住民税申告と所得税申告の関係|確定申告が不要でも住民税申告が必要になるケースと注意点

所得税の確定申告をしなくてよいと聞くと、「もう税務の手続は何もしなくてよい」と受け取ってしまう方が少なくありません。しかし、個人の税務には、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。

所得税の確定申告が不要であっても、住民税の申告が必要になる場合があります。逆に、所得税の確定申告をしておけば、原則として住民税の申告を別途行わずに済む場合もあります。

つまり、確かめるべきなのは「確定申告が必要かどうか」だけではありません。実務では、次のような点まで見ておく必要があります。

  • 所得税の確定申告が必要か
  • 所得税の還付申告をするか
  • 住民税申告が別途必要か
  • 申告した所得が、住民税・国民健康保険料・扶養判定・各種証明にどう影響するか
  • 給与からの特別徴収、普通徴収、自治体からの通知にどう反映されるか
  • 配当や株式譲渡所得を申告することで、住民税側にも所得が算入されるか

ここまで確認して初めて、申告後にどのような影響が生じるかを把握できます。

この記事では、住民税申告と所得税申告の関係を、単なる手続の違いとしてではなく、働き方、副業、不動産収入、金融所得、控除、納税資金、そして将来の説明可能性という観点から整理していきます。

目次

住民税申告とは何か

住民税申告とは、お住まいの市区町村に対して、前年中の所得や控除の状況を申告する手続です。

個人住民税は、一般に市区町村民税と都道府県民税を合わせたもので、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、定額で課税される「均等割」などから構成されます。所得割・均等割ともに、その年の1月1日現在に住所のある方が課税の対象です。さらに令和6年度からは、森林環境税が個人住民税の均等割と併せて課税される仕組みとなりました。
出典:東京都主税局|個人住民税

一方の所得税は国税であり、税務署に対して申告します。住民税は地方税で、原則としてその年の1月1日現在の住所地の市区町村が課税します。

この違いは、単に提出先が違うというだけの話ではありません。所得税はその年の所得について国に納める税金であるのに対し、住民税は前年の所得を基に、翌年度に市区町村・都道府県が課税する税金です。そのため、所得税の申告が終わってしばらく経ってから、住民税の通知が届くことになります。

個人事業主や不動産所得のある方であれば、所得税を納めた後にも、住民税、個人事業税、国民健康保険料、場合によっては消費税と、納税が続いていきます。給与所得者であっても、副業や配当、株式譲渡、医療費控除、ふるさと納税、退職・転職などがあれば、住民税側への影響を無視することはできません。

所得税の確定申告をすれば、住民税申告は原則として不要になる

所得税の確定申告書を税務署に提出すると、その内容は地方公共団体へデータで送信されます。そのため、改めて住民税や事業税の申告書を提出する必要はありません。ただし、所得税等と住民税・事業税とで取扱いが異なる事項については、確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」欄に記入しておく必要があります。
出典:国税庁|手順6 住民税、事業税に関する事項を記入する

ここで気をつけたいのは、「確定申告さえすれば住民税は自動的に正しくなる」とまでは言えない点です。

確定申告書には、住民税に関する事項を記載する欄があります。たとえば、給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法、配当割額控除額、株式等譲渡所得割額控除額、非上場株式の少額配当等、寄附金税額控除に関する情報など、住民税側で必要になる事項です。

確定申告書を提出すること自体は、住民税申告に代わる役割を果たします。しかし、住民税に必要な情報を確定申告書へ正しく反映していなければ、住民税、国民健康保険料、扶養判定、証明書の発行などに影響が及ぶおそれがあります。

所得税の確定申告が不要でも、住民税申告が必要になることがある

所得税には、一定の場合に確定申告を不要とする取扱いがあります。その代表例が、給与所得者の副業所得20万円以下の取扱いです。

給与収入が2,000万円以下で、給与を1か所から受け、その全額について源泉徴収されている方であれば、給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円以下であるなど、一定の条件を満たす場合には所得税の確定申告は不要です。
出典:国税庁|No.2020 確定申告

ただし、この20万円という基準は、あくまで所得税の確定申告に関する話です。

住民税は、これと考え方が異なります。給与収入以外に副収入がある場合、給与所得以外の所得金額等の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告は原則不要ですが、住民税では、所得の多少にかかわらず給与所得と合算して税額を計算します。そのため、所得税の確定申告をしなかったのであれば、住民税の申告が必要になります。
出典:横浜市|給与以外に副収入がある場合の住民税の申告は必要ですか。

ここを取り違えると、「所得税の確定申告は不要」という結論だけを見て、住民税申告まで不要と考えてしまいます。住民税申告の要否は、所得税の確定申告義務だけで判断してはいけません。

確認の順番としては、次のように整理すると分かりやすくなります。

  • 所得税の確定申告義務があるか
  • 所得税の還付申告をするか
  • 確定申告をしない場合、住民税申告が必要か
  • 申告することで、住民税・国民健康保険料・扶養・証明書に影響するか
  • 所得区分、必要経費、控除資料を、後から説明できる状態にあるか

「所得税では申告不要」でも「住民税では申告が必要」という場面は、決して珍しくありません。

副業所得20万円以下でも、住民税申告を確認する

給与所得者の副業では、「20万円以下なら申告不要」という言葉だけが一人歩きしがちです。しかし正確には、一定の給与所得者について、給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円以下である場合に、所得税の確定申告が不要となることがある、という話にすぎません。住民税申告まで不要になるわけではないのです。

副業で確認すべきなのは、金額だけではありません。

  • その副業収入は、給与所得か、雑所得か、事業所得か
  • 収入金額ではなく、所得金額を計算できているか
  • 必要経費にできる支出と家事費を分けられているか
  • 源泉徴収されている報酬か
  • 住民税の申告が必要か
  • 住民税の徴収方法をどうするか
  • 勤務先への住民税通知にどう反映されるか
  • 翌年度の国民健康保険料や扶養判定に影響しないか

副業収入については、所得区分の判断も欠かせません。単発の入金か、継続的な業務か。雇用契約か、業務委託か。請求書や契約書があるか。事業としての独立性があるか。経費や資料を保存しているか。こうした点を一つずつ確かめていくことになります。

住民税申告は、単に「少額だから出す・出さない」という話ではなく、その所得の性質を自治体に対してどう申告するか、という問題なのです。

確定申告をするなら、20万円以下の副業所得も含めて整理する

とりわけ注意していただきたいのが、所得税の確定申告をする場合です。

給与所得者が、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度、雑損控除、株式損失の繰越控除などを受けるために確定申告をするとき、20万円以下の副業所得を申告しなくてよいわけではありません。

医療費控除やふるさと納税などのために確定申告を行う方は、副業などで得た所得が20万円以下であっても、その所得を申告する必要があります。
出典:国税庁|スマホで確定申告(副業編)

これは実務上、非常に重要な点です。

「副業は20万円以下だから書かない」「医療費控除だけ申告する」「ふるさと納税だけ確定申告する」——このような処理をしてしまうと、本来申告すべき所得を漏らしてしまうおそれがあります。

確定申告をするのであれば、その申告書は、その年の所得全体を整理するものです。たとえ還付が目的であっても、都合のよい控除だけを申告し、都合の悪い所得を除外するようなことはできません。

ここは、読者の方に迎合してはいけない部分だと考えています。税額を下げる控除を使うのであれば、同じ申告書のなかで、申告すべき所得もあわせて整理する必要があります。後から税務署や自治体にきちんと説明できる状態にしておくには、収入、経費、所得区分、源泉徴収、住民税への反映を、一体のものとして確認しておくことが大切です。

公的年金の確定申告不要制度と住民税申告

公的年金を受給している方にも、所得税の確定申告不要制度があります。

公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません。ただし、その場合でも、医療費控除や社会保険料控除など各種の所得控除によって所得税の還付を受けるための確定申告は可能であり、また、住民税の申告が必要になる場合があります。
出典:国税庁|No.1600 公的年金等の課税関係

ここでも、所得税と住民税を分けて考える必要があります。

公的年金等について所得税の確定申告が不要であっても、次のような場合には、住民税申告の要否を確かめておくべきです。

  • 公的年金以外の所得がある
  • 医療費控除を住民税に反映したい
  • 生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除などを追加したい
  • 国民健康保険料や介護保険料に影響する所得情報を、正しく反映したい
  • 所得証明書、課税証明書、非課税証明書が必要になる可能性がある
  • 扶養親族や配偶者控除の判定に関わる所得情報を整理したい

所得税では納税額が出ない、還付もないという場合であっても、住民税側では控除の追加や所得情報の把握が必要になることがあるのです。

無収入・非課税所得のみでも、住民税申告が必要または有用な場合がある

住民税申告は、税金を納める方だけの手続ではありません。

収入がない場合や、非課税所得のみの場合であっても、自治体が所得状況を把握するために、住民税申告が必要、あるいは有用になることがあります。

たとえば、金融機関から融資を受けるとき、健康保険組合などの扶養認定を受けるとき、医療助成や福祉手当などを申請するときなどには、住民税の証明書の提出を求められることがあります。そのため、所得がなかったなどの理由で申告義務がない場合でも、申告をしておくことが勧められています。また、申告がなく住民税の計算ができていない状態では、遅れて申告しても課税証明等をすぐには発行できず、証明の発行までに時間を要することがあります。
出典:渋谷区|申告

これは、個人事業主、不動産オーナー、退職者、これから扶養に入る予定の方、転職を控えている方、住宅ローンや融資を検討している方にとって、見過ごせない点です。

住民税申告は、税額の計算だけでなく、所得情報の公的な記録を整えるという意味を持ちます。申告をしないことで、その時点では税額が出ないとしても、後から所得証明・非課税証明が必要になった際に困る場合があるのです。とくに、自治体サービス、保育、医療、福祉、金融機関、勤務先の手続では、前年所得の証明が問題になることがあります。

「税金が出ないから申告しなくてよい」と考えるのではなく、「将来、何を証明する必要が生じるか」というところまで見据えて判断していただきたいと思います。

住民税と所得税では、控除額が異なることがある

所得税の確定申告書を作成する際には、所得控除や税額控除を入力していきます。しかし、所得税と住民税とでは、控除額や控除の効き方が異なることがあります。

たとえば、基礎控除、配偶者控除、扶養控除などの人的控除や、生命保険料控除、地震保険料控除では、所得税と住民税で控除額に差がある場合があります。
出典:立川市|所得税と市民税・都民税の所得控除額が違うのですが

このため、所得税で還付がないからといって、住民税にも影響がないとは限りません。所得税では税額が出ない、あるいは少額であるために控除の効果を実感しにくい場合でも、住民税の税額計算に控除を反映できることがあります。

とくに確認しておきたいのは、次のような控除です。

  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除、配偶者特別控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除、ひとり親控除
  • 寄附金税額控除
  • 住宅ローン控除の住民税側への影響

控除を「所得税の還付を受けるためのもの」とだけ捉えないほうがよいでしょう。住民税、国民健康保険料、扶養、各種証明にも関わってくるため、どの控除をどの申告で反映するのかを整理しておく必要があります。

ふるさと納税・寄附金控除と住民税申告

ふるさと納税や寄附金控除は、所得税と住民税の関係がとりわけ分かりにくい領域です。

ふるさと納税では、ワンストップ特例制度を利用する場合と、確定申告をする場合とで手続が異なります。

ここで重要なのは、確定申告をすると、ワンストップ特例の扱いが変わるという点です。別の理由で確定申告をする場合には、ふるさと納税分もあわせて申告する必要があります。

また、所得税から控除しきれない場合や、住民税側で控除を受けたい場合には、自治体への申告が問題になることがあります。寄附金控除について、所得税および個人市民税・県民税から控除を受けるためには、原則として寄附をした翌年3月15日までに税務署へ確定申告を行う必要があります。所得税が0円で、個人市民税・県民税のみから控除を受ける方は、区役所への申告が必要です。
出典:横浜市|税額控除

寄附金控除は、寄附金受領証明書を集めれば終わり、というものではありません。

  • ワンストップ特例を使ったか
  • 確定申告をする予定があるか
  • 医療費控除や副業所得の申告と同時に行うか
  • 住民税側の控除限度額に影響する所得を、正しく申告しているか
  • 申告漏れがあった場合、更正の請求や住民税申告で対応できるか

こうした点を、申告全体のなかに位置づけて考える必要があります。

配当・株式譲渡所得は、住民税への影響を必ず確認する

金融所得は、住民税申告との関係でとくに注意を要します。

上場株式等の配当や譲渡所得は、特定口座、源泉徴収の有無、一般口座、NISA、申告不要制度、総合課税、申告分離課税、損益通算、繰越控除など、複数の選択肢が絡み合います。

上場株式等の利子等・配当等については、20.315%(内訳は所得税等15.315%、住民税5%)が源泉徴収されます。また、一定のものについては確定申告不要制度を選択できます。
出典:国税庁|株式・配当・利子と税

以前は、上場株式等の配当所得等について、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できる場面がありました。しかし、令和6年度の個人住民税、つまり令和5年分の所得税確定申告から、所得税と個人住民税の課税方式を一致させる改正が行われています。

所得税で申告不要を選択した場合は、住民税でも申告不要となります。所得税で総合課税または申告分離課税により確定申告を行った場合は、住民税でも同じ課税方式で申告したことになり、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することはできなくなりました。さらに、所得税で上場株式等の配当所得等や譲渡所得を確定申告すると、これらの所得は住民税でも合計所得金額に算入され、扶養控除、配偶者控除、非課税判定、各種保険料の算定などに影響する場合があります。
出典:中野区|上場株式等に係る配当所得等について課税方式の統一

ここは、近年の重要な変更点です。

配当控除を使いたい、株式の損失を通算したい、繰越控除を使いたい——そうした理由で確定申告をすると、住民税や社会保険料等にまで波及する可能性があります。金融所得を申告するかどうかは、所得税の税額だけで判断すべきではありません。

確認すべきなのは、次の点です。

  • 特定口座の源泉徴収ありか
  • 申告不要制度を使うか
  • 総合課税を選ぶか
  • 申告分離課税を選ぶか
  • 配当控除の効果があるか
  • 株式譲渡損失との損益通算や繰越控除を使うか
  • 住民税の合計所得金額に算入される影響はあるか
  • 扶養、配偶者控除、国民健康保険料、介護保険料、医療費助成等に影響するか
  • 一度申告した課税方式を、後から変更できるか

とくに、所得税だけを見れば有利であっても、住民税や保険料まで含めると判断が変わってくることがあります。

住民税申告と国民健康保険料・各種制度への波及

住民税申告の内容は、住民税額だけに影響するわけではありません。

市区町村は、住民税申告や確定申告の内容を基に、各種の行政手続や保険料計算の基礎となる所得情報を把握します。そのため、住民税申告の漏れや誤りは、次のような領域にまで波及していきます。

  • 国民健康保険料
  • 後期高齢者医療保険料
  • 介護保険料
  • 保育料、保育関係の負担
  • 医療費助成
  • 各種給付金や福祉制度
  • 扶養認定
  • 配偶者控除、扶養控除の判定
  • 所得証明書、課税証明書、非課税証明書
  • 住宅ローンや融資審査
  • 奨学金、各種補助金、行政手続

このように考えると、住民税申告を「地方税の手続」とだけ見るのは不十分です。

個人事業主や不動産所得のある方であれば、所得金額、青色申告特別控除、損失、専従者給与、社会保険料控除などの整理が、翌年度の住民税・国民健康保険料・各種証明に影響してきます。給与所得者であっても、副業、配当、株式譲渡、医療費控除、扶養、退職・転職などがある場合には、住民税側への影響を確認しておくべきです。

特別徴収と普通徴収の違い

住民税の納付方法には、大きく分けて特別徴収と普通徴収があります。

給与所得者については、6月から翌年5月まで、毎月の給料から徴収される特別徴収が用いられます。それ以外の方については、区市町村から送付される納税通知書によって、年4回に分けて納める普通徴収となります。
出典:東京都主税局|個人住民税と特別徴収について

給与所得者の個人市民税・県民税についても、給与支払者から提出される給与支払報告書に基づいて税額を計算し、会社等に通知したうえで、会社等が毎年6月から翌年5月まで年12回に分けて、毎月の給与から差し引いて納めます。
出典:横浜市|納税の方法

給与所得者が副業をしている場合、住民税の徴収方法はしばしば問題になります。

確定申告書や住民税申告書には、給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法を選択する欄があります。ただし、自治体や所得区分によって取扱いが異なることがあり、給与所得の副業分まで必ず普通徴収にできるとは限りません。

たとえば渋谷区では、令和8年度の住民税から、給与を2か所以上から受けている方や、給与に加えて給与・公的年金等以外の所得がある方の徴収方法について、取扱いを変更するとしています。令和7年度までは、副業していることを主たる給与の事業者に知られたくないといった希望により、副業分の給与に対する税額を普通徴収とする取扱いがありましたが、地方税法の規則に則った取扱いにするために変更するとのことです。
出典:渋谷区|給与やその他の所得が複数ある場合の住民税の徴収方法の取扱いが変更になります

住民税の徴収方法については、安易な断定を避けるべきです。とくに、「副業が会社に絶対に分からないようにできる」といった説明は適切ではありません。自治体の取扱い、所得区分、給与支払報告書、特別徴収税額通知書、申告書の記載によって、結果は変わり得ます。

住民税の徴収方法は、税額の問題にとどまらず、勤務先への通知、資金繰り、納税管理にも関わってくるものです。

住民税申告で誤りやすいポイント

住民税申告では、次のような誤りが起きやすくなります。

所得税の確定申告不要を、住民税申告不要と誤解する

副業所得20万円以下、公的年金400万円以下など、所得税の確定申告不要制度だけを見て、住民税申告まで不要と判断してしまうケースです。

所得税と住民税とでは、申告要否の考え方が異なります。所得税の確定申告をしないのであれば、市区町村への住民税申告が必要かどうかを確認する必要があります。

還付申告で控除だけ申告し、少額所得を漏らす

医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度などのために確定申告をする場合には、申告すべき所得もあわせて整理する必要があります。

「還付を受けるための申告だから、副業は書かなくてよい」という考え方は危険です。

配当や株式譲渡所得の申告による住民税影響を見落とす

上場株式等の配当や譲渡損失を申告すると、所得税だけでなく住民税にも影響します。

令和6年度以降は、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できないため、申告するかどうかの判断は、いっそう重要になっています。

控除資料を住民税側に反映できていない

年末調整で反映されていない社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除、医療費控除などがある場合、所得税では影響が小さくても、住民税では意味を持つことがあります。

所得税の還付だけでなく、住民税額への影響も確認しておくべきです。

所得証明・非課税証明を意識していない

税額が出ない場合でも、住民税申告によって所得情報を登録しておくことが重要になることがあります。

後から証明書が必要になったときに、申告がないために発行に時間がかかる、所得欄が空欄になる、制度の利用に支障が出る、といった問題が起こり得ます。

住民税の納税時期を資金繰りに入れていない

個人事業主や不動産所得のある方は、所得税の納税後に、住民税の普通徴収が始まります。

事業所得者などの市民税・府民税・森林環境税は、所得税等の確定申告書や市民税・府民税申告書に基づいて税額を計算・決定し、納税通知書を送付したうえで、年4回に分けて納付する普通徴収によります。
出典:大阪市|市民税・府民税・森林環境税の納税方法について

所得税を払って終わり、ではありません。住民税、個人事業税、国民健康保険料まで含めて、納税資金を見込んでおく必要があります。

住民税申告を判断するときの確認順序

住民税申告が必要かどうかを考えるときは、次の順序で確認していくと整理しやすくなります。

まず、所得税の確定申告をするかどうかを確認します。所得税の確定申告をするのであれば、原則として住民税申告は別途不要になります。ただし、住民税・事業税に関する事項を正しく記載しておく必要があります。

次に、所得税の確定申告をしない場合、住民税申告が必要かを確認します。副業所得、公的年金以外の所得、控除の追加、無収入、非課税所得、所得証明の必要性などを見ていきます。

続いて、申告する所得の性質を整理します。給与所得、事業所得、雑所得、不動産所得、配当所得、譲渡所得、一時所得、退職所得など、所得区分によって住民税への反映は変わってきます。

さらに、控除と証明資料を確認します。社会保険料、生命保険料、地震保険料、扶養、医療費、寄附金、障害者控除、寡婦・ひとり親控除などが、年末調整や確定申告に正しく反映されているかを見ておきます。

最後に、申告後の影響を確認します。住民税額、国民健康保険料、扶養、所得証明、勤務先への通知、金融機関への説明、翌年の納税資金まで、あわせて確認しておくことが大切です。

相談前に整理しておくべき資料

住民税申告と所得税申告の関係についてご相談いただく際は、次の資料を整理しておくと、判断がスムーズに進みます。

  • 前年分の源泉徴収票
  • 公的年金等の源泉徴収票
  • 副業収入の支払明細、請求書、入金履歴
  • 報酬に係る支払調書
  • 事業所得・雑所得・不動産所得の収支資料
  • 必要経費の領収書、請求書、クレジットカード明細、通帳
  • 医療費控除の明細
  • 寄附金受領証明書
  • 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書
  • 社会保険料の支払資料
  • 扶養親族、配偶者、障害者控除等に関する資料
  • 特定口座年間取引報告書
  • 配当金計算書
  • 過年度の所得税確定申告書
  • 住民税決定通知書、納税通知書
  • 国民健康保険料、介護保険料等の通知書
  • 所得証明書、課税証明書、非課税証明書が必要となる手続の内容

単に申告書を作るだけであれば、数字を入力すれば済むように見えるかもしれません。しかし住民税申告では、所得税申告と同じように、所得の実態、経費の根拠、控除資料、勤務先・自治体への情報連携、翌年度への影響まで見ておく必要があります。

日々の帳簿や証憑を確認し、資料を積み重ねておくことは、申告書の作成だけでなく、後日の説明や証明にもつながっていきます。

住民税申告は「所得税の付属手続」ではない

住民税申告は、所得税申告のおまけではありません。

所得税の確定申告が必要かどうかは、もちろん重要です。しかし、個人の税務判断としては、それだけでは足りません。

住民税申告を通じて整理される所得情報は、翌年度の住民税、国民健康保険料、扶養、証明書、各種行政サービス、勤務先への通知、納税資金にまで影響します。とくに、副業、不動産収入、金融所得、退職・転職、医療費控除、ふるさと納税、年金、無収入期間などがある場合には、所得税と住民税を分けて確認する必要があります。

大切にしていただきたいのは、次の視点です。

  • 所得税の確定申告義務だけで判断しない
  • 所得税で申告不要でも、住民税申告を確認する
  • 確定申告をするなら、申告すべき所得を漏らさない
  • 住民税・事業税に関する事項を軽視しない
  • 金融所得の申告は、住民税や保険料まで含めて判断する
  • 控除は所得税の還付だけでなく、住民税側の影響も見る
  • 所得証明や非課税証明の必要性を、事前に考えておく
  • 納税資金は所得税だけでなく、翌年度の住民税まで見込む

住民税申告は、税額を計算するためだけの手続ではなく、自分の所得と生活の実態を、自治体に正しく伝えるための手続です。

犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について

住民税申告と所得税申告の関係は、一見すると単純に思えます。しかし実際には、副業所得20万円以下、公的年金、金融所得、配当、株式譲渡損失、医療費控除、ふるさと納税、扶養、国民健康保険料、勤務先への通知、所得証明などが絡んでくると、判断はそう簡単ではありません。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、所得税の申告書作成だけでなく、住民税、個人事業税、国民健康保険料、消費税、資料の保存、将来の税務リスクまで含めて、後からきちんと説明できる申告内容を整えることを重視しています。

「所得税の確定申告は不要と言われたが、住民税申告が必要か確認したい」
「副業、配当、株式、控除を申告すると、翌年度の住民税や保険料にどう影響するのか知りたい」
「自分で申告してよい範囲と、専門家に確認すべき範囲を切り分けたい」

そのような場合は、源泉徴収票、収入資料、控除証明書、特定口座年間取引報告書、過年度申告書、住民税通知書などを整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。

この記事の振り返り

確認項目重要なポイント
住民税申告の役割前年の所得や控除を市区町村に申告し、住民税や各種証明の基礎にする
所得税申告との関係所得税の確定申告をすれば、原則として住民税申告は別途不要
住民税・事業税に関する事項確定申告書に、住民税側で必要な情報を正しく記載する必要がある
所得税の20万円基準所得税の確定申告不要の話であり、住民税申告不要とは限らない
副業所得所得区分、必要経費、住民税申告、徴収方法を確認する
還付申告医療費控除等で確定申告する場合、少額所得も含めて整理する
公的年金所得税の確定申告不要制度があっても、住民税申告が必要な場合がある
無収入・非課税所得税額が出なくても、所得証明・非課税証明のため申告が有用な場合がある
所得控除所得税と住民税では控除額が異なることがある
寄附金・ふるさと納税ワンストップ特例、確定申告、住民税控除の関係を確認する
配当・株式譲渡令和6年度以降、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できない
国民健康保険料等への影響住民税申告の所得情報は、保険料、扶養、行政制度に波及する
特別徴収・普通徴収給与所得者は原則特別徴収。副業分の取扱いは所得区分や自治体運用を確認する
納税資金所得税後に住民税・国保・事業税等が続くため、翌年度の資金繰りまで見込む
相談前資料源泉徴収票、収入資料、控除証明、金融所得資料、住民税通知書を整理する
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