離脱する方法もあります。

共有持分放棄とは、共有者の一人が自分の共有持分を放棄し、その持分がほかの共有者に帰属することで、共有関係から離脱するものです。共有持分売買より手続が簡略に見えるため、「もう要らないから放棄したい」というご相談のなかで出てくることがあります。

しかし、共有持分放棄は、安易に使うべき方法ではありません。

ほかの共有者へ経済的利益が移転するため、税務上は贈与税やみなし課税の問題が生じる可能性があります。あわせて、登記の引取り、固定資産税、担保権、既存債務、農地法上の許可、区分所有建物の分離処分禁止なども、検討が必要です。共有持分放棄については、不動産の贈与としての課税関係や、登記引取請求が問題となる場面があります。

特に、価値の低い土地、空き家、管理困難な不動産、固定資産税だけが負担になっている不動産では、「放棄すれば負担から解放される」と考えがちです。しかし、登記がそのまま残る場合には、第三者への対抗関係や固定資産税通知、管理責任が、別途問題になることがあります。

共有持分放棄を検討する場合は、少なくとも税理士と司法書士、そして必要に応じて弁護士に確認したうえで進めるべきです。

資産管理会社・信託で「実質的に整理する」方法もあるが、税負担を軽く見ない

共有を完全に解消するのではなく、管理の仕組みを整えていく、という考え方もあります。

たとえば、共有者が資産管理会社を設立し、不動産を会社に移して、共有持分を株式に置き換える方法です。あるいは、家族信託を使い、受託者が不動産を管理する方法もあります。

これらは、共有者全員で直接不動産を管理する状態を避け、意思決定を整理する手段として検討されることがあります。ただし、不動産を法人へ現物出資・売却する場合には、通常の売買と同様に、譲渡所得税や登録免許税などが問題になります。資産管理会社の活用は、共有の直接的な分割請求リスクを避ける面がある一方で、重い税負担が生じる可能性があります。

信託も、万能ではありません。信託契約の設計、受託者の適格性、受益権の承継、税務上の帰属、金融機関対応、そして将来の相続税申告が、それぞれ問題になります。

不動産を「残す」選択をする場合には、単独所有化だけでなく、法人化や信託も検討対象になります。ただし、節税目的だけで導入すると、税務・法務・管理コストがかえって大きくなってしまうことがあります。

相続税申告後に共有を整理する場合の注意点

相続税申告のあとに共有不動産を整理する場合には、相続税申告と、共有解消後の税務処理とを混同しないことが重要です。

相続税申告では、相続開始時の財産評価、遺産分割の内容、取得者、特例適用を申告します。一方、共有解消のための売買、交換、換価分割、価格賠償は、その後の別個の取引として、譲渡所得税や贈与税、不動産取得税、登録免許税などが問題になります。

特に注意したいのは、次のような場面です。

  • 相続税申告で共有取得した不動産を、申告後すぐに一人が買い取る
  • 相続税評価額を基準に持分売買する
  • 相続税申告後に売却し、取得費加算を検討する
  • 小規模宅地等の特例を使った土地を、売却・交換する
  • 未分割申告後に、分割と共有解消が混在する
  • 代償金の支払が、実際には行われていない
  • 売却代金の分配割合が、遺産分割協議書と異なる
  • 共有者の一人が、認知症、海外居住、行方不明になっている

相続登記についても、令和6年4月1日から申請が義務化されています。相続により不動産の所有権を取得した相続人は、一定の日から3年以内に相続登記の申請をする必要があり、遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内に、内容を踏まえた登記申請が必要です。正当な理由なく申請を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となることがあります。

出典:法務省|相続登記の申請義務化について

共有解消は、登記をして終わり、というものではありません。相続税申告書、譲渡所得申告、登記原因証明情報、売買契約書、共有物分割合意書、代償金の支払証跡。これらを互いに整合させておく必要があります。

共有解消で避けたい短絡的な判断

共有不動産の整理では、次のような判断が、あとから問題になりやすいものです。

  • 「相続税評価額で買い取ればよい」と考えること
  • 「家族間だから契約書はいらない」と考えること
  • 「代償金は後で払えばよい」と曖昧にすること
  • 「等価交換だから税金はない」と決めつけること
  • 「持分を放棄すれば、税金も負担もなくなる」と考えること
  • 「売却代金を代表者口座に入れれば、後で分ければよい」とすること
  • 「共有者の一人が高齢でも、今は問題ない」と先送りすること
  • 「不動産会社の査定だけで、時価の根拠とすること」
  • 「登記だけ整えれば、相続税申告後の説明も足りる」と考えること

共有解消は、家族関係を修復するための手続にもなり得ますし、逆に、紛争を深める手続にもなり得ます。だからこそ、手続に入る前に、価格、税負担、資金、登記、そして将来の利用方針を、あらかじめ整理しておく必要があるのです。

共有不動産を整理する実務上の進め方

共有不動産を整理する場合、実務上は次の順序で進めると、論点を見落としにくくなります。

1. 現状を確認する

登記事項証明書、固定資産税課税明細書、公図、地積測量図、建物図面、賃貸借契約書、ローン資料、相続税申告書、遺産分割協議書を集めます。

2. 共有者全員の意思を確認する

売りたい人、残したい人、住み続けたい人、資金が必要な人、管理したくない人を整理します。感情的な対立がある場合には、税務だけで進めず、弁護士の関与も検討します。

3. 不動産の時価を複数の視点で確認する

固定資産税評価額、相続税評価額、売却査定額、不動産鑑定評価額を比較します。持分売買や価格賠償では、時価の根拠を残しておくことが重要です。

4. 解消方法を比較する

持分売買、全体売却、現物分割、換価分割、価格賠償、交換、共有持分放棄を比較します。税額だけでなく、実行可能性、資金、登記、将来の管理まで見ていきます。

5. 税務試算を行う

売却益、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税、取得費、譲渡費用、交換差金、贈与税、不動産取得税、登録免許税を整理します。

6. 合意書・契約書・登記書類を整える

共有物分割合意書、売買契約書、代償金支払合意書、領収書、振込記録、登記原因証明情報などを整備します。家族間であっても、証拠化を省略しないことが大切です。

7. 申告後の説明資料を残す

なぜその価格にしたのか、なぜその方法を選んだのか、誰がいくら取得し、誰がいくら受け取ったのか、税務申告上どう処理したのか。これらを後から説明できるようにしておきます。

共有解消は、単発の手続ではなく、相続後の資産管理を立て直していく作業です。

まとめ|共有解消は「名義整理」ではなく、財産移転と税務判断である

共有不動産を整理する方法には、持分売買、共有物分割、現物分割、換価分割、価格賠償、交換、共有持分放棄などがあります。

そのどれにも、利点と注意点があります。持分売買は分かりやすい一方で、時価と譲渡所得税が問題になります。換価分割は公平に見えますが、売却価格や譲渡所得税、代金分配を確認する必要があります。価格賠償は不動産を残せますが、代償金の資金調達が欠かせません。交換は複数不動産がある場合に有効ですが、固定資産の交換の特例の要件を満たすかどうかを確認しなければなりません。そして共有持分放棄は、簡単に見えても、贈与税、登記、債務、管理責任が問題になります。

共有不動産の解消で大切なのは、「誰が得をするか」ではありません。誰が何を取得し、誰がどの税負担を負い、将来どのように管理・売却・承継できるかを、後から説明できることです。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、共有不動産を含む相続・贈与について、相続税評価、共有解消方法、譲渡所得税、代償金、交換特例、相続登記、二次相続まで含めて整理しています。すでに共有になっている不動産をどう整理すべきか、共有者間で持分を売買してよいか、売却・交換・価格賠償の税務を比較したい場合は、登記資料、固定資産税資料、相続税申告書、賃貸借契約書、取得費資料を整理したうえで、お問い合わせページからご相談ください。

振り返り

論点主な内容実務上の確認ポイント
最初の確認遺産共有か通常共有か遺産分割で整理すべき段階か、共有物分割の段階かを分ける
持分売買共有者の一人がほかの共有者の持分を買い取る売買価格、譲渡所得税、低額譲渡、資金調達を確認する
全体売却共有者全員で不動産全体を売る売却代金の分配、譲渡所得税、取得費、売却費用を整理する
現物分割土地を分筆して単独所有化する持分割合、価額比、接道、建築制限、不合理分割を確認する
換価分割売却して金銭で分ける任意売却か競売か、売却価格、申告時期、納税資金を見る
価格賠償一人が取得し、ほかの共有者へ代償金を払う代償金の根拠、支払能力、譲渡所得税、担保設定を確認する
交換複数不動産の持分を交換して単独所有化する同種資産、所有期間、用途、交換差金、交換特例を確認する
共有持分放棄持分を放棄して共有から離脱する贈与税、登記引取、固定資産税、担保権、債務負担を確認する
資産管理会社不動産を法人へ移し、株式で管理する譲渡所得税、登録免許税、法人税、管理コストを試算する
信託受託者が不動産を管理する信託契約、受託者、受益権、税務上の帰属を確認する
相続税申告後の整理相続後の売買・交換・分割は別取引として扱う相続税申告書、譲渡所得申告、登記資料の整合性を残す
相続登記令和6年4月1日から申請義務化3年以内の登記、遺産分割成立後の追加的義務を確認する
時価評価相続税評価額だけで判断しない実勢価格、鑑定評価、査定、固定資産税評価額を比較する
税務リスク譲渡所得税、贈与税、交換差金、低額譲渡実行前に税務試算と証拠化を行う
判断軸共有を解消して何を実現したいか売却、保有、居住、賃貸、二次相続まで見て選ぶ
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