農地・山林・雑種地の評価単位と宅地比準|市街地農地・市街地山林・雑種地評価で確認すべき実務ポイント

相続財産に土地が含まれている場合、多くの方は、まず路線価や固定資産税評価額を確認しようとなさいます。けれども、土地評価で本当に難しいのは、単価を探す前の段階にあります。

その土地は、相続税評価上、宅地なのか、農地なのか、山林なのか、それとも雑種地なのか。登記簿には「畑」と記載されていても、現況は駐車場になっていないか。市街化区域内の畑や山林を、農地・山林として単純に倍率評価してよいのか。宅地と農地、山林、雑種地が隣接している場合に、地目ごとに分けるのか、それとも一団の土地として評価するのか。

こうした判断ひとつで、相続税評価額は大きく変わってきます。しかも農地や山林、雑種地は、評価額の問題にとどまりません。農地法、都市計画、開発制限、造成費、将来の売却、相続人の管理負担、そして納税資金にまで関わってきます。

このコラムでは、農地・山林・雑種地について、相続税申告で特に問題になりやすい論点を、次のように整理してご説明します。

論点実務上の確認ポイント
地目判定登記地目ではなく、課税時期の現況で判断する
農地評価純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地を区分する
山林評価純山林・中間山林・市街地山林を区分する
雑種地評価現況に応じ、状況が類似する付近の土地を基に評価する
評価単位農地は耕作単位、山林は原則1筆、雑種地は利用単位が基本
一団評価市街地的地域では、農地・山林・雑種地を一団評価する場合がある
宅地比準宅地であるとした価額から造成費等を調整する
宅地造成費控除する場合と、加算する場合を混同しない
現況確認現地写真、航空写真、固定資産税資料、農地台帳等を確認する
申告後リスク評価根拠を説明できるよう、判断過程を記録する
目次

まず結論|農地・山林・雑種地の評価は「地目」「評価単位」「宅地比準」の順で考える

農地・山林・雑種地の評価では、いきなり計算式に入るのは禁物です。次の順序で順を追って整理していくことが、何より大切になります。

順序確認すること判断を誤った場合の影響
1課税時期の現況登記地目どおりに評価してしまい、評価区分を誤る
2都市計画・農地法等の制限宅地化可能性や造成費、雑種地評価の比準地を誤る
3評価倍率表・路線価地域の確認倍率方式か宅地比準方式かを誤る
4評価単位1筆ごと、耕作単位、一団の土地の判定を誤る
5宅地比準の可否宅地価額を基にすべきか、農地・山林等を基にすべきかを誤る
6宅地造成費・画地補正控除・加算、傾斜、造成困難性の判断を誤る
7特例・納税資金・分割小規模宅地、農地承継、売却可能性を見落とす
8記録化税務調査や相続人間説明で根拠を示せなくなる

財産評価基本通達では、土地の価額は原則として地目の別に評価し、その地目は課税時期の現況によって判定することとされています。そして宅地、農地、山林、雑種地のそれぞれについて、評価単位が定められています。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第1節 通則

地目判定|登記簿ではなく、課税時期の現況を見る

土地評価では、登記簿の地目をまず出発点として確認します。ただし、最終的に評価上の地目を決めるのは、原則として課税時期の現況です。

たとえば、登記簿上は「畑」であっても、相続開始の時点で砂利を敷き、月極駐車場として利用していたとすれば、農地ではなく雑種地と判定することがあります。反対に、数年前から耕作していない土地であっても、耕作しようと思えばいつでも耕作できる状態にあれば、農地と判定される余地が残ります。

この点については、国税庁の質疑応答事例でも考え方が示されています。土地の地目は登記簿上の地目によらず課税時期の現況で判定し、耕作していない土地であっても、客観的に見て耕作の目的に供されると認められる休耕地・不耕作地は農地に含まれます。一方で、長期間放置され容易には農地へ復元できない場合は原野または雑種地と判定し、駐車場として利用されている場合は雑種地と判定する、という整理です。

出典:国税庁|土地の地目の判定-農地

現況確認で見るべきポイント

確認事項農地・山林・雑種地評価での意味
実際の利用状況耕作中、休耕、放置、駐車場、資材置場、太陽光発電、山林など
登記地目田、畑、山林、雑種地、宅地などの形式的情報
固定資産税課税地目市区町村の課税上の取扱いを確認する
農地台帳・農業委員会資料農地法上の扱い、転用履歴、賃借権等を確認する
都市計画区域市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域等
周辺利用住宅地、農地、山林、工場、駐車場、資材置場など
現地写真・航空写真過去から現在までの利用変化を説明する
造成状況砂利敷き、舗装、土盛り、擁壁、伐採、整地等
接道・形状宅地化可能性や宅地比準評価に影響する

実務の現場では、「登記地目」「固定資産税課税地目」「現況地目」の三つが一致しないことは、決して珍しくありません。

相続税申告にあたっては、どれか一つの資料だけで判断するのではなく、複数の資料を突き合わせていく姿勢が欠かせません。そのうえで、最終的に課税時期の現況をきちんと説明できる状態に整えておくことが必要です。

農地の評価|4区分を確認してから評価方式を決める

農地は、宅地への転用制限や都市計画上の状況によって、評価方法が変わってきます。国税庁のタックスアンサーでは、農地を次の4種類に区分して評価することとされています。

農地の区分評価の考え方
純農地倍率方式
中間農地倍率方式
市街地周辺農地市街地農地であるとした場合の価額の80%相当額
市街地農地宅地比準方式または倍率方式

出典:国税庁|No.4623 農地の評価

純農地・中間農地は倍率方式が基本

純農地および中間農地は、固定資産税評価額に、評価倍率表で定められた倍率を乗じて評価します。

評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率

ここで気をつけたいのは、固定資産税評価額そのものを相続税評価額とするわけではない、という点です。評価倍率表で、該当する地域・地目の倍率をきちんと確認する必要があります。

評価倍率表では、「田」「畑」の欄に、農地の分類、評価方式、固定資産税評価額に乗ずる倍率が記載されています。そこでは「純」「中」「周比準」「比準」「市比準」といった略称が使われます。このうち「比準」「市比準」「周比準」と表示されている地域は、付近の宅地の価額に比準する宅地比準方式で評価する地域を意味します。

出典:国税庁|評価倍率表(一般の土地等用)の説明

市街地農地は宅地比準方式が中心になる

市街地農地は、その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額から、宅地へ転用する際に通常必要と認められる1平方メートル当たりの造成費を控除し、これに地積を乗じて評価します。

市街地農地の評価額 =(その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額 - 1㎡当たりの造成費)× 地積

路線価地域では路線価を基にします。倍率地域では、評価対象となる農地に最も近接し、道路からの位置や形状などが最も類似する宅地の評価額を基に計算します。宅地造成費については、整地・土盛り・土止めなどに要する費用として、地域ごとに国税局長が定める金額を確認します。

出典:国税庁|No.4623 農地の評価

市街地農地については、「畑だから安い」と早合点しないことが肝心です。宅地として利用できる可能性がどの程度あるのか、宅地化するためにどれだけの造成が必要になるのか。これらを評価に反映させていきます。

山林の評価|純山林・中間山林・市街地山林を分ける

山林もまた、所在する地域や宅地化の影響によって、評価方法が変わります。

財産評価基本通達では、山林を次の区分に従って評価することとされています。

山林の区分評価方式
純山林倍率方式
中間山林倍率方式
市街地山林比準方式または倍率方式

出典:国税庁|財産評価基本通達 第4節 山林及び山林の上に存する権利

純山林は、固定資産税評価額に、地勢、土層、林産物の搬出の便などの状況が類似する地域ごとに定められた倍率を乗じて評価します。中間山林も、地価事情が類似する地域ごとの倍率を用いて評価します。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第4節 山林及び山林の上に存する権利

これに対して市街地山林は、市街地農地と同じように、宅地であるとした場合の価額から宅地造成費を控除する比準方式で評価することがあります。市街地の中に介在する山林や、市街地化の影響を受ける山林について、「木が生えているから山林として安く評価する」という単純な見方は通用しません。

ただし、急傾斜地で宅地造成が物理的に困難な場合や、造成費が多額となり宅地転用に経済合理性が認められない場合には、宅地比準をそのまま当てはめることが適切でないこともあります。国税庁の質疑応答事例でも、市街地農地等について、地積規模の大きな宅地の評価の適用要件を満たせば対象となる一方、多額の造成費を要して宅地転用が見込めない場合や、急傾斜地などで宅地造成が物理的に不可能な場合には、戸建住宅用地としての分割分譲が想定されないため適用対象とならない、という考え方が示されています。

出典:国税庁|地積規模の大きな宅地の評価-市街地農地等

雑種地の評価|「何に似ている土地か」を現況から判断する

雑種地とは、宅地、田、畑、山林、原野などのいずれにも直接当てはまらない土地を指します。典型的には、駐車場、資材置場、太陽光発電設備用地、ゴルフ練習場、運動場、車両置場などがこれにあたります。

財産評価基本通達では、雑種地の価額について、原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地を評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、位置・形状などの条件差を考慮して評定した価額に、地積を乗じて評価することとされています。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第10節 雑種地及び雑種地の上に存する権利

雑種地評価で最初に考えること

雑種地の評価では、次の順序で整理していきます。

確認事項判断内容
現況駐車場、資材置場、太陽光発電、未利用地、運動場など
周辺状況周囲が宅地か、農地か、山林か、工業地か
都市計画市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域など
建築・開発可能性宅地化できるか、開発許可が必要か、制限が強いか
造成状況舗装、砂利敷き、盛土、擁壁、排水設備等
比準すべき地目宅地比準、農地比準、山林比準など
評価単位同一目的で利用される一団か、物理的に分離しているか

市街化調整区域内の雑種地については、とりわけ注意が必要です。国税庁は、市街化調整区域内の雑種地の評価について、状況が類似する土地の判定を周囲の状況に応じて行うこと、付近の宅地価額を基に評価する場合には、開発行為の可否、建築制限、位置などに係るしんしゃく割合を、市街化の影響度と雑種地の利用状況に応じて個別に判定する、という考え方を示しています。

出典:国税庁|No.4628 市街化調整区域内の雑種地の評価

宅地比準と農地比準では、造成費の扱いが逆になることがある

雑種地評価でつまずきやすいのが、宅地造成費の扱いです。

宅地比準方式で評価する場合は、原則として、宅地であるとした価額から宅地造成費を控除します。評価対象地を宅地にするためには、造成費が必要となるからです。

一方、農地等の価額を基として評価する場合で、雑種地が資材置場や駐車場などとして利用されているときには、農地等の価額に造成費相当額を加算することがあります。ただし、その価額は、宅地の価額を基として評価した価額を上回らないことに留意しなければなりません。

出典:国税庁|No.4628 市街化調整区域内の雑種地の評価

整理すると、次のように考えることになります。

評価の基礎造成費の基本的な扱い典型例
宅地を基に比準宅地にするための造成費を控除市街地農地、市街地山林、宅地状況類似の雑種地
農地等を基に比準既に雑種地化するために投入された造成費相当額を加算する場合がある市街化調整区域内の資材置場、駐車場等
宅地転用困難宅地比準そのものが合理的か再検討急傾斜地、多額造成費が必要な山林等

「雑種地だから宅地比準」「造成費は必ず控除」といった機械的な判断は、思わぬ誤りにつながります。現況、周辺地目、都市計画、開発可能性、造成の有無を確認したうえで、どの土地を基に比準するのが合理的かを、その都度検討していきます。

評価単位|農地・山林・雑種地では基準が異なる

農地・山林・雑種地の評価において、税額を大きく左右するのが評価単位です。評価単位とは、「どの範囲を一つの土地として評価するか」という問題にほかなりません。

財産評価基本通達では、農地、山林、雑種地について、おおむね次のように定めています。

地目原則的な評価単位例外・注意点
農地1枚の農地、すなわち耕作の単位となっている1区画市街地周辺農地、市街地農地、生産緑地は利用単位となっている一団の農地
山林原則として1筆の山林市街地山林は利用単位となっている一団の山林
雑種地利用の単位となっている一団の雑種地宅地状況類似の雑種地が複数隣接し、一団評価が合理的な場合がある

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第1節 通則

ここで押さえておきたいのは、評価単位が必ずしも登記簿上の1筆と一致するわけではない、という点です。農地であれば、1筆が2枚以上の耕作単位に分かれていることもあれば、逆に2筆以上が一体の耕作単位になっていることもあります。雑種地についても、同一の目的のもとで物理的に一体利用されているかどうかを、改めて確認する必要があります。

農地の評価単位|「1筆」ではなく「耕作の単位」を見る

農地の評価単位は、原則として1枚の農地、つまり耕作の単位となっている1区画です。

たとえば、登記上は2筆に分かれていても、現地では畦畔もなく一体で耕作されている田であれば、これを一つの評価単位として見る場合があります。反対に、登記上は1筆であっても、用水路、畦畔、道路、利用状況の違いなどによって、実際には複数の耕作単位に分かれているときには、分けて評価することになります。

ただし、市街地農地や市街地周辺農地のように宅地比準方式で評価する農地では、「1枚の農地」という見方だけでなく、宅地として利用される場合のまとまりも意識しなければなりません。宅地としての効用を果たさない細切れの区画ごとに評価してしまうと、周辺の宅地との価格均衡を欠いてしまうことがあるためです。

国税庁の質疑応答事例でも、この点が示されています。市街地農地、市街地山林、市街地原野の価額は、付近の宅地の価格形成要因の影響を受けるため宅地比準方式で評価します。そして、1枚または1筆ごとに評価すると宅地の効用を果たさない規模や形状になってしまうことから、利用の単位となっている一団の土地を評価単位とする、という考え方です。

出典:国税庁|土地の評価単位――市街地農地等

山林の評価単位|原則1筆、市街地山林は一団の山林を確認する

山林は、原則として1筆ごとに評価します。山林は、宅地や農地のように日常的な利用単位で区画されているとは限らず、地勢、林況、搬出の便など、1筆ごとの固定資産税評価や倍率に基づいて評価されることが多いためです。

これに対して市街地山林は、宅地化の影響を受ける山林です。この場合には、利用の単位となっている一団の山林を評価単位とします。たとえば、市街化区域内で複数筆の山林が、一体として宅地転用可能な土地として価格形成されているのであれば、筆ごとに分けるよりも、一団の土地として評価する方が合理的なこともあります。

もっとも、山林には、面積が大きい、傾斜が強い、接道がない、土砂災害区域に含まれる、保安林の指定がある、搬出路がないなど、宅地とは異なる制約が数多くあります。市街地山林だからといって、常に通常の宅地と同じように評価できるとは限らない、という点には留意が必要です。

雑種地の評価単位|同一目的・物理的一体性を確認する

雑種地は、利用の単位となっている一団の雑種地、すなわち同一の目的に供されている雑種地ごとに評価します。

国税庁の質疑応答事例では、一団の雑種地の判定を物理的一体性の有無によって行うこと、不特定多数の者の通行の用に供される道路や河川などによって分離されている場合には、その分離された部分ごとに一団の雑種地として評価することが示されています。また、いずれの用にも供されていない雑種地については、その全体を一団の雑種地として評価します。

出典:国税庁|一団の雑種地の判定

雑種地の評価単位では、次のような違いが重要になります。

状況評価単位の考え方
同じ月極駐車場として一体利用原則として一団の雑種地
道路を挟んで別々の駐車場道路で物理的に分離されていれば別単位
資材置場と未利用地が連続利用目的・形状・一体性を確認
自宅敷地に付属する自家用駐車場宅地との一体利用を検討
外部貸し駐車場宅地と分けて雑種地評価を検討
太陽光発電設備用地設備配置、賃貸借、接道、周辺地目を確認
遊休地全体を一団の雑種地と見る場合がある

雑種地は「その他の土地」という性質を持つだけに、ともすると評価判断が粗くなりがちです。しかし実務では、雑種地こそ現地確認と資料化が物を言います。砂利敷きか舗装か、排水設備があるか、隣地と一体利用か、外部貸しか自家利用か。こうした違いによって、評価単位や比準地が変わってくることがあるからです。

地目の異なる土地を一団として評価する場合

土地は、原則として地目ごとに評価します。ただし例外として、地目の異なる土地を一団として評価する場合があります。

財産評価基本通達では、市街化調整区域以外の都市計画区域で市街地的形態を形成している地域において、次の土地のいずれか2以上が隣接し、形状、地積の大小、位置などから見て一団として評価することが合理的と認められるときには、その一団の土地ごとに評価することとされています。

一団評価の対象になり得る土地
市街地農地
市街地山林
市街地原野
宅地と状況が類似する雑種地

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第1節 通則

国税庁の質疑応答事例でも、同様の考え方が示されています。宅地化が進展している地域の中に介在する市街地農地等および宅地と状況が類似する雑種地が隣接し、その規模、形状、位置関係などから一団の土地として価格形成がなされる場合があること。そして、これらの土地は近隣の宅地の価額の影響を強く受け、基本的な評価方法が宅地比準方式で共通することから、一団評価が合理的となる場合がある、という整理です。

出典:国税庁|土地の評価単位――地目の異なる土地を一団として評価する場合

一団評価を検討しやすい場面

状況一団評価を検討する理由
市街化区域内で農地・山林・雑種地が隣接宅地化の価格形成要因を受けている
形状上、一体で宅地開発される可能性が高い地目ごとに分けると宅地としての効用を反映しにくい
接道・奥行・間口を全体で見た方が合理的筆や地目ごとの評価では不自然な価額になる
雑種地・農地・山林が帯状に連続各地目単独では利用可能性を適切に評価できない

一団評価を慎重に考えるべき場面

状況注意点
市街化調整区域内開発制限が強く、宅地化前提が合理的とは限らない
農地が生産緑地に該当一団評価の対象から除かれる場合がある
道路・河川で分断物理的一体性が失われる
急傾斜地・崖地宅地転用が物理的・経済的に困難な場合がある
所有者が異なる所有者ごとの権利関係・利用可能性を確認する
利用目的が明確に異なる同じ一団として価格形成されているか慎重に確認する

一団評価は、評価額を下げるため、あるいは上げるために任意に選び取れるものではありません。価格形成の上で、その一団として見ることが合理的かどうかを、現況、周辺環境、接道、形状、地積、都市計画、利用可能性から説明できることが前提になります。

宅地比準方式の実務手順

市街地農地、市街地山林、そして宅地と状況が類似する雑種地では、宅地比準方式が問題になります。宅地比準方式は、単に「近くの宅地単価を使う」というだけのものではありません。

実務では、次の順序で検討していきます。

手順内容
1評価対象地が宅地比準方式の対象となるか確認する
2路線価地域か倍率地域かを確認する
3付近の状況が類似する宅地を選定する
4宅地であるとした場合の1㎡当たり価額を求める
5位置、形状、奥行、間口、接道等の条件差を反映する
6宅地造成費を控除する
7地積を乗じる
8必要に応じて、地積規模の大きな宅地の評価や利用価値低下を検討する
9評価明細書、判断メモ、現地写真を保存する

路線価地域にある市街地農地や市街地周辺農地を宅地比準方式で評価する場合、形状による条件差については、評価する農地が所在する地区に定められた画地調整率を参考として計算して差し支えないとされています。倍率地域では、普通住宅地区の画地調整率を参考とすることができ、これは市街地山林および市街地原野についても同様です。

出典:国税庁|市街地農地等を宅地比準方式で評価する場合の形状による条件差

宅地比準方式で見落としやすい点

見落とし問題点
近い宅地を機械的に比準地にする道路条件、形状、用途地域、利用制限が違う場合がある
宅地造成費を年分・地域別に確認しない課税時期に対応した金額でない可能性がある
傾斜や高低差を写真で残さない造成費や利用価値低下の説明が難しくなる
地積を公簿だけで判断する実測と大きく異なる可能性がある
市街化調整区域なのに宅地比準を安易に行う開発制限を十分に反映できない
地積規模の大きな宅地の可否を見ない適用漏れ・誤適用のリスクがある
宅地転用が現実的か確認しない宅地比準自体の合理性が問われる

地積については、財産評価基本通達で、課税時期における実際の面積によることとされています。公簿面積と実測面積に差がある土地、山林や雑種地で境界が不明確な土地、古い公図しか残っていない土地では、地積の確認それ自体が評価根拠の一部になります。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第1節 通則

農地・山林・雑種地と遺産分割|評価額だけで分けると不公平感が残る

農地・山林・雑種地は、相続税評価額と実際の承継負担とが一致しにくい土地です。

たとえば市街地農地は、宅地比準方式によって高く評価されることがあります。しかし、農地法上の手続、転用費用、造成費、売却までの時間を考え合わせると、すぐに現金化できるとは限りません。山林は評価額が低く見えることがありますが、境界の不明、管理の負担、倒木、土砂災害、固定資産税、売却の難しさといった問題を抱えがちです。雑種地も、駐車場として収益を生む場合もあれば、資材置場や遊休地として管理負担だけが残る場合もあります。

土地の種類税務評価上の特徴遺産分割・承継上の注意点
純農地・中間農地倍率評価が中心農業を継続する人がいるか、貸付・売却が可能か
市街地農地宅地比準で高額になりやすい転用費用、造成費、納税資金、売却時期
市街地周辺農地市街地農地評価の80%相当額将来の宅地化可能性と農地規制
純山林・中間山林倍率評価が中心境界、管理、伐採、搬出、売却困難性
市街地山林宅地比準または倍率急傾斜、造成困難、土砂災害区域
雑種地類似土地比準が中心現況、収益性、開発制限、賃貸借、管理負担

遺産分割にあたっては、評価額の多寡だけにとらわれないことが大切です。その土地を取得した相続人が将来どう管理していくのか、納税資金をどう確保するのか、売却できる見込みはあるのか、共有にすると次の世代で管理不能に陥らないか。こうした点を、ひとつずつ確認していく必要があります。

特に、地方の農地・山林・雑種地を複数相続するような場合には、注意が要ります。相続税評価額そのものは大きくなくても、境界確認、草刈り、倒木への対応、近隣対応、固定資産税、そして将来の相続登記まで、長期にわたる負担が生じてくるからです。評価額が低いからといって、問題まで小さいとは限りません。

税務調査で説明しやすい評価資料の残し方

農地・山林・雑種地の評価では、評価明細書の数字だけでなく、「なぜその地目・評価単位・比準方法を採用したのか」を説明できる資料が重要になります。

資料役割
登記事項証明書登記地目、地積、所有者、権利関係を確認する
固定資産税課税明細書・評価証明書課税地目、固定資産税評価額、課税状況を確認する
公図・地積測量図筆界、接道、物理的一体性を確認する
航空写真・過去写真利用状況の変化、放置期間、造成状況を確認する
現地写真耕作状況、雑草、舗装、傾斜、樹木、資材置場等を記録する
農地台帳・農業委員会資料農地該当性、転用履歴、権利関係を確認する
都市計画図市街化区域、市街化調整区域、用途地域を確認する
路線価図・評価倍率表評価方式、倍率、借地権割合等を確認する
宅地造成費表課税時期・国税局管内に対応した造成費を確認する
管理契約・賃貸借契約駐車場、資材置場、太陽光発電用地等の利用実態を確認する
評価判断メモ地目、評価単位、比準地、造成費、補正の理由を残す

評価判断メモには、少なくとも次の事項を残しておくと、後日の説明がしやすくなります。

記録すべき事項記載例の方向性
地目判定登記地目は畑だが、課税時期は砂利敷き駐車場であり雑種地と判断
評価単位道路で分断されているため、2つの一団の雑種地として評価
宅地比準の理由市街化区域内で周辺は住宅地、宅地状況類似の雑種地と判断
比準地の選定最も近接し、道路・形状・用途地域が類似する宅地を採用
造成費課税時期の国税局管内の宅地造成費表を使用
補正の有無奥行、間口、傾斜、がけ地、利用価値低下を検討
一団評価の理由市街地農地・市街地山林・雑種地が隣接し、形状・地積・位置から一団評価が合理的
一団評価しない理由道路で分断され、利用目的も異なるため地目別に評価

税務調査では、評価額が低いか高いかだけが問われるのではありません。判断過程の合理性そのものが問われます。とりわけ、宅地比準、造成費控除、一団評価、そして市街化調整区域内の雑種地評価については、評価根拠をきちんと残しておくことが肝心です。

生前対策で注意すべきこと|「土地を動かす前」に評価と将来利用を確認する

農地・山林・雑種地を含む相続対策では、生前贈与、土地分割、売却、農地転用、太陽光発電用地への転用、駐車場化などが検討されることがあります。ただし、これらを相続税評価だけで判断してはいけません。

生前対策・利用変更税務・法務上の注意点
農地を子へ贈与贈与税、相続時加算、農地法、将来の利用意思
農地を駐車場にする地目が雑種地となり、評価方法が変わる可能性
市街地農地を宅地化する造成費、開発許可、売却時期、譲渡所得
山林を太陽光発電用地にする雑種地化、設備評価、賃貸借、撤去費用
土地を分筆する評価単位、不合理分割、接道、将来売却
共有で承継する管理・処分・草刈り・売却判断が難しくなる
農地等の納税猶予を検討する継続要件、打切りリスク、承継者の意思

土地の利用を変えると、相続税評価上の地目や評価単位が変わることがあります。相続の直前に形式的な利用変更を行って評価額を下げようとしても、実態が伴っているか、経済合理性があるか、将来の利用として継続できるのかを問われることになります。

「評価額が下がるかどうか」という観点だけでなく、その利用変更を行うべきか、相続人が管理できるのか、納税資金に役立つのか、後から説明できるのか。こうした点を確認したうえで実行に移すことが大切です。

避けたい短絡的判断

「登記が畑だから農地評価でよい」と考える

評価上の地目は、課税時期の現況で判断します。駐車場、資材置場、長期放置地などは、雑種地や原野と判定される可能性があります。

「市街地の畑だから必ず安く評価できる」と考える

市街地農地は宅地比準方式で評価されることがあり、周辺の宅地の価額の影響を強く受けます。造成費を控除した後でも、評価額が大きくなることがあります。

「山林だから低評価でよい」と考える

市街地山林は宅地比準方式の対象となることがあります。反対に、急傾斜地や造成困難地では、宅地比準が合理的かどうか、慎重な検討が必要です。

「雑種地は近くの宅地価格で評価すればよい」と考える

雑種地は、現況に応じて、状況が類似する付近の土地を基に評価します。市街化調整区域内では、開発制限や建築制限を反映させる必要があります。

「1筆ごとに評価すれば安全」と考える

農地は耕作単位、雑種地は利用単位、そして宅地状況が類似する農地・山林・雑種地は一団評価が必要になる場合があります。1筆評価が常に正しいとは限りません。

「造成費はいつも控除する」と考える

宅地比準では控除が基本ですが、農地等を基に雑種地を評価する場合には、造成費相当額を加算することがあります。評価の基礎がどこにあるのかを、必ず確認しなければなりません。

「相続税評価額だけで分割すれば公平」と考える

農地・山林・雑種地は、換金性、管理負担、法規制、将来利用が大きく異なります。税務評価額だけでは、相続人間の実質的な公平を説明できない場合があります。

相談前に整理しておきたい資料

農地・山林・雑種地の評価についてご相談いただく場合、次の資料がそろっていると、地目判定、評価単位、宅地比準の判断がぐっと進めやすくなります。

資料用途
固定資産税課税明細書課税地目、固定資産税評価額、地積確認
登記事項証明書登記地目、所有者、地積、権利関係
公図筆の位置、隣接関係、道路・水路の確認
地積測量図実測面積、分筆履歴、境界確認
農地台帳農地該当性、耕作者、農地法上の情報
都市計画図市街化区域、市街化調整区域、用途地域
路線価図・評価倍率表評価方式、倍率、比準地域の確認
宅地造成費表年分・国税局別の造成費確認
現地写真耕作状況、樹木、雑草、舗装、傾斜、利用状況
航空写真過去の利用状況、造成・放置期間の確認
賃貸借契約書駐車場、資材置場、太陽光発電用地等の利用実態
管理費・収入資料収益性、管理負担、遺産分割判断
相続人の利用意向農業継続、売却、貸付、管理可能性
売却・転用相談資料不動産会社、農業委員会、自治体との相談履歴

すべての資料がそろっていなくても、心配は要りません。まずは固定資産税資料、登記簿、公図、現地写真から整理を始めれば、論点が次第に見えてきます。

まとめ|農地・山林・雑種地評価は、現況と将来利用を同時に見る

農地・山林・雑種地の評価は、固定資産税評価額に倍率を乗じれば終わり、という単純な作業ではありません。

まず、登記地目ではなく課税時期の現況を確認し、地目を判定する。次に、農地、山林、雑種地それぞれの評価方式を確認する。そして、評価単位を、耕作単位、1筆、一団の雑種地、一団の土地として整理する。宅地比準方式を用いる場合には、比準地、画地補正、造成費、地積規模、開発制限を確認する。そのうえで、遺産分割、納税資金、将来の管理、売却可能性まで見据えて判断していきます。

農地・山林・雑種地は、評価額だけを見れば「小さな論点」に映ることがあります。しかし、地目判定や評価単位を誤れば、申告額が変わるだけでは済みません。相続人間の不公平感、納税資金の不足、申告後の説明困難へとつながっていきます。

土地評価とは、評価額を下げるための技術ではなく、事実関係を整理し、合理的な根拠を一つずつ積み上げていく実務です。農地・山林・雑種地が含まれる相続では、できるだけ早い段階で現況と資料を整理し、将来の承継方針とあわせて評価を検討していくことが、何より重要になります。

農地・山林・雑種地の評価でお悩みの方へ

犬飼公認会計士・税理士事務所では、相続税申告や生前贈与における土地評価について、登記地目だけにとどまらず、課税時期の現況、固定資産税資料、農地台帳、都市計画、評価倍率表、宅地造成費、現地状況を確認したうえで、申告後にきちんと説明できる評価根拠の整理を重視しています。

市街地農地、市街地山林、雑種地、駐車場、資材置場、太陽光発電用地、遊休地、山林などが相続財産に含まれる場合には、評価額だけでなく、遺産分割、納税資金、将来の管理、売却可能性までを含めて検討する必要があります。

ご自身の土地について、どの地目で評価すべきか、どこまでを一つの評価単位とすべきか、宅地比準方式や造成費をどのように整理すべきかを確認したいという方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。

振り返り|農地・山林・雑種地評価の重要ポイント

論点振り返り
地目判定登記地目ではなく、課税時期の現況で判断する
農地の現況耕作中・休耕・放置・駐車場利用で判定が変わる
農地の区分純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地に分ける
純農地・中間農地固定資産税評価額に倍率を乗じる倍率方式が基本
市街地周辺農地市街地農地であるとした場合の価額の80%相当額
市街地農地宅地比準方式または倍率方式により評価する
山林の区分純山林、中間山林、市街地山林に分ける
市街地山林宅地比準方式または倍率方式を検討する
雑種地現況に応じ、状況が類似する付近の土地を基に評価する
市街化調整区域内の雑種地開発制限、建築制限、周辺状況を反映する
農地の評価単位原則として耕作単位となっている1枚の農地
山林の評価単位原則として1筆、市街地山林は一団の山林
雑種地の評価単位同一目的に供される一団の雑種地
一団評価市街地的地域では、農地・山林・雑種地を一団評価する場合がある
宅地比準方式宅地であるとした価額から造成費を控除する
造成費の注意宅地比準では控除、農地等比準の雑種地では加算する場合がある
地積課税時期における実際の面積が原則
遺産分割評価額だけでなく、換金性・管理負担・将来利用を確認する
税務調査対策現地写真、資料、評価判断メモを残す
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