節税提案を受けたときに確認すべきこと|営業トークと税務判断を分ける実行前チェック

「今期中に契約すれば税金が減ります」
「このスキームを使えば相続税を圧縮できます」
「法人化すれば手取りが増えます」
「保険料を損金にして、退職金原資も準備できます」
「不動産を建てれば評価額が下がります」
「税理士も問題ないと言っています」

節税に関心をお持ちの経営者や資産家の方であれば、こうした提案を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。

念のため申し上げておくと、節税提案そのものが悪いわけではありません。制度を正しく使えば、税負担を適正な範囲に抑えつつ、会社や家族に資金を残し、投資や承継、納税資金の準備につなげられることもあります。

問題は別のところにあります。提案の中で強調される「節税額」だけに目を向けてしまい、資金繰り、出口課税、税務調査、契約実態、将来の信用、後継者への説明可能性を確認しないまま、実行に踏み切ってしまうことです。

節税提案を受けたとき、最初に考えるべきなのは「この提案は有利か」ではありません。私が実務の中で常にお伝えしているのは、次の三つの問いです。

この提案は、後から説明できるか。
税金が減った後に、資金・信用・将来の選択肢を損なわないか。
営業資料ではなく、税務判断として成立しているか。

本稿では、保険、不動産、法人化、共済、金融商品、M&A、事業承継といった節税提案を受けたときに、実行前に確認しておきたい論点を整理します。個別商品の優劣や特定スキームの推奨を目的とするものではありません。危険な提案を見極め、専門家に相談すべきポイントを明らかにするための、判断の軸としてお読みいただければと思います。

目次

節税提案は「税額」ではなく「提案者の立場」から確認する

節税提案を受けたとき、多くの方はまず試算表に目を通されます。

「法人税がいくら減るのか」
「所得税がいくら下がるのか」
「相続税評価額がどれだけ圧縮されるのか」
「保険料のうち損金になる割合はどれだけか」

もちろん、税額効果の確認は欠かせません。ただ、それよりも先に見ておきたいことがあります。

それは、誰が、どの立場で、その提案をしているのかという点です。

提案者確認すべき視点注意点
保険会社・保険代理店保障設計・保険料・解約返戻金・手数料税務判断より商品販売が中心になりやすい
不動産会社・建設会社建築費・賃料収入・借入・管理収支相続税評価減だけが強調され、空室・返済・修繕が軽視されることがある
金融機関融資・運用商品・保険・不動産・事業承継資金調達や商品販売と税務判断が混在しやすい
M&A仲介会社・FA株式譲渡・事業譲渡・承継・買い手探索税務より成約可能性や手数料構造が前面に出ることがある
税理士・公認会計士税務処理・会計処理・資料整備・調査対応相談範囲が限定されている場合、商品性や事業リスクまで見ていないことがある
コンサルタントスキーム設計・事業計画・資金繰り税務代理・申告責任の範囲外で提案されている場合がある

提案者の立場を確認するのは、相手を疑うためではありません。提案者によって、得意とする領域も、報酬の構造も、負う責任の範囲も、見えているリスクも異なるからです。

だからこそ、節税提案は一つの資料だけで判断せず、税務、資金、事業、法務、承継、調査対応に分けて検討する必要があります。

金融商品や保険、投資商品については、金融庁も、金融事業者が顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、顧客から選ばれる仕組みの実現に向けて「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定・改訂しています。節税提案であっても、商品販売が絡む場合には、手数料、利益相反、そして顧客にとっての適合性を確認する視点が欠かせません。
出典:金融庁|顧客本位の業務運営について

営業トークと税務判断は別物である

節税提案でもっとも危ういのは、営業上の説明を、そのまま税務上の結論として受け取ってしまうことです。

営業トークは、提案の魅力を短時間で伝えるために組み立てられています。一方の税務判断は、法令、通達、契約、実態、資金移動、証拠資料、申告処理、そして税務調査での説明可能性を前提に行うものです。両者は、そもそも目的が違います。

営業トーク税務判断で確認すべきこと
「保険料が損金になります」どの保険種類か。最高解約返戻率はいくらか。どの期間にどの金額を資産計上するのか。出口で課税されるか
「不動産を建てると相続税が下がります」借入返済、空室、修繕、固定資産税、相続人の負担、総則6項リスク、納税資金まで見ているか
「法人化すれば税率が下がります」社会保険料、消費税、役員報酬、法人維持コスト、資産移転、信用、承継を含めて比較したか
「退職金を出せば大きく節税できます」実質退職、職務権限の変化、過大性、支給資金、議事録、退任後関与を説明できるか
「共済は全額損金になります」解約時課税、資金拘束、掛金の継続可能性、本来目的との整合性を確認したか
「M&Aなら税負担を抑えられます」売主課税、買主課税、消費税、みなし配当、欠損金、専門家コスト、契約リスクを比較したか

法人保険を例に挙げると、国税庁のタックスアンサーでも、一定の定期保険・第三分野保険については、最高解約返戻率に応じた資産計上と損金算入の取扱いが示されています。つまり、「保険料を払えば損金になる」という単純な整理ではなく、契約内容と解約返戻率に応じて処理が変わるということです。
出典:国税庁|No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い

生命保険税務には、所得税、法人税、相続税、民法、会社法、保険法、約款、保険数理といった論点が幾重にも絡んできます。とりわけ、保険料負担者と受取人の関係、契約者変更時の課税関係は重要で、契約形式だけを見て判断すると、思わぬ誤りにつながります。

最初に確認すべき8つの質問

節税提案を受けたら、まずは次の8つを確認してみてください。

1. その節税効果は「永久節税」か「繰延節税」か

節税提案でよくあるのが、課税の先送りを「節税」と表現しているケースです。

たとえば、保険料、共済掛金、減価償却、不動産投資、退職金準備、組織再編などは、当期の税負担を下げる効果があっても、解約時、売却時、退職時、相続時、再編時に課税が生じることがあります。

確認しておきたいのは、次の点です。

確認事項具体的な問い
当期の税額今期いくら税金が減るのか
将来の課税いつ、どの税目で課税されるのか
実質効果税額の減少か、課税時期の先送りか
出口の選択肢解約、売却、退職、贈与、相続、M&Aのどれを想定しているか
出口が失敗した場合解約返戻率低下、空室、売却損、資金不足が起きたときどうなるか

「今期の税金が減る」という一点だけでは、判断材料として不十分です。

繰延節税であっても、資金繰りの改善や投資余力の確保に役立つことはあります。ただしそれは、将来の課税を理解したうえで、出口まで設計できている場合に限られます。

2. 税金は減っても、手元資金は減っていないか

節税提案の中には、税金を減らす代わりに、それを上回る現金支出を伴うものがあります。

たとえば、法人税率を30%と仮定して1,000万円の支出を行えば、単純計算では税金は約300万円減ります。しかし、手元からは1,000万円が出ていきます。税金は減っても、差引700万円の資金流出です。

この支出が、本当に必要な投資や保障、承継対策であれば意味があります。けれども、節税だけが目的なのであれば、資金繰りをかえって悪化させかねません。

支出型節税で確認すべきこと判断のポイント
支出の必要性税金が減らなくても実行する意味があるか
支出額節税額より大きな資金流出になっていないか
継続負担毎年支払えるか。途中でやめると不利にならないか
借入の有無返済原資、金利上昇、担保、個人保証を確認したか
投資効果売上、利益、保障、承継、納税資金にどう役立つか

役員報酬の調整についても同じことが言えます。役員報酬を増やせば法人の利益は減りますが、所得税・住民税・社会保険料まで含めた手取りで見なければ実態はつかめません。社会保険料を考慮せず、法人税だけを見て役員報酬を決めてしまうと、節税のつもりが、かえって総負担を増やしてしまうことがあります。

3. 出口課税まで試算されているか

節税提案では、入口の効果ばかりが強調されがちです。ところが実務で問題になるのは、多くの場合、出口のほうです。

提案類型入口で強調されやすい効果出口で確認すべきこと
法人保険保険料の損金性解約返戻金の益金、退職金支給、契約者変更、給与課税
共済掛金の損金・所得控除解約手当金・共済金の課税、資金拘束
不動産投資相続税評価減、減価償却借入返済、売却時課税、空室、修繕、相続人負担
法人成り所得税率と法人税率の差役員報酬、配当、退職金、資産移転、消費税、法人維持費
役員退職金法人側損金、個人側退職所得実質退職、過大性、資金準備、退任後関与
生前贈与相続財産の移転贈与成立、管理状況、生前贈与加算、名義財産
M&A・再編税負担最適化、欠損金利用みなし配当、時価課税、欠損金制限、契約リスク

法人から個人へ保険契約を移すような提案では、契約者変更時の評価が特に重要になります。国税庁は、保険契約等に関する権利を役員・使用人に支給した場合の評価について、原則として支給時の解約返戻金の額によるものの、一定の場合には支給時の資産計上額で評価するという取扱いを示しています。
出典:国税庁|保険契約等に関する権利の評価に関する所得税基本通達の解説

出口を説明できない節税提案は、まだ実行すべき段階には至っていません。

4. 取引実態と証拠資料が残るか

節税提案は、制度名だけでは成立しません。実際の取引、意思決定、契約、請求、入出金、帳簿、申告処理が整って初めて、税務調査でも説明できる処理になります。

確認しておきたい資料は、少なくとも次のとおりです。

確認資料確認する意味
提案書前提条件、試算方法、リスク記載、提案者の責任範囲を確認する
契約書・約款権利義務、解約条件、手数料、途中解約、名義変更を確認する
税務試算当期税額だけでなく将来課税、地方税、消費税、源泉税を確認する
資金繰り表支払、借入、返済、運転資金、納税資金への影響を確認する
議事録・稟議書事業目的と意思決定過程を残す
入出金記録資金の流れ、返流、相殺、関係者間移動を確認する
会計処理メモ仕訳、計上時期、資産計上、損金算入を整理する
税務根拠資料法令、通達、国税庁情報、裁判例・裁決例、専門家意見を確認する

税務調査では、帳簿書類等の提示・提出を求められることがあります。国税庁のFAQでも、帳簿書類等の提示・提出、電磁的記録の提出、反面調査などについて説明されています。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

電子契約、メール、クラウド請求書、チャット、PDF領収書などを使う場合には、電子取引データの保存方法も確認しておく必要があります。国税庁は、電子帳簿保存法について、電子取引関係、スキャナ保存、電子帳簿・電子書類に関する一問一答を公表しています。
出典:国税庁|電子帳簿保存法一問一答(Q&A)

資料が残らない節税は、提案の段階で立ち止まるべきです。

5. 税務署、金融機関、後継者に同じ説明ができるか

節税提案を評価するときは、税務署だけを相手に考えていては足りません。金融機関、株主、家族、後継者、そしてM&Aの買い手にも、同じ説明ができるかどうかが重要になります。

たとえば、不動産を使った相続税対策では、相続税評価額が下がったとしても、借入返済、空室、固定資産税、修繕、管理負担は相続人に残ります。不動産オーナーの方は、収入が多く見えても、固定資産税や借入返済、経費負担で資金繰りに追われることが少なくありません。

借入によって賃貸不動産を建てれば、土地・建物の相続税評価額が下がる仕組みがあるのは事実です。ただし、実勢価額、借入金、賃貸割合、空室、収益性、将来の処分可能性を分けて考えなければ、評価減だけを目的とした過大な投資になってしまいます。

節税提案を受けたら、次の相手に説明できるかを確認してみてください。

説明相手説明すべき内容
税務署取引実態、事業目的、資料、資金移動、税務処理
金融機関借入返済、財務影響、資金繰り、担保、保証
後継者なぜ実行したか、将来どう処理するか、負担は何か
家族・相続人財産移転、納税資金、遺産分割、公平性
M&A買い手税務リスク、契約、簿外負債、過去処理の説明
顧問税理士交代後の専門家前提、根拠、資料、判断過程

税務署にだけ説明できても、金融機関に説明できない処理は、経営判断として弱い場合があります。後継者に説明できない節税は、将来の承継リスクになりかねません。

6. 否認された場合の影響まで試算しているか

節税提案では、成功した場合の効果ばかりが示されがちです。しかし、実行前にこそ確認しておきたいのは、否認された場合の影響です。

否認された場合の影響確認すべきこと
本税どの税目で、いくら追徴されるか
延滞税いつから発生し、どの程度の負担になるか
過少申告加算税修正申告のタイミング、調査通知との関係
重加算税隠蔽・仮装と評価される余地があるか
源泉税役員賞与・給与認定がある場合の徴収漏れ
消費税仕入税額控除の否認、課税区分誤り
金融機関対応粉飾、資金流出、不自然な取引と見られないか
将来申告翌期以降の処理修正、税務調査リスクの継続

重加算税については、単なる誤りと、隠蔽・仮装とは区別して扱われます。裁判例・裁決例でも、取引や登記に隠蔽・仮装がなく、調査時に事実把握を困難にする特段の行為もない場合には、重加算税の賦課要件を満たさないと判断された事例があります。その一方で、虚偽資料、改ざん、資金還流、相手方との通謀があれば、単なる誤りでは済まされません。

節税提案を評価するときは、「否認される可能性があるか」だけでなく、否認されたときに会社や個人が耐えられるかまで確認する必要があります。

7. 提案者の責任範囲が明確か

「税理士確認済みです」
「顧問税理士に聞いてください」
「税務上は大丈夫なはずです」
「過去にも実績があります」

こうした説明を受けたときには、必ず確認しておきたいことがあります。それは、誰が、どの範囲について、どの前提で、責任を持って判断したのかという点です。

確認項目確認する内容
税務判断者税理士、公認会計士、弁護士、社内担当者の誰が判断したか
判断範囲法人税だけか、所得税、消費税、相続税、地方税、社会保険まで含むか
前提条件事業内容、資金繰り、株主構成、家族関係、契約内容を確認したか
書面の有無意見書、検討メモ、メール、議事録が残っているか
免責事項どのリスクは対象外とされているか
実行後関与申告、届出、資料保存、税務調査対応まで関与するか

税務実務では、届出書の提出失念、特例適用漏れ、評価誤り、調査があり得ることの説明不足といった事柄が、税理士賠償やトラブルの端緒になることがあります。提案を受ける側としても、「専門家が関与している」という言葉だけで安心せず、その関与範囲と責任範囲を確認しておくことが大切です。

8. セカンドオピニオンを受ける余地があるか

本当に良い提案であれば、第三者の確認を受けても困ることはないはずです。むしろ、提案者がセカンドオピニオンを嫌がるようであれば、注意が必要です。

特に、次のような提案では、実行前の第三者確認を強くお勧めします。

セカンドオピニオンが必要な提案理由
数百万円以上の資金流出がある税額効果より資金繰り影響が大きい可能性がある
借入を伴う不動産・設備投資返済、空室、修繕、売却可能性まで検討が必要
法人保険・契約者変更が絡む損金性、資産計上、給与課税、出口課税が複雑
法人成り・個人成り税金、社会保険、消費税、資産移転、信用が絡む
親族・同族会社間取引時価、みなし贈与、受贈益、役員給与が問題になりやすい
役員退職金・分掌変更実質退職、過大性、退任後関与が争点になりやすい
M&A・組織再編税務、法務、会計、契約、欠損金、みなし配当が絡む
相続・贈与対策家族関係、納税資金、名義財産、税務調査まで影響する
「期限が迫っている」と急かされる判断時間を与えない提案は危険度が高い

中小M&Aについては、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を公表・改訂しています。第3版では、業務内容・質と手数料、仲介者・FAの説明、営業・広告、利益相反、経営者保証に関するトラブル防止などが整理されています。M&Aの提案を受ける場合にも、税務だけでなく、支援機関の役割、報酬、利益相反まで確認しておきたいところです。
出典:中小企業庁|中小M&Aガイドライン

危険な節税提案に共通するサイン

次のような説明が含まれる提案は、慎重に確認することをお勧めします。

危険な説明なぜ危険か確認すべきこと
「今期中に契約しないと損です」冷静な検討時間を与えない税務効果、資金繰り、出口課税を翌期比較で確認する
「ほとんどの会社がやっています」他社事例は自社の根拠にならない自社の事業目的、資料、取引実態で説明できるか確認する
「税理士も問題ないと言っています」誰が何を確認したか不明判断者、判断範囲、書面、前提条件を確認する
「契約書だけ作れば大丈夫です」実態がなければ契約書だけでは弱い履行、成果物、資金移動、継続性を確認する
「出口はそのとき考えれば大丈夫です」解約・売却・退職・相続時に問題化する出口時の税額、資金、選択肢を試算する
「税金が減るので実質負担はありません」税額減少と資金流出を混同している税引後キャッシュフローで確認する
「資料は後から整えればよいです」後付け資料、日付遡及、仮装リスクにつながる実行前に資料保存フローを作る
「否認された事例は聞いたことがありません」リスク検討が不足している可能性がある否認時の本税・附帯税・説明資料を確認する

危険な提案は、必ずしも違法なものとして現れるわけではありません。むしろ、制度名や節税額はもっともらしく見えることのほうが多いのです。

問題は、確認すべき論点が省かれている点にあります。

提案類型別に見る確認ポイント

法人保険の節税提案

法人保険の提案では、損金性、保障性、資産性、出口課税を分けて確認します。

確認項目質問
保障目的何のリスクに備える保険か。借入、事業保障、退職金、相続のどれか
損金性保険料のうち、当期に損金となる金額はいくらか
資産計上最高解約返戻率に応じた資産計上額はいくらか
解約返戻金ピーク時期、返戻率、解約時課税を確認したか
出口設計解約して何に使うか。退職金、借入返済、運転資金のどれか
契約者変更法人から個人へ移す場合の評価・給与課税を確認したか
資金繰り保険料を継続して支払えるか。途中解約時の損失はどうか
税務調査契約目的、取締役会議事録、保険設計資料を残すか

法人保険では、税務だけでなく商品性の理解が欠かせません。保障内容、保険料、解約返戻金、契約者・被保険者・受取人の関係を確認しないまま、「損金になるから」という理由だけで契約するのは危険です。

不動産・相続税対策の提案

不動産を使った節税提案では、相続税評価額だけを見ていると、判断を誤ります。

確認項目質問
評価減土地・建物の評価減はどの前提で計算されているか
借入返済家賃収入で返済できるか。空室時はどうなるか
修繕・管理大規模修繕、管理費、固定資産税を見込んでいるか
家族負担相続人が本当に引き継げる物件か
売却可能性売却時に借入を返済できるか
納税資金相続税を現金で払えるか
税務評価評価通達どおりで足りるか。特別事情はないか
事業性節税目的だけでなく、賃貸事業として成立しているか

不動産の提案では、税務試算と収支計画を分けて見る必要があります。評価額が下がっても、キャッシュフローが悪化してしまえば、資産防衛としてはむしろ失敗ということになりかねません。

法人成りの提案

法人成りの提案では、税率差だけで判断してはいけません。

確認項目質問
所得税・法人税所得水準別に比較しているか
社会保険料会社負担・個人負担を含めて試算しているか
消費税免税、課税選択、インボイス、簡易課税を確認したか
役員報酬定期同額給与、事前確定届出給与の制限を理解しているか
資産移転個人事業の資産を法人へどう移すか
法人維持費税理士報酬、登記、社会保険事務、均等割を見込んでいるか
信用取引先、金融機関、採用、許認可にどう影響するか
将来承継、M&A、廃業、個人成りの可能性を考えているか

会社法上、会社設立のハードルは下がっています。とはいえ、資本金や移転資産、信用、金融機関対応まで考えれば、形式的に法人を作ればよいというものではありません。

共済・退職金制度・金融商品の提案

共済や金融商品については、税務上の控除や損金性だけでなく、資金拘束と出口を確認します。

確認項目質問
本来目的退職金、倒産防止、保障、運用のどれが目的か
掛金負担継続して支払えるか
解約条件いつ解約できるか。不利な期間はないか
解約時課税受取時にどの税目で課税されるか
資金拘束運転資金や納税資金を圧迫しないか
手数料販売手数料、管理手数料、解約控除を確認したか
流動性急な資金需要に対応できるか
税務調査事業目的、規程、対象者、支払実態を説明できるか

金融商品としてのリスクと、税務上の効果とは別物です。税制上のメリットがあっても、商品リスクや資金拘束が大きければ、経営判断として適切とは限りません。

役員退職金・オーナー取引の提案

役員退職金やオーナー貸付金の整理は、節税効果が大きい一方で、税務リスクも大きくなります。

確認項目質問
退職の実態代表権、職務、権限、報酬、勤務実態が変わるか
支給額功績、在任年数、最終報酬、同業比較を確認したか
議事録株主総会・取締役会の決議を残すか
退任後関与顧問、相談役、実質経営関与の有無を整理したか
貸付金整理債権放棄、DES、退職金相殺の税務影響を比較したか
株価影響債務免除や退職金支給が株価に与える影響を確認したか
相続影響役員貸付金が相続財産になることを確認したか

オーナーから会社への貸付金を整理する方法には、債権放棄、DES、擬似DES、役員給与減額による返済、退職金との相殺など、いくつもの選択肢があります。ただし、債権放棄では会社側の債務免除益や、株価上昇によるみなし贈与などが問題になり得ます。

M&A・組織再編の節税提案

M&Aや組織再編では、税負担だけでなく、コスト、時間、リスクを分けて検討します。

確認項目質問
手法比較株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併を比較したか
売主課税譲渡所得、法人税、みなし配当、源泉税を確認したか
買主課税のれん、減価償却、繰越欠損金、消費税を確認したか
再編適格性適格要件、欠損金制限、含み損制限を確認したか
法務手続株主総会、債権者保護、契約承継を確認したか
専門家コストDD、契約、税務意見、登記費用を見込んでいるか
取引後管理税務調査、会計処理、労務統合、金融機関対応を考えているか

M&Aのストラクチャリングでは、取引時のコストと取引後のコスト、時間、リスクを分けて検討する必要があります。税金だけを見て手法を選んでしまうと、契約承継、簿外債務、消費税、専門家コストの面で、かえって不利になることがあります。

提案書に必ず入っていてほしい項目

節税提案書を受け取ったら、次の項目が入っているかを確認してみてください。

項目入っていない場合のリスク
現状分析自社・本人の数字を見ずに一般論で提案されている
税目別試算法人税だけ、相続税だけなど一部税目しか見ていない
資金繰り試算税額効果と現金収支が混同されている
出口試算解約、売却、退職、相続時の税負担が見えない
リスク記載否認、重加算税、資金不足、契約リスクが省略されている
必要資料実行後に何を残すべきか不明
実行手順いつ、誰が、何をするか不明
届出・申告期限や添付書類が整理されていない
専門家関与範囲誰が税務判断し、誰が申告責任を負うか不明
代替案提案商品・提案スキームだけが示されている

良い提案書というのは、メリットだけでなく、前提条件やデメリット、そして「実行しない」という選択肢まで示してくれるものです。

「この商品を買うべきです」「このスキームを使うべきです」と結論を押し出すのではなく、複数の選択肢を比較したうえで、どの前提なら採用でき、どの前提なら見送るべきかを示してくれる提案ほど、判断材料として有用だと感じます。

提案者に聞くべき質問リスト

節税提案を受けたら、次の質問をそのまま使って確認してみてください。

質問確認したいこと
この節税効果は永久節税ですか、繰延節税ですか課税の先送りを節税と誤認していないか
出口では、いつ、どの税目で課税されますか解約・売却・退職・相続時の負担を確認する
税金は減りますが、手元資金はいくら減りますか税額効果と資金流出を分ける
途中でやめた場合、どうなりますか解約損、違約金、返戻率低下、届出制限を確認する
税務調査では、どの資料で説明しますか実態資料と証拠資料の有無を確認する
否認された場合の追徴税額はいくらですか本税・附帯税・重加算税リスクを確認する
この提案で、提案者にはどのような報酬が発生しますか手数料・利益相反を確認する
他に比較すべき選択肢はありますか一つの商品の販売ありきになっていないか確認する
顧問税理士や第三者専門家に確認してもよいですかセカンドオピニオンを拒まないか確認する
この判断を文書で残せますか責任範囲と前提条件を明確にする

これらの質問に明確に答えられない提案は、実行の前に、いったん立ち止まったほうが賢明です。

セカンドオピニオンに出すときの資料

セカンドオピニオンを受ける場合、ただ「この節税は大丈夫ですか」と尋ねるだけでは不十分です。少なくとも、次の資料を準備しておいてください。

資料目的
提案書一式提案内容、前提、試算、リスク記載を確認する
契約書案・約款権利義務、解約、名義変更、手数料を確認する
税額試算表税目別、年度別、出口時の負担を確認する
決算書・申告書現状の税務・財務状況を確認する
資金繰り表支払・借入・返済・納税資金を確認する
借入条件表金利、返済期間、担保、保証を確認する
株主構成・親族関係図同族会社、贈与、相続、承継への影響を確認する
契約・取引関係資料実態、相手方、資金移動を確認する
過去の節税策・提案資料一貫性、将来影響、過去リスクを確認する
顧問税理士とのやり取り既に確認した範囲と未確認事項を整理する

セカンドオピニオンの目的は、提案を否定することではありません。

採用できる提案なら、どの前提を満たせばよいのかを明確にする。採用すべきでない提案なら、どこが危険なのかを具体化する。一部を修正すれば実行できる提案なら、どう設計し直せばよいかを整理する。──これが、本来の目的です。

「税金を減らす提案」から「経営判断」に引き上げる

節税提案を受けたときは、最終的に次の4つに分類して考えると、判断がしやすくなります。

分類判断
実行してよい提案事業目的、税務効果、資料、資金、出口が整理されている
条件付きで実行できる提案追加資料、契約修正、税務意見、資金計画が必要
見送るべき提案税額効果より資金流出・将来負担・否認リスクが大きい
実行してはいけない提案実態がない、資料を後付けする、虚偽処理を伴う、説明不能

大切なのは、「節税できるか」ではなく、「その節税を守れるか」です。

節税提案を受ける側は、提案者よりも広い視野で考えなければなりません。提案者が見ているのは、商品やスキームです。けれども、経営者は会社と資金を見なければなりませんし、資産家は家族と承継を見なければなりません。そして専門家は、税務処理だけでなく、事実、証拠、説明可能性まで見なければなりません。

節税提案とは、税金を減らす技術であると同時に、将来の選択肢を左右する意思決定でもあるのです。

重要事項の振り返り

重要事項確認ポイント
提案者の立場商品販売、融資、仲介、税務判断のどれが中心かを確認する
営業トークと税務判断「節税できます」という説明を、法令・実態・資料・資金で検証する
永久節税か繰延節税か将来課税が戻るのか、課税時期を先送りしているだけなのかを分ける
手元資金への影響税金が減っても、それ以上に資金が出ていないか確認する
出口課税解約、売却、退職、相続、M&A時の税負担を確認する
取引実態契約書だけでなく、履行、成果物、入出金、意思決定を残す
証拠資料提案書、契約書、約款、税額試算、議事録、電子データを保存する
否認時の影響本税、延滞税、加算税、重加算税、源泉税、信用への影響を試算する
専門家責任誰が、どの範囲を、どの前提で判断したかを文書化する
セカンドオピニオン金額が大きい、借入を伴う、親族・同族会社が絡む提案は実行前に確認する

節税提案を受けて迷っている方へ

節税提案は、実行の前に確認しておけば、「守れる判断」に近づけることができます。反対に、実行してから不安になっても、契約、資金移動、届出期限、資料保存の面で、取り返しがつかないことが少なくありません。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、保険、不動産、法人化、役員報酬、役員退職金、共済、事業承継、M&Aといった節税提案について、節税額だけでなく、資金繰り、出口課税、取引実態、証拠資料、税務調査リスク、専門家責任の範囲まで整理いたします。

「この提案は本当に有効なのか」
「税金は減っても資金繰りを悪化させないか」
「顧問税理士とは別に、実行前に第三者の目で確認したい」
「税務署、金融機関、後継者に説明できる形にしておきたい」

こうした段階で迷っておられる方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。提案を採用するかどうかを決める前に、数字と事実に基づいて、実行すべきか、修正すべきか、それとも見送るべきかを整理しておくことが大切です。

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