不動産を持っていると、家賃収入の有無にかかわらず、毎年のように固定資産税の納税通知書が届きます。
そのとき浮かぶ疑問は、立場によってさまざまです。賃貸物件なら「固定資産税は経費にできるのか」。自宅や空き家なら「収入がないのに、なぜ税金だけかかるのか」。相続した不動産なら「誰が払い、共有者でどう負担するのか」。売買した年なら「固定資産税の清算金は、経費なのか取得費なのか」。
固定資産税・都市計画税は、所得税の確定申告書のなかだけで完結する税金ではありません。むしろ、その不動産を保有し続けるのか、貸すのか、売るのか、建て替えるのか、共有を解消するのか、次の世代へ承継するのか。こうした判断に影響してくる「保有コスト」だと考えたほうが実態に近いといえます。
不動産は、一見すると資産価値があるように見えます。しかし、固定資産税・都市計画税に修繕費、借入返済、空室リスクが重なれば、手元資金は着実に圧迫されていきます。活用によって収入が増えても、所得税、消費税、事業税、借入返済などが重なり、現金がほとんど残らない。そうした悩みは、決して珍しいものではありません。
本記事では、固定資産税・都市計画税について、制度の基本にとどまらず、不動産所得の必要経費、納税資金、住宅用地特例、空き家、共有不動産、売買時の清算金、そして将来の活用判断まで含めて整理していきます。
固定資産税・都市計画税は「不動産を持っていること」に着目する税金
固定資産税は、土地、家屋、償却資産を所有している人に課される市町村税です。東京都23区内については、特例的に都が都税として課税しています。
課税の対象となる固定資産は、土地・家屋・償却資産の総称です。土地には宅地・田・畑・山林・雑種地などが、家屋には住家・店舗・工場・倉庫などが含まれます。償却資産には、構築物、機械装置、工具器具備品といった事業用資産が該当します。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
この税金の特徴は、所得ではなく、資産の保有そのものに着目する点にあります。
所得税は、原則として所得が生じたときに課税されます。家賃収入や事業利益がなければ、所得税が発生しないこともあります。ところが固定資産税は、土地や家屋を所有していること自体に課される税金です。家賃収入のない空き家でも、遊休地でも、自宅でも、原則として課税の対象になります。
ここを混同してしまうと、不動産保有の判断を誤ります。
「所得税が出ないのだから税負担は軽い」と考えていても、固定資産税・都市計画税、修繕費、保険料、管理費、借入返済は、それとは別に発生し続けます。とりわけ、不動産収入が少ない年、空室が増えた年、大規模修繕を控えた年には、固定資産税等の支払時期が資金繰りに大きく響いてきます。
誰が納めるのか|1月1日現在の所有者が基本
固定資産税は、原則として毎年1月1日現在、土地・家屋・償却資産の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人に課されます。納税義務者は、この1月1日時点で台帳に登録されている人、と押さえておくとよいでしょう。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
この「1月1日現在」という基準は、実務上とても重要です。
たとえば令和8年3月に不動産を売却したとしても、令和8年1月1日時点で売主が所有者として登記されていれば、令和8年度の固定資産税・都市計画税の納税義務者は、原則として売主になります。
もっとも、不動産売買では、契約上、引渡日を基準に固定資産税・都市計画税を日割りで精算することがよくあります。ただしこれは、地方税法上の納税義務そのものを移すものではなく、あくまで売主・買主の間で合意した精算にすぎません。1月2日以降に所有権が移転しても納税義務者は変わらず、日割り精算は法律上の規定ではなく当事者間の取り決めとして行われる、という整理です。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
したがって、不動産を売買した年には、次の点を切り分けて考える必要があります。
- 地方税法上の納税義務者は誰か
- 売買契約上、固定資産税等をどのように精算するか
- 買主が支払った固定資産税等清算金を、税務上どう扱うか
- 売主が受け取った清算金を、どのように整理するか
- 取得費、譲渡収入、必要経費、消費税の整理に影響しないか
「実質的には買主が負担したのだから、買主の固定資産税だ」と単純に処理してしまうのは危険です。
都市計画税は、固定資産税と似ているが同じではない
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業などに要する費用に充てるために課される目的税です。
固定資産税と同じ納税通知書でまとめて請求されるため、実務ではひとくくりに見られがちです。しかし、両者は別の税目です。
固定資産税の対象は、土地・家屋・償却資産です。これに対して都市計画税は、原則として一定区域内の土地・家屋が対象で、償却資産には課されません。
都市計画税がかかる土地と家屋は、固定資産税の対象と同一のものです。税額は固定資産課税台帳の価格をもとに計算し、23区内の税率は0.3%。土地については、固定資産税と同様に負担調整措置が設けられています。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
ここで気をつけたいのは、都市計画税の有無や税率が自治体によって異なる点です。
ご自身の物件については、納税通知書・課税明細書で、固定資産税と都市計画税がそれぞれいくら課されているかを確認する必要があります。特に複数の物件を所有している場合、物件ごとに都市計画税の有無、土地・家屋別の税額、住宅用地特例の適用状況を把握しておかないと、不動産所得の物件別収支や将来の売却判断を見誤ることになりかねません。
税額は「評価額そのもの」ではなく、課税標準額を確認する
固定資産税・都市計画税の納税通知書には、評価額、課税標準額、税額など、複数の数字が並びます。
ここで混乱しやすいのが、「評価額=税金をかける金額」とは限らない、という点です。
固定資産税は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格をもとに課税されます。ただし、住宅用地の特例措置や土地の負担調整措置が適用される場合には、課税標準額が評価額より低くなることがあります。原則としては台帳登録価格が課税標準額となるものの、これらの措置が働く場面では、課税標準額は価格より低く算定される、という仕組みです。
出典:資産評価システム研究センター|固定資産税のしおり
基本的な計算構造は、次のとおりです。
| 区分 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 評価額・価格 | 固定資産課税台帳に登録される資産の価格 |
| 課税標準額 | 税率を掛ける基礎となる金額 |
| 税率 | 固定資産税は標準税率1.4%が基本。都市計画税は自治体の条例で定められる |
| 税額 | 課税標準額 × 税率。減額・減免がある場合は調整後の税額を確認する |
土地の固定資産税・都市計画税は、課税標準額に税率を乗じて算出します。その課税標準額は、課税台帳に登録された価格をもとに、住宅用地特例や負担調整措置などを適用して求められます。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
不動産オーナーが見るべきなのは、単に「税額が高いか安いか」ではありません。次のような点を、一つずつ確認していくことが大切です。
- 土地の評価額はいくらか
- 家屋の評価額はいくらか
- 課税標準額はいくらか
- 住宅用地特例が適用されているか
- 負担調整措置により課税標準が抑えられているか
- 新築住宅減額などの軽減が適用されているか
- 翌年以降、軽減が終了して税額が増える予定はないか
- 用途変更や建物の滅失で、特例が外れる可能性はないか
こうした確認をしないまま「前年と同じくらいだろう」と見込んでいると、建替え、空き家の解体、用途変更、大規模改修、相続後の共有不動産といった場面で、思わぬ負担増につながります。
住宅用地特例は、不動産保有判断に大きく影響する
固定資産税・都市計画税のなかでも、とりわけ重要なのが住宅用地の特例です。
住宅の敷地として使われている土地については、一定の範囲で課税標準が軽減されます。小規模住宅用地、すなわち住宅1戸につき200㎡までの部分は、固定資産税で価格の6分の1、都市計画税で価格の3分の1が本則課税標準額となります。これを超える一般住宅用地の部分は、固定資産税で価格の3分の1、都市計画税で価格の3分の2です。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
この特例は、不動産活用の判断に強く影響します。
たとえば、古い空き家を取り壊して更地にすると、土地の固定資産税・都市計画税が上がることがあります。住宅がなくなったことで、住宅用地特例が外れる可能性があるためです。
家屋を滅失すると、その日の属する年の翌年度から、当該家屋の固定資産税・都市計画税は課税されなくなります。一方で、滅失した家屋が住宅であった場合には住宅用地特例が適用されなくなり、翌年度の土地に係る税額が上昇することがある、という点に注意が必要です。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
ここで大切なのは、「解体すべきではない」という単純な話ではない、ということです。
老朽化した空き家を放置すれば、防災・防犯・近隣トラブル・修繕費・管理責任といった問題が生じます。一方で解体すれば、家屋分の税額はなくなるものの、土地の税負担は上がる可能性がある。どちらにも別の負担が伴います。
そこで、空き家や実家を保有している場合は、次の順序で整理していくとよいでしょう。
- 現在、住宅用地特例が適用されているか
- 建物を解体した場合、土地の固定資産税・都市計画税はいくら増えるか
- 売却、賃貸、駐車場、建替え、相続対策といった選択肢はあるか
- 解体費、修繕費、固定資産税、売却可能性を比較したか
- 特定空家等に該当するリスクはないか
- 家族間で、誰が管理費用を負担するか決まっているか
空き家にも固定資産税・都市計画税などの費用はかかり続けます。そして、売却、賃貸、解体、駐車場活用、民泊、トランクルームなど、活用方法ごとに税務・法務・管理の負担は変わってきます。
賃貸物件の固定資産税・都市計画税は、不動産所得の必要経費になる
賃貸アパート、賃貸マンション、貸家、貸地など、不動産所得を生む資産に係る固定資産税・都市計画税は、不動産所得の計算上、必要経費になるのが基本です。
不動産所得の必要経費は、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものが対象となります。貸付資産に係る主な必要経費としては、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費が挙げられます。
出典:国税庁|No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
また、業務の用に供される資産に係る固定資産税等は、その業務に係る各種所得の金額の計算上、必要経費に算入されます。
出典:国税庁|所得税基本通達 37-5 固定資産税等の必要経費算入
ただし、ここでも「払ったから全部経費」というわけではありません。
必要経費になるのは、あくまで不動産収入を得るために必要な部分です。自宅兼賃貸、賃貸併用住宅、一部を事業用・一部を自宅用としている不動産では、事業・賃貸部分と家事部分を合理的に区分しなければなりません。
たとえば、次のような場合には注意が必要です。
| 状況 | 固定資産税等の扱い |
|---|---|
| 全部を賃貸しているアパート | 原則として、賃貸物件に係る固定資産税等は必要経費 |
| 自宅兼賃貸住宅 | 賃貸部分と自宅部分を、面積等で合理的に按分 |
| 店舗併用住宅 | 事業用部分・居住用部分を区分 |
| 空室の賃貸物件 | 賃貸募集・管理の実態があれば経費性を検討できるが、私用転用や遊休化の実態に注意 |
| 将来売却予定で賃貸をやめた物件 | 不動産所得の経費か、譲渡所得の取得費・譲渡費用か、保有目的を整理 |
| 親族が無償で使用している物件 | 不動産所得を生む資産といえるか、使用実態を確認 |
経費にできるかどうかは、名目ではなく実態で判断します。
不動産所得の必要経費として説明できるようにするには、納税通知書、課税明細書、物件別の賃貸借契約書、入金明細、利用状況、面積按分資料を残しておくことが重要です。
固定資産税は「支払時期」と「必要経費算入時期」に注意する
固定資産税・都市計画税は、通常、年4回などに分けて納付します。
これを所得税の必要経費としていつ算入するかについては、取扱いが定められています。賦課課税方式の租税で納期が分割されているものは、各納期の税額を、その納期の開始の日、または実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入できる、というものです。
出典:国税庁|所得税基本通達 37-6 その年分の必要経費に算入する租税
実務上は、処理を継続することが何より大切です。
毎年、納付した時点で経費計上するのか、それとも納税通知書に基づいて未払計上するのか。この処理方法が年によってぶれると、所得金額の比較や資金繰りの把握が難しくなります。
特に、不動産所得のある個人では、次の点を確認しておく必要があります。
- 納税通知書がいつ届いたか
- 第1期から第4期までの納期と金額
- 実際にいつ支払ったか
- 未払計上する場合、年度末時点の未払金と翌年の支払消込が一致しているか
- 物件ごとに租税公課を分けているか
- 自宅兼用の場合、按分後の金額が継続しているか
固定資産税は、キャッシュアウトと会計処理がずれやすい費目です。後から説明できるよう、納税通知書、課税明細書、支払記録、帳簿のつながりを残しておく必要があります。
売買時の固定資産税等清算金は、買主の必要経費とは限らない
不動産売買では、固定資産税・都市計画税を引渡日で日割り精算することがあります。
たとえば、売主が1月1日時点の所有者として1年分の固定資産税・都市計画税を負担する一方で、売買契約上、引渡日以後の期間に相当する金額を買主が売主へ支払う、といったケースです。
この買主が支払う固定資産税等清算金について、「固定資産税なのだから租税公課として必要経費にしてよい」と考えるのは危険です。
賃貸用アパートを購入した際に買主が売主へ支払った固定資産税・都市計画税相当額の清算金は、買主自身の納税義務に基づく支払ではありません。売主との合意に基づく購入代価の一部と位置づけられ、賃貸用アパートの取得価額に算入されます。したがって、購入年分の不動産所得の必要経費に全額を算入することはできません。
出典:国税庁|賃貸用アパートを購入した際に支払った固定資産税及び都市計画税相当額の清算金の取扱いについて
これは、不動産投資を始めた年に非常に間違えやすい論点です。
買主が支払った清算金は、税金そのものではなく、売買代金の調整として扱われる場合があります。建物部分に対応する金額は取得価額として減価償却を通じて費用化され、土地部分に対応する金額は土地の取得価額に含まれて、原則として減価償却の対象にはなりません。
不動産を取得した年には、次の資料を必ず確認しておくべきです。
- 売買契約書
- 固定資産税等清算金の明細
- 土地・建物の按分資料
- 固定資産税評価額
- 仲介手数料、登記費用、不動産取得税等の資料
- 賃貸開始日、引渡日、決済日
- 取得後の賃貸収入と、経費計上の開始時期
不動産投資では、初年度の処理が、その後の減価償却、譲渡所得、金融機関への説明にまで影響します。単年の経費を増やすことばかりに気を取られ、取得価額と必要経費を混同しないよう注意が必要です。
納税通知書・課税明細書は「支払書類」ではなく重要な税務資料
固定資産税・都市計画税の納税通知書と課税明細書は、支払のための書類にとどまりません。
物件ごとの評価額、課税標準額、軽減措置、面積、地目、家屋番号、税額を確認できる、重要な資料です。納税通知書と課税明細書は同時期に送付されますが、再発行はできないため、大切に保管しておく必要があります。不動産登記の申請時に、課税明細書の写しを添付できる場合もあります。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)Q&A
不動産所得の申告では、固定資産税等を租税公課に入力して終わり、とするのではなく、課税明細書を使って物件別に整理することが重要です。
確認しておきたい事項は、次のとおりです。
- 物件の所在地、地番、家屋番号
- 土地と家屋の区分
- 評価額、課税標準額、税額
- 住宅用地特例の適用の有無
- 都市計画税の有無
- 新築住宅減額、減免の適用の有無
- 共有者表示、代表者表示
- 前年から税額が大きく変動していないか
- 滅失、用途変更、増改築、分筆、合筆が反映されているか
クラウド会計や帳簿管理においても、固定資産税・都市計画税は単なる支払データではありません。固定資産台帳、借入金台帳、賃貸借契約、修繕履歴、売却時の取得費資料とつながる、基礎資料です。帳簿書類を整理する際には、現金出納帳、普通預金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳、売上帳、経費帳、契約書、領収書などを洗い出すことになりますが、固定資産税関係資料も、物件別資料管理の一部として保存しておくべきものです。
固定資産税・都市計画税は不動産所得の「収益性」を見るうえで重要
不動産投資や不動産活用では、表面利回りだけを見て判断してはいけません。
固定資産税・都市計画税は、空室であっても発生する固定的な支出です。家賃が入らない月でも、借入返済、固定資産税、管理費、修繕費、保険料は容赦なく発生します。
特に、次のような不動産では注意が必要です。
| 不動産の状況 | 固定資産税・都市計画税の見方 |
|---|---|
| 空室が多い賃貸物件 | 家賃収入が減っても固定資産税等は原則発生するため、資金繰りを圧迫しやすい |
| 築古アパート | 修繕費と固定資産税等を含めた実質利回りを確認する |
| 借入で建築した物件 | 元金返済は必要経費ではないため、税引後キャッシュフローを別途見る |
| 空き家 | 家賃収入がない一方で、固定資産税・都市計画税、管理費、修繕費が発生する |
| 更地・駐車場 | 住宅用地特例がない場合、土地の税負担が重くなりやすい |
| 共有不動産 | 誰が納付し、共有者間でどう精算するかを決めておく必要がある |
| 相続不動産 | 遺産分割の前後で、負担者、収益帰属、納税資金を整理する必要がある |
不動産所得の確定申告では、固定資産税・都市計画税を経費に入れること自体は大切です。しかし、それだけでは十分とはいえません。
税務上の所得と、手元に残る資金は一致しないからです。
減価償却費は、支出を伴わない経費です。借入元本の返済は、支出ですが必要経費ではありません。固定資産税・都市計画税は、支出を伴う経費です。これらを分けて見ておかないと、「申告上は黒字だが資金が足りない」「税額は下がったが、借入返済で現金が残らない」という状況に陥ります。
自宅兼賃貸・賃貸併用住宅では、家事関連費の整理が必要
個人が不動産を保有する場合、事業・賃貸と生活が入り混じることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 1階を店舗、2階を自宅として使っている
- 自宅の一部を賃貸している
- 賃貸併用住宅を所有している
- 自宅敷地の一部を月極駐車場として貸している
- 親族が一部を無償で使っている
- 自宅兼事務所として使いながら、一部を不動産賃貸に供している
このような場合、固定資産税・都市計画税を全額経費にするのではなく、賃貸・事業部分と家事部分を合理的に区分する必要があります。
按分の基準としては、面積、使用割合、賃貸部分と居住部分の床面積、土地利用状況などが考えられます。大切なのは、都合のよい割合を毎年変えることではなく、物件の利用実態に合った基準を設定し、それを継続して用いることです。
後から説明できるよう、次の資料を残しておくとよいでしょう。
- 建物の平面図
- 賃貸部分と自宅部分の面積計算
- 賃貸借契約書
- 土地利用図
- 固定資産税課税明細書
- 水道光熱費、管理費、修繕費の按分基準
- 用途変更があった年月日
- 過年度からの処理方針
経費化したい金額から逆算して按分割合を決めるのではなく、あくまで利用実態から割合を導くべきです。
共有不動産では、納税通知書の宛名と負担割合を分けて考える
相続後の不動産や、家族で所有する不動産では、共有状態になることがあります。
共有不動産では、固定資産税・都市計画税の納税通知書が代表者宛に届くことがあります。しかし、通知書の宛名になっている人だけが負担すべき、というわけではありません。
固定資産税・都市計画税、マンション管理費、修繕積立金などは、共有不動産の存在から生じる負担として問題になります。実務では、共有者の1人がいったん全額を立て替え、その後、他の共有者に持分に応じて求償する、という形が多く見られます。
さらに、共有不動産の固定資産税については、共有者それぞれが全額の支払義務を負う「連帯納付責任」が問題になります。代表者を指定して納付書の送付先を定めても、送付先ではない共有者が納付責任を免れるわけではない、という点に注意が必要です。
共有不動産では、次のようなトラブルが起こりやすくなります。
- 代表者だけが固定資産税を払い続けている
- 他の共有者が負担に応じない
- 賃料収入を受け取る人と、税金を負担する人が違う
- 相続人間で物件の利用方針が決まらない
- 空き家の管理費用だけが発生している
- 共有者の一人が無償で居住している
- 売却したい人と、残したい人で意見が分かれる
共有不動産では、固定資産税・都市計画税の負担だけを切り離して解決するのは難しいものです。賃料収入、管理費、修繕費、使用状況、共有持分、将来の売却方針まで含めて整理していく必要があります。
建物の新築・増改築・滅失は、税額変動のきっかけになる
家屋については、新築、増改築、用途変更、滅失によって、固定資産税・都市計画税が変動します。
新築または増改築された家屋は、新しく固定資産課税台帳に価格を登録する必要があるため、家屋調査を行って評価することになります。この調査には、各階平面図、立面図、矩計図、仕上表・仕様書、建築確認申請書、検査済証などの資料が必要です。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
新築住宅については、一定の床面積要件を満たす場合、新たに課税される年度から一定期間、住宅に係る固定資産税額の一部が減額される制度があります。要件を満たす場合、新たに課税される年度から3年度分、3階建以上の耐火・準耐火建築物では5年度分、居住部分で1戸あたり120㎡相当分までを限度に、固定資産税額の2分の1が減額されます。認定長期優良住宅については、減額期間が延長される場合があります。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
ただし、軽減制度は、自動的にすべて適用されるとは限りません。自治体ごとの申告、添付書類、期限、要件の確認が必要です。
不動産オーナーが注意すべきなのは、税額が減る場面だけではありません。むしろ、軽減が終わる場面こそ見落とせません。
新築住宅減額が終了すると、家屋分の固定資産税が増えることがあります。購入時や建築時の収支計画で、減額期間終了後の税額を見込んでいないと、数年後に納税資金が不足する原因になります。
免税点があっても、少額だから確認不要とはいえない
固定資産税には、免税点があります。
区市町村の各区域内で、同一人が所有する固定資産の課税標準額の合計額が、土地30万円、家屋20万円に満たない場合には、固定資産税は課税されません。固定資産税が免税点未満となる土地・家屋には、都市計画税も課税されません。なお、償却資産の免税点は150万円とされています。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)/出典:横浜市|固定資産税・都市計画税について
ここで押さえておきたいのは、免税点未満かどうかは、資産ごとの単体ではなく、同一区域内の同一人が所有する資産の合計で判断される場合がある、という点です。
また、固定資産税が少額であっても、実務上は次のような意味を持ちます。
- 不動産を所有している事実の確認資料になる
- 不動産所得の物件別経費の整理に必要になる
- 売却時の固定資産税評価額の確認に使う
- 登録免許税、不動産取得税、相続税評価などの資料整理につながる
- 共有者間の負担精算に使う
- 金融機関への資料提出に使うことがある
少額だから保管しない、という判断は避けるべきです。
固定資産税評価に疑問がある場合は、確認期限を逃さない
固定資産税・都市計画税の税額を見て、「高い気がする」と感じることがあります。
そのときにまず確認したいのは、疑問の対象が評価額そのものなのか、課税標準額なのか、特例の適用漏れなのか、用途変更の反映なのか、あるいは減額の終了なのか、という切り分けです。
固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合には、一定の期間内に、固定資産評価審査委員会へ審査の申出をすることができます。
出典:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
もっとも、本記事では、固定資産評価審査の詳細までは扱いません。
実務上は、いきなり争うのではなく、次の順序で確認していくことが多いといえます。
- 納税通知書と課税明細書を確認する
- 前年と比較して、どの物件・どの区分で増減したかを見る
- 住宅用地特例、新築住宅減額、減免の有無を確認する
- 地目、地積、床面積、用途、構造、建築年が、実態と合っているか確認する
- 建物の取壊し、用途変更、増改築、土地利用の変更が反映されているか確認する
- 自治体の固定資産税担当部署へ照会する
- 評価額に不服がある場合、審査申出の期限を確認する
「高い気がする」という感覚だけでは、判断はできません。納税通知書、課税明細書、登記事項証明書、建築資料、現況写真、賃貸借契約書など、事実関係を整理することが先決です。
固定資産税・都市計画税を不動産活用判断にどう使うか
固定資産税・都市計画税は、支払って終わり、という税金ではありません。
不動産を持ち続けるか、貸すか、売るか、建て替えるか、法人化するか、相続対策をするか。こうした判断を考えるとき、固定資産税・都市計画税は、重要な判断材料になります。
たとえば、次のような場面に影響してきます。
空き家を残すか、解体するか
空き家を残せば、住宅用地特例が続く可能性があります。ただし、管理責任、倒壊リスク、近隣対応、修繕費も続きます。解体すれば、家屋分の税額はなくなる一方で、土地の税額が上がる可能性があります。
税額だけでなく、安全性、売却可能性、相続人の意向、解体費用まで含めて判断すべきです。
賃貸物件として保有し続けるか
固定資産税・都市計画税は、空室でも発生します。
家賃収入から、固定資産税、管理費、修繕費、保険料、借入利息、借入元本返済、所得税・住民税を差し引いたあとに、どれだけ現金が残るか。ここを見ておく必要があります。
駐車場や事業用地として活用するか
住宅用地から駐車場や事業用地に変えると、住宅用地特例が外れる可能性があります。固定資産税・都市計画税の増加と、駐車場収入や管理コストを比較して考える必要があります。
相続後に共有のままにするか
共有のままだと、固定資産税・都市計画税の納税、修繕、賃貸、売却、解体について、意思決定が難しくなることがあります。
代表者が税金を払い続け、他の共有者が負担しない状態は、のちに大きな紛争へと発展します。共有不動産は、収益分配、費用負担、将来の売却方針まで含めて整理しておくべきです。
法人化・不動産管理会社を検討するか
不動産管理会社や法人化を検討する場合でも、固定資産税・都市計画税は、資産保有コストとして残り続けます。所得分散だけでなく、管理実態、契約、報酬の相当性、資産移転、消費税、相続対策を一体で検討する必要があります。
相談前に整理しておくべき資料
固定資産税・都市計画税について相談する際は、次の資料を整理しておくと、判断が速く、そして正確になります。
| 資料 | 確認する目的 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税納税通知書 | 年税額、納期、所有者、通知先を確認する |
| 課税明細書 | 物件別の評価額、課税標準額、税額、特例を確認する |
| 登記事項証明書 | 所有者、共有持分、地目、地積、家屋番号を確認する |
| 賃貸借契約書 | 不動産所得との対応、貸付部分を確認する |
| 家賃入金明細 | 物件別収入と税負担の関係を確認する |
| 建物平面図・面積資料 | 自宅兼賃貸、店舗併用住宅の按分に使う |
| 建築確認申請書・検査済証・請負契約書 | 家屋評価、取得価額、増改築の整理に使う |
| 修繕・リフォーム資料 | 修繕費、資本的支出、評価変動との関係を確認する |
| 売買契約書・固定資産税等清算書 | 売買時の取得価額、譲渡所得、必要経費の整理に使う |
| 借入金返済予定表 | 税額と資金繰りの関係を確認する |
| 共有者間の合意書 | 固定資産税等の負担割合、収益分配を確認する |
| 過年度の申告書・決算書 | 租税公課の処理、物件別収支の継続性を確認する |
固定資産税・都市計画税は、単なる支払証憑ではありません。不動産の取得、保有、運用、売却、承継をつなぐ資料だと考えておくとよいでしょう。
固定資産税・都市計画税は「保有し続ける理由」を問い直す税金
不動産を持っていると、心理的には「資産がある」と感じます。
しかし、税務と資金繰りの観点からは、「保有し続ける理由」が必要になります。
家賃収入を生むのか。将来売却するのか。自宅として使うのか。相続人に承継するのか。地域や家族の事情で残すのか。あるいは、売却できない事情があるのか。
固定資産税・都市計画税は、不動産を所有しているだけで、毎年発生します。だからこそ、不動産の保有判断では、税額だけでなく、収益性、修繕負担、借入返済、空室、相続人の意向、共有関係、売却可能性まで見ておく必要があります。
確定申告では、固定資産税等を必要経費に入れるかどうかが論点になります。不動産経営では、それを支払ったあとに資金が残るかどうかが論点になります。そして資産承継では、次世代がその税負担を引き受けられるかが論点になります。
所得税の申告書だけでは、こうした判断は見えてきません。固定資産税・都市計画税をきっかけに、物件別収支、納税資金、資料の保存、将来の活用方針を整理していくことが大切です。
犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について
固定資産税・都市計画税は、毎年届く納税通知書を見て支払うだけで終わってしまいがちです。
しかし、不動産所得の必要経費、自宅兼賃貸の按分、売買時の清算金、空き家の解体、住宅用地特例、共有不動産の負担、相続後の管理、将来の売却判断まで含めて考えると、単なる地方税の話ではなく、不動産保有全体の判断へとつながっていきます。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、所得税の申告書作成にとどまらず、納税通知書、課税明細書、賃貸借契約、借入返済、修繕資料、共有関係、将来の活用方針を確認しながら、後から説明できる不動産税務の整理を重視しています。
「固定資産税を経費に入れてよいか確認したい」
「空き家を解体すると、税金がどう変わるか整理したい」
「賃貸物件の収支が合っているか、納税資金まで見直したい」
「相続した共有不動産の税金と収入の分け方を整理したい」
このようなお悩みがある場合は、固定資産税・都市計画税の納税通知書、課税明細書、賃貸借契約書、借入明細、過年度申告書を整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
この記事の振り返り
| 項目 | 重要なポイント |
|---|---|
| 固定資産税 | 土地、家屋、償却資産を所有していることに対して課される税金 |
| 都市計画税 | 一定区域内の土地・家屋に課される目的税。償却資産には課されない |
| 納税義務者 | 原則として1月1日現在、固定資産課税台帳に登録されている所有者 |
| 売買年の注意 | 1月2日以降に売却しても、地方税法上の納税義務者は原則変わらない |
| 固定資産税等清算金 | 買主の納税義務に基づく税金ではなく、取得価額に含める処理が問題になる |
| 評価額と課税標準額 | 評価額そのものではなく、特例や負担調整後の課税標準額を確認する |
| 住宅用地特例 | 小規模住宅用地は固定資産税で価格の6分の1、都市計画税で価格の3分の1が基本 |
| 空き家・解体 | 解体により家屋分はなくなるが、住宅用地特例が外れて土地の税額が上がる可能性がある |
| 不動産所得 | 賃貸物件に係る固定資産税等は、家事部分と区分できる範囲で必要経費になる |
| 按分 | 自宅兼賃貸・店舗併用住宅では、面積や利用実態に基づく合理的按分が必要 |
| 共有不動産 | 納税通知書の代表者と、共有者間の負担割合は別問題。求償や連帯納付責任に注意 |
| 納税通知書・課税明細書 | 支払書類ではなく、評価額、課税標準、特例、物件別税額を確認する重要資料 |
| 納税資金 | 固定資産税等は空室でも発生するため、家賃収入・借入返済・修繕費と併せて資金管理する |
| 相談前資料 | 納税通知書、課税明細書、登記事項証明書、賃貸借契約、売買契約、借入明細を整理する |