株主構成・議決権管理・少数株主対策|事業承継税制の前に整えるべき支配権の論点地図

事業承継税制を検討するとき、多くの会社ではまず「自社株の評価額はいくらか」「贈与税や相続税はどの程度猶予されるか」「特例承継計画に間に合うか」といった税務上の論点に目が向きます。

もちろん、それらは重要です。法人版事業承継税制は、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を後継者が贈与・相続等により取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等によって猶予税額の納付が免除される制度です。特例措置については、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの措置とされています。
出典:国税庁|事業承継税制特集

また、法人版特例措置を利用するためには、事前に特例承継計画を提出しておく必要があります。令和9年9月30日までに特例承継計画を都道府県へ提出し、令和9年12月31日までに贈与・相続により会社の株式を取得する、という制度設計が示されています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

しかし、税制の要件を満たすことと、後継者が安定して会社を経営できることは、同じではありません。

後継者が代表取締役に就任し、事業承継税制を使って自社株を承継したとしても、株式が分散したままでは、株主総会で必要な決議を安定して通せないことがあります。株主名簿が古いままでは、誰が真の株主なのかを説明できないこともあります。名義株や所在不明株主を放置していれば、認定申請、相続、M&A、組織再編、自己株式取得といった場面で、その問題が表面化します。

第七テーマ「株主構成・議決権管理・少数株主対策」は、事業承継税制そのものの要件解説ではありません。その前提となる「会社を誰が支配し、誰が株主として権利を持ち、後継者が承継後にどこまで経営判断できるのか」を整理するテーマです。

事業承継は、株式の移転と代表者交代だけで完了するものではありません。中小企業庁の事業承継ガイドラインも、事業承継を単に「株式の承継」+「代表者の交代」とはとらえず、後継者が安定した経営を行うために、人、資産、知的資産を承継する取組であると整理しています。
出典:中小企業庁|事業承継ガイドライン(第3版)

このテーマでは、そのうち特に「株式」と「議決権」に焦点を当てます。

このテーマで理解できること

このテーマを読むことで、次のような問いを整理できるようになります。

  • 後継者にどの程度の議決権を集中させる必要があるのか
  • 株式が親族、従業員、取引先、過去の役員、名義株主に分散している場合、事業承継税制を検討する前に何を確認すべきか
  • 自己株式取得、種類株式、従業員持株会、スクイーズアウト、株主間契約、信託といった手法は、それぞれどのような場面で検討されるのか
  • 少数株主を単に「邪魔な存在」と見るのではなく、会社法上の権利を持つ株主として、どのように対応すべきか

ここで扱うのは、税額を下げるための株式対策ではありません。後継者が承継後に会社を守れる株主構成を作ることです。

会社法上、株主には、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権などが認められています。株式は単なる相続財産ではなく、会社の意思決定権を支える権利でもあるということです。
出典:e-Gov法令検索|会社法

したがって、自社株承継では、株価評価や納税猶予額の試算だけでなく、株主名簿、議決権割合、定款、種類株式、過去の株式移動、相続関係、少数株主権、将来の資本政策まで確認しておく必要があります。

実務の場面でも、株主管理は単なる「株式の一覧表管理」にとどまりません。会社支配の維持、少数株主との内部紛争の予防、事業承継・M&A時の説明可能性に、そのまま直結します。中小企業では、保有議決権の多寡が経営の自由度を左右し、過半数や3分の2といった議決権割合が、役員選任、定款変更、組織再編などの意思決定に影響します。

第七テーマの中心メッセージ

このテーマの中心メッセージは、次の一文に尽きます。

事業承継税制を使っても、株式分散や少数株主問題を放置すれば、後継者の経営権は安定しない。

事業承継税制は、贈与税・相続税の納税猶予という強力な制度です。しかし、納税猶予を受けられるからといって、会社法上の株主関係が整理されるわけではありません。名義株が真の株主と一致するわけでもなく、所在不明株主が解消されるわけでもありません。少数株主の閲覧請求、株主総会に関する権利、反対株主の株式買取請求、価格決定申立てといった権利が消えるわけでもないのです。

むしろ、事業承継税制を適用するほど自社株の重要性が高い会社では、株主構成の問題も同時に重要になります。

名義株を解消しないまま法人版事業承継税制を適用すると、後の税務調査等で真の株主関係が問題となり、入口段階での適用要件を満たしていなかったと評価される可能性があります。特に同族過半要件や同族内筆頭株主要件は、議決権保有状況と密接に関係します。

そのため第七テーマでは、「税制を使えるか」の前に、「そもそも誰が株主なのか」「後継者はどの決議を通せるのか」「少数株主との関係をどう整理するのか」という順番で考えていきます。

このテーマで扱う範囲

第七テーマでは、株主構成・議決権管理・少数株主対策に関する主要論点を、8本の詳細コラムに分けて整理します。

最初に、株式分散が事業承継税制と経営権にどのような影響を与えるかを確認します。次に、株主名簿、名義株、所在不明株主という、承継前調査の基礎を整理します。そのうえで、譲渡制限株式と譲渡承認手続、自己株式取得、種類株式・属人的株式・黄金株、従業員持株会・安定株主、スクイーズアウト、株主間契約・信託という順番で、株主構成を安定させる手法を俯瞰していきます。

一方で、このテーマでは、個別の株式買取交渉、契約書の文案、訴訟対応、裁判所の価格決定手続の詳細、M&Aの相手探しやデューデリジェンスは扱いません。これらは個別相談または別テーマで検討すべき領域です。

ここで目指すのは、読者が自社の株主構成を見たときに、「何が問題になり得るか」「どの詳細コラムを読めばよいか」「専門家に何を相談すべきか」を判断できる状態になることです。

まず読むべき全体論点

第七テーマは、詳細コラムを順番に読み進められるよう構成していますが、最初に押さえておきたい視点が3つあります。

1つ目:支配権の視点

後継者が代表取締役になっても、株主総会で必要な議決権を確保していなければ、会社の重要事項を安定して決定できません。普通決議を通せるのか、特別決議を通せるのか、定款変更や組織再編に必要な議決権を確保できるのかを、あらかじめ確認しておく必要があります。

2つ目:株主確定の視点

株主名簿上の株主と実際の株主が一致しているか。名義株が残っていないか。所在不明株主がいないか。ここを確認しないまま進めると、承継設計の前提そのものが崩れます。株主名簿は会社法上の管理資料であるだけでなく、登記、税務申告、同族会社判定、事業承継税制の認定・申告にも影響します。

3つ目:手法選択の視点

株式を後継者に集中させる方法には、贈与、売買、自己株式取得、種類株式、従業員持株会、株主間契約、信託、スクイーズアウトなど、さまざまな選択肢があります。しかし、どの手法も万能ではありません。会社法上の手続、税務上の時価、資金繰り、遺留分、金融機関対応、将来のM&Aや組織再編への影響を、比較しながら選ぶ必要があります。

この3つの視点を持って読み進めていただくと、各詳細コラムの位置づけが分かりやすくなるはずです。

詳細コラムの読み方

7-1. 株式分散が事業承継税制と経営権に与える影響

第七テーマの入口となるコラムです。

ここでは、株式分散が事業承継税制の適用判断と承継後の経営権にどのような影響を与えるかを整理します。後継者が同族内で筆頭株主となれるか、同族関係者で過半数を確保できるか、少数株主権によって経営にどのような影響が生じるか。そうした全体像を扱います。

「株式が分散していても事業承継税制を使えるのか」「後継者にどの程度の議決権を持たせるべきか」「税制要件と経営支配は同じなのか」と感じている方は、まずこのコラムから読み進めてください。

このコラムを押さえておくことで、以降の株主名簿、名義株、自己株式取得、種類株式、従業員持株会、スクイーズアウト、株主間契約の論点が、単なる個別手法ではなく、支配権設計の一部として理解できるようになります。

7-2. 株主名簿・名義株・所在不明株主の確認

株主構成を整理するうえで、実務上まず確認すべき基礎論点を扱うコラムです。

自社株承継では、誰に株式を移すかを考える前に、誰が現在の株主なのかを確認しなければなりません。株主名簿が作成されていない、過去の株式移動が記録されていない、設立時の名義株が残っている、株主の所在が分からない。こうした状態では、事業承継税制の検討も、株価評価も、相続対策も、自己株式取得も、すべてが不安定なものになります。

このコラムは、「株主名簿はあるが正しいか分からない」「先代から名義株があると聞いている」「過去の株式譲渡契約書や株券の所在が分からない」「所在不明株主がいるかもしれない」という会社に向いています。

名義株や所在不明株主の問題は、承継直前になってから発見されると、対策の選択肢が一気に狭まります。事業承継税制の適用前に、必ず確認しておきたい論点です。

7-3. 譲渡制限株式と譲渡承認手続

自社株を後継者へ移すときの、会社法上の基本手続を扱うコラムです。

中小企業の多くは、譲渡制限株式を発行しています。譲渡制限株式では、株式譲渡や贈与の場面で、定款に定められた承認機関による承認が必要になることがあります。税務上は贈与・売買として整理できていても、会社法上の譲渡承認、株主名簿の書換、取締役会または株主総会の決議が整理されていなければ、後になって株式移転の有効性や対抗関係に疑義が生じかねません。

このコラムは、「親から子へ株式を贈与する予定がある」「後継者が既存株主から株式を買い取る」「譲渡承認機関が定款上どうなっているか分からない」「株式譲渡と株主名簿書換の関係を整理したい」という方に向いています。

事業承継税制の認定申請や税務申告を検討する前に、会社法上の株式移転手続が整っているかを確認するためのコラムです。

7-4. 自己株式取得と金庫株の活用

会社が株式を買い取り、株主構成を整理する方法を扱うコラムです。

少数株主や相続人から株式を買い取る場合、後継者個人が買い取る方法だけでなく、会社が自己株式として取得する方法が検討されることがあります。自己株式取得は、株式集約、相続人の納税資金確保、株主構成の整理に役立つ場合があります。ただし、会社法上の財源規制、手続規制、みなし配当、譲渡所得、取得費加算、会社資金の流出といった論点が幾重にも重なります。

このコラムは、「会社が少数株主から株式を買い取りたい」「相続人から自社株を取得して株式分散を防ぎたい」「自己株式取得が納税資金対策になるのか知りたい」という方に向いています。

自己株式取得は、株主対策であると同時に資金移動でもあります。そのため、7-4を読んだ後は、第11テーマの資金繰り・会社財務に関する記事もあわせて確認していただくと、会社財務への影響を整理しやすくなります。

7-5. 種類株式・属人的株式・黄金株の活用と限界

株式の内容や株主ごとの権利設計によって、議決権や拒否権を調整する方法を扱うコラムです。

後継者に議決権を集中させたいが、他の相続人にも経済的利益を残したい。先代が一定期間だけ拒否権を持ちたい。従業員持株会には配当を受ける権利を持たせたいが、経営への関与は限定したい。こうした場面で、議決権制限株式、配当優先株式、拒否権付種類株式、いわゆる黄金株、属人的定めなどが検討されます。

会社法上、種類株式は定款によって株式の内容を設計する制度であり、事業承継や資本政策の場面でも活用されています。
出典:e-Gov法令検索|会社法

ただし、種類株式は便利な反面、事業承継税制の議決権要件、自社株評価、遺留分、金融機関への説明、将来のM&A・組織再編に影響します。法人版事業承継税制では議決権に関連する要件が多く、種類株式の議決権制限がどの判定に影響するのかを、丁寧に切り分ける必要があります。

このコラムは、「後継者に議決権を集中させたい」「黄金株を使えるか知りたい」「種類株式で相続人間のバランスを取りたい」という方に向いています。

7-6. 従業員持株会・安定株主の活用

後継者以外に株式を持たせる選択肢を扱うコラムです。

事業承継では、すべての株式を後継者に集中させることが常に最適とは限りません。後継者の買取資金や贈与税・相続税の負担、他の相続人への配慮、従業員の帰属意識、安定株主の導入。こうした点を考え合わせると、従業員持株会、中小企業投資育成会社、取引先、金融機関などを安定株主として活用する選択肢も見えてきます。

中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、株式分散を防止する手法として、役員・従業員持株会、投資育成会社、金融機関、取引先等の安定株主導入が整理されており、安定株主は長期間にわたって保有を継続してくれる株主と位置づけられています。
出典:中小企業庁|事業承継ガイドライン(第3版)

このコラムは、「後継者だけに株式を集中させるのが難しい」「従業員持株会を作るべきか迷っている」「安定株主を入れると株式分散リスクが増えないか心配」という方に向いています。

従業員持株会は、安定株主対策や承継コストの調整に役立つ場合があります。もっとも、規約設計、退職時の買取ルール、配当政策、議決権管理、評価方法については、慎重に整理しておく必要があります。

7-7. スクイーズアウト・株式集約手法の位置づけ

少数株主から強制的に株式を集約する手法の位置づけを扱うコラムです。

株式併合、全部取得条項付種類株式、株式等売渡請求などのスクイーズアウト手法は、少数株主から株式を集約する強い手法です。事業承継の場面でも、株式分散を解消し、後継者または会社側に株式を集約するために検討されることがあります。

しかし、強い手法であるほど、会社法上の手続、公正な対価、株主への通知、価格決定申立て、税務上の時価、少数株主との紛争リスクを、慎重に管理しなければなりません。

このコラムは、「少数株主から強制的に株式を集約できるのか」「任意交渉が難しい場合にどのような選択肢があるのか」「株式併合や株式等売渡請求を事業承継で使えるのか」を知りたい方に向いています。

スクイーズアウトは、単なる少数株主排除の手段ではありません。後から振り返っても合理的といえる目的、手続の適正性、対価の公正性を説明できること。ここが何より重要です。

7-8. 株主間契約・信託・議決権管理

株式を直ちに移さずに、議決権や株主行動を安定させる補完策を扱うコラムです。

事業承継では、株式所有、経済的利益、議決権行使を完全に一致させることが難しい場合があります。先代が株式を持ち続けたいが、後継者に一定の議決権行使を任せたい。親族株主との間で、株式譲渡や議決権行使について事前に合意しておきたい。認知症対策として信託を使い、株式管理を止めない仕組みを作りたい。このような場面で、株主間契約、議決権行使委任、議決権信託、家族信託が検討されます。

中小企業庁の事業承継ガイドラインも、事業承継の円滑化に資する手法として、種類株式、信託、生命保険、持株会社の活用を紹介しています。
出典:中小企業庁|事業承継ガイドライン(第3版)

このコラムは、「株式をすぐに移さず議決権を安定させたい」「株主間契約を作れば後継者の経営権を守れるのか知りたい」「家族信託が事業承継税制に影響しないか不安」という方に向いています。

株主間契約や信託は柔軟な手法ですが、事業承継税制の株式取得・保有要件や議決権要件を当然に満たすものではありません。契約や信託を先行させる前に、税務・会社法・相続法務を横断して確認しておく必要があります。

推奨する読む順番

このテーマは、原則として7-1から7-8まで順に読み進めていただくことを推奨します。

まず7-1で、株式分散が事業承継税制と経営権に与える影響を把握してください。ここを飛ばして個別手法から読み始めると、自己株式取得、種類株式、スクイーズアウト、信託が「便利な対策」に見えてしまい、何のために使うのかが曖昧になります。

次に7-2で、株主名簿、名義株、所在不明株主を確認します。これは、すべての株主対策の前提です。株主が確定していない状態で株価評価や納税猶予の検討を進めても、後から前提が崩れるおそれがあります。

その後、株式を実際に動かす可能性がある会社は7-3を確認します。譲渡制限株式や譲渡承認手続は、税務以前の、会社法上の基礎にあたる部分です。

株式を集約したい会社は、7-4と7-7を読みます。任意取得や自己株式取得で対応できるのか、それとも強制取得手法まで検討すべきなのか。その判断を整理する流れです。

議決権設計を工夫したい会社は7-5を読みます。種類株式や黄金株は、後継者支配を安定させる可能性がある一方で、評価・遺留分・税制要件への影響が大きいため、早い段階で検討しておく必要があります。

後継者以外の株主をどう位置づけるか悩む会社は7-6を読みます。従業員持株会や安定株主は、株式集中だけでなく、株式分散をあえて管理するという視点を与えてくれます。

最後に7-8で、株主間契約、信託、議決権管理を確認します。株式を移すのか、議決権だけを安定させるのか、経済的利益と経営権をどう分けるのか。それを整理する、補完的な視点です。

第七テーマを読むときの注意点

このテーマでは、強い手法ほど慎重に扱います。

自己株式取得、種類株式、スクイーズアウト、信託は、いずれも有効に機能する場合があります。しかし、手法だけを先に選んでしまうと、会社法上の手続違反、税務上の時価の問題、少数株主との紛争、遺留分問題、事業承継税制の要件不充足、金融機関への説明困難につながりかねません。

特に、非上場株式の移動では、民事上の価格と税務上の時価が常に同じとは限りません。少数株主からの買取り、自己株式取得、スクイーズアウト、従業員持株会への譲渡、親族間売買。それぞれについて、どの目的の評価なのかを切り分けて考える必要があります。

また、株主対策は、後継者だけのために行うものではありません。会社を守るためには、他の相続人、少数株主、従業員、金融機関、取引先に対して、なぜその株主構成が必要なのかを説明できることが求められます。

第七テーマで重視するのは、後から説明できる承継設計です。

相談前に整理しておきたい資料

第七テーマを読み進める前、または専門家に相談する前には、次の資料を整理しておくと検討が進みやすくなります。

  • 株主名簿、定款、登記事項証明書
  • 過去の株式譲渡契約書、贈与契約書、株券の有無
  • 株主総会議事録、取締役会議事録
  • 同族会社等の判定に関する明細書、法人税申告書、相続税申告書
  • 自社株評価資料、相続関係図、後継者候補
  • 少数株主との関係、所在不明株主の有無、過去の配当状況
  • 自己株式の有無、種類株式の有無
  • 金融機関借入と経営者保証の状況

これらを最初から完璧にそろえる必要はありません。ただし、「誰が株主か」「何株持っているか」「議決権は何個か」「過去にどのような株式移動があったか」が分からない状態では、事業承継税制の適用判断も、承継後の経営権判断も、不安定なものになってしまいます。

このテーマを読み終えた後に接続するテーマ

第七テーマは、第六テーマ「自社株評価・事業用資産評価・納税額試算」と密接に関係します。誰が株式を取得するかによって評価方式が変わることがあり、少数株主株式の評価と、後継者が取得する支配株式の評価は同じとは限りません。

また、第八テーマ「相続法務・遺言・遺留分・親族間合意」とも接続します。後継者に株式を集中させるほど、他の相続人への配慮や遺留分対策が重要になってくるためです。

さらに、第九テーマ「承継後管理・報告・継続届出」、第十テーマ「取消事由・免除事由・出口対応」とも関係します。事業承継税制を適用した後に株式を動かす、議決権構成を変える、組織再編を行う、会社を売却・廃業する。こうした場面では、納税猶予の取消リスクや届出義務が問題になります。

つまり第七テーマは、事業承継税制の「入口前の整理」であると同時に、承継後の経営判断を狭めないための土台でもあるのです。

ご相談について

株主構成や議決権管理の問題は、表面化するまで見過ごされがちです。

しかし、特例承継計画の提出、贈与・相続による自社株承継、株価評価、相続税申告、自己株式取得、従業員持株会の導入、種類株式の設計、将来のM&Aや組織再編。こうしたことを考え始めた途端に、株主名簿や議決権割合の不整合が一気に問題として浮かび上がってきます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、自社株評価、事業承継税制、株主構成、納税資金、承継後管理を切り離さず、会社の実態に即して整理する支援を行っています。

後継者に株式を集中させるべきか。安定株主を活用すべきか。少数株主からの株式取得を検討すべきか。名義株や所在不明株主をどう確認すべきか。事業承継税制の適用前に株主構成を見直すべきか。こうした点で迷っている場合は、まず現在の株主構成と議決権の状況を可視化するところから、ご相談ください。

税額だけでなく、後継者が承継後に会社を守れるかどうかを同じテーブルで検討すること。それが、事業承継税制を経営判断として使うための第一歩です。

重要ポイントの振り返り

振り返り項目要点
第七テーマの役割事業承継税制の前提となる株主構成、議決権、少数株主、名義株、自己株式、種類株式等を整理するテーマ
中心メッセージ事業承継税制を使っても、株式分散や少数株主問題を放置すれば後継者の経営権は安定しない
最初に読む記事7-1「株式分散が事業承継税制と経営権に与える影響」
承継前調査の基礎7-2で株主名簿、名義株、所在不明株主を確認する
株式移転の基本7-3で譲渡制限株式と譲渡承認手続を確認する
株式集約の任意手法7-4で自己株式取得と金庫株の活用を確認する
議決権設計7-5で種類株式、属人的株式、黄金株の活用と限界を確認する
安定株主の活用7-6で従業員持株会、中小企業投資育成会社、安定株主の位置づけを確認する
強制取得手法7-7でスクイーズアウトや株式集約手法の位置づけを確認する
補完的な議決権管理7-8で株主間契約、信託、議決権管理を確認する
相談前に必要な姿勢手法ありきではなく、株主確定、議決権割合、税務上の時価、相続関係、将来の出口を同時に整理する