集患・広報の効果を数字で確認する|クリニックの広告費・公式サイト・来院動機を経営判断に使う方法

集患や広報のご相談をいただくと、たいてい次のような悩みに行き着きます。

  • 「ホームページを更新しているが、患者数につながっているのか分からない」
  • 「広告費をかけているが、費用対効果が見えない」
  • 「Googleの口コミやSNSは見ているが、経営判断に使える数字になっていない」
  • 「初診患者は増えたが、採算が良くなっているのか判断できない」
  • 「広告会社からレポートは届くが、院内の実感と合わない」

ここで大切にしたいのは、集患・広報を「広告を出すかどうか」という問題だけで捉えないことです。

医療機関の広報は、患者満足や診療体験から、公式サイト、口コミ、Google検索、SNS、院内掲示、看板、パンフレット、予約導線、問診票、そして月次決算まで、ひと続きにつながっています。なかでも公式サイトは、看板や紙媒体、Google、SNSといった広報媒体を受け止める最終的な着地点です。そこで患者さんが必要な情報を確認できるかどうかが、来院の判断を左右します。

ですから、広報効果を確認するとは、単に「アクセス数が増えた」「広告のクリック数が増えた」と眺めることではありません。

検索され、比較され、予約され、来院し、継続し、必要に応じて紹介や口コミにつながる。その一連の流れが、最終的に医療機関の収益構造・資金繰り・人員配置・将来投資にどう影響したのかを確かめる作業です。

目次

医療機関の広報は、すでに患者の意思決定に組み込まれている

患者さんは、何も調べずに医療機関を選んでいるわけではありません。

厚生労働省の令和5年受療行動調査によると、ふだん医療機関にかかるときに「情報を入手している」人は、外来で80.7%、入院で83.6%にのぼります。情報の入手先は、外来・入院ともに「家族・友人・知人の口コミ」が最も多く、外来では68.4%。次いで「医療機関が発信するインターネットの情報」が28.8%となっています。

出典:厚生労働省|令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況

この数字が教えてくれるのは、集患を「広告会社に任せる領域」として切り離してしまうことの危うさです。

患者さんの中では、口コミ、公式サイト、インターネット上の情報、看板、紹介、予約、待ち時間、診療説明は分断されていません。一方で医療機関側が、それぞれを別々の担当者・別々の業者・別々の資料で管理していると、患者さんの意思決定の流れを捉えきれなくなります。

集患・広報の効果測定とは、いわばこの分断をつなぎ直す作業なのです。

最初に確認すべきは「広告費」ではなく「患者の流れ」

広報効果を見るとき、まず広告費やアクセス数から確認するクリニックは少なくありません。

もちろん広告費もアクセス数も重要な数字です。ただ、それだけでは十分とは言えません。

最初に見ていただきたいのは、患者さんが自院を知り、比較し、予約し、来院し、継続するまでの流れです。

段階患者の行動見るべき数字
認知自院を知る検索表示回数、地図表示、看板接触、紹介、SNS接触
比較公式サイトや口コミを見るアクセス数、閲覧ページ、滞在、口コミ件数・内容
行動電話・Web予約・問い合わせをする予約数、電話数、フォーム送信数、予約完了率
来院初診として受診する初診患者数、来院動機、診療科別初診数
継続再診・検査・治療継続につながる再診率、継続率、キャンセル率、中断率
経営成果収益・採算に反映される診療単価、売上、粗利、広告費、費用対効果

ここで気をつけたいのは、「広告を見た人」と「来院した人」は一致しないということです。

たとえば患者さんは、看板で名前を知り、Googleで検索し、公式サイトを見て、口コミを確認し、家族に相談したうえで、最後に電話で予約するかもしれません。この場合に来院動機を「電話予約」とだけ集計しても、広報上はほとんど意味を持ちません。

逆に、Web広告をクリックしてサイトに入ったとしても、最終的に来院に至らなければ経営成果にはつながりません。

つまり広報効果は、「入口」だけでも「出口」だけでも判断できないということです。入口から出口までを、月次で一本につなげて確認する必要があります。

アクセス数は重要だが、それだけでは集患効果を説明できない

公式サイトのアクセス数は、広報効果を見るうえで基本になる数字です。

クリニック広報の実務では、公式サイトのアクセス数を把握し、問診票で来院動機を確認することが、重要な管理項目になります。

ただし、アクセス数が増えたからといって、必ず患者数が増えるとは限りません。

アクセス数は伸びているのに初診が増えない。そんなときは、次のような原因が考えられます。

  • 検索意図とページ内容が合っていない
  • 診療時間・アクセス・予約方法が分かりにくい
  • スマートフォンで見づらい
  • 費用や治療内容の説明が不足している
  • 院長・医師・スタッフの情報が薄い
  • 口コミや評判との整合性がない
  • 予約導線が弱い
  • 広告で集めている患者層と、自院の診療体制が合っていない
  • 自由診療のページで、リスク・費用・治療期間の説明が不足している
  • そもそも患者さんの受診ニーズが、情報収集段階にとどまっている

要するに、アクセス数は「入口の量」を示すにすぎず、来院の質や採算までは教えてくれません。

アクセス数を経営判断に活かすには、少なくとも次の数字とセットで見る必要があります。

アクセス指標一緒に見るべき指標判断できること
サイト全体アクセス数初診数、予約数サイト接触が来院に結びついているか
診療科ページ閲覧数診療科別初診数伸ばしたい診療領域に患者が来ているか
自由診療ページ閲覧数自由診療相談数・成約数情報提供が相談につながっているか
アクセス元来院動機Google、広告、SNS、紹介の整合性
スマートフォン比率予約完了率スマホ導線に問題がないか
離脱の多いページ問い合わせ数患者が迷っている箇所はどこか

Google Search Consoleの検索パフォーマンスレポートでは、検索結果におけるクリック数、表示回数、平均CTR、平均掲載順位などを確認できます。これは「検索でどの程度見つけられているか」を見る指標であり、来院数そのものではない点に注意が必要です。

出典:Google Search Console ヘルプ|Performance report(Search results)

また、Google Analyticsでは、ページ閲覧やリンククリックといったユーザー行動をイベントとして測定でき、重要な行動はキーイベントとして設定できます。ただし医療機関の場合、患者さんの症状や診療内容が推測される情報を、安易に計測タグやURL、イベント名に含めないなど、個人情報・医療情報への配慮が欠かせません。

出典:Google アナリティクス ヘルプ|About events出典:Google アナリティクス ヘルプ|Events report

来院動機は、問診票で確認しなければ分からない

広報効果を測るうえで最も重要でありながら、軽視されやすいのが「来院動機」です。

アクセス解析だけでは、実際に来院した患者さんが何をきっかけに自院を選んだのかまでは分かりません。

Google検索から公式サイトに入ってきたとしても、来院理由は「家族の紹介」かもしれません。駅前看板で名前を覚え、あとからスマートフォンで検索しただけ、ということもあります。かかりつけの患者さんの紹介で来たものの、予約前に公式サイトで確認していた、という可能性もあるでしょう。

だからこそ、問診票や初診時アンケートで、来院動機を継続的に確認しておく必要があります。広報実務でも、問診票を活用して来院動機を知ることは、公式サイトや広報施策の効果を把握するための重要な手段とされています。

来院動機の設問は、単純な一択にしないほうが、実態をつかみやすくなります。たとえば、次のように分けて尋ねます。

設問目的
当院を最初に知ったきっかけ認知経路を把握する
受診前に確認した情報比較・検討に使われた媒体を把握する
最終的に予約・来院を決めた理由来院決定要因を把握する
検索した言葉患者の悩み・検索意図を把握する
紹介者の有無口コミ・紹介の強さを把握する
不安だった点公式サイトや院内説明の改善点を把握する

設問例としては、次のようなものが考えられます。

  • 「当院を最初に知ったきっかけを教えてください」
  • 「受診前に確認したものを、すべて選んでください」
  • 「最終的に当院を選んだ理由を教えてください」
  • 「検索した場合、どのような言葉で検索しましたか」
  • 「ご家族・ご友人・他院からの紹介はありましたか」

選択肢は、最低限、次の程度に分けておくとよいでしょう。

  • Google検索
  • Googleマップ
  • 公式サイト
  • 口コミサイト
  • SNS
  • 家族・知人の紹介
  • 他院・施設からの紹介
  • 看板
  • チラシ・パンフレット
  • 院内掲示
  • 以前から通院している
  • 職場・学校・自治体等で知った
  • その他

ここで大切なのは、「患者さんを細かく追跡すること」ではありません。

患者さんの個人情報を過度に集めるのではなく、集計可能な形で、広報と診療体制の改善に使える情報を整えることです。

個人情報保護委員会等が示す医療・介護関係事業者向けのガイダンスは、病院、診療所、薬局等の医療機関等を対象に、個人情報の適正な取扱いを確保するための留意点を整理しています。問診票やWebフォーム、アクセス解析を使う場合も、取得目的、利用範囲、管理方法、委託先管理を確認しておく必要があります。

出典:個人情報保護委員会・厚生労働省|医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス

初診数だけでなく「どの初診が増えたか」を見る

集患の成果として、最も分かりやすいのは初診患者数です。

ただし、初診数だけを見ていても、経営判断には足りません。

医療機関では、診療科や診療内容によって、診療単価、再診継続、検査・処置の有無、医師・スタッフの負荷、予約枠、材料費、自由診療割合が変わってきます。診療所経営では、初診率がマーケティング上の弱点を示す指標になり得る一方、診療圏や診療科別の構造と合わせて見ることが欠かせません。

たとえば、同じ「初診10人増」でも、経営上の意味合いはまったく異なります。

  • 高血圧・糖尿病など、継続管理につながる初診
  • 一度の処方で終わる、急性疾患の初診
  • 検査につながる初診
  • 自由診療相談につながる初診
  • 紹介元との関係強化につながる初診
  • 待ち時間や電話対応を圧迫するだけの初診
  • 自院の診療方針と合わず、説明負荷が高い初診

そこで初診数は、次のように分解して見ていきます。

分解軸見る理由
診療科・診療メニュー別伸ばしたい領域に患者が来ているか
来院動機別どの広報チャネルが効いているか
曜日・時間帯別予約枠・スタッフ配置に無理がないか
保険・自由診療別収益構造・消費税・説明責任が異なるため
継続・単発別長期的な患者基盤に影響するため
紹介・口コミ別患者満足や地域連携の強さを示すため
キャンセル・中断別広報と実際の診療体験にズレがないか

集患の目的があいまいなまま初診数だけを追いかけると、現場が疲弊してしまいます。

たとえば、広告で初診は増えたものの、受付電話が鳴り続け、待ち時間が延び、スタッフが疲れ、既存の患者さんの満足度が下がる、ということが起こり得ます。短期的には集患成功に見えても、長期的には患者基盤を傷めている可能性があるのです。

広告費の費用対効果は「広告費÷初診数」だけで判断しない

広告費の効果測定でよく使われるのが、新規患者を1人獲得するためにかかった費用です。

計算式そのものは単純です。

広告費 ÷ 広告経由の初診数

たとえば、月20万円の広告費で広告経由の初診が40人なら、1人あたり5,000円となります。

これはたしかに重要な数字です。ただし、この一点だけで広告の良し悪しを判断するのは危険です。

なぜなら医療機関の経営では、初診1回だけで採算を見るべきでない場合が多いからです。再診継続、検査、処置、慢性疾患管理、自由診療、紹介、家族受診など、患者さんとの関係は複数回にわたることがあります。一方で、診療科によっては単発受診が中心で、広告費を回収しにくいケースもあります。

広告費を見るときは、次の順番で考えていきます。

指標内容
広告費Web広告、紙媒体、看板、制作費、運用費
広告経由初診数来院動機で確認した広告経由の初診数
1初診あたり広告費広告費 ÷ 広告経由初診数
初診時診療単価初診1回あたりの平均収入
継続率初診後に再診・治療継続した割合
患者あたり見込収入初診から一定期間の平均収入
変動費・人件費負荷材料費、外注費、スタッフ時間
広告経由粗利売上ではなく粗利で見た貢献
回収期間広告費を何か月で回収できるか

とりわけ自由診療や検査、継続管理を含む診療では、「初診時の売上」だけでは判断できません。

その一方で、広告経由の患者さんが継続しない、キャンセルが多い、説明負荷が高い、クレームが多い、医療広告規制上リスクの高い表現で集めている――こうした場合は、数字上の初診単価が良くても見直しが必要です。

医療機関の広報は、集めればよいというものではありません。自院の診療方針、提供体制、説明責任に合う患者さんに届いているかどうかを、あわせて見る必要があります。

「広告なしで来た患者」と「広告で増えた患者」を分ける

広告効果を過大評価してしまう典型例があります。

それは、もともと来院するはずだった患者さんまで、広告経由の成果として数えてしまうことです。

たとえば、駅前の目立つ立地で、すでに地域認知の高いクリニックがリスティング広告を出した場合を考えてみます。広告をクリックして来院した患者さんの中には、もともと医院名で検索していた人も含まれているはずです。この場合、広告がなければ来なかった患者さんなのか、広告がなくても来た患者さんなのかを分けなければ、費用対効果を正しく判断できません。

実務上は、厳密な因果関係まで証明するのは難しいため、次のような比較を行います。

  • 広告開始前後の初診数を比較する
  • 前年同月と比較する
  • 診療科別・メニュー別に比較する
  • 医院名検索と症状検索を分ける
  • 広告を出していない地域・診療メニューと比較する
  • 広告停止期間を短期的に設けて、変化を見る
  • 来院動機で「広告を見た」と「以前から知っていた」を分ける
  • Web予約・電話予約・直接来院を分ける

広告会社の管理画面だけでは、自院の実患者数や診療収入との接続までは見えません。

広告レポートは、会計・レセコン・予約・問診票の数字と突き合わせてはじめて、経営資料になります。

広報効果は「公式サイト」「Google」「口コミ」「紙媒体」を分けすぎない

広報効果を測ろうとすると、チャネル別に細かく分けたくなるものです。

  • Google検索
  • Googleマップ
  • リスティング広告
  • SNS
  • 口コミ
  • 看板
  • チラシ
  • パンフレット
  • 院内掲示
  • 紹介

もちろん、ある程度の分類は必要です。ただし分類しすぎると、今度は患者さんの実際の行動を見失ってしまいます。

広報実務では、看板、パンフレット、院内掲示、Web広告、駅看板、診察券、名刺といった媒体を、公式サイトにつなげることが重要になります。スマートフォンで容易にアクセスできる時代には、紙媒体や看板も公式サイトへの入口として機能します。

そのためチャネル別の評価では、次のような考え方が現実的です。

チャネル単独評価の限界見るべき役割
Google検索検索した時点で他媒体の影響を受けている比較・検討の入口
Googleマップ近隣性や口コミの影響が大きい来院直前の判断
SNS直接予約に結びつくとは限らない認知・信頼・採用広報
看板接触数を正確に測りにくい認知・場所の記憶
チラシ配布数と来院数の関係が曖昧特定エリアへの認知形成
口コミ数字化しにくい患者満足・紹介基盤
公式サイトすべての受け皿になる情報確認・予約導線

つまり、チャネル別に「勝ち負け」を決めるだけでは不十分なのです。

どの媒体が認知をつくり、どの媒体が比較材料になり、どのページが予約を後押しし、どの診療体験が口コミや紹介につながっているのか。その役割の違いを見ていくことが大切です。

医療広告規制を無視した効果測定は、経営判断として危うい

集患効果を数字で見ていると、クリック率や予約率の高い表現を使いたくなることがあります。

しかし医療機関の広報では、広告規制を前提に考えなければなりません。

厚生労働省は、医療法における病院等の広告規制に関するページで、医療広告等ガイドライン、Q&A、ウェブサイト等の事例解説書などを公表しています。本稿執筆時点では、令和8年3月30日付の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」も掲載されています。

出典:厚生労働省|医療法における病院等の広告規制について

また厚生労働省委託事業として、医療機関のウェブサイトに虚偽や誇大な表示、不適切な表示がないかを監視する医療機関ネットパトロールも設けられています。

出典:厚生労働省委託事業|医療機関ネットパトロール

効果測定にあたって、特に注意したいのは次の点です。

  • クリック率を上げるために、効果保証のような表現を使わない
  • 予約率を上げるために、不安を過度に煽らない
  • 自由診療で、費用・リスク・治療期間を曖昧にしない
  • 口コミや体験談を、安易に広告利用しない
  • ビフォーアフター写真を使う場合は、必要情報を確認する
  • 広告会社に任せきりにせず、院内で最終確認する
  • 成果が出ている広告ほど、表現リスクを点検する

医療機関経営では、「集患できているから良い広告」とは限りません。

法令遵守、患者さんへの説明責任、自院の診療方針、スタッフ負荷、採算がそろってはじめて、継続できる広報といえます。

月次で見るべき広報KPI

集患・広報の数字は、多すぎると見なくなります。

かといって少なすぎると、今度は判断を誤ります。診療所経営では、患者数、初診率、診療単価、固定費、人件費、診療圏などを分解して見ることが重要であり、広報の数字も、月次の経営指標とつながってはじめて意味を持ちます。

まずは、次の程度に絞ると運用しやすいでしょう。

区分KPI確認頻度
検索表示回数、クリック数、CTR、検索語月次
サイトアクセス数、診療科ページ閲覧数、スマホ比率月次
行動Web予約数、電話数、問い合わせ数週次・月次
来院初診数、診療科別初診数、来院動機月次
継続再診率、キャンセル率、中断率月次
収益診療単価、売上、自由診療売上月次
費用広告費、制作費、運用費月次
採算広告費対初診数、広告費対粗利月次
現場負荷待ち時間、受付電話数、スタッフ残業月次
信頼口コミ件数、紹介数、苦情内容月次・四半期

このうち、経営会議で必ず見ていただきたいのは、次の5つです。

  • 初診数
  • 来院動機
  • 広告費
  • 診療単価・売上
  • 継続率または再診状況

ここに、アクセス数や検索順位、クリック率を補助指標として加えます。

アクセス数やクリック率は、施策の改善には役立つ数字です。ただ経営判断では、最終的に来院・診療収入・採算・患者満足につながっているかどうかを確認します。

広報KPIは月次決算とつなげる

広報効果測定で最も重要なのは、月次決算とつなげることです。

広告会社のレポート、Googleのデータ、予約システム、問診票、レセコン、会計データ。これらが別々に存在しているだけでは、経営判断には使えません。

たとえば、次のような月次資料を作ると、広報が経営数字にしっかり接続されます。

月次確認項目データ元経営判断
広告費会計データ予算内か、増減理由は何か
公式サイト制作・保守費会計データ固定費化していないか
アクセス数・検索語Search Console・Analytics患者ニーズと合っているか
予約数予約システム導線が機能しているか
初診数レセコン・受付集計実際に患者が増えているか
来院動機問診票どの接点が効いているか
診療科別売上レセコン・会計伸ばしたい領域が伸びているか
広告経由売上問診票・会計広告費に見合うか
スタッフ負荷勤怠・受付記録現場が耐えられるか
患者満足アンケート・苦情集患が質を下げていないか

広報は、損益計算書では「広告宣伝費」や「支払手数料」に埋もれがちです。

しかし経営判断では、それを患者数、診療単価、初診率、再診率、自由診療売上、人件費、予約枠と結びつけて見る必要があります。

月次決算を単なる税務申告の準備にとどめず、広報施策の検証にも使う。これだけで、医療機関経営の管理水準は一段上がります。

数字を見るときの典型的な誤り

集患・広報の効果測定では、次のような誤りが起きやすくなります。

1. アクセス数だけで判断する

アクセス数が増えても、来院しなければ経営成果にはなりません。アクセス数は、予約数、初診数、来院動機、診療単価とセットで見ます。

2. 広告会社のレポートだけで判断する

広告管理画面上のクリック数やコンバージョン数は、実際の来院や診療収入と一致しません。会計データ、予約データ、問診票、レセコンと照合します。

3. 初診数だけで判断する

初診が増えても、継続しない、採算が悪い、現場が疲弊する、ということがあります。診療科別、診療内容別、継続率、キャンセル率を見ます。

4. 売上だけで判断する

売上が増えても、広告費、人件費、材料費、外注費が増えれば、利益は残りません。部門別・機能別の採算で確認します。

5. 患者層のミスマッチを見ない

広告表現が強すぎると、自院の診療方針と合わない患者さんが増えることがあります。クレーム、説明時間、キャンセル、中断、スタッフ負荷を見ます。

6. 医療広告規制を後回しにする

成果が出ている広告でも、規制上の問題があれば継続できません。医療広告ガイドラインに照らして、定期的に点検します。

7. 個人情報・医療情報の管理を軽視する

問診票、Webフォーム、予約システム、アクセス解析、広告タグには、個人情報・医療情報への配慮が必要です。技術的にできることと、医療機関として行うべきことは、分けて考えます。

広報効果を見るための月次レポート例

実務では、複雑なレポートよりも、毎月同じ前提で確認できる表のほうが有効です。

項目前月当月前年同月コメント
公式サイトアクセス数主要ページの増減
検索クリック数症状名・医院名検索の変化
Web予約数予約完了率・キャンセル率
電話問い合わせ数受付負荷も確認
初診患者数診療科別に分解
来院動機:検索SEO・広告の効果
来院動機:紹介患者満足・連携の指標
来院動機:看板・紙媒体地域認知の指標
広告費媒体別に確認
広告経由初診数問診票と照合
1初診あたり広告費採算の入口
診療科別売上伸ばしたい領域か
自由診療相談数説明・成約・リスク確認
キャンセル率予約導線・患者層を確認
患者満足・苦情集患の質を確認

この表を、月次決算や予実管理と同じタイミングで確認します。

広報は、単発の施策ではなく、月次で改善していく経営管理項目だと捉えるとよいでしょう。

改善判断は「どの数字が悪いか」で変える

広報効果測定の目的は、レポートを作ることではありません。改善判断につなげることです。

起きていること主な原因候補改善の方向性
表示回数が少ない検索されるページが不足診療科・症状別ページを整える
表示は多いがクリックされないタイトル・説明が弱いページ内容と検索意図を見直す
アクセスは多いが予約が少ない予約導線・情報不足診療時間、費用、医師情報、予約導線を改善
予約は多いが来院が少ないキャンセル・ミスマッチ予約確認、事前説明、対象患者の見直し
初診は多いが継続しない診療体験・説明不足初診時説明、次回予約、患者教育を見直す
売上は増えたが利益が残らない広告費・人件費・材料費増採算管理、価格・診療体制を確認
患者は増えたが苦情も増えた現場負荷・期待値ズレ広告表現、予約枠、待ち時間管理を見直す

「アクセスが少ないから広告を増やす」という判断は、いつも正しいとは限りません。

ページ内容が弱いまま広告費を増やしても、費用だけがかさむことがあります。予約導線が弱いままアクセスを増やしても、離脱が増えるだけです。診療体制が整っていないまま初診を増やせば、患者満足とスタッフ定着を損ないかねません。

集患・広報は、現場運営と財務管理を見ながら進めていく必要があるのです。

成果が出た広報ほど、継続可能性を見る

集患がうまくいくと、もっと広告費を増やしたくなるものです。

しかし医療機関では、「伸びているから増やす」だけでは不十分です。次の点をあわせて確認します。

  • 医師の診療時間は足りるか
  • 看護師・受付・検査スタッフの負荷は許容範囲か
  • 待ち時間は悪化していないか
  • 既存の患者さんの満足度は下がっていないか
  • 自由診療の説明時間は確保できているか
  • 広告表現は、医療広告規制上問題ないか
  • 広告費を増やしても、資金繰りに無理はないか
  • 採算が悪化していないか
  • 患者層が、自院の方針と合っているか
  • 将来の承継・M&A時にも説明できる数字か

広報の効果測定は、「攻め」を止めるための管理ではありません。

伸ばすべきところを、無理なく、説明可能な形で伸ばすための管理です。

集患・広報の数字は、将来の承継・M&Aでも問われる

集患・広報の管理は、日々の患者数を増やすためだけのものではありません。

将来、医療法人化、分院、移転、在宅医療展開、承継、M&Aを検討する際にも、患者基盤を語る説明資料になります。

買い手や金融機関、後継者は、単に売上だけを見るわけではありません。

  • どの診療科が伸びているか
  • 初診はどこから来ているか
  • 紹介や口コミに依存していないか
  • 広告費を止めると患者数が落ちるのか
  • 自由診療の集患は適正に行われているか
  • 公式サイトと実態が一致しているか
  • 患者基盤が院長個人に依存していないか
  • 月次で説明できる数字があるか

医療機関の承継やM&Aでは、財務・税務だけでなく、患者基盤、スタッフ、広報、診療体制も確認の対象になります。第三者承継では、買い手側がデューデリジェンスを行い、財務・税務、労務、医療法務などの観点から確認していく流れが一般的です。

つまり広報KPIを月次で管理することは、将来の説明責任を整えておくことでもあるのです。

集患・広報の効果測定を始める順番

広報効果を数字で確認するために、最初から完璧なダッシュボードを作る必要はありません。

次の順番で進めると、現実的に運用できます。

第1段階:来院動機を問診票で取る

まず、初診患者の来院動機を毎月集計します。ここがないと、Webや広告の数字と、実際の来院がつながりません。

第2段階:公式サイトの基本数字を見る

アクセス数、検索クリック数、主要ページ閲覧数を確認します。Search ConsoleとAnalyticsの数字は、経営数字そのものではなく、広報改善の補助指標として扱います。

第3段階:予約・問い合わせとつなげる

Web予約、電話、フォーム送信を確認します。電話予約が多いクリニックでは、Webだけ見ていても実態を捉えられません。

第4段階:初診数・診療科別売上とつなげる

来院動機別の初診数を、診療科別売上や診療単価と結びつけます。

第5段階:広告費・制作費を月次決算で確認する

広告費、制作費、運用費を会計データから確認し、広報KPIと並べて見ます。

第6段階:採算と現場負荷を見る

広告費だけでなく、人件費、予約枠、待ち時間、キャンセル、クレームを確認します。

第7段階:改善施策を決める

ページ改善、予約導線改善、広告の停止・増額、診療メニュー見直し、院内説明改善など、次月の行動に落とし込みます。

集患・広報を「数字で説明できる医療機関」へ

集患や広報は、感覚で語られやすい領域です。

  • 「最近、患者さんが増えた」
  • 「広告は効いている気がする」
  • 「口コミが良くなっている」
  • 「ホームページを見て来た人が多いらしい」

こうした感覚は、現場の重要な手がかりです。

ただ、経営判断には、もう一段の整理が必要になります。

アクセス数、予約数、初診数、来院動機、診療単価、広告費、継続率、採算、現場負荷を、同じ前提で毎月確認できるようにする。それによって広報は、単なる宣伝ではなく、経営管理の一部になります。

医療機関の広報は、患者さんに選ばれるための情報発信であると同時に、患者さん、スタッフ、金融機関、後継者、外部関係者に対して「自院がどのように患者基盤を形成しているか」を説明する資料でもあります。

守りを仕組みにし、攻めを戦略にする。集患・広報の効果測定は、そのための実務です。

集患・広報の数字を月次経営管理に組み込みたい方へ

集患・広報の効果を正しく見るには、Webの数字だけでは足りません。

公式サイト、Google、広告、口コミ、問診票、予約、レセコン、月次決算、診療科別売上、広告費、スタッフ負荷をつなげて確認する必要があります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、医療機関の月次決算、管理会計、資金繰り、診療科別・機能別採算、広告費の効果測定、自由診療の収益管理を、経営判断に使える形へ整理する支援を行っています。

「広告費が成果につながっているのか分からない」「公式サイトやWeb予約の数字を月次決算とつなげたい」「初診数は増えているが、採算や現場負荷まで見られていない」とお感じの場合は、お問い合わせページからご相談ください。

振り返り:集患・広報の効果を数字で確認するポイント

重要論点確認すべき数字・資料経営判断へのつながり
患者の情報収集口コミ、公式サイト、インターネット情報広報が患者の意思決定に組み込まれているか
アクセス数サイト訪問数、ページ閲覧数、スマホ比率公式サイトが見られているか
検索状況表示回数、クリック数、CTR、検索語患者の検索意図とページが合っているか
予約導線Web予約数、電話数、問い合わせ数サイト接触が行動につながっているか
来院動機問診票、初診アンケートどの広報接点が実来院に影響しているか
初診数診療科別初診数、来院動機別初診数伸ばしたい領域に患者が来ているか
継続率再診率、キャンセル率、中断率集患の質が診療継続につながっているか
広告費媒体別広告費、制作費、運用費費用が予算・成果に見合っているか
採算診療単価、粗利、広告費対粗利売上ではなく利益に貢献しているか
現場負荷待ち時間、電話数、残業、苦情集患が院内運営を圧迫していないか
医療広告規制広告表現、自由診療表示、口コミ利用成果が出ても継続できる広報か
個人情報管理問診票、Webフォーム、アクセス解析患者情報を適切に扱えているか
月次管理広報KPIと月次決算の連携広報を経営判断に使える状態にする
将来説明患者基盤、広告依存度、紹介状況承継・M&A・金融機関対応にも耐えるか

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