無申告・期限後申告・申告漏れに気づいた場合|過年度の確定申告を正しく是正する手順

確定申告をしていない年がある。副業収入や不動産収入を申告していなかった。あるいは、資産の売却益や保険金、複数の給与などが、後になって申告対象だと分かった。

こうした場面で、最初に頭をよぎるのは「いくら追徴されるのか」という不安かもしれません。ただ、まず考えるべきことは、それだけではありません。

先に確認しておきたいのは、次の三点です。

  1. そもそも、その年に確定申告の義務があったのか
  2. 申告していない収入や取引は、どの年分・どの所得区分に属するのか
  3. 正しい所得金額と税額を再計算した結果、どの是正手続が必要になるのか

無申告や申告漏れに気づいたら、早めに動くことが大切です。とはいえ、内容を確かめないまま、とにかく急いで提出すればよいというものでもありません。

必要なのは、元の事実と資料を保全し、対象年分を特定し、正しい税務処理を組み立てたうえで、適切な手続によって是正することです。

本稿では、2026年6月25日現在の法令および国税庁の公表情報を前提に、無申告・期限後申告・申告漏れに気づいた場合の整理手順を解説します。なお、実際の取扱いは、対象年分、税務署からの連絡状況、収入の性質、帳簿・証憑の保存状況などによって変わってきます。

目次

最初に整理したい五つの状態

ひと口に「申告していない」「申告を間違えた」といっても、必要な手続は一つではありません。

現在の状態再計算の結果基本となる手続
法定申告期限前で、提出済みの申告に誤りがある税額の増減を問わない正しい申告書を期限内に再提出
申告義務があったが、期限までに申告していない納税・還付のいずれもあり得る期限後申告
期限内または期限後に申告したが、税額が少な過ぎた納付税額が増える、または還付額が減る修正申告
申告済みだが、税額を多く申告していた納付税額が減る、または還付額が増える更正の請求
もともと申告義務はなく、源泉徴収税額等の還付を受けたい還付になる還付申告

ここで押さえておきたいのは、「無申告」は申告書が提出されていない状態そのものを指し、「期限後申告」はその状態を自ら是正するための手続を指す、という点です。

そして、申告漏れが見つかったからといって、必ず修正申告になるわけではありません。漏れていた収入だけでなく、対応する経費、源泉徴収税額、損失、控除などを含めて申告全体を再計算し、その結果に応じて手続を選びます。

法定申告期限のあとに税額を少なく申告していた場合は修正申告、逆に多く申告していた場合は更正の請求が基本です。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内。もともと確定申告義務がない方の還付申告は、原則として対象年の翌年1月1日から5年間、提出することができます。
出典:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき
出典:国税庁|No.2030 還付申告

「早く対応すること」と「確認せずに提出すること」は違う

無申告や申告漏れは、早く是正するほど、加算税の取扱いなどで有利になる可能性があります。

ただ、確認を省いて急いで提出してしまうと、次のような問題が起こりがちです。

  • 一部の収入だけを申告し、別の収入が再び漏れてしまう
  • 入金額だけを売上とし、手数料控除前の収入を把握できていない
  • 事業所得、雑所得、不動産所得、譲渡所得などの区分を誤る
  • 実際に生じている必要経費や源泉徴収税額を反映できていない
  • 申告漏れが他の年分にもあることを見落とす
  • 所得税だけを直し、消費税や源泉所得税を見落とす
  • 納税額を確定させた後になって、納税資金が足りなくなる

ですから、対応の基本は、次の順序で進めることになります。

資料を保全する → 対象年分を洗い出す → 事実関係を確定する → 所得・税額を再計算する → 手続と納税資金を決める → 申告・納付する

税額を減らすために事実を組み替えるのではなく、実際に起きた取引を税務上正しく分類する。そこがすべての出発点です。

まず、確定申告義務があったかを再判定する

申告していない収入が見つかったとしても、それだけで直ちに期限後申告が必要になるとは限りません。

まずは、その年のすべての収入、所得、控除、源泉徴収税額を集めたうえで、申告義務があったかどうかを判定します。

申告要否の確認対象

少なくとも、次のような収入・取引を年分ごとに洗い出しておきたいところです。

  • 給与、賞与、退職金
  • 複数の勤務先から受け取った給与
  • 原稿料、講演料、監修料、業務委託報酬
  • 副業、フリーランス、プラットフォーム経由の収入
  • 家賃、更新料、礼金、駐車場収入
  • 土地、建物、株式、投資信託等の売却
  • 保険金、解約返戻金、個人年金
  • 補助金、助成金、損害賠償金
  • 暗号資産その他のデジタル資産による所得
  • 国外口座、国外不動産、国外金融資産から生じた所得
  • 源泉徴収されている報酬や配当
  • 翌年以降へ繰り越したい損失

「源泉徴収されているから申告済み」「少額だから非課税」「赤字だから申告不要」——こうした思い込みが、必ずしも正しいとは限りません。

給与所得者について知られている「給与以外の所得が20万円以下」という基準も、一定の要件を満たす場合に所得税の申告を要しないという制度であって、すべての人に共通する非課税枠ではありません。住民税の申告要否とも切り離して確認する必要があります。

なお、医療費控除などを受けるために確定申告をする場合には、原則として、申告対象となる他の所得も含めて申告書を作成することになります。
出典:国税庁|こんな収入の申告漏れにご注意

無申告・申告漏れを是正する八つの手順

1.資料を削除・改変せず、そのまま保全する

申告漏れに気づいた直後は、申告書を作り始める前に、まず元の資料を保全します。

対象となる資料には、たとえば次のようなものがあります。

  • 過年度の確定申告書と決算書
  • 会計ソフトのデータ
  • 銀行口座の入出金明細
  • クレジットカード明細
  • 契約書、注文書、請求書、領収書
  • 電子メール、チャット、業務完了報告
  • プラットフォームの取引履歴
  • 証券会社の年間取引報告書
  • 不動産の賃貸借契約書、家賃明細、修繕資料
  • 保険会社からの支払通知書
  • 源泉徴収票、支払調書
  • 税務署から届いた通知や照会文書

電子データは、上書きや削除をせず、取得日時や取得元が分かる状態で保存しておきます。

資料が足りない場合に、取引先や金融機関から再発行を受けることは問題ありません。しかし、実際には存在しなかった契約書や領収書を過去の日付で作成したり、既存の資料を書き換えたりすることは、絶対にしてはいけません。

申告の誤りと、事実の隠蔽・仮装とは、まったく別のものです。重加算税は、通常の加算税の要件に加えて、税額計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告しなかったことなどが要件とされています。無申告だったという事実だけで、直ちに重加算税になるわけではありません。とはいえ、発覚後の資料改変や虚偽の説明は、判断を大きく悪化させかねない点には注意が必要です。
出典:e-Gov法令検索|国税通則法

2.対象年分を一覧にする

申告漏れが一つ見つかったときは、その項目だけを直すのではなく、同じ取引が他の年にも存在していないかを確認します。

次のような一覧を作っておくと、全体像がつかみやすくなります。

年分申告の有無発見した収入・取引主な資料税務署からの連絡関連する可能性がある税目
対象年分ごと未申告・申告済み収入・経費・資産取引等通帳・契約・請求等なし・行政指導・調査所得税・消費税・住民税等

過年度に計上すべき収入や経費は、原則として、本来帰属する各年分に戻して計算します。

複数年分の漏れを、現在の年の売上や経費にまとめて計上しても、過年度の申告を正しく是正したことにはなりません。誤りが生じた年分ごとに税額を再計算し、必要な手続を行う——これが基本です。

3.入金額ではなく、取引全体から収入を復元する

申告漏れを調べるとき、通帳に入った金額だけを合計する方法では、不十分なことがあります。

たとえば、取引先やプラットフォームが手数料を差し引いて送金しているケースでは、入金額がそのまま総収入金額になるとは限りません。

収入を復元するときは、次の関係を確認します。

  • 契約金額
  • 請求金額
  • 売上・報酬の確定時期
  • 源泉徴収税額
  • 決済手数料や販売手数料
  • 実際の入金額
  • 未収入金、前受金
  • 返金、値引き、取消し

とりわけ、源泉徴収後の入金額だけを売上としていると、総収入金額と源泉徴収税額の双方を誤る可能性があります。

副業やネット取引については、サービス運営会社の年間取引履歴、売上CSV、決済明細などを取得し、銀行への入金と照合します。古い履歴は閲覧できなくなることもありますので、早めに保存しておくことが肝心です。

4.所得区分と収入計上時期を確認する

入金を把握したら、次に、その収入がどの所得に該当するのかを判断します。

主な候補としては、次のものが挙げられます。

  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 給与所得
  • 雑所得
  • 一時所得
  • 譲渡所得
  • 配当所得
  • 退職所得

所得区分は、納税者が有利な区分を自由に選べるものではありません。活動の継続性、独立性、営利性、契約関係、役務提供の方法、資産の性質、帳簿の状況などから判断していきます。

所得区分が変われば、必要経費、青色申告、損益通算、損失の繰越し、課税方式なども変わってくる可能性があります。

また、入金日と収入の計上年が一致するとは限りません。役務提供が完了した日、商品を引き渡した日、賃料を受け取る権利が確定した日などを確認し、本来どの年分に属する収入なのかを見極めます。

5.実際に生じた必要経費・取得費・控除も確認する

無申告だったからといって、正当な必要経費まで認められなくなるわけではありません。

もっとも、税額を抑えるために、根拠のない支出を後から経費に加えることはできません。

確認したいのは、次のような点です。

  • 実際に支払ったか
  • 所得を得る業務と関係があるか
  • 誰に、何のために支払ったか
  • 家計支出が含まれていないか
  • 資産として減価償却すべき支出ではないか
  • その年分に対応する支出か
  • 帳簿、領収書、通帳、契約書が一致するか

領収書がないから必ず経費にならないとも、本人が説明すれば必ず認められるとも、一概には言えません。契約書、請求メール、通帳、カード明細、業務記録、利用実態といった客観的な資料を組み合わせて、支出の内容を確認していきます。

資産売却の申告漏れでは、必要経費ではなく、取得費、改良費、譲渡費用、所有期間、特例の適用可否などを確認します。取得資料がないまま概算で処理すると、税額が大きく変わることがあります。購入時の契約書、登記資料、借入資料、相続関係資料などを、できる限り探しておきたいところです。

6.所得税以外への影響を確認する

個人の申告漏れを是正するとき、所得税だけを計算して終わりにしないことが大切です。

状況によっては、次のような税金・負担にも影響が及ぶ可能性があります。

  • 復興特別所得税
  • 住民税
  • 個人事業税
  • 国民健康保険料
  • 消費税・地方消費税
  • 給与や報酬に係る源泉所得税
  • 固定資産税上の償却資産申告
  • 国外財産調書、財産債務調書等

特に個人事業者や不動産オーナーの場合、所得税の申告漏れが、消費税の課税事業者判定や個人事業税にまで波及することがあります。

従業員、青色事業専従者、外注先、専門家等への支払があるときは、支払者として源泉徴収・納付すべき税金がなかったかどうかも確認しておきます。

7.本税だけでなく、総負担と納税資金を試算する

是正に必要な資金は、追加の所得税だけではありません。

概念的には、次の合計で考えておくとよいでしょう。

追加の所得税等 +加算税 +延滞税 +住民税・個人事業税等への影響 +将来の社会保険料等への影響

不動産収入がある場合、帳簿上は所得が生じていても、固定資産税、修繕費、借入金返済などによって、手元に現金が残っていないことがあります。

とりわけ借入金の元金返済は、現金支出ではあるものの、その全額が所得税の必要経費になるわけではありません。ですから、「現金が残っていないのだから税金も少ないはず」とは限らないのです。税額計算と資金繰りは、切り分けて確認する必要があります。

追加税額の概算が出た段階で、申告日、納付可能額、住民税等の後続負担までを含めた資金計画を作成します。

8.年分ごとに申告し、納付まで完了させる

期限後申告書や修正申告書を提出した場合、追加で納める税金の納期限は、原則としてその申告書を提出した日です。

申告書を提出しただけでは、納付は完了しません。

一方で、手元資金が不足していることを理由に申告そのものを放置してしまうと、延滞税の期間や税務リスクがさらに広がりかねません。

一括納付が難しい場合でも、自己判断で放置せず、申告手続と並行して、税務署の徴収担当部門に相談してください。一定の要件を満たせば、納税の猶予や換価の猶予が認められることもありますが、申請期限、財産・収支の状況、担保などの条件を、個別に確認しておく必要があります。
出典:国税庁|No.9206 国税を期限内に納付できないとき

申告漏れの内容ごとに確認事項は異なる

副業・フリーランス収入

確認すべきなのは、銀行への入金額だけではありません。

  • 報酬総額
  • 源泉徴収税額
  • 手数料控除前の金額
  • 売上計上時期
  • 事業所得または雑所得の区分
  • 対応する必要経費
  • 帳簿の有無
  • 消費税・インボイスとの関係

勤務先に知られたくないという事情があったとしても、それは申告義務の有無とは別の問題です。

不動産収入

不動産収入では、次の資料を物件ごとに整理します。

  • 所有者・共有持分
  • 賃貸借契約書
  • 家賃、共益費、礼金、更新料
  • 敷金・保証金
  • 管理会社の精算書
  • 固定資産税
  • 借入金利子
  • 修繕・リフォーム費用
  • 減価償却資産の取得資料
  • 自宅部分と賃貸部分の利用区分

相続直後や共有不動産の場合、家賃が一人の口座に入っているからといって、その全額がその人の所得になるとは限りません。権利関係と収益の帰属を確認しておきます。

不動産・株式その他の資産売却

資産売却では、売却代金が入金されていても、利益が出ているかどうかは、取得費や譲渡費用を確認しなければ分かりません。

さらに、次のような点で取扱いが変わってきます。

  • 資産の種類
  • 所有期間
  • 居住用・事業用等の利用実態
  • 相続・贈与による取得か
  • 特定口座、一般口座等の口座区分
  • 適用可能な特例
  • 他の譲渡損益との通算
  • 申告を継続する必要がある損失の繰越し

「売却代金の全額が所得になる」「損失だから申告不要」と、一律に判断することはできません。

保険金・解約返戻金・年金

保険に関する収入は、次の関係を確認します。

  • 保険料を負担した人
  • 契約者
  • 被保険者
  • 受取人
  • 一時金か年金か
  • 死亡、満期、解約等の受取原因

これらによって、一時所得、雑所得、相続税、贈与税といった課税関係が変わってきます。

国外口座・国外資産

国外で受け取った収入であっても、日本の居住者に該当する場合には、日本で申告対象となることがあります。

居住者・非居住者・非永住者の区分、国外源泉所得、外国で納めた税金、外国税額控除、国外財産調書などを、一体として確認します。

期限後申告と修正申告では加算税が異なる

無申告の場合に問題となるのは、主に無申告加算税です。これに対して、申告済みの税額が不足していた場合に問題となるのは、主に過少申告加算税です。

無申告加算税の基本的な取扱い

2023年分以後の所得税申告など、法定申告期限が2024年1月1日以後に到来する申告について、無申告加算税の概要は次のとおりです。

期限後申告等を行う時点納付税額に対する基本割合
税務署から調査を行う旨等の通知を受ける前に自主的に期限後申告原則5%
通知後、調査による決定等を予知する前50万円以下の部分10%、50万円超300万円以下の部分15%、300万円超の部分25%
調査による決定等を予知した後、または税務署による決定50万円以下の部分15%、50万円超300万円以下の部分20%、300万円超の部分30%

ここでいう金額区分は、売上高や申告漏れ所得ではなく、原則として、期限後申告等により納付すべき税額を基準とします。

また、法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告を行い、法定納期限までに税額を納付していること、過去5年間の加算税歴など、一定の要件をすべて満たす場合には、無申告加算税が課されないことがあります。

一方で、短期間に無申告を繰り返した場合や、帳簿の提示がなく売上げの記載が著しく不十分な場合などには、加重措置が適用されることがあります。適用割合は、対象年分と事実関係に応じて確認が必要です。
出典:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき

申告済みの税額が少なかった場合

期限内申告をした後で税額が少なかったことに気づき、税務署から調査を行う旨等の通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、原則として過少申告加算税はかかりません。

通知後、調査による更正を予知する前であれば、原則5%、一定額を超える部分は10%です。更正等を予知した後であれば、原則10%、一定額を超える部分は15%となります。

ただし、当初申告が期限後申告であった場合には、修正申告による増加税額についても、無申告加算税の計算対象となることがあります。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき

行政指導と税務調査は区別する

税務署から連絡があったとしても、それが税務調査とは限りません。

申告書の記載漏れや計算誤りについて自主的な見直しを求める行政指導の場合もあれば、質問検査権に基づく税務調査の場合もあります。

行政指導に基づいて自主的に修正申告をした場合は、原則として過少申告加算税は課されません。ただし、当初申告そのものが期限後申告であった場合には、無申告加算税が課されることがあります。

これに対して、税務調査後の修正申告では、原則として加算税の対象となります。
出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

延滞税は加算税とは別に生じる

加算税は申告義務違反等に対する行政上の負担であり、延滞税は納付が遅れた期間に応じて生じる税金です。両者は別のものと考えてください。

期限後申告や修正申告で追加税額が生じた場合、原則として、法定納期限の翌日から実際の納付日まで延滞税が計算されます。

2026年1月1日から2026年12月31日までの期間については、原則として、納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.8%、それを超える期間は年9.1%です。

割合は年によって変わり、対象期間の途中で適用割合が変わることもあります。過年度分は、年ごとに計算する必要があります。
出典:国税庁|No.9205 延滞税について

重加算税は「申告を忘れた」だけで決まるものではない

無申告であった場合でも、それだけで重加算税が課されるわけではありません。

重加算税が問題となるのは、通常の無申告加算税等の要件を満たすことに加えて、税額計算の基礎となる事実を隠蔽または仮装し、それに基づいて申告しなかった場合などです。

無申告加算税に代えて課される重加算税の通常の割合は、原則40%です。ただし、実際に重加算税の対象となるかどうかは、本人の認識だけで決まるものではありません。帳簿、入出金、名義、資料の作成経緯、税務署への説明、申告漏れ発覚後の行動などから、総合的に判断されます。

単なる計算誤り、所得区分の認識違い、収入計上時期の誤りと、架空資料の作成、二重帳簿、意図的な売上除外、虚偽回答等とは、はっきり区別して整理しなければなりません。

誤りに気づいた後は、事実をありのまま保全し、何が分かっていて、何を誤認していたのかを、時系列で整理しておくことが大切です。

「何年分さかのぼるか」を自己判断しない

無申告や申告漏れについて、「過去5年分だけ申告すればよい」と単純に考えてしまうのは、適切ではありません。

税務署が所得税について更正・決定できる期間は、原則として法定申告期限から5年です。ただし、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合などには、7年となることがあります。

一方で、納税者側が更正の請求や還付申告をできる期間、特例適用に必要な期限、損失の繰越しに関する要件などは、それぞれ別に定められています。

したがって、確認する順序は次のとおりです。

  1. 漏れが生じた可能性のある年分をすべて把握する
  2. 各年分の申告義務と正しい税額を確認する
  3. 税務署の更正・決定期間と、納税者側の手続期限を区別する
  4. 期限が経過した年分を、自己判断で対象外にしない
  5. 期限に依存する控除・特例・青色申告上の取扱いを確認する

期限後申告をしたからといって、期限内申告を要件としない必要経費まで、一律に認められなくなるわけではありません。

しかし、青色申告特別控除の一部など、法定申告期限までの申告を要件とする制度については、期限後申告では同じ適用を受けられないことがあります。
出典:e-Gov法令検索|国税通則法
出典:国税庁|No.2030 還付申告

税務署から連絡を受けた場合の確認事項

税務署から電話、文書、電子通知等があったときは、その場で記憶だけを頼りに回答するのではなく、次の事項を確認しておきます。

  • 税務署名、部署名、担当者名
  • 連絡日時と連絡方法
  • 対象税目
  • 対象年分
  • 行政指導か税務調査か
  • 確認を求められている事項
  • 提出を求められている資料
  • 回答・提出期限
  • 調査を行う旨、対象税目、対象期間の通知があったか
  • 既に税理士へ税務代理を依頼しているか

電話で即答できない事項は、「資料を確認して回答します」と伝え、事実を確かめたうえで返答します。

税務署からの連絡を無視することは適切ではありません。ただ同時に、確認できていない数字を推測で伝えることも避けるべきです。

提出した資料、回答した内容、電話で話した内容は、記録に残しておきます。税務代理を依頼する場合は、税務署から受け取った文書や連絡内容を省略せず、専門家へ共有してください。

なお、税務署は、具体的な手続を行う前に、それが税務調査であるか行政指導であるかを明示することとされています。

出典:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
出典:国税庁|税務調査手続等に関する事務運営指針

対応時に避けるべき七つの行動

1.税務署から連絡が来るまで放置する

自主的な期限後申告・修正申告と、調査通知後・調査後の申告とでは、加算税の取扱いが異なることがあります。

事実関係を整理できる状態であれば、連絡を待つことを前提にしないほうがよいでしょう。

2.見つかった一項目だけを追加する

申告漏れが一つ見つかった場合は、他の収入、必要経費、源泉徴収税額、控除、そして他年分への影響もあわせて確認します。

申告書全体を再計算せず、一つの金額だけを追加すると、別の誤りを残してしまう可能性があります。

3.現在の年分にまとめて計上する

過年度に帰属する収入・経費を現在の年分にまとめても、本来の年分を是正したことにはなりません。

年分ごとに、取引と税額を整理します。

4.納税額を減らすために経費を作る

実在しない経費、事業と関係のない生活費、過去の日付にさかのぼって作成した資料を使ってはいけません。

認められる可能性のある正当な経費を漏れなく確認することと、根拠のない経費を計上することは、まったく別のものです。

5.「20万円以下」「源泉徴収済み」だけで判断する

申告不要制度は、納税者の状況、所得の種類、他の申告理由によって、適用関係が変わります。

住民税、損失の繰越し、控除申告との関係もあわせて確認します。

6.納税資金がないため申告も先送りする

申告義務と、現時点で一括納付できるかどうかは、分けて考えます。

追加税額を確定させ、早めに税務署へ納付相談を行うほうが、長く放置するよりも、状況を整理しやすくなります。

7.「何年分か」を先に決めて資料を捨てる

更正・決定期間、還付・更正の請求期間、隠蔽・仮装の有無などによって、対象期間は変わってきます。

専門的な判断が終わる前に、古い資料を廃棄しないことが重要です。

専門家への相談を早めに検討すべき場面

次のような場合には、単に申告書へ数字を入力するだけでなく、事実関係の復元から検討する必要があります。

  • 複数年にわたり無申告または申告漏れがある
  • どの年分に計上すべきか分からない
  • 事業所得、雑所得、不動産所得等の区分が分からない
  • 通帳の入金額と請求・売上金額が一致しない
  • 帳簿を作成しておらず、過年度資料から復元する必要がある
  • 自宅、車両、通信費等で事業と家計が混在している
  • 不動産、株式、国外資産等を売却している
  • 家族名義・共有名義の資産や口座がある
  • 所得税だけでなく消費税や源泉所得税も関係する
  • 税務署から行政指導、照会、調査通知を受けている
  • 資料の改変、名義変更、虚偽説明等と評価されかねない事情がある
  • 追加納税額が大きく、納税資金の調整が必要である
  • 過去に別の税理士が関与しており、申告の前提が分からない

専門家に依頼する価値は、申告書を代わりに作成してもらうことだけにあるのではありません。

対象年分、取引実態、所得区分、必要経費、関連税目、加算税の段階、納付方法を一体として整理し、税務署へ一貫した説明ができる状態をつくること——そこにこそ意味があります。

重要事項の振り返り

確認事項判断の要点取るべき行動
申告義務の有無収入額だけでなく、所得区分、他の所得、控除、損失を含めて判定年分ごとに全収入を一覧化する
手続の種類未申告か、申告済みか、税額が増えるか減るかで異なる期限後申告・修正申告・更正の請求等を区別する
対象年分現在年にまとめず、本来の帰属年へ戻す年分別の整理表を作る
収入金額入金額ではなく、契約・請求・手数料・源泉税を確認通帳と第三者資料を照合する
所得区分名称や希望ではなく、取引実態から判断契約、継続性、独立性、資産の性質を確認する
必要経費実在性、業務関連性、支払時期、家計との区分が必要証憑と利用実態を整理する
他税目への影響消費税、源泉所得税、住民税、事業税等へ波及することがある所得税以外も同時に確認する
加算税自主申告か、調査通知後か、調査後かで異なる税務署からの連絡段階を記録する
延滞税法定納期限から納付日まで計算される追加税額確定後、早期に納付する
重加算税無申告だけではなく、隠蔽・仮装の有無が問題資料を改変せず、事実を時系列で整理する
納税資金本税以外の負担も含めて準備する資金不足時は早期に税務署へ相談する
再発防止年1回の申告時だけでは漏れを防げないことがある口座分離、月次記帳、資料保存を整える

無申告・申告漏れの整理をご検討の方へ

無申告や申告漏れへの対応では、早く申告書を提出することだけでなく、どの年分に、どの所得として、いくらを申告すべきかを正しく整理することが重要です。

複数年分の申告、所得区分の判断、不動産・資産売却、帳簿の復元、消費税への波及、税務署からの連絡などがある場合には、申告を始める前の段階で、まず全体像を確認しておいたほうがよいことがあります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、過年度の申告書、通帳、契約書、取引明細、税務署からの通知等をもとに、申告が必要となる年分と論点を整理し、今後説明できる状態へ整えることを重視しています。

「どの年分から確認すべきか分からない」「申告漏れが他の税金にも影響するか確認したい」——そうした段階でも、当事務所HPのお問い合わせページからご相談いただけます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次