貸手のリース分類と会計処理|ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを説明可能に判断する実務

目次

借手のオンバランス化だけで、リース会計を理解したことにはならない

新リース会計基準への対応では、どうしても借手側の使用権資産・リース負債に関心が集まりがちです。

実際、借手については、従来のオペレーティング・リースを含め、原則としてすべてのリースを貸借対照表に反映する単一の会計モデルへ移行します。財務指標、契約管理、システム対応への影響が大きい領域であることは間違いありません。

しかし、貸手側の会計処理は、借手と同じように単一モデルへ置き換わったわけではありません。貸手は引き続き、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、その分類に応じて資産認識、収益認識、利息配分、残価処理、注記を行います。

企業会計基準第34号は、貸手がリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、ファイナンス・リースについてはさらに所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに分類することを定めています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準

貸手の会計処理は、単に「リース料を収益にする」という処理ではありません。リース対象資産の経済的便益とリスクを誰が実質的に負担しているのか。貸手は販売者として取引しているのか、金融提供者として取引しているのか、それとも資産保有者として賃貸しているのか。そこを整理する必要があります。

本稿では、貸手のリース分類と会計処理を、上場企業・IPO準備企業・大規模グループの決算・監査・開示対応に耐える形で整理します。特に、ファイナンス・リース判定、現在価値基準、経済的耐用年数基準、所有権移転・所有権移転外の区分、販売型リースの処理、オペレーティング・リース収益、注記、税務との接続を中心に扱います。

貸手会計の出発点は「分類が残る」ことにある

新リース基準において、借手は原則としてリースの分類を行わず、使用権資産とリース負債を計上します。一方で、貸手はリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類します。

この非対称性を理解しておかないと、同一契約について借手と貸手で会計処理が異なることを、監査人や経営者に説明しにくくなります。

国税庁の令和7年度法人税関係法令の改正資料でも、新リース会計基準では、借手についてはリース区分を廃止し使用権資産・リース負債を計上する一方、貸手については引き続きオペレーティング・リースとファイナンス・リースを区分し、その区分に応じた処理を行うと整理されています。
出典:国税庁|令和7年度 法人税関係法令の改正の概要

貸手側の判断構造は、次の順に分解すると整理しやすくなります。

判断ステップ確認する内容会計処理への影響
1. リースを含む契約か特定された資産の使用を支配する権利があるかリース基準の適用対象になるか
2. リース部分と非リース部分の区分保守、運用、固定資産税相当額、サービス部分をどう扱うか対価配分、収益認識基準との接続
3. 貸手のリース期間借手期間と同様に決めるか、再リース意思が明らかな期間を含めるか分類判定、収益認識、注記
4. ファイナンス・リースか解約不能性とフルペイアウト性を満たすかリース債権・リース投資資産の計上
5. 所有権移転か所有権移転外か所有権移転、割安購入選択権、特別仕様資産があるかリース債権かリース投資資産か
6. 貸手の事業類型製造・販売を事業とする貸手か、金融・賃貸を事業とする貸手か、事業外か売上高・売上原価・売却損益の表示
7. 開示・監査対応収益、利息、リース債権、リース投資資産、回収予定額を説明できるか注記、KAM、監査資料

「貸手の処理は従来と大きく変わらない」という理解は、入口としては間違いではありません。

ただ実務上は、収益認識基準との整合、リース料受取時に売上高・売上原価を計上する方法の廃止、オペレーティング・リース収益の定額計上、注記の充実、税務上の延払基準の特例廃止など、貸手側にも無視できない変更があります。貸手の会計処理については、ファイナンス・リース処理の一部見直し、オペレーティング・リース処理の明確化、表示・注記の整理が、重要な実務論点になると考えています。

リース部分と非リース部分を分ける|貸手は収益認識基準との接続が重要

貸手は、契約におけるリースを構成する部分について、リース基準によりファイナンス・リースまたはオペレーティング・リースの会計処理を行います。一方、リースを構成しない部分については、該当する他の会計基準に従って処理します。

契約対価をリース部分と非リース部分に配分する際は、それぞれの独立販売価格の比率に基づいて配分します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

この論点は、不動産、機器、車両、情報システム、医療機器、物流設備などで特に重要になります。

契約書上は「賃料」「利用料」「月額サービス料」とされていても、その中に保守、運用、警備、清掃、共益費、固定資産税相当額、保険料、ソフトウェア利用、ヘルプデスク、データ処理などが含まれていることがあるためです。

貸手側では、次のような整理が必要です。

契約に含まれる要素リース部分か非リース部分かの考え方
機械装置・車両・不動産等の使用権原則としてリース部分
保守・点検・運用代行通常はサービス部分として非リース部分
固定資産税・保険料相当額維持管理費用相当額として取扱いを検討
共益費・警備・清掃実態に応じてサービス部分を識別
ソフトウェア・ライセンスリース基準の対象外となる場合や収益認識基準との接続を検討
変動使用料貸手のリース料に含まれるものと含まれないものを区分

なお、貸手については、リースを構成しない部分が収益認識基準の適用対象であり、リース部分と関連する非リース部分の収益計上時期・パターンが同じで、かつリース部分がオペレーティング・リースに分類される場合には、一定の要件のもとで、契約ごとにリース部分と関連する非リース部分を合わせて取り扱うことができます。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

実務上の落とし穴は、分類判定を急ぐあまり、リース部分と非リース部分の区分を省略してしまうことです。

リース料総額をそのまま現在価値基準に用いると、本来はサービス対価である部分までリース料に含めてしまい、ファイナンス・リース判定を誤る可能性があります。

貸手のリース期間|借手期間と同一とは限らない

貸手のリース期間は、貸手が選択する方法により決定されます。

企業会計基準第34号では、借手のリース期間と同様に決定する方法と、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、リースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法の、いずれかを選択できるとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準

この選択は、単なる計算上の便法ではありません。貸手のリース期間は、現在価値基準、経済的耐用年数基準、オペレーティング・リース収益の認識期間、再リース料の取扱い、そして注記にまで影響します。

貸手のリース期間の論点実務上の確認資料
再リース意思が明らかか過去の再リース実績、契約条件、借手の利用実態
解約不能期間の範囲契約書、解約条項、規定損害金条項
再リース料の水準名目的再リース料か、市場レートか
原資産の経済的耐用年数固定資産台帳、技術資料、メーカー資料、残価見積り
事業としてのリース管理リース商品設計、販売方針、残価リスク管理

貸手がリース事業を営んでいる場合、再リースは収益モデルの一部となっていることがあります。

一方で、借手が再リースする意思が明らかでないにもかかわらず、収益平準化や分類判定を目的に再リース期間を含めることは、説明可能性を損ないます。

ファイナンス・リース判定|「解約不能」と「フルペイアウト」を分けて確認する

ファイナンス・リースとは、解約不能のリースであり、かつフルペイアウトのリースであるものをいいます。

適用指針第33号では、解約不能のリースとは、契約期間の中途において契約を解除できないリースまたはこれに準ずるリースとされています。またフルペイアウトのリースとは、借手が原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受し、かつ原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担するリースとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

具体的には、次のいずれかに該当する場合、ファイナンス・リースと判定されます。

判定基準内容
現在価値基準貸手のリース料の現在価値が、原資産の現金購入価額のおおむね90%以上
経済的耐用年数基準貸手のリース期間が、原資産の経済的耐用年数のおおむね75%以上
留意点原資産の特性、経済的耐用年数、中古市場の存在などにより、現在価値基準が90%を大きく下回ることが明らかな場合は、経済的耐用年数基準だけで機械的に判断しない
追加留意点リース期間が75%以上でも、借手が原資産に係るほとんどすべてのコストを負担しないことが明らかな場合は、現在価値基準のみで判定する

出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

この判定で重要なのは、「90%」「75%」という数値だけを追わないことです。これらは経済的実質を判断するための具体的基準であり、分類の結論だけを作るための閾値ではありません。

現在価値基準では、貸手のリース料、残価保証、見積残存価額、割引率、原資産の現金購入価額または現金販売価額を、整合的に整理しておく必要があります。

貸手のリース料には、残価保証がある場合には残価保証額を含めます。貸手においては、借手以外の第三者による残価保証額も貸手のリース料に含めます。

現在価値計算では、貸手のリース料の現在価値と見積残存価額の現在価値の合計が、原資産の現金購入価額または借手に対する現金販売価額と等しくなるような利率、すなわち貸手の計算利子率を用います。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

所有権移転ファイナンス・リースか、所有権移転外ファイナンス・リースか

ファイナンス・リースに該当した場合、次に所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに分けます。

所有権移転ファイナンス・リースに該当するのは、契約上、所有権が借手に移転する場合、借手に割安購入選択権が付されその行使が確実に予想される場合、または原資産が借手の用途等に合わせた特別仕様で、返還後に貸手が第三者に再リース・売却することが困難な場合です。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

この区分は、貸借対照表上の資産表示に直結します。

分類貸手の計上資産実務上の意味
所有権移転ファイナンス・リースリース債権原資産の所有権移転を前提とした債権回収取引に近い
所有権移転外ファイナンス・リースリース投資資産リース料債権部分と見積残存価額部分を含む複合的な資産
オペレーティング・リース原資産を引き続き保有通常の賃貸借取引に準じて処理

所有権移転外ファイナンス・リースでは、リース期間終了時に原資産が返還される可能性があるため、見積残存価額が重要になります。

所有権移転外ファイナンス・リースについては、将来のリース料を収受する権利と見積残存価額から構成される複合的な資産として、リース投資資産を計上する。そう押さえておくと、実務での整理がしやすくなります。

販売型リース|貸手が「販売者」なのか「金融提供者」なのかを見誤らない

貸手が製造または販売を事業とする企業であり、その事業の一環としてリースを行う場合、リースは単なる資産賃貸ではありません。販売と金融の複合取引として理解する必要があります。

所有権移転外ファイナンス・リースについて、製造または販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースでは、リース開始日に、貸手のリース料から利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上します。

また、原資産の帳簿価額により売上原価を計上し、原資産を借手の使用に供するための付随費用がある場合は売上原価に含めます。各期に受け取るリース料は、利息相当額とリース投資資産の元本回収に区分し、利息相当額を各期の損益として処理します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

これに対し、製造または販売以外を事業とする貸手が事業の一環でリースを行う場合には、リース開始日に原資産の現金購入価額によりリース投資資産を計上し、受取リース料を利息相当額と元本回収に区分します。

貸手が事業の一環以外でリースを行う場合には、リース開始日に、貸手のリース料から利息相当額を控除した金額と原資産の帳簿価額との差額を売却損益として計上し、同額でリース投資資産を計上します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

貸手の立場リース開始日の主な処理
製造・販売を事業とする貸手売上高、売上原価、リース投資資産を計上
製造・販売以外を事業とする貸手が事業の一環で行うリース原資産の現金購入価額でリース投資資産を計上
事業の一環以外で行うリース売却損益とリース投資資産を計上
所有権移転ファイナンス・リース上記の「リース投資資産」を「リース債権」と読み替える

製造または販売を事業とする貸手については、売上高・売上原価・販売益相当額をリース開始日に認識し、受取リース料を利息相当額と元本回収に分けて処理することになります。

監査上は、「なぜ売上高を計上するのか」「なぜ利息収益として配分するのか」「販売益相当額に重要性が乏しいと判断した根拠は何か」が問われます。

単に仕訳を作るのではなく、契約の経済実態、販売価格、原価、付随費用、残価見積り、金利設定を一体で説明できる資料が必要です。

利息相当額の配分|利息法が原則、ただし重要性判断がある

貸手における利息相当額の総額は、貸手のリース料と見積残存価額の合計額から、対応する原資産の取得価額を控除して算定されます。この利息相当額は、貸手のリース期間にわたり、原則として利息法により配分します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号 リースに関する会計基準

ただし、貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に定額で配分することができます。もっとも、リースを主たる事業としている企業は、この取扱いを適用できません。

ここでいう重要性が乏しい場合とは、未経過の貸手のリース料および見積残存価額の期末残高が、当該期末残高と営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10%未満である場合とされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

この重要性判断は、借手の使用権資産総額に関する10%判定とは別物です。貸手側では、営業債権との関係でリース債権・リース投資資産の重要性を見ます。

なお、リースを主たる事業とする企業では、利息配分の精度が財務諸表の主要な情報になるため、定額配分の簡便処理は認められません。

オペレーティング・リース|賃料収益を「発生時」だけで見ない

オペレーティング・リースは、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理します。貸手は、オペレーティング・リースによるリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上します。

なお、貸手のリース期間について再リース意思が明らかな期間を含める方法を選択し、その貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれる場合には、契約期間における使用料の総額を契約期間にわたり計上します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

ここで重要なのは、賃料請求額をそのまま収益にするのではないという点です。フリーレント、レントホリデー、段階賃料、契約期間、再リース期間を考慮し、どの期間にどの収益を配分するかを判断することになります。

契約条件実務上の論点
フリーレント無償期間を含む契約全体で収益を平準化する必要があるか
段階賃料賃料増額が使用権の対価なのか、将来業績・指数変動なのか
売上歩合賃料将来の業績等により変動する使用料として、貸手のリース料から除かれる場合がある
共益費・管理費リース部分とサービス部分の区分、または合わせる取扱いの適用可否
建設協力金・敷金預り預託保証金、長期前受家賃、支払利息、返還不要部分の収益認識

不動産業では、開発、分譲、賃貸、流通、運営管理といった業務があり、賃貸対象も住宅、オフィス、商業施設、ホテル、物流施設など多岐にわたります。賃貸事業では、物件所有者が運営管理を自ら行う場合もあれば、外部委託する場合もあります。

不動産賃貸では、リース分類だけでなく、賃料収益、共益費、管理サービス、固定資産税相当額、敷金、建設協力金、原状回復、減損、賃貸等不動産注記が連鎖します。オペレーティング・リースだから簡単、という整理では足りません。

不動産リースの分類|土地・建物を一括で見ない

不動産リースでは、土地と建物をどのように扱うかが大きな論点になります。

適用指針第33号では、土地、建物等の不動産リースについてもファイナンス・リースかオペレーティング・リースかを判定しますが、土地については一定の場合を除き、オペレーティング・リースに該当するものと推定されます。

また、土地と建物等を一括したリースは、原則として、貸手のリース料を合理的な方法で土地部分と建物等部分に分割したうえで、建物等について現在価値基準を判定します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

不動産リースで注意すべき論点は、次のとおりです。

論点確認すべき事項
土地部分所有権移転、割安購入選択権、特別仕様等に該当するか
建物部分現在価値基準・経済的耐用年数基準に該当するか
賃料配分土地・建物の独立賃料、鑑定評価、固定資産税評価、収益還元資料
契約期間解約不能期間、再リース意思、普通借地・定期借地との関係
建設協力金長期前受家賃・支払利息・返還不要部分の処理
サービス部分管理、警備、清掃、共益費等の非リース部分

土地と建物を一体で借りているからといって、会計上も一体で分類してよいとは限りません。

特に商業施設、物流施設、ホテル、工場、病院、学校、データセンターなどでは、賃貸借契約に建物使用、土地使用、設備利用、運営サービス、保証金、建設協力金が混在しやすく、貸手側の分類判断は開示・監査上の重要論点になります。

建設協力金・敷金|貸手側では負債性と収益配分を分ける

不動産リースでは、建設協力金、保証金、敷金などが契約に含まれることがあります。

貸手が預り企業となる建設協力金等の預り預託保証金については、当初認識時の時価を、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値とします。受取額と時価との差額は長期前受家賃として計上し、契約期間にわたって各期の損益に合理的に配分します。あわせて、当初時価と返済額との差額を契約期間にわたって配分し、支払利息として計上します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

敷金については、将来返還する預り敷金を債務額で貸借対照表価額とし、返還されないことが契約上定められている金額は、賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

この論点は、本シリーズの「サブリース・不動産リース・建設協力金等」で改めて詳しく扱いますが、貸手のリース分類を行う段階でも、契約対価と預り金を混同しないことが重要です。

連結上の論点|個別分類をそのまま使えるとは限らない

貸手の現在価値基準を連結財務諸表で判定する場合、必要に応じて、親会社における貸手のリース料と連結子会社における貸手のリース料を合算した金額に基づいて判定します。ただし、重要性が乏しい場合には、親会社および連結子会社の個別財務諸表における結果の修正を要しないとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

たとえば、グループ内で親会社と子会社が同一借手に対して複数のリースを提供している場合、個別では現在価値基準を満たさないように見えても、連結では合算して判定すべき場合があります。

逆に、個別財務諸表上の分類差異について、連結上の重要性が乏しいため修正しないという判断もあり得ます。

連結上は、貸手・借手の双方がグループ内に存在するリース、サブリース、転リース、関連当事者との取引、セール・アンド・リースバックなどが複雑に絡むことがあります。貸手と借手の会計処理を理解したうえで、連結修正仕訳をケース別に整理しておく必要があります。

税務上の影響|貸手の延払基準特例廃止に注意する

貸手のリース会計で見落としやすいのが、税務影響です。

新リース会計基準では、ファイナンス・リースに関する貸手の会計処理のうち、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法、いわゆる第2法が廃止されています。国税庁資料では、これを踏まえて、法人税法上のリース譲渡に係る収益および費用の帰属事業年度の特例、すなわち延払基準の特例が廃止されたと整理されています。
出典:国税庁|令和7年度 法人税関係法令の改正の概要

同資料では、延払基準の特例廃止後も、新リース会計基準で引き続き認められる第1法および第3法により経理された収益・費用の額は、益金・損金に算入されると整理されています。
出典:国税庁|令和7年度 法人税関係法令の改正の概要

項目実務上の確認ポイント
会計上の貸手分類ファイナンス・リースかオペレーティング・リースか
会計上の処理方法第2法が廃止されているか
税務上の処理延払基準の特例廃止、経過措置の有無
申告調整会計処理と税務処理の差異があるか
税効果一時差異が生じるか、重要性があるか
過年度契約令和9年3月31日以前の契約・旧リース譲渡の経過措置

税効果会計は、企業会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産または負債の額の相違を調整し、法人税等と税引前利益を合理的に対応させる手続です。

貸手としてリース取引を多数有する企業では、会計方針変更、税務処理、申告調整、税効果、経過措置を同時に整理する必要があります。

会計処理だけを決めても、税務上の取扱いが追いついていなければ、決算・申告・監査対応の場面で説明が分断されてしまいます。

貸手の注記|分類と測定の結果を利用者にどう伝えるか

貸手のリース会計では、処理結果だけでなく、注記による説明も重要です。

適用指針第33号では、ファイナンス・リースの貸手について、リース債権およびリース投資資産の構成要素、受取利息相当額、将来の回収予定額、残高の重要な変動などの注記が求められています。また、オペレーティング・リースの貸手についても、将来の業績等により変動する使用料に係る収益や、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの受取予定額および5年超の受取予定額の注記が求められます。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針

貸手の注記は、次のような問いに答えるための情報です。

利用者・監査人が知りたいこと注記・資料で示すべき内容
将来どの程度のリース収入があるか回収予定額、受取予定額
リース債権・リース投資資産の中身は何かリース料債権部分、見積残存価額部分、受取利息相当額
収益の性質は販売益か利息か賃貸収益か売上高、売上原価、受取利息、賃貸収益の区分
残高変動の理由は何か新規契約、企業結合、残価保証、見積残存価額変更、中途解約
変動使用料があるか将来業績等により変動する使用料に係る収益

貸手のリースが会社の主要な収益源である場合、注記は単なる定型開示ではありません。リース事業の収益性、資産回収リスク、残価リスク、金利リスク、信用リスクを読み手に伝える情報になります。

監査上の争点|貸手会計は「分類根拠」と「収益表示」が問われる

貸手のリース分類と会計処理で、監査上争点になりやすいのは次の領域です。

監査上の確認事項問われやすい内容
契約の網羅性貸手としてのリース契約、サブリース、転リース、保証金契約が網羅されているか
リース識別サービス契約、販売契約、委託契約、利用契約の中にリースが含まれていないか
非リース部分保守・管理・共益費・固定資産税相当額を適切に区分しているか
分類判定現在価値基準、経済的耐用年数基準、所有権移転要件の根拠があるか
現金販売価額製造・販売を事業とする貸手で、現金販売価額が合理的に算定されているか
割引率貸手の計算利子率が契約条件・残価見積りと整合しているか
見積残存価額中古市場、処分実績、残価保証、技術的陳腐化を反映しているか
収益表示売上高、売上原価、受取利息、賃貸収益が取引実態に合っているか
税務・税効果延払基準特例廃止、申告調整、一時差異の有無が整理されているか
開示リース債権・リース投資資産・受取予定額の注記が台帳から集計できるか

会計上の見積りでは、結果として見積額と実績が乖離すること自体よりも、見積時点で当然考慮すべき情報を考慮していたか、最善の見積りであったかが問題になります。

リース分類でも、見積残存価額、経済的耐用年数、再リース期間、割引率、現金販売価額などに判断が含まれます。だからこそ、判断時点の情報と根拠資料を残しておくことが重要です。

特に、貸手が売上高を計上する販売型リースでは、不適切な収益認識リスクにも注意が必要です。粉飾決算には、財務諸表に計上すべき金額を計上しないことだけでなく、必要な開示を行わないことも含まれます。この点は、実務上あらためて意識しておきたいところです。

実務で整備すべき資料

貸手のリース分類と会計処理を後から説明できる状態にするには、契約台帳だけでは不十分です。分類判定、測定、収益認識、開示、税務のそれぞれについて、証拠資料を結び付けておく必要があります。

資料目的
契約書・覚書・更新合意書リース識別、解約不能期間、再リース、購入オプションの確認
契約対価の内訳資料リース部分と非リース部分の区分
独立販売価格・現金販売価額資料販売型リースの売上計上額、現在価値基準
原価資料・付随費用資料売上原価、リース投資資産、売却損益の算定
経済的耐用年数資料75%判定、減価償却、残価見積り
中古市場・処分実績資料見積残存価額、残価保証、減損リスク
割引率計算表貸手の計算利子率、利息法による配分
リース債権・リース投資資産明細元本回収、利息収益、回収予定額注記
税務検討メモ延払基準特例廃止、経過措置、申告調整
会計方針メモ分類方針、重要性判断、連結上の取扱い
監査人協議資料判断の分岐、代替処理、開示影響

これらの資料は、決算時に急いで作るものではありません。

貸手としてリースを提供する事業では、契約設計の段階で会計影響が決まります。だからこそ、営業、法務、事業部、経理、税務、連結、開示担当が、同じ台帳・同じ用語で情報を共有する必要があります。

経営者に説明すべきポイント

貸手のリース分類は、経営者にとっても重要です。ファイナンス・リースかオペレーティング・リースかによって、売上高、売上原価、受取利息、賃貸収益、資産残高、将来回収予定額の見え方が変わるためです。

経営者には、少なくとも次の観点を説明する必要があります。

経営者説明の観点説明すべき内容
収益の性質販売益なのか、利息収益なのか、賃貸収益なのか
利益計上時期リース開始日に販売益を認識するのか、期間にわたり収益配分するのか
資産回収リスクリース債権・リース投資資産の回収可能性、残価リスク
価格設計現金販売価額、リース料、残価保証、利息相当額の整合性
財務指標売上高、営業利益、金融収益、総資産、営業債権への影響
税務影響延払基準特例廃止、経過措置、申告調整
開示影響受取予定額、リース投資資産の構成、変動使用料の注記
監査リスク分類根拠、見積り、収益表示の妥当性

貸手のリース会計は、事業モデルそのものの描写です。

リース会社、メーカー、販売会社、不動産会社、商社、ITサービス企業、医療機器会社などでは、同じ「リース」という言葉でも、販売、金融、賃貸、サービスの比重が異なります。会計処理は、その実態を後から説明できる形で組み立てる必要があります。

専門家に相談すべき場面

次のような場合には、貸手のリース分類と会計処理について、早期に専門家と整理しておくことが有用です。

  • 貸手としてファイナンス・リースとオペレーティング・リースの分類を行う必要がある
  • 販売型リースについて、売上高・売上原価・受取利息の表示に迷っている
  • 貸手の現在価値基準、経済的耐用年数基準、所有権移転要件の判定根拠を文書化したい
  • 不動産リースで土地・建物、共益費、建設協力金、敷金、フリーレントが混在している
  • リース料受取時に売上高・売上原価を計上していた従来処理からの見直しが必要である
  • 税務上の延払基準特例廃止、経過措置、申告調整、税効果を整理したい
  • 連結グループ内で貸手・借手・サブリースが混在している
  • 監査人から、貸手のリース分類、残価見積り、現金販売価額、割引率、注記資料の提出を求められている
  • IPO準備に向けて、リース契約台帳、会計方針、注記集計体制を整備する必要がある

犬飼公認会計士・税理士事務所では、新リース会計基準への対応について、貸手のリース分類、ファイナンス・リースの会計処理、販売型リース、オペレーティング・リース収益、不動産リース、建設協力金、サブリース、税務・税効果、開示・監査対応まで、上場企業・IPO準備企業・大規模グループの実務に即して整理を支援しています。

貸手のリース会計で重要なのは、基準上の分類名を当てはめることではありません。契約の経済実態、収益の性質、資産回収リスク、残価見積り、開示情報を、一体として説明できることです。

貸手としてのリース取引が決算・開示・監査対応上の論点になっている場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

主な出典・参照情報

振り返り

重要論点実務上の確認ポイント
貸手は分類が残る借手の単一モデルとは異なり、貸手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースを分類する
リース部分・非リース部分保守、管理、共益費、固定資産税相当額、サービス部分を区分する
貸手のリース期間借手期間と同様に決める方法と、明らかな再リース期間を含める方法がある
ファイナンス・リース判定解約不能性とフルペイアウト性を確認する
現在価値基準貸手のリース料の現在価値が原資産の現金購入価額のおおむね90%以上か確認する
経済的耐用年数基準貸手のリース期間が経済的耐用年数のおおむね75%以上か確認する
所有権移転分類所有権移転、割安購入選択権、特別仕様資産の有無を確認する
リース債権・リース投資資産所有権移転はリース債権、所有権移転外はリース投資資産を計上する
販売型リース製造・販売を事業とする貸手は、売上高・売上原価・利息相当額を区分する
オペレーティング・リース貸手のリース料は貸手のリース期間にわたり原則として定額法で収益計上する
不動産リース土地・建物を合理的に分け、土地は一定の場合を除きオペレーティング・リースと推定する
建設協力金・敷金預り金、長期前受家賃、支払利息、返還不要部分の収益認識を分ける
連結上の判定親会社・子会社の貸手リース料を合算して現在価値基準を判定すべき場合がある
税務影響第2法廃止、延払基準特例廃止、経過措置、申告調整を確認する
開示リース債権・リース投資資産の構成、受取予定額、変動使用料収益を注記に接続する
監査対応契約、分類判定、現金販売価額、割引率、残価見積り、税務処理を文書化する
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