不合理分割と土地評価の注意点|土地を分けて評価額を下げる前に確認すべき実務判断

土地の相続税評価を考えるとき、「土地を分ければ評価額が下がるのではないか」というご相談をいただくことがあります。

たしかに、土地は分け方によって評価額が変わります。正面路線価、奥行、間口、接道、不整形地補正、無道路地補正といった要素の影響を受けるためです。角地を分ける、広い土地を分ける、自宅敷地の一部を子へ贈与する、遺産分割で兄弟がそれぞれ土地の一部を取得する。こうした場面では、評価単位の取り方がそのまま相続税額に響いてきます。

ただし、土地を形式的に分筆・分割したからといって、いつでも分割後の画地ごとに評価できるわけではありません。分割後の土地が宅地として通常の用途に使えない、無道路地・帯状地・著しく狭い土地を生み出してしまう、接道義務を満たさない。このように経済合理性を欠く分割については、税務上「不合理分割」として、分割前の画地を1画地として評価することがあります。

そして、不合理分割の問題は、単なる評価額の話にとどまりません。

節税を目的に土地を細かく分けても、評価上は一体評価され、期待した評価減が認められない。そればかりか、相続人どうしの納得感、将来の建築可能性、売却可能性、二次相続、相続登記、共有化、納税資金にまで影響が及ぶことがあります。

この記事では、土地を分けて評価額を下げることを検討する前に、ぜひ押さえていただきたい不合理分割の考え方と、実務上の注意点を整理します。

目次

まず結論|土地分割は「できるか」より「後から説明できるか」が重要

不合理分割で最初に押さえておきたいポイントを、表にまとめます。

判断項目実務上のポイント
原則宅地は、利用の単位となっている1区画ごとに評価する
相続・贈与後の分割原則として、取得者ごとの分割後画地で評価する場面がある
例外分割後の画地が通常の用途に供することができないなど、著しく不合理な場合は分割前の画地で評価する
典型例無道路地、帯状地、著しく狭あいな土地、接道義務を満たさない土地などを作り出す分割
計算方法分割前全体を1画地として評価し、各土地の価額比で按分するのが基本
贈与との関係生前贈与による不合理分割が、後日の相続で取得する土地評価に影響することがある
二次相続一次相続で一体評価したからといって、二次相続以降も常に同じとは限らない
実務判断税額だけでなく、建築・売却・管理・登記・家族間説明まで確認する

国税庁は、宅地の価額を1画地の宅地、すなわち利用の単位となっている1区画ごとに評価するという原則を示しています。そのうえで、贈与や遺産分割などによる宅地の分割が親族間等で行われ、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど著しく不合理と認められるときは、分割前の画地を1画地の宅地として扱うとしています。

出典:国税庁|財産評価基本通達 第2章 第1節 通則

不合理分割とは何か

不合理分割とは、相続や贈与などで土地を分けた結果、分割後の画地が通常の宅地として利用しにくくなり、その分割が著しく不合理と認められる状態をいいます。

ここで誤解されやすいのですが、「土地を分けること自体」が否定されるわけではありません。遺産分割で土地をどう取得するか、贈与で土地の一部を移転するか、分筆するか。これらは、当事者の合意や法務・登記の要件を満たす限り、民法上は可能です。

問題になるのは、税務上の評価です。相続税・贈与税の評価で、形式的に分割した後の姿をそのまま評価してしまうと、実態に合わない過度な評価減が生じることがあります。そのため、分割後の画地が通常利用できないほど不自然な場合には、分割前の画地を基準に評価単位を見直すことになります。

不合理分割の典型例

国税庁の質疑応答事例では、次のような分割が、不合理分割の典型例として示されています。

典型例問題となる理由
現実の利用状況を無視した分割実際の利用単位と分割後の画地が対応していない
無道路地を作り出す分割分割後の一方が道路に接しなくなる
無道路地かつ不整形地を作り出す分割接道と形状の双方に大きな制約が生じる
極端な不整形地を作り出す分割宅地としての通常利用が難しくなる
奥行短小地と無道路地を作り出す分割それぞれ単独では有効利用しにくい
接道義務を満たさない間口狭小地を作り出す分割建築基準法上の利用可能性に問題が生じる

国税庁は、現実の利用状況を無視した分割、無道路地、不整形地、奥行短小地、接道義務を満たさない間口狭小地を作り出す分割などについて、こう整理しています。分割時だけでなく将来においても有効な土地利用が図られず、通常の用途に供することができない著しく不合理な分割であり、全体を1画地の宅地として評価したうえで、個々の宅地を評価するのが相当である、と。

出典:国税庁|宅地の評価単位-不合理分割(1)

不合理分割が問題になる場面

不合理分割が顔を出すのは、相続税申告の場面だけではありません。生前贈与や二次相続でも問題になります。

場面不合理分割が問題になる理由
相続時の遺産分割相続人ごとに土地を分けた結果、評価単位が変わる
生前贈与親が土地の一部を子へ贈与し、残地との関係で不自然な画地が生じる
贈与後の相続生前贈与で不合理分割が行われた後、残地を相続する場合に一体評価が問題になる
二次相続一次相続で分割された土地が、次の相続でどう評価されるかが問題になる
同族会社・親族間取引関係者間で土地を分け、評価減を狙ったように見える場合に問題になる
農地・雑種地の宅地比準評価宅地比準で評価する土地にも不合理分割の考え方が準用される場合がある
小規模宅地等の特例との関係土地の取得者・利用状況・面積の切り方が特例判断に影響することがある

なかでも注意したいのが、生前贈与です。

たとえば、親が自宅敷地のごく一部を子に贈与し、その贈与部分が単独では通常の宅地として利用できない場合、贈与の時点で不合理分割とされることがあります。そして、その後に親の相続が起き、残りの土地を同じ子が取得するとき、残りの土地だけを単独で評価するのではなく、贈与済み部分と残地の全体を1画地として評価し、価額比で按分する取扱いが問題になってきます。

国税庁は、生前贈与で取得したA土地が単独では通常の宅地として利用できない場合、その贈与における土地分割を不合理なものと認めています。したがって、後日の相続で取得するB土地についても、分割前の画地であるA・B土地全体を1画地として評価し、A・B土地を別個に評価した価額の合計額に占めるB土地の価額比を乗じて評価する、という考え方を示しています。

出典:国税庁|宅地の評価単位-不合理分割(2)

不合理分割の評価方法|面積按分ではなく「価額比」で按分する

不合理分割に該当する場合、分割後の各土地をそのまま単独評価するのではなく、分割前の全体を1画地として評価します。

そのうえで、個々の土地の評価額は、原則として次の考え方で計算します。

個々の土地の評価額 = 分割前全体を1画地として評価した価額 × その土地を単独評価した価額 ÷ 分割後各土地を単独評価した価額の合計額

ここで気をつけたいのは、単純な面積比で按分するわけではないという点です。

不合理分割で生じる土地は、接道、間口、奥行、形状、角地・二方路線、無道路、奥行短小、不整形といった要素の影響を強く受けます。つまり、同じ面積でも価値が異なります。だからこそ、各土地をいったん単独評価した価額の比率を用いて、全体の評価額を配分するという考え方が採られるのです。

按分方法実務上の注意点
面積比土地の形状・接道・角地効果を反映できないため、原則的な考え方ではない
価額比分割後各土地を単独評価した価額の比で、分割前全体の評価額を配分する
任意按分相続人間の合意だけで税務評価額を決めることはできない
鑑定評価特殊事情がある場合には検討余地があるが、通達評価との関係を説明する必要がある

価額比で按分する場合でも、その前に整理しておくべきことがあります。どの範囲を分割前の画地と見るか。どの土地を単独評価した価額で比較するか。不合理分割に当たる部分は全体なのか、一部なのか。ここを先に整理しておかなければ、計算そのものが定まりません。

「一部だけ不合理」なら、全体を必ず一体評価するとは限らない

実務で判断に迷いやすいのが、合理的な分割部分と不合理な分割部分が混在しているケースです。

たとえば、A土地は接道・形状・面積ともに標準的で単独利用できる一方、B土地・C土地だけが無道路地や狭小地になっている。このような場合、A・B・C全体を常に一体評価すべきなのか、それともB・Cだけを是正すれば足りるのか、という疑問が出てきます。

この点については、国税不服審判所の平成22年7月22日裁決が参考になります。遺産分割の一部が不合理分割に当たる場合には、不合理分割に当たる部分についてのみ是正すれば足りるとされ、その部分のみ分割前の画地により評価単位を判定し、その余の部分は分割後の画地により評価単位を判定するのが相当である、と示されています。

出典:国税不服審判所|評価単位 公表裁決事例等の紹介

これは、評価単位の是正を「過度な評価減を防ぐために必要な範囲」で行うという考え方です。不合理分割があるからといって、いつでも全土地を一体評価するわけではない、ということになります。

状況評価単位の考え方
すべての分割後画地が通常利用困難分割前全体を1画地として評価する方向
一部のみ通常利用困難不合理部分のみ分割前画地で是正し、その他は分割後画地で評価する方向
各画地が標準的で単独利用可能分割後の取得者単位・利用単位で評価する方向
生前贈与部分が単独利用困難贈与時点だけでなく、後日の相続評価にも影響する可能性
過去の不合理分割後に所有・利用関係が変化課税時期の現況、権利関係、利用可能性を再確認する

不合理分割を判断する実務上の順序

不合理分割かどうかは、「土地を分けた結果、評価額が下がるか」だけで決まるものではありません。次の順序で確認していきます。

1. もともとの評価単位を確認する

まずは、分割前の土地がどのような評価単位だったのかを確認します。

確認事項見るべき資料
登記上の筆登記事項証明書、公図、地積測量図
現況地目現地写真、固定資産税課税明細書、航空写真
利用単位建物配置図、賃貸借契約、利用状況
権利関係借地権、貸家建付地、使用貸借、地上権、抵当権
所有者被相続人、相続人、共有者、同族会社
都市計画用途地域、市街化区域、市街化調整区域
建築制限接道、建ぺい率、容積率、セットバック

宅地評価では、1筆ごとではなく、利用の単位となっている1区画を評価単位とします。国税庁も、宅地の価額は1画地の宅地ごとに評価するとし、1画地の判定は、原則として自由な使用収益を制約する他者の権利の有無や、権利の種類・権利者の違いにより区分するという考え方を示しています。

出典:国税庁|宅地の評価単位

2. 分割後の各土地が単独で通常利用できるか確認する

次に、分割後の各土地が、単独で通常の宅地として利用できるかを確認します。

確認項目不合理分割の判断に与える影響
道路に接しているか無道路地を作る分割は不合理分割になりやすい
接道間口が足りるか接道義務を満たさない場合、建築利用が制限される
面積が極端に小さくないか狭小地は単独利用が困難になりやすい
形状が極端に細長くないか帯状地・不整形地は通常利用が難しい場合がある
奥行が短すぎないか奥行短小地として利用価値が低下する
建物を建てられるか建築基準法・都市計画法の確認が必要
売却できる単位か市場で独立した土地として取引可能か
インフラ接続が可能か水道・下水・ガス・電気の引込みが必要な場合がある
隣地と一体でなければ利用できないか実質的に独立利用できない場合は要注意

単独利用できるかどうかは、税務だけの問題ではなく、建築・不動産実務の問題でもあります。評価額だけを見て分割すると、税務上は一体評価されるうえに、実際の利用面でも建てられない・売れない・管理できない土地を作ってしまう、ということが起こり得ます。

3. 分割の目的と経済合理性を確認する

不合理分割は、形状の悪い土地を作った場合に限られません。「なぜそのように分けたのか」という目的こそ重要です。

分割目的実務上の評価
実際の利用状況に合わせた分割合理性を説明しやすい
建築計画・売却計画に合わせた分割図面、事業計画、買主との協議記録が重要
相続人ごとの取得希望に合わせた分割家族事情と利用可能性の両面を確認
農地・宅地・雑種地など地目に応じた分割地目・利用単位との整合性が重要
評価額を下げるためだけの細分化不合理分割とされるリスクが高い
将来の売却予定が不明なままの分割相続後の管理・納税資金リスクが残る

不合理分割の判断では、形式的に分筆されているかどうかより、中身を見ます。分割後の土地が現実に独立利用できるか。将来にわたり有効利用できるか。そして、その分割に経済的・生活上・事業上の合理性があるか。この三点を確認していくことになります。

贈与で土地を分ける場合の注意点

生前贈与で土地を分ける場合、「相続税評価額を下げるために一部だけ贈与する」という発想は、慎重に考える必要があります。

たとえば、親の自宅敷地のうち、道路に面していない奥の一部、幅が極端に狭い部分、建築できない細長い部分だけを子に贈与したとします。その贈与部分が単独では通常の宅地として利用できないとなれば、贈与税の評価時点で不合理分割とされる可能性があります。

しかも、問題は贈与時点で終わりません。後に親が亡くなり、子が残りの土地を相続するとき、生前贈与で切り出された土地と相続で取得する土地を一体として評価し、価額比で按分する必要が生じることがあるのです。

生前贈与で確認すべきこと理由
贈与する部分が単独利用できるか単独利用できないと不合理分割になりやすい
残地が通常利用できるか残地の価値低下・将来相続評価に影響する
贈与後の管理者は誰か名義だけ移しても管理実態が伴わないと説明が難しい
将来の相続人間の公平感特定の子だけが土地の一部を受ける理由が必要
相続時精算課税・暦年課税との関係贈与税だけでなく将来の相続税計算に影響する
遺留分・特別受益との関係民法上の不公平感が後から問題になることがある
将来の売却・建築可能性子が取得しても使えない土地では実益が乏しい

土地の贈与は、現金の贈与と違い、分け方そのものが将来の評価単位を左右します。贈与契約書や登記だけでなく、土地の形状、接道、利用計画、残地との関係まで、あらかじめ確認しておきたいところです。

相続で土地を分ける場合の注意点

相続では、家族間の納得感を優先して土地を分けることがよくあります。「兄は道路側、弟は奥側」「長男は建物部分、長女は駐車場部分」「配偶者は一部、子は残り」といった形です。

こうした分割そのものが、直ちに問題になるわけではありません。ただし、分割後の一方が無道路地になったり、極端に狭い土地になったり、接道義務を満たさなくなったりすると、不合理分割として分割前の画地評価が必要になる場合があります。

相続で特に意識していただきたいのは、評価額だけでなく、相続人が取得後の土地を実際にどう使うか、という視点です。

相続分割案確認すべきリスク
土地を縦に細長く分ける間口狭小、奥行長大、不整形地、建築困難
道路側と奥側に分ける奥側が無道路地になる可能性
建物敷地と庭・駐車場を分ける建物利用との一体性、貸家建付地評価への影響
自宅敷地を配偶者と子で分ける二次相続、配偶者居住、将来売却の制約
共有を避けるため細かく現物分割する各画地が独立利用できるか確認が必要
納税資金のため一部売却予定地を分ける売却可能性、測量、接道、譲渡税を確認する

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日です。分割協議が長引いても、申告期限は原則として延びません。だからこそ、土地分割案の検討は、評価・測量・相続人間の調整・納税資金の確認と同時並行で進めておく必要があります。

出典:国税庁|相続税の申告期限

二次相続での注意点|一次相続の評価がそのまま続くとは限らない

不合理分割は、二次相続でも悩ましい論点になります。

たとえば、一次相続で、配偶者と子が自宅敷地を分けて取得したとします。その時点では自宅として一体利用されていたため、一体評価を行いました。その後、配偶者が亡くなり、配偶者が取得していた土地部分を別の子が相続します。

このような場合、二次相続でも一次相続と同じく一体評価するのか。それとも、二次相続時点の所有・利用状況に基づいて別評価するのか。これを改めて検討する必要があります。

判断の出発点になるのは、課税時期の現況です。

二次相続で確認すべきこと判断への影響
一次相続後も一体利用されているか自宅・賃貸・事業用として一体性があるか
所有者が誰になっているか単独所有か共有か、隣地所有者との関係
建物所有者と土地所有者の関係使用貸借、賃貸借、借地権の有無
取得者が同じか異なるか二次相続後の使用・処分可能性
狭小地・無道路地が単独で残るか独立利用できない土地かどうか
過去の分割理由一次相続時の分割が評価減目的か、生活上の合理性があるか
現在の利用計画売却、建替え、居住継続、貸付の予定

一次相続で不合理分割として一体評価したことは、たしかに重要な事情です。とはいえ、それだけで二次相続以降の評価が自動的に決まるわけではありません。二次相続の課税時期における現況、所有関係、利用可能性、権利関係を、改めて確認することが欠かせません。

土地分割は税務だけで判断しない

不合理分割を検討するとき、税務評価だけを見ていては足りません。税務上は一体評価されるかどうかが中心論点になりますが、実際には次のような周辺論点が同時に動いています。

分野確認すべきこと
建築接道義務、建ぺい率、容積率、再建築可否、セットバック
登記分筆、相続登記、共有登記、地積更正
測量境界確定、実測面積、公簿面積との差異
不動産実務売却可能性、買主需要、隣地との一体利用
税務評価単位、不合理分割、地積規模、画地補正、小規模宅地
家族関係相続人間の公平感、代償金、将来の二次相続
納税資金売却予定地、換価可能性、延納・物納の現実性
管理草刈り、修繕、固定資産税、共有者間の意思決定

相続登記については、令和6年4月1日から義務化されています。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記する必要があり、義務化前に発生した相続も対象とされます。正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

出典:法務省|不動産を相続したらかならず相続登記!令和6年4月1日から義務化されました

土地を分けると、相続税評価だけでなく、登記と管理の単位も変わります。評価額を下げるために分けた土地が、将来の相続登記や売却ではかえって負担になる、ということも起こり得ます。

不合理分割と小規模宅地等の特例は混同しない

不合理分割と小規模宅地等の特例は、どちらも土地の相続税額に影響します。ただし、その判断の目的はまったく異なります。

論点判断目的
不合理分割評価単位をどう見るか
小規模宅地等の特例一定の宅地等について評価減を適用できるか
地積規模の大きな宅地一定規模以上の宅地について規模格差補正を使えるか
画地補正土地の形状・接道等を評価に反映するか
遺産分割誰がどの土地を取得するか

たとえば、自宅敷地を配偶者と子で分ける場合には、特定居住用宅地等の適用可否、取得者要件、所有継続・居住継続、限度面積の選択といった点が問題になります。一方で、その分け方自体が不合理分割に該当するかどうかは、あくまで評価単位の問題です。

同じ土地を扱っていても、判断軸は分けて整理する必要があります。特例で有利になるかどうかだけを見て分割すると、評価単位の判断でつまずくことがあります。

税務調査で説明できるように残すべき資料

不合理分割が問題になりそうな土地では、評価明細書の数字だけでは足りません。なぜその分割が合理的なのか、あるいはなぜ一体評価したのか。これを説明できる資料を残しておくことが大切です。

残すべき資料説明できること
登記事項証明書所有者、地目、地積、権利関係
公図筆の位置関係、道路・水路、隣接関係
地積測量図分筆後の形状、面積、間口、奥行
固定資産税課税明細書課税地目、評価額、地積
現地写真接道、形状、建物配置、利用状況
建物図面・配置図敷地と建物の一体利用状況
都市計画図用途地域、建ぺい率、容積率、市街化区域等
道路台帳・建築確認関係資料接道義務、道路種別、セットバック
賃貸借契約書貸家建付地、貸宅地、駐車場利用の実態
遺産分割協議書案誰がどの土地を取得するか
分割理由のメモ生活上・事業上・売却上の合理性
不動産会社・建築士等との相談記録売却可能性、建築可能性、利用計画
評価判断メモ評価単位、補正、按分計算、一体評価の理由

評価判断メモには、次のような形で判断の過程を残しておくと、後から説明しやすくなります。

記録すべき事項記載の方向性
分割の目的相続人の居住継続、売却予定、代償金確保など
分割前の利用状況自宅、貸家、駐車場、農地、未利用地など
分割後の利用可能性各画地が単独で建築・売却・利用できるか
接道の確認道路種別、間口、接道義務の充足
形状の確認間口、奥行、狭小、帯状、不整形の程度
一体評価の要否分割後画地が通常用途に供せるか
価額比按分各土地を単独評価した価額と按分根拠
相続人への説明税務評価と実際の使いやすさの違い
将来リスク二次相続、共有化、売却困難、登記負担

避けたい短絡的判断

「分筆すれば評価額が下がる」と考える

分筆や遺産分割で土地を分けても、不合理分割に該当すれば、分割前の画地で評価されることがあります。分筆登記の有無と、税務上の評価単位とは、同じではありません。

「道路に少しでも接していれば大丈夫」と考える

道路に接していても、間口が極端に狭く接道義務を満たさない場合や、実際の建築利用が困難な場合には、不合理分割の検討対象になります。

「相続人同士が合意していれば問題ない」と考える

遺産分割協議の合意は、法務上は重要です。しかし税務上の評価単位は、客観的な利用可能性や評価通達に基づいて判断されます。相続人間の合意だけで評価方法を決めることはできません。

「一部を贈与しておけば相続税対策になる」と考える

単独利用できない土地を贈与すると、贈与の時点で不合理分割となり、後日の相続評価にも影響する可能性があります。贈与税、相続税、遺留分、特別受益、将来の管理を、あわせて確認する必要があります。

「一次相続で一体評価したから二次相続も同じ」と考える

二次相続では、その時点の現況、所有者、利用状況、権利関係を改めて確認します。過去の評価方法を、機械的に引き継げばよいとは限りません。

「評価額が下がるなら不便な土地でもよい」と考える

相続税評価額が下がっても、売れない・建てられない・管理できない土地を相続人に残せば、長期的には不利益になることがあります。納税資金や将来の売却まで含めて検討する必要があります。

相談前に整理しておきたい事項

不合理分割の可能性がある土地についてご相談いただく場合、次の情報を整理しておくと、税務・法務・不動産実務の論点が見えやすくなります。

整理事項具体例
対象土地の資料登記簿、公図、地積測量図、固定資産税課税明細書
現況自宅、貸家、駐車場、空き地、農地、雑種地
分割案誰がどの部分を取得する予定か
分割理由居住、事業、売却、納税資金、代償金、公平性
接道状況道路種別、間口、セットバックの有無
建物状況既存建物の配置、建替え予定、解体予定
権利関係借地権、貸家、使用貸借、抵当権、共有
相続人の意向住み続けたい、売却したい、共有を避けたい等
納税資金現預金、保険、不動産売却予定
二次相続配偶者取得後の次の相続で誰が承継するか
過去の贈与土地の一部贈与、持分移転、名義変更の履歴
将来利用建築、売却、賃貸、駐車場、管理継続

土地の分割案は、相続税申告の直前に慌てて決めるものではありません。相続人間の納得感、評価額、納税資金、将来利用のバランスを見ながら、早めに検討しておくことが望ましいといえます。

まとめ|土地分割は「節税策」ではなく、承継設計そのもの

不合理分割は、一見すると土地評価の一論点にすぎません。しかし実際には、相続・贈与における意思決定の質そのものを問う論点です。

土地を分けることで、評価額が変わることはあります。

けれども、評価額を下げるためだけに土地を分けると、税務上は分割前の一体評価とされ、期待した効果が得られないことがあります。そればかりか、建築できない、売却しにくい、管理しにくい、共有関係が複雑になる、二次相続で再び問題になる、といった負担を残してしまう可能性もあります。

土地分割で大切なのは、「税額が下がるか」だけではありません。

  • その土地は単独で使えるのか
  • 相続人が納得できる分け方なのか
  • 納税資金を確保できるのか
  • 将来、売却や建替えができるのか
  • 二次相続でも説明できるのか
  • 税務調査で評価根拠を示せるのか

これらを確認したうえで分割案を比較すること。それが、不合理分割のリスクを避けるための、実務的な出発点になります。

不合理分割・土地評価でお悩みの方へ

犬飼公認会計士・税理士事務所では、相続税申告や生前贈与における土地評価について、単に評価額を計算するだけにとどまりません。地目、評価単位、現況、権利関係、接道、建築可能性、分割後の利用可能性、相続人間の公平感、納税資金まで含めて整理することを重視しています。

土地を分けて相続・贈与したい。過去に土地の一部を贈与している。分割案によって評価額が大きく変わりそう。二次相続や将来の売却まで見据えて判断したい。こうした場合には、早い段階で資料を整理し、検討を始めておくことが大切です。

不合理分割に該当しないか、分割後の評価単位をどう考えるべきか、相続人に説明できる分割案になっているか。こうした点を確認したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

振り返り|不合理分割と土地評価の重要ポイント

論点振り返り
不合理分割とは分割後の画地が通常の用途に供せないなど、著しく不合理な分割
原則宅地は利用単位となる1画地ごとに評価する
例外不合理分割に該当する場合は、分割前の画地を1画地として評価する
典型例無道路地、帯状地、狭小地、不整形地、接道義務を満たさない土地
計算方法分割前全体を1画地評価し、各土地の価額比で按分する
面積按分形状・接道・角地効果を反映できないため注意が必要
生前贈与贈与で不合理分割が生じると、後日の相続評価にも影響し得る
一部不合理不合理部分のみ是正し、その他は分割後画地で評価する場合がある
二次相続一次相続の評価を機械的に引き継がず、課税時期の現況を確認する
土地分筆登記上の分筆と税務上の評価単位は一致するとは限らない
建築確認接道、間口、建築可能性を確認する
遺産分割評価額だけでなく、相続人間の公平感と将来管理を考える
納税資金売却可能性や換価時期も分割案に影響する
税務調査対応評価判断メモ、現地写真、図面、分割理由を残す
相談前準備登記簿、公図、測量図、固定資産税資料、分割案を整理する
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