KAMは、監査報告書に追加された単なる記載欄ではありません。
KAM、すなわち監査上の主要な検討事項とは、監査人が当年度の財務諸表監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項をいいます。そして、その事項は、監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から選択されます。監査基準報告書701も、KAMをこのように定義したうえで、監査役等とコミュニケーションした事項から選択するものとしています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
KAMを実務で扱うときに重要なのは、「何を書くか」よりも先に、「なぜその事項をKAMと判断したのか」を説明できることです。
監査計画で識別したリスク、監査役等とのコミュニケーション、会計上の見積り、重要な虚偽表示リスク、会社の開示、監査調書、審査担当者への説明。これらがつながっていなければ、KAMは監査報告書上の文章としては整っていても、監査判断としては弱いものになってしまいます。
KAMは、監査の透明性を高めるための制度です。監査人がどの領域に特に注意を払ったのか、なぜその事項が当年度の監査で重要だったのか、監査上どのように対応したのか。それらを財務諸表利用者に伝える役割を担っています。
その意味で、KAMの決定と記載は、監査報告書の末尾で行う作文作業ではありません。監査計画、期中監査、期末監査、監査役等との対話、会社の開示、そして審査を通じて積み上げられていく、監査判断の集約なのです。
KAM制度の目的は、監査意見を変えることではなく、監査の透明性を高めることにある
KAMの導入趣旨を理解するうえで、まず確認しておきたいことがあります。
KAMは、監査意見の性質を変えるものではありません。監査報告書にKAMが記載されたとしても、監査人が財務諸表全体に対する監査意見とは別に、個別のKAM事項について個別意見を表明するわけではないのです。
金融庁・企業会計審議会による2018年の監査基準改訂に関する意見書は、従来の短文式監査報告書について、監査意見に至る監査プロセスに関する情報が十分に提供されず、監査の内容が見えにくいという指摘があったことを踏まえ、監査プロセスの透明性を向上させる目的でKAMの記載を導入したと説明しています。あわせて、KAMの記載は監査報告書における監査意見の位置付けを変更するものではなく、監査意見とは明確に区別すべきものとされています。
出典:金融庁・企業会計審議会|監査基準の改訂に関する意見書
この点は、実務上きわめて重要です。
KAMは「問題がある事項」ではありません。
KAMは「限定意見に近い事項」でもありません。
KAMは「会社の開示不足を補うための説明」でもありません。
KAMとは、財務諸表全体に対する監査の実施過程と監査意見の形成において、監査人が特に重要であると判断した事項を、利用者に説明するものです。
したがって、KAMを検討するときは、次のように考える必要があります。
・この事項は、当年度の監査において、なぜ監査人が特に注意を払った事項だったのか
・この事項は、監査役等とどのようにコミュニケーションされ、監査計画や監査手続にどう反映されたのか
・この事項について、監査人はどのような証拠を入手し、どのような判断を行ったのか
・財務諸表利用者がこのKAMを読むことで、会社の財務諸表と監査のどこに重要な判断があったのかを理解できるか
このように捉えると、KAMは監査報告書の記載技術ではなく、監査判断の説明可能性そのものに関わる論点であることが見えてきます。
KAMの決定プロセスは「広く拾い、段階的に絞る」構造である
KAMの決定は、いきなり「今年のKAMは何にするか」と考えるものではありません。
実務上は、次のような段階で整理すると理解しやすくなります。
1つ目は、監査上の論点全体です。
監査計画、リスク評価、内部統制理解、会計上の見積り、不正リスク、重要な取引、開示上の論点など、監査上検討すべき事項は数多く存在します。
2つ目は、監査役等とコミュニケーションした事項です。
監査人は、監査計画、重要なリスク、重要な監査上の発見事項、会計上の見積り、内部統制不備、KAM候補などについて、監査役等と適切にコミュニケーションを行います。
3つ目は、その中でも監査人が特に注意を払った事項です。
ここでは、特別な検討を必要とするリスク、重要な虚偽表示リスクが高い領域、見積りの不確実性が高い領域、経営者の重要な判断を伴う領域、当年度の重要な事象・取引などを考慮します。
4つ目が、KAMです。
特に注意を払った事項の中から、当年度の財務諸表監査において監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項を、KAMとして決定します。
監査基準報告書701は、監査人が監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から、監査を実施するうえで特に注意を払った事項を決定することを求めています。その際には、特別な検討を必要とするリスクまたは重要な虚偽表示リスクが高い領域、見積りの不確実性が高い会計上の見積りを含む経営者の重要な判断を伴う領域、当年度に発生した重要な事象または取引が監査に与える影響等を考慮することとされています。そのうえで、さらに当年度の監査において特に重要であると判断した事項をKAMとして決定する、という構造です。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
実務においても、KAMは「監査上の論点」から一段階で選ばれるものではありません。監査役等とのコミュニケーション事項、特に注意を払った事項、そして監査上特に重要な事項という段階を経て絞り込まれるものとして整理すると、判断過程が明確になります。
KAMは「重要なリスク」そのものではなく、監査人が特に重要と判断した事項である
KAMの検討で陥りやすいのが、重要な虚偽表示リスクをそのままKAMに置き換えてしまうことです。
もちろん、重要な虚偽表示リスクが高い領域や、特別な検討を必要とするリスクは、KAM候補になりやすい領域ではあります。しかし、リスクとして識別された事項がすべてKAMになるわけではありません。
KAMに該当するかどうかは、「リスクがあるか」だけでは決まりません。「当年度の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断したか」によって決まります。
この判断には、少なくとも次の観点が含まれます。
・当該事項が財務諸表全体に与える影響の大きさ
・重要な虚偽表示リスクの程度
・経営者の判断や見積りの主観性
・監査証拠の入手・評価の難しさ
・監査手続の複雑性
・専門家の利用や審査上の重要性
・会社の開示との関係
・監査役等とのコミュニケーションの重要性
・財務諸表利用者の理解に資するかどうか
たとえば、ある会計上の見積りについて、金額的重要性が高く、将来キャッシュ・フローや割引率などの主要な仮定に不確実性があり、経営者の判断が財務諸表に重要な影響を与える。そうした場合、その事項はKAM候補として検討されやすくなります。
ただし、最終的にKAMとするかどうかは、同じ年度の他の重要論点との相対的な重要性、監査上の対応の深度、利用者に提供する情報価値などを踏まえて判断する必要があります。
KAMは、「リスク一覧」ではありません。
KAMは、「監査人が当年度の監査において最も重要な注意を払った事項の説明」です。
KAM候補になりやすい領域
KAM候補になりやすい領域は、会社の業種、事業環境、会計基準、内部統制、当年度の取引や事象によって異なります。
もっとも、監査判断の構造としてみれば、次の領域はKAM候補になりやすいといえるでしょう。
会計上の見積り
会計上の見積りは、KAM候補の中心的な領域です。
減損、繰延税金資産の回収可能性、貸倒引当金、棚卸資産評価、金融商品の時価、退職給付債務、引当金、のれん評価。これらはいずれも、経営者の仮定、将来事象、利用可能な情報、専門家の関与、経営者バイアスの影響を受けやすい領域です。
会計上の見積りは、将来事象の結果に依存するため、正確な金額を期末時点で確定できません。経営者の仮定によって、財務諸表に大きな影響が及ぶ可能性もあります。そのため監査上も重要な論点として扱われることが多く、見積り後の実績との差異についても、単なる乖離として片付けるのではなく、その原因を検討することが重要になります。
このような見積り領域では、KAMとして記載するかどうかだけが問題になるのではありません。会社の注記が十分か、監査人の対応が見積りの不確実性に見合っているか、監査役等とのコミュニケーションが適切に行われているか。これらもあわせて重要になります。
収益認識
収益認識は、不正リスク、期間帰属、契約条件、履行義務、取引価格、変動対価、本人・代理人、返品・リベート、重要な顧客契約などと関係します。
とりわけ、収益認識に経営者判断が大きく関与する場合や、複数要素契約、長期契約、システム開発、ライセンス、ポイント制度、変動対価、総額・純額表示などが関係する場合には、KAM候補として検討されやすくなります。
ただし、収益認識がすべての会社でKAMになるわけではありません。重要なのは、収益認識基準が複雑だからKAMにするという発想ではなく、当該会社の当年度監査において、収益認識のどこに特に重要な監査判断があったのかを明確にすることです。
固定資産・のれん・投資の評価
固定資産、のれん、関係会社株式、投資有価証券などの評価は、将来キャッシュ・フロー、事業計画、割引率、市場環境、事業撤退、減損兆候などと関係します。
これらの領域では、会社の事業計画の合理性、過年度計画との差異、外部環境の変化、経営者の楽観性、感応度分析、監査人の専門家利用などが、KAM判断の重要な材料になります。
金融商品・時価・デリバティブ
金融商品、時価評価、デリバティブ、ヘッジ会計には、評価技法、インプット、取引先信用リスク、市場流動性、契約条件、リスク管理方針などが関係します。
特に、観察不能なインプットを用いる評価、複雑なデリバティブ、ヘッジ会計の適用要件、金融商品の分類・測定が財務諸表に重要な影響を与える場合には、KAM候補として検討されることになります。
税効果・退職給付・引当金
繰延税金資産の回収可能性、退職給付債務、年金資産、訴訟損失引当金、製品保証引当金、資産除去債務。これらは、見積り、将来事象、確率、外部専門家、経営者判断と結びつく領域です。
金額的重要性だけでなく、見積りの不確実性や開示の十分性も、KAM判断に影響します。
当年度の重要な事象または取引
企業結合、事業売却、組織再編、重要な資金調達、債務リストラクチャリング、上場準備、重要なITシステム変更、事業構造改革、訴訟、災害、サイバーインシデント、不正発覚、過年度訂正。これらは、当年度固有の重要論点としてKAM候補になり得ます。
この場合、KAMの記載では、単に「重要な取引があった」と書くのではなく、その取引または事象が監査にどのような影響を与えたのかを説明する必要があります。
KAMに決定しない判断も、説明可能でなければならない
KAM実務で見落とされやすいのが、「KAMにする判断」だけでなく、「KAMにしない判断」も説明可能でなければならない、という点です。
監査役等とコミュニケーションした事項の中に、重要なリスクや重要な判断を伴う事項が複数存在する場合、監査人はそれらの中からKAMを絞り込みます。
このとき、ある事項をKAMにしないのであれば、少なくとも次のような理由が監査チーム内で説明できる必要があります。
・当年度の監査における相対的重要性が他の事項より低い
・監査上の対応が標準的で、特に困難・複雑・主観的な判断を伴わなかった
・財務諸表利用者に対する追加的情報価値が限定的である
・会社の開示と監査上の論点の関係から、KAMとして記載する必要性が高くない
・監査役等とのコミュニケーションでは重要だったが、監査意見形成上、特に重要な事項とまではいえない
ただし、この判断を安易に行うべきではありません。
重要な見積り、不正リスク、内部統制不備、開示上の重要論点。これらについて、「例年どおり」「他社でも一般的」「記載が増えると目立つ」といった理由だけでKAMから外してしまえば、KAMの趣旨から外れるおそれがあります。
KAMは、会社にとって都合のよい事項を選ぶ制度ではありません。監査人が当年度の監査において特に重要と判断した事項を、監査人の立場で説明する制度です。
KAMの記載内容は4つの要素で考える
監査基準報告書701は、KAM区分において、関連する注記事項がある場合の参照、個々のKAMの内容、KAMに決定した理由、当該事項に対する監査上の対応を記載することを求めています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
実務上は、この4つを別々に作文するのではなく、相互に整合させる必要があります。
1. 関連する財務諸表注記への参照
KAMは、会社の開示を代替するものではありません。
監査基準報告書701も、KAMの報告は、財務報告の枠組みにより経営者に求められている財務諸表の表示・注記事項や、適正表示を達成するために必要な追加的注記を代替するものではない、としています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
これは、KAM実務においてきわめて重要な原則です。
会社の注記が不十分であるにもかかわらず、KAMで詳しく説明すればよい。そうした考え方は適切ではありません。KAMが会社の開示を補完的に説明することはあっても、会社が本来開示すべき内容を監査人が肩代わりするものではないのです。
したがって、KAMを記載する前に、まず確認すべきことは次の点になります。
・財務諸表注記に、当該事項を理解するための十分な開示があるか
・会計上の見積りに関する注記は、主要な仮定や不確実性を説明しているか
・有価証券報告書の記述情報と財務諸表注記が整合しているか
・KAMの内容と注記参照が対応しているか
・KAMで会社未公表情報を不適切に提供することにならないか
KAMの記載が充実していても、会社の注記が不十分であれば、監査人は開示の妥当性そのものを検討する必要があります。
2. KAMの内容
KAMの内容では、「何がKAMなのか」を明確にします。
ここで避けたいのは、対象を広げすぎることです。
たとえば、「会計上の見積り」「収益認識」「固定資産評価」といった大きな見出しだけでは、利用者は監査人がどの具体的な論点に特に注意を払ったのかを理解しにくくなります。
一方で、細かすぎる手続名や勘定科目の枝葉に寄りすぎれば、KAMは監査上の主要な検討事項ではなく、監査手続の説明になってしまいます。
KAMの内容は、次の程度の粒度で整理すると、実務上使いやすくなります。
・対象となる財務諸表項目
・関連する会計上の判断または見積り
・当年度の事象または取引との関係
・監査人が特に注意を払ったリスクまたは判断領域
・会社の注記や開示との接続
KAMの内容は、監査人の内部的なリスク評価をそのまま羅列するものではありません。財務諸表利用者が読んだときに、会社の財務諸表のどこに重要な判断があったのかを理解できるよう、整理する必要があります。
3. KAMに決定した理由
KAMの記載で最も重要なのは、「なぜKAMなのか」です。
記載理由が弱いKAMからは、監査上の重要性が伝わってきません。
記載理由では、次のような観点を組み合わせて説明します。
・金額的重要性
・見積りの不確実性
・経営者の重要な判断
・重要な虚偽表示リスクの程度
・監査証拠の入手・評価の難しさ
・複雑な会計処理または契約条件
・当年度の重要な事象または取引
・内部統制やITシステムへの依存
・財務諸表利用者の理解に与える影響
ここで大切なのは、「金額が大きいからKAM」という説明だけで終わらせないことです。
金額的重要性はもちろん重要です。しかし、KAMの本質は、監査人が当年度の監査で特に重要と判断した理由にあります。金額が大きくても、会計処理が単純で、監査証拠の入手も容易で、経営者判断も限定的であれば、KAMとしての説明力は弱い場合があります。
反対に、金額的重要性だけでは突出していなくても、見積りの不確実性、経営者判断、不正リスク、開示上の重要性が高い場合には、KAM候補として慎重に検討すべきことがあります。
4. 監査上の対応
監査上の対応では、監査人が当該KAMに対してどのように監査上対応したのかを説明します。
ここで避けたいのは、監査手続を機械的に列挙することです。
KAMの監査上の対応は、単なる手続メニューではありません。KAMに決定した理由に対して、どのような監査上の対応を行ったのかが、きちんと対応している必要があります。
たとえば、KAMに決定した理由が「見積りの不確実性が高いこと」であれば、監査上の対応では、見積方法、主要な仮定、基礎データ、過年度見積りの事後的検討、感応度、専門家利用などがどのように検討されたのかが重要になります。
KAMに決定した理由が「重要な契約条件に基づく収益認識判断」であれば、監査上の対応では、契約書の閲覧、履行義務の識別、取引価格の算定、履行義務充足時点、内部統制の評価、関連する証憑との照合などが、リスクと整合する形で説明される必要があります。
監査上の対応は、監査人が行ったことを多く書けばよいというものではありません。
重要なのは、KAMに決定した理由に対して、監査手続が論理的に対応していることです。
KAMは会社の開示と監査人の説明の境界を意識して記載する
KAMの実務で最も難しい論点の一つが、会社の開示と監査人の説明の境界です。
KAMは会社の開示に関連して記載されることが多い一方で、監査人が会社の未公表情報を不適切に提供することは避けなければなりません。
金融庁・企業会計審議会の2018年意見書も、KAMの記載は監査の内容に関する情報を提供するものであるため、監査人は企業に関する未公表情報を不適切に提供することとならないよう留意する必要がある、としています。あわせて、KAMの記載を有意義なものとするためには、監査役等と適切な連携を図ったうえで、監査人が監査役等に対して行う報告内容を基礎として、当該財務諸表の監査に固有の情報を記載することが重要とされています。
出典:金融庁・企業会計審議会|監査基準の改訂に関する意見書
このため、KAMの記載判断では、次の線引きが重要になります。
・会社が開示すべき情報は、会社の注記や有価証券報告書で開示する
・監査人が説明すべき情報は、監査上なぜ重要だったか、どう対応したかを説明する
・会社の未公表情報を、監査人がKAMで先に出すことは避ける
・会社の開示が不足している場合は、KAMで補うのではなく、開示の適切性を検討する
この境界が曖昧になると、KAMは会社の開示文書の延長になってしまいます。
KAMは、会社の説明ではなく、監査人の説明です。
しかし、会社の開示と切り離された監査人の説明でもありません。
KAMの質は、このバランスによって大きく変わります。
KAMと監査役等コミュニケーション
KAMは、監査役等とのコミュニケーション事項の中から選択されます。
このことは、KAMの実務において決定的に重要です。
監査役等とのコミュニケーションが形式的であれば、KAMの決定プロセスもまた形式的になりやすくなります。反対に、監査計画段階から監査上の重要論点について監査役等と継続的に対話していれば、KAMの候補、会社の開示、監査上の対応、最終的な記載判断を、自然に接続することができます。
監査役等とのコミュニケーションでは、少なくとも次の論点を整理しておく必要があります。
・監査計画段階で識別した重要な虚偽表示リスク
・特別な検討を必要とするリスク
・会計上の見積りに関する重要な判断
・当年度の重要な事象または取引
・内部統制の重要な不備または改善課題
・不正リスクに関する監査人の対応
・KAM候補とその理由
・会社の注記・開示の準備状況
・KAM記載案の方向性
・審査で想定される論点
KAMは、監査報告書日の直前に監査役等へ突然提示するものではありません。監査の過程を通じて重要な監査上の論点を共有し、監査役等の監査にも活用されるべきものです。
監査役等の側から見ても、KAM候補は有用です。監査人がどの領域を重視しているかを把握し、自らの監査計画や、取締役会・経営者への確認事項を見直す材料になります。KAM導入により、監査役等とのコミュニケーションや、監査人と経営者の議論が充実し、ガバナンス強化や効果的な監査につながることが期待されています。
出典:金融庁・企業会計審議会|監査基準の改訂に関する意見書
KAMと審査対応
KAMは、審査上も重要な論点になります。
なぜなら、KAMは監査報告書に記載される公開情報であり、監査意見形成、重要なリスク、監査役等コミュニケーション、会社の開示、監査調書のすべてと整合していなければならないからです。
審査担当者は、KAMについて次のような観点を確認します。
・KAM候補の母集団は適切に把握されているか
・監査役等とコミュニケーションした事項から選択されているか
・特に注意を払った事項の判断が、監査計画・リスク評価と整合しているか
・最終的にKAMとした事項、KAMとしなかった事項の理由が説明できるか
・KAMに決定した理由と監査上の対応が対応しているか
・会社の注記や有価証券報告書の記述情報と矛盾していないか
・未公表情報を不適切に提供していないか
・監査意見、強調事項、継続企業、除外事項との関係が整理されているか
・監査調書上、判断過程と結論が残されているか
特に、KAMが会計上の見積りに関係する場合、審査では次の点が問われます。見積りの監査証拠が十分か、経営者の仮定に対する批判的検討が行われているか、会社の注記が十分か、KAMの記載が監査人の手続と整合しているか。
KAMの記載案だけを整えても、監査調書上のリスク評価や証拠形成が弱ければ、審査に耐えるKAMにはなりません。
KAMと除外事項・継続企業の前提の関係
KAMは、除外事項付意見を代替するものではありません。
監査基準報告書701は、監査基準報告書705に基づき除外事項付意見を表明しなければならない状況において、除外事項付意見を表明せず、除外事項に該当する事項をKAM区分で報告してはならない、としています。また、除外事項付意見の原因となる事項や、継続企業の前提に関する重要な不確実性は、その性質上KAMに該当するものの、KAM区分には記載せず、該当する監査基準報告書に準拠して報告することとされています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
この点は、実務上の誤解が生じやすいところです。
財務諸表に重要な虚偽表示がある場合、その事項をKAMとして説明すれば足りるわけではありません。必要であれば、限定付適正意見、不適正意見など、監査意見への影響を判断することになります。
継続企業の前提に関する重要な不確実性がある場合も同様です。適切に開示されている重要な不確実性は、監査報告書の所定の区分で報告されるべきものであり、KAM区分に置き換えるものではありません。
KAMは、監査意見や継続企業の前提に関する報告を薄めるためのものではありません。
KAMは、監査意見を形成したうえで、監査上特に重要な事項を説明するためのものです。
KAMとして報告しない場合の判断
KAMに決定した事項は、原則として監査報告書に記載されます。
ただし監査基準報告書701では、法令等により公表が禁止されている場合や、極めて限定的な状況として、報告により生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれる場合には、監査人が当該事項について報告すべきでないと判断する余地が示されています。もっとも、企業が当該事項に関する情報を財務諸表以外の方法で公表している場合は、報告すべきでないと判断する状況には該当しないとされています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
この判断は、きわめて限定的に考えるべきものです。
「会社が嫌がるから」
「投資家に誤解されるかもしれないから」
「前年と変わると目立つから」
「記載が難しいから」
「審査で議論になりそうだから」
こうした理由だけで、KAMとして決定した事項を記載しないことは適切ではありません。
KAMの制度趣旨は、監査の透明性を高めることにあります。記載しないという判断を行う場合には、法令等による禁止、公共の利益との比較、会社の開示状況、監査役等とのコミュニケーション、審査上の検討を、慎重に整理する必要があります。
KAMの記載がボイラープレート化するリスク
KAMの実務で近年意識されている課題が、記載のボイラープレート化です。
金融庁は、KAMの実務の定着と浸透に向けた取組みにおいて、企業とのコミュニケーションを踏まえた監査人による創意工夫のあるKAMの記載が見られる一方で、記載内容について検討が必要な事例も見られる、としています。KAMは、2021年3月期から一部を除く金融商品取引法監査が適用される会社に対して監査報告書への記載が求められており、監査人が実施した監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることに意義があります。
出典:金融庁|「監査上の主要な検討事項(KAM)」の実務の定着と浸透に向けた取組みについて
ボイラープレート化したKAMには、次のような特徴があります。
・前年の記載とほとんど変わらない
・会社固有の状況が見えない
・なぜ当年度の監査で重要だったのかが分からない
・監査上の対応が一般的な手続列挙にとどまる
・会社の注記とのつながりが弱い
・経営者判断や見積りのどこが重要だったのかが不明確
・監査人がどのような困難性や重要判断に直面したのかが伝わらない
KAMの記載は、毎年必ず大きく変えなければならないものではありません。継続して重要な見積りや事業リスクがあるのであれば、同じ領域がKAMとなることは当然にあり得ます。
しかし、同じ領域であっても、当年度の事業環境、会社の実績、見積り仮定、監査手続、開示、監査上の判断は変化していきます。
前年と同じ領域をKAMにする場合でも、「今年も同じだから同じ記載」で済ませるのではなく、当年度の監査でどこに特に注意を払ったのかを更新する必要があります。
良いKAM記載に必要な視点
良いKAM記載とは、長い記載のことではありません。
良いKAM記載とは、当年度の監査において、その事項がなぜ重要であり、監査人がどのように対応したのかが、財務諸表利用者に伝わる記載のことです。
そのためには、次の視点が必要になります。
会社固有性
KAMは、会社固有の監査上の重要論点を伝えるものです。
同じ「減損」でも、対象資産、事業環境、事業計画、減損兆候、主要な仮定、監査上の困難性は会社ごとに異なります。同じ「収益認識」でも、契約条件、履行義務、販売慣行、システム、内部統制、不正リスクは会社ごとに異なります。
会社固有性がなければ、KAMは情報価値を失ってしまいます。
当年度性
KAMは、当年度の財務諸表監査における主要な検討事項です。
前年から継続している論点であっても、当年度にどのような変化があったのかを検討する必要があります。事業環境の変化、会計基準の改正、重要な取引、業績の変動、資金繰り、内部統制の改善・不備、経営者の仮定の変更。これらが当年度のKAM判断にどう影響したのかを整理します。
理由と対応の整合性
KAMに決定した理由と監査上の対応が対応していなければ、記載は弱くなります。
見積りの不確実性を理由にKAMとしたにもかかわらず、監査上の対応が資料閲覧や再計算だけにとどまって見える場合、利用者には監査の深度が伝わりません。
複雑な契約判断を理由にKAMとしたにもかかわらず、契約条件の検討や会計方針の評価が十分に説明されていなければ、KAMの趣旨は伝わらないでしょう。
KAM記載では、「理由」と「対応」を別々に書くのではなく、論理的に接続させることが重要です。
注記との接続
KAMは、会社の注記と接続して読まれます。
KAMに記載した事項について、財務諸表注記に関連する開示がある場合には、その注記を参照する必要があります。監査人の説明と会社の注記が整合していなければ、利用者は混乱してしまいます。
会社の注記が薄いままKAMだけが詳しくなると、監査人が会社の開示を代替しているように見えることがあります。反対に、会社の注記は充実しているのにKAMが一般的な記載にとどまれば、監査人が何を重要と判断したのかが伝わりません。
専門性と読みやすさの両立
KAMは、専門家向けの監査調書ではありません。財務諸表利用者が読む、監査報告書の一部です。
ただし、分かりやすくすることは、内容を浅くすることではありません。
専門用語を避けるだけでなく、監査上の重要性、経営者判断、見積りの不確実性、監査手続の焦点を、読み手が理解できる構造で示すことが重要です。
KAMの記載判断で確認すべき実務上の問い
KAMの決定・記載にあたっては、次の問いに答えられる状態にしておく必要があります。
・KAM候補の母集団はどこから形成されたか
・監査役等とコミュニケーションした事項のうち、どれを特に注意を払った事項としたか
・特に注意を払った事項のうち、なぜこの事項をKAMとしたか
・KAMにしなかった重要論点について、その理由を説明できるか
・KAMに決定した理由は、金額的重要性だけに依存していないか
・監査上の対応は、KAMに決定した理由と整合しているか
・会社の注記は、KAMの理解に必要な情報を提供しているか
・KAMが会社の未公表情報を不適切に提供していないか
・KAM記載案は、監査役等とのコミュニケーション内容と整合しているか
・KAM記載案を審査担当者に説明できるか
・前年からの変更または継続の理由を説明できるか
・KAMの内容が、監査調書上のリスク評価・監査手続・結論と整合しているか
これらの問いに答えられない場合、KAMの記載は形式的には整っていても、監査判断としては不十分である可能性があります。
KAMを監査計画段階から管理する
KAMは監査報告書で記載されるものですが、その管理を監査報告書作成時点から始めるべきではありません。
監査計画段階では、重要な虚偽表示リスク、特別な検討を必要とするリスク、会計上の見積り、不正リスク、重要な取引、内部統制上の懸念を踏まえ、KAM候補になり得る領域を早期に把握します。
期中監査では、内部統制の整備・運用状況、会社の決算プロセス、重要論点の進捗、監査役等とのコミュニケーション状況を確認します。
期末監査では、見積り、開示、未修正虚偽表示、後発事象、継続企業、会社の注記、監査証拠の十分性を踏まえ、KAM候補を最終的に絞り込みます。
監査報告書作成段階では、KAM記載案を、監査調書、会社の注記、監査役等とのコミュニケーション、審査コメントと整合させます。
この流れで管理しなければ、KAMは監査報告書日直前の負荷として現れることになります。すると、会社の開示修正、監査役等との追加協議、審査コメント対応、監査調書の補強が同時に発生し、監査品質上のリスクが高まってしまいます。
KAMは、最後に書くものではあります。しかし、最後に考えるものではありません。
KAMと財務諸表利用者への説明可能性
KAMの記載は、財務諸表利用者に向けた情報提供です。
そのため、KAMを読む利用者が何を理解できるのかを意識する必要があります。
利用者は、KAMを通じて次のことを知ろうとしています。
・監査人がどの財務諸表項目や注記を重視したのか
・会社の財務諸表のどこに重要な判断や不確実性があるのか
・監査人がどのような監査上の対応を行ったのか
・会社の開示と監査人の視点がどう関係しているのか
・監査意見に至る過程で、どのような重要論点があったのか
KAMは、投資判断そのものを提供するものではありません。
しかし、投資家や財務諸表利用者が、財務諸表の重要な判断領域を理解するための材料にはなります。
このため、KAMの記載は、監査人内部の専門用語をそのまま外に出すのではなく、監査上の重要性が伝わる形に再構成する必要があります。
KAMは会社との対立を避けるためのものではない
KAMの実務では、会社との協議が重要になります。
ただし、会社との協議は、KAMを会社が望む形に調整するためのものではありません。
会社との協議で確認すべきことは、主に次の点です。
・会社の注記や有価証券報告書の記述が適切か
・KAMに関連する会社の未公表情報が不適切に含まれていないか
・監査人の理解に事実誤認がないか
・会社の開示とKAMの記載が矛盾していないか
・監査役等とのコミュニケーション内容と整合しているか
最終的に、KAMを決定し、監査報告書に記載する責任は監査人にあります。
会社が難色を示すからKAMから外す、会社の表現に合わせすぎる、監査人の判断理由を弱める。こうした対応は、KAMの趣旨に反します。
一方で、会社の開示を無視して監査人だけが情報を出すことも、また適切ではありません。
KAMの実務では、会社、監査役等、監査人それぞれの責任分担を保ちながら、利用者にとって意味のある情報を提供する姿勢が求められます。
KAMの記載と監査調書
KAMの記載判断は、監査調書と切り離すことができません。
監査調書上、少なくとも次の事項が説明できる必要があります。
・監査役等とコミュニケーションした事項
・特に注意を払った事項の識別
・KAMとした事項の判断理由
・KAMとしなかった事項の判断理由
・KAMに関連するリスク評価
・実施した監査手続
・入手した監査証拠
・会社の注記・開示の評価
・審査での検討事項
・最終的なKAM記載との整合性
KAMは監査報告書に記載されるため、どうしても文章だけが注目されがちです。しかし、KAMの根拠は監査調書にあります。
KAMの記載が監査調書上の判断過程と整合していなければ、レビューや審査で説明に窮することになります。KAMの記載が一般的なものであっても、調書上の判断が明確でなければ、監査品質上の弱点となります。
KAMは、監査報告書の文章であると同時に、監査調書に残された判断過程の表れなのです。
KAMと内部統制・不正リスク
KAMは、会計上の見積りや収益認識だけに限定されるものではありません。
内部統制、ITシステム、不正リスク、経営者による内部統制の無効化、重要な訂正、重要な開示不備。これらも、監査上特に重要な事項となる場合があります。
たとえば、新しい基幹システムの導入、決算システムの移行、重要なIT全般統制の不備、収益認識システムの変更。こうした事項は、財務諸表に直接記載されない場合であっても、監査の基本方針や手続に重要な影響を与えることがあります。監査基準報告書701の適用指針でも、新しいITシステムの導入や既存ITシステムの重要な変更が、監査の基本的な方針に重要な影響を与えることがあるとされています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
不正リスクについても同様です。
不正リスクが高い領域であれば必ずKAMになる、というわけではありません。しかし、収益認識不正、経営者による内部統制の無効化、重要な非定型取引、関連当事者取引、見積りバイアスなどが、当年度監査で特に重要な判断を伴った場合には、KAM候補として慎重に検討すべきです。
ただし、不正調査中の未公表情報や、法令上の制約がある情報をKAMに記載する場合には、会社の開示、監査役等との協議、法務上の影響、公共の利益との関係を、慎重に確認する必要があります。
IPO・上場申請会社におけるKAM
KAMは基本的に上場会社監査で意識されることが多い論点ですが、上場申請会社においても重要な検討事項となり得ます。
上場申請会社では、上場申請のための有価証券報告書に添付される監査報告書のKAM対応が論点になる場合があります。この点については、直前期の財務数値を基準とする考え方や、直前期がKAM対象であれば直前々期もKAM対象となるという取扱いが整理されています。
IPO準備監査において、KAMは単なる監査報告書の記載事項にとどまりません。上場会社水準の財務報告体制、会計上の見積り、収益認識、内部統制、開示体制、監査役等とのコミュニケーションを整備するプロセスと、深く関係しています。
上場申請会社では、KAM候補となり得る論点が、同時に上場審査、主幹事証券会社対応、開示体制整備、内部統制整備にも影響することがあります。
したがって、IPO監査におけるKAMは、監査報告書の記載時点だけでなく、上場準備の早い段階から論点として管理していくことが重要です。
KAMの決定・記載で実務上確認したいチェックポイント
KAMの実務では、形式的なチェックリストだけでは不十分です。
ただし、判断漏れを防ぐという意味では、次の観点を順に確認することが有効です。
KAM候補の識別
・監査計画上の重要リスクは洗い出されているか
・特別な検討を必要とするリスクは整理されているか
・重要な会計上の見積りは検討されているか
・当年度の重要取引・重要事象は把握されているか
・監査役等とのコミュニケーション事項と整合しているか
KAMの絞り込み
・特に注意を払った事項は明確か
・その中で特に重要と判断した理由は明確か
・KAMとしなかった事項の理由を説明できるか
・前年KAMとの継続・変更の理由を説明できるか
・会社固有性・当年度性があるか
KAMの記載
・関連する注記への参照が適切か
・KAMの内容が明確か
・KAMに決定した理由が具体的か
・監査上の対応が理由と対応しているか
・監査人の個別意見と誤解されないか
・除外事項や継続企業の前提に関する区分と混同していないか
・会社の未公表情報を不適切に含めていないか
・過度に一般的・定型的な記載になっていないか
KAMの説明可能性
・監査調書上、判断過程が残されているか
・監査役等とのコミュニケーションと整合しているか
・会社の注記・開示と整合しているか
・審査担当者に説明できるか
・レビューや検査で問われたときに、リスク、手続、証拠、結論のつながりを説明できるか
KAMを「書く」前に整えるべきこと
KAMの質は、最終的な文章力だけで決まるものではありません。
むしろ、KAMを記載する前の段階で、次の事項が整っているかどうかが重要です。
・重要なリスクが適切に識別されている
・監査計画と監査手続がリスクに対応している
・会計上の見積りについて、経営者の仮定と基礎データが検討されている
・会社の注記が十分に整理されている
・監査役等と重要論点が共有されている
・審査上の論点が早期に把握されている
・監査調書上、判断過程が残されている
これらが整っていなければ、KAMの文章だけを整えても、実務上の強度は高まりません。
KAMは、監査の結果として現れる文章です。
しかし、KAMの品質は、監査の進め方そのものによって決まります。
KAMは監査人の専門性が最も表れやすい領域である
KAMの実務では、基準の文言を知っているだけでは十分ではありません。
実際には、次のような判断が求められます。
・どのリスクが当年度監査で本当に重要だったのか
・会社の開示は十分か
・監査役等との対話は、形式的でなく実質的だったか
・監査上の対応はリスクに見合っているか
・KAMとして記載することで、利用者の理解が深まるか
・記載しないという判断は説明可能か
・審査やレビューに耐える調書が残っているか
KAMは、監査人が会社の事業、会計、内部統制、開示、ガバナンスをどれだけ理解しているかが表れやすい領域です。
KAMを深く検討することは、監査報告書の透明性を高めるだけにとどまりません。監査計画、監査証拠、開示、監査役等とのコミュニケーション、審査対応の質を高めることにもつながります。
主な参照情報
本稿は、2026年7月時点で公表されている金融庁・企業会計審議会、日本公認会計士協会、e-Gov法令検索等の公的・公式情報を確認したうえで作成しています。個別のKAM判断にあたっては、最新の監査基準、監査基準報告書、監査証明府令、監査法人の品質管理方針・審査方針、会社の開示状況を確認する必要があります。
・出典:金融庁・企業会計審議会|監査基準の改訂に関する意見書
・出典:金融庁・企業会計審議会|監査基準の改訂に関する意見書
・出典:金融庁|「監査上の主要な検討事項(KAM)」の実務の定着と浸透に向けた取組みについて
・出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書701 独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告
・出典:日本公認会計士協会|監査報告に関する動向~監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters)~
・出典:e-Gov法令検索|財務諸表等の監査証明に関する内閣府令
振り返り
| 論点 | 実務上の意味 | 確認すべき判断 |
|---|---|---|
| KAMの定義 | 当年度監査で監査人が特に重要と判断した事項 | 監査役等とコミュニケーションした事項から選択されているか |
| 決定プロセス | 監査上の論点から段階的に絞り込む | 特に注意を払った事項とKAMの違いを説明できるか |
| KAM候補 | 見積り、重要リスク、重要取引、経営者判断など | 当年度監査で特に重要だった理由があるか |
| KAMにしない判断 | 重要論点を除外する判断も説明対象になる | 除外理由が形式的・便宜的になっていないか |
| 注記参照 | KAMは会社の開示を代替しない | 会社の注記が十分で、KAMと整合しているか |
| 決定理由 | KAMの情報価値の中心 | 金額的重要性だけでなく、不確実性・複雑性・判断の困難性を説明できるか |
| 監査上の対応 | KAMに対する監査人の対応を示す | 決定理由と手続内容が対応しているか |
| 監査役等との連携 | KAMは監査役等とのコミュニケーション事項から選ばれる | 計画段階から重要論点を共有しているか |
| 審査対応 | KAMは公開される監査判断である | 調書、開示、審査説明が一貫しているか |
| ボイラープレート化 | KAMの情報価値を低下させる | 会社固有性・当年度性が記載に反映されているか |
| 除外事項・GCとの関係 | KAMは監査意見やGC報告を代替しない | 除外事項、継続企業、強調事項と混同していないか |
| 未公表情報 | KAMで会社情報を不適切に開示してはならない | 会社の開示責任と監査人の説明責任を切り分けているか |
KAMは、監査報告書の一部でありながら、監査計画、リスク評価、会計上の見積り、内部統制、開示、監査役等との連携、審査対応のすべてに関係します。
KAMの決定や記載について、監査調書、会社の注記、監査役等とのコミュニケーション、審査上の説明に耐える形で整理したいとお考えの場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所へご相談ください。監査報告書の文言だけでなく、その背後にある判断過程を、説明可能な形に整えるための論点整理を支援いたします。