私的支出・家事関連費・認定賞与になりやすい支出|会社経費にしてよいかの判断軸

「これは仕事にも関係しているから、会社の経費でよいのではないか」
「社長が使っているものだから、会社の支出にしても問題ないのではないか」
「領収書がある以上、経費として処理できるのではないか」
「税務調査で否認されても、経費が落ちないだけではないか」

こうした感覚で処理された支出が、税務調査で大きな問題に発展することは、実務上めずらしくありません。

特にオーナー会社では、会社と社長個人の距離が近いぶん、支出の境界があいまいになりがちです。会社名義のクレジットカードで家族旅行代を払う。自宅の水道光熱費を会社経費にする。役員の趣味性が強い車両を会社で購入する。家族の飲食代や衣服代を交際費・福利厚生費・広告宣伝費として処理する。役員の子の学費や生活費を会社が負担する。こうした支出は、どの会社でも起こり得ます。

ただ、これらは単に「経費になるか、ならないか」だけの問題ではありません。次のようなリスクが、同時に起こり得るからです。

  • 法人税の損金否認
  • 役員への給与・賞与認定
  • 源泉所得税の徴収漏れ
  • 消費税の仕入税額控除否認
  • 重加算税
  • 金融機関から見た決算書の信頼性低下
  • 後継者や少数株主への説明が難しくなること
  • 過去処理の修正負担

本記事では、私的支出・家事関連費・認定賞与になりやすい支出について、勘定科目名ではなく、事業関連性、私的利益、経済的利益、証拠資料、税務調査対応という観点から整理していきます。

目次

「会社で払ったから経費」ではない

法人が支出したものであっても、会社の事業に必要な支出でなければ、法人税上の損金として説明することは難しくなります。

とりわけ問題になりやすいのは、支出の外形は会社名義であっても、実質的には役員、役員の親族、従業員、特定の個人が私的利益を受けているケースです。たとえば、次のような支出が挙げられます。

支出例問題になりやすい理由
社長家族だけの旅行代事業目的ではなく私的旅行と見られやすい
自宅の水道光熱費・通信費会社業務との区分が不明確になりやすい
家族の飲食代交際費・会議費ではなく私的支出と見られやすい
高級車の購入・維持費業務使用の実態と私用割合が問われる
役員の趣味性が強い会員権事業利用ではなく個人利用と見られやすい
私服・時計・バッグ・美容費業務上不可欠な支出と説明しにくい
役員の子の学費・生活費会社の事業費ではなく役員個人の負担と見られやすい
親族への給与・外注費実際の勤務・役務提供・金額の相当性が問われる
私的な冠婚葬祭費事業関係者との関係か、役員個人の関係かが問われる

「領収書がある」「法人カードで支払った」「会計ソフトに入力した」という事実は、それ自体が経費性を証明するものではありません。

税務上重要なのは、その支出が会社の事業遂行上必要であり、支出額が合理的で、私的部分がきちんと区分され、後から説明できる資料が残っているかどうかです。

個人事業主の「家事関連費」と、法人の「私的支出」は分けて考える

「家事関連費」という言葉は、主に個人事業主の必要経費の場面で使われます。

家事上と業務上の両方に関係する費用が家事関連費であり、そのうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。
出典:国税庁|No.2210 必要経費の知識

たとえば個人事業主が自宅兼事務所を使っている場合、家賃、水道光熱費、通信費、車両費などについて、業務使用部分と私用部分を合理的に区分する必要があります。

一方、法人の場合は、少し構造が異なります。

法人は、社長個人とは別の人格です。会社のお金と個人のお金は、本来分けて管理されるべきものです。社長が100%株主であっても、会社の財産を私的に使えば、会社から個人への経済的利益の移転が問題になります。

ですから法人では、「家事関連費だから按分すればよい」と安易に考えるのではなく、まず次の順番で確認していきます。

  • その支出は、そもそも会社が負担すべきものか
  • 会社の事業に直接関係する部分と、私的部分を合理的に区分できるか
  • 私的部分を、役員・従業員から会社に返金しているか
  • 返金しない場合、給与・賞与・役員給与として処理すべき経済的利益ではないか
  • 源泉徴収や、役員給与の損金算入要件を満たしているか

この順番を飛ばして、いきなり「按分すれば大丈夫」と考えてしまうと、法人税・所得税・源泉税の処理が少しずつずれていきます。

認定賞与とは何か

「認定賞与」は、税務実務でよく使われる表現です。

典型的には、会社が役員の私的費用を負担していたり、簿外資金を役員に渡していたり、役員が会社資金を私的に使っていたりする場合に、その経済的利益を役員への賞与として税務上認定する場面で用いられます。

注意していただきたいのは、認定賞与といわれる問題は、単に「その経費が落ちない」というだけでは済まないことです。実際には、次のような影響が広がっていきます。

項目起こり得る影響
法人税私的支出・役員給与として損金不算入になる
所得税役員個人の給与所得・賞与として課税される
源泉所得税会社に源泉徴収漏れが生じる
消費税給与等に該当する場合、課税仕入れとして扱えない
加算税・延滞税修正申告・納税告知により附帯税が生じる
重加算税隠蔽・仮装がある場合に問題となる
金融機関対応決算書の費用管理・内部管理に疑義を持たれやすい

役員に対する経済的利益についても、税務上の整理があります。継続的に供与される経済的利益のうち、その額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当し得ますが、それ以外のものは定期同額給与に該当せず、損金には算入されません。また、役員に対する経済的利益が不相当に高額である場合や、事実を隠蔽・仮装して経理することにより供与した経済的利益も、損金には算入されません。
出典:国税庁|No.5202 役員等に対する経済的利益

さらに役員給与については、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものは、原則として損金に算入されません。
出典:国税庁|No.5211 役員に対する給与

したがって、役員の私的支出を会社が負担した場合には、次のように段階を分けて検討する必要があります。

  • それは会社の事業経費なのか
  • 役員への経済的利益なのか
  • 経済的利益であれば、給与として課税されるのか
  • 役員給与として損金算入できる類型に該当するのか
  • 隠蔽・仮装を伴う不正経理ではないか
  • 源泉所得税を適切に処理しているか

「役員への給与なら損金になるのではないか」とは、単純には言えません。役員給与には、通常の従業員給与よりも厳格な損金算入制限があるからです。

給与課税と源泉徴収の問題

役員や従業員が会社から受ける利益は、金銭で支給されたものだけが給与になるわけではありません。

給与所得には、使用人や役員に支払う給料、賃金、賞与などのほか、これらの性質を持つものが含まれます。
出典:国税庁|No.2508 給与所得となるもの

さらに給与の収入金額には、商品などを無償または低い価額で譲り受けたこと、土地や建物などを無償または低い使用料で借り受けたこと、金銭を無利息または低い利息で借り受けたことといった経済的利益も含まれます。出典:国税庁|No.1400 給与所得

そして会社が給与などを支払う場合、会社は源泉徴収義務者になります。
出典:国税庁|No.2502 源泉徴収義務者とは

つまり、税務調査で「これは役員への経済的利益です」と認定されると、会社側では法人税の修正だけでなく、源泉所得税の納税告知が問題になることがあります。

この点は、決して軽く見てよいものではありません。会社が負担した私的費用を経費として処理していた。それが税務調査で役員賞与と認定された。役員個人には給与所得課税が生じる。会社には源泉徴収漏れが指摘される。そして、その支出が隠蔽・仮装を伴っていれば、重加算税まで問題になる。

この一連の流れは、オーナー会社にとって非常に重い影響を持ちます。

消費税でも不利になることがある

私的支出や認定賞与の問題は、法人税だけにとどまりません。

消費税では、給与等の支払は課税仕入れになりません。課税仕入れとなる取引の例が示されたうえで、給与等の支払はそこに含まれないとされています。
出典:国税庁|No.6451 仕入税額控除の対象となるもの

したがって、会社が外注費、福利厚生費、交際費、広告宣伝費、消耗品費などとして処理し、仕入税額控除を取っていた支出が、実質的には役員への給与・賞与と認定されると、消費税の仕入税額控除も否認される可能性があります。

とりわけ注意したいのは、次のような処理です。

  • 外注費として処理したが、実態は役員や親族への利益供与だった
  • 福利厚生費として処理したが、実態は特定役員だけの私的利益だった
  • 交際費として処理したが、実態は社長家族の飲食だった
  • 旅費交通費として処理したが、実態は家族旅行だった
  • 車両費として処理したが、実態は役員家族の専用車だった

こうした支出は、法人税で否認されるだけでなく、消費税でも追加負担が出ることがあります。これが、私的支出を会社経費に入れることの、実務上の怖さです。

私的支出になりやすい代表例

1. 家族旅行・家族同伴の出張

出張に家族が同行すること自体が、常に問題というわけではありません。問われるのは、会社が負担した費用のうち、誰のための支出かを区分できているかどうかです。

たとえば、役員本人の業務上必要な交通費・宿泊費、業務予定と一致した滞在期間、訪問先や面談相手、商談記録、出張報告書といった部分は、業務の裏づけがあります。一方で、家族分の航空券、宿泊の追加料金、観光費用、食事代、休日の延泊分は、性質が異なります。

これらを分けずに全額を旅費交通費として処理すると、家族分や私的な観光部分は、役員への経済的利益と見られやすくなります。

安全に処理するには、家族分は会社が負担しないこと、あるいは会社が一時立て替えたとしても役員個人から返金を受ける運用にしておくことが必要です。

2. 自宅の家賃・水道光熱費・通信費

自宅を仕事にも使っている場合でも、法人が自宅費用を丸ごと負担する処理は危険です。

個人事業主であれば家事関連費として業務使用部分を区分する考え方がありますが、法人では、会社が負担すべき費用か、役員個人が負担すべき費用かを、より厳格に見る必要があります。

たとえば、社長の自宅を会社の事務所として使っている場合には、次の点を確認します。

  • 会社が使用している部屋・面積は明確か
  • 賃貸借契約や使用契約があるか
  • 賃料水準は相当か
  • 会社としての使用実態があるか
  • 郵便物、来客、会議、保管資料、業務設備といった実態があるか
  • 住宅部分と事務所部分を明確に区分できるか
  • 家族の生活費まで会社が負担していないか

自宅の水道光熱費や通信費についても、業務使用割合を合理的に説明できる資料がなければ、私的支出と見られやすくなります。

3. 社宅

社宅は、正しく設計すれば有効な制度になり得ます。ただし、「社宅」という名称を付ければ何でも安全になるわけではありません。

役員に社宅を貸与する場合、役員から1か月あたり一定額の家賃、すなわち賃貸料相当額を受け取っていれば、給与として課税されないとされています。
出典:国税庁|No.2600 役員に社宅などを貸したとき

従業員社宅では、賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば給与課税されない取扱いがあります。
出典:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき

役員社宅で気をつけたいのは、従業員社宅と同じ感覚で処理しないことです。具体的には、次の点を確認します。

  • 会社名義の契約か
  • 役員から賃貸料相当額を徴収しているか
  • 豪華社宅に該当しないか
  • 水道光熱費、駐車場代、私的設備費まで会社が負担していないか
  • 社宅規程があり、運用の実態があるか
  • 役員個人の自宅を、後から形式的に社宅化していないか

社宅は、税務上の設計と実際の使用実態が一致していることが何より重要です。

4. 車両費

会社名義の車両であっても、実態として役員や親族が専属的に私用している場合には、税務上問題になります。

実務上も、会社名義で取得した車両を代表者の妻が個人的に利用していた事案では、車両取得費そのものが直ちに役員給与とまで認定されなかった一方で、車両の利用により代表者が受ける経済的利益は役員給与に当たると整理されています。あわせて、その車両関連費用のうち、継続的に供与される経済的利益に当たる部分と、継続的とはいえない部分を分けて判断する、という実務上の整理も示されています。

車両費を安全に処理するには、次のような資料が必要です。

  • 業務上の必要性
  • 車両管理規程
  • 使用者
  • 保管場所
  • 運行記録
  • 業務利用日・私用日
  • 訪問先
  • 走行距離
  • ガソリン代・高速代の明細
  • 休日利用の有無
  • 家族利用の有無

「会社名義の車だから会社経費」という判断では不十分です。会社資産であっても、役員個人が無償または低額で私的に利用していれば、経済的利益の問題が生じます。

5. 飲食費・交際費

飲食費は、私的支出が入り込みやすい典型です。

同じ飲食であっても、取引先との接待なのか、社内会議なのか、従業員の慰労なのか、家族の食事なのか、友人との会食なのか、あるいは役員個人の趣味・人間関係なのかによって、意味合いはまったく変わります。同じ飲食店の領収書でも、実態によって税務上の扱いは変わってくるのです。

交際費等は、本来、得意先等との親睦や取引関係の円滑化を図るための販売促進的な費用という性質を持っています。その一方で、役員等に対する給与が交際費等の形で支給される、役員等の私的関係者を会社経費で接待する、過度な接待を行うといった弊害が、制度趣旨のうえで問題視されます。

飲食費を処理する際には、少なくとも次の情報を残しておくべきです。

  • 日付
  • 店舗名
  • 参加者名
  • 相手先の会社名
  • 人数
  • 目的
  • 案件名
  • 誰が支払ったか
  • 領収書
  • 社内承認

「社長が事業の話をした」というだけでは、根拠として弱いことがあります。第三者が見ても事業関連性が分かる記録が必要です。

6. 衣服・美容・時計・バッグ

スーツ、時計、バッグ、美容費、理美容費、エステ、ジムなどは、業務に関連すると説明されることがあります。

しかし、これらは一般的には私生活でも使えるものです。会社経費として説明が通りやすいのは、たとえば会社の制服として支給している、業務上着用が義務付けられている、ロゴ入りで私用しにくい、従業員全体に一定基準で支給している、業務上必要な安全装備である、撮影・出演・広告制作など特定業務に直接必要である、といった事情がある場合です。

こうした事情がない限り、役員個人の身だしなみや生活費に近い支出として見られやすくなります。

特に、役員だけに高額な衣服や美容費を会社が負担している場合には、福利厚生費としての説明は難しくなります。

7. ゴルフ会員権・社交クラブ・趣味性の強い支出

ゴルフ会員権、社交クラブ、リゾート会員権、スポーツクラブ、趣味性の高いイベント費用については、利用の実態が重要です。

取引先の接待に使っているのか、役員個人の趣味なのか。従業員全体が利用できるのか、特定役員だけが利用しているのか。利用記録があるか。会社の販売活動や採用活動と結び付いているか。こうした点で、扱いは変わってきます。

役員が会員となっている社交クラブの経常会費など、法人が経常的に負担する経済的利益については、定期同額給与との関係で整理されることがあります。ただしこれは、「何でも経費でよい」という意味ではありません。給与課税、役員給与の損金算入要件、利用実態の確認が、いずれも必要になります。

8. 子の学費・家族の生活費

役員の子の学費、留学費、家族の生活費、医療費、家事使用人費用などを会社が負担する場合は、非常に慎重に考える必要があります。

これらは通常、役員個人が負担すべき支出です。会社が負担すれば、役員への経済的利益として給与課税が問題になります。

役員の子の授業料を会社が一括して学校に支払う場合でも、役員に対して給与を支給したのと同様の経済的効果が継続的にもたらされるものとして、定期同額給与に該当するという考え方が示されています。
出典:国税庁|法人が役員の子の授業料を一括して支出した場合

ここで気をつけたいのは、「定期同額給与に該当し得る」ということと、「会社の事業経費として自由に落とせる」ということは、まったく別だという点です。

給与として処理し、源泉徴収し、役員報酬設計の中で管理するなら別ですが、教育研修費、福利厚生費、雑費などとして処理することは危険です。

9. 親族への給与・外注費

役員の配偶者、子、親族に給与や外注費を支払う場合も、実態が問われます。確認したいのは、次のような点です。

  • 実際に勤務しているか
  • 勤務時間・業務内容が分かるか
  • 他の従業員の給与水準に比べて相当か
  • 役務提供の成果物があるか
  • 請求書だけでなく、作業の実態があるか
  • 振込先は本人名義か
  • 会社の指揮命令を受けているか
  • 外注なのか雇用なのかが整理されているか

親族だから支払ってはいけない、というわけではありません。しかし、親族だからこそ、実態と金額の相当性を説明できる資料が必要になります。

実態のない外注費や給与は、損金否認だけでなく、役員への利益供与、仮装経理、重加算税の問題にまで発展することがあります。

「認定賞与になりやすい支出」と「単なる経費否認」の違い

私的支出が問題になった場合でも、すべてが同じ扱いになるわけではありません。大きく分けると、次のように整理できます。

区分典型例主な税務上の問題
単なる経費否認事業関連性が弱い支出を誤って経費にした法人税の所得加算
役員への経済的利益役員が会社資産やサービスを私的に利用した給与課税、源泉徴収
認定賞与役員個人が負担すべき支出を会社が負担した役員給与の損金不算入、源泉税
仮装経理・架空経費架空外注費、水増し請求、虚偽領収書損金否認、重加算税、場合により使途秘匿金
役員貸付金会社資金を社長が私的に引き出した貸付金認定、利息認定、回収可能性
役員賞与+重加算税簿外資金を役員に渡した法人税・源泉税・重加算税

税務調査では、支出の実態に応じて処理が分かれます。

たとえば、誤って私的支出を経費にしていたとしても、領収書や帳簿に事実どおり記載されており、隠蔽・仮装がない場合には、重加算税まで当然に課されるわけではありません。

一方で、架空外注費を計上し、その資金を役員に還流させていたようなケースは、単なる誤りとは性質が異なります。実務上も、売上除外金や簿外資金をもって役員賞与を支出している場合には、隠蔽・仮装に該当し、重加算税の対象になると整理されています。また、外注費の水増し計上とキックバックによる還流が把握された事例では、水増しされた外注費が、臨時的な役員給与または不正行為に関連する費用として問題になっています。

こうした点は、国税庁の法人税の重加算税に関する事務運営指針でも整理されており、簿外資金をもって役員賞与その他の費用を支出していることは、重加算税の対象となる隠蔽・仮装の例として挙げられています。
出典:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

重要なのは、「経費にならないかもしれない支出」と「事実を隠している支出」とでは、リスクの段階がまったく違うということです。

税務調査ではどこを見られるか

私的支出・認定賞与の調査では、領収書だけでなく、その周辺の資料まで確認されます。

確認対象見られるポイント
法人カード明細土日祝日、深夜、家族利用、生活費支出がないか
領収書宛名、但書、支出先、金額、日付
交際費台帳相手先、参加者、目的が具体的か
旅費精算書出張日程、訪問先、家族同行、休日延泊
車両関係資料車検証、保管場所、運行記録、休日利用
社宅資料契約名義、賃貸料相当額、徴収状況
通信費契約名義、利用者、私用割合
親族給与勤務実態、業務内容、給与水準
外注費契約、成果物、作業記録、振込先
会員権利用記録利用者、同伴者、目的
役員貸付金社長への資金流出、返済状況、利息
反面調査支払先・取引先から見た実態

税務調査で問題になりやすいのは、「資料がない支出」よりも、むしろ「資料はあるが、実態と合っていない支出」です。

たとえば、領収書はあるが参加者が不明である。請求書はあるが成果物がない。契約書はあるが後付けに見える。会社名義の車だが保管場所は社長の自宅である。社宅契約はあるが役員負担額を徴収していない。福利厚生費だが対象者は社長家族だけである。研修費だが実態は家族旅行である。広告宣伝費だが実態は役員個人の趣味活動である。

こうした場合、勘定科目ではなく、実態で判断されます。

安全に処理するための判断手順

私的支出・家事関連費・認定賞与になりやすい支出は、次の順番で確認していきます。

1. 会社が負担すべき支出か

まず、会社の事業目的との関係を確認します。

売上獲得、業務遂行、人材確保、従業員施策、設備利用、取引先対応など、会社として負担する合理的な理由があるかどうか。「社長が使うから」というだけでは足りません。

2. 私的利益を受けている人は誰か

次に、誰が利益を受けているかを確認します。会社全体か、従業員全体か、特定部署か、特定役員か、役員の親族か、それとも社長個人か。

特定役員や親族だけが利益を受けている場合、福利厚生費や一般経費としての説明は難しくなります。

3. 業務部分と私的部分を区分できるか

業務使用と私用が混在する場合は、区分が必要です。面積割合、使用日数、走行距離、通話明細、利用時間、参加者、案件別の記録などが、その根拠になります。

区分できない場合は、全額を会社経費にするのではなく、保守的な処理を検討する必要があります。

4. 私的部分を返金しているか

役員や従業員が私的利益を受けている場合、それを会社に返金しているかどうかが重要です。

返金がない場合、その分は給与・賞与・経済的利益として処理すべき可能性が出てきます。

5. 給与として処理するなら源泉徴収しているか

私的部分を役員給与・従業員給与として処理するなら、源泉徴収、給与台帳、社会保険、役員給与の損金算入要件を確認する必要があります。

「給与として見られてもよい」という感覚だけでは不十分です。給与として扱うのであれば、最初から給与として管理しておく必要があります。

6. 証拠資料を残しているか

最後に、資料です。支出前の稟議、契約書、規程、利用記録、参加者記録、按分の根拠、返金記録、給与処理、源泉徴収記録、会計処理のメモ。

税務調査では、後から口頭で説明するよりも、当時の資料が重視されます。

社内ルールとして整備すべきこと

オーナー会社では、私的支出の混入を防ぐために、次のようなルールを整えておくことが有効です。

  • 法人カードの利用範囲を決める
  • 家族利用分は会社カードで支払わない
  • 役員旅費は出張報告書を必須にする
  • 交際費は参加者・目的・相手先を記録する
  • 車両は運行記録を残す
  • 社宅は賃貸料相当額を毎月徴収する
  • 役員・親族への支払は事前承認制にする
  • 私的利用が混在する費用は按分基準を決める
  • 現金精算を減らし、振込・カード明細で追跡できるようにする
  • 不明な支出は決算時ではなく月次で確認する
  • 高額支出は税務区分を事前に確認する

経費処理は、決算の最後にまとめて整えるものではありません。日々の支払いの時点で、税務調査に耐えられる形になっているかどうかが、実は勝負どころなのです。

「経費にできるか」より先に見るべきこと

私的支出・認定賞与の問題では、どうしても関心は「経費になるか」に向きがちです。

しかし経営判断としては、次の問いのほうが重要です。

  • その支出は、本当に会社の利益につながっているか
  • 税金は減っても、会社資金を私的に流出させていないか
  • 決算書を金融機関に説明できるか
  • 後継者が見たときに、納得できる支出管理になっているか
  • 税務調査で、当時の資料を示して説明できるか
  • 役員給与・社宅・福利厚生・交際費のルールが一貫しているか
  • 会社と個人のお金の境界が守られているか

節税のために会社経費を増やすという発想は、一見すると税負担を下げてくれます。

しかし、会社の資金が社長個人や家族の生活費に流れているように見えると、税務上も、金融機関対応上も、事業承継上も、会社の信用を傷つけてしまいます。

正しい節税は、説明できる数字と、守れる処理によって成り立ちます。

専門家に相談すべき場面

次のような支出がある場合には、実行前、あるいは決算前に、専門家へ相談されることをおすすめします。

  • 役員の自宅、車両、社宅、会員権に関する支出がある
  • 役員家族が利用する費用を会社が負担している
  • 親族への給与・外注費がある
  • 役員貸付金が増えている
  • 法人カードに私的支出が混在している
  • 社長個人の負担か会社負担か迷う支出が多い
  • 税務調査で過去の経費処理を聞かれる不安がある
  • 認定賞与や源泉税のリスクを整理したい
  • 福利厚生費・交際費・旅費交通費・広告宣伝費の区分があいまいになっている
  • 会社と個人のお金の流れを整理したい

この領域は、節税テクニックというより、会社管理の問題です。

一度「私的支出が多い会社」という印象を持たれてしまうと、税務調査でも、金融機関対応でも、ほかの論点まで厳しく見られやすくなります。

犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について

私的支出、家事関連費、認定賞与の問題は、単に「この領収書を経費にできるか」という判断にとどまりません。

会社と個人のお金の流れ、役員給与の設計、社宅・車両・会員権の運用、源泉所得税、消費税、税務調査対応、そして金融機関への説明可能性まで、一体で整理していく必要があります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、支出内容、契約、利用実態、証拠資料、資金の流れを確認したうえで、経費処理として守れるもの、給与処理すべきもの、会社負担にすべきでないものを整理していきます。

「社長個人の支出と会社経費の線引きを見直したい」
「法人カードや役員貸付金の管理を整えたい」
「社宅・車両・会員権を安全に運用したい」
「税務調査で認定賞与とされないよう、事前に確認しておきたい」

このような課題がありましたら、当事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。目先の節税額だけでなく、会社の信用、資金繰り、そして税務調査に耐えられる処理を、一緒に整えていきます。

出典・参考情報

出典:国税庁|No.2210 必要経費の知識
出典:国税庁|No.5202 役員等に対する経済的利益
出典:国税庁|No.5211 役員に対する給与
出典:国税庁|No.2508 給与所得となるもの
出典:国税庁|No.1400 給与所得
出典:国税庁|No.2502 源泉徴収義務者とは
出典:国税庁|No.6451 仕入税額控除の対象となるもの
出典:国税庁|No.2600 役員に社宅などを貸したとき
出典:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
出典:国税庁|法人が役員の子の授業料を一括して支出した場合
出典:国税庁|法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

この記事の振り返り

論点判断のポイント実務で残すべき資料
私的支出会社ではなく役員・親族のための支出ではないか支出目的、利用者、参加者、返金記録
家事関連費業務上直接必要な部分を明確に区分できるか使用割合、面積割合、走行距離、通信明細
認定賞与役員個人が負担すべき費用を会社が負担していないか給与処理、源泉徴収、役員報酬設計資料
経済的利益金銭以外の利益を役員・従業員が受けていないか利用実態、評価額、徴収額、給与台帳
社宅賃貸料相当額を徴収し、社宅の実態があるか賃貸契約、社宅規程、徴収記録
車両業務使用と私用を区分できるか運行記録、保管場所、利用者、走行距離
家族旅行業務出張部分と家族・観光部分を分けているか出張報告書、日程表、家族分精算記録
飲食費取引先・会議・私的会食の区分ができるか相手先、参加者、目的、案件名
衣服・美容費業務上不可欠で私用性が低いか支給規程、制服性、業務使用記録
親族給与・外注費実際の勤務・役務提供があるか勤務表、業務内容、成果物、契約書
消費税給与等に該当する支出を課税仕入れにしていないか請求書、課税区分、給与処理資料
重加算税隠蔽・仮装、架空経費、簿外資金がないか原始資料、帳簿、資金移動、事実関係メモ
相談すべき場面社長個人と会社経費の境界があいまいなとき決算書、総勘定元帳、法人カード明細、契約書
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