決算が近づくと、こうしたご相談が増えてきます。
「パソコンを買えば経費になりますか」
「車を買えば節税になりますか」
「中古資産なら早く償却できますか」
「特別償却を使えば、税金を大きく減らせますか」
設備や備品の購入は、決算対策として検討されやすい項目です。そして実際に、少額資産の即時費用化、中古資産の短い耐用年数、特別償却や税額控除など、税務上活用できる制度は用意されています。
ただ、その手前で、一本の線を引いておきたいと思います。
設備投資とは、「利益を減らすために物を買う」行為ではありません。本来は、売上を増やす、業務を効率化する、人手不足を補う、品質を高める、将来の成長に備える、といった目的のための経営判断です。
税務上の効果だけを見て購入してしまうと、手元資金が減り、使わない固定資産が増え、金融機関から見た財務内容が悪化し、数年後には出番のない資産だけが残る、ということが起こります。反対に、事業に本当に必要な設備投資であれば、減価償却や税制優遇を適切に組み合わせることで、資金繰りへの負担を抑えながら投資効果を高めることができます。
この記事では、減価償却・少額資産・中古資産・特別償却を、「税金を減らすためのテクニック」としてではなく、「設備投資を後から説明できる処理にするための判断軸」として整理していきます。
設備を買っても、すぐ全額経費になるとは限らない
事業で使う設備、機械、車両、器具備品、ソフトウェアなどは、原則として購入時に全額を経費とするわけではありません。いったん固定資産として計上し、使用可能な期間にわたって減価償却していきます。
減価償却とは、支出した金額を、その資産が事業に役立つ期間へ配分していく処理です。
たとえば、300万円の機械を購入して5年間使うとします。この場合、購入した年に300万円全額を費用化するのではなく、耐用年数や償却方法に従って、毎期の費用へ少しずつ分けていきます。これは税務上の制限であると同時に、会社の損益を適正に映し出すための考え方でもあります。
ここで大切なのは、支出額と税効果を切り分けて見ることです。
300万円の設備を購入し、当期に100万円の減価償却費を計上できたとしても、税金が100万円減るわけではありません。法人税等の実効税率を仮に30%程度とすれば、税負担の軽減効果はおおむね30万円ほどです。その一方で、会社からは300万円の資金が出ていきます。
つまり、設備投資型の節税は、税額だけを見れば効果があるように見えても、資金繰りの面では大きな支出を伴います。「税金が減るから買う」のではなく、「事業上必要な投資について、税務上どのように費用化できるか」を考える。この順番こそが重要だと考えています。
減価償却で最初に確認すべき3つのこと
減価償却を検討するときは、細かな計算に入る前に、次の3つを確認しておきたいところです。
1つ目は、資産を取得しているかどうかです。売買契約、納品、検収、所有権移転、リース契約の内容などを確認します。単に発注しただけ、請求書を受け取っただけ、代金を前払いしただけでは、減価償却できるとは限りません。
2つ目は、事業の用に供しているかどうかです。「事業の用に供した日」とは、その資産の性質に従って、本来の目的のために使用を開始した日を指します。たとえば機械であれば、工場に搬入しただけでは足りず、据付けと試運転を終え、製品などの生産を開始した日が事業供用日になります。
出典:国税庁|No.5400-2 事業の用に供した日
3つ目は、取得価額、耐用年数、償却方法が正しいかどうかです。同じ設備でも、機械装置、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアといった資産区分によって、耐用年数や償却方法は変わります。また、購入代金だけでなく、設置費、運搬費、試運転費、設定費用など、事業に使える状態にするための支出が取得価額に含まれるかどうかも確認が必要です。
税務調査では、減価償却費の金額そのものだけでなく、「いつ、どの資産を、どこで、何のために使い始めたのか」が問われます。
決算間近の購入で最も危ないのは「事業供用」の説明不足
決算直前に設備を購入する場合、最も問題になりやすいのが事業供用の時期です。
たとえば3月決算の会社が3月30日に設備を購入したとしても、その設備が3月31日までに納品・設置され、使える状態になり、実際に事業のために使用を開始していなければ、当期の減価償却費を計上できないことがあります。
税務調査では、次のような資料が確認されます。
- 売買契約書
- 注文書、請書
- 納品書、検収書
- 設置完了報告書
- 試運転記録
- 作業日報、稼働記録
- 初回使用日が分かる資料
- 写真、メール、チャット履歴
- 支払日、振込記録
- 保守契約の開始日
- 固定資産台帳
実務では、決算間近に医療機器を取得したケースで、納品日と決済日の整合性、販売業者への反面調査、据付工事の状況などから、期末までに事業供用されていたかどうかが争点になった例があります。
このケースでは、期末までに納品されておらず、事業の用にも供されていなかったため、普通償却費と特別償却費が当期の損金に算入されない、と整理されました。さらに、納品書の日付改ざんは隠蔽又は仮装行為に該当し、重加算税の対象となる旨も示されています。
ここでのポイントは、はっきりしています。
決算前に発注したかどうかではありません。決算前に支払ったかどうかでもありません。決算日までに、事業のために使える状態になり、本来の目的で使用を開始しているかが問われるのです。
設備投資型の節税で無理をすると、単なる損金否認にとどまらず、資料の日付、業者とのやり取り、支払条件、設置作業の実態まで踏み込んで確認されることがあります。
少額資産は「金額」だけでなく「単位」と「時期」で判断する
少額な備品については、通常の減価償却によらず、取得時に全額を損金算入できる制度や、3年間で均等償却できる制度が用意されています。
ただし、少額資産を「1個あたりの金額が安いから大丈夫」と単純に判断するのは危険です。
税務上は、取得価額、消費税の経理方式、資産の機能単位、事業供用時期、貸付用資産かどうか、そして適用する制度の選択を、あわせて確認していきます。
10万円未満の少額減価償却資産
取得価額が10万円未満の減価償却資産は、一定の要件のもとで、事業の用に供した事業年度に全額を損金算入できます。
この10万円未満かどうかは、会社が税抜経理方式を採用している場合は税抜金額で、税込経理方式を採用している場合は税込金額で判定します。免税事業者は税込経理方式しか採用できないため、税込金額での判定になります。
出典:国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
また、金額の判定は「請求書の行」だけで見るものではありません。机と椅子、カーテン、応接セット、システム一式のように、複数の物が組み合わさって一つの機能を果たす場合には、その機能単位で判定する必要があります。
たとえば、1枚あたり数万円のカーテンを複数枚購入した場合でも、部屋ごとに一体として機能するのであれば、部屋ごとの合計額で判断することになります。細かく分けて10万円未満に見せる処理は、後から説明しにくい処理です。
20万円未満の一括償却資産
取得価額が20万円未満の減価償却資産については、一括償却資産として、3年間で均等に損金算入する方法を選択できます。
これは全額を取得年度に費用化する制度ではなく、取得価額を3年間に分けて損金算入する制度です。
10万円未満の即時損金算入と比べると、当期の節税効果は小さくなります。一方で、通常の耐用年数より短く費用化できる場合があり、会社規模を問わず使える点は実務上の利点です。
ただし、一括償却資産を選択した場合、個々の資産を途中で除却・売却したとしても、原則として残額をその時点で一括損金にできるわけではありません。20万円未満の減価償却資産について一括償却資産の適用を選択したときは、供用後に滅失・除却等があっても、損金算入額は一括償却資産の計算による損金算入限度額までとされています。
出典:国税庁|一括償却資産を除却した場合の取扱い
中小企業者等の少額減価償却資産の特例
中小企業者等については、少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例があります。
従来は取得価額30万円未満の減価償却資産が対象でしたが、令和8年度税制改正により、令和8年4月1日以後に取得等をする減価償却資産について、取得価額基準が30万円未満から40万円未満へ引き上げられ、適用期限も3年延長されました。あわせて、同日以後の取得等については、常時使用する従業員数が400人を超える法人が対象法人から除外されています。取得価額の合計額については、引き続き年300万円が上限です。
出典:国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
この特例について、中小企業庁も、40万円未満の減価償却資産を取得した場合には合計300万円までを限度に即時償却が可能であり、適用期限は令和10年度末、すなわち令和11年3月31日までと案内しています。
出典:中小企業庁|少額減価償却資産の特例
なお、この特例を使うには、青色申告、事業供用、損金経理、法人税申告書への別表・適用額明細書の添付など、所定の手続が必要です。
出典:中小企業庁|少額減価償却資産の特例
ここで注意したいのは、「40万円未満なら何でも自由に経費化できる」という意味ではない、という点です。
事業に使っていないもの、役員や親族の私的利用が中心のもの、貸付用資産で制度対象から除かれるもの、取得日や供用日が翌期になるもの、取得価額を不自然に分割したものは、税務調査で問題になります。
少額資産の制度選択は、当期税額だけで決めない
少額資産は、複数の処理から選べることがあります。
たとえば15万円の備品を取得した場合、通常の減価償却、一括償却資産、少額減価償却資産の特例のうち、どれを検討するか、という問題が出てきます。
このとき、当期の法人税だけを見ると、少額減価償却資産の特例で全額を損金にしたくなります。しかし、それが常に最適とは限りません。
確認しておきたい観点は、次のとおりです。
- 当期に十分な利益があるか
- 翌期以降も利益が出る見込みか
- 年300万円の枠を使い切るか
- 同じ年度に他の設備投資予定があるか
- 固定資産台帳で管理すべき資産か
- 金融機関に示す利益水準への影響はどうか
- 償却資産税の申告や自治体対応に影響があるか
- 将来、売却・除却する可能性があるか
少額資産は、制度の選択だけを見れば簡単に思えます。しかし、同じ金額の備品でも、会社の利益水準、設備投資計画、資金繰り、固定資産管理体制によって、選ぶべき処理は変わってきます。
「今年の税金を減らす」だけでなく、「翌期以降の利益と資金繰りをどう見せるか」まで含めて判断したいところです。
中古資産は「短く償却できる」だけで判断してはいけない
中古資産は、節税対策として紹介されることがあります。
たしかに中古資産については、一定の場合に簡便法によって耐用年数を短く算定できるため、新品より早く減価償却できることがあります。
簡便法による耐用年数は、法定耐用年数を全部経過した資産であれば法定耐用年数の20%相当、一部経過した資産であれば「法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数」に「経過年数の20%相当」を加えた年数とされます。1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年未満となる場合は2年とします。
出典:国税庁|No.5404 中古資産の耐用年数
たとえば、法定耐用年数6年の中古車がすでに6年を経過している場合、簡便法では6年×20%=1.2年となりますが、2年未満のため2年とされ、結果として2年で償却できる可能性があります。
ただ、中古資産の節税には注意点があります。
まず、中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度に行えるものです。その事業年度に算定をしなかった場合、後の事業年度で改めて算定することはできません。
出典:国税庁|No.5404 中古資産の耐用年数
また、中古資産を事業に使うために大きな修理・改良を行った場合には、簡便法を使えないことがあります。事業の用に供するために支出した資本的支出の金額が中古資産の取得価額の50%を超えるときは、簡便法により耐用年数を算定できません。さらに、その資本的支出が再取得価額の50%を超えるときは、法定耐用年数によることになります。
出典:国税庁|No.5404 中古資産の耐用年数(取得した中古資産を業務に使用するために資本的支出を行った場合)
中古資産を節税目的で購入するときは、次の点を確認しておく必要があります。
- 製造年月、初度登録年月、取得日
- 前所有者の使用状況
- 走行距離、稼働時間、使用頻度
- 修理履歴、事故歴、改良履歴
- 取得後に必要な修理費、改良費、整備費
- 資本的支出に該当する金額
- 新品を取得した場合の再取得価額
- 事業供用日
- 本当に事業に必要な性能を満たすか
中古資産は、短期償却が可能な場合もありますが、故障リスク、修理費、保守費、更新時期、資金繰りまで含めて考えると、新品より有利とは限りません。「中古だから早く償却できる」という入口だけで判断すると、税金は減っても、事業効率や資金繰りを悪化させてしまうことがあります。
特別償却と税額控除は、効果がまったく違う
設備投資税制では、「特別償却」と「税額控除」という言葉が出てきます。この2つは、節税効果の性質そのものが異なります。
特別償却は、通常の減価償却に加えて、取得年度に追加で償却できる制度です。初年度の損金を大きくできるため、当期の法人税を抑える効果があります。ただし、資産全体の取得価額を超えて償却できるわけではありません。初年度に多く費用化すれば、その分、翌期以降の減価償却費は少なくなります。
つまり、特別償却は多くの場合、課税の繰延べです。
一方、税額控除は、一定額を法人税額から直接控除する制度です。要件を満たし、法人税額が十分にある場合には、特別償却よりも実質的な税負担軽減効果が大きくなることがあります。ただし、税額控除には控除上限や繰越しの可否があり、赤字や法人税額が少ない期には十分に使えないこともあります。
したがって、設備投資税制を検討するときは、次のように分けて考えます。
- 当期の税額を抑えたいのか
- 将来の税負担も含めて有利にしたいのか
- 法人税額が十分にあるのか
- 翌期以降の利益見込みはどうか
- 資金繰り上、初年度の税負担軽減が必要なのか
- 金融機関に示す利益水準への影響はどうか
特別償却は、当期の税金を減らす効果が大きく見えます。しかし、将来の償却費を先取りしている面があります。税額控除は、法人税額を直接減らす効果がありますが、税額控除枠や適用要件の管理が欠かせません。
どちらが有利かは、単年の税額だけでなく、複数年の利益計画のなかで判断する必要があります。
中小企業投資促進税制は「対象設備」と「対象業種」を見る
中小企業投資促進税制は、中小企業者等が一定の設備を取得等した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除を選択して適用できる制度です。適用期限は2026年度末、すなわち2027年3月31日までとされています。
出典:中小企業庁|中小企業投資促進税制
対象設備には、一定金額以上の機械及び装置、測定工具・検査工具、一定のソフトウェア、貨物自動車、内航船舶などがあり、対象業種も限定されています。
出典:中小企業庁|中小企業投資促進税制
この制度で誤りやすいのは、「中小企業が設備を買えば使える」と考えてしまうことです。
少なくとも、次の点は確認しておきたいところです。
- 青色申告法人か
- 中小企業者等に該当するか
- 資本金、従業員数、支配関係に問題がないか
- 対象業種に該当するか
- 対象設備の種類と取得価額要件を満たすか
- 新品設備か、中古設備か
- 指定事業の用に供しているか
- 他制度との重複適用制限に抵触しないか
- 税額控除を選ぶ場合、法人税額の控除上限に収まるか
なお、税額控除は、個人事業主や資本金3,000万円以下の法人が対象とされています。
出典:中小企業庁|中小企業投資促進税制
資本金1億円以下だから税額控除も使える、というわけではありません。特別償却は使えても、税額控除は使えない法人があります。
中小企業経営強化税制は「事前手続」が重要
中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて対象設備を取得等した場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除を選択して適用できる制度です。資本金の額等が3,000万円超の法人は、税額控除率が7%となります。適用期限は2026年度末、すなわち2027年3月31日までとされています。
出典:中小企業庁|中小企業経営強化税制
この制度は、設備投資税制のなかでも効果が大きい制度です。即時償却を選べば、要件を満たす設備について取得年度に全額償却できる可能性があり、税額控除を選べば、法人税額を直接減らす効果があります。
その分、手続と要件確認が重要になります。
制度の適用には、生産性向上設備、収益力強化設備、経営資源集約化設備、経営規模拡大設備を導入して実施する経営力向上計画の認定が必要です。そして、工業会等による証明書や経済産業大臣による確認書は、設備の取得前に申請しておく必要があります。
出典:中小企業庁|中小企業経営強化税制
つまり、設備を買った後で「この制度を使いたい」と考えても、間に合わないことがあるのです。
中小企業経営強化税制を検討する場合には、購入前に次の資料をそろえておきます。
- 設備投資計画
- 対象設備の仕様書、見積書
- 工業会証明書又は確認書の要否
- 経営力向上計画
- 認定申請書類
- 設備取得予定日
- 事業供用予定日
- 投資効果の説明資料
- 資金調達計画
- 税額控除と即時償却の比較試算
この制度は、単なる決算対策ではなく、設備投資計画と税務申告をつなげる制度です。実行の直前ではなく、設備選定の段階から税務確認を進めておく必要があります。
少額資産・特別償却・税額控除は重複適用できないことがある
設備投資税制では、「どの制度を使うか」を選ぶ必要があります。
中小企業者等の少額減価償却資産の特例については、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできません。また、10万円未満の少額減価償却資産や一括償却資産の制度を適用するものについても、この特例の適用はないとされています。
出典:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
制度を複数並べて、「これも使える、あれも使える」と考えるのは危険です。
同じ設備について、少額資産の即時損金算入、特別償却、税額控除、補助金に伴う圧縮記帳などが絡む場合には、重複適用の可否、選択適用、申告書添付書類、適用額明細書、固定資産台帳の処理まで確認しなければなりません。
特に、補助金を受けた設備、リース設備、ソフトウェア、グループ会社間で取得した設備、事業譲受けに伴う設備取得などでは、通常の購入とは違う論点が出てくることがあります。
設備投資で税務調査に耐えるために残すべき資料
減価償却・少額資産・中古資産・特別償却は、税務調査で確認されやすい項目です。
理由は単純で、取得日、供用日、取得価額、耐用年数、制度要件が、資料で検証しやすいからです。
残しておきたい資料を、場面ごとに整理します。
取得を説明する資料
- 見積書
- 注文書、発注書
- 売買契約書
- 請求書
- 納品書
- 検収書
- 支払証憑
- リース契約書
- 所有権移転条項
- 保証書、製造番号が分かる資料
事業供用を説明する資料
- 設置完了報告書
- 試運転記録
- 稼働記録
- 初回使用日が分かる作業日報
- 製造記録、販売記録
- 入居募集開始資料
- 社内利用開始通知
- 写真
- 保守契約の開始日
- ユーザーアカウント発行履歴
- システム稼働ログ
税務処理を説明する資料
- 固定資産台帳
- 減価償却明細
- 耐用年数判定資料
- 償却方法の選定資料
- 少額資産判定資料
- 消費税の税込・税抜処理方針
- 制度選択の検討メモ
- 別表16関係資料
- 適用額明細書
- 特別償却・税額控除の計算資料
中古資産を説明する資料
- 製造年月、初度登録年月
- 前所有者の使用状況
- 走行距離、稼働時間
- 修理履歴
- 改良費、整備費の内訳
- 資本的支出の判定資料
- 再取得価額の根拠資料
- 簡便法による耐用年数計算資料
特別償却・税額控除を説明する資料
- 対象設備の要件判定表
- 経営力向上計画
- 認定書
- 工業会証明書
- 経済産業大臣確認書
- 投資計画
- 設備の仕様書
- 事業供用日を示す資料
- 他制度との重複適用確認資料
- 税額控除上限の試算資料
資料がそろっていれば、設備投資は税務調査でも説明しやすくなります。逆に資料が不足していると、実際には事業で使っていた資産であっても、取得時期や供用時期をめぐって争点になってしまうことがあります。
設備投資型節税で避けるべき判断
設備投資を使った節税では、次のような判断を避けたいところです。
- 利益が出たから、とりあえず高額な設備を買う
- まだ使う予定がないのに、決算前に購入だけしておく
- 納品や設置が翌期なのに、当期の減価償却費を計上する
- 事業供用していないのに、納品書の日付だけを期末前にする
- 私的利用が中心の車両や備品を会社資産にする
- 少額資産の金額判定を不自然に分割する
- 中古資産なら必ず短期償却できると考える
- 修理費や改良費を考えずに中古資産を購入する
- 特別償却と税額控除の違いを理解せずに選ぶ
- 事前認定が必要な制度を、購入後に検討する
- 補助金、圧縮記帳、税額控除の重複関係を確認しない
これらは、税務上の否認リスクだけでなく、資金繰り、財務内容、固定資産管理、金融機関対応にも影響します。
設備投資は、税金を減らすための支出ではありません。会社の将来収益を生むための投資です。節税効果は、その投資判断を補助する一要素にすぎません。
実行前に確認すべき判断順序
設備投資を検討するときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
まず、その設備が本当に事業に必要かを確認します。売上増加、業務効率化、品質改善、人件費削減、安全性向上など、投資の目的を明確にします。
次に、資金繰りを確認します。設備代金、借入返済、リース料、保守費、修理費、税金の軽減額を並べ、手元資金がどう動くのかを見ます。
そのうえで、税務処理を確認します。固定資産か、少額資産か、一括償却資産か、中小企業者等の少額特例か、通常償却か、特別償却か、税額控除か。ここを整理します。
最後に、証拠資料を確認します。取得日、供用日、取得価額、耐用年数、制度要件を説明できる資料がそろっているかを見ます。
この順番を逆にして、「税金が減るから買う」と考えてしまうと、不要な資産を抱え込みやすくなります。
減価償却・少額資産・中古資産・特別償却は、投資判断と一体で考える
減価償却や少額資産の制度は、正しく使えば有効です。中古資産の耐用年数も、事業実態に合っていれば資金繰りの改善に役立ちます。特別償却や税額控除も、設備投資を後押しする制度として重要です。
ただし、これらは単独で判断するものではありません。
その設備は、本当に必要か。
当期に使い始めているか。
取得価額と資金の流れを説明できるか。
耐用年数や制度要件を、根拠資料で説明できるか。
税金は減っても、手元資金や財務内容を悪化させないか。
翌期以降の償却費、利益、金融機関対応に影響しないか。
ここまで確認して初めて、設備投資型の節税は「守れる処理」になります。
節税の本質は、目先の税額を下げることではありません。会社の資金と信用を守りながら、将来の収益を生む投資を、税務上も正しく設計していくことです。
主な出典
出典:国税庁|No.5400-2 事業の用に供した日
出典:国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
出典:国税庁|No.5404 中古資産の耐用年数
出典:国税庁|No.5404 中古資産の耐用年数(取得した中古資産を業務に使用するために資本的支出を行った場合)
出典:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
出典:国税庁|No.5410 減価償却資産の償却限度額の計算方法(平成19年4月1日以後取得分)
出典:国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
出典:中小企業庁|少額減価償却資産の特例
出典:中小企業庁|中小企業投資促進税制
出典:中小企業庁|中小企業経営強化税制
設備投資・減価償却の判断に不安がある方へ
設備や備品の購入は、決算前に検討しやすい節税策です。しかし実際には、取得価額、事業供用日、少額資産の判定、中古資産の耐用年数、特別償却・税額控除の選択、申告書添付書類、税務調査での説明資料まで、確認すべき事項が数多くあります。
特に、決算直前の設備購入、中古車・中古機械の購入、40万円未満の少額資産の大量購入、中小企業経営強化税制の活用、補助金を受けた設備投資については、実行前の整理が重要になります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、設備投資の目的、資金繰り、税務効果、制度要件、証拠資料を一体で確認し、税務調査でも説明できる処理になるよう整理いたします。
「設備を買えば、本当に節税になるのか」
「少額資産として処理してよいか」
「中古資産の耐用年数や特別償却の要件に不安がある」
「決算前に購入予定の設備について、当期の損金にできるか確認したい」
こうしたお悩みがありましたら、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
振り返り
| 論点 | 誤りやすい判断 | 確認すべき判断軸 |
|---|---|---|
| 設備投資の基本 | 買えば節税になると考える | 事業上必要な投資か、資金流出に見合う効果があるか |
| 減価償却 | 支払った年に全額経費になると考える | 固定資産として計上し、耐用年数・償却方法に従って費用化する |
| 事業供用日 | 発注日や支払日で判断する | 納品、設置、試運転、使用開始など、本来の目的で使える状態になった日を見る |
| 決算直前購入 | 納品書の日付が期末前ならよいと考える | 実際の納品、設置、稼働記録、支払条件、業者資料との整合性を確認する |
| 10万円未満資産 | 請求書の行ごとに判定する | 消費税処理方式と機能単位で取得価額を判定する |
| 20万円未満資産 | すぐ全額経費になると考える | 一括償却資産は原則3年間で均等償却する制度として判断する |
| 中小企業者等の少額特例 | 40万円未満なら無条件に経費化できると考える | 青色申告、対象法人、年300万円上限、事業供用、損金経理、申告書添付を確認する |
| 中古資産 | 中古なら必ず短期償却できると考える | 簡便法の適用可否、経過年数、資本的支出、供用年度での耐用年数算定を確認する |
| 特別償却 | 永久に税金が減る制度と考える | 多くは課税繰延べであり、翌期以降の償却費減少も含めて判断する |
| 税額控除 | 設備を買えば必ず控除できると考える | 法人税額、控除上限、対象法人、対象設備、申告要件を確認する |
| 中小企業経営強化税制 | 購入後に申請すればよいと考える | 設備取得前の証明書・確認書・計画認定の要否を確認する |
| 税務調査対応 | 会計仕訳だけで説明できると考える | 契約書、納品書、検収書、稼働記録、固定資産台帳、制度要件資料を保存する |