控除漏れ・申告漏れに気づいた場合の還付申告と更正の請求|修正申告との違い・期限・資料整理

確定申告を終えたあと、あるいは年末調整だけで一年を締めくくったあとになって、次のようなことに気づく場面は少なくありません。

  • 「医療費控除を入れ忘れていた」
  • 「ふるさと納税の寄附金控除を申告していなかった」
  • 「退職後に自分で払った社会保険料を控除していなかった」
  • 「住宅ローン控除の初年度申告をしていなかった」
  • 「扶養に入れられる親族がいたかもしれない」
  • 「副業収入を申告していなかった」
  • 「経費にすべき支出を入れていなかった」
  • 「株式や不動産の売却を申告すべきだったかもしれない」

このとき、すぐに「還付申告をすればよい」「更正の請求を出せばよい」と考えるのは、少し気が早いかもしれません。税務上は、まず次の四つを分けて考える必要があります。

気づいた内容基本的に検討する手続
もともと確定申告をしておらず、控除を入れれば還付になる還付申告
すでに確定申告をしており、控除漏れ・経費漏れ等で税額が下がる更正の請求
すでに確定申告をしており、収入漏れ・控除過大等で税額が増える修正申告
申告義務があるのに申告していなかった期限後申告

控除漏れと申告漏れは、言葉こそ似ていますが、税務上の向きは正反対です。控除漏れは税額が下がる方向の話であるのに対し、収入の漏れや経費の過大計上、扶養控除の誤りは、税額が増える方向に働くことがあります。

さらに、同じ年分の中で「副業収入の漏れ」と「医療費控除の漏れ」が同時に見つかることもあります。こうしたときは、都合のよい一方だけを直すのではなく、その年分全体を正しい状態へ組み直すことが求められます。

本コラムでは、控除漏れや申告漏れに気づいたときに、還付申告・更正の請求・修正申告をどう使い分ければよいのか、期限や資料の整え方まで含めて整理していきます。

目次

まず確認すべきことは「申告済みか」「税額が増えるか減るか」

手続の名前を調べる前に、最初に確認しておきたいことがあります。それは、次の三点です。

確認事項判断に与える影響
その年分について確定申告書を提出しているか還付申告か、更正の請求か、修正申告かが変わる
正しく直すと税額が増えるか減るか更正の請求か、修正申告かが変わる
所得税だけでなく住民税・国民健康保険料等にも影響するか所得税申告だけで終わらない場合がある

法定申告期限を過ぎてから申告内容の誤りに気づいたときは、直す方向によって手続が分かれます。納める税金が多過ぎた、あるいは還付される税金が少な過ぎたときは更正の請求で、逆に納める税金が少な過ぎた、あるいは還付される税金が多過ぎたときは修正申告で訂正する、という整理になります。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき

ここで大切なのは、「控除を追加できるかどうか」だけではありません。「申告全体を正しく直した結果として、税額や純損失等に異動が生じるかどうか」まで見ておく必要があります。所得金額が増減したり、所得控除を追加できたりしても、最終的な税額または純損失の金額に異動がなければ、更正の請求はできません。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき

還付申告とは何か

還付申告とは、確定申告書を提出する義務のない方であっても、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税額が、その年の所得金額に基づいて計算した所得税額より多い場合に、確定申告をして還付を受けるための手続です。

たとえば、給与所得者で年末調整も済んでいる方が、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度申告、雑損控除、特定支出控除などを受けるために申告する場合が、その典型といえます。

還付申告になりやすい例確認すべき資料
年の途中で退職し、年末調整を受けていない源泉徴収票、社会保険料資料
医療費控除を受けたい医療費通知、領収書、補填金資料
ふるさと納税・寄附金控除を受けたい寄附金受領証明書、寄附金控除に関する証明書
住宅ローン控除の初年度借入金残高証明書、売買契約書、登記事項証明書等
災害・盗難による損害がある罹災証明書、修理費資料、保険金資料
給与所得者の特定支出控除勤務先証明書、支出証明資料

還付申告書は、確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間にわたって提出できます。たとえば令和7年分であれば、令和8年1月1日から令和12年12月31日までが提出できる期間です。
出典:国税庁|No.2030 還付申告 出典:国税庁|所得税及び復興特別所得税の申告等

ただし、還付申告だからといって、すべてが5年以内で足りるわけではありません。青色申告特別控除の55万円・65万円のように、法定申告期限までに確定申告書を提出することが適用要件となっている特例もあります。こうした特例を使う場合には、法定申告期限までに提出しておく必要があります。
出典:国税庁|No.2030 還付申告

つまり、「還付になるのなら、5年以内のいつでもよい」と単純に考えてしまうと、思わぬ落とし穴があります。還付申告そのものの期限と、特例を適用するための期限要件は、分けて確認しておきたいところです。

すでに確定申告している場合は「還付申告」ではなく「更正の請求」

よくある誤解が、すでに確定申告書を提出した方が、あとから控除漏れに気づいたときに「もう一度、還付申告を出せばよい」と考えてしまうことです。

しかし、すでに確定申告書を提出した年分について、納め過ぎた税金を戻してもらう場合は、原則として「更正の請求」を検討することになります。

更正の請求とは、税法の規定どおりに計算していなかった場合や、計算そのものに誤りがあった場合などに、納税者が税務署長に対して申告内容の減額訂正を求める手続です。税務署は請求の内容を検討し、納め過ぎた税金があると認められたときに減額更正を行い、税金の還付などにつなげます。
出典:国税庁|所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続 出典:国税庁|申告が間違っていた場合

実務のうえで更正の請求の対象になりやすいものとしては、売上の過大計上、経費の計上漏れ、寄附金控除の申告漏れ、医療費控除の漏れ、開業初年度の開業準備費用の整理漏れなどが挙げられます。

一方で、単に「後から有利な処理に変えたい」というだけでは認められない場合もあります。制度上の要件、期限の要件、そして申告時に選択した内容の有無を、あらためて確認しておく必要があります。

更正の請求ができる期限

更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。確定申告の必要がない方が還付申告をしたあとで、その還付申告の内容をさらに直す場合は、その提出した日から5年以内となります。また、後発的な理由によって所得金額等に異動が生じたようなときは、その事実が生じた日の翌日から2か月以内に提出する必要があります。
出典:国税庁|所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続

場面更正の請求の期限
通常の確定申告をした後、過大申告に気づいた原則として法定申告期限から5年以内
確定申告義務のない人が還付申告をした後、その内容を直すその還付申告書を提出した日から5年以内
後発的理由で所得金額等に異動が生じたその事実が生じた日の翌日から2か月以内
提出期限が土日祝日等に当たるこれらの日の翌日が期限

期限は、控除や経費の内容以上に大切です。どれほど税務上正しい請求であっても、期限を過ぎてしまうと還付を受けられないことがあります。

消費税の実務でも、過年度分を進行年度でまとめて処理しようとした結果、更正の請求の期限を過ぎてしまい、還付を受けられなくなった例を見かけます。年分・課税期間ごとに正しく処理しておくことの大切さを、あらためて感じる場面です。

修正申告とは何か

修正申告は、すでに提出した確定申告書について、納める税金が少な過ぎた場合や、還付される税金が多過ぎた場合に、正しい税額へ増額訂正するための手続です。

控除漏れのご相談であっても、実際に資料を確認していくと、次のように修正申告が必要になることがあります。

気づいた内容手続の方向
副業収入を申告していなかった修正申告または期限後申告
雑所得を申告していなかった修正申告または期限後申告
不動産収入を一部漏らしていた修正申告または期限後申告
株式・不動産売却益を申告していなかった修正申告または期限後申告
扶養控除を誤って適用していた修正申告
医療費控除の補填金を控除していなかった修正申告の可能性
住宅ローン控除を過大に適用していた修正申告の可能性

税務署からの調査の事前通知を受ける前に、自主的に修正申告をした場合には、過少申告加算税はかかりません。一方で、事前通知を受けたあとや、調査を受けたあとの修正申告では、状況に応じて過少申告加算税が課されることになります。また、修正申告によって新たに納める税金は、修正申告書を提出する日が納期限となり、納付の日までの延滞税も併せて納めることになります。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき 出典:国税庁|No.9205 延滞税について

修正申告は、税務署から連絡が来る前に、自分で気づいた段階で対応しておくことが大切です。控除漏れだけに目が向いて「還付になるはず」と思っていたところ、同じ年に収入漏れが見つかり、結果として追加納税になることもあります。

期限前に気づいた場合は「更正の請求」ではなく訂正

確定申告期限より前に誤りに気づいた場合は、更正の請求ではなく、正しい内容で申告書を出し直す方法を検討します。期限内であれば、最終的に提出された申告内容を基準として整理されるため、法定申告期限後の是正手続とは扱いが異なるからです。

たとえば、3月15日までに提出した申告書に医療費控除の漏れがあり、まだ申告期限内であれば、更正の請求ではなく、正しい申告書を期限内に再提出する方向で確認していきます。

ただし、申告期限が近い時期には、提出方法、添付資料、納付額、振替納税、電子申告の受付状況なども関わってきます。期限の直前に誤りに気づいたときは、修正する箇所だけでなく、再提出後の納付・還付・控除証明の整合性まで確認しておく必要があります。

判断の流れ

控除漏れ・申告漏れに気づいたときは、次の順番で整理していくと、誤りが起きにくくなります。

順番確認すること判断のポイント
1その年分の確定申告書を提出したか未提出なら還付申告または期限後申告、提出済みなら更正の請求または修正申告
2申告義務があったか申告義務があるのに未提出なら期限後申告
3正しく直すと税額が増えるか減るか減るなら更正の請求、増えるなら修正申告
4税額または純損失等に異動があるか異動がなければ更正の請求ができない場合がある
5期限内か5年以内か、後発的理由の2か月以内かを確認
6証明資料があるか控除証明書、領収書、契約書、通帳、源泉徴収票等
7所得税以外に影響するか住民税、国民健康保険料、個人事業税、消費税
8複数年に影響するか繰越控除、扶養判定、減価償却、損失、住民税通知

「今年だけ」「控除だけ」と切り取って考えるのではなく、その年分全体、必要であれば過年度や翌年以後までつなげて整理していくことが大切です。

控除漏れでよくあるもの

ひとくちに控除漏れといっても、内容によって確認する資料も注意点も異なります。

控除・税額控除よくある漏れ注意点
医療費控除医療費が多かったが申告していない保険金・高額療養費・給付金などの補填金を差し引く
セルフメディケーション税制対象医薬品の購入を把握していない通常の医療費控除との選択
寄附金控除ふるさと納税を申告していない確定申告をするとワンストップ特例が無効になるため、全寄附を申告に含める
社会保険料控除退職後に自分で払った国民年金・国保を入れていない誰が支払ったか、生計一親族分かを確認
生命保険料控除・地震保険料控除年末調整に出し忘れた控除証明書、年末調整済みかを確認
小規模企業共済等掛金控除iDeCo・小規模企業共済等を入れていない支払証明書を確認
扶養控除親族の所得を誤認していた合計所得金額、生計一、年齢、他者との重複を確認
配偶者控除・配偶者特別控除配偶者の所得見積りが違っていた本人・配偶者双方の所得を確認
障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除年末調整で申告していない要件と証明資料を確認
住宅ローン控除初年度申告をしていない契約、登記、入居、借入金残高証明書などを確認
雑損控除災害・盗難の損害を申告していない罹災証明書、損害額、保険金等を確認
特定支出控除給与所得者の資格取得費等を検討していない勤務先証明が必要

ふるさと納税については、特に気をつけたい点があります。確定申告を行うと、ワンストップ特例の申請は無効になります。そのため、ワンストップ特例を申請した分も含めて、すべての寄附を寄附金控除額の計算に取り込む必要があります。また、ワンストップ特例を申請した方が、寄附金控除を入れないまま確定申告してしまった場合には、更正の請求によって寄附金控除の適用を受けられることがあります。
出典:国税庁|No.1155 ふるさと納税(寄附金控除) 出典:東京国税局|「ふるさと納税ワンストップ特例」の申請書を提出された方

令和7年分以後は基礎控除等の改正にも注意する

控除漏れを見直すときには、その年分に適用される制度改正もあわせて確認しておきたいところです。令和7年度税制改正では、所得税の基礎控除や給与所得控除が見直され、特定親族特別控除が新たに設けられました。これらは原則として、令和7年分以後の所得税に適用されます。
出典:国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について 出典:国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等と確定申告

たとえば、大学生年代のお子さんを扶養している場合には、令和7年分以後は特定親族特別控除の確認が必要になる場面があります。過年度の控除漏れを直すときは、あくまでその年分に適用される制度で判定することが欠かせません。現在の制度だけを見て、過去の年分にそのまま当てはめてしまわないよう注意してください。

経費計上漏れは「控除漏れ」と同じではない

個人事業や副業、不動産収入がある方の場合、「控除漏れ」と「経費計上漏れ」が混ざり合いやすくなります。

たとえば、次のような支出です。

支出内容主な整理
事業用の消耗品を経費に入れていなかった事業所得・雑所得の必要経費
不動産賃貸の修繕費を入れていなかった不動産所得の必要経費または資本的支出
開業前の準備費用を入れていなかった開業費または必要経費等として検討
家事関連費の按分をしていなかった事業使用部分の合理的区分を確認
減価償却資産を処理していなかった取得価額、事業供用日、耐用年数、償却方法を確認
借入金利子を処理していなかった元本返済と利子の区分を確認

経費の計上漏れは、単に領収書を足せばよいというものではありません。事業との関連性、支出の必要性、金額の合理性、家計との区分、そして裏づけとなる証拠資料まで確認する必要があります。

必要経費を追加することで所得税が下がる場合は、更正の請求の対象になり得ます。ただしその一方で、売上の漏れや家事関連費の過大計上がないかも、あわせて確認しておかなければなりません。

申告漏れに気づいた場合は「還付」よりも是正を優先する

控除漏れを探している途中で、副業収入、不動産収入、配当、株式売却、保険金、補助金、雑収入などの申告漏れに気づくことがあります。

この場合、「控除を追加すれば還付になる」という見方だけでは十分ではありません。申告漏れを含めて正しく計算した結果、税額が増えるのであれば、修正申告または期限後申告が必要になります。

申告漏れの内容確認する論点
副業収入事業所得か雑所得か、必要経費、源泉徴収、住民税申告
業務委託報酬支払調書だけでなく入金・請求書を確認
不動産収入家賃、礼金、更新料、敷金、経費、減価償却
資産売却譲渡所得、取得費、譲渡費用、特例
上場株式等口座区分、損益通算、申告不要制度
保険金・解約返戻金一時所得、雑所得、非課税、相続税との関係
補助金・助成金事業との関係、収入計上時期、必要経費との対応
暗号資産・ポイント等所得区分、取得価額、取引履歴

税務署からの指摘を待つのではなく、自分で気づいた段階で資料を集め、早めに是正しておくことが大切です。特に税額が増える場合には、修正申告の時期によって加算税の扱いが変わることがあります。

更正の請求をすれば必ず還付されるわけではない

更正の請求は、提出すれば自動的に還付される手続ではありません。税務署が内容を検討し、請求が正当と認められた場合に、はじめて減額更正が行われます。

実務のうえでも、更正の請求が必ず承認されるとは限らず、証拠資料や事実関係の説明が重要になります。また、更正の請求を提出しても、その請求より前に確定した税額の納付義務が当然に消えるわけではありません。納付済みか、未納か、延滞や徴収猶予の状況はどうかといった点も、あわせて確認しておく必要があります。

更正の請求を検討するときは、次の資料を整えておくことが大切です。

資料確認する理由
当初申告書の控えどこをどう直すかの出発点
源泉徴収票給与、源泉徴収税額、社会保険料、年末調整済み控除の確認
控除証明書生命保険料、地震保険料、小規模企業共済等
医療費資料医療費通知、領収書、補填金
寄附金資料受領証明書、寄附金控除に関する証明書
住宅ローン資料借入金残高証明書、契約書、登記資料
通帳・カード明細支払実態、入金漏れ、経費漏れの確認
請求書・領収書経費性、取引内容、支払先の確認
契約書収入・支出の原因、権利義務の確認
証券会社資料特定口座年間取引報告書、配当、損失
不動産資料賃貸借契約、家賃明細、固定資産税、借入明細
保険金・補助金資料所得区分、非課税、補填関係の確認

「証明書があるから大丈夫」で終わらせず、その証明書がどの年分に対応し、誰が支払い、どの所得や控除に関係するのかまで確認しておく必要があります。

添付書類・明細書の考え方

現在の確定申告では、電子申告や明細書方式が広まったことにより、すべての領収書を申告書に添付するとは限らなくなりました。ただし、添付しないからといって保存しなくてよいわけではありません。

医療費控除では医療費控除の明細書、寄附金控除では寄附金受領証明書等、住宅ローン控除では各種計算明細書や証明書、雑損控除では損害額や災害関連支出を示す資料など、制度に応じて必要となる書類はそれぞれ異なります。

更正の請求では、当初の申告との違いを税務署に説明する必要があります。資料が不足していると、請求の根拠があいまいになり、確認に時間がかかったり、請求内容が認められなかったりすることもあります。

令和7年1月以後は「申告書控えの収受日付印」にも注意

紙で申告書や更正の請求書を提出する方は、提出記録の残し方にも注意が必要です。

令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印が押されなくなりました。書面で提出する際は正本のみを提出し、控えは自分で作成・保管したうえで、提出年月日を記録・管理しておく必要があります。当分の間は、希望する方に対して、日付や税務署名等を記載したリーフレットを渡す対応もとられています。
出典:国税庁|令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて

これは、還付申告や更正の請求でも重要です。提出期限が問題になる手続では、「いつ提出したのか」を後から確認できる状態にしておく必要があります。e-Taxで提出した場合は、受信通知や送信データを保存しておくことが、実務のうえで大切になります。

e-Tax・作成コーナーで作成できるが、判断は別問題

国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、更正の請求書や修正申告書を作成できます。いずれも、法定申告期限を過ぎたあとに申告内容の誤りを訂正するための手続という位置づけです。
出典:e-Tax|作成コーナーで「更正の請求書」・「修正申告書」を作成したい

ただし、作成コーナーで作れることと、その請求・申告が税務上妥当であることは、まったく別の問題です。

特に次のような場合は、入力する前の判断が重要になります。

状況入力前に確認すべきこと
医療費控除を追加する対象医療費、補填金、家族分、生計一
寄附金控除を追加するワンストップ特例、全寄附の入力、住民税への影響
扶養控除を直す親族の所得、生計一、他の人との重複
事業経費を追加する事業関連性、家事関連費、証憑、帳簿
不動産経費を追加する修繕費か資本的支出か、借入金利子、按分
株式損失を申告する申告分離、配当との通算、繰越控除、住民税・国保
副業収入を追加する所得区分、必要経費、源泉徴収、消費税
複数年を直す年分ごとの期限、繰越、翌年への影響

画面の案内に沿って入力できたとしても、前提となる所得区分や控除要件が誤っていれば、申告の内容そのものも誤ってしまいます。

所得税だけでなく住民税・国民健康保険料にも波及する

更正の請求や修正申告によって所得税の金額が変わると、住民税や国民健康保険料、個人事業税などにも影響することがあります。

影響先注意点
住民税所得・控除・寄附金控除が翌年度住民税に反映される
国民健康保険料所得金額の変動により保険料が変わる可能性
個人事業税事業所得の修正により対象所得が変わる可能性
保育料・各種給付所得情報に連動する制度がある
金融機関提出資料過年度所得の訂正が融資審査に影響する場合がある
扶養判定親族側の所得訂正が扶養控除・社会保険扶養に影響する場合がある

ふるさと納税については、所得税額に異動がなく更正の請求ができない場合でも、住民税の側で対応が必要になることがあります。寄附金控除を追加しても、最終的な所得税等の額に異動が生じないのであれば、更正の請求はできません。その場合には、お住まいの市区町村に相談する形になります。
出典:国税庁|No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)

所得税の還付額だけを見て判断してしまうと、住民税や社会保険料への影響を見落としてしまうことがあります。

税務署から連絡が来た場合の受け止め方

税務署から、申告書の見直しや資料提出の連絡が来ることがあります。この段階で慌てて修正申告や更正の請求を出す前に、それが行政指導なのか、税務調査なのか、そしてどの税目・年分・項目についての確認なのかを整理しておく必要があります。

税務調査手続の実務では、提出された申告書に計算誤りや記載漏れ等があると思われる場合に、自発的な見直しを要請し、必要に応じて修正申告書または更正の請求書の自発的な提出を求める行為が、税務調査には該当しない行政指導として整理される場面があります。

ただし、行政指導だから軽く受け止めてよい、という意味ではありません。税務署が何を確認しようとしているのか、収入漏れなのか、控除証明の不足なのか、計算誤りなのかを整理し、資料を確認したうえで対応することが大切です。

よくある判断ミス

控除漏れ・申告漏れに関するご相談の中で、特に多い判断ミスは次のとおりです。

判断ミス問題点
すでに申告済みなのに還付申告を出そうとする更正の請求が必要な場面がある
控除漏れだけを直し、収入漏れを見ない申告全体が正しくならない
ふるさと納税ワンストップ特例を過信する確定申告をすると特例が無効になる
医療費の補填金を差し引かない医療費控除が過大になる
扶養親族の所得を収入金額だけで判断する所得金額、生計一、年齢、重複控除の確認が必要
副業を20万円以下だから何もしないと考える所得税申告不要でも住民税申告が必要な場合がある
経費漏れを領収書の有無だけで判断する事業関連性、家事按分、支払実態が必要
更正の請求期限を過ぎてから資料を集める請求できなくなる可能性
税額が変わらないのに更正の請求を出そうとする更正の請求ができない場合がある
修正申告を先延ばしにする加算税・延滞税の負担が増える可能性
所得税だけ見て住民税を見ない住民税・国保・保育料等に波及する可能性

更正の請求も修正申告も、過去の数字を動かす手続です。数字を動かす以上、「なぜその数字が正しいのか」を説明できる資料が欠かせません。

専門家に相談した方がよい場面

次のような場合は、自己判断で入力する前に専門家へ相談した方が安心です。

状況相談した方がよい理由
複数年分を直したい年分ごとの期限、繰越、住民税への影響がある
控除漏れと収入漏れが同時にある更正の請求か修正申告かの判定が必要
副業・事業・不動産収入がある所得区分、必要経費、消費税、帳簿の確認が必要
住宅ローン控除や譲渡特例が絡む要件・添付資料・住民税への影響が大きい
扶養控除・配偶者控除を直したい家族側の所得や他者の控除と重複する可能性
ふるさと納税のワンストップ特例が無効になった所得税と住民税の両方を確認する必要
医療費控除の補填金が複雑保険金、高額療養費、出産育児一時金等の整理が必要
株式損失や配当の申告選択がある住民税・国保・将来の繰越控除に影響する
事業経費や家事関連費を追加したい後から説明できる按分根拠が必要
税務署から連絡が来ている行政指導・調査・修正申告のタイミング整理が必要

特に、個人事業、不動産所得、資産売却がある方の場合、控除だけを追加して終わり、とはいきません。売上、経費、資産、借入、帳簿、消費税、住民税まで見渡したうえで、過去の申告をどのように是正するかを判断していく必要があります。

控除漏れ・申告漏れに気づいた場合の相談導線

控除漏れや申告漏れに気づいたとき、最初に必要なのは「どの手続を使うか」ではなく、「その年分の申告全体を正しく組み直すこと」です。

医療費控除や寄附金控除のように比較的整理しやすいものもあれば、副業収入、不動産収入、資産売却、扶養判定、住宅ローン控除、株式損失、消費税が絡むものもあります。後者の場合、自己流で一部だけを直すと、還付を受けるつもりが修正申告になってしまったり、住民税や国民健康保険料への影響を見落としてしまったりすることがあります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、過去の確定申告について、単に更正の請求書や修正申告書を作成するだけでなく、収入、所得区分、必要経費、控除、証拠資料、住民税等への波及、翌年以後への影響まで整理したうえで、後から説明できる申告内容へ整えることを大切にしています。

過去の控除漏れ・申告漏れに気づき、「還付申告でよいのか」「更正の請求なのか」「修正申告が必要なのか」「期限に間に合うのか」といった点で不安のある方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

振り返り

論点重要ポイント
還付申告確定申告義務のない人が、還付を受けるために行う申告
還付申告の期限原則、その年の翌年1月1日から5年間
更正の請求申告済みの年分について、税額が多過ぎた・還付が少な過ぎた場合の手続
更正の請求の期限原則、法定申告期限から5年以内
還付申告後の更正の請求確定申告義務のない人の還付申告については、その提出日から5年以内
後発的理由事実発生日の翌日から2か月以内の請求が必要な場合がある
修正申告税額が少な過ぎた・還付が多過ぎた場合に行う増額訂正
期限後申告申告義務があるのに申告していなかった場合の申告
期限前の誤り更正の請求ではなく、正しい申告書の再提出を検討
税額異動なし税額または純損失等に異動がなければ更正の請求ができない場合がある
ふるさと納税確定申告をするとワンストップ特例が無効になるため、全寄附を申告に含める
医療費控除補填金を差し引き、明細書と資料保存を整える
扶養控除等所得金額、生計一、年齢、他者との重複を確認
経費計上漏れ事業関連性、家事按分、証憑、帳簿との整合性を確認
住民税への影響所得税の更正・修正は住民税や国民健康保険料に波及する場合がある
申告書控え令和7年1月から収受日付印が押なつされないため、提出記録を自分で管理する
専門家相談複数年、複数所得、事業・不動産・資産売却が絡む場合は早めに相談する
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