相続税の申告で不動産が財産に含まれているとき、必ず確認しておきたい論点の一つが「小規模宅地等の特例」です。
この特例は、一定の宅地等について、相続税の課税価格に算入する価額を大きく減額できる制度です。対象となり得るのは、自宅の敷地、事業に使っていた土地、同族会社へ貸している土地、不動産賃貸に供している土地など、相続の現場でよく目にする土地ばかりです。
ただ、ここで気をつけたいことがあります。小規模宅地等の特例は、「自宅だから使える」「事業用だから80%減額できる」といった単純な制度ではありません。
実務では、たとえば次のような点を一つずつ確かめていく必要があります。
- 相続開始の直前に、誰が、どのようにその宅地等を使っていたか
- その宅地等を取得する相続人は誰か
- 相続税の申告期限まで、所有・居住・事業が続いているか
- 遺産分割によって、その宅地等の取得者が確定しているか
- 複数の宅地等がある場合、どれを選択するか
- 申告書への記載と添付書類が整っているか
つまり小規模宅地等の特例は、「土地評価の特例」であると同時に、「遺産分割」「相続税申告」「事業承継」「居住の継続」「納税資金」が絡み合う、総合的な判断事項なのです。
本記事では、各類型の細かな要件に入る前に、まず制度の全体像を整理していきます。
小規模宅地等の特例とは何か
小規模宅地等の特例とは、個人が相続または遺贈によって取得した財産のうち、被相続人、あるいは被相続人と生計を一にしていた親族の事業用・居住用に使われていた一定の宅地等について、一定の面積まで相続税評価額を減額できる制度です。
その概要は、相続開始の直前に被相続人等の事業用または居住用に供されていた宅地等のうち一定のものについて、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、区分ごとに一定割合を減額するもの、と整理できます。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
ここでいう「宅地等」には、土地そのものだけでなく、土地の上に存する権利も含まれます。したがって、所有権はもちろん、一定の敷地利用権などが論点になることもあります。
一方で、対象となるのは建物または構築物の敷地として使われている宅地等であり、農地・採草放牧地、棚卸資産およびこれに準ずる資産は除かれます。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
この点は、実務ではとても大切です。
見た目には同じ「土地」であっても、それが宅地なのか、農地なのか、雑種地なのか、あるいは建物や構築物の敷地として利用されているのかによって、そもそも特例の対象になるかどうかが変わってくるからです。
土地評価の前提として、評価単位や現況地目、利用状況の確認も欠かせません。宅地の評価単位は利用形態や権利関係によって変わります。ですから特例を考える前に、まず「どの土地を一つの単位として評価するのか」を整理しておく必要があります。
特例の対象となる4つの主な区分
小規模宅地等の特例は、大きく次の4つの区分で捉えると理解しやすくなります。
| 区分 | 主な内容 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 被相続人等の居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 貸付事業以外の個人事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 一定の同族会社の事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 不動産貸付業、駐車場業などの貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
この表だけを眺めると、制度はずいぶん単純に見えるかもしれません。
けれども実際の申告では、「どの区分に当たるか」だけでは終わりません。「誰が取得すれば適用できるか」「いつまで保有・居住・事業を続けるべきか」「貸付事業用宅地等と併用するときに限度面積をどう調整するか」まで、確認すべき事柄が続きます。
実務では、利用状況、取得者、継続要件、限度面積、申告手続が横断的に関わってきます。とりわけ、特定居住用・特定事業用・特定同族会社事業用・貸付事業用という区分ごとに、要件の組み立て方が異なる点に注意が必要です。
特定居住用宅地等|自宅敷地だからといって必ず使えるわけではない
特定居住用宅地等は、被相続人等が居住の用に供していた宅地等について、一定の要件を満たす場合に、330㎡まで80%を減額できる区分です。
相続税の実務で、最も相談の多い類型の一つでもあります。自宅敷地に特例が使えるかどうかは、相続税額を大きく左右するからです。
ただ、ここでも注意したい点があります。
自宅の土地だからといって、いつでも無条件で適用できるわけではありません。取得者が配偶者なのか、同居していた親族なのか、いわゆる別居の親族なのかによって、求められる要件が変わってきます。
たとえば、被相続人の配偶者が取得する場合には、取得者ごとの要件は設けられていません。一方、同居していた親族が取得する場合には、相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から申告期限まで保有していることが求められます。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
また、二世帯住宅や、老人ホーム入所中の自宅などは、形式だけで判断すると誤りやすい領域です。区分所有登記の有無、同一棟の建物かどうか、入所前の生活拠点、入所後の自宅の利用状況などが、いずれも論点になります。一定の老人ホーム等への入所により相続開始の直前には居住していなかったケースでも、一定の要件のもとで居住の用に含まれる場合があります。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
ですから特定居住用宅地等では、「住民票があるか」「家があるか」だけでは足りません。
実務上は、生活の本拠がどこにあったか、同居の実態はどうか、施設入所に至った経緯、自宅の利用状況、相続人の居住・所有の状況まで、丁寧に確認していくことになります。
特定事業用宅地等|事業承継とセットで考える特例
特定事業用宅地等は、被相続人等が事業の用に供していた宅地等について、一定の要件を満たす場合に、400㎡まで80%を減額できる区分です。
ここでいう事業からは、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業、および準事業が除かれます。これらは原則として、貸付事業用宅地等の枠で検討することになります。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
特定事業用宅地等で問われるのは、誰がその事業を引き継ぐのか、という点です。
被相続人の事業に使われていた宅地等であれば、その上で営まれていた事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、申告期限までその事業を営んでいることが求められます。あわせて、その宅地等を申告期限まで保有していることも必要です。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
このため、特定事業用宅地等は単なる土地評価の問題にとどまりません。
事業を誰が承継するのか、申告期限まで事業を続けられるのか、ほかの相続人との遺産分割をどうするのか、後継者へ事業用資産を集中させる場合の公平性をどう保つのか。そこまで含めて検討していく必要があります。
なお、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等については、一定の場合を除き、特定事業用宅地等から除かれます。ただし、一定の規模以上の事業を行っていた被相続人等の事業用宅地等は、3年以内事業宅地等には該当しないものとされています。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
相続の直前に、形式だけ事業利用へ切り替えるような対応は、慎重に考えるべきでしょう。
特定同族会社事業用宅地等|会社に貸している土地の注意点
特定同族会社事業用宅地等は、被相続人等が一定の同族会社に貸していた宅地等について、その法人の事業の用に使われている場合に、一定の要件のもとで400㎡まで80%を減額できる区分です。
たとえば、個人が所有する土地を、自分や親族が経営する会社の店舗・工場・事務所などの敷地として貸している、といった場面で問題になります。
この区分では、土地を使っているのが個人ではなく法人であるため、次のような点を確認することになります。
- その法人が「一定の法人」に該当するか
- 相続開始の直前から申告期限まで、その法人の事業の用に供されているか
- 土地を取得する親族が、申告期限においてその法人の役員であるか
- 土地を申告期限まで保有しているか
- 法人の事業が貸付事業に当たらないか
要件を整理すると、相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の法人の事業の用に供されていた宅地等であること、取得者である親族が申告期限においてその法人の役員であること、宅地等を申告期限まで保有していること、が柱になります。ここでいう「一定の法人」とは、相続開始の直前において被相続人および親族等が発行済株式総数または出資総額の50%超を有している法人等を指します。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
この区分では、土地の評価だけでなく、会社の株主構成、役員関係、土地の賃貸借契約、地代、無償返還届出、そして同族会社株式の評価との関係まで、目を配る必要があります。
とくに同族会社が絡む場合、「個人所有の土地」と「会社の事業・株式評価」は切り離せません。法人側の状況が、個人の相続税申告に直接影響することがあるのです。
貸付事業用宅地等|50%減額だが適用判断は簡単ではない
貸付事業用宅地等は、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業、準事業などに使われていた宅地等について、一定の要件のもとで200㎡まで50%を減額できる区分です。
減額割合は50%ですから、特定居住用宅地等や特定事業用宅地等の80%減額と比べると、小さく見えるかもしれません。
それでも、不動産賃貸物件を複数持っている場合や、相続財産に占める不動産の割合が大きい場合には、税額への影響は決して無視できません。
貸付事業には、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業、および準事業が含まれます。この区分では、被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、申告期限まで貸付事業を行っていること、そして宅地等を申告期限まで保有していることが要件となります。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
また、相当の対価を得て継続的に行う貸付けであることが重要です。使用貸借によって貸し付けている宅地等は、貸付事業用宅地等の対象にはなりません。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例 Q&A
さらに、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、原則として貸付事業用宅地等の対象になりません。ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等について、その特定貸付事業の用に供されていた宅地等は、3年以内貸付宅地等には該当しないものとされています。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
ですから、相続の直前に空き地を駐車場にする、賃貸物件を建てる、親族間で貸付関係を整える、といった対応を、税額だけを見て決めるのは禁物です。
貸付の実態、賃貸借契約、対価、継続性、事業的規模、相続開始前3年以内の制限、申告期限までの継続。これらを一つずつ確かめていく必要があります。
限度面積の考え方|複数の宅地等がある場合は選択が必要になる
小規模宅地等の特例には、区分ごとに限度面積が定められています。
特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は、合わせて400㎡まで。特定居住用宅地等は330㎡まで。貸付事業用宅地等は200㎡までです。
ここで押さえておきたいのは、特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等は、貸付事業用宅地等がない場合、合計730㎡まで併用できるという点です。
一方、貸付事業用宅地等もあわせて適用する場合には、次のような調整計算が必要になります。
特定事業用等宅地等の面積 × 200/400 + 特定居住用宅地等の面積 × 200/330 + 貸付事業用宅地等の面積 ≦ 200㎡
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
この調整計算は、実務上とても重要です。
複数の土地があるとき、「どの宅地等に特例を使うか」によって相続税額が変わってきます。単純に面積の大きい土地を選べばよいわけではありません。1㎡あたりの評価額、減額割合、限度面積、取得者、二次相続、遺産分割の公平性まで見渡したうえで判断する必要があります。
実際、特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等はそれぞれの限度面積まで併用できる一方、貸付事業用宅地等を併用する場合には調整計算が入り、どの宅地等を優先して選ぶかが税額を左右します。
「誰が取得するか」が特例の成否を左右する
小規模宅地等の特例は、土地そのものだけで決まる制度ではありません。
同じ土地であっても、誰が取得するかによって、適用できる場合とできない場合に分かれます。
特定居住用宅地等では、配偶者、同居親族、一定の別居親族で要件が異なります。特定事業用宅地等では、事業を引き継ぐ親族が取得し、事業と所有を申告期限まで継続することが求められます。特定同族会社事業用宅地等では、取得者が申告期限においてその法人の役員であることが必要です。そして貸付事業用宅地等では、貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで継続することが鍵になります。
ですから遺産分割を考える際には、「誰がその土地を欲しいか」だけでなく、「誰が取得すれば特例の要件を満たすか」という視点が欠かせません。
もっとも、税額ばかりを優先して取得者を決めると、別の問題が頭をもたげることがあります。
たとえば、自宅を取得する人、事業を承継する人、ほかの財産を取得する人の間で、取得財産のバランスが崩れることがあります。代償金の支払能力が問題になることもあります。一次相続では有利でも、二次相続で税負担が重くなる、ということも起こり得ます。
こうした事情があるからこそ、小規模宅地等の特例は、遺産分割の中で慎重に位置づける必要があるのです。
未分割のままでは原則として適用できない
小規模宅地等の特例で、とりわけ注意したいのが、遺産分割との関係です。
この特例の対象となり得る宅地等を取得した相続人等が2人以上いる場合には、特例を受けようとする宅地等の選択についてその全員が同意していること、そして原則として相続税の申告期限までに分割されていることが必要とされています。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
また、申告期限までに財産が分割されていない場合でも、相続税の申告期限そのものは延びません。未分割のときは、原則として民法上の相続分等に従って取得したものとして申告・納税を行うことになります。その際、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などは適用できない申告となるため、注意が必要です。
出典:国税庁|No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
分割後に一定の手続を経て特例を適用できる場合もありますが、申告期限から3年以内に分割があった場合に限られるなど、期限の管理が重要になります。
出典:国税庁|No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
この点は、相続税申告の実務でとても大切です。
「特例を使えば税額が下がる」と見込んでいても、遺産分割協議がまとまらなければ、期限内申告では適用できない可能性があります。小規模宅地等の特例は、家族間の合意形成と切り離せないのです。
小規模宅地等の特例で確認すべき実務上の順番
小規模宅地等の特例を検討するときは、次の順番で整理していくと判断しやすくなります。
1. まず宅地等の評価単位を確認する
どの土地を一つの評価単位として見るのかを確認します。
一筆の土地だから一つの宅地等、とは限りません。複数筆でも一体で利用されていれば、一つの評価単位になることがあります。逆に、一筆の土地でも利用状況が異なれば、分けて考える場合があります。
この整理を誤ると、特例の対象面積や対象部分の判断もずれてしまいます。
2. 相続開始直前の利用状況を確認する
自宅として使っていたのか、個人事業用だったのか、同族会社の事業用だったのか、それとも不動産貸付用だったのか。利用の実態を確かめます。
利用状況は、相続が開始してから作るものではありません。基本的には、相続開始直前の実態が出発点になります。
3. 取得者を確認する
誰が取得するかによって、要件が変わります。
配偶者であれば要件が緩やかな場合でも、子や別居親族が取得するときには、継続要件や所有要件が厳しくなることがあります。
4. 申告期限までの継続要件を確認する
居住、事業、貸付、そして所有を、申告期限まで続けられるかを確認します。
相続後すぐに売却する予定がある場合や、事業を廃止する予定がある場合には、特例の適用に影響することがあります。
5. 複数宅地がある場合は選択関係を確認する
複数の宅地等が対象になる場合には、どれを選ぶかを検討します。
減額割合、限度面積、1㎡あたりの評価額、取得者、二次相続、納税資金まで含めて比較する必要があります。
6. 遺産分割と申告手続を確認する
特例を適用するには、申告書への記載と必要書類の添付が欠かせません。相続税の申告書に特例の適用を受けようとする旨を記載し、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど、一定の書類を添付することが求められます。
出典:国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
小規模宅地等の特例を「節税策」だけで考えない
小規模宅地等の特例は、相続税額を大きく減らす可能性があるだけに、どうしても「節税効果」に目が向きがちです。
けれども実務上は、それだけでは不十分です。
たとえば、次のような問題が起こり得ます。
- 税額を下げるために特定の相続人へ不動産を集中させた結果、ほかの相続人との公平性が問題になる
- 特例を使うために取得者を決めたものの、代償金を支払う資金がない
- 一次相続では税額が下がったが、二次相続で税負担が重くなる
- 申告期限までの保有・居住・事業の継続が難しい
- 相続後に売却する予定だったため、継続要件との整合性が問題になる
- 土地の評価単位や利用状況の整理が不十分で、申告後の税務調査で説明しにくい
相続対策では、相続税の軽減だけでなく、争族の防止、納税資金、申告実務を一体で考える必要があります。とくに小規模宅地等の特例は、税額軽減の効果が大きい一方で、分割の内容や取得者の選択に強く影響します。だからこそ、家族間の納得感と、申告後の説明可能性を、同時に見据えることが大切です。
申告後に説明できる状態を作ることが重要
小規模宅地等の特例を適用する際には、申告書に数字を書き込むだけでは足りません。
なぜその宅地等が対象になるのか、なぜその区分に該当するのか、なぜその取得者で要件を満たすのか、どの資料で居住・事業・貸付の実態を確認したのか。これらを、後からきちんと説明できる状態にしておく必要があります。
確認しておきたい資料としては、たとえば次のようなものがあります。
- 固定資産税課税明細書
- 登記事項証明書
- 公図、地積測量図
- 建物図面、賃貸借契約書
- 住民票、戸籍、施設入所関係資料
- 事業の申告書、帳簿、許認可資料
- 法人の株主名簿、登記簿、役員関係資料
- 遺産分割協議書
- 小規模宅地等に係る計算明細書
- 相続人全員の選択同意に関する資料
とくに、同族会社、貸付不動産、二世帯住宅、老人ホーム入所、配偶者居住権、未分割、土地の一部利用などが絡む場合には、資料の不足がそのまま判断の不安定さにつながります。
税務調査では、特例の適用可否だけでなく、土地の利用状況、取得者の継続状況、申告期限までの事実関係、名義と実態の整合性が確認されることがあります。
小規模宅地等の特例は、適用できれば大きな効果がある制度です。その分、適用の根拠を丁寧に残しておくことが欠かせません。
まとめ|小規模宅地等の特例は、土地・人・時間・手続を一体で見る
小規模宅地等の特例は、相続税申告における重要な特例です。
判断の入口は「その土地が何に使われていたか」にありますが、結論はそれだけでは決まりません。
大切なのは、次の4つを一体で確認することです。
- 土地:どの宅地等が、どの評価単位で、どの利用区分に該当するか
- 人:誰が取得し、その人が要件を満たすか
- 時間:相続開始の直前から申告期限まで、居住・事業・貸付・所有が継続しているか
- 手続:分割、選択同意、申告書の記載、添付書類が整っているか
この4つがそろって初めて、特例適用の判断へと進むことができます。
また、小規模宅地等の特例は、遺産分割や二次相続、納税資金、事業承継とも密接に関わります。税額を下げることだけを目的に判断すると、家族間の不公平感や、将来の承継リスクが残ってしまうことがあります。
相続税申告で小規模宅地等の特例が関係しそうな場合には、早い段階で、宅地の利用状況、取得者、遺産分割の方針、申告期限までの見通しを整理しておくことが重要です。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、小規模宅地等の特例を含む相続税申告について、財産評価、遺産分割、納税資金、申告後の説明可能性まで踏まえて論点を整理しています。自宅、賃貸不動産、同族会社に貸している土地、事業用不動産などが相続財産に含まれる場合には、特例が使えるかどうかだけでなく、どのように分割し、どのような資料を整えるべきかまで、早めに確認しておくことが大切です。
小規模宅地等の特例の適用可能性や、相続税申告に向けた不動産評価・遺産分割の進め方に不安がある場合は、当事務所のお問い合わせページからご相談ください。
重要ポイントの振り返り
| 項目 | 押さえるべきポイント |
|---|---|
| 制度の位置づけ | 事業用・居住用など一定の宅地等について、相続税の課税価格を減額する制度 |
| 主な区分 | 特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等 |
| 減額割合 | 居住用・事業用・特定同族会社事業用は原則80%、貸付事業用は50% |
| 限度面積 | 居住用330㎡、事業用・特定同族会社事業用400㎡、貸付事業用200㎡ |
| 判断の入口 | 相続開始直前の宅地等の利用状況 |
| 重要な確認事項 | 取得者、保有継続、居住・事業・貸付継続、分割、申告手続 |
| 未分割の場合 | 原則として期限内申告では特例を適用できないため、期限管理が重要 |
| 実務上の注意 | 税額だけでなく、遺産分割、二次相続、納税資金、申告後の説明可能性を含めて判断する |