リース注記は「計算結果の補足」ではなく、契約構造と将来負担を説明する開示である
新リース会計基準への対応というと、どうしても使用権資産とリース負債の測定に議論が集中しがちです。
しかし、上場企業・IPO準備企業・大規模グループの決算実務において、最終的に監査人、経営者、監査役等、開示担当者、そして投資家へ説明することになるのは、単なる仕訳ではありません。財務諸表本表と注記を通じて示される「リースが企業の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローにどのような影響を与えているか」です。
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、リースに関する注記の開示目的を明確に定めています。すなわち、財務諸表本表で提供される情報と併せて、リースが借手または貸手の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を与える情報を開示することにある、という位置づけです。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
この定めが実務に与える意味は、決して小さくありません。
リース注記は、会計システムから出力された残高表を貼り付ける作業ではないからです。契約棚卸、リース識別、リース期間、割引率、変動リース料、契約変更、サブリース、セール・アンド・リースバック、資産除去債務、減損、税効果まで含めて、会社がどのような判断を行い、その判断がどの数値と開示につながっているかを示す領域です。
特に新基準では、旧基準下でオフバランスであった借手のオペレーティング・リースについても、原則として使用権資産とリース負債が認識されます。そのため注記は、「簿外債務的な情報の補足」から、「財務諸表本表に認識されたリース取引の性質と将来影響を説明する情報」へと、その位置づけが変わることになります。
なお、リース会計基準の適用により、旧企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および旧適用指針第16号等の適用は終了します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表
本稿では、リーステーマの総仕上げとして、新リース基準を前提に、リース注記、重要な判断、監査証拠、内部統制、KAM可能性、開示担当・経営者説明までを一体で整理していきます。
まず押さえるべき適用時期と現在の基準状況
企業会計基準第34号は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。あわせて、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用も認められています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
また、ASBJの適用指針一覧では、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」は、2024年9月13日公表、2025年10月16日修正とされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針
したがって、2026年7月時点で新リース基準対応を検討する会社では、少なくとも次の3つを区分して考える必要があります。
| 区分 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 適用前の準備開示・影響説明 | 会計方針変更、影響額試算、経営指標への影響、内部統制整備をどう説明するか |
| 適用初年度の注記 | 移行アプローチ、経過措置、比較情報、期首影響、初年度の注記事項をどう整理するか |
| 適用後の継続注記 | 契約変更、再測定、増減、キャッシュ・アウトフロー、貸手注記、重要な見積りを継続的にどう集計するか |
注記設計は、適用初年度の直前に始めるものではありません。
契約棚卸やシステム設計の段階で、注記に必要なデータ項目を台帳に持たせておく。そこを怠ると、決算末になって「注記に必要な情報が契約書から拾えない」という問題が生じます。
リース注記の全体構造
新リース基準における注記は、借手と貸手とで、要求される情報の構造が異なります。
会計基準第55項では、借手について、会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記するとされています。貸手については、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記するとされています。ただし、開示目的に照らして重要性に乏しい注記事項は、記載しないことができます。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
| 立場 | 注記の柱 | 主な意味 |
|---|---|---|
| 借手 | 会計方針に関する情報 | どのような会計処理の選択・方針を採用したか |
| 借手 | リース特有の取引に関する情報 | 使用権資産、リース負債、変動リース料、特殊取引等の性質をどう理解するか |
| 借手 | 当期・翌期以降の金額情報 | キャッシュ・アウトフロー、使用権資産増加額、減価償却費等をどう把握するか |
| 貸手 | リース特有の取引に関する情報 | リース債権、リース投資資産、残価、受取利息、特殊な収益構造をどう示すか |
| 貸手 | 当期・翌期以降の金額情報 | 将来の回収予定、残高変動、オペレーティング・リース収入予定をどう示すか |
ここで重要なのは、注記項目の区分そのものに機械的に従えば足りるわけではない、という点です。
会計基準第56項は、会計基準第55項に示す区分に従って注記事項を記載する必要はないとしています。また第57項は、リースに関する注記を独立の注記項目としつつ、他の注記事項に既に記載している情報は繰り返す必要がなく、他の注記事項を参照できるとしています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
したがって実務上は、次のように考えるべきでしょう。
| 判断事項 | 実務上の考え方 |
|---|---|
| リース注記を独立させるか | 原則として独立の注記項目とする |
| 他注記との重複 | 固定資産、金融商品、重要な会計上の見積り、会計方針変更注記と重複する情報は参照関係を整理する |
| 注記の粒度 | 開示目的に照らし、財務諸表利用者がリースの影響を評価できる粒度にする |
| 重要性 | 重要性に乏しい事項は記載省略可能だが、省略判断の根拠を内部資料に残す |
| 定量・定性の関係 | 金額表だけでなく、リース活動の性質、将来の変動要因、重要な判断を補足する |
リースには、変動リース料、解約・延長オプション、残価保証など、多様な要素が含まれます。そのため、標準的な開示要求だけでは利用者のニーズを満たしきれない可能性があり、開示目的アプローチが採用されている。そう理解しておくと、注記設計の軸がぶれにくくなります。
借手の注記で実務上確認すべき事項
会計方針に関する情報
適用指針第33号第97項は、「会計方針に関する情報」について、リースに関して企業が行った会計処理を理解できるよう、一定の会計処理を選択した場合には、その旨および内容を注記するとしています。
具体的に挙げられているのは、リース部分と非リース部分を分けずに一体として処理する選択、指数またはレートに応じて決まる変動リース料に関する例外的取扱い、借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択などです。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
| 会計方針項目 | 注記・監査上の確認事項 |
|---|---|
| リース部分と非リース部分の扱い | 保守料、共益費、管理費、サービス部分を分離するか、一体処理するか |
| 変動リース料の取扱い | 指数・レート連動部分をどのように測定するか |
| 借地権の権利金等 | 使用権資産に含めるか、既存の処理との関係をどう整理するか |
| 短期リース・少額リース | 方針としてどの範囲で簡便処理を適用するか |
| 割引率 | 貸手の計算利子率を知り得ない場合の追加借入利子率の設定方針 |
| リース期間 | 延長・解約オプションの判断方針 |
| 表示方針 | 使用権資産を原資産科目に含めるか、使用権資産として区分するか |
会計方針注記で避けたいのは、「基準に従って処理しています」という抽象的な記載にとどまってしまうことです。
財務諸表利用者や監査人が知りたいのは、会社がどのようなリース活動を行い、どの選択肢を採用し、その選択が数値にどのような影響を与えているか。ここに尽きます。
リース特有の取引に関する情報
適用指針第33号第98項から第101項では、借手のリース特有の取引に関する情報が示されています。リースが企業の財政状態または経営成績に与える影響を理解できるよう、使用権資産の帳簿価額、変動リース料に係るリース負債、借地権の権利金等、セール・アンド・リースバック、サブリース等に関する情報を注記するという構成です。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
| 注記領域 | 実務上の検討 |
|---|---|
| 使用権資産の帳簿価額 | 原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとに把握できるか |
| 変動リース料 | 指数・レート連動、売上歩合、使用量連動を区分できるか |
| 借地権の権利金等 | 償却していない権利金等がどの科目に含まれるか |
| SLB取引 | 売却損益とリースバックの処理、主要条件を説明できるか |
| サブリース | 使用権資産のサブリース収益、中間的な貸手の損益、転リース取引を把握しているか |
| 契約変更 | 増床、減床、期間延長、賃料改定、解約に伴う再測定を追跡できるか |
| 特殊な契約 | 建設協力金、保証金、店舗賃貸借、複合サービス契約を整理しているか |
サブリース、セール・アンド・リースバック、建設協力金を含む契約では、リース注記だけで完結しない場合があります。収益認識、金融商品、固定資産、資産除去債務、関連当事者、セグメント情報との整合性も確認が必要です。
たとえば、サブリース取引がある場合の収益、ヘッドリースに対してリスクを負わない中間的な貸手の損益、転リース取引に係るリース債権・リース投資資産・リース負債の注記など、リース特有の取引は注記の各所へ波及していきます。
当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報
適用指針第33号第102項は、借手について、リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額、使用権資産の増加額、原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額を注記するとしています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
| 金額情報 | 実務上のポイント |
|---|---|
| リースに係るキャッシュ・アウトフロー合計額 | リース負債からの支出と、リース負債に計上されないリースに係る支出を集計できるか |
| 使用権資産の増加額 | 新規契約、契約変更、再測定、増床等による増加を区分できるか |
| 使用権資産の減価償却費 | 建物、土地、車両、機械、IT設備等、原資産科目ごとの金額を把握できるか |
| リース負債の期日別情報 | 流動・固定区分、将来支払予定、金融商品注記との整合を確認する |
| 短期・少額リース | 簡便処理対象の費用処理額を管理しているか |
| 変動リース料 | リース負債に含まれるものと含まれないものを区分しているか |
リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額は、リース負債からのキャッシュ・アウトフローと、リース負債に計上されていないリースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額です。翌期以降の金額予測に資する情報である、という点をおさえておきたいところです。
ここでの実務上の落とし穴は、貸借対照表のリース負債残高だけを管理していて、キャッシュ・アウトフロー情報を別途集計できない状態に陥ることです。
注記に必要な情報は、仕訳データだけから得られるものではありません。契約条件、支払スケジュール、簡便処理対象リース、変動リース料、契約変更履歴から取得されるものです。
貸手の注記で実務上確認すべき事項
貸手側の注記は、借手側よりも会社による差が大きくなります。製造業・販売業が販売型リースを行う場合、不動産賃貸業、リース会社、サブリース事業者、グループ内転リースを行う会社とでは、財務諸表利用者が知りたい情報が異なるためです。
企業会計基準第34号では、貸手について、リース債権およびリース投資資産を貸借対照表に区分表示するか、含まれる科目および金額を注記することが定められています。あわせて、ファイナンス・リースに係る販売損益、リース債権・リース投資資産に対する受取利息相当額、オペレーティング・リースに係る収益についても、損益計算書に区分表示するか、含まれる科目および金額を注記することとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
| 貸手の論点 | 注記・監査上の確認事項 |
|---|---|
| リース債権 | 科目、金額、流動・固定区分、回収予定額 |
| リース投資資産 | リース料債権部分、見積残存価額部分、受取利息相当額 |
| 販売損益 | 売上高・売上原価・純額表示、収益認識との関係 |
| 受取利息相当額 | 利息法による配分、元本回収との区分 |
| オペレーティング・リース収益 | 賃貸収益、変動使用料、将来受取予定額 |
| 見積残存価額 | 残価保証、原資産返却時の処理、評価根拠 |
| サブリース | ヘッドリースとサブリースの分類、連結上の消去 |
| 不動産リース | 賃貸等不動産、減損、時価注記、収益認識との関係 |
適用指針第33号第106項は、ファイナンス・リースの貸手について、リース債権・リース投資資産の残高に重要な変動がある場合の内容、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額および5年超の回収予定額を注記することを定めています。また第109項は、オペレーティング・リースの貸手について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの受取予定額および5年超の受取予定額を注記することを定めています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
貸手については、リース債権・リース投資資産が含まれる科目および金額、ファイナンス・リースに係る販売損益、受取利息相当額、オペレーティング・リースに係る収益などを、区分表示または注記する必要がある。この整理を出発点にすると、実務の見通しが立てやすくなります。
表示と注記を分けて考える
リース注記の実務では、「表示するのか、注記するのか」を混同しがちです。
表示と注記は代替関係になる場合がありますが、だからといって財務諸表利用者に提供すべき情報が不要になるわけではありません。
企業会計基準第34号では、借手の使用権資産について、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の科目に含める方法、または対応する原資産の表示区分において使用権資産として区分する方法が示されています。リース負債については、貸借対照表に区分表示するか、リース負債が含まれる科目および金額を注記します。リース負債に係る利息費用についても同様に、損益計算書に区分表示するか、含まれる科目および金額を注記することになります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
| 項目 | 表示・注記の整理 |
|---|---|
| 使用権資産 | 原資産科目に含めるか、使用権資産として区分表示する |
| リース負債 | 区分表示するか、含まれる科目・金額を注記する |
| リース負債の利息費用 | 区分表示するか、含まれる科目・金額を注記する |
| リース債権・リース投資資産 | 区分表示するか、含まれる科目・金額を注記する |
| 貸手の販売損益・受取利息・リース収益 | 区分表示するか、含まれる科目・金額を注記する |
表示方針は、財務諸表の見え方に直接影響します。
特に使用権資産を原資産科目に含める場合には、固定資産増加、減価償却費、減損、セグメント資産、設備投資額との関係をどう説明するかを、あらかじめ整理しておく必要があります。
重要な判断をどう注記・監査対応に接続するか
リース会計では、金額計算よりも、その前提となる判断が監査上の争点になります。
注記で明示されるかどうかにかかわらず、会社内部では次の判断を文書化しておく必要があります。
| 判断領域 | 確認すべき事実 | 監査上の主な争点 |
|---|---|---|
| リース識別 | 特定された資産、代替権、使用指図権、経済的利益 | サービス契約に含まれるリースの網羅性 |
| リース期間 | 解約不能期間、延長・解約オプション、経済的インセンティブ | 合理的に確実な期間判断の根拠 |
| 割引率 | 貸手の計算利子率、追加借入利子率、通貨、期間 | 利率テーブルの妥当性、期間・信用リスクとの整合 |
| リース料 | 固定リース料、実質固定リース料、指数・レート連動、変動リース料 | リース負債に含める範囲 |
| 非リース部分 | 保守、共益費、管理費、サービス部分 | 対価配分、一体処理方針の妥当性 |
| 契約変更 | 増床、減床、賃料改定、期間変更、解約 | 独立したリースか、再測定か |
| サブリース | ヘッドリース、サブリース、転リース | 借手・貸手両面、連結消去 |
| SLB | 資産譲渡、リースバック、金融取引該当性 | 売却損益認識、取引の実質 |
| 資産除去債務 | 原状回復義務、除去費用、履行時期 | 使用権資産、リース期間、AROの整合 |
| 減損 | 使用権資産を含む資産グループ、将来CF | 店舗・拠点の収益性、撤退計画との整合 |
会計上の見積りについては、見積額と実績が乖離したこと自体よりも、期末時点で当然考慮すべき情報を考慮し、最善の見積りとして説明できるかどうかが問われます。
見積時点で当然考慮すべき事項を考慮していなかった場合や、楽観的な見積りであった場合には、誤謬や内部統制上の改善点につながり得る。この点は意識しておきたいところです。
リース期間と割引率は、とりわけ見積り・判断の説明が求められる領域です。
たとえば店舗リースで延長オプションを含めるかどうかは、過去の更新実績、出店戦略、撤退計画、改装投資、原状回復義務、減損のグルーピングと整合していなければなりません。ここを会計担当者だけで判断してしまうと、事業計画・店舗戦略・減損検討との整合が崩れてしまいます。
ASBJの企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」は、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的としています。
リース期間、割引率、減損、資産除去債務が翌期に重要な影響を及ぼすリスクを有する場合には、リース注記だけでなく、重要な会計上の見積りの注記との関係も検討することになります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第31号 会計上の見積りの開示に関する会計基準
リース注記のために整備すべきデータ
リース注記を監査に耐える形で作成するには、会計システムの残高だけでは足りません。
次のようなデータが、契約単位または資産単位で追跡できる状態にしておく必要があります。
| データ分類 | 必要項目 |
|---|---|
| 契約基本情報 | 契約番号、会社、拠点、部門、契約相手先、契約開始日、リース開始日、満了日 |
| 原資産情報 | 建物、土地、車両、機械、IT設備、倉庫、店舗、面積、台数、所在地 |
| 期間情報 | 解約不能期間、延長オプション、解約オプション、合理的に確実な期間 |
| 支払情報 | 固定リース料、実質固定リース料、変動リース料、支払頻度、フリーレント |
| 割引率情報 | 適用利率、通貨、期間、設定日、追加借入利子率の根拠 |
| 会計処理情報 | 使用権資産、リース負債、減価償却費、利息費用、再測定額 |
| 注記情報 | キャッシュ・アウトフロー、使用権資産増加額、原資産区分別帳簿価額、減価償却費 |
| 特殊取引情報 | SLB、サブリース、建設協力金、借地権、残価保証、購入オプション |
| 変更履歴 | 増床、減床、解約、更新、賃料改定、期間変更、契約条件変更日 |
| 周辺論点 | 資産除去債務、減損、税効果、関連当事者、セグメント |
注記作成の観点からは、「契約一覧」「リース判定」「測定計算」「会計仕訳」「注記集計」が分断されている状態が、最も危険です。
監査人からサンプルを指定されたときに、注記金額から契約書まで追跡できる状態。反対に、契約書から注記金額まで追跡できる状態。この双方向の追跡可能性を整備しておく必要があります。
監査対応で問われるアサーション
リース会計の監査では、通常、次のアサーションが問題になります。
| アサーション | リース会計での具体的なリスク |
|---|---|
| 網羅性 | リース契約、サービス契約に含まれるリース、子会社契約が漏れていないか |
| 実在性 | 台帳上のリースが実際に存在し、使用されているか |
| 権利義務 | 使用権資産とリース負債が会社に帰属しているか |
| 正確性 | リース料、期間、割引率、再測定計算が正確か |
| 期間帰属 | リース開始日、契約変更日、解約日、費用配分が適切か |
| 分類 | 借手・貸手、ファイナンス・オペレーティング、流動・固定が適切か |
| 評価 | 使用権資産、リース負債、減損、資産除去債務が適切に測定されているか |
| 表示 | 貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書の表示が適切か |
| 開示 | 注記が開示目的に照らして十分か |
| 内部統制 | 新規契約、変更、解約、台帳更新、注記集計の統制が有効か |
監査対応では、単にリース台帳を提出するだけでは足りません。次のような監査資料を整備しておく必要があります。
| 監査資料 | 目的 |
|---|---|
| 契約棚卸リスト | 網羅性の説明 |
| 支払データと契約リストの突合表 | 支払実績からの漏れ検証 |
| リース判定メモ | リース識別・非リース部分の判断根拠 |
| 主要契約サマリー | 重要契約の条件、リース期間、支払条件を説明 |
| リース期間判断メモ | 延長・解約オプションの判断根拠 |
| 割引率設定メモ | 追加借入利子率、期間、通貨、信用スプレッドの根拠 |
| リース測定ワークシート | 使用権資産・リース負債の計算根拠 |
| 契約変更管理表 | 増床、減床、賃料改定、解約、再測定の履歴 |
| 注記集計表 | 注記金額と台帳・仕訳の突合 |
| 会計方針メモ | 簡便処理、非リース部分、一体処理、表示方針 |
| 内部統制資料 | 承認フロー、RCM、IT統制、データ変更履歴 |
| 経営者確認資料 | 重要な判断・見積りに関する経営者の確認 |
監査人が確認したいのは、「会社がどの契約をリースと判断したか」だけではありません。
「リースではないと判断した契約」や「重要性に乏しいとして詳細測定しなかった契約」についても、なぜその判断が妥当なのかを確認します。
内部統制とリース注記
リース注記は、年度末の開示担当者だけで作成できるものではありません。
新規契約、契約変更、支払、台帳更新、会計処理、注記集計、レビューという一連の流れに、内部統制を組み込む必要があります。
| プロセス | 必要な統制 |
|---|---|
| 新規契約 | 法務・購買・事業部から経理へ契約情報が通知される |
| リース判定 | 一定金額以上または特定類型の契約は経理・会計専門部署が判定する |
| 台帳登録 | 契約条件、支払スケジュール、オプション、原資産情報を登録する |
| 割引率設定 | 利率テーブルの作成・承認・適用履歴を残す |
| 月次処理 | リース料支払、利息費用、減価償却費、リース負債残高を照合する |
| 契約変更 | 増床、減床、賃料改定、更新、解約が経理に漏れなく通知される |
| 四半期決算 | 再測定、減損、資産除去債務、税効果の検討を行う |
| 年度決算 | 注記集計表とリース台帳・会計残高を照合する |
| 開示レビュー | 会計方針、注記、記述情報、KAM候補論点との整合を確認する |
| IT統制 | リース管理システムのアクセス権限、変更履歴、計算ロジックを管理する |
金融庁は、2023年4月7日に、企業会計審議会が「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」および「実施基準」の改訂に関する意見書を取りまとめた旨を公表しています。
リース管理システムの導入、契約台帳の再構築、手作業補正がある場合には、決算・財務報告プロセスおよびIT統制との関係を整理しておく必要があります。
出典:金融庁|「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について
KAMになり得るリース論点
リース会計がKAMになるかどうかは、会社の規模、リース残高の重要性、契約本数、判断の複雑性、見積りの不確実性、監査上の対応の程度によります。
リース会計だから当然にKAMになる、というわけではありません。ただし、次のような場合には、監査上の主要な検討事項として検討対象になり得ます。
| KAM候補となり得る状況 | 理由 |
|---|---|
| リース負債・使用権資産が財務諸表に重要な影響を与える | 金額的重要性が高い |
| 店舗・倉庫・不動産リースが多数存在する | 契約棚卸・網羅性リスクが高い |
| 延長・解約オプション判断が経営計画に依存する | 見積り・判断の不確実性が高い |
| 割引率設定が複雑である | 測定に重要な仮定が含まれる |
| サブリース、SLB、建設協力金等がある | 取引構造が複雑である |
| 新基準移行初年度である | データ移行、期首影響、経過措置に監査上の重点が置かれる |
| リース管理システムを新規導入した | IT統制・データ移行のリスクがある |
| 使用権資産が減損検討に大きく影響する | 減損KAMと結びつく可能性がある |
| 店舗閉鎖・拠点再編・撤退計画がある | リース期間、減損、引当金、資産除去債務が連動する |
| 注記データの集計が手作業に依存する | 開示の正確性・網羅性リスクがある |
KAMは、2018年7月に公表された「監査基準の改訂に関する意見書」により日本の監査実務に導入されました。2021年3月期からは、一部を除く金融商品取引法監査が適用される会社について、監査報告書への記載が求められています。金融庁は、KAMの記載には監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高める意義があると説明しています。
出典:金融庁|「監査上の主要な検討事項(KAM)」の実務の定着と浸透に向けた取組みについて
また、2018年の監査基準改訂に関する意見書では、KAMの記載により監査のプロセスに関する情報が提供され、財務諸表利用者の監査や財務諸表に対する理解、経営者との対話、監査人と監査役等・経営者との議論の充実が期待されるとされています。
出典:金融庁|監査基準の改訂に関する意見書
JICPAもKAMに関連する国内外の動向や参考情報を継続的に整理しており、監査基準報告書701に関連する情報を公表しています。
出典:日本公認会計士協会|監査報告に関する動向~監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters)~
実務上、会社側が意識すべきなのは、「KAMに書かれるかどうか」そのものではありません。
KAM候補となり得るリース論点について、監査人がどのようなリスクを識別し、会社がどのような資料で説明し、財務諸表注記がその判断を適切に反映しているか。問われるのはここです。
KAMを意識した会社側の準備
リース論点がKAM候補となる可能性がある場合、会社側は次の準備を行っておくべきです。
| 準備事項 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 重要論点メモ | リース残高、契約類型、判断領域、見積り仮定を整理する |
| 監査人協議資料 | 監査人が重点を置く領域を早期に確認する |
| 経営者説明資料 | リース期間、割引率、店舗戦略、契約変更を経営判断として説明する |
| 監査役等向け資料 | 監査上の争点、内部統制、開示影響を共有する |
| 注記ドラフト | KAM候補論点と財務諸表注記の整合を確認する |
| 内部統制評価 | 契約棚卸、台帳更新、システム、注記集計の統制を確認する |
| 代替案整理 | 表示方法、注記粒度、重要性判断、開示省略の根拠を整理する |
| 後続対応 | KAM記載後の投資家・金融機関・社内説明を想定する |
KAMは監査人が記載するものです。とはいえ、KAMの内容と財務諸表注記・経営者説明が不整合であれば、利用者に誤解を与える可能性があります。
会社側は、監査報告書の文案そのものを作る立場ではありません。しかし、KAM候補論点について、会社の判断、根拠資料、注記内容、記述情報が整合しているかを確認する責任があります。
リース注記と他の注記・開示との整合性
リース注記は、他の注記や有価証券報告書の記述情報と連動します。
| 関連領域 | 整合性確認 |
|---|---|
| 重要な会計方針 | 短期・少額リース、非リース部分、割引率、借地権等の方針 |
| 会計方針変更 | 新基準適用初年度の移行方法、期首影響、経過措置 |
| 重要な会計上の見積り | リース期間、割引率、減損、資産除去債務 |
| 固定資産注記 | 使用権資産、減価償却、減損、設備投資 |
| 資産除去債務注記 | 原状回復義務、履行時期、使用期間 |
| 金融商品注記 | リース負債の時価等との関係 |
| 税効果注記 | 使用権資産・リース負債・減損・AROに係る一時差異 |
| セグメント情報 | 店舗・拠点・事業別資産、減価償却費、利益影響 |
| キャッシュ・フロー計算書 | リース負債返済、利息支払、設備投資との関係 |
| 事業等のリスク | 店舗撤退、賃料上昇、物流拠点、設備更新 |
| MD&A | 財政状態、経営成績、キャッシュ・フロー分析 |
| 適時開示 | 減損、店舗閉鎖、固定資産譲渡、再編、業績予想修正 |
会社法計算においても、会社の財務状況・経営状態の情報提供は、会社債権者および株主に対する重要な機能を有します。
会社法計算の目的には、適正な財務情報の提供と剰余金分配規制の側面があります。それを踏まえると、リース負債の増加は単なる表示変更ではなく、財務構造の見え方そのものに影響する。この点を認識しておく必要があります。
適用初年度の注記で注意すべき点
適用初年度は、通常の継続注記に加えて、会計方針変更、移行アプローチ、経過措置、比較情報の取扱いが問題になります。
修正遡及アプローチを適用する場合、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従った組替えを行わない取扱いが定められています。また、適用初年度の比較情報には、新基準で求められる借手・貸手の注記事項を記載せず、旧リース基準および旧リース適用指針で定める事項を注記します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
修正遡及アプローチを適用する場合の比較情報、旧リース基準等に基づく注記、適用初年度の注記対象。この三点の関係を、あらかじめ整理しておくと迷いが減ります。
適用初年度の注記では、次のような事項を確認しておく必要があります。
| 項目 | 確認事項 |
|---|---|
| 適用開始日 | どの会計年度から適用したか |
| 移行アプローチ | 完全遡及か修正遡及か |
| 期首影響 | 利益剰余金、使用権資産、リース負債への影響 |
| 経過措置 | どの経過措置をどの範囲で適用したか |
| 比較情報 | 組替えの有無、旧基準注記との関係 |
| 影響額 | BS、PL、CF、主要指標への影響 |
| 内部統制 | 初年度のデータ移行、台帳整備、システム導入 |
| 監査人協議 | 判断方針と重要契約サンプルの合意状況 |
会計方針変更に関する注記では、変更内容だけでなく、なぜその移行方法を選択し、どのように影響額を算定したかが監査上確認されます。
会計方針変更に伴う影響額、累積的影響額、適用方法、財務諸表項目への影響。ここを整理しておくことが、実務上の出発点になります。
連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表
連結財務諸表を作成している会社では、個別財務諸表の注記について簡素化が認められています。
適用指針第33号第110項は、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表では、リース特有の取引に関する情報および当期・翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記しないことができるとしています。また第111項は、個別財務諸表における会計方針に関する情報について、連結財務諸表における記載を参照できるとしています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
もっとも、この簡素化は、個別財務諸表で何も整理しなくてよいという意味ではありません。
個別財務諸表の作成、会社法計算、税効果、分配可能額、子会社管理、親会社への報告、監査対応のためには、個社別のリース台帳と会計処理がやはり必要になります。注記上の簡素化と、決算プロセス上の管理省略とを混同しないこと。ここが重要です。
業種別に見た注記・監査対応の注意点
小売業・外食業・サービス業
多店舗展開企業では、店舗賃貸借契約が大量に存在し、更新、撤退、改装、増床・減床が頻繁に発生します。
注記上は、使用権資産の増加額、減価償却費、リース負債、キャッシュ・アウトフローが重要になります。監査上は、契約棚卸の網羅性、延長オプションの判断、店舗減損との整合が争点化しやすい領域です。
小売業は、人口減少、店舗形態の変化、コンパクト化といった事業環境の変化を受け、店舗戦略・収益性・地域対応が重要になっています。店舗リースの会計判断では、こうした事業計画との整合が問われます。
不動産業・サブリース事業
不動産業では、借手・貸手の両面が同時に存在することがあります。ヘッドリース、サブリース、転貸、建設協力金、敷金、保証金、賃貸等不動産、減損、時価注記との関係を整理する必要があります。
貸手注記では、オペレーティング・リースの受取予定額や変動使用料収益、ファイナンス・リースの回収予定額が重要になります。
不動産業には、開発、分譲、賃貸、流通、運営管理があり、賃貸対象も住宅、オフィス、商業施設、ホテル、物流施設など多岐にわたります。運営管理を外部委託するケースもあるため、契約情報が分散しやすい点にも留意が必要です。
製造業・物流業・IT関連契約
製造設備、物流倉庫、専用ライン、専用サーバー、データセンター、車両、フォークリフトなどは、契約名称がサービス契約であっても、特定された資産の使用を支配する権利が含まれている可能性があります。
注記に必要なデータが契約管理システムではなく、購買システムや支払データにしか存在しない場合もあります。監査上は、リース識別の網羅性が重要です。
リース注記と減損・資産除去債務・税効果
リース注記を作る際には、使用権資産とリース負債だけを見ていては足りません。次の周辺論点との接続を確認します。
| 周辺論点 | 接続ポイント |
|---|---|
| 減損 | 使用権資産を含む資産グループ、店舗・拠点の将来CF、撤退計画 |
| 資産除去債務 | 原状回復義務、除去費用、使用期間、割引率 |
| 税効果 | 使用権資産・リース負債・減損・AROに係る一時差異 |
| 引当金 | 解約違約金、撤退損失、原状回復費用との切り分け |
| 金融商品 | リース負債の時価等、流動性リスク情報 |
| セグメント | 店舗・拠点・事業別の資産、減価償却費、損益 |
固定資産の減損について、日本基準では固定資産全体を包括的に定めた会計基準はありません。実務上の基礎となるのは、固定資産の減損に係る会計基準およびASBJの適用指針です。使用権資産を含む資産グループについても、減損兆候、認識判定、測定の検討が必要になります。
資産除去債務については、原状回復義務、除去費用、履行時期、見積り変更が、リース期間の判断と密接に関係します。リース期間を短く見積もる一方で、資産除去債務の履行時期を長く見積もる。こうした見積り間の不整合があると、監査上の説明が難しくなります。
税効果会計は、企業会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産または負債の額の相違を調整し、法人税等と税引前利益を合理的に対応させる手続です。使用権資産・リース負債の税務上の取扱いが会計と異なる場合には、一時差異、回収可能性、注記への影響を確認します。
開示担当者が確認すべきポイント
開示担当者は、会計処理の結論を受け取って注記を整えるだけでは不十分です。
次の観点から、注記と有価証券報告書全体の整合性を確認します。
| 確認項目 | 実務上の確認 |
|---|---|
| 会計方針 | リース注記、重要な会計方針、会計方針変更注記が整合しているか |
| 金額整合 | 注記金額とBS・PL・CF・固定資産明細が一致しているか |
| 重要性 | 記載省略した注記事項について内部根拠があるか |
| 記述情報 | 事業等のリスク、MD&A、設備投資、店舗戦略と整合しているか |
| KAM | 監査報告書のKAM候補論点と注記の説明が矛盾していないか |
| 適時開示 | 減損、撤退、再編、業績予想修正との関係を確認したか |
| XBRL | 表示科目、注記タグ、拡張要素の整合を確認したか |
| 比較情報 | 移行初年度の比較情報・旧基準注記との関係を整理したか |
有価証券報告書等の開示制度では、継続開示、監査証明、内部統制、訂正、適時開示、虚偽記載責任が相互に関係しています。
リース注記の誤りが財務諸表本表や注記の重要な虚偽表示につながる場合には、訂正や内部統制評価への波及もあり得ます。
経営者・監査役等に説明すべきこと
リース会計の注記・監査対応は、経理部門だけの論点ではありません。
経営者や監査役等に対しては、次のように説明する必要があります。
| 説明対象 | 伝えるべき内容 |
|---|---|
| 経営者 | リース負債増加、指標影響、店舗・拠点戦略、契約管理体制 |
| CFO・経理責任者 | 会計方針、見積り、監査人協議、注記設計 |
| 事業部門 | 延長・解約判断、契約変更通知、撤退計画との整合 |
| 法務・購買 | 契約締結時のリース判定、契約変更情報の連携 |
| 監査役等 | KAM候補、内部統制、監査上の争点、経営者判断 |
| 開示担当 | 有報注記、記述情報、XBRL、適時開示との整合 |
| 税務担当 | 一時差異、申告調整、税効果、グループ通算への影響 |
| IT部門 | リース管理システム、アクセス権限、変更履歴、データ移行 |
経営者説明で重要なのは、リース会計を「負債を増やす会計基準」として捉えないことです。
契約に基づく使用権と支払義務を財務諸表に反映し、利用者が企業の将来負担を評価できるようにする基準である。この位置づけを共有できるかどうかが、その後の議論の質を左右します。
実務上の落とし穴
リース注記・監査対応で起こりやすい問題は、次のとおりです。
| 落とし穴 | 結果 |
|---|---|
| 契約棚卸は済んだが注記項目を設計していない | 注記に必要な情報を後から契約書に戻って拾うことになる |
| 会計システム残高だけで注記を作る | キャッシュ・アウトフロー、増加額、変動リース料が不足する |
| 表示と注記の代替関係を誤る | 区分表示しない場合に必要な注記が漏れる |
| 簡便処理の省略判断を記録していない | 監査人に重要性判断を説明できない |
| リース期間判断を事業部ヒアリングだけで済ませる | 経営計画・減損・資産除去債務との整合が崩れる |
| 割引率を一律で設定する | 通貨、期間、信用リスクの違いを説明できない |
| 契約変更の通知ルートがない | 再測定漏れ、注記金額の誤りにつながる |
| サブリースを借手処理だけで見ている | 貸手注記、連結消去が漏れる |
| SLBを形式的に売却処理する | 金融取引該当性や収益認識との関係で争点化する |
| 使用権資産と減損を別管理する | 店舗・拠点の減損検討に漏れが生じる |
| KAM候補論点と注記の説明が不整合 | 監査報告書と財務諸表注記の読み手に違和感を与える |
| 注記作成が属人的Excelに依存する | 翌期以降の継続運用・内部統制に不安が残る |
会計不正の観点でも、財務諸表利用者を欺くために必要な開示を行わないことは、不適切な開示の一類型として捉えられます。
財務諸表本表だけでなく、注記情報もまた財務報告の重要な一部である。この認識を、社内で共有しておきたいところです。
相談前に整理しておくべき資料
リース注記・監査対応について外部専門家に相談する場合、次の資料を整理しておくと、論点の特定と判断が進みやすくなります。
| 資料 | 目的 |
|---|---|
| 契約棚卸リスト | リース契約の網羅性確認 |
| 主要契約書 | 重要契約の条件確認 |
| リース判定メモ | リース識別・非リース部分の判断確認 |
| リース台帳 | 測定・注記の基礎データ確認 |
| 会計方針メモ | 簡便処理、割引率、リース期間、表示方針確認 |
| 注記集計表 | 注記金額と会計残高の整合確認 |
| 契約変更一覧 | 再測定・解約・増減の把握 |
| システム仕様書 | 計算ロジック、データ移行、IT統制確認 |
| 内部統制資料 | 業務フロー、RCM、承認証跡確認 |
| 監査人コメント | 監査上の争点確認 |
| KAM候補整理 | 監査報告・注記・経営者説明の整合確認 |
| 周辺論点資料 | 減損、ARO、税効果、適時開示との連携確認 |
専門家に相談すべき場面
次のような場合には、社内だけで注記・監査対応を完結させるよりも、早期に専門家を交えて論点整理を行うことが望まれます。
- リース契約数が多く、注記集計をExcelで管理している
- 店舗、倉庫、物流、IT、車両、設備など複数部門に契約情報が分散している
- リース期間、延長・解約オプション、割引率の判断が監査人と未整理である
- サブリース、セール・アンド・リースバック、建設協力金、借地権がある
- 貸手側リース注記が必要だが、リース債権・リース投資資産の内訳管理が不十分である
- 適用初年度の比較情報、経過措置、会計方針変更注記を整理したい
- 使用権資産が減損、資産除去債務、税効果に波及している
- KAM候補として監査人からリース論点が挙がっている
- 有価証券報告書の注記、MD&A、事業等のリスク、監査報告書の整合を確認したい
- リース管理システム導入後のデータ移行・内部統制に不安がある
犬飼公認会計士・税理士事務所では、新リース会計基準に関する注記設計、監査対応資料、会計方針メモ、リース台帳レビュー、KAM候補論点整理、減損・資産除去債務・税効果との接続、開示担当者向けレビューまで、上場企業・IPO準備企業・大規模グループの実務に即した支援を行っています。
リース会計の注記は、計算結果を最後に整える作業ではありません。契約管理、会計判断、見積り、内部統制、開示、監査報告をつなぐ領域です。
自社の注記方針や監査対応資料が、後から説明できる水準に整っているか。確認したいとお考えの場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。
主な出典・参照情報
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第31号 会計上の見積りの開示に関する会計基準
出典:金融庁|監査基準の改訂に関する意見書
出典:金融庁|「監査上の主要な検討事項(KAM)」の実務の定着と浸透に向けた取組みについて
出典:日本公認会計士協会|監査報告に関する動向~監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters)~
出典:金融庁|「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について
振り返り
| 論点 | 実務上の要点 |
|---|---|
| リース注記の目的 | 財務諸表利用者がリースの財政状態・経営成績・キャッシュ・フローへの影響を評価できる情報を提供する |
| 注記の基本構造 | 借手は会計方針、リース特有の取引、当期・翌期以降の金額情報を整理する |
| 貸手注記 | リース債権、リース投資資産、販売損益、受取利息、将来回収予定額を整理する |
| 表示と注記 | 区分表示しない場合には、含まれる科目・金額の注記が必要になる場合がある |
| 重要性判断 | 重要性に乏しい注記事項は省略可能だが、省略根拠を内部資料に残す |
| 会計方針 | 非リース部分、一体処理、変動リース料、借地権、短期・少額リースを整理する |
| 重要な判断 | リース識別、リース期間、割引率、契約変更、サブリース、SLBが監査上の争点になりやすい |
| 監査証拠 | 契約書、台帳、判定メモ、割引率メモ、注記集計表、内部統制資料を整備する |
| 内部統制 | 新規契約、契約変更、台帳更新、注記集計、IT統制を決算プロセスに組み込む |
| KAM可能性 | 金額的重要性、見積りの不確実性、システム移行、減損との連動がある場合に検討対象となり得る |
| 適用初年度 | 移行アプローチ、経過措置、比較情報、会計方針変更注記を整理する |
| 個別財務諸表 | 連結作成会社では一部注記簡素化が認められるが、個社管理まで省略できるわけではない |
| 業種別注意点 | 小売業は店舗リース、不動産業は貸手・借手両面、製造・物流・ITはサービス契約中のリース識別が重要 |
| 周辺論点 | 減損、資産除去債務、税効果、金融商品、セグメント情報との整合を確認する |
| 開示担当の役割 | 注記、MD&A、事業等のリスク、KAM、適時開示、XBRLとの整合を確認する |
| 経営者説明 | リース負債増加だけでなく、契約管理・指標影響・将来支払義務・監査対応として説明する |