減損の兆候と認識判定|割引前将来キャッシュ・フローと事業計画をどう説明するか

固定資産の減損会計では、「兆候があるか」と「減損損失を認識するか」を、はっきりと分けて考える必要があります。

実務で混乱が生じやすいのは、赤字店舗、低稼働の工場、買収後に計画未達となった事業、遊休化した設備、地価が下落した不動産といった場面です。減損の兆候があること自体をもって、直ちに減損損失の計上が必要であるかのように扱ってしまうケースが、少なくありません。

日本基準では、減損の兆候がある資産または資産グループについて、まず減損損失を認識するかどうかを判定します。その判定に用いるのは、割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額の比較です。割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に、はじめて減損損失の認識へと進みます。

固定資産の減損会計基準がこうした設計を採っているのは、事業用資産の将来キャッシュ・フローの見積りが主観的になり得ることを踏まえ、減損の存在が相当程度に確実な場合に減損損失を認識するという考え方に立っているためです。
出典:企業会計基準委員会|企業会計審議会 固定資産の減損に係る会計基準

本稿では、「7-6. 資産グルーピングと共用資産」で整理したグルーピングを前提に、減損の兆候と認識判定を、上場企業実務で後から説明できる形に整理していきます。

なお、減損損失の測定、回収可能価額、正味売却価額、使用価値、割引率の詳細は、後続の「7-8」で取り上げます。本稿では、兆候の識別と、割引前将来キャッシュ・フローによる認識判定に焦点を当てます。

目次

減損会計の判断は「兆候」「認識」「測定」の三段階で分ける

減損会計の実務判断は、次の三段階に分解すると整理しやすくなります。

段階判断内容実務上の焦点
減損の兆候減損が生じている可能性を示す事象があるか営業損益の悪化、使用範囲の変更、経営環境の悪化、市場価格の下落など
認識判定減損損失を認識すべきか割引前将来キャッシュ・フロー総額と帳簿価額の比較
測定いくら減損損失を計上するか帳簿価額を回収可能価額まで減額する金額

この三段階を混同すると、判断の説明が崩れてしまいます。

赤字が続いているからといって、直ちに減損損失を計上するわけではありません。反対に、当期の損益が黒字であっても、事業廃止、著しい市場価格の下落、重要な法規制の変更、買収後の計画未達などにより、減損の兆候が存在する場合はあります。

減損の兆候は、あくまで減損損失の認識判定に進むための入口です。兆候があると判断した後に、資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積り、帳簿価額と比較する、という順序になります。

減損の兆候とは何か

減損の兆候とは、資産または資産グループに減損が生じている可能性を示す事象です。企業は、通常の企業活動において実務的に入手可能なタイミングで利用できる情報に基づき、減損の兆候がある資産または資産グループを識別していきます。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

適用指針が主な兆候として示しているのは、次のとおりです。

兆候の類型典型例
営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナス赤字店舗、赤字工場、赤字事業、低採算拠点
使用範囲または使用方法について回収可能価額を著しく低下させる変化事業廃止、再編、早期処分、用途転用、遊休化、低稼働、陳腐化、建設中止
経営環境の著しい悪化市況悪化、販売量減少、価格下落、賃料下落、技術革新、法規制変更
市場価格の著しい下落土地・建物・設備などの市場価格が帳簿価額から大きく下落
共用資産・のれんを含む単位の兆候本社資産、共通システム、物流拠点、買収のれんを含むより大きな単位での悪化

ここで重要なのは、これらが形式的なチェック項目ではないという点です。投資回収に疑義が生じているかどうかを確認するための入口として置かれているもの、と捉えるべきものです。

適用指針の結論の背景でも、減損の兆候はあくまで例示であってこれらに限られないこと、そして内部管理目的の損益報告、事業再編に関する経営計画、経営環境、資産の市場価格といった企業内外の情報に基づいて識別することが示されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

兆候判定は、グルーピング単位で行う

減損の兆候は、資産グループをどの単位で設定したかによって、結論そのものが変わります。

店舗単位でグルーピングしている場合には、店舗別損益、店舗別キャッシュ・フロー、閉店方針、賃料水準、近隣商圏の変化などが兆候判定の中心になります。

工場単位でグルーピングしている場合に重要となるのは、工場別損益、稼働率、製品需要、設備更新計画、製造工程の変更といった要素です。

M&A後の事業単位でグルーピングしている場合には、買収時計画との差異、のれんの帰属単位、シナジーの実現状況、取得後の中期計画が焦点になります。

グルーピング単位兆候判定で確認すべき資料
店舗単位店舗別損益、来店客数、賃料、閉店候補リスト、商圏分析
工場単位工場別損益、稼働率、生産量、原価差異、製品需要見通し
事業部単位事業別損益、事業計画、投資計画、撤退・縮小方針
不動産一棟単位賃料収入、空室率、鑑定評価、修繕計画、賃貸市場データ
買収事業単位PPA資料、のれん残高、買収時計画、取得後実績、シナジー分析
共用資産を含むより大きな単位本社費、共通システム、物流拠点、研究開発施設、配分資料

したがって、兆候判定は経理部門だけで完結するものではありません。事業部、経営企画、店舗開発、製造部門、不動産管理部門、M&A担当、開示担当と連携しながら、実際に投資回収を管理している単位で資料を集めていく必要があります。

営業活動から生ずる損益が継続してマイナスの場合

もっとも典型的な兆候は、営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっている場合です。

ここで注意しておきたいのは、損益計算書上の営業損益をそのまま使えばよいとは限らない、という点です。

適用指針の考え方によれば、「営業活動から生ずる損益」には、対象となる資産または資産グループの減価償却費や、本社費など間接的に生ずる費用も含まれます。また、損益計算書上は営業損益に含まれていない項目であっても、営業上の取引に関連して生じた損益、たとえば棚卸資産評価損などは含まれる場合があります。

一方で、支払利息など財務活動から生ずる損益や、利益に関連する金額を課税標準とする税金は含まれません。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

実務上は、次のような調整を検討することになります。

項目兆候判定上の取扱いの考え方
減価償却費対象資産グループの損益に含める
本社費・共通費合理的に配賦されている場合には含める
棚卸資産評価損営業上の取引に関連する場合には含める
支払利息財務活動から生ずる損益であり、通常は含めない
法人税等税金であり、通常は含めない
大規模な経営改善計画等に伴う一時損益一時的な損益として切り分ける
内部取引損益連結上は消去後の実態を確認する

では、「継続してマイナス」とはどの程度を指すのか。おおむね過去2期がマイナスであったことを指すと考えられます。ただし、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合には、通常、これには該当しないと整理されます。

反対に、実績としては前期のみマイナスであっても、当期以降の見込みが明らかにマイナスとなる場合には、「継続してマイナスとなる見込み」として兆候に該当し得ます。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

赤字だから機械的に兆候あり、ではない

赤字が続いている場合であっても、事業立上げ時などには、あらかじめ合理的な事業計画が策定され、その計画上、当初から継続してマイナスになることが予定されているケースがあります。

この場合、実際のマイナス額が計画上予定されていたマイナス額よりも著しく下方に乖離していなければ、減損の兆候には該当しないとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

この判断は、IPO準備企業や、新規事業投資を行う上場企業にとって重要な意味を持ちます。

新規店舗、新工場、新サービス、新規海外拠点などでは、初期赤字が事業計画上あらかじめ予定されていることがあるからです。ただし、「計画上赤字だったから兆候なし」と結論づけるためには、次の確認が欠かせません。

確認事項実務上のポイント
計画の策定時期投資意思決定時に策定されていたか
計画の承認取締役会、経営会議、投資委員会等で承認されているか
投資回収可能性計画期間内または合理的期間内に投資額を回収できる設計か
実績乖離売上、客数、単価、粗利、固定費が計画からどの程度乖離しているか
下方修正の有無事業計画の見直し、撤退判断、縮小方針があるか
外部環境計画策定時に想定していなかった市場変化があるか

事業立上げ時の赤字を兆候から除外できるのは、合理的な事業計画と実績の整合性を説明できる場合に限られます。計画が後付けで作成されたもの、投資回収可能性が不明確なもの、実績が計画から大きく下振れしているものについては、慎重に扱う必要があります。

使用範囲または使用方法の変化

減損の兆候は、損益の悪化だけに限られません。資産の使い方が変わることによって、回収可能価額が大きく低下する場合もあります。

適用指針では、資産または資産グループの使用範囲・使用方法について、回収可能価額を著しく低下させる変化が生じた場合、あるいは生ずる見込みである場合が、減損の兆候になるとされています。

その例として挙げられているのが、事業の廃止・再編成、当初予定より著しく早い除却・売却、異なる用途への転用、遊休化、著しい低稼働の継続、著しい陳腐化、建設仮勘定に係る建設計画の中止・大幅延期などです。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

変化兆候判定上の見方
事業廃止当該事業の資産グループからのCF回収が困難になる可能性
事業再編グルーピング、共用資産、将来CFの前提が変わる
店舗閉鎖店舗資産、使用権資産、原状回復、閉店関連支出を確認
工場停止生産設備、建屋、土地、共通設備の利用計画を確認
早期売却帳簿価額を将来使用で回収する前提が崩れる
用途転用従来用途での収益性と転用後の収益性を比較
遊休化将来用途が定まっていない場合は独立資産としての検討が必要
低稼働稼働率低下が一時的か、構造的かを確認
技術的陳腐化代替技術、製品ライフサイクル、顧客需要を確認
建設中止・延期建設仮勘定の回収可能性を確認

ここで押さえておきたいのは、「正式決定前でも兆候になり得る」ということです。

取締役会で廃止決議がなされた場合はもちろんですが、経営会議で撤退方針が実質的に固まっている場合、予算上その事業への投資継続が見込まれていない場合、主要顧客との契約終了が確実視される場合など、実質的に使用方法が変化する見込みがあるときには、兆候判定の対象となります。

経営環境の著しい悪化

経営環境の悪化も、減損の兆候のひとつです。

適用指針では、資産または資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化した場合、または悪化する見込みである場合が、減損の兆候になるとされています。例として示されているのは、市場環境の著しい悪化、技術的環境の著しい悪化、法律的環境の著しい悪化です。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

経営環境の悪化具体例
市場環境販売数量の著しい減少、販売価格の大幅下落、賃料水準の低下、原材料価格高騰
技術環境技術革新による設備・製品の陳腐化、特許期間終了、代替サービスの普及
法律・規制環境規制強化、許認可制限、環境規制、重大な法令違反、行政処分
競争環境大型競合参入、商圏変化、顧客流出、価格競争激化
マクロ環境金利上昇、為替変動、インフレ、需要減少、地政学リスク

ただし、単に「景気が悪い」「競争が激しい」といった一般論だけでは、説明としては不十分です。対象となる資産グループの将来キャッシュ・フローに、どのように影響するのかまで踏み込む必要があります。

たとえば、原材料価格が上昇している場合でも、販売価格へ転嫁できているのであれば、回収可能性への影響は限定的かもしれません。賃料水準が低下していても、長期賃貸借契約で固定賃料が確保されている物件であれば、短期的な影響は異なってきます。規制強化があった場合も、設備改修により対応可能なのか、それとも事業継続そのものが困難になるのかで、判断は変わります。

経営環境の悪化については、外部環境の事実と、対象資産グループの事業計画への反映とを結び付けて検討することが重要です。

市場価格の著しい下落

資産または資産グループの市場価格が著しく下落したことも、減損の兆候にあたります。

適用指針では、「市場価格が著しく下落したこと」について、少なくとも市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当するとされています。

また、固定資産については市場価格が観察可能な場合が多くないため、一定の評価額や、適切に市場価格を反映していると考えられる指標を合理的に調整したものを、市場価格とみなして使用することも想定されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

資産市場価格下落の確認資料
土地固定資産税評価額、路線価、公示地価、地価調査、鑑定評価、近隣取引
建物鑑定評価、収益還元評価、売買事例、再調達価格、老朽化状況
賃貸不動産賃料水準、空室率、キャップレート、鑑定評価
機械装置中古市場価格、査定価格、処分見積、専門業者見積
船舶・車両中古取引価格、業者査定、市場指数
ゴルフ場・ホテル等取引事例、収益性、鑑定評価、稼働率

市場価格下落の兆候は、単独資産だけでなく、資産グループについても問題になります。

資産グループ全体の市場価格が把握できない場合であっても、主要な資産の市場価格が著しく下落した場合、あるいは資産グループの帳簿価額のうち土地の帳簿価額が大きな割合を占め、その土地の市場価格が著しく下落した場合には、兆候に含まれます。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

ここでの実務上の落とし穴は、土地や不動産について「帳簿価額が低いから大丈夫」と判断してしまうことです。

減損の兆候は、資産グループ全体の投資回収に関する入口の判断です。土地の市場価格の下落が、事業の収益性悪化や売却方針と重なっている場合には、兆候として慎重に扱う必要があります。

共用資産とのれんの兆候

共用資産やのれんは、単独ではキャッシュ・フローを把握しにくいため、兆候判定の漏れが生じやすい領域です。

共用資産については、共用資産を含むより大きな単位に通常の兆候がある場合、または共用資産そのものに使用範囲・使用方法の変化や市場価格の著しい下落がある場合に、減損の兆候があるとされます。

なお、共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分する方法を採用している場合には、共用資産に減損の兆候があるかどうかにかかわらず、配分後の各資産グループで兆候判定を行うことになります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

のれんについては、通常、のれん自体で減損の兆候があるかどうかを判断することはできません。そのため、のれんを含むより大きな単位について兆候がある場合に、のれんに減損の兆候があるものとして、より大きな単位で認識判定を行います。

のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する方法を採用した場合には、配分後の各資産グループに通常の兆候があるかを検討します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

対象兆候判定の視点
本社建物全社または関連事業群の悪化、本社移転・売却方針、市場価格下落
共通システムシステム廃止、移行計画、利用事業の縮小、陳腐化
物流拠点対象店舗群の収益悪化、物流再編、閉鎖方針
研究開発施設関連製品群の需要低下、開発中止、技術陳腐化
のれん買収時計画の未達、取得事業の業績悪化、シナジー未実現
識別無形資産顧客離脱、技術陳腐化、ブランド毀損、契約終了

M&A後の減損については、「買収事業単位の営業損益が黒字だから兆候なし」とは限りません。買収時に支払ったプレミアム、識別された無形資産、のれんの償却後残高、買収時計画の売上・利益・シナジーの達成状況まで踏まえる必要があります。

適用指針の結論の背景でも、株式交換による企業結合で被取得企業の時価総額を超えて多額のプレミアムが支払われ、のれんや無形資産に配分された金額が相対的に多額になる場合には、減損の兆候があると判定される場合があることが示されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

兆候ありでも、直ちに減損損失を認識するわけではない

減損の兆候がある場合には、次の段階として認識判定を行います。

認識判定では、資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較します。割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に、減損損失を認識することになります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

比較結果会計上の結論
割引前将来CF総額 ≥ 帳簿価額減損損失は認識しない
割引前将来CF総額 < 帳簿価額減損損失を認識し、測定へ進む

ここで鍵になるのは、「割引前」という点です。

認識判定は、回収可能価額を算定する測定ステップとは性格が異なります。認識判定では、将来キャッシュ・フローを割引く前の総額と帳簿価額を比較します。これは、将来キャッシュ・フローの見積りに主観性が入りやすい事業用資産について、減損の存在が相当程度に確実であるかを確認するフィルターとして機能するものです。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

割引前将来キャッシュ・フローの見積期間

認識判定で見積る将来キャッシュ・フローの期間は、資産または資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方が基本となります。

これは、少なくとも土地については使用期間が無限になり得ること、そして長期間にわたる将来キャッシュ・フローの見積りは不確実性が高くなることを踏まえたものです。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

項目実務上の考え方
主要な資産資産グループの将来CF生成能力にとって最も重要な構成資産
経済的残存使用年数今後、経済的に使用可能と予測される年数
税法耐用年数との差異不合理と認められる事情がない限り、税法耐用年数に基づく残存耐用年数をみなすことができる
20年制限認識判定の将来CF見積期間は、主要な資産の経済的残存使用年数と20年の短い方
20年超の場合20年目までの割引前CFに、20年経過時点の回収可能価額を加算する

主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、20年目までの割引前将来キャッシュ・フローに、20年経過時点の回収可能価額を加算します。したがって、単純に「20年で打ち切る」と理解してしまうと、誤りにつながります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

また、主要な資産の経済的残存使用年数と、減価償却に用いられている残存耐用年数との乖離が明らかになった場合には、耐用年数の変更も含めて検討する必要があります。減損判定にとどまらず、減価償却の見積りにも影響し得るためです。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

将来キャッシュ・フローは、事業計画をそのまま転記するものではない

認識判定において、監査上もっとも議論になりやすいのが、将来キャッシュ・フローの見積りです。

適用指針では、将来キャッシュ・フローは、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定および予測に基づいて見積るとされています。

取締役会等の承認を得た中長期計画がある場合であっても、その前提となった数値を、経営環境などの外部要因や企業内部の情報と整合的に修正し、対象となる資産または資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画を考慮して見積ることになります。

中長期計画がない場合には、外部要因や内部情報、現在の使用状況、合理的な使用計画を踏まえ、過去のキャッシュ・フローの趨勢に一定または逓減する成長率を置く方法も含めて、合理的に見積ることになります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

つまり、事業計画は出発点であって、結論ではないということです。

見積り項目監査・実務上の確認ポイント
売上数量市場規模、受注残、契約、顧客動向、過去実績との整合
販売単価価格改定の実現可能性、競合環境、契約条件
粗利率原材料価格、人件費、物流費、製造効率、価格転嫁
固定費人員計画、賃料、保守費、共通費配賦
設備投資維持更新投資か、拡張投資か、合理的な使用計画との整合
閉鎖・撤退支出退店費用、原状回復費、契約解約金、在庫処分
成長率中期計画後の成長率が過去実績・市場成長と整合しているか
使用期間主要資産の経済的残存使用年数と矛盾していないか
外部環境市場価格、規制、技術変化、金利・為替・インフレの影響
内部情報予算修正、月次実績、受注見込み、経営会議資料との整合

監査の場では、「取締役会承認済みの中期計画だから合理的」という説明だけでは足りません。承認済みの計画であっても、期末時点で利用可能な情報に基づき、見積りに用いる前提を修正すべきかどうかを検討する必要があります。

認識判定における将来CFには、見積値から乖離するリスクを反映しない

認識判定に用いる割引前将来キャッシュ・フローでは、将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを反映させません。

適用指針は、減損損失を認識するかどうかを判定するために見積られる割引前将来キャッシュ・フローについて、見積値から乖離するリスクを反映させず、将来キャッシュ・フローの見積りに関する指針に基づいて見積るとしています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

この点は、測定段階の使用価値と混同しやすい論点です。

項目認識判定測定
比較対象割引前将来CF総額と帳簿価額帳簿価額と回収可能価額
割引原則として割引しない使用価値では現在価値へ割引く
目的減損損失を認識すべきか判定減損損失の金額を算定
リスク反映見積値からの乖離リスクは反映しない割引率またはCFにリスクを反映
監査上の焦点事業計画の合理性、帳簿価額との比較正味売却価額、使用価値、割引率

認識判定の段階で保守的に大幅なリスク調整を織り込んでしまうと、測定段階との役割分担が曖昧になります。

一方で、リスクを反映しないからといって、根拠のない楽観的な計画を用いてよいわけでもありません。期末時点で合理的かつ説明可能な仮定に基づく見積りであることが求められます。

建設仮勘定の認識判定

建設仮勘定は、減価償却が開始されていないため、減損の検討から漏れやすい資産です。しかし、建設計画の中止、大幅延期、工事遅延、事業計画の変更がある場合には、減損の兆候になり得ます。

建設仮勘定の将来キャッシュ・フローは、合理的な使用計画に基づき、完成後に得られるキャッシュ・イン・フローの見積額から、完成までおよび完成後の利用・処分に要するキャッシュ・アウト・フローの合理的な見積額を控除して算定します。適用指針の設例でも、完成までの支出と完成後の収入・支出を含めて認識判定を行う考え方が示されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

確認事項実務上のポイント
建設計画中止、延期、仕様変更、用途変更の有無
追加支出完成までに必要な支出総額
完成後CF完成後の売上、賃料、利用計画
代替用途当初用途以外での使用可能性
処分可能性売却、転用、解体の可能性
許認可許認可取得見込み、規制変更
事業計画投資意思決定時の計画との乖離

建設仮勘定について、「未完成だから将来回収可能性はまだ判断できない」という整理は危険です。計画の中止や大幅延期が決定している場合、あるいは当初計画から著しく遅延している場合には、期末時点で利用可能な情報に基づいて、減損の兆候と認識判定を検討する必要があります。

使用権資産と減損認識判定

リース会計基準の改正により、借手のすべてのリースについて資産および負債を計上する方向で日本基準が改正され、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」、企業会計基準適用指針第33号、企業会計基準第35号「固定資産の減損に係る会計基準」の一部改正などが公表されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表

この改正後は、店舗、営業所、物流拠点、工場、倉庫などの使用権資産が、減損会計上の資産グループに含まれる場面が増えていきます。使用権資産を含む資産グループでは、次のような整合性が重要になります。

論点実務上の確認ポイント
リース期間減損CFの見積期間、閉店・撤退計画と矛盾しないか
使用権資産の帳簿価額資産グループの帳簿価額に含める範囲
リース負債減損判定上のCFとの整合、支払キャッシュ・フローの扱い
解約オプション行使見込みと店舗・拠点閉鎖方針の整合
原状回復資産除去債務、退店費用、将来支出との整合
サブリース借手・貸手のCFを混同していないか
共用拠点本社、物流センター、共通倉庫の共用資産該当性

実務では、リース期間については長期使用を前提としている一方で、減損判定では短期閉鎖を前提にしているなど、前提が矛盾しているケースが見られます。

新リース基準への対応にあたっては、契約の棚卸だけでなく、減損会計上のグルーピング、兆候判定、将来CFの見積りとの接続まで整理しておく必要があります。

事業計画と減損判定の整合性

減損の認識判定では、事業計画の扱いが中核になります。

監査人が確認するのは、単に計画数値が存在するかどうかではありません。その計画が、期末時点で利用可能な情報と整合し、過去実績との乖離を説明でき、経営者の意思決定資料と矛盾していないかどうかです。

確認対象具体的な検討内容
取締役会承認計画承認日、対象期間、前提条件、改訂履歴
予算・修正予算減損判定に用いる数値との一致・差異
月次実績期末直前までの実績との整合
受注残・契約売上見込みの裏付け
外部市場データ市場成長率、価格動向、需要予測
経営会議資料撤退、縮小、投資継続の方針
IR資料外部公表内容との整合
業績予想適時開示・決算短信での見通しとの整合
税効果資料将来課税所得見積りとの整合
GC資料資金繰り・継続企業前提との整合

たとえば、減損判定では対象事業の売上回復を前提としている一方で、有価証券報告書の事業等のリスクでは市場縮小を強調し、税効果会計では将来課税所得を保守的に見積り、業績予想では低成長を前提としている、という場合があります。このようなときには、各見積りの整合性を説明する必要が生じます。

見積りは個別の基準ごとに目的が異なるため、必ずしも完全に一致していなければならないというものではありません。しかし、同じ経営環境、同じ事業計画を基礎とする以上、なぜ異なる前提を置くのかを説明できなければ、監査上の論点になります。

認識判定と減価償却・耐用年数の見直し

減損の認識判定は、固定資産の耐用年数や減価償却方法の見直しとも関係してきます。

固定資産の減損会計基準では、減損損失を認識するかどうかの判定は、減価償却の見直しに先立って行うとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計審議会 固定資産の減損に係る会計基準

実務上は、次の順序で整理していくとよいでしょう。

順序検討内容
1減損の兆候があるかを判定
2認識判定に用いる主要な資産と経済的残存使用年数を確認
3割引前将来CF総額と帳簿価額を比較
4必要に応じて減損損失を認識・測定
5減損後の帳簿価額を前提に、耐用年数・償却方法・残存価額を見直す

ただし、減損判定の過程で、主要な資産の経済的残存使用年数と、減価償却上の残存耐用年数との乖離が明らかになることがあります。その場合には、減損損失を認識しないケースであっても、耐用年数の変更の要否を別途検討する必要があります。

減損損失を認識しない判断ほど、資料が必要になる

減損の兆候があり、認識判定を行った結果、割引前将来キャッシュ・フロー総額が帳簿価額を上回るため減損損失を認識しない——このような結論は、決して珍しいものではありません。

しかし、監査上は、この結論こそ説明が必要になります。兆候が存在している以上、投資回収に疑義がある状態から出発しているためです。

説明すべき事項必要資料
兆候の内容赤字推移、閉鎖方針、市場価格下落、経営環境悪化資料
グルーピング資産グループ定義、前期比較、変更理由
帳簿価額固定資産台帳、使用権資産、建設仮勘定、共用資産配分
将来CF事業計画、予算、受注資料、契約、外部市場データ
主要な資産主要資産選定理由、経済的残存使用年数
計画修正期末時点の情報を反映した修正内容
感応度売上、粗利、成長率、稼働率の変動影響
経営者判断経営会議資料、取締役会資料、事業継続方針
開示影響見積り注記、業績予想、KAM可能性

「認識不要」という結論は、計算結果だけで支えられるものではありません。計算に至る前提の合理性によって支えられます。

事業計画が楽観的である、外部環境の悪化を織り込んでいない、直近実績との乖離が説明されていない、撤退議論と矛盾している——こうした場合には、認識不要という判断は監査上受け入れられにくくなります。

会計上の見積りの開示との関係

減損会計は、典型的な会計上の見積りです。

企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」では、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することが目的とされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第31号 会計上の見積りの開示に関する会計基準

減損の兆候や認識判定に関連して、次のような場合には、重要な会計上の見積りの注記対象となる可能性があります。

状況注記検討上のポイント
減損損失を計上した測定額、対象資産グループ、主要な仮定
兆候ありだが減損認識なし翌期に認識判定が変わるリスク
帳簿価額と割引前将来CFの余裕が小さい主要な仮定の変動で減損に転じる可能性
のれん・無形資産が大きい買収時計画、シナジー、成長率
店舗・工場閉鎖候補がある閉鎖判断、将来CF、使用権資産
不動産価格が下落している市場価格、鑑定評価、売却可能性
事業計画の不確実性が高い売上回復、価格転嫁、需要見通し

重要な会計上の見積りの注記は、会計処理の結論を説明するだけでは足りません。翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、見積りの内容、主要な仮定、不確実性、影響の可能性を、財務諸表利用者が理解できる粒度で整理する必要があります。

適時開示・業績予想修正との関係

減損損失の認識判定は、財務諸表だけでなく、適時開示にも波及します。

東京証券取引所は、会社情報適時開示ガイドブックを上場会社の実務マニュアルとして編さんしており、会社情報に係る開示要件、開示資料に記載することが求められる内容、開示手順などを示しています。
出典:日本取引所グループ|会社情報適時開示ガイドブック

また、JPXの上場会社向け情報では、適時開示が求められる会社情報は、有価証券の投資判断に重要な影響を与える会社の業務、運営または業績等に関する情報であるとされています。
出典:日本取引所グループ|適時開示が求められる会社情報

減損損失の認識により業績予想との差異が重要となる場合、あるいは事業廃止、固定資産の譲渡、災害損失、行政処分など他の適時開示項目と結び付く場合には、会計処理の確定を待つだけではなく、開示のタイミングも検討する必要があります。

JPXの実務要領でも、決定または発生した事実の内容が経営成績等に与える影響の程度を踏まえ、当連結会計年度等の予想値を新たに算出した場合には、業績予想の修正等の開示が必要となる場合があるとされています。
出典:日本取引所グループ|適時開示に関する実務要領

減損関連事象開示上の検討
多額の減損損失計上業績予想修正、決算短信、有価証券報告書注記
店舗・工場閉鎖事業の一部休止・廃止、特別損失、将来影響
固定資産売却固定資産譲渡、特別利益・損失、資金繰り影響
災害・事故災害損失、復旧費用、減損、業績予想影響
買収事業の計画未達のれん減損、事業計画修正、KAM
継続企業前提への影響GC注記、資金繰り、監査報告

開示対応については、「減損額が確定してから考える」のでは遅い場合があります。兆候の発生、認識判定の進捗、業績予想への影響、監査人との協議状況を、開示担当者と早い段階で共有しておくことが望まれます。

KAMとの関係

減損会計は、KAMになりやすい領域です。

金融庁は、KAMについて、2018年7月公表の監査基準の改訂により日本の監査実務に導入され、2021年3月期から一部を除く金融商品取引法監査適用会社に対して監査報告書への記載が求められていると説明しています。また、KAMの記載には、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高める意義があるとされています。
出典:金融庁|「監査上の主要な検討事項(KAM)」の実務の定着と浸透に向けた取組みについて

減損の兆候と認識判定がKAMになりやすいのは、次のような理由によります。

理由内容
金額的重要性固定資産、のれん、使用権資産、無形資産の帳簿価額が大きい
見積り不確実性将来CF、成長率、稼働率、価格転嫁、撤退時期に判断が入る
経営者判断事業計画、店舗閉鎖、M&A後のシナジーなど経営判断と直結
開示影響重要な会計上の見積り、減損損失注記、事業等のリスクに影響
監査手続の複雑性外部データ、経営者ヒアリング、専門家評価、感応度分析が必要
利用者関心減損計上・未計上は企業価値評価に直結する

KAM対応では、監査人が何をリスクと見ているのかを早期に共有しておくことが重要です。会社側としては、減損判定資料だけでなく、関連する注記、MD&A、事業等のリスク、業績予想、経営者説明との整合性まで確認しておく必要があります。

監査対応で問われる事項

減損の兆候と認識判定について、監査人から問われやすい事項を整理すると、次のようになります。

監査上の問い会社側が準備すべき説明
兆候判定の対象単位は妥当か資産グルーピング資料、管理会計単位、前期比較
兆候判定に漏れはないか赤字リスト、低稼働資産、遊休資産、閉鎖候補、価格下落資料
営業損益の定義は妥当か管理会計資料、共通費配賦、除外項目、臨時損益
事業立上げ時の赤字をどう扱ったか投資時計画、承認資料、計画実績比較
使用範囲・方法の変化を反映したか事業再編、閉鎖、転用、売却、遊休化の意思決定資料
経営環境悪化を織り込んだか市場データ、価格動向、顧客情報、規制情報
市場価格下落を把握したか鑑定評価、路線価、公示地価、査定価格、取引事例
認識判定のCFは合理的か中期計画、予算、受注、契約、外部データ、感応度
主要な資産の選定は妥当か資産構成、投資回収構造、経済的残存使用年数
20年制限を適切に扱ったか見積期間、20年経過時点の回収可能価額
他の見積りと整合しているか税効果、GC、棚卸評価、引当金、業績予想
開示に反映したか見積り注記、減損注記、KAM、適時開示

監査対応においては、「監査人に求められてから資料を作る」のではなく、会社側で先に論点メモを作成しておくことが有効です。とくに、兆候あり・認識不要という判断の場合には、監査人が検証しやすい形で、計算資料と判断資料を分けて提示することが重要になります。

実務で誤りやすい判断

減損の兆候と認識判定では、次のような判断ミスが起こりやすくなります。

誤りやすい判断なぜ問題か
単年度黒字だから兆候なしとする使用範囲変更、市場価格下落、経営環境悪化を見落とす可能性
赤字なら直ちに減損損失を計上する兆候と認識判定を混同している
管理会計上の営業利益を無調整で使う本社費、棚卸評価損、臨時損益などの扱いが不明確
事業計画をそのままCFに転記する期末時点の情報や外部環境を反映していない可能性
投資時計画だけで立上げ赤字を正当化する実績乖離や計画変更を無視している可能性
市場価格下落を固定資産税評価額だけで判断する資産の実態や合理的調整が不足する可能性
主要な資産を帳簿価額の大きさだけで決める将来CF生成能力との関係が説明できない
のれんを単独で兆候判定するのれんは通常、より大きな単位で判断する
使用権資産を減損グループに含め忘れる新リース基準対応後、帳簿価額を誤る可能性
減損判定と税効果・GCの前提が矛盾する複数見積り間の整合性が崩れる
適時開示を会計処理確定後に検討する開示タイミングを逸する可能性

減損会計は、見積りと経営判断が交差する領域です。形式的にチェックリストを埋めるだけでは、監査、開示、経営者への説明に耐える判断にはなりません。

決算前に整備すべき資料

減損の兆候と認識判定について、後から説明できる状態にしておくためには、少なくとも次の資料を整備しておくべきです。

資料目的
資産グルーピング資料兆候判定・認識判定の対象単位を明確にする
固定資産台帳帳簿価額、取得日、耐用年数、残存簿価を確認する
使用権資産一覧リース資産を含む帳簿価額を整理する
管理会計資料営業損益・CFの継続マイナスを確認する
店舗別・工場別・事業別損益資産グループ単位の収益性を確認する
月次実績資料期末時点の最新情報を反映する
中期計画・予算将来CFの基礎資料とする
計画実績比較見積り前提の合理性を確認する
受注残・契約資料売上見込みの裏付けとする
外部市場データ市場環境・価格・需要の前提を確認する
閉鎖・撤退・再編資料使用範囲変更の兆候を確認する
鑑定評価・査定資料市場価格下落の兆候を確認する
共用資産・のれん資料より大きな単位での判定を行う
CF計算シート割引前将来CFと帳簿価額を比較する
感応度分析主要仮定の変動影響を把握する
開示検討メモ見積り注記、適時開示、KAMを検討する
監査人協議メモ争点と会社判断を記録する

こうした資料の整備は、監査対応のためだけのものではありません。経営者が投資継続、撤退、売却、再編、追加投資を判断するための基礎資料にもなります。

専門家に相談すべき場面

減損の兆候と認識判定は、会計基準の理解だけで完結するものではありません。事業計画、投資回収、資産グルーピング、共用資産、使用権資産、のれん、税効果、開示、監査対応が一体となって関わってくるためです。

次のような場面では、早い段階で専門家を交えて整理しておくことが有用です。

相談を検討すべき場面理由
赤字店舗・赤字工場が複数ある兆候判定とグルーピングが争点になりやすい
事業立上げ時の赤字が続いている合理的な事業計画と実績乖離の説明が必要
店舗閉鎖・工場停止・事業撤退を検討している使用範囲変更、将来CF、適時開示が連動する
不動産価格が大きく下落している市場価格下落の兆候と認識判定の整理が必要
M&A後の事業が計画未達であるのれん・無形資産の兆候判定が必要
新リース基準対応を進めている使用権資産と減損グルーピングの整合が必要
減損損失を認識しない結論を出したい事業計画・CF見積りの説明可能性が重要
税効果・GC・業績予想と前提がずれている複数見積り間の整合性を検証する必要
KAM候補として監査人から示されている開示・監査報告まで見据えた資料整理が必要

犬飼公認会計士・税理士事務所では、上場企業、IPO準備企業、大規模グループの固定資産減損会計について、兆候判定、認識判定、将来キャッシュ・フロー、事業計画、のれん、使用権資産、税効果、注記・監査対応までを一体で整理する支援を行っています。

減損の兆候はあるものの、減損損失を認識すべきかどうか、事業計画をどのように補正すべきか、監査人にどの資料で説明すべきか——こうした点に迷われる場合は、固定資産台帳、グルーピング資料、管理会計資料、中期計画、直近実績、閉鎖・再編資料を整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

重要ポイントの振り返り

論点実務上の要点
減損の兆候減損が生じている可能性を示す事象であり、認識判定に進む入口
兆候と認識の違い兆候があるだけで減損損失を計上するわけではない
認識判定割引前将来CF総額と帳簿価額を比較する
認識要件割引前将来CF総額が帳簿価額を下回る場合に減損損失を認識
営業損益悪化おおむね過去2期マイナス、または今後継続マイナス見込みが焦点
立上げ赤字合理的計画があり、実績が著しく下振れていなければ兆候に該当しない場合がある
使用範囲変更事業廃止、再編、早期処分、用途転用、遊休化、低稼働、陳腐化に注意
経営環境悪化市場、技術、法規制、競争環境の変化を対象資産グループに結び付けて判断
市場価格下落少なくとも帳簿価額から50%程度以上の下落は兆候に該当
共用資産より大きな単位または共用資産そのものの兆候を確認
のれん通常、のれん自体ではなく、のれんを含むより大きな単位で判断
将来CF企業固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定に基づく
中期計画そのまま転記せず、期末時点の外部・内部情報と整合的に修正
見積期間主要な資産の経済的残存使用年数と20年の短い方が基本
20年超資産20年目までのCFに20年経過時点の回収可能価額を加算
建設仮勘定建設中止・延期・遅延がある場合は兆候と認識判定を検討
使用権資産新リース基準対応後は減損グルーピング・CFとの整合が重要
見積り開示翌年度に重要な影響を及ぼすリスクがある場合は注記を検討
適時開示減損損失や業績予想影響が重要な場合は開示タイミングに注意
KAM減損は金額的重要性・見積り不確実性・経営者判断からKAMになりやすい
監査対応結論だけでなく、兆候判定、CF前提、事業計画補正、感応度を文書化する
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次