土地分割と建築基準法・都市計画の関係|分割後に建物が建てられるかを確認する実務ポイント

土地を相続や贈与で分けるとき、まず話題になるのは「評価額をどう分けるか」「相続人のあいだで公平になるか」「相続税がどれくらい変わるか」といった点でしょう。

ただ、土地にはもう一つ、必ず確認しておきたい視点があります。それは、分割した後の土地で、現実にどのような建物を建てられるのかという点です。

土地は、面積が同じだからといって価値まで同じとは限りません。道路に接しているか、接している道路が建築基準法上の道路か、道路後退が必要か、用途地域によって建てられる建物が制限されないか、建ぺい率・容積率を実際に使い切れるか、高さ制限や条例で建築計画が縛られないか。こうした条件によって、分割後の土地の使いやすさは大きく変わってきます。

相続税評価のうえでは一見公平に見える分け方でも、建築実務の目で見ると「片方は建て替えや売却がしやすい土地、もう片方は再建築や活用が難しい土地」になってしまうことがあります。とくに都市部では、その土地にどのような建物を建てられるかによって価値が大きく動くため、土地分割に建築の視点は欠かせません。

本記事では、土地分割を検討する際に押さえておきたい建築基準法・都市計画の基本論点を、相続・贈与・遺産分割・土地評価との関係も含めて整理していきます。

目次

土地分割では「線を引けるか」ではなく「分けた後に使えるか」を見る

土地分割のご相談では、「この土地を2つに分けられますか」と尋ねられることがあります。

登記上の分筆という点だけでいえば、測量や境界確認を行い、法務局で分筆登記をすることで、1筆の土地を複数筆に分けられる場合があります。けれども、相続・贈与の判断として本当に大切なのは、分筆できるかどうかではありません。

問われるのは、分割した後の各土地が、独立した不動産としてきちんと使えるかという点です。

具体的には、次のような点を確認していきます。

  • 各土地が建築基準法上の道路に接しているか
  • 各土地の接道幅が十分か
  • 道路後退によって実質的な敷地面積が小さくならないか
  • 用途地域のうえで、予定している建物を建てられるか
  • 建ぺい率・容積率を実際に活かせるか
  • 高さ制限、斜線制限、日影規制、条例、建築協定の影響を受けないか
  • 造成や道路新設を伴うために、開発許可が必要にならないか
  • 上下水道、ガス、電気、排水などのインフラを各土地で確保できるか
  • 将来の売却、賃貸、建替え、二次相続に耐えられるか

ここを確認しないまま「面積が半分だから公平」「評価額が近いから問題ない」と判断してしまうと、後になって大きな不満が生じます。

土地分割では、分割後の土地で建築できる建物を思い描いたうえで、分割計画を組み立てることが肝心です。建築計画まで細かく作り込むかどうかは事案によりますが、少なくとも建築上の制約を把握しておけば、その分割案が本当に有効かどうかを判断しやすくなります。

接道義務|道路に2メートル接していれば十分とは限らない

建築基準法では、建築物の敷地は原則として道路に2メートル以上接していなければならないとされています。いわゆる「接道義務」です。

出典:e-Gov法令検索|建築基準法

土地分割で最も危ういのは、分割した後の一部の土地が道路に接しない、あるいは接道幅が足りなくなることです。建築基準法上の道路に接していない土地では、原則として建物を新築できません。古家が建っている場合でも、建て替えるときに再建築できないことがあります。実務で「再建築不可」と呼ばれる物件の多くは、この接道要件を満たしていないことが原因です。

ただ、「2メートル接していれば必ず安心」と考えるのも、また危ういところです。

まず確認すべきは、その道が建築基準法上の「道路」にあたるかどうかです。見た目は道路でも、建築基準法42条上の道路には該当しないことがあります。建築基準法上の道路は、原則として幅員4メートル以上であることなど、法令上の要件を満たす必要があります。

さらに、建物の用途や自治体の条例によっては、2メートルを超える接道が求められることもあります。たとえば共同住宅、長屋、特殊建築物、一定規模以上の建物では、避難・通行・消防活動の観点から、接道幅、道路幅員、路地状部分の幅、敷地内通路、窓先空地などが問題になります。建築基準法上は2メートルの接道で足りるように見えても、東京都や横浜市などの条例では、路地状敷地や集合住宅についてより厳しい制限が課されることがあります。

したがって土地分割では、次の順序で確認していきます。

  1. 接している道が、建築基準法42条上の道路かどうかを確認する
  2. 分割後の各土地が、道路に2メートル以上接するかを確認する
  3. 建てたい建物の用途・規模に応じて、条例上の接道・通路・避難規制がないかを確認する
  4. 車両進入、工事車両、消防活動、将来売却時の評価まで見ておく

相続税評価のうえでは、道路に接するかどうかが無道路地補正や評価単位に影響します。ただ建築実務では、そこからさらに一歩進んで、「本当に建て替えられるのか」「予定している用途に使えるのか」まで確認しておく必要があります。

43条ただし書き・43条2項の例外に安易に依存しない

道路に2メートル以上接していない土地でも、一定の場合には建築が認められることがあります。従来「43条ただし書き」と呼ばれてきた例外的な取扱いは、現行法では建築基準法43条2項の認定・許可類型として整理される場面があります。

もっとも、この例外を、土地分割の前提として安易に織り込むのは禁物です。

というのも、認定・許可は、敷地周囲の状況、交通上・安全上・防火上・衛生上の支障の有無、建築審査会の同意の要否、自治体ごとの運用などに左右されるからです。道路に接していない土地をあえて作り、「後で43条2項の許可を取ればよい」と考える分割は、税務・建築・家族関係のいずれの面から見ても、説明の難しいものになります。

とくに相続や贈与で親族間の土地分割を行う場合、分割後の土地が通常の宅地として利用できないと、税務上も不合理分割の問題が生じます。国税庁の質疑応答事例では、親族間等で行われた宅地の分割が著しく不合理で、無道路地、帯状地、著しく狭い画地などを生み出し、現在および将来において有効な土地利用が図られない場合には、所有者単位ではなく、分割前の画地を1画地として評価するという考え方が示されています。

出典:国税庁|宅地の評価単位-不合理分割(1)

つまり、建築上ぎりぎりの土地を作ることは、税務のうえでも「果たして合理的な分割だったのか」という問いに直結するのです。

道路後退・セットバック|分けた後の面積がそのまま使えるとは限らない

土地が狭い道路に接している場合には、道路後退、いわゆるセットバックが必要になることがあります。

建築基準法42条2項道路などでは、現況道路の幅員が4メートル未満であっても、一定の要件を満たす既存道路が建築基準法上の道路とみなされることがあります。その場合、建て替えるときには原則として道路中心線から2メートル後退するなど、敷地の一部を道路状に後退させる必要が生じます。

出典:e-Gov法令検索|建築基準法

道路後退が必要な土地では、登記簿面積や実測面積を、そのまま建築可能面積として使えるわけではありません。たとえば実測面積が200㎡あっても、道路後退部分が10㎡あれば、建ぺい率・容積率の計算では実質的に190㎡を前提とすることがあります。

この点は、土地分割では非常に重要です。

分割前は十分な面積があるように見えても、分割後に各土地で道路後退が必要になると、建てられる面積が想定より小さくなることがあります。とくに狭小地や間口の限られた土地では、後退後の敷地面積、駐車スペース、建物配置、避難経路、隣地との距離まで考えに入れなければなりません。

道路後退がある土地では、次の点を確認します。

  • 現況道路の幅員
  • 建築基準法42条の何項にあたる道路か
  • 道路中心線がどこにあるか
  • 片側が崖、川、線路などである場合の後退方法
  • 道路後退部分の面積
  • 後退後の有効敷地面積
  • 建ぺい率・容積率の計算に使える面積
  • 後退部分の固定資産税、管理、舗装、寄附・採納の有無
  • 将来売却するときに買主へ説明すべき事項

相続人のあいだで土地を分ける場合、「登記簿上の面積」だけを基準に公平性を判断してはいけません。道路後退後の実質的な利用可能面積まで見ておかないと、片方の相続人だけが、実際には使いにくい土地を取得してしまうことになります。

用途地域|建てられる建物の種類が変わる

都市計画法上、都市計画区域には、用途地域などの地域地区を定めることができます。用途地域には、第一種低層住居専用地域、第一種住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域などがあり、都市計画法上、13種類の用途地域が定められています。

出典:e-Gov法令検索|都市計画法 出典:国土交通省近畿地方整備局|建築基準法に基づく建築制限・緩和

用途地域が指定されると、その目的に応じて、建てられる建物の種類や規模が建築基準法上で決められます。国土交通省も、用途地域は住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるものであり、用途地域ごとに建てられる建物の種類や規模が建築基準法で決められると説明しています。

出典:国土交通省近畿地方整備局|建築基準法に基づく建築制限・緩和

土地分割では、用途地域を「土地の色分け」程度に見てはいけません。

たとえば第一種低層住居専用地域では、低層住宅の良好な住環境を守るために、店舗、事務所、共同住宅、賃貸併用住宅、診療所、老人ホーム、保育施設などについて、建てられる用途や規模が制限されることがあります。反対に商業地域や近隣商業地域では、容積率が高く、収益物件を建てやすいこともありますが、その分、日影規制、斜線制限、防火規制、前面道路幅員といった別の制約が問題になります。

また、1つの大きな土地が、複数の用途地域にまたがることもあります。この場合は、分割線の引き方によって、取得者ごとの建築可能な用途、建ぺい率、容積率、将来の売却価値まで変わる可能性があります。

用途地域を確認するときは、次の点を整理します。

  • 市街化区域か、市街化調整区域か、非線引き区域か
  • 用途地域の種類
  • 建てたい建物がその用途地域で建築可能か
  • 特別用途地区、地区計画、建築協定、景観条例の有無
  • 防火地域・準防火地域の有無
  • 敷地が複数の用途地域にまたがるか
  • 分割後の各土地で用途制限が変わらないか

相続では、「子が自宅を建てる予定」「賃貸住宅を建てて納税資金を確保する予定」「一部を売却する予定」といった将来計画が、分割案に影響します。用途地域の確認を怠ると、思い描いていた建物が建たず、納税資金計画や代償金の支払計画まで崩れてしまうことがあります。

市街化調整区域では「建てられる前提」を置かない

都市計画区域は、必要に応じて市街化区域と市街化調整区域に区分されます。市街化区域は、すでに市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的に市街化を進めるべき区域です。これに対して市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とされています。

出典:国土交通省関東地方整備局|区域区分

相続財産に市街化調整区域内の土地が含まれる場合、「宅地のように見える」「昔から家が建っている」「道路に接している」といった理由だけで、自由に建築できるとは限りません。

市街化調整区域では、新築、建替え、用途変更、分家住宅、農家住宅、既存宅地、既存建物の建替え、開発許可、都市計画法43条許可など、自治体ごとの運用を確認することが欠かせません。土地を分割した結果、既存建物との関係が切れたり、許可を受けた建築物の敷地条件が変わったりすると、建替えや売却が難しくなることがあります。

市街化調整区域内の土地を分ける場合には、少なくとも次の事項を確認します。

  • 現在の建物が適法に建築されたものか
  • 建築確認、開発許可、農地転用許可の履歴
  • 既存宅地、既存集落、分家住宅等の取扱い
  • 相続人が取得した後に建て替えられるか
  • 第三者へ売却した場合も建築可能か
  • 土地を分割すると許可条件に影響しないか
  • 農地法、都市計画法、建築基準法のいずれの許可・届出が必要か

市街化調整区域の土地は、評価額だけで判断すると、実際の利用可能性を見誤ることがあります。相続人間の公平性を考える際も、「面積」「固定資産税評価額」「相続税評価額」だけでなく、「誰が取得すれば利用できるのか」「第三者に売れるのか」までを確認しておく必要があります。

建ぺい率・容積率|数字どおりに建てられるとは限らない

建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の限度、容積率は敷地面積に対する延べ面積の限度です。建ぺい率は建築基準法53条、容積率は同法52条に規定されています。

出典:e-Gov法令検索|建築基準法

たとえば建ぺい率60%、容積率200%の土地であれば、単純には、敷地面積100㎡に対して建築面積60㎡、延べ面積200㎡の建物が建つように思えます。

ところが土地分割では、この単純計算で判断してはいけません。

容積率は、指定容積率だけでなく、前面道路幅員による制限を受けることがあります。幅員の狭い道路に接している土地では、都市計画上の指定容積率が高くても、前面道路幅員による容積率制限がかかり、実際には容積率を使い切れないことがあるのです。

加えて、道路後退がある場合には、有効敷地面積そのものが小さくなります。さらに、駐車場、駐輪場、避難通路、隣地斜線、道路斜線、日影規制、条例上の空地、共同住宅の窓先空地、敷地内通路などによって、建てられる形状が制約されます。条例の制約により、建築計画によっては容積率をフルに活かすことが難しい場合もあります。

土地を分割すると、建ぺい率・容積率の使い方は大きく変わります。

分割前は広い間口があって駐車場や避難経路を確保しやすかった土地でも、分割すると間口が狭く奥行きの長い土地になり、建物配置の自由度が下がることがあります。逆に、路地状敷地を作って面積上の公平性を保てるように見えても、路地部分は建築面積や居住性に直接寄与しにくく、建築コストや売却時の評価に影響します。

建ぺい率・容積率を確認するときは、次の点を見ます。

  • 指定建ぺい率・指定容積率
  • 前面道路幅員による容積率制限
  • 道路後退後の有効敷地面積
  • 防火地域・準防火地域による緩和や制限
  • 角地緩和の有無
  • 分割後も同じ容積率を使えるか
  • 予定建物の用途に必要な駐車場・避難通路・空地
  • 条例による共同住宅・長屋・特殊建築物の制限
  • 建築可能な延床面積と、実際に収益を生む床面積の違い

相続対策として賃貸住宅の建築を検討する場合には、容積率を数字のうえで使えるかだけでなく、実際に収益性のある建物を建てられるか、借入の返済に耐えられるか、相続人が管理していけるかまで確認しておく必要があります。

高さ制限|容積率があっても上に伸ばせないことがある

土地分割では、高さ制限も見落としやすい論点です。

高さ制限には、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域などにおける絶対高さ制限のほか、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限、高度地区、日影規制、地区計画、景観条例などがあります。建築基準法では、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域に絶対高さの制限が設けられており、道路斜線制限も建物の高さや配置に影響します。

たとえば容積率200%の土地であっても、道路幅員が狭い、北側隣地への斜線制限が厳しい、高度地区によって高さが抑えられる、日影規制が厳しい、といった事情があると、思い描いた階数や延床面積を確保できないことがあります。

土地を分割すると、建物の配置や隣地との距離が変わるため、斜線制限や日影規制の影響も変わってきます。分割前なら建物を敷地の中央に配置して制限を回避できたものが、分割後は隣地境界が近くなり、建物を小さくせざるを得なくなることもあります。

高さ制限を確認するときは、次の事項を見ます。

  • 絶対高さ制限の有無
  • 道路斜線、隣地斜線、北側斜線
  • 高度地区、地区計画、景観計画
  • 日影規制の対象地域か
  • 分割後の建物配置で斜線制限を満たせるか
  • 周辺建物との関係
  • 予定建物の階数、用途、屋根形状
  • 共同住宅や賃貸併用住宅の場合の避難・採光・通風要件

「容積率が余っているのだから、上に伸ばせばよい」という発想は、土地分割では通用しないことがあります。とくに低層住居系の地域や、狭あい道路に面する土地では、容積率よりも、高さ・斜線・日影のほうが実質的な制約になることがあるのです。

開発許可|大きな土地を分ける場合は都市計画法を確認する

まとまった土地を複数の区画に分けて宅地化する場合には、都市計画法上の開発許可が必要になることがあります。

都市計画法上、開発行為とは、主として建築物の建築等を目的とした土地の区画形質の変更をいいます。国土交通省は、開発許可制度について、区域区分を担保し、良好かつ安全な市街地の形成と無秩序な市街化の防止を目的とする制度であり、開発行為とは建築物の建築などを目的とした土地の区画形質の変更であると説明しています。

出典:国土交通省|開発許可制度の概要

相続で土地を分けるだけなら、常に開発許可が必要になるわけではありません。ただ、次のような場合には注意が必要です。

  • 新たな道路を作って複数区画に分ける
  • 宅地造成を行う
  • 農地や雑種地を宅地化する
  • 水路や道路を付け替える
  • 擁壁、造成、切土、盛土を伴う
  • 一定規模以上の土地を分譲・売却する
  • 市街化調整区域で建築を予定している
  • 位置指定道路を設ける
  • 古い開発地で、過去の許可条件が不明確である

開発許可が必要な場合、相続税の申告期限内に、分割・測量・許可・造成・売却まで完了できるとは限りません。相続税の申告と納税は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。

出典:国税庁|No.4205 相続税の申告と納税

そのため、相続税の納税資金を土地の売却で確保しようとする場合、開発許可や造成が必要な土地では、スケジュール管理が極めて重要になります。売却予定地を相続人の誰が取得するか、換価分割にするか、代償分割にするか、未分割申告となった場合にどう対応するか。ここまで確認しておく必要があります。

位置指定道路・私道・インフラ|道路があっても建築できるとは限らない

土地を分割して、奥の土地にも建物を建てたい場合には、新たに道路を設ける必要が出てくることがあります。このとき問題になるのが、位置指定道路や私道です。

位置指定道路とは、土地を建築物の敷地として利用するために、道路法等によらず築造する一定の道で、特定行政庁から位置の指定を受けたものをいいます。国土交通省近畿地方整備局も、位置指定道路について、土地を建築物の敷地として利用するため、道路法等によらないで築造する一定の基準に適合する道で、特定行政庁から位置の指定を受けたものと説明しています。

出典:国土交通省近畿地方整備局|建築基準法に基づく建築制限・緩和

ただし、道路を作れば終わり、というわけではありません。

私道の場合には、通行権、掘削承諾、上下水道・ガス管の引込み、私道持分、維持管理費、舗装、排水、近隣所有者の同意、金融機関の担保評価などが問題になります。前面道路が私道であるときは、道路掘削に関する課題やインフラ整備の必要性も、土地分割の重要な論点となります。

たとえば、分割前は1つの宅地として既存建物に上下水道やガスが引き込まれていても、分割後の奥の土地には引込みがないことがあります。この場合には、新たな引込み工事、私道掘削承諾、隣地使用、負担金、排水勾配、浄化槽、雨水処理などを確認しなければなりません。

分割後の各土地について、次の点を確認します。

  • 上水道を個別に引き込めるか
  • 下水道・浄化槽・雨水排水の処理が可能か
  • ガス・電気・通信の引込みが可能か
  • 私道掘削承諾を得られるか
  • 私道持分や通行地役権があるか
  • 道路・水路・赤道・青道との関係
  • 工事車両が入れるか
  • 擁壁・高低差・排水先に問題がないか

建築できるかどうかは、法令だけで決まるものではありません。インフラの整わない土地は、建物を建てられても利用価値が下がり、売却の際にも買主が限られてしまいます。

一敷地一建物の原則と敷地分割線にも注意する

土地分割では、登記上の筆と、建築確認上の敷地が一致しているとは限りません。

建築基準法の実務には、原則として一つの敷地に一つの建物、という考え方があります。複数の建物が1筆の土地に建っている場合でも、建築確認のうえでは、それぞれの建物について敷地分割線が設定されていることがあります。

この敷地分割線は、登記上の筆界とは異なることがあります。既存建物を建て替える場合、過去の建築確認でどのような敷地として扱われていたかによって、建てられる建物が左右されます。建築会社が「その建物さえ建てられればよい」という発想で敷地分割線を設定していると、後で他の建物を建て替える際に影響が出ることがあります。

相続で土地を分ける場合には、次の点を確認します。

  • 既存建物の建築確認済証・検査済証
  • 建築確認上の敷地範囲
  • 登記上の筆界と、建築上の敷地線の違い
  • 複数建物がある場合の用途上の不可分性
  • 将来どの建物を建て替える可能性があるか
  • 分筆線と建築確認上の敷地線を一致させる必要があるか
  • 建替え時に既存不適格や違反建築物の問題がないか

とくに古いアパート、貸家、自宅兼事業用建物、倉庫、離れ、車庫、農業用施設などがある土地では、現況だけでなく、過去の建築確認資料の確認が重要になります。

土地評価・不合理分割との関係

本記事の中心は建築基準法・都市計画ですが、相続・贈与では、税務との接続も避けて通れません。

土地を分けた結果、片方が無道路地になる、接道幅が足りない、著しく狭い、帯状地になる、通常の宅地として利用できない、という状態になると、相続税・贈与税の土地評価でも問題になります。

国税庁の質疑応答事例では、贈与や遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われ、その分割が著しく不合理と認められる場合には、所有者単位で評価せず、分割前の画地を1画地として評価するという考え方が示されています。無道路地、帯状地、著しく狭い画地を生み出し、現在および将来においても有効な土地利用が図られないと認められる分割が、その例として挙げられています。

出典:国税庁|宅地の評価単位-不合理分割(1)

つまり、建築上使いにくい土地を作ることは、単に相続人間の不満につながるだけではありません。税務のうえでも、分割後の筆ごとに低く評価することが認められず、分割前の一体画地を前提に評価し直す必要が生じる可能性があるのです。

分割案を作るときは、次のように整理します。

  • 建築上、分割後の各土地が通常どおり利用できるか
  • 税務上、分割後の評価単位として説明できるか
  • 無道路地、帯状地、狭小地、接道不足を人為的に作り出していないか
  • 相続人間の公平だけでなく、第三者にも合理的な分割だと説明できるか
  • 将来の二次相続でも同じ問題が再燃しないか

税務上は有利に見える分割でも、建築上は不合理であれば、申告後の説明可能性にも問題が残ります。

小規模宅地等の特例にも影響する

土地分割は、小規模宅地等の特例にも影響します。

自宅敷地を分ける場合には、どの部分が特定居住用宅地等に該当するのか、誰が取得するのか、取得者が居住継続・所有継続などの要件を満たせるのかを確認しなければなりません。

また、自宅と貸家、駐車場、事業用建物、同族会社の使用部分が一体となっている土地では、分割線の引き方によって、居住用、貸付事業用、事業用の範囲が変わることがあります。

建築基準法上の敷地、相続税評価上の評価単位、小規模宅地等の特例上の利用区分は、似ているようでいて、それぞれ目的が異なります。土地分割では、これらを混同せず、次の順で確認していく必要があります。

  • 現況の利用状況
  • 建築確認上の敷地
  • 相続税評価上の評価単位
  • 小規模宅地等の特例上の利用区分
  • 取得者と継続要件
  • 分割後の利用予定
  • 申告期限までに分割がまとまるか

分割が申告期限までにまとまらない場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例について、当初の適用に制限が生じることがあります。建築上の検討に時間がかかる土地では、税務申告期限との関係も、早めに整理しておく必要があります。

相続人間の公平は「面積」ではなく「使える価値」で考える

土地分割では、面積を均等にすることが、そのまま公平とは限りません。

道路側の土地と奥の土地とでは、接道、視認性、建築の自由度、駐車場、インフラ、売却可能性が異なります。間口が狭く奥行きの長い土地で面積を半分に分けると、双方が細長い土地となり、建築上の制約を受けることがあります。一方、路地状敷地として分けると、奥の土地は面積を広く取る必要が出てくる反面、建築条例や売却価値の問題が残ります。間口が狭く奥行きの長い土地では、均等分割が評価上は分かりやすくても、建築上は制約を受けることがあり、分割後の活用方法を踏まえた検討が欠かせません。

相続人のあいだで納得感を得るためには、次のような観点から比較しておく必要があります。

  • 面積
  • 相続税評価額
  • 時価・売却可能額
  • 建築できる用途・規模
  • 再建築の可否
  • 道路側か奥側か
  • インフラ整備費用
  • 造成・擁壁・解体費用
  • 固定資産税・維持管理費
  • 将来売却時の流動性
  • 二次相続時の承継しやすさ
  • 代償金で調整できるか

とくに兄弟姉妹のあいだで不動産を分ける場合は、将来の生活状況や売却可能性まで見ておかないと、「相続のときは納得したけれど、後から不公平だったと感じる」ということが起こりがちです。

二次相続・将来売却まで見る

一次相続で土地を分ける場合、配偶者が取得する土地と、子が取得する土地をどう分けるかが問題になります。

一次相続だけを見れば、配偶者が自宅敷地を取得し、子が奥の土地や別の土地を取得する形が、納税上は有利に見えることがあります。ただ、二次相続で配偶者が亡くなったとき、その土地を誰が取得するのか、売却できるのか、建て替えられるのか、共有が残らないか。ここまで確認しておく必要があります。

また、相続税の納税資金を土地の売却で確保する場合には、分割後に売却しやすい土地を残しておくことが大切です。道路側の整形地は売却しやすく、奥の路地状地や接道に難のある土地は、売却先が限られる傾向があります。

二次相続まで見据える場合は、次の点を整理します。

  • 配偶者が取得する土地の将来の承継先
  • 子が取得する土地の建築・売却可能性
  • 一次相続で共有を残すか、単独所有にするか
  • 二次相続で小規模宅地等の特例を使えるか
  • 将来売却する土地と、残す土地の区分
  • 納税資金をどの時点で確保するか
  • 相続人の居住予定・事業予定・管理能力

土地分割は、一次相続の申告書を作るためだけの作業ではありません。次の世代が管理し、使い、売却し、納税できる形に整えておくことが大切です。

確認すべき資料

土地分割と建築基準法・都市計画の関係を検討する場合には、次の資料を確認します。

  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 地積測量図
  • 固定資産税課税明細書・名寄帳
  • 都市計画図
  • 用途地域、建ぺい率、容積率、高度地区、防火地域等が分かる資料
  • 建築基準法上の道路種別
  • 道路台帳、道路位置指定図、42条2項道路の確認資料
  • 建築確認済証、検査済証、建築計画概要書
  • 既存建物の配置図、平面図、確認申請図書
  • 上下水道、ガス、電気、排水の引込み状況
  • 私道持分、通行承諾、掘削承諾
  • 境界確認書、筆界確認書
  • 擁壁、高低差、排水、土砂災害区域、都市計画道路予定地の資料
  • 過去の開発許可、位置指定道路、農地転用許可の資料
  • 遺言書、遺産分割協議書案、贈与契約書案
  • 土地家屋調査士、建築士、司法書士、不動産鑑定士、不動産会社からの資料

とりわけ、役所調査と現地確認は欠かせません。インターネットの都市計画情報だけでは、道路種別、セットバック、建築確認上の敷地、条例の運用、インフラ、既存不適格の問題までは分からないことがあるからです。

土地分割を検討する実務手順

土地分割を検討するときは、次の順序で進めると、判断の抜け漏れを減らせます。

  1. まず、現況を確認します。土地の形状、境界、道路、建物、利用状況、権利関係、インフラ、地目を整理します。
  2. 次に、建築可能性を確認します。接道、道路種別、道路後退、用途地域、建ぺい率、容積率、高さ制限、条例、開発許可を確認します。
  3. そのうえで、分割案を複数作成します。面積均等案、道路側・奥側案、路地状敷地案、換価分割案、代償分割案、共有維持案などを比較します。
  4. 次に、税務上の影響を確認します。相続税評価、評価単位、不合理分割、小規模宅地等の特例、贈与税、譲渡所得税、固定資産税を確認します。
  5. さらに、家族関係・納税資金を確認します。誰が住むのか、誰が管理するのか、誰が代償金を払えるのか、納税資金をどう確保するのかを整理します。
  6. 最後に、登記・実行手続を確認します。分筆登記、相続登記、所有権移転登記、開発許可、建築確認、測量、境界確認、私道承諾、申告期限を踏まえて、実行可能性を確認します。

この順序を踏むことで、「税務上はよさそうだが建物が建たない」「面積は公平だが売却価値が大きく違う」「申告期限までに分割がまとまらない」といった失敗を避けやすくなります。

まとめ|土地分割は建築・都市計画を確認してから税務判断をする

土地分割では、税務上の評価額だけで判断してはいけません。

  • 建築基準法上の接道義務を満たすか
  • 道路後退によって有効面積が減らないか
  • 用途地域のうえで、予定する用途の建物を建てられるか
  • 建ぺい率・容積率を実際に活かせるか
  • 高さ制限、斜線制限、日影規制、条例の影響を受けないか
  • 開発許可や位置指定道路が必要にならないか
  • インフラ整備や私道承諾が可能か
  • 建築確認上の敷地と、登記上の筆が整合するか
  • 税務上、不合理分割と見られないか
  • 二次相続や将来売却でも説明できるか

これらを確認したうえで、初めて、相続税評価、遺産分割、贈与、納税資金、登記手続を検討することができます。

土地は、単に「持分を分ける財産」ではありません。分け方しだいで、家族の住まい、賃貸経営、納税資金、将来の売却、二次相続、税務調査への対応にまで影響が及びます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、土地を含む相続・贈与について、税務上の評価だけでなく、建築基準法・都市計画・登記・納税資金・二次相続までを踏まえて論点を整理しています。土地を分けて相続・贈与したい場合、分割後に建物を建てられるか不安がある場合、相続税評価と建築上の利用可能性をあわせて確認したい場合は、図面・固定資産税資料・登記資料・都市計画情報をもとに、早い段階でご相談ください。

振り返り

確認事項建築・都市計画上のポイント相続・税務上の注意点
接道義務建築基準法上の道路に原則2m以上接する必要がある接道不足は再建築不可や不合理分割の問題につながる
道路種別見た目の道路ではなく、建築基準法42条上の道路か確認する無道路地評価や売却可能性に影響する
道路後退セットバックにより有効敷地面積が減る面積按分だけでは公平にならない
用途地域建てられる建物の用途・規模が変わる自宅、賃貸、事業用、売却予定で分割案が変わる
市街化調整区域原則として市街化を抑制する区域で、建築・開発に制約がある取得者や売却先によって利用可能性が変わる
建ぺい率建築面積の上限を確認する分割後の建物配置や駐車場確保に影響する
容積率指定容積率だけでなく前面道路幅員や条例の影響を確認する賃貸住宅計画や納税資金計画に影響する
高さ制限絶対高さ、道路斜線、北側斜線、日影規制等を確認する容積率が余っていても建てられない場合がある
開発許可区画形質の変更、道路新設、造成、大規模分割で必要になることがある申告期限・売却時期・納税資金に影響する
位置指定道路・私道通行、掘削、持分、インフラ引込みを確認する売却価値や相続人間の公平性に影響する
一敷地一建物建築確認上の敷地分割線と登記上の筆界が異なることがある建替え時に想定外の制約が出る
不合理分割通常利用できない土地を作る分割は問題になりやすい分割前の画地で評価される可能性がある
小規模宅地等利用区分、取得者、継続要件を確認する分割未了や取得者の違いで特例適用に影響する
二次相続次の相続で誰が取得し、使えるかを確認する一次相続だけの節税判断は危険
資料整理道路、都市計画、建築確認、インフラ資料を集める申告後の説明可能性を高める
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