確定申告が必要になる収入・取引・控除の全体整理|副業・不動産・資産売却・控除をどう確認するか

確定申告が必要かどうかを考えるとき、多くの方が最初に探すのは「いくら以上なら申告が必要か」という金額の基準ではないでしょうか。

たしかに、給与所得者の副業所得についての20万円基準、給与収入2,000万円超、複数の給与、特定口座の源泉徴収あり・なしなど、申告の要否を左右する金額基準や制度は存在します。ただ、実務の現場に立つと、金額だけを見て結論を出すのは危ういと感じます。

確定申告が必要になるかどうかは、次の順番で確認していくのが確実です。

  • どのような収入・入金・取引があったか
  • その収入がどの所得区分に当たるか
  • 課税対象か、非課税か、源泉分離課税か、申告不要制度があるか
  • 必要経費や取得費、譲渡費用を差し引いた後の所得金額はいくらか
  • 控除や損失を申告する必要があるか
  • 所得税の申告が不要でも、住民税申告や翌年以降への影響がないか
  • 税務署や金融機関、そして将来の自分に説明できる資料が残っているか

所得税では、所得をその性質に応じて10種類に区分して計算します。収入の名称や入金口座だけを手がかりにするのではなく、取引の実態に基づいて所得区分を見極めるところが、すべての出発点になります。
出典:国税庁|No.1300 所得の区分のあらまし

この記事では、確定申告が必要になりやすい収入・取引・控除を、全体像として整理していきます。個別の税額計算や控除額の詳細に踏み込むものではなく、「どの入口から確認すべきか」をつかんでいただくための記事です。

目次

確定申告が必要かは「収入」ではなく「所得」で判断する

まず押さえておきたいのは、「収入」と「所得」は同じではない、という点です。

収入とは、売上、報酬、家賃、売却代金、保険金、配当、入金額など、外から入ってきた金額そのものを指します。

これに対して所得は、収入から必要経費、取得費、譲渡費用、特別控除などを差し引いた後の、税務上の利益です。

たとえば副業収入がある場合でも、申告の要否を判断する場面では、単純な入金額ではなく、必要経費を差し引いた後の所得金額を見ることになります。事業所得であれば、「総収入金額-必要経費=事業所得の金額」という形で整理されます。
出典:国税庁|No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)

不動産を売却した場合も同様です。売却代金そのものが課税対象になるわけではなく、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引き、一定の特別控除があればそれも控除したうえで、譲渡所得を計算します。
出典:国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

こうして見ると、「入金があったかどうか」だけで申告の要否を判断するのは、やはり不十分だとわかります。

大切なのは、その入金が何の対価なのか、必要経費や取得費を差し引けるのか、所得区分の上でどの制度に乗るのか——ここを一つひとつ確認していくことです。

まず確認したい、給与所得者の申告要否

給与所得者の方は、勤務先で年末調整を受けることで、通常は所得税の精算が完了します。

とはいえ、給与所得者であっても、一定の場合には確定申告が必要になります。具体的には、給与の年間収入金額が2,000万円を超える方、1か所から給与を受けていて給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える方、2か所以上から給与を受けていて、年末調整されなかった給与収入と給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える方などが、これに当たります。
出典:国税庁|No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

ここで注意したいのは、「20万円以下なら常に何もしなくてよい」とは限らない、という点です。

20万円基準は、あくまで一定の給与所得者について、所得税の確定申告が不要となる場面を説明するものにすぎません。住民税申告や、医療費控除・住宅ローン控除のために確定申告をする場合まで含めて、他の所得との関係すべてが免除されるわけではないのです。

実際、確定申告をする場合には、原則としてすべての収入を申告する必要があります。
出典:国税庁|こんな収入の申告漏れにご注意

給与所得者の方は、まず次の点を確認してみてください。

  • 給与収入が2,000万円を超えていないか
  • 勤務先が1か所か、2か所以上か
  • 年末調整されていない給与がないか
  • 給与以外の所得があるか
  • 副業収入、不動産収入、資産売却、一時的な収入がないか
  • 医療費控除、住宅ローン控除の初年度、寄附金控除などを受けるために申告する必要がないか
  • 退職・転職により、年末調整が完了していない状態ではないか

給与所得者であることは、確定申告が不要となる絶対条件ではありません。年末調整の外側に、収入・取引・控除がないかどうか。そこを確かめておくことが肝心です。

副業・業務委託・ネット収入がある場合

副業収入は、確定申告のご相談の中でも、最も判断が揺れやすい領域の一つです。

ひとくちに副業収入といっても、その中身はさまざまです。

  • 業務委託報酬
  • 原稿料、講演料、監修料
  • 紹介料、手数料収入
  • 動画配信、広告収入、アフィリエイト収入
  • ネットショップ、ハンドメイド販売
  • フリマアプリ、ネットオークション
  • 暗号資産、NFT、デジタル取引
  • ポイントや経済的利益
  • 家庭教師、コンサルティング、専門職収入

給与所得者がネットオークション等で副収入を得た場合、年末調整済みであっても、給与所得以外の副収入等による所得が20万円を超えるときは、一定の場合を除いて確定申告が必要になります。
出典:国税庁|No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合

ただし、副業収入を、はじめから「雑所得」と決めつけてしまうのは避けたいところです。

継続的・独立的・営利的に行われ、帳簿や資料が整い、事業としての実態を備えている場合には、事業所得に該当するかどうかを検討する必要があります。反対に、給与に近い実態があれば給与所得との区分が、資産の売却であれば譲渡所得との区分が、それぞれ問題になってきます。

副業収入で確認しておきたいポイントは、次のとおりです。

  • 何の対価として受け取った収入か
  • 継続的に行っているか、一時的な入金か
  • 自分の計算と責任で行っているか
  • 勤務先や依頼主から指揮命令を受けていないか
  • 請求書、契約書、入金記録、支払調書があるか
  • 売上と経費を帳簿で整理できるか
  • 所得金額が20万円を超えるか
  • 所得税の確定申告が不要でも、住民税申告が必要にならないか

副業は、金額だけで判断しようとするより先に、所得区分を整理しておくことが大切です。所得区分を誤ると、必要経費の範囲、損益通算の可否、青色申告、住民税、消費税、さらには税務調査時の説明にまで、影響が広がっていきます。

個人事業・フリーランス収入がある場合

個人事業主やフリーランスとして収入を得ている場合、原則として、その事業から生じる所得を申告することになります。

事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営む方が、その事業から得る所得です。ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は、原則として不動産所得や山林所得として扱われます。
出典:国税庁|No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)

個人事業の申告では、「売上を集計して経費を入れる」だけでは足りません。

実務では、次のような論点を一つひとつ整理していきます。

  • 売上の計上時期
  • 未収入金、前受金、入金消込
  • 必要経費になる支出、ならない支出
  • 家事費と家事関連費の区分
  • 自宅、車両、通信費などの按分
  • 減価償却資産、少額資産、固定資産台帳
  • 外注費、給与、報酬の区分
  • 源泉徴収の有無
  • 青色申告の承認申請と帳簿保存
  • 消費税、インボイス登録の必要性
  • 納税資金、予定納税、住民税、個人事業税への影響

個人事業では、収入が発生した年だけでなく、翌年以降の申告や資金管理にも影響が及びます。

とりわけ、開業初年度、副業から本業へ移行した年、売上が伸びた年、外注や人件費が発生した年、設備投資をした年などは、単に確定申告書を作成するというより、事業の数字そのものを整えるという視点が欠かせません。

不動産収入がある場合

不動産収入がある場合、たとえ給与所得者であっても、年末調整だけで完結することは通常ありません。

不動産所得とは、土地や建物などの貸付けによる所得です。不動産収入を受け取った場合には、この不動産所得として整理していきます。
出典:国税庁|No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

不動産収入には、単なる家賃だけでなく、次のような収入が含まれることがあります。

  • 家賃
  • 地代
  • 礼金
  • 更新料
  • 返還不要の敷金・保証金
  • 共益費、管理費相当額
  • 駐車場収入
  • 賃貸併用住宅の賃貸部分収入
  • 共有不動産の持分に応じた賃料収入

不動産収入では、入金額だけを見ていると、判断を誤りやすくなります。

たとえば敷金や保証金は、返還義務がある部分と返還不要の部分とで取扱いが変わります。固定資産税、借入金利子、管理費、修繕費、減価償却費なども、必要経費として一つずつ整理していく必要があります。

不動産所得では、さらに次のような論点も出てきやすいものです。

  • 事業的規模かどうか
  • 青色申告特別控除の適用関係
  • 専従者給与の可否
  • 不動産所得の赤字と損益通算
  • 土地取得に係る借入金利子の制限
  • 修繕費と資本的支出の区分
  • 自宅兼賃貸の按分
  • 共有不動産の収入・経費の帰属
  • 相続直後の賃料収入
  • 住宅賃貸、事務所賃貸、駐車場の消費税区分

不動産収入がある方は、「家賃が入ったから申告するか」という入口だけで終わらせず、物件ごとに、契約、入金、経費、借入、修繕、減価償却を整理していくことが大切です。

不動産・株式・資産を売却した場合

資産を売却した年は、確定申告の要否を必ず確認しておきたいところです。

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます。その対象となる資産には、土地、借地権、建物、株式等、金地金、宝石、書画などが含まれます。
出典:国税庁|No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法

資産売却では、次のような取引が申告判断の対象になります。

  • 土地、建物、マンションの売却
  • 相続で取得した不動産の売却
  • 空き家、実家、共有不動産の売却
  • 事業用資産の売却
  • 上場株式、投資信託、公社債の売却
  • 非上場株式の売却
  • 金地金、貴金属、美術品、会員権の売却
  • 国外資産の売却
  • 親族間売買、法人との売買、低額譲渡

不動産を売却した場合、譲渡所得は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費が分からないときや、実際の取得費が譲渡価額の5%より少ないときには、概算取得費として譲渡価額の5%を用いる制度もあります。
出典:国税庁|No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)

ここで重要になるのは、売却益が出たかどうかだけではありません。

  • 取得時の契約書があるか
  • 取得費を説明できるか
  • 相続や贈与で取得した資産か
  • 改良費、設備費、譲渡費用を整理できるか
  • 所有期間は長期か短期か
  • 居住用財産、空き家、買換えなどの特例を使えるか
  • 譲渡損失が出た場合に通算や繰越ができるか
  • 共有者ごとの持分で申告すべきか
  • 親族間・法人間取引で時価が問題にならないか

資産売却は、申告期限の直前に資料を集めても、判断が難しいことが少なくありません。売却の前後という段階で、契約書、登記情報、取得資料、支払明細、仲介手数料、測量費、解体費、相続資料などを整理しておくと安心です。

上場株式・投資信託・配当がある場合

金融所得は、口座の区分や申告の選択によって、取扱いが変わってきます。

特定口座で源泉徴収ありを選択している場合、その特定口座内の上場株式等の譲渡所得については、申告不要とできる場面があります。一方で、一般口座、特定口座の源泉徴収なし、非上場株式、あるいは上場株式等の譲渡損失を通算・繰越したい場合などは、確定申告の要否を確認しておく必要があります。
出典:国税庁|No.1476 特定口座制度

金融所得で確認しておきたい論点は、次のとおりです。

  • 特定口座か、一般口座か
  • 特定口座は源泉徴収ありか、なしか
  • 年間取引報告書があるか
  • NISA口座内の取引か
  • 配当所得を、申告不要・総合課税・申告分離課税のどれで扱うか
  • 譲渡損失を配当等と損益通算するか
  • 譲渡損失を翌年以降に繰り越すか
  • 申告することで、住民税や国民健康保険料に影響しないか
  • 非上場株式や個人間売買がないか

上場株式等の譲渡損失については、一定の配当等との損益通算や繰越控除を検討できる場合があります。ただし、その適用には確定申告が必要となる場面があります。「源泉徴収ありだから何もしない」と早々に決めてしまうのではなく、損失をどう活かすか、周辺にどんな影響があるかまで確認しておきたいところです。
出典:国税庁|No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

金融所得は、税額だけを見れば申告不要で済む場合もあります。

けれども、損失を翌年以降に活かす、配当控除を検討する、国民健康保険料等への影響を避けるなど、「申告するかどうか」自体が判断の論点になる領域でもあります。

一時的な収入・保険金・補助金・損害賠償金がある場合

一時的な入金があったとき、「臨時収入だから申告不要」と考えてしまうのは危険です。

一時所得とは、利子所得から譲渡所得までのいずれにも該当せず、営利を目的とする継続的行為から生じた所得でもなく、労務その他の役務の対価や資産の譲渡対価としての性質を持たない、一時の所得をいいます。懸賞の賞金、生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金などが、その例として挙げられます。
出典:国税庁|No.1300 所得の区分のあらまし

一時所得の金額は、特別控除額を差し引いたうえで、その2分の1相当額を他の所得と合計して税額を計算する仕組みになっています。
出典:国税庁|No.1490 一時所得

ただし、すべての臨時入金が一時所得になるわけではありません。

確認しておきたいのは、次のような点です。

  • 保険金は、死亡保険金、満期保険金、解約返戻金、損害保険金のどれか
  • 契約者、保険料負担者、受取人は誰か
  • 損害賠償金は、身体の損害、資産損害、事業上の損失補填のどれか
  • 補助金・助成金は、事業用経費や固定資産取得と対応するものか
  • 賞金や懸賞金は源泉徴収されているか
  • 一時所得、雑所得、事業所得、非課税所得のいずれに当たるか
  • 必要経費や取得費と対応させるべきものがあるか

たとえば同じ保険金でも、受取原因や契約関係によって、所得税・相続税・贈与税のいずれが問題になるかが変わります。損害賠償金にも、非課税になるもの、事業の必要経費を補てんするもの、収入として処理すべきものがあります。

一時的な収入は、金額が大きい一方で、毎年発生するわけではありません。だからこそ、申告漏れが起きやすい領域だといえます。

医療費控除・住宅ローン控除・寄附金控除などを受ける場合

確定申告は、納税のためだけに行うものではありません。

給与所得者で確定申告の義務がない場合でも、控除を受けるために確定申告をすることがあります。典型的には、医療費控除、住宅ローン控除の初年度、寄附金控除、雑損控除、特定支出控除、そして年末調整で控除を出し忘れた場合などです。

医療費控除は、納税者本人または生計を一にする配偶者その他の親族のために、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が対象になります。保険金などで補てんされる金額は、そこから差し引く必要があります。
出典:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

医療費控除を受けるには、医療費控除の明細書を確定申告書に添付します。医療費の領収書は自宅で5年間保存する必要があり、セルフメディケーション税制とは選択適用の関係になります。
出典:国税庁|医療費控除を受ける方へ

住宅ローン控除は、初めて受ける場合には、住宅の区分に応じた提出書類を添付して確定申告をします。2年目以降は、給与所得者で一定の要件を満たす場合、年末調整で控除を受ける流れになります。
出典:国税庁|住宅ローン控除を受ける方へ

ふるさと納税については、ワンストップ特例を利用していた場合でも、医療費控除や住宅ローン控除の初年度など、別の理由で確定申告をするときには、ワンストップ特例を適用できません。この場合は、寄附金控除も確定申告に含める必要があります。
出典:国税庁|ふるさと納税をされた方へ

控除を受けるための申告で特に大切なのは、「控除だけを申告すればよいわけではない」という点です。

給与所得者や年金所得者で確定申告の必要がない方が還付申告をする場合でも、その他の各種所得についても申告が必要になります。
出典:国税庁|所得税及び復興特別所得税の申告等

つまり、医療費控除のために申告するのであれば、副業所得、不動産所得、資産売却益、配当所得など、申告書に含めるべき所得が他にないかを、あわせて確認しておく必要があるのです。

損失・赤字・損益通算を使いたい場合

確定申告が必要になるのは、利益が出た場合だけではありません。

損失や赤字を申告することで、他の所得との損益通算、翌年以降への繰越控除、あるいは還付につながる場合があります。

ただし、すべての赤字が他の所得と相殺できるわけではありません。

事業所得の赤字、不動産所得の赤字、譲渡損失、株式等の譲渡損失、雑所得の損失では、それぞれ取扱いが異なります。不動産所得の赤字についても、土地等の取得に係る借入金利子など、損益通算に制限がかかる論点があります。

株式等についても、特定口座で損失が出た場合、申告しなければ翌年以降の繰越控除につながらない場面があります。

ここで確認しておきたいのは、次のような点です。

  • その赤字は、どの所得区分から生じたものか
  • 損益通算の対象になる損失か
  • 青色申告の要件を満たしているか
  • 翌年以降へ繰り越すために申告が必要か
  • 申告を継続しなければならない制度か
  • 住民税、国民健康保険料、扶養判定への影響はないか
  • 赤字の原因を、帳簿や証憑で説明できるか

赤字を申告する場合ほど、資料の保存と説明可能性が重要になります。「赤字だから税金は出ない」と考えて申告を軽く見てしまうと、将来の繰越控除や税務調査への対応で、思わぬ問題になることがあります。

所得税の申告だけで終わらない場合

個人の確定申告は、所得税だけで完結するものではありません。

申告の内容は、住民税、個人事業税、国民健康保険料、消費税、源泉徴収、固定資産税、償却資産申告、不動産取得税、さらには相続税・贈与税との接点にまで影響していきます。

たとえば個人事業者や不動産収入のある方は、所得税のほかに、消費税やインボイス登録の判断が必要になることがあります。消費税では、所得税の所得区分とは別の視点で考えます。対価を得て行われる資産の譲渡・貸付け・役務提供が、反復・継続・独立して行われているかどうか——そうした観点から、事業者性や課税取引を確認していきます。
出典:国税庁|消費税のあらまし

また、報酬や料金を支払う側になると、源泉徴収義務が発生する場合があります。給与、外注費、報酬、料金の区分を誤ると、支払った側にも税務上のリスクが生じます。

申告が必要になる収入・取引・控除を整理するときには、所得税だけでなく、次のような周辺税目も視野に入れておきたいところです。

  • 住民税申告
  • 個人事業税
  • 国民健康保険料等
  • 消費税、インボイス
  • 源泉所得税
  • 償却資産に係る固定資産税
  • 不動産取得税、登録免許税、印紙税
  • 相続税、贈与税
  • 国外財産調書、財産債務調書

とりわけ、副業から個人事業化する場合、不動産収入が増える場合、資産売却がある場合、国外資産がある場合には、所得税の申告要否だけで判断を止めないことが大切です。

確定申告が必要か判断するための、実務的な確認順序

確定申告が必要になる収入・取引・控除を整理するには、次の順番で確認していくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。

1. すべての入金・取引を洗い出す

まず、税務上の結論を決める前に、その年の入金と取引をすべて洗い出します。

  • 給与、賞与、退職金
  • 副業、業務委託、原稿料、講演料
  • 事業売上、雑収入
  • 不動産収入、駐車場収入
  • 株式、投資信託、暗号資産、NFT
  • 不動産や資産の売却
  • 保険金、給付金、補助金、助成金
  • 賞金、懸賞金、払戻金
  • 国外口座、国外資産からの収入

この段階では、「申告するかどうか」ではなく、「存在するものを漏らさない」ことを重視します。

2. 収入を所得区分に分ける

次に、入金ごとに所得区分を確認します。

事業所得、雑所得、不動産所得、給与所得、退職所得、譲渡所得、一時所得、配当所得など、所得区分によって、申告要否、計算方法、経費の範囲、損益通算の可否が変わってきます。

表面的な名称ではなく、契約、入出金、継続性、独立性、資産の移転、労務提供の実態から判断していきます。

3. 申告義務・申告不要制度・源泉分離課税を確認する

所得区分が見えてきたら、申告義務があるか、申告不要制度があるか、源泉分離課税で完結しているかを確認します。

ここで注意したいのは、申告不要制度があっても、あえて申告した方が有利になる場合や、別の申告をすることで申告不要の扱いが変わる場合がある、という点です。

4. 控除・還付・損失の申告を確認する

続いて、申告することで税額が下がる、あるいは還付や繰越につながる論点を確認します。

  • 医療費控除
  • 住宅ローン控除の初年度
  • 寄附金控除
  • 雑損控除
  • 特定支出控除
  • 控除漏れ
  • 事業所得や不動産所得の赤字
  • 株式等の譲渡損失
  • 純損失の繰越控除

確定申告の義務がない場合でも、還付申告や損失の繰越のために、申告が必要・有利になることがあります。還付申告は、確定申告の義務がない方でも、源泉徴収税額や予定納税額が年間の所得税額より多い場合に行うことができ、その年の翌年1月1日から5年間、提出できます。
出典:国税庁|No.2030 還付申告

5. 住民税・国保・翌年以降への影響を確認する

最後に、所得税だけでなく、住民税、国民健康保険料、扶養判定、予定納税、翌年以降の繰越控除、金融所得の申告選択への影響を確認します。

確定申告は、その年の税額を決めるだけのものではありません。申告した所得金額や控除、損失は、その後の税負担や行政上の判定にも影響することがあります。

資料がなければ、申告要否の判断はできない

確定申告が必要かどうかを判断するには、やはり資料が必要です。

少なくとも、次のような資料を確認していきます。

  • 源泉徴収票
  • 支払調書
  • 請求書、領収書、契約書
  • 通帳、クレジットカード明細
  • 副業や事業の売上・経費資料
  • 不動産賃貸借契約書、家賃明細、管理会社精算書
  • 固定資産税通知書、借入返済予定表
  • 不動産売買契約書、取得時資料、譲渡費用資料
  • 証券会社の年間取引報告書
  • 一般口座や暗号資産取引の明細
  • 医療費控除の明細書、医療費通知、補てん金資料
  • 住宅ローン控除関係資料
  • 寄附金受領証明書
  • 過年度の確定申告書
  • 青色申告承認申請書や各種届出書

「これは申告が必要ですか」というご質問に対して、資料がないまま即答することはできません。税務判断は、事実と資料をもとに行うものだからです。

特に、所得区分、必要経費、資産売却、損失、控除、住民税への影響が絡む場合には、資料整理そのものが、申告の品質を左右します。

確定申告が必要か迷ったら、結論より先に整理したいこと

確定申告が必要か迷ったとき、まず行うべきなのは、申告書作成ソフトに数字を入力することではありません。

先に整理しておきたいのは、次の3つです。

1つ目は、収入・入金・取引の全体像です。給与以外に何があるのか。副業か、事業か、不動産か、資産売却か、一時的な収入か。まずはここを洗い出します。

2つ目は、所得区分と資料です。その収入がどの所得に当たるのか。契約、請求、入金、経費、取得費、証券資料、不動産資料で説明できるか。ここを確かめます。

3つ目は、申告した場合の影響です。所得税が増えるのか、還付になるのか、住民税や国民健康保険料に影響するのか、翌年以降の繰越や青色申告に関係するのか。ここまで見ておきます。

この順番を飛ばして、都合のよい金額だけを入力してしまうと、あとから説明できない申告になりかねません。

確定申告は、単なる年に一度の手続ではなく、収入、取引、控除、資産、資料保存を整理していく税務判断そのものだといえます。

申告要否の整理に不安がある方へ

「副業収入があるが、事業所得か雑所得か分からない」

「不動産収入があるが、どこまで経費にできるか分からない」

「資産を売却したが、申告が必要か、取得費をどう整理すべきか不安」

「医療費控除や住宅ローン控除のために申告するが、他の所得も含める必要があるか分からない」

「株式の損失を申告すべきか、申告しない方がよいのか判断できない」

「所得税だけでなく、住民税や翌年以降への影響まで確認したい」

こうした場合には、申告書を作る前に、収入・取引・控除・資料を整理しておくことが大切です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、確定申告を単なる入力作業とは捉えていません。所得区分、必要経費、資産取引、控除、損益、納税資金、そして将来の説明可能性まで含めた税務判断として整理することを重視しています。

確定申告が必要になる収入・取引・控除について、自分の状況をどこから整理すべきか迷っている方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページから、お気軽にご相談ください。

この記事の振り返り

確認する領域申告要否の判断ポイント
給与所得者年末調整済みか、給与収入2,000万円超か、複数給与や給与以外の所得がないかを確認する
副業・ネット収入20万円基準だけでなく、収入ではなく所得金額、所得区分、住民税申告を確認する
個人事業・フリーランス事業所得か雑所得か、売上・経費・帳簿・青色申告・消費税まで整理する
不動産収入家賃、礼金、更新料、敷金、経費、減価償却、事業的規模、損益通算を確認する
不動産売却売却代金だけでなく、取得費、譲渡費用、所有期間、特例、相続取得資料を確認する
株式・投資信託特定口座、一般口座、源泉徴収あり・なし、損益通算、繰越控除、申告選択を確認する
一時的収入保険金、補助金、損害賠償金、賞金等は、非課税・一時所得・雑所得・事業所得を区分する
医療費控除明細書、補てん金、領収書保存、セルフメディケーション税制との選択を確認する
住宅ローン控除初年度は確定申告が必要で、住宅区分ごとの添付書類を確認する
ふるさと納税確定申告をする場合、ワンストップ特例が使えず、寄附金控除を申告に含める
損失・赤字損益通算できる損失か、繰越控除に申告が必要か、帳簿と資料で説明できるかを確認する
周辺税目所得税だけでなく、住民税、国保、個人事業税、消費税、源泉徴収への影響を確認する
資料整理源泉徴収票、支払調書、契約書、通帳、証券資料、不動産資料、控除証明書をそろえる
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