決算が近づいてくると、多くの会社で「未払賞与を計上できないか」「まだ支払っていない費用を今期の経費にできないか」「社会保険料を見積計上できないか」といった検討が始まります。利益を少しでも圧縮したい、という発想から出てくるものです。
この検討そのものは、決して悪いことではありません。
期末までに発生している費用を正しく未払計上することは、むしろ適正な決算処理です。従業員への賞与を、制度上の要件を満たしたうえで当期の損金にすることもありますし、社会保険料についても、月末に債務が確定しているものを翌月の支払前に損金処理する場面はあります。
ただ、ここで一つ立ち止まっておきたいことがあります。未払計上は、「支払っていないものでも経費にできる便利な節税策」ではない、ということです。
税務上で問題になるのは、期末時点で債務が確定していないもの、実際の支給義務がまだ固まっていないもの、後から利益に合わせて作ったもの、そして形式だけを整えたものです。こうしたものを未払金として計上してしまうと、税務調査で損金算入が否認されるだけでは済みません。場合によっては、役員給与、源泉所得税、重加算税、さらには金融機関への説明にまで影響が及びます。
未払賞与・未払費用・社会保険料を損金にできるかどうかを考えるとき、最初に確認すべきなのは「支払う予定があるか」ではありません。「決算日時点で、法律上・契約上・事実上、会社が支払う義務を負っていると説明できるか」なのです。
未払計上の基本は「債務確定」
法人税では、販売費、一般管理費その他の費用のうち、償却費以外のものは、その事業年度終了の日までに債務が確定しているものが損金算入の対象になります。
そして、法人税基本通達2-2-12では、この「債務が確定しているもの」について、三つの要件が示されています。事業年度終了の日までに債務が成立していること、その債務にもとづく具体的な給付原因事実が発生していること、そして金額を合理的に算定できること。この三つです。
出典:国税庁|第2款 販売費及び一般管理費等
この三要件は、未払費用を判断するうえでの土台になります。
判断の基準は、請求書が届いているかどうかではありません。支払予定日が来ているかどうかでもありません。まして、会計ソフトに未払金として入力したかどうかでもありません。
見るべきは、次の三点です。
決算日時点で、相手方に対する支払義務が成立しているか。その支払義務の原因となる役務提供、納品、勤務、契約上の条件充足といった事実が発生しているか。そして、その金額を客観的・合理的に計算できるか。
この三つがそろっているかどうかを確認します。
たとえば、外注業務が期末までに完了していて、契約上の報酬額も確定しており、あとは請求書が翌月に届くだけ、という状態であれば、未払計上を検討できる余地があります。
一方で、まだ業務が完了していない、成果物の検収が終わっていない、相手方との合意もないまま社内で概算額を置いただけ、という状態では、未払費用として当期の損金にすることは難しくなります。
未払計上は、将来払うかもしれない費用を先取りする処理ではありません。すでに発生し、金額を合理的に見積もることができ、支払義務が確定している費用を、決算上で正しく反映するための処理です。
未払賞与は、通常の未払費用より要件が厳しい
未払賞与は、決算前の節税策としてよく検討される項目です。
利益が出た期に、従業員へ決算賞与を支給する。従業員の貢献に報いながら、会社の損金にもなる。事業の実態に合っていれば、これはごく自然な判断です。
ただし、未払賞与には注意が必要です。通常の未払費用とは異なり、法人税法施行令72条の3、法人税基本通達9-2-43・9-2-44などにもとづく、特別な確認が求められるからです。
国税庁のタックスアンサーでは、使用人賞与の損金算入時期を、労働協約・就業規則によって支給予定日が定められている賞与、一定の要件を満たして通知済みの賞与、そしてそれ以外の賞与、という形で整理しています。
出典:国税庁|No.5350 使用人賞与の損金算入時期
大きく分けると、使用人賞与の損金算入時期は、次のように考えます。
一つ目は、労働協約または就業規則によって支給予定日が定められ、その支給予定日がすでに到来している賞与です。この場合は、支給予定日と支給額の通知日のいずれか遅い日が属する事業年度で、損金算入を検討します。ただし、使用人に支給額が通知されていること、かつ、その事業年度で損金経理していることが前提です。
二つ目は、決算賞与のように、期末までに各人別の支給額を通知し、翌期開始後1か月以内に通知どおり支給し、当期に損金経理している賞与です。この場合は、使用人に支給額を通知した日が属する事業年度で、損金算入を検討できます。
三つ目は、これらのいずれにも該当しない賞与です。この場合は、原則として、実際に支払った日が属する事業年度の損金になります。
未払賞与でもっとも誤りやすいのは、「決算日までに未払計上しておけばよい」という思い込みです。
実際には、賞与計算表を作っただけでは足りません。各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人へ、支給額を通知していることが必要です。そのうえで、通知したすべての使用人に対して、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に、通知した金額を支払っていなければなりません。
出典:国税庁|No.5350 使用人賞与の損金算入時期
「支給日に在籍している人だけ支給」は、未払賞与では危険
未払賞与でとりわけ重要になるのが、「支給日に在籍している使用人にだけ賞与を支給する」という条件です。
多くの会社の賞与規程では、支給日に在籍している従業員に限って賞与を支給する、と定めています。通常の賞与制度としては、ごく自然な設計です。ところが、決算賞与を未払計上して当期の損金にしたい場合には、この条件がかえって問題になります。
法人税基本通達9-2-43では、法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合、その支給額の通知は、法人税法施行令72条の3第2号イにいう「支給額の通知」には該当しない、とされています。
出典:国税庁|第8款 使用人給与
これは突き詰めると、期末時点で本当に支払義務が確定しているといえるのか、という問題です。
決算日までに従業員へ賞与額を通知していても、「支給日までに退職した場合は支給しない」という条件が付いているのであれば、その従業員に対する賞与を、期末時点で確定した債務と言い切ることは難しくなります。通知した額が、必ずそのとおりに支払われる状態にはないからです。
実務の場面でも、同じことが起こります。期末までに通知し、翌期開始後1か月以内に支払ったように見えても、支給日までに退職した者へは支給しなかった場合や、支給日に在籍する者だけを対象とする条件がある場合には、未払賞与の損金算入が否認される論点になります。税務調査では、通知の内容、支給明細、退職者の有無、就業規則や賞与規程の文言まで、丁寧に確認されます。
ここで見落としてはならないのは、「実際に退職者が出たかどうか」だけが問われるわけではない、という点です。
支給日までに退職した人には支給しない、という条件がある以上、たとえ結果として退職者が一人もいなかったとしても、税務上の「通知」としては認められない可能性があります。期末までに通知した金額が、支給日まで在籍するかどうかに左右される状態では、すでに支払われたものと同じようには扱えないからです。
未払賞与を当期の損金にするのであれば、通知した使用人に対して、退職の有無にかかわらず通知額を支払うことになるのか、そしてそれが賞与規程や通知内容と整合しているのかを、あらためて確認しておく必要があります。
未払賞与で残すべき資料
未払賞与を損金にするためには、要件を満たすことに加えて、後から説明できる資料をそろえておくことが欠かせません。
税務調査では、「本当に期末までに通知したのか」が問題になりやすい論点です。通知書の控え、受領サイン、押印、社内メール、電子掲示板、給与システム上の通知履歴など、期末までに通知したという事実を客観的に示せる資料を残しておくことが大切です。
最低限、確認しておきたい資料は次のとおりです。
- 賞与支給の決裁資料
- 支給対象者一覧
- 各人別の通知額
- 通知日が分かる資料
- 通知方法が分かる資料
- 従業員が通知を受けたことを示す資料
- 賞与規程、就業規則、労働協約
- 翌期開始後1か月以内に支給したことを示す振込記録
- 通知額と実支給額の一致を確認できる支給明細
- 退職者の有無と、その取扱い
- 当期に損金経理した仕訳
未払賞与は、資料が不足すると、とたんに説明が難しくなります。
「決算後に支給したのだから、期末には決まっていたはずだ」という説明では通りません。税務上は、期末までに通知していたか、通知額どおりに支給したか、そして支給条件に不確定な要素がなかったかを、資料にもとづいて確認します。
賞与を従業員に還元するという判断そのものは、経営として前向きなものです。だからこそ、節税目的だけで後付けするのではなく、会社の業績、評価、支給基準、通知、支給実績までを一本の線でつなげておく必要があります。
役員賞与・役員給与の未払計上とは分けて考える
ここまで扱ってきた未払賞与は、あくまで使用人に対する賞与です。
役員に対する賞与や給与の未払計上は、まったく別の論点になります。役員給与には、法人税法上、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与といった損金算入の制限があります。ですから、使用人賞与と同じ感覚で「期末に役員分も未払計上しておけばよい」と考えるのは、非常に危険です。
税務調査でも、期末に代表者への未払給与が計上されていると、その正当性が疑われやすくなります。定時株主総会議事録を改ざんして、過去に遡って役員給与を増額したような場合には、本来であれば定期同額給与として損金算入されていた部分も含めて、損金算入が否認される、という整理も示されています。
特にオーナー会社では、会社の資金と役員個人の資金を混同しやすい傾向があります。
しかし、会社が従業員へ決算賞与を支給することと、役員報酬を期末に遡って増額することは、税務上の意味がまったく異なります。役員への支給は、会社法上の報酬決議、法人税上の損金算入要件、源泉所得税、社会保険料、そして実際の支給実態までを含めて、別途判断しなければなりません。
そのため決算の場面では、使用人賞与、役員賞与、役員給与、使用人兼務役員、特殊関係使用人を、それぞれ切り分けて整理しておく必要があります。
未払費用は「見積もれればよい」わけではない
未払費用についても、よくある誤解があります。
それは、「金額を合理的に見積もれるなら未払計上できる」という考え方です。
確かに、債務確定の要件には「金額を合理的に算定できること」が含まれています。しかし、それは三要件のうちの一つにすぎません。金額を見積もることができても、債務そのものが成立していない、あるいは具体的な給付原因事実が発生していない場合には、未払費用として損金算入することはできないのです。
たとえば、次のようなものは慎重に確認すべきです。
- まだ役務提供が完了していない外注費
- 契約上の成果物が検収されていない業務委託費
- 相手方に通知していないリベート、売上割戻し、販売奨励金
- 社内査定だけで決めた紹介料、報奨金、協力金
- 金額も支払条件も相手方と合意していない費用
- 翌期の広告、保守、顧問、システム利用料を当期に先取りしたもの
- 将来発生する可能性があるクレーム対応費や損害賠償見込額
売上割戻しのように、期末時点で取引額にもとづいて計算できる場合であっても、契約や相手方への通知がないために、債務が確定していないと判断されることがあります。また、販売営業活動を社内で査定して決めるような売上割戻しについては、相手方に通知して初めて債務が確定する、と整理されることもあります。未確定の債務を損金にすることは、税務上、任意引当金の計上と同じように扱われ、否認されるリスクを抱えます。
未払費用を判断するときは、次の順番で確認していくと整理しやすくなります。
まず、相手方との契約や合意によって、支払義務が発生しているか。次に、期末までに役務提供、納品、条件達成などの原因事実が発生しているか。さらに、金額を合理的に算定できるか。そして最後に、契約書、請求書、検収書、作業報告書、通知書、稟議書、メールなどで説明できるか。
金額が見積もれる、というそれだけの理由で、未払費用にしてはいけません。
社会保険料は「決算日が月末かどうか」で判断が変わる
社会保険料の会社負担分も、決算で未払計上されることが多い費用です。
ここで押さえておきたいのは、社会保険料は「勤務日数に応じて日割りで発生する費用」ではない、という点です。健康保険料や厚生年金保険料は、被保険者が月末に在職しているかどうかを基礎として、翌月末までに納付義務が生じる仕組みになっています。
国税庁の質疑応答事例でも、法人が負担すべき社会保険料について、月末が到来していない月に係るものは、前月などの納付実績を基礎に合理的に見積もったとしても、その見積額を損金算入することは認められない、とされています。あわせて、法人の事業年度末日が月末でない場合、その末日を含む月の社会保険料は、当該事業年度の損金に算入できないとも整理されています。
出典:国税庁|社会保険料の損金算入時期について
具体的に考えてみます。事業年度末日が9月20日の会社が、9月1日から9月20日までの勤務に対応する社会保険料の会社負担分を、前月実績を基礎に日割りで見積計上したとします。
会計上は、勤務に対応する費用として認識しておきたい、という発想があるかもしれません。しかし税務上は、9月分の社会保険料の支払債務が確定するのは9月末です。9月20日の時点では、月末在職の事実がまだ確定していませんから、9月分の見積額を当期の損金にすることは認められません。
一方で、事業年度末日が9月30日であれば、話は変わります。9月末に在職している従業員に係る9月分の社会保険料の会社負担額については、翌月の納付前であっても、損金算入を検討できます。法人が負担する各月の社会保険料の支払債務は、月末における従業員の在職事実をもって確定する、と整理されているからです。
製造業の税務調査事例でも、決算日が月末でない会社が、月の途中までの勤務に対応する健康保険料・厚生年金保険料の会社負担分を、前月実績から日数按分して費用計上した処理について、社会保険料の見積計上額が論点として取り上げられています。
社会保険料については、「従業員が働いたのだから、費用は発生しているはずだ」と考えるだけでは足りません。税務上は、月末在職の事実、保険料の計算対象月、納付義務、そして決算日を確認します。
未払社会保険料で確認すべき資料
未払社会保険料を損金にするには、次の資料を確認しておきます。
- 決算日が月末かどうか
- 対象月の被保険者一覧
- 月末在職者の確認資料
- 資格取得日、資格喪失日
- 標準報酬月額、賞与支払届の内容
- 健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の料率
- 日本年金機構または健康保険組合からの納入告知書
- 翌月の納付記録
- 給与台帳、賃金台帳
- 社会保険料の会社負担分と本人負担分の区分
とりわけ、決算日が月末でない会社では注意が必要です。毎月末が決算日ではない会社、たとえば20日決算や25日決算などの場合、決算日を含む月の社会保険料を日割りで見積計上しても、税務上は損金算入できない可能性が高くなります。
また、賞与に係る社会保険料は、通常の月額給与に係る保険料とは別に、賞与支払届や賞与支給の事実と連動します。未払賞与を計上する場合には、その賞与に係る社会保険料を、いつ、どのように認識すべきかも、あわせて確認しておく必要があります。
未払給与と源泉所得税・社会保険料の整合性
未払給与や未払賞与を計上するときは、法人税の損金だけを見ていては足りません。
給与を支給した、あるいは支給すべきことになった場合には、源泉所得税、住民税、社会保険料、労働保険、年末調整、給与支払報告書などにも影響が及びます。
たとえば、期末に未払給与を計上しているのに、源泉徴収簿や年末調整の給与収入額にそれが反映されていないと、そもそも給与債務が本当に確定していたのか、という疑問を持たれます。税務調査では、未払給与の仕訳だけでなく、源泉徴収簿、賃金台帳、給与明細、支給履歴、社会保険の標準報酬月額、株主総会議事録などが、横断的に確認されます。
これは、未払賞与でもまったく同じです。
通知額、支給明細、振込記録、源泉所得税、社会保険料、給与システム、そして会計仕訳。これらが整合していなければ、後から説明することは難しくなります。
決算書だけが整っていても、給与台帳や源泉徴収簿と合っていない処理は、税務調査で問題になりやすいのです。
未払計上が危険な節税になる場面
未払賞与・未払費用・社会保険料の処理で危険なのは、次のような場面です。
- 利益が出たため、決算後に賞与を決めたのに、期末までに通知していたように見せる
- 通知書の日付を、期末前に遡らせる
- 支給日に在籍している従業員だけが対象なのに、未払賞与として当期損金にする
- 通知額と実支給額が一致していない
- 退職者に支給しなかったのに、全額を未払賞与として計上している
- 役員賞与を、使用人賞与と同じように未払計上する
- 役員給与を、期末に遡って増額する
- 未確定のリベートや協力金を、未払費用として計上する
- 社内査定だけで決めた費用を、相手方への通知前に損金処理する
- 決算日が月末でないのに、社会保険料を日割りで見積計上する
- 源泉所得税、社会保険料、給与台帳、会計仕訳が整合していない
これらは、単なる処理ミスでは済まないことがあります。
とりわけ、日付の遡及、議事録や通知書の改ざん、実際には決まっていなかった支給を決まっていたように見せる処理は、税務調査で厳しく見られます。重加算税の議論につながることもあります。
決算前の節税として考えてよいのは、事実にもとづいてすでに確定した費用を、正しく処理することです。事実を後から作ることではありません。
決算前に確認すべき実務チェック
未払賞与・未払費用・社会保険料を損金にする前に、少なくとも次の点は確認しておいてください。
未払賞与
- 対象は使用人か、役員か、使用人兼務役員か
- 労働協約、就業規則、賞与規程で支給予定日が定められているか
- 期末までに各人別の支給額を通知しているか
- 同時期に支給を受けるすべての使用人に通知しているか
- 支給日に在籍する者のみ支給する条件になっていないか
- 翌期開始後1か月以内に、通知額どおり支給しているか
- 当期に損金経理しているか
- 通知資料、支給明細、振込記録がそろっているか
- 退職者、不支給者、減額支給者がいないか
未払費用
- 期末までに支払義務が成立しているか
- 期末までに役務提供、納品、検収、条件達成が完了しているか
- 金額を合理的に算定できるか
- 相手方との契約、請求、通知、合意があるか
- 社内見積もりや任意引当金にとどまっていないか
- 翌期の費用を先取りしていないか
- 契約書、請求書、作業報告書、検収書、メール等で説明できるか
社会保険料
- 決算日は月末か、月中か
- 対象月の月末在職者が確定しているか
- 当該月の社会保険料債務が確定しているか
- 前月実績を日割りした見積額を計上していないか
- 納入告知書や翌月の納付資料と整合しているか
- 賞与に係る社会保険料の場合、賞与支給の事実や届出と整合しているか
給与・源泉・会計の整合性
- 会計仕訳と給与台帳が一致しているか
- 源泉徴収簿に未払給与・未払賞与が反映されているか
- 社会保険料の本人負担分と会社負担分が整合しているか
- 年末調整、給与支払報告書、法定調書との整合性があるか
- 役員給与について、株主総会議事録や決議内容と一致しているか
これらを確認しないまま未払計上してしまうと、決算上の節税効果だけが先行し、税務調査で説明できない処理になりかねません。
未払計上は「節税策」ではなく「説明できる決算処理」である
未払賞与・未払費用・社会保険料を損金にできるかどうかは、単に税金を減らせるかどうかの問題ではありません。
正しく未払計上できれば、当期の費用を当期に反映し、適正な期間損益を示すことができます。従業員への利益還元、取引先への費用、社会保険料の会社負担を、会社の実態に即して決算書へ落とし込めます。
反対に、債務が確定していない費用を未払計上したり、通知や支給の要件を満たしていない賞与を損金にしたり、社会保険料を日割りの見積もりで先取りしたりすれば、税務上の否認リスクは高まっていきます。
決算前に大切なのは、「未払にできるものを探す」ことではありません。
期末時点で発生している義務を、正しく把握すること。その義務が税務上の損金要件を満たすかどうか、確認すること。後から資料で説明できる状態にしておくこと。そして、税金だけでなく、資金繰り、給与制度、従業員との信頼、金融機関対応までを見渡して判断すること。
未払計上は、数字を動かすための処理ではありません。会社の実態を、正しく示すための処理なのです。
主な出典
- 出典:国税庁|No.5350 使用人賞与の損金算入時期
- 出典:国税庁|第8款 使用人給与
- 出典:国税庁|第2款 販売費及び一般管理費等
- 出典:国税庁|No.5387 販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定
- 出典:国税庁|社会保険料の損金算入時期について
- 出典:e-Gov法令検索|法人税法
- 出典:e-Gov法令検索|法人税法施行令
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未払賞与、未払費用、社会保険料の処理は、決算前に利益が見えてきた段階で検討されやすい一方、要件や資料整備を誤ると、税務調査で否認されやすい論点でもあります。
とりわけ、決算賞与を当期損金にしたい場合、支給日に在籍する従業員のみを対象とする賞与規程がある場合、決算日が月末でない場合、そして役員給与や源泉所得税との整合性に不安がある場合には、実行前の確認が重要になります。
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振り返り
| 論点 | 誤りやすい判断 | 確認すべき判断軸 |
|---|---|---|
| 未払計上の基本 | 支払予定があれば損金にできると考える | 期末までに債務成立、給付原因事実、金額の合理的算定がそろっているか |
| 未払賞与 | 決算日までに仕訳を入れればよいと考える | 各人別通知、全対象者への通知、翌期1か月以内の通知額どおり支給、損金経理を確認する |
| 支給日在籍条件 | 退職者がいなければ問題ないと考える | 支給日に在籍する者のみ支給する条件があると、税務上の「通知」に該当しない可能性がある |
| 通知資料 | 口頭で伝えたから十分と考える | 通知書、受領確認、メール、電子掲示板、給与システム履歴など、日付が分かる資料を残す |
| 役員給与 | 使用人賞与と同じように未払計上する | 定期同額給与、事前確定届出給与、会社法上の決議、源泉・社保との整合性を別途確認する |
| 未払費用 | 金額を見積もれれば損金にできると考える | 支払義務の成立、役務提供・納品・検収、相手方との合意や通知を確認する |
| リベート等 | 社内基準で計算できれば未払計上できると考える | 契約・通知・客観的算定基準により、相手方に対する債務が確定しているかを見る |
| 社会保険料 | 勤務日数に応じて日割り計上できると考える | 月末在職の事実で債務が確定するため、決算日が月末かどうかを確認する |
| 給与関連資料 | 会計仕訳だけ整えればよいと考える | 給与台帳、源泉徴収簿、年末調整、社会保険料、支給明細、振込記録との整合性を見る |
| 税務調査対応 | 後から説明すれば足りると考える | 期末時点で実態と資料がそろっており、後から第三者に説明できる状態にする |