個人の確定申告というと、多くの方はまず「所得税をいくら納めるのか」「還付はあるのか」に意識が向くのではないでしょうか。
もちろん、所得税の計算は確定申告の中心にあるものです。所得税は、個人の1年間の所得を集計し、そこから所得控除を差し引いた課税所得に税率を適用して算出します。そして所得税等の確定申告とは、1月1日から12月31日までに生じた所得と税額を計算し、源泉徴収や予定納税との過不足を精算する手続にほかなりません。
出典:国税庁|No.1000 所得税のしくみ
出典:国税庁|所得税のしくみ
ただ、実務の現場で本当に大切なのは、確定申告の影響が所得税だけで完結しないという点です。
申告した所得金額、所得区分、控除、損失、資産取引の内容は、その後の住民税、個人事業税、国民健康保険料、不動産関連税、消費税、相続税・贈与税とも密接に結びついていきます。
言い換えれば、個人の確定申告は「所得税の申告書を作る作業」ではありません。自分の収入・資産・事業・生活の実態を、複数の税目に耐えられる形へ整理していく作業なのです。
所得税は中心だが、税務判断の終点ではない
所得税の確定申告は、個人の1年間の所得を整理する入口にあたります。
事業所得、不動産所得、給与所得、雑所得、一時所得、譲渡所得。どの所得区分で整理するかによって、必要経費の範囲、損益通算の可否、青色申告の活用、税率、添付資料、さらには将来の税務調査で求められる説明の内容まで変わってきます。
そして、その申告内容は、他の税目や制度へとそのまま引き継がれていきます。
とりわけ注意しておきたいのは、次のような場面です。
- 副業収入を所得税では申告不要と考えたが、住民税申告の要否を確認していない
- 個人事業の所得税額だけを見て、翌年の個人事業税や国民健康保険料を見込んでいない
- 不動産収入の黒字・赤字だけを見て、固定資産税、借入返済、修繕費、消費税を含めた資金繰りを見ていない
- 株式や配当を申告して還付を受けたが、住民税や国民健康保険料への影響を確認していない
- 不動産を取得・売却したが、不動産取得税、登録免許税、印紙税、固定資産税、譲渡所得の関係を一体で整理していない
- 親族間で資産を移転したが、所得税だけでなく贈与税・相続税・時価の問題を検討していない
こうしたずれは、「申告書を出したかどうか」ではなく、「その申告内容が他の制度でどう使われるか」を見落としたときに起こります。
確定申告後にまず影響するのは住民税
所得税の確定申告を終えたあと、多くの方にとって最も身近に効いてくるのが住民税です。
住民税は、原則として前年の所得を基に市区町村が計算します。所得税の確定申告書を税務署へ提出していれば、自治体はその情報を基に住民税を算定するため、改めて住民税申告を求められないのが一般的な取扱いです。ただし、所得税の確定申告が不要な場合であっても、住民税の申告が必要になることがあります。
出典:横浜市|市民税・県民税の申告について
出典:千代田区|住民税の申告
ここで押さえておきたいのは、「所得税では申告不要」と「住民税でも何もしなくてよい」は同じではない、ということです。
たとえば、給与所得者が少額の副業所得を得ているケース。所得税の確定申告義務があるかどうかだけで判断してしまうと、住民税側の申告を見落としがちです。医療費控除や寄附金控除などを住民税に反映させたい場合にも、所得税申告あるいは住民税申告の整理が欠かせません。
住民税は、所得税と似た所得情報を用います。しかし、控除額や課税・非課税の判定、自治体ごとの手続まで完全に一致しているわけではありません。所得税の還付だけを見て申告すると、住民税や、後ほど触れる国民健康保険料に影響が及ぶことがあります。
とくに上場株式等の配当所得や譲渡所得については、令和6年度住民税、すなわち令和5年分所得以降、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できなくなりました。源泉徴収ありの特定口座や配当を申告するかどうかは、所得税だけでなく、住民税・国民健康保険料まで含めて判断する必要があります。
出典:国分寺市|株式や配当などの確定申告による国民健康保険税への影響
出典:川崎市|上場株式等に係る配当所得等の課税方式と国民健康保険料について
個人事業者は個人事業税を別に考える必要がある
個人で事業を営んでいる方の場合、所得税のほかに個人事業税が関わってくることがあります。
個人事業税は、すべての個人事業主へ一律に課される税金ではありません。地方税法上の法定業種に該当する事業を営んでいるか、事業所得や不動産所得の金額がどの程度あるか、事業主控除や繰越控除がどう扱われるか。これらを一つずつ確認していく必要があります。東京都主税局によれば、事業主控除は年間290万円、営業期間が1年未満の場合は月割額とされています。
出典:東京都主税局|個人事業税
ここで誤解されやすいのは、所得税の事業所得があるからといって、必ず個人事業税がかかるとは限らない点です。
反対に、本人が「副業」と呼んでいても、実態として継続的・独立的に事業を営み、法定業種に該当し、一定の所得がある場合には、個人事業税の対象となることがあります。
また、所得税の青色申告特別控除と、個人事業税の課税所得の計算は同じではありません。所得税の申告書を作る段階で、翌年の資金繰りに個人事業税の負担を織り込んでおかないと、「所得税は想定内だったのに、後から事業税の通知が届いて資金が苦しい」という事態にもなりかねません。
なお、個人事業税は、支払った年分の所得税計算上、事業所得または不動産所得の必要経費になる税金です。一方で、所得税や住民税は必要経費にはなりません。固定資産税は業務用部分に限って必要経費になるなど、税金ごとに経費性が異なります。
出典:国税庁|No.2210 必要経費の知識
この点は、確定申告の現場でよく混乱が生じるところです。税金を払ったからといって、すべてが租税公課として経費になるわけではありません。
国民健康保険料・介護保険料にも所得情報が使われる
個人事業主、フリーランス、退職後の個人、不動産収入のある個人。こうした方々にとっては、国民健康保険料や介護保険料への影響も見過ごせません。
国民健康保険料・国民健康保険税には、所得情報を基に計算される部分があります。厚生労働省は、国民健康保険料・税について、所得基準を下回る世帯に対する均等割・平等割の軽減制度などを示しています。
出典:厚生労働省|国民健康保険の保険料・保険税について
また、自治体の実務では、前年所得を基礎に所得割、均等割、平等割等を計算する方式が用いられます。税率・料率・計算方式は自治体ごとに異なるため、正確な金額は住所地の自治体で確認する必要があります。
出典:習志野市|国民健康保険料の計算方法
出典:さいたま市|国民健康保険税の計算
ここで実務上見落とせないのは、「所得税の税額が下がる申告」が、必ずしも「全体の負担が下がる申告」とは限らないという事実です。
たとえば、申告不要とできる上場株式等の配当所得・譲渡所得を、損益通算や繰越控除、配当控除等のために申告したとします。所得税では有利に見えても、住民税や国民健康保険料の算定上の所得には影響が及ぶことがあります。表現は自治体によって異なりますが、確定申告をした所得が国民健康保険料の算定対象に含まれる場合があるため、申告の有利・不利を所得税だけで判断することはできません。
出典:墨田区|国民健康保険料の計算
出典:荒川区|株式や配当などの確定申告による国民健康保険料への影響
確定申告で見極めるべきは、還付額だけではありません。翌年度の住民税、国民健康保険料、介護保険料、各種給付・負担区分への影響まで見渡したうえで、申告する所得と申告しない所得を整理していく必要があります。
不動産を持っている人は固定資産税・都市計画税を切り離せない
不動産収入がある方、あるいは不動産を活用している方は、所得税だけでなく固定資産税・都市計画税を常に意識しておかなければなりません。
固定資産税は、土地、家屋、償却資産を所有している人に課される市町村税です。東京都23区内では都が都税として課税します。対象となる固定資産には土地、家屋、償却資産が含まれ、1月1日現在の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人が納税義務者とされます。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
所得税との関係で見ると、固定資産税は不動産所得や事業所得の必要経費になる場合があります。ただし、そのすべてが経費になるわけではなく、あくまで業務用部分に限られます。自宅兼事務所、自宅兼賃貸、賃貸併用住宅などでは、事業・賃貸部分と家事部分を合理的に区分しなければなりません。
さらに、固定資産税は、所得が赤字であっても発生します。家賃収入が少ない年、空室が多い年、大規模修繕があった年でも、所有している限り負担は続いていきます。
そのため、不動産所得の確定申告では、「所得税がいくらか」だけでなく、次の点も併せて確認しておく必要があります。
- 固定資産税・都市計画税をどの物件に対応させるか
- 自宅部分と賃貸部分をどう按分するか
- 借入金返済、修繕費、管理費、保険料と合わせて資金繰りが成立しているか
- 賃貸をやめた後も固定資産税負担が残るか
- 売却時の譲渡所得計算に、取得費・譲渡費用・固定資産税精算金等がどう関係するか
不動産は「収入を生む資産」であると同時に、「保有しているだけで税金と維持費がかかる資産」でもあります。確定申告では、所得税だけでなく、保有コスト全体を見渡す視点が求められます。
事業用資産がある場合は償却資産の固定資産税に注意する
個人事業主や不動産オーナーが見落としやすいのが、償却資産に対する固定資産税です。
償却資産とは、土地・家屋以外の事業用資産で、所得税法または法人税法上、減価償却の対象となるべき資産をいいます。ただし、自動車税種別割や軽自動車税種別割の対象となるものなどは除かれます。
出典:東京都主税局|固定資産税(償却資産)
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)Q&A
所得税の減価償却資産と、固定資産税上の償却資産は、よく似てはいるものの、完全に一致するわけではありません。
たとえば、事業で使う機械、器具備品、看板、内装設備、外構設備、太陽光発電設備、賃貸物件の設備などを所有している場合。所得税の減価償却だけでなく、償却資産申告の要否も確認しておく必要があります。
実務上のポイントは、次のとおりです。
- 所得税の固定資産台帳を作っただけでは、償却資産申告をしたことにはならない
- 少額資産、一括償却資産、自動車関係など、所得税と地方税で扱いが異なるものがある
- 事業用資産を新たに購入した年は、翌年1月1日時点の所有資産として申告対象になるか確認する
- 賃貸不動産の設備や内装は、土地・家屋の固定資産税とは別に償却資産の論点が出ることがある
所得税の確定申告では減価償却費として経費計上しているのに、地方税側の償却資産申告を見落としている。そうしたケースは決して珍しくありません。ここは、会計ソフトへの入力だけでは完結しない領域です。
消費税・インボイスは所得税とは別の考え方で判定する
個人事業主や不動産収入のある方は、消費税についても確認が欠かせません。
消費税は、所得税の所得区分とはまったく別の考え方で判定します。所得税では、事業所得、不動産所得、雑所得など所得の性質に応じて区分します。これに対し消費税では、事業者が行う資産の譲渡、貸付け、役務提供などが課税対象になるか、課税売上がどの程度あるか、課税事業者か免税事業者か、簡易課税やインボイス登録をどうするか、といった点を検討していきます。
出典:国税庁|消費税のしくみ
出典:国税庁|インボイス制度について
消費税では、所得税で赤字か黒字かとは切り離して、課税売上の有無や取引区分が問われます。
たとえば不動産賃貸では、住宅家賃は消費税非課税である一方、事務所家賃や駐車場収入は課税取引となる場合があります。個人事業でも、売上先が事業者か一般消費者か、取引先がインボイスを求めるか、免税事業者のままでよいか。所得税とは別の判断軸が存在します。
また、インボイス制度のもとでは、買手側が仕入税額控除を受けるために、原則としてインボイス発行事業者から交付されたインボイスを保存しなければなりません。売手側は、登録することで課税事業者となり、消費税の申告・納付義務や事務負担が生じます。
出典:国税庁|インボイス制度について
ここで大切なのは、インボイス登録を「した方がよい」「しない方がよい」と単純に決めつけないことです。
少なくとも次の事項は確認しておきたいところです。
- 売上先がインボイスを必要とする事業者か
- 価格交渉や取引継続にどのような影響があるか
- 消費税負担を価格に転嫁できるか
- 簡易課税、2割特例、経過措置の適用可能性があるか
- 不動産収入に課税売上と非課税売上が混在していないか
- 設備投資や不動産取得による消費税還付を見込む場合、届出期限を誤っていないか
消費税は、所得税の確定申告のときになって初めて考えたのでは遅い、ということがあります。とくに届出、選択、不適用、簡易課税、課税事業者選択などは、期限を過ぎるとその年の税額に大きく響く場合があります。
不動産取得税・登録免許税・印紙税は取得時・契約時に発生する
不動産を取得・売却する場合、所得税の譲渡所得だけを見ていては不十分です。
不動産を取得したときには、不動産取得税が関わってきます。東京都では、不動産を取得した日から30日以内に、土地・家屋の所在地を所管する都税事務所等へ申告する必要があり、未登記物件を取得した場合も申告が求められます。ただし、取得日から30日以内に登記を申請した場合には、原則として申告不要とされています。
出典:東京都主税局|不動産取得税
不動産登記をするときには、登録免許税も発生します。登録免許税は、不動産、会社、人の資格などについての登記・登録等に対して課される税金で、不動産登記では登記の内容に応じて課税標準や税率が変わります。
出典:国税庁|No.7190 登録免許税のあらまし
出典:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表
さらに、不動産売買契約書や建設工事請負契約書などには印紙税が関わります。不動産の譲渡に関する契約書については、記載金額や作成時期によって軽減措置の対象となる場合があります。
出典:国税庁|不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
出典:国税庁|No.7140 印紙税額の一覧表
これらの税金は、所得税の確定申告書の中だけで完結するものではありません。
とはいえ、所得税との関係では、取得費、譲渡費用、必要経費、固定資産台帳、資金計画に影響します。たとえば、取得時に支払った登録免許税や不動産取得税をどう処理するかは、取得した資産の用途や所得区分によって検討が必要です。
不動産取引では、「買ったとき」「持っているとき」「貸したとき」「売ったとき」で、それぞれ別の税金が発生します。所得税の譲渡所得だけを見ていると、取得・保有・契約の各段階に生じる税負担を見落としてしまいます。
相続税・贈与税は、所得税とは別の税目だが接点が多い
相続や贈与は、所得税とは別の税目で扱われます。
もっとも、相続・贈与で取得した財産を売却した場合には、所得税の譲渡所得が問題になります。親族間で不動産や株式を低額で売買した場合には、所得税、贈与税、相続税、さらに法人が関係する場合には法人税まで含めた確認が必要になります。
贈与税については、暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方法があります。暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計から基礎控除額を差し引いて課税されます。
出典:国税庁|No.4402 贈与税がかかる場合
相続税・贈与税については、国税庁が相続税、贈与税、財産評価、事業承継税制に関する情報を整理しています。
出典:国税庁|相続税・贈与税
出典:国税庁|相続・贈与
所得税との接点として、とくに注意しておきたいのは次のような論点です。
- 相続で取得した不動産を売却する場合の取得費と取得時期
- 相続税の申告内容と譲渡所得計算の整合性
- 親族間売買の時価と低額譲渡の問題
- 生前贈与した資産を後で売却する場合の取得費引継ぎ
- 相続直後の賃貸不動産の賃料収入を誰が申告するか
- 生命保険金や年金、退職金の所得税・相続税・贈与税の区分
相続税や贈与税は「資産を受け取ったとき」の税金ですが、その影響はその後の所得税申告にまで及びます。資産を受け取った時点の資料を残していないと、数年後に売却する段階で、取得費や取得時期の説明に困ることになりかねません。
所得税と周辺税目を整理するときの実務上の順番
個人の確定申告で周辺税目まで含めて整理する場合、いきなり税額計算に入るのは得策ではありません。次の順番で確認していくと、判断がぶれにくくなります。
1. まず、収入の性質を整理する
最初に確認したいのは、入金の名前ではなく、その収入が何に基づくものかです。
給与なのか、業務委託なのか、不動産賃貸なのか、資産売却なのか、保険金なのか、補助金なのか、贈与なのか。これによって、所得税の所得区分が変わります。
所得区分が変われば、必要経費、損益通算、住民税、個人事業税、消費税、源泉徴収、国民健康保険料への影響も変わってきます。
2. 次に、所得税以外へ流れる情報を確認する
所得税の申告内容は、住民税や国民健康保険料などへ波及していきます。
とくに、申告不要制度を選べる所得、分離課税の所得、譲渡所得、株式損失、配当所得、不動産所得、事業所得については、「所得税の申告で有利か」だけでなく、「住民税や保険料にどう影響するか」まで確認する必要があります。
3. 事業・不動産がある場合は地方税を確認する
個人事業がある場合は、個人事業税と償却資産申告を確認します。
不動産がある場合は、固定資産税・都市計画税、不動産所得の必要経費、固定資産税精算金、そして将来の売却時の取得費・譲渡費用を確認します。
ここでは、所得税の帳簿と地方税の資料がつながっているかどうかが重要になります。
4. 消費税は所得税とは別に判定する
個人事業や不動産収入がある場合、消費税は所得税のあとに「ついでに」見るものではありません。
課税売上、非課税売上、免税事業者、課税事業者、インボイス、簡易課税、届出期限、設備投資の有無を、別枠で確認していきます。
所得税では雑所得として扱っている収入でも、消費税では事業としての継続性・独立性が問われる場合があります。
5. 資産の取得・保有・売却・承継を一連で見る
不動産、株式、事業用資産、保険、相続財産などは、取得時、保有時、売却時、承継時に、それぞれ別々の税金が関わります。
取得時には不動産取得税、登録免許税、印紙税。
保有時には固定資産税、都市計画税、償却資産税。
運用時には所得税、住民税、消費税。
売却時には譲渡所得、住民税、場合により消費税。
承継時には相続税、贈与税、場合により所得税。
この流れを切り離して考えてしまうと、税負担や資料不足のリスクを見落とすことになります。
周辺税目まで見ると、確定申告で確認すべき資料も変わる
所得税だけを申告するつもりでいると、集める資料もどうしても限定的になりがちです。
しかし、周辺税目まで見据えるのであれば、次のような資料も整理しておきたいところです。
- 所得税の確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書
- 住民税通知書、国民健康保険料通知書、個人事業税通知書
- 固定資産税・都市計画税納税通知書、課税明細書
- 償却資産申告書、固定資産台帳、減価償却明細
- 不動産の売買契約書、登記事項証明書、固定資産税精算金の資料
- 不動産取得税、登録免許税、印紙税に関する資料
- 賃貸借契約書、管理会社の明細、修繕工事の契約書・請求書
- 消費税の届出書、インボイス登録通知、課税売上・非課税売上の内訳
- 証券会社の年間取引報告書、配当支払通知書、特定口座年間取引報告書
- 相続税申告書、遺産分割協議書、贈与契約書、保険金支払通知書
- 過年度の申告書、修正申告書、更正の請求書、税務署・自治体からの通知
これらは、単に「添付するため」の資料ではありません。
所得税と周辺税目のつながりを説明するための資料です。
税務署、都道府県、市区町村、金融機関、そして将来の相続人に対して、なぜその所得区分にしたのか、なぜその経費にしたのか、なぜその資産価格で整理したのか。それを語るための土台になります。
所得税だけを見た判断が危うくなる典型的な場面
副業所得を少額だからと軽く見る場面
所得税の確定申告義務だけを見て、副業所得を申告しないと判断すると、住民税申告や国民健康保険料への影響を見落とすことがあります。
また、副業が継続的・独立的に行われている場合には、雑所得か事業所得か、消費税上の事業に当たるか、インボイス登録が必要か、といった別の論点も浮かび上がってきます。
不動産収入を家賃の入金だけで整理する場面
不動産所得では、家賃収入、礼金、更新料、敷金、固定資産税、借入金利子、修繕費、減価償却費、管理費を整理する必要があります。
さらに、固定資産税・都市計画税、空室リスク、借入返済、将来の売却、相続・贈与まで関係してきます。
「所得税の赤字が出るかどうか」だけでは、不動産の税務判断として不十分です。
株式や配当の申告で所得税還付だけを見る場面
上場株式等の配当や譲渡損失については、所得税の還付、損益通算、繰越控除だけを見ていると、判断を誤ることがあります。
申告した所得は、住民税や国民健康保険料の算定に影響する可能性があります。とくに、所得税と住民税で課税方式を分けられなくなった後は、申告選択の影響を一体で検討する必要があります。
事業税・消費税の納税資金を見込んでいない場面
所得税の確定申告の時点で納税が終わったように見えても、その後に住民税、個人事業税、消費税、国民健康保険料の負担が続くことがあります。
確定申告後の資金繰りを考えるなら、所得税の納付額だけでなく、翌年度に届く通知や納付時期まで見込んでおく必要があります。
親族間の資産移転を形式だけで進める場面
親族間で不動産や株式を売買・贈与する場合、契約書を作れば済むというものではありません。
時価、資金の流れ、贈与税、譲渡所得、相続税、そして将来の売却時の取得費まで確認する必要があります。
「家族間だから大丈夫」という判断は、税務上もっとも危うい判断の一つです。
周辺税目を踏まえた確定申告は、納税額を下げるためだけではない
確定申告で周辺税目まで確認する目的は、単に節税することではありません。
もちろん、適用できる控除や特例を正しく使い、過大な納税を避けることは大切です。
ただ、それ以上に重要なのは、次の状態をつくり上げることです。
- 収入の性質を説明できる
- 所得区分を説明できる
- 必要経費の根拠を説明できる
- 事業と家計の区分を説明できる
- 資産の取得・保有・売却の流れを説明できる
- 住民税、事業税、国保、消費税への影響を見込める
- 将来の税務調査や金融機関対応で数字を説明できる
- 相続や贈与が起きたときに過去の資料をたどれる
税務判断で本当に大切なのは、「今の税額」だけではありません。
その数字を、翌年以降も、税務署にも、自治体にも、金融機関にも、そして将来の自分にも説明できるかどうか。そこにあります。
専門家に相談すべきタイミング
次のような状況では、所得税だけでなく周辺税目まで含めて整理しておいた方がよいでしょう。
- 副業収入が継続している
- 個人事業としての実態がある
- 不動産収入がある
- 賃貸物件を取得・売却・相続した
- 大きな修繕や設備投資をした
- インボイス登録や消費税の届出を検討している
- 株式や投資信託の損益通算・繰越控除を検討している
- 医療費控除や住宅ローン控除だけでなく他の所得もある
- 退職、転職、複数収入がある
- 親族間で資産を移転する
- 相続や贈与で取得した資産を売却する
- 確定申告後の住民税、国保、事業税の負担が不安
- 過年度申告との整合性に不安がある
これらは、申告書の入力だけで完結しにくい領域です。
必要なのは、数字を入力することではありません。事実関係、契約、入出金、資料、利用実態、そして将来の税務リスクを整理していくことです。
犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について
個人の確定申告は、所得税だけを見れば終わるものではありません。
副業、個人事業、不動産収入、資産売却、相続・贈与、消費税、住民税、事業税、固定資産税、国民健康保険料。ここまで含めると、どこを確認すればよいのか分からなくなってしまうこともあるかと思います。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、単に申告書を作成するだけにとどまりません。収入の性質、所得区分、必要経費、資産の取得・保有・売却、事業と家計の切り分け、翌年以降の税負担まで含めて、後から説明できる形へ整理することを大切にしています。
「所得税だけでなく、住民税や事業税、消費税まで含めて自分の状況を整理したい」
「不動産収入や資産売却があり、どの税金が関係するのか不安がある」
「自己流の確定申告でよいのか、専門家に一度確認しておきたい」
そのようなときは、現在の資料と事実関係を整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
この記事の振り返り
| 確認項目 | 重要なポイント |
|---|---|
| 所得税 | 確定申告の中心だが、税務判断の終点ではない |
| 住民税 | 所得税申告の内容を基に計算されるため、申告内容が翌年度の負担に影響する |
| 個人事業税 | 法定業種、所得金額、事業主控除などを確認する必要がある |
| 国民健康保険料 | 申告した所得が保険料算定に影響することがある |
| 固定資産税・都市計画税 | 不動産を保有しているだけで発生し、不動産所得や資金繰りに影響する |
| 償却資産 | 所得税の減価償却とは別に、固定資産税上の申告が必要になる場合がある |
| 消費税・インボイス | 所得税とは別の考え方で、課税売上、非課税売上、登録、届出を判断する |
| 不動産取得税・登録免許税・印紙税 | 不動産の取得・登記・契約段階で発生し、取得費や資金計画にも関係する |
| 相続税・贈与税 | 所得税とは別税目だが、相続・贈与後の売却や親族間取引で接点が多い |
| 実務上の姿勢 | 所得税だけでなく、翌年以降・周辺税目・説明可能性まで見て判断する |