特例承継計画の役割と提出期限|事業承継税制の特例措置を使う前に確認すべきこと

法人版事業承継税制の特例措置を検討するとき、最初に確認しておきたい手続が「特例承継計画」です。

特例承継計画は、単なる事前の届出ではありません。後継者を誰にするのか、いつ株式を承継するのか、承継までに会社をどう整えていくのか、そして承継後にどのような経営を行っていくのか。こうした点を、制度の適用前にあらかじめ整理しておくための計画です。

事業承継税制は、非上場株式等にかかる贈与税・相続税について、納税猶予や免除を受けられる可能性のある制度です。なかでも法人版の特例措置では、一般措置と比べて、対象となる株式数や猶予割合、後継者数といった面で大きく拡充されています。ただし、この特例措置を使うには、原則として特例承継計画を都道府県へ提出し、確認を受けておく必要があります。

制度の位置づけとしては、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を後継者が贈与・相続等によって取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税が猶予され、後継者の死亡等によって猶予税額の納付が免除される、というものです。

出典:国税庁|法人版事業承継税制
出典:国税庁|No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

本記事では、特例承継計画について、様式の逐条的な書き方ではなく、実務上どのような意味を持つのか、提出期限をどう捉えるべきか、そして提出前にどのような判断をしておくべきかを整理していきます。

目次

特例承継計画とは何か

特例承継計画とは、法人版事業承継税制の特例措置を受けるために、会社が作成し、認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けたうえで、都道府県へ提出する計画です。

特例措置を利用するためには、平成30年4月1日から令和9年9月30日までの間に、特例承継計画を都道府県へ提出する必要があります。あわせて、特例承継計画を提出した事業者については、平成30年1月1日から令和9年12月31日までに贈与・相続によって会社の株式を取得した後継者が、特例措置の対象となります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ここで押さえておきたいのは、特例承継計画が「税務申告書」でも「納税猶予の認定申請書」でもない、という点です。

実務の流れとしては、まず特例承継計画を作成・提出し、その後に株式の贈与または相続による承継があり、都道府県知事への認定申請を行い、さらに税務署へ贈与税または相続税の申告を行う、という段階を踏んでいきます。つまり、特例承継計画の作成・提出、株式の贈与・相続、認定申請、税務申告という順序です。

出典:中小企業庁|特例承継計画に関する指導及び助言を行う機関における事務について

このように、特例承継計画を提出しただけで納税猶予が確定するわけではありません。

その一方で、特例承継計画を適切な期限内に提出していなければ、法人版事業承継税制の「特例措置」を使う入口にすら立てない可能性があります。ここが、この計画の持つ意味の重さです。

提出期限は令和9年9月30日まで

特例承継計画の提出期限は、令和9年9月30日までとされています。これは、令和8年度税制改正により、従前の提出期限から1年6か月延長されたものです。非上場株式等にかかる相続税・贈与税の納税猶予の特例制度について、特例承継計画の提出期限を1年6か月延長する旨が示されています。

出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ただし、ここで混同しやすい期限が二つあります。

一つは、特例承継計画そのものの提出期限です。これは、令和9年9月30日までです。

もう一つは、特例措置の適用対象となる贈与・相続等の期限です。こちらは、令和9年12月31日までに贈与または相続等によって株式を取得する必要があります。

この二つは、別の期限です。仮に特例承継計画を令和9年9月30日までに提出していたとしても、令和9年12月31日までに対象となる贈与・相続等が行われなければ、特例措置の適用対象期間から外れてしまう可能性があります。

なお、提出にあたっては、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けた旨を記載した特例承継計画を、令和9年9月30日までに提出する必要があります。期限が土日祝等の休日にあたる場合には、翌営業日をもって期限とみなされます。申請様式や添付書類は改正されることがありますので、提出時には必ず最新の様式を確認してください。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類

提出期限が延長されても、検討を後回しにしてよいわけではない

提出期限が延長されると、つい「まだ時間がある」と受け止められがちです。

しかし、事業承継税制の検討は、期限前に書類を出しさえすれば足りる、というものではありません。

特例承継計画には、後継者の氏名、事業承継の時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画、そして認定支援機関による指導・助言の内容などを記載します。記載事項としては、会社、特例代表者、特例後継者、株式等を取得するまでの期間における経営計画、承継後5年間の経営計画などが挙げられます。

出典:中小企業庁|特例承継計画に関する指導及び助言を行う機関における事務について

これらは、会社の実態を見ずに、短時間で整えられるものではありません。

たとえば、次のような点です。後継者は固まっているか。先代経営者がどの株式を保有しているか。先代以外の親族や役員、従業員、少数株主が株式を持っていないか。現在の株価はどの程度か。贈与で承継するのか、相続を待つのか。承継後の議決権割合は安定するのか。他の相続人との関係は整理できるのか。納税猶予を受けた後に、会社の売却・再編・廃業の可能性はないのか。

こうした論点を確認しないまま、特例承継計画だけを形式的に提出してしまうと、後の認定申請、税務申告、継続届出、あるいは取消リスクといった場面で、問題が一気に表面化することがあります。

提出期限は、あくまで「最後に書類を出せる期限」であって、「承継の判断を始めればよい期限」ではないのです。

特例承継計画は、特例措置を使うための入口である

法人版事業承継税制には、一般措置と特例措置があります。

特例措置では、一般措置と比べて、対象株式数の上限撤廃、納税猶予割合100%、複数株主から最大3人の後継者への承継など、制度上の拡充がなされています。両者の主な違いとして、対象株数、猶予割合、承継パターン、雇用確保要件などが整理されています。

出典:国税庁|No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

そのため、法人版事業承継税制を本格的に検討する場合、多くの会社では、まず特例措置の適用可能性を確認することになります。

そして、その特例措置の入口となるのが、特例承継計画です。

ただし、特例承継計画の確認を受けたことと、最終的に納税猶予を受けられることとは、同じではありません。特例措置を受けるには、その後に都道府県知事の認定を受け、税務署への申告において必要書類を添付し、担保提供などの税務上の手続も行う必要があります。さらに、適用後も年次報告や継続届出といった管理が続いていきます。具体的には、認定後は都道府県庁へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を提出する流れです。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

つまり、特例承継計画は「ゴール」ではなく、「入口」なのです。

特例承継計画に記載する主な内容

特例承継計画では、主に次のような内容を整理していきます。

記載項目実務上の意味
会社について制度対象となる会社の基本情報を整理する
特例代表者について株式を承継させる予定の先代経営者等を明確にする
特例後継者について株式を承継する予定の後継者を明確にする
株式承継までの経営計画承継予定時期までの経営課題と対応方針を整理する
承継後5年間の経営計画後継者が承継後にどのような経営を行うかを整理する
認定支援機関による指導・助言計画内容について専門的な確認・助言を受けたことを示す

ここで注意しておきたいのは、ここでいう事業計画が、単なる売上目標や利益目標ではない、という点です。

承継後5年間の経営計画については、必ずしも設備投資、新事業展開、売上目標、利益目標の記載を求めるものではありません。後継者が先代経営者や認定支援機関と相談のうえ、事業の持続・発展に必要と考える内容を記載する、という趣旨です。

出典:中小企業庁|特例承継計画に関する指導及び助言を行う機関における事務について

したがって、特例承継計画で問われているのは、見栄えのよい計画ではありません。後継者が経営権を引き継いだ後に、会社をどのように維持し、どのような課題に向き合い、どのような体制で経営を続けていくのか。そうした、承継判断の土台となる考え方です。

認定経営革新等支援機関の関与が必要になる

特例承継計画の作成にあたっては、認定経営革新等支援機関による指導・助言を受ける必要があります。

認定経営革新等支援機関とは、中小企業が安心して経営相談等を受けられるよう、専門知識や実務経験が一定水準以上にあると国が認定した支援機関です。具体的には、商工会・商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などが、主な認定支援機関として位置づけられています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

この認定支援機関の役割は、単に様式へ名前を書くことではありません。

特例承継計画には、後継者、承継予定時期、承継時までの経営見通し、承継後の経営計画などが含まれます。これらはいずれも、会社の財務状況、株主構成、資金繰り、経営課題、後継者体制と切り離して考えることができません。

たとえば、後継者を誰にするかは、単なる親族関係だけで決まるものではありません。代表者として経営できるか、議決権を安定して確保できるか、他の株主との関係は整理できるか、金融機関や取引先に説明できるか、といった点も関わってきます。

また、承継予定時期を決めるにも、株価、贈与税・相続税、納税猶予額、先代経営者の退任時期、後継者の代表就任時期、会社の財務状態などを見ていく必要があります。

ですから、認定支援機関の関与は、形式的な手続ではなく、承継判断の質を高めるための重要なプロセスとして捉えるべきものです。実際、特例承継計画の作成・提出にあたっては認定経営革新等支援機関の指導・助言が必要であり、対象会社が計画を作成し、認定支援機関がそこに所見を記載する、という整理になっています。

特例承継計画を出す前に確認すべき論点

特例承継計画を提出する前には、少なくとも次の論点を整理しておく必要があります。

後継者は本当に決まっているか

特例承継計画には、特例後継者の氏名を記載します。特例後継者として氏名を記載された者でなければ、事業承継税制の特例の認定を受けることはできません。

出典:中小企業庁|特例承継計画に関する指導及び助言を行う機関における事務について

後継者の変更ができないわけではありませんが、変更には手続が必要です。

後継者がまだ固まっていない段階で計画を出す場合には、将来の変更可能性も踏まえたうえで、どの程度まで検討を済ませておくかを、慎重に考えておく必要があります。

どの株式を、誰から、誰に承継するのか

特例承継計画は、後継者名だけを書けば足りるものではありません。

実際の制度適用では、先代経営者からの贈与・相続なのか、先代以外の株主からの贈与・相続も含むのか、後継者が1人なのか複数なのか、議決権割合がどう変わるのか、といった点が重要になります。

株主名簿が古い、名義株が疑われる、親族や従業員に株式が分散している、自己株式がある、種類株式がある。こうした場合には、計画段階で確認すべき事項が増えていきます。

事業承継税制は税務制度ですが、その前提となるのは株主構成と議決権です。ここを曖昧にしたまま計画を作成すると、後の認定申請や相続発生時に、問題が出てくることがあります。

贈与で進めるのか、相続を待つのか

特例承継計画を提出した後、実際の承継方法としては、生前贈与による承継と、相続発生後の承継が考えられます。

生前贈与であれば、経営権の移転時期をコントロールしやすい一方で、後継者が代表者として経営を担い、承継後の管理を行うことが前提になります。

相続承継であれば、先代経営者の生前中は株式移転を行わない、という選択になりますが、相続開始時の株価、遺産分割、他の相続人との関係、相続税申告期限までの手続が問題になってきます。

どちらが有利かは、税額だけで判断できるものではありません。後継者の経営準備、先代の関与、会社の資金繰り、株価の見通し、親族間の合意、将来の売却・廃業の可能性まで含めて、比較していく必要があります。

自社株評価と納税資金の見通しはあるか

特例承継計画の段階では、まだ税務申告書を作成するわけではありません。

しかし、制度の適用を検討する以上、自社株の概算評価と納税猶予額の見通しは、避けて通れません。

自社株評価額が高ければ、事業承継税制の効果は大きく見えるかもしれません。その一方で、猶予対象外の財産にかかる相続税、担保提供、取消時の納付リスク、後継者個人の資金繰りについても、あわせて考えておく必要があります。

「納税猶予を使えば資金問題は解決する」と考えるのは危険です。猶予される税額と、実際に残る資金負担とは、分けて確認しておかなければなりません。

承継後に会社をどう維持するのか

特例承継計画には、承継後5年間の経営計画を記載します。

これは、形式的な作文ではなく、承継後に会社を継続していくための考え方を整理する部分です。

たとえば、承継後に後継者が代表者として経営を行うのか。先代経営者はどのように関与するのか。経理・財務・営業・人事の管理体制は、後継者に引き継げるのか。金融機関に説明できる数字や計画はあるのか。株式を承継した後に、会社の売却、組織再編、廃業の可能性はどの程度あるのか。

事業承継税制は、適用後も一定の管理が続く制度です。そのため、承継後の会社運営が不透明なままでは、制度を使うこと自体が、かえって将来の選択肢を狭めてしまう可能性があります。

計画提出後に変更が必要になった場合

特例承継計画は、一度提出すれば一切変更できない、というものではありません。

確認を受けた後に計画内容に変更があった場合や、確認を受けた会社が消滅するなどの一定の組織再編があった場合には、変更申請書または報告書を都道府県へ提出し、再度確認を受けることができます。その際には、変更事項等を反映した計画を記載し、あらためて認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けることが必要になります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

この点は、実務上とても重要です。

事業承継は、計画どおりに進むとは限りません。後継者候補が変わることもあります。贈与予定だったものを、相続まで待つことになる場合もあります。株主構成の整理が思うように進まないこともあります。会社の業績、資金繰り、金融機関対応、組織再編の必要性が、途中で変わることもあります。

ですから、特例承継計画を作成するときには、「提出して終わり」ではなく、将来の変更可能性まで見据えて、根拠資料と検討の過程を残しておくことが大切です。

認定申請・税務申告との違い

特例承継計画、都道府県知事の認定申請、税務署への申告は、それぞれ役割が異なります。

特例承継計画は、特例措置を使うための事前の計画です。

認定申請は、実際に贈与または相続等が行われた後、制度要件を満たすことについて、都道府県知事の認定を受ける手続です。

税務申告は、贈与税または相続税について納税猶予の適用を受けるため、税務署へ申告書や添付書類を提出する手続です。

この三つを混同すると、手続漏れが起きやすくなります。特例承継計画を提出しただけでは、認定申請は終わっていません。都道府県知事の認定を受けただけでは、税務署への申告は終わっていません。そして、税務申告をした後も、年次報告や継続届出といった管理が続いていきます。

特例承継計画は重要な手続ですが、あくまで制度全体の一部です。だからこそ、最初の段階で、全体の手続を見通しておく必要があります。

特例承継計画を形式的に作ることのリスク

特例承継計画を、期限に間に合わせるためだけの書類として作成してしまうと、次のようなリスクがあります。

まず、後継者の選定が不十分なまま進んでしまうリスクです。後継者が経営を担えるか、代表者要件を満たせるか、議決権を安定して確保できるか。こうした点が曖昧なままでは、後の認定申請や承継後の管理で問題になります。

次に、株主構成の確認が不十分なリスクです。株主名簿と実態がずれている、名義株がある、少数株主がいる、相続で株式が分散する可能性がある。こうした問題は、計画提出の時点では表面化しないことがあります。しかし、実際の贈与・相続、認定申請、税務申告の場面では、無視できません。

さらに、自社株評価や納税資金の検討が不十分なリスクもあります。事業承継税制は納税猶予制度であって、非課税制度ではありません。将来、取消事由に該当すれば、猶予税額の納付が必要になる可能性があります。制度の効果だけを見て、取消時の資金繰りや、将来の売却・廃業の可能性を考えないまま進めてしまうと、かえって後継者の経営判断を縛ることになりかねません。

最後に、関係者への説明が不足するリスクです。自社株を後継者に集中させる場合、他の相続人、役員、少数株主、金融機関への説明が必要になることがあります。税制上の要件を満たしていても、関係者間の納得が得られていなければ、承継後の経営に支障が出ることがあります。

特例承継計画は、こうした論点を早めに洗い出すための機会として、活用していくべきものです。

提出前に整えておきたい資料

特例承継計画を作る前には、少なくとも次の資料を確認しておくと、検討が進めやすくなります。

資料確認する目的
直近の決算書・申告書株価、財務状況、資金繰り、利益構造を把握する
株主名簿株式保有者、議決権割合、株式分散状況を確認する
定款譲渡制限、種類株式、株式に関する定めを確認する
登記事項証明書代表者、役員、会社の基本情報を確認する
同族会社等の判定資料同族関係者、議決権、株主グループを確認する
借入金・担保・保証関係資料後継者が引き継ぐ金融面の負担を確認する
先代経営者の財産・相続関係資料自社株以外の財産、相続人、遺留分、納税資金を確認する
事業計画・資金繰り資料承継後の経営見通しを確認する

これらの資料を確認せずに計画を作成すると、特例承継計画の内容と、実際の承継実務との間にずれが生じてしまう可能性があります。

特例承継計画で特に注意したい会社

次のような会社では、特例承継計画の作成前に、より慎重な検討が必要になります。

状況注意点
株式が親族・役員・従業員に分散している後継者の議決権確保と複数株主からの承継設計が必要
株主名簿が古い、または名義株が疑われる実際の株主確定が先決になる可能性がある
不動産・有価証券を多く保有している資産保有型会社・資産運用型会社の判定に注意が必要
後継者が複数いる後継者間の議決権、役割分担、将来の対立リスクを検討する
他の相続人との関係が複雑である遺留分、遺言、代償財産、合意形成が重要になる
将来M&Aや廃業の可能性がある納税猶予の取消・再計算・出口対応を見据える必要がある
金融機関借入や経営者保証が大きい後継者の財務負担と金融機関への説明が必要になる
組織再編や持株会社化を検討している承継税制との関係、適格・非適格、取消リスクを確認する

このような会社では、特例承継計画そのもの以上に、計画の前提となる承継方針の整理が重要になってきます。

古い期限情報に注意する

事業承継税制は、これまでに複数回の改正・期限延長が行われてきました。

そのため、過去のパンフレット、書籍、解説記事、古い様式では、特例承継計画の提出期限が、現在とは異なる記載になっていることがあります。

令和8年度税制改正により、法人版の特例承継計画の提出期限は、令和9年9月30日まで延長されています。実務では、申請の時点で、中小企業庁のページ、都道府県の窓口、最新の様式、関係法令を確認しておく必要があります。

出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類

特に、事業承継税制は、都道府県への認定手続と、税務署への申告手続が連動する制度です。片方の情報だけを見て進めるのではなく、制度全体を確認しながら進めていく必要があります。

大切なのは「提出するか」ではなく「何を判断して提出するか」

特例承継計画を提出すること自体は、事業承継税制の検討において、重要な一歩です。

しかし、本当に大切なのは、提出することそのものではありません。提出の前に、会社の株式、後継者、経営体制、財務、相続関係、納税資金、承継後の管理を、どこまで整理できているか。ここが問われます。

特例承継計画は、将来の贈与・相続に備えて、特例措置の入口を確保しておくための手続です。それと同時に、後継者への経営権の移転を、会社としてどのように進めていくかを考える機会でもあります。

税務上のメリットだけを見て急いで提出するのではなく、次の問いに答えられる状態を目指していくべきです。

確認すべき問い判断の意味
誰に承継するのか後継者の確定と経営体制の整理
いつ承継するのか贈与・相続・株価・経営移行時期の判断
どの株式を承継するのか議決権と納税猶予対象株式の整理
誰から承継するのか先代経営者・先代以外株主からの承継設計
承継後に会社を維持できるか継続要件、資金繰り、経営計画の確認
取消時に対応できるか将来の売却・廃業・再編リスクの確認
関係者に説明できるか親族、株主、金融機関への説明可能性

この整理を行っておくことで、特例承継計画は、単なる提出書類ではなく、承継判断の土台になっていきます。

まとめ

特例承継計画は、法人版事業承継税制の特例措置を使うための、重要な入口です。

現在の情報では、特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日まで、特例措置の対象となる贈与・相続等の期限は令和9年12月31日まで、とされています。両者は別の期限であり、計画を提出しただけで納税猶予が確定するわけではありません。

特例承継計画で整理すべきなのは、後継者、承継時期、経営見通し、承継後の事業計画、そして認定支援機関による指導・助言です。

ただ、実務上は、それだけでは足りません。自社株評価、株主構成、議決権、相続関係、納税資金、金融機関対応、承継後の管理、取消リスク。こうした点まで含めて、制度を「使えるか」ではなく「使うべきか」を判断していく必要があります。

特例承継計画は、早めに提出しておけば安心、というものでもなければ、期限の直前に形式的に出せば足りる、というものでもありません。会社を次の世代へ安定して引き継いでいくために、どのような承継の形が会社にとって無理のないものなのか。それを整理するための計画として扱っていくことが、何より大切だと考えています。

振り返り

項目重要ポイント
特例承継計画の役割法人版事業承継税制の特例措置を使うための入口となる計画
提出期限令和9年9月30日まで
承継実行期限令和9年12月31日までの贈与・相続等が対象
提出先会社の主たる事務所が所在する都道府県
必要な関与認定経営革新等支援機関による指導・助言
主な記載事項後継者、承継予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画
注意点計画提出だけでは納税猶予は確定しない
実務上の要点株主構成、自社株評価、納税資金、相続関係、承継後管理まで確認する
期限延長の捉え方検討を後回しにする理由ではなく、承継判断を整えるための猶予期間と捉える
専門家に相談すべき場面後継者未確定、株式分散、株価高額、相続関係が複雑、将来の売却・廃業可能性がある場合

特例承継計画を提出すべきか、また提出前にどの程度まで株価・株主構成・後継者体制を整理しておくべきかは、会社ごとの状況によって判断が変わってきます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継税制の適用可否だけでなく、自社株評価、株主構成、資金繰り、承継後の管理負担まで含めて、後から説明できる形で論点を整理する支援を行っています。

特例承継計画の提出を検討している段階でも、あるいは後継者や承継時期にまだ迷いがある段階でも、まずは現在の株式・財務・後継者体制を確認するところが、出発点になります。

具体的な検討をご希望の場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。

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