海外子会社を設立するとき、最初に目が向きやすいのは、やはり現地の法人税率です。
「日本より税率が低い国に子会社を置けば、グループ全体の税負担を下げられるのではないか」
「現地に利益を残して、将来の投資資金に回せばよいのではないか」
「配当さえしなければ、日本では課税されないのではないか」
こうした発想そのものは、海外展開を考える経営者にとってごく自然なものだと思います。問題は、現地の税率だけを見て海外子会社を設計してしまうと、日本の外国子会社合算税制によって、現地に残したはずの利益が日本の親会社の所得へ合算されてしまう場合がある、という点です。
しかも、この制度は「利益を日本に配当したかどうか」だけで結論が決まるわけではありません。海外子会社に実体があるか、現地で管理支配されているか、どのような所得を得ているか、租税負担割合が一定の水準を下回っていないか。こうした要素を組み合わせて判定していく仕組みになっています。
この記事では、制度の細かな計算式を網羅することを目的とはしません。実務のなかでどこで判断を誤りやすいのか、何を確認し、何を資料として残しておくべきなのか。そこに絞って整理していきます。
外国子会社合算税制は「海外節税を否定する制度」ではない
外国子会社合算税制は、かつて「タックスヘイブン対策税制」と呼ばれてきた制度です。
ただ、この制度は海外子会社を使うこと自体を否定するものではありません。海外市場を開拓するために販売子会社を置く。現地で製造するために工場会社を置く。海外人材を活用するために開発拠点を置く。こうした事業上の理由があり、現地で実体を伴って運営されているのであれば、それはごく通常の海外事業です。
制度が問題にするのは、実質的な活動を伴わない外国子会社等を利用して、日本の税負担を軽減したり回避したりするような場合です。実質的活動のない外国子会社等がペーパーカンパニー等に該当する場合、あるいは経済活動基準のいずれかを満たさない場合には、その所得に相当する金額を内国法人等の所得とみなし、会社単位で合算課税する。制度の骨格はそのように整理されています。
出典:財務省|外国子会社合算税制の概要
ですから、外国子会社合算税制への対応で本当に大切なのは、「税率の低い国を避けること」ではありません。
むしろ、海外子会社を置く事業目的、現地で果たしている機能、負っているリスク、保有している資産、現地での意思決定、契約・人員・資金の流れ。これらをきちんと説明できる状態にしておくことのほうが重要になります。
合算課税が起きると、配当していなくても日本で課税される
この制度でまず注意していただきたいのは、海外子会社が日本の親会社へ配当していなくても、親会社の側で課税が生じ得るという点です。
通常であれば、海外子会社の利益はその子会社の所得として現地で課税されます。日本の親会社がその利益を配当として受け取るまでは、親会社に現金が入ってくるわけではありません。
ところが、外国子会社合算税制が適用されると、海外子会社に残っている所得のうち一定額が、日本の親会社の所得とみなされます。親会社から見れば、「現金はまだ海外子会社に残っているのに、日本で税金を払わなければならない」という、資金繰り上の負担が生じかねないわけです。
これは、単なる税額計算だけの問題ではありません。
海外子会社に利益を残して現地で再投資するつもりだったのに、日本側で想定外の法人税負担が発生する。配当規制や外貨規制のために、海外子会社から資金をすぐには戻せない。将来の配当時には、二重課税の調整を検討しなければならない。こうした資金繰り、投資計画、申告管理の問題に直結してきます。
海外子会社を使った節税を考えるときは、「現地で税率が低いか」だけでなく、「日本で合算されても資金繰りが耐えられるか」を、あわせて確認しておく必要があります。
まず「外国関係会社」に該当するかを確認する
外国子会社合算税制の検討は、対象となる外国法人が「外国関係会社」に当たるかどうかから始まります。
実務では、日本の親会社が直接50%超を保有している海外子会社だけを見ればよい、と誤解されがちです。しかし判定では、直接保有だけでなく、間接保有や実質的な支配も問題になります。合算の対象となる外国関係会社は、居住者・内国法人等が合計で50%超を直接・間接に保有している、あるいは実質的に支配している外国関係会社を前提に整理されています。
出典:国税庁|申告書確認表(内国法人用)令和7年4月1日以後開始事業年度等分
たとえば、次のような場合は慎重な確認が必要になります。
- 日本の親会社が直接100%保有する海外子会社
- 日本の親会社が海外持株会社を通じて間接保有している子会社
- 日本のオーナー一族、同族会社、関連法人が分散して保有している外国法人
- 議決権割合は低くても、役員派遣・資金提供・契約関係を通じて実質的に支配している法人
- 複数の日本法人・居住者が関係している合弁会社
持株比率だけを見て「対象外だろう」と判断してしまうのは危険です。海外子会社の設立時、増資時、株主変更時、ストックオプションや種類株式の発行時には、外国関係会社への該当性をあらためて確認しておくべきだと考えます。
3つの分類を押さえると、制度の全体像が見えてくる
外国子会社合算税制では、外国関係会社を大きく次のように整理して考えると、全体像がつかみやすくなります。
| 分類 | 典型的なイメージ | 主な課税リスク |
|---|---|---|
| 特定外国関係会社 | ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュ・ボックス、情報交換に非協力的な国・地域の会社など | 租税負担割合が一定未満の場合、会社単位で合算課税 |
| 対象外国関係会社 | 経済活動基準のいずれかを満たさない外国関係会社 | 租税負担割合が20%未満の場合、会社単位で合算課税 |
| 部分対象外国関係会社 | 経済活動基準をすべて満たすが、一定の受動的所得を有する外国関係会社 | 会社全体ではなく、受動的所得部分が合算課税 |
合算の対象となる外国関係会社は、特定外国関係会社・対象外国関係会社・部分対象外国関係会社に整理されています。このうち特定外国関係会社には、実体基準・管理支配基準のいずれにも該当しない会社、一定の受動的所得や資産割合を有する会社、情報交換に関する国際的な取組みへの協力が著しく不十分な国・地域に本店等を置く会社などが含まれます。
出典:国税庁|申告書確認表(内国法人用)令和7年4月1日以後開始事業年度等分
ここで大切なのは、海外子会社にオフィスや従業員があるというだけでは、それで安全とは言い切れない、という点です。
特定外国関係会社に該当しなかったとしても、経済活動基準を満たさなければ、対象外国関係会社として会社単位合算の対象になり得ます。さらに、経済活動基準を満たしていても、受動的所得があれば部分合算が問題になってきます。
租税負担割合は「現地の法定税率」と同じではない
外国子会社合算税制では、租税負担割合が重要な判定要素になります。
事務負担への配慮として、ペーパーカンパニー等については租税負担割合が27%以上、それ以外の外国子会社等については20%以上であれば、本税制の適用が免除されるとされています。
出典:財務省|外国子会社合算税制の概要
ただし、ここでいう租税負担割合は、単純に現地の法定税率を見て済むものではありません。
現地の法人税率が20%以上であっても、税制優遇、免税所得、特別控除、税額控除、タックスホリデー、欠損金控除、特定所得の非課税措置などがあれば、実際の租税負担割合はそこから下がってきます。
逆に、法定税率だけを見ると低税率に見えても、実際の課税関係や地方税、課税ベースの違いによって、想定とは異なる結果になることもあります。
そのため、海外子会社については、毎期、次のような資料をもとに租税負担割合を確認していく必要があります。
- 現地財務諸表
- 現地法人税申告書
- 現地税額計算書
- 納税証明書・税額通知書
- 税制優遇や免税措置の根拠資料
- 会計上の利益と税務上の所得の差異一覧
- 現地税務上の欠損金の利用状況
- 日本側の申告書別表との整合表
「現地税率が○%だから大丈夫」という説明は、税務調査の場では通用しません。
27%・20%のラインは、改正を踏まえて確認する
外国子会社合算税制は、近年も改正が続いています。
令和5年度改正では、特定外国関係会社について、適用免除の基準となる租税負担割合の閾値が30%から27%へ引き下げられました。この改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額・部分課税対象金額等を計算する場合に適用されます。
出典:国税庁|令和5年度 法人税関係法令の改正の概要
また、令和7年度改正では、外国関係会社に係る課税対象金額等の合算時期について見直しが行われました。その外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から4月を経過する日を含む、内国法人の事業年度とする取扱いへと整理されています。
出典:国税庁|令和7年度 法人税関係法令の改正の概要
さらに令和8年度改正では、解散した部分対象外国関係会社等に係る特例、ペーパーカンパニー特例における資産割合要件の判定、累進税率制度のもとでの租税負担割合計算の特例など、複数の見直しが示されています。
出典:国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
このように、外国子会社合算税制は「一度整理したら終わり」という制度ではありません。
海外子会社を設立した年だけでなく、毎期の決算、現地税制の改正、事業内容の変更、再編、清算、資金移動。そのつど判定を更新していく必要があります。
経済活動基準は、4つすべてを確認する
外国子会社合算税制のなかで、最も実務判断が分かれやすいのが経済活動基準です。
経済活動基準としては、事業基準、実体基準、管理支配基準、そして所在地国基準または非関連者基準が挙げられています。
出典:財務省|外国子会社合算税制の概要
事業基準
事業基準では、海外子会社の主たる事業が、株式保有、無形資産の提供、一定の貸付・リースなど、制度上問題になりやすい事業に該当しないかを確認します。
ここで見るのは、登記上の事業目的ではなく、実際の収益源です。
たとえば、登記上は「販売業」となっていても、実際の収益の大半がグループ会社からの配当、利息、ロイヤルティ、為替差益で占められているのであれば、事業基準の観点からの説明は難しくなります。
実体基準
実体基準では、本店所在地国に、主たる事業を行うために必要な事務所、店舗、工場その他の固定施設を有しているかを確認します。
現地に登記住所があるというだけでは足りません。レンタルオフィス、会計事務所への住所貸し、名目上の所在地だけでは、実体を説明しづらくなります。
確認しておきたい資料は、賃貸借契約書、現地オフィスの写真、固定資産台帳、現地従業員の雇用契約、組織図、業務フロー、現地での請求書・発注書などです。
管理支配基準
管理支配基準では、本店所在地国において、事業の管理・支配・運営を自ら行っているかを確認します。
実務では、ここが最もつまずきやすい部分です。
現地にオフィスはあるものの、実際の意思決定は日本の親会社がすべて行っている。現地役員は名義だけで、契約締結、価格決定、資金移動、採用、仕入先の選定は日本側が承認している。取締役会議事録は整っているが、実際には日本本社からのメール指示に従っている。
こうした状況では、管理支配基準を満たしていると言えるかどうか、慎重な検討が必要になります。実際に、親会社や別のグループ法人が海外子会社の事務管理をすべて担っており、管理支配基準を満たしていないと指摘されるケースもあります。
所在地国基準・非関連者基準
所在地国基準は、主として本店所在地国で主たる事業を行っているかを見る基準です。
一方、卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業、航空機貸付業などでは、非関連者基準が問題になります。こちらは、主として関連者以外の者と取引を行っているかを見る基準です。
非関連者基準は、単に売上先の名称を眺めれば済むものではありません。卸売業であれば、棚卸資産の販売や仕入について、非関連者との取引割合が問われます。さらに、代理・媒介取引に係る手数料がある場合には、その手数料だけでなく、手数料の基因となった売買取引の金額まで含めて判定する必要があります。
「現地に販売子会社があり、外部の顧客にも売っている」というだけでは足りません。売上・仕入・手数料・関連者取引を分解したうえで、基準を満たすかどうかを確認する必要があります。
1つでも基準を落とすと、実体があっても合算対象になり得る
経済活動基準は、実務上、かなり形式的に判定される面があります。
海外子会社に事務所があり、従業員がいて、現地で事業を行っていても、4つの基準のうち1つを満たさなければ、外国子会社合算税制の対象になり得ます。
たとえば、軽課税国の販売子会社について、事務所や倉庫があり、現地で管理運営していたにもかかわらず、非関連者基準の計算を誤っていたために、適用除外とならず所得の合算が必要になった、という事例もあります。適用除外の要件は4つすべてをクリアする必要があり、どれか1つでも満たしていなければ、海外子会社としての実態と機能が備わっていたとしても、合算対象として扱われ得る。この点は特に注意が必要です。
この感覚は、国内の節税判断とは少し違います。
国内税務では、実態さえあれば一定の説明が可能な場面もあります。しかし外国子会社合算税制では、制度上定められた基準に当てはまるかどうかが決定的です。「現地で本当に事業をしている」という説明だけでは足りず、「各基準を満たすことを裏づける資料」が必要になります。
ペーパーカンパニーは「登記だけの会社」だけではない
ペーパーカンパニーというと、現地に登記だけがあり、実際には何もしていない会社を思い浮かべがちです。
ただ、実務ではもう少し広くとらえておく必要があります。
- 現地に住所はあるが、専用の事務所がない
- 現地役員はいるが、意思決定は日本で行われている
- 現地従業員はいるが、実質的な業務は外部委託か日本本社が担っている
- 銀行口座と投資資産だけを持っている
- 配当、利息、ロイヤルティ、為替差益などが主な収益源になっている
- 取締役会議事録はあるが、実際の意思決定の過程と一致していない
こうした会社は、名目上は海外子会社として存在していても、税務上は「実質的な活動を伴っている」とは説明しにくくなります。
とりわけ注意したいのが、海外持株会社、知的財産保有会社、グループ金融会社、地域統括会社です。
これらは事業上の必要性がある場合も多い一方で、現地でどの機能を果たしているのかが曖昧になりやすい会社でもあります。「海外グループ管理のため」「税率が低いから」「配当を集約するため」といった理由だけでは、税務調査の場で十分な説明にはなりません。
経済活動基準を満たしても、部分合算は残る
外国子会社合算税制では、経済活動基準をすべて満たせば完全に安心、というわけではありません。
外国子会社等が経済活動基準をすべて満たしている場合であっても、実質的な活動のない事業から得られる所得、いわゆる受動的所得については、内国法人等の所得とみなして合算課税を行う仕組みになっています。受動的所得の例としては、配当等、利子等、有価証券の貸付対価、有価証券の譲渡損益、デリバティブ取引損益、外国為替差損益、その他の金融所得、保険所得、固定資産の貸付対価、無形資産等の使用料、無形資産等の譲渡損益などが挙げられています。
出典:財務省|外国子会社合算税制の概要
たとえば、現地の販売会社が通常の販売活動を行う一方で、余剰資金を有価証券で運用し、多額の利息や配当を得ているケースがあります。
あるいは、現地の製造会社が十分な実体を持っていても、日本の親会社から移転された商標や技術を保有し、グループ会社からロイヤルティを受け取っているケースもあります。
こうした場合、会社全体としては経済活動基準を満たしていても、一定の受動的所得について部分合算が問題になります。
「現地に工場があるから大丈夫」「従業員がいるから大丈夫」という判断では足りません。所得の中身を、事業所得と受動的所得に分けて確認していく必要があります。
よくある「思わぬ課税」のパターン
1. 現地販売会社の非関連者基準を誤る
海外子会社が販売会社として実体を持っていても、取引先の多くがグループ会社であれば、非関連者基準を満たさないことがあります。
とくに、販売代理、コミッション、仲介手数料が絡む場合には、単純な手数料収入だけで判定してしまうと、判断を誤る可能性があります。
「外部の顧客向けに販売している」という感覚と、税務上の非関連者基準の計算は、必ずしも一致しません。
2. 海外持株会社が配当を集約している
海外持株会社に地域子会社からの配当を集約することは、資本政策や資金管理の観点では合理的な場合があります。
しかし、持株会社そのものに実体がなく、現地で投資管理や資金管理を行っていると説明できなければ、ペーパーカンパニーや受動的所得の問題が生じてきます。
地域統括会社として説明するのであれば、統括機能、人員、決裁権限、予算管理、投資判断、資金配分の実態を、資料で示せるようにしておく必要があります。
3. 現地の税制優遇で租税負担割合が下がる
現地の法定税率が20%以上であっても、税制優遇やタックスホリデーによって、実際の租税負担割合が20%未満になることがあります。
とくに、新規投資、製造業の誘致、研究開発、地域優遇、輸出優遇といった制度を利用している場合は注意が必要です。
現地では合法的な優遇措置であっても、日本側では外国子会社合算税制の判定に影響してきます。
4. 知的財産を海外子会社に持たせている
商標、特許、ソフトウェア、ノウハウ、顧客データ、プラットフォームなどを海外子会社に持たせ、グループ会社からロイヤルティを受け取る場合には、移転価格税制と外国子会社合算税制の両方を検討する必要があります。
現地で本当に研究開発、維持管理、リスク負担を行っているのか。日本の親会社が実質的に開発・管理してしまっていないか。ロイヤルティ収入が受動的所得として部分合算されないか。
知的財産は、節税効果だけを見て動かしてしまうと、後から説明するのが非常に難しくなります。
5. 清算・休眠会社を放置している
事業が終わった海外子会社を、清算せずに休眠状態のまま残しているケースがあります。
この場合、実体基準や管理支配基準、受動的所得、残余資産、清算時の取扱いが問題になります。令和8年度改正でも、解散した部分対象外国関係会社等に係る特例の見直しが示されており、海外子会社の出口管理も決して軽視できません。
出典:国税庁|令和8年度 法人税関係法令の改正の概要
海外子会社は、設立よりも撤退・清算のほうが、税務上は難しい場合があります。
申告書と添付・保存資料を、軽く見てはいけない
外国子会社合算税制では、判定だけでなく、申告書類の整備も重要になります。
租税負担割合が20%未満である外国関係会社、あるいは租税負担割合が27%未満である特定外国関係会社を有する場合には、別表十七(三)等を作成・添付しているか、合算課税制度の適用を受けない場合であっても財務諸表・申告書等を添付する必要があるか、といった点が確認事項として挙げられています。あわせて、別表十七(三)等の記載内容が、添付した外国関係会社の財務諸表・申告書等と一致しているかどうかも確認が求められます。
出典:国税庁|申告書確認表(内国法人用)令和7年4月1日以後開始事業年度等分
ここで気をつけたいのは、「合算課税にならないのだから資料は不要だ」と考えてはいけない、という点です。
合算課税になるかどうかを判断するには、外国関係会社への該当性、租税負担割合、経済活動基準、受動的所得、適用免除の有無を確認しなければなりません。そして、その判断の過程を、申告書・別表・添付資料・保存資料で裏づけておく必要があります。
税務調査では、次のような資料が確認されます。
- 海外子会社の財務諸表
- 現地法人税申告書
- 現地納税証明書
- 株主名簿、出資関係図
- 議決権・残余財産分配請求権の内容
- 役員一覧、従業員一覧、雇用契約書
- 現地オフィス・工場・倉庫の賃貸借契約書
- 主要契約書
- 取締役会議事録
- 稟議書
- 銀行口座の権限者
- 資金移動記録
- 売上先・仕入先の内訳
- 関連者取引一覧
- 非関連者基準の計算資料
- 受動的所得の明細
- 為替換算資料
- 別表十七関係の作成資料
これらを、税務調査が始まってから整えるのは容易ではありません。とくに、現地の会計事務所、法律事務所、銀行、子会社管理部門から資料を取り寄せるには、相応の時間がかかります。
判断は「税率」ではなく、「実体・所得・資料」の順で行う
外国子会社合算税制を検討するときは、次の順番で整理していくと、判断がぶれにくくなります。
1. 所有・支配関係を確認する
まず、その外国法人が外国関係会社に該当するかを確認します。
直接保有割合だけでなく、間接保有、同族関係者、特殊関係者、実質的支配まで含めて整理していきます。
2. 租税負担割合を計算する
現地の法定税率ではなく、実際の租税負担割合を計算します。
現地申告書、税額計算書、税制優遇、欠損金、免税所得を確認し、日本側の判定に必要な数字へ変換していきます。
3. 特定外国関係会社に該当しないか確認する
ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュ・ボックス、情報交換に非協力的な国・地域の会社などに該当しないかを確認します。
ここで該当すると、租税負担割合が27%未満の場合に、会社単位合算が問題になります。
4. 経済活動基準を確認する
事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準または非関連者基準を確認します。
4つの基準は、どれか1つを満たせばよいというものではありません。該当する基準を、すべて満たす必要があります。
5. 部分合算を確認する
経済活動基準を満たしていても、受動的所得があれば部分合算を検討します。
利子、配当、有価証券取引、為替差損益、ロイヤルティ、固定資産貸付、無形資産譲渡などを分解していきます。
6. 申告・資料保存を確認する
別表十七関係の作成、財務諸表・申告書等の添付と保存、計算根拠の整合性を確認します。
税務調査では、「結論」だけでなく、「その結論に至った資料」が問われます。
外国子会社合算税制は、海外子会社管理の問題である
外国子会社合算税制は国際税務の制度ですが、実務的には、海外子会社管理そのものだと言えます。
- 現地で誰が意思決定しているか
- どこで契約を締結しているか
- 誰が価格を決めているか
- どこに人員がいるか
- 資金はどこに残っているか
- どの所得が能動的な事業所得で、どの所得が受動的所得か
- 日本の親会社の申告書と現地申告書が整合しているか
これらを把握できていない会社は、外国子会社合算税制だけでなく、移転価格税制、国外関連者寄附金、源泉税、外国税額控除、現地での税務調査においても、問題を抱えやすくなります。
海外子会社を使った節税を考えるのであれば、「税率差をどう使うか」ではなく、「海外子会社にどの機能を持たせ、その機能に見合った利益をどこに残すか」を先に設計すべきです。
節税のために海外子会社を置くのではなく、海外事業の実態に合った税務設計を行う。これが、外国子会社合算税制で思わぬ課税を受けないための基本になります。
相談前に整理しておきたい資料
外国子会社合算税制について専門家に相談される場合は、次の資料を準備しておくと、論点の整理がスムーズに進みます。
| 分野 | 整理すべき資料 |
|---|---|
| 出資・支配関係 | グループ組織図、株主名簿、出資契約、種類株式の内容、議決権割合、間接保有割合 |
| 現地税務 | 現地財務諸表、現地法人税申告書、納税証明書、税額計算書、税制優遇の根拠資料 |
| 事業実体 | 事業内容説明資料、顧客・仕入先一覧、業務フロー、現地契約書、現地売上・仕入明細 |
| 人員・拠点 | 役員一覧、従業員一覧、雇用契約、給与台帳、事務所・工場・倉庫の契約書、固定資産台帳 |
| 管理支配 | 取締役会議事録、稟議書、決裁権限規程、銀行権限者、メール、会議資料、予算管理資料 |
| 関連者取引 | 日本の親会社・グループ会社との売買、役務提供、貸付、保証、ロイヤルティ、配当の資料 |
| 受動的所得 | 利子、配当、有価証券取引、為替差損益、ロイヤルティ、固定資産貸付、無形資産譲渡の明細 |
| 申告資料 | 別表十七関係、外国税額控除資料、外国子会社配当益金不算入資料、過去の税務調査資料 |
外国子会社合算税制は、決算直前に慌てて判定するような制度ではありません。海外子会社の設立時、現地事業の変更時、利益が出始めた時、現地の税制優遇を受けた時、資金を移動した時。こうしたタイミングで、早めに検討しておくことをおすすめします。
犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について
海外子会社を使った税負担の最適化は、税率差だけでは判断できません。
外国関係会社への該当性、租税負担割合、経済活動基準、受動的所得、移転価格、国外関連者寄附金、外国税額控除、現地税務、資金繰り。これらを同時に整理していく必要があります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、海外子会社を有する会社について、外国子会社合算税制の判定、海外子会社の実態整理、資料整備、申告書別表の確認、そして税務調査を見据えた説明資料の作成を支援しています。
海外子会社に利益を残している、現地税率が低い、海外持株会社や地域統括会社を設けている、ロイヤルティや利息・配当が発生している。こうした場合には、早い段階で論点を整理しておくことが大切です。判断に迷われる場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
重要ポイントの振り返り
| 論点 | 判断のポイント | 実務上残すべき資料 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 海外子会社を使うこと自体ではなく、実質的活動を伴わない所得移転が問題になる | 海外子会社の設立目的、事業計画、取締役会資料 |
| 合算課税の影響 | 配当していなくても、日本の親会社で課税されることがある | 海外子会社の利益、配当方針、資金繰り表 |
| 外国関係会社 | 直接保有だけでなく、間接保有・実質支配も確認する | 組織図、株主名簿、議決権・残余財産権の資料 |
| 租税負担割合 | 現地の法定税率ではなく、実際の税負担で判断する | 現地申告書、納税証明書、税額計算書 |
| 特定外国関係会社 | ペーパーカンパニー、キャッシュ・ボックス等に該当しないか確認する | 事業実体資料、資産・所得の内訳 |
| 事業基準 | 主たる事業が株式保有等の一定事業に該当しないか確認する | 売上構成、収益源、事業内容説明資料 |
| 実体基準 | 現地に主たる事業に必要な事務所等があるか確認する | 賃貸借契約、現地写真、固定資産台帳 |
| 管理支配基準 | 現地で管理・支配・運営を自ら行っているか確認する | 議事録、稟議書、決裁権限、銀行権限者 |
| 所在地国基準 | 主として本店所在地国で事業を行っているか確認する | 売上先、仕入先、事業地域の資料 |
| 非関連者基準 | 関連者以外との取引割合を正しく計算する | 関連者取引一覧、売上・仕入明細 |
| 部分合算 | 経済活動基準を満たしても、受動的所得は合算対象になり得る | 利子、配当、ロイヤルティ、為替差損益の明細 |
| 申告書別表 | 合算しない場合でも、別表・添付・保存資料が必要になることがある | 別表十七関係、財務諸表、現地申告書 |
| 税制改正 | 27%・20%ライン、合算時期、書類保存などの改正を毎期確認する | 改正情報、適用開始事業年度の整理表 |
| 税務調査対応 | 結論だけでなく、当時の判断過程と原始資料が問われる | メール、議事録、契約書、送金記録 |
| 経営判断 | 海外節税ではなく、海外事業の機能・リスク・資金に合った利益配分を設計する | 機能リスク分析、移転価格資料、資金計画 |