減損会計で最も説明が難しくなるのは、「減損損失を認識する」という結論に至った後の場面です。
兆候の有無や認識判定までであれば、営業損益、割引前将来キャッシュ・フロー、事業計画との比較によって、一定の整理ができます。ところが測定の段階に入った途端に、正味売却価額、使用価値、割引率、不動産評価、処分費用、共用資産、のれん、使用権資産、税効果、注記、KAMまでが、一気に一本の線でつながってきます。
日本基準では、減損損失を認識すべきと判定された資産または資産グループについて、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として当期の損失に計上します。回収可能価額は、正味売却価額と使用価値のいずれか高い方です。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
ここで押さえておきたいのは、測定は「時価評価そのもの」ではないという点です。収益性が低下した資産または資産グループについて、帳簿価額のうち回収できない部分を損失として認識する手続だと理解しておく必要があります。
したがって、評価額を入手すればそれで終わり、というものではありません。どの回収シナリオを前提に、どのキャッシュ・フローを見積り、どの割引率を用い、どの資産に減損損失を配分するのか。この一連の判断を、後から説明できる形で組み立てておくことが求められます。
減損損失の測定は、認識判定の後に行う
前回の「7-7. 減損の兆候と認識判定」では、減損の兆候がある資産または資産グループについて、割引前将来キャッシュ・フロー総額と帳簿価額を比較し、減損損失を認識すべきかを判定する流れを整理しました。
本稿が対象とするのは、その次の段階です。
| 段階 | 判断内容 | 本稿での扱い |
|---|---|---|
| 兆候判定 | 減損が生じている可能性を示す事象があるか | 前回記事で整理 |
| 認識判定 | 割引前将来CF総額が帳簿価額を下回るか | 前回記事で整理 |
| 測定 | 帳簿価額を回収可能価額まで減額する | 本稿の中心 |
| 配分 | 資産グループの減損損失を各構成資産へ配分する | 本稿の中心 |
| 開示・監査対応 | 注記、見積り開示、KAM、適時開示への影響を整理する | 本稿で扱う |
実務上は、認識判定と測定を同じExcelシートで作成することが多く、その分、両者が混同されがちです。しかし日本基準では、認識判定と測定はそれぞれ担う役割が異なります。
認識判定では、割引前将来キャッシュ・フロー総額を用いて、減損損失を認識すべきかを判断します。一方の測定では、回収可能価額を算定し、帳簿価額との差額を減損損失とします。
減損実務において、認識判定を経ずに測定へ進むことは、原則的な流れではありません。日本基準は、減損の兆候、認識判定、測定という段階を踏むことを基本構造としており、IFRSのように帳簿価額と回収可能価額を直接比較する一段階の構造とは異なります。
回収可能価額とは何か
回収可能価額とは、資産または資産グループについて、会社が回収できると考えられる金額です。日本基準では、次の2つのうち高い方を回収可能価額とします。
| 区分 | 内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 正味売却価額 | 時価から処分費用見込額を控除した金額 | 売却・処分により回収できる金額 |
| 使用価値 | 継続使用と使用後処分により得られる将来CFの現在価値 | 使い続けることで回収できる金額 |
この「高い方」という考え方は、会社が経済合理的に選択できる回収方法を前提にしていると整理できます。売却した方が高く回収できるのであれば正味売却価額が基礎になり、使い続けた方が高く回収できるのであれば使用価値が基礎になります。
ただし測定実務では、常に両方を精緻に算定しなければならないわけではありません。適用指針では、通常は使用価値が正味売却価額より高いと考えられるため、明らかに正味売却価額が高いと想定される場合や、処分がすぐに予定されている場合などを除き、必ずしも現在の正味売却価額を算定する必要はないとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
そう考えると、実務判断の出発点は、「この資産グループは使用継続で回収するのか、それとも売却・処分で回収するのか」を整理することにあります。
正味売却価額と使用価値のどちらを重視すべきか
回収可能価額の測定では、正味売却価額と使用価値のどちらを採用するかが争点になります。
形式的に「使用価値を計算したから使用価値」とするのではなく、対象資産グループの実態に立ち返り、どちらの回収シナリオが合理的かを説明できるようにしておく必要があります。
| 状況 | 重視されやすい価額 | 判断の視点 |
|---|---|---|
| 事業継続が明確で、将来CFが見込まれる | 使用価値 | 継続使用による回収可能性 |
| 店舗閉鎖・工場閉鎖が決定または高度に見込まれる | 正味売却価額 | 売却・除却・退店による回収可能性 |
| 遊休資産で利用計画がない | 正味売却価額 | 継続使用によるCFが乏しい |
| 賃貸不動産で賃料収入が安定している | 使用価値または正味売却価額 | 保有継続か売却か、投資方針による |
| 売却交渉が進んでいる | 正味売却価額 | 売却予定価格、処分費用、契約条件 |
| M&A後の事業でのれんが大きい | 使用価値 | 買収時計画、シナジー、事業継続方針 |
| 建設中止・大幅延期の建設仮勘定 | 正味売却価額または見直し後の使用価値 | 完成可能性、転用可能性、処分可能性 |
| 代替用途がある設備・不動産 | 両方を比較検討 | 転用後CFと売却価額の比較 |
監査上は、「なぜ正味売却価額ではなく使用価値なのか」、あるいは「なぜ使用価値ではなく正味売却価額なのか」が問われます。とりわけ、減損損失を小さくするために一方だけを選んだように見える場合には、説明が難しくなります。
正味売却価額の算定
正味売却価額は、資産または資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定します。
適用指針では、時価は公正な評価額であり、通常は観察可能な市場価格をいうとされています。市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額が時価となります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
正味売却価額の算定式は、単純化すると次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時価 | 市場価格または合理的に算定された価額 |
| 処分費用見込額 | 売却手数料、撤去費、解体費、原状回復費、仲介手数料、登記費用等 |
| 正味売却価額 | 時価 − 処分費用見込額 |
正味売却価額で見落とされやすいのは、処分費用です。
不動産の売却であれば、仲介手数料、測量費、建物解体費、土壌汚染対応費、原状回復費、登記関連費用などが問題になります。設備の売却であれば、撤去費、輸送費、売却手数料、スクラップ処分費などが論点になります。
売却予定がある場合であっても、売却総額だけを基礎にするのは十分ではありません。売却に伴って会社が負担する支出を控除した後の回収額を、あらためて確認しておく必要があります。
不動産評価における実務上の留意点
不動産は、減損測定のなかで最も評価実務が問題になりやすい資産です。
適用指針では、市場価格が観察できない場合の合理的に算定された価額について、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチを挙げています。不動産鑑定評価では、原価法、取引事例比較法、収益還元法がこれに対応します。また、不動産の減損処理にあたって時価に対応するものは、不動産鑑定評価基準における正常価格であるとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 評価アプローチ | 不動産評価での対応 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|---|
| コスト・アプローチ | 原価法・積算価格 | 再調達原価、減価修正、建物の老朽化 |
| マーケット・アプローチ | 取引事例比較法・比準価格 | 近隣取引、用途、規模、立地、個別補正 |
| インカム・アプローチ | 収益還元法・収益価格 | 賃料、空室率、NOI、キャップレート、DCF |
| 鑑定評価額 | 正常価格 | 評価目的、価格時点、前提条件、限定価格等との区別 |
不動産評価で注意すべきなのは、取得した評価書の名称ではありません。減損測定に使える評価目的・価格概念になっているかどうかです。
たとえば、担保評価、売買交渉用評価、内部管理用評価、税務評価、固定資産税評価、路線価ベースの評価は、それぞれ目的が異なります。重要性が乏しい不動産であれば、一定の評価額や指標を合理的に調整して使用できる場合もあります。
一方、重要な減損測定においては、評価目的、価格時点、評価手法、前提条件が、減損会計の目的と整合しているかを確認する必要があります。
なお不動産業では、開発、分譲、賃貸、流通、運営管理といった事業形態ごとに回収シナリオが異なります。開発不動産は完成・分譲による回収、賃貸不動産は賃料収入と将来売却による回収、運営型不動産は事業CFによる回収が中心になります。
使用価値の算定
使用価値は、資産または資産グループの継続使用と使用後の処分により生ずる将来キャッシュ・フローの現在価値です。
適用指針では、継続使用による将来キャッシュ・フロー、使用後処分による将来キャッシュ・フロー、そしてこれらを現在価値に割り引く割引率の考え方が示されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
使用価値の算定構造は、次のように整理できます。
| 構成要素 | 内容 |
|---|---|
| 継続使用によるCF | 事業活動から生じる将来キャッシュ・イン・フローとキャッシュ・アウト・フロー |
| 使用後処分によるCF | 経済的残存使用年数終了時点等における正味売却価額 |
| 割引率 | 貨幣の時間価値とCFの見積値から乖離するリスクを反映した率、またはリスクをCFに反映した場合の無リスク利率 |
| 使用価値 | 上記CFを現在価値に割り引いた金額 |
ここで確認しておきたいのは、使用価値は事業計画の現在価値ではないということです。
減損対象である資産または資産グループの現在の使用状況と合理的な使用計画を前提に、対象資産グループから得られるキャッシュ・フローだけを抽出する必要があります。
将来キャッシュ・フローは、事業計画から調整して作る
適用指針では、将来キャッシュ・フローを、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定および予測に基づいて見積るとされています。取締役会等の承認を得た中長期計画がある場合でも、その数値を外部要因や内部情報と整合的に修正し、現在の使用状況や合理的な使用計画を考慮して見積る必要があります。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 見積項目 | 確認すべき資料 |
|---|---|
| 売上高 | 受注残、契約、来店客数、販売数量、単価、顧客継続率 |
| 売上原価 | 原材料、人件費、外注費、物流費、稼働率、価格転嫁 |
| 販管費 | 人員計画、賃料、広告費、システム費、共通費配賦 |
| 設備投資 | 維持更新投資、拡張投資、法令対応投資、修繕計画 |
| 運転資本 | 売掛金、棚卸資産、買掛金、在庫水準 |
| 処分価額 | 売却可能価額、除却価値、スクラップ価値 |
| 処分費用 | 解体費、撤去費、仲介手数料、原状回復費 |
| 成長率 | 市場成長率、過去実績、計画達成率、競争環境 |
| 使用期間 | 主要な資産の経済的残存使用年数 |
| 税金・利息 | 原則として将来CFから除外する項目との整合 |
実務でよく見かける問題は、会社の中期計画をそのまま使用価値計算に転記してしまうことです。
中期計画は経営管理上の計画であり、減損会計上の将来キャッシュ・フローとは目的が異なります。中期計画のなかには、新規投資、未承認施策、M&A、組織再編、資金調達効果、税金、利息、全社費用などが含まれていることがあります。
測定実務では、「中期計画から何を除外し、何を残し、何を補正したか」を明示しておくことが重要です。
キャッシュ・フローに含めるもの、含めないもの
将来キャッシュ・フローの見積りでは、何を含めるかが監査上の争点になります。
適用指針では、間接的に生ずる支出を関連する資産または資産グループに合理的に配分する考え方、将来キャッシュ・フローに利息の支払額、法人税等の支払額・還付額を含めない考え方、利息の受取額を原則として含めない考え方が示されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 項目 | 取扱いの考え方 |
|---|---|
| 売上・サービス収入 | 対象資産グループから直接生じるものを含める |
| 直接原価 | 対象事業の運営に必要な支出を含める |
| 共通費 | 合理的な配賦基準により関連するものを含める |
| 維持更新投資 | 現在の使用状況を維持するため必要なものは検討対象 |
| 拡張投資 | 未承認・未実行の将来拡張効果は慎重に扱う |
| 処分収入 | 使用後処分による正味売却価額として考慮 |
| 処分費用 | 売却・解体・撤去・原状回復等の費用を反映 |
| 支払利息 | 原則として含めない |
| 受取利息 | 原則として含めない。ただし固定資産使用に直接関連する場合は例外あり |
| 法人税等 | 原則として含めない |
| 減価償却費 | 非資金費用であり、発生基準からCFへ調整する際に加減する |
| 本社費・共通費 | 対象資産グループの営業活動に関連するものを合理的に配賦 |
とりわけ注意しておきたいのは、税効果会計や継続企業の前提で用いる事業計画との整合です。
減損測定では法人税等を含めない一方で、税効果会計では将来課税所得を見積ります。両者は同じ数値である必要はありませんが、売上成長率、利益率、事業継続方針、市場環境の見方が大きく矛盾している場合には、監査上、説明が必要になります。
会計上の見積りにおいては、見積り結果が後で外れること自体よりも、見積時点で当然考慮すべき情報を考慮していたか、楽観的な見積りになっていないかが重要です。減損、税効果、引当金などの見積りは、経営者の仮定によって財務諸表に大きな影響を与えるため、監査上も詳細な説明を求められやすい領域といえます。
割引率の決定
使用価値の算定では、割引率が重要な見積り仮定になります。
適用指針では、将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクをキャッシュ・フローに反映していない場合、割引率は、貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクの両方を反映したものとされています。そのうえで、当該資産または資産グループに固有のリスクを反映した収益率、企業の資本コスト、類似資産の市場平均収益率、ノンリコース資金調達の利率などを総合的に勘案するとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 割引率の考え方 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 資産グループ固有の収益率 | 内部管理上の投資回収率、事業別ハードルレート |
| 企業の資本コスト | WACC等。借入資本コストと自己資本コストを加重平均 |
| 類似資産・類似事業の市場収益率 | 上場類似企業、業界指標、不動産キャップレート等 |
| ノンリコース借入利率 | 資産グループを裏付けとした資金調達利率 |
| 無リスク利率 | CFにリスクを反映した場合に用いる。国債利回り等 |
割引率の実務上の落とし穴は、会社全体のWACCを機械的に使ってしまうことです。
会社全体のWACCは、企業全体の事業ポートフォリオや資本構成を反映したものです。一方で、減損測定の対象は特定の資産グループです。成熟事業、赤字事業、海外事業、スタートアップ型事業、不動産賃貸事業では、リスク特性が異なる可能性があります。
そこで割引率については、次の観点から検証していきます。
| 確認事項 | 実務上の問い |
|---|---|
| 対象単位 | 割引率は資産グループのリスクを反映しているか |
| CFとの整合 | CFにリスクを織り込んでいるか、割引率に織り込んでいるか |
| 税前・税後 | CFと割引率の税前・税後の前提が一致しているか |
| 名目・実質 | インフレをCFと割引率のどちらで反映しているか |
| 通貨 | 外貨建CFと割引率の通貨が一致しているか |
| 期間 | 国債利回り、リスクプレミアム、β等の期間整合性 |
| 事業リスク | 成長率、顧客集中、価格転嫁、規制リスクを反映しているか |
| 比較可能性 | 類似会社・類似不動産・市場データとの整合性 |
| 連結・個別 | 連結上のグルーピング見直しに応じて割引率も見直しているか |
外貨建ての将来キャッシュ・フローを用いる場合には、当該通貨の割引率で現在価値に割り引いたうえで、減損損失の測定時の為替相場で円換算する方法が示されています。一部のみが外貨建ての場合には、外貨建てCFを測定時の為替相場で円換算し、円貨建てCFと合算して割引く方法も認められています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
正味売却価額と使用価値の「両方を作る」必要がある場面
実務上、使用価値が明らかに高い場合には、正味売却価額の精緻な算定を省略できることがあります。
もっとも、次のような場面では、正味売却価額と使用価値の双方を検討しておかないと、判断そのものが説明しにくくなります。
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 売却方針と継続使用方針が並存している | 経営者の回収シナリオが確定していない |
| 店舗閉鎖候補だが正式決定前 | 使用価値と処分価値の比較が必要 |
| 賃貸不動産 | 保有継続と売却の双方が合理的な選択肢となる |
| 土地・建物の市場価格が大きく下落 | 売却価額が回収可能価額に影響しやすい |
| 遊休資産に転用可能性がある | 継続使用、転用、売却の複数シナリオがある |
| 事業撤退予定だが撤退時期が未確定 | 撤退までのCFと売却価額の組合せが必要 |
| 評価専門家を利用する大型案件 | 使用価値と市場価値の双方を監査人が検証する可能性 |
| 買収後事業の計画未達 | のれん・無形資産を含む使用価値が争点になりやすい |
「明らかに使用価値が高い」と判断する場合であっても、その根拠を残しておくことが重要です。
たとえば、売却市場が存在しない特殊設備については、正味売却価額が低いことを示す査定資料や、スクラップ価値しか見込めないことを示す資料が必要になります。不動産については、売却見込額が高い可能性があるため、使用価値だけで結論づけてしまうと、監査上の説明が不足する場合があります。
評価専門家を利用する場合
不動産、事業価値、無形資産、特殊設備、海外事業などでは、評価専門家を利用することがあります。
ただし、評価専門家に依頼したこと自体が、会計判断の十分な根拠になるわけではありません。
評価専門家を利用する場合、会社側としては少なくとも次の点を検討しておく必要があります。
| 確認事項 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 評価目的 | 減損測定目的か、売買目的か、税務目的か、担保目的か |
| 価格時点 | 決算日または測定時点と整合しているか |
| 評価対象 | 資産グループの範囲と一致しているか |
| 評価手法 | 収益還元法、DCF法、取引事例比較法、原価法等の選択理由 |
| 前提条件 | 賃料、空室率、成長率、投資額、撤退費用、税金、割引率 |
| 会社計画との整合 | 経営計画、予算、業績予想、税効果資料との整合 |
| 処分費用 | 評価額から控除すべき処分費用を別途反映しているか |
| 感応度 | 主要仮定の変動が減損額に与える影響 |
| 独立性・専門性 | 評価者の資格、経験、利害関係 |
| 監査対応 | 監査人の評価専門家が再検証できる資料か |
評価専門家の評価書をそのまま会計数値に転用するのではなく、会計目的に合うように読み替え、必要な調整を行うことが求められます。
たとえば、不動産鑑定評価額が「正常価格」であったとしても、正味売却価額に使う場合には処分費用見込額を控除します。事業価値評価に法人税後CFが使われている場合には、減損会計上の使用価値と税前・税後の前提が一致しているかを確認します。
投資意思決定用のDCFには、シナジーや追加投資が含まれていることがあります。減損測定では、対象資産グループの現在の使用状況と合理的な使用計画に基づくCFへ調整する必要があります。
減損損失の配分
資産グループについて減損損失を認識した場合、減損損失を資産グループ全体の帳簿価額から控除するだけでは足りません。原則として、資産グループの各構成資産へ合理的な方法で配分します。
適用指針では、資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づいて比例配分する方法のほか、各構成資産の時価を考慮した配分等、合理的であると認められる方法により各構成資産へ配分するとされています。また、複数の建設仮勘定から構成される場合は、測定時には各建設仮勘定に配分せず、完成時に総支出額等の合理的な方法に基づき配分します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 配分方法 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 帳簿価額比例配分 | 各構成資産の帳簿価額比率で配分 | 実務上使いやすいが、時価との関係に注意 |
| 時価考慮配分 | 各資産の時価・正味売却価額を考慮 | 土地・不動産など時価把握可能資産で有用 |
| 回収可能価額差額比率 | 帳簿価額と回収可能価額の差額比率で配分 | 個別資産の回収可能価額が把握できる場合 |
| 原因対応配分 | 減損原因となった資産へ重点配分 | 合理性の説明が必要 |
| 建設仮勘定 | 測定時には配分せず、完成時に合理的に配分 | 完成時の配分ロジックを記録する |
実務で問題になるのは、土地など正味売却価額が把握されている資産に減損損失を配分した結果、減損後帳簿価額が正味売却価額を下回ってしまう場合です。
適用指針の結論の背景では、構成資産の全部または一部の正味売却価額が容易に把握できる場合、減損後帳簿価額が正味売却価額を下回る結果とならないように、合理的な基準で他の構成資産に減損損失を配分することができるとされています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
たとえば、土地の時価下落が減損の主因であったとしても、すべての減損損失を土地に配分すべきとは限りません。土地の減損後帳簿価額が正味売却価額を下回る場合には、建物や構築物など他の構成資産への再配分を検討します。
実務上も、土地の正味売却価額を下回らないよう、他の構成資産に減損損失を再配分する設例が、典型的な検討論点になります。
減損後帳簿価額は「時価と一致させる」ものではない
減損測定で誤解されやすいのは、減損後の各資産の帳簿価額を、それぞれの時価に一致させなければならない、という発想です。
減損会計は、資産グループ全体について回収可能価額まで帳簿価額を減額する手続です。資産グループ内の各資産へ減損損失を配分する必要はありますが、各資産の減損後帳簿価額を必ず個別時価に一致させる制度ではありません。
実務上、土地の減損後帳簿価額が土地の時価を上回っていても、資産グループ全体の減損測定として合理的に配分されている限り、土地の帳簿価額を時価に一致させるためだけに追加の減損損失を計上する必要はないと整理される場面があります。
この点は、監査人、経営者、開示担当者に対して、あらかじめ説明しておくべき重要な論点です。減損会計は、個別資産の全面的な時価評価ではなく、回収不能部分を損失として認識する会計処理だからです。
共用資産とのれんを含む測定
共用資産やのれんを含む減損測定では、より大きな単位での判定と測定が必要になります。
共用資産に減損の兆候がある場合には、原則として、共用資産が関連する複数の資産または資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位で認識判定と測定を行います。共用資産を加えることで算定される減損損失の増加額は、原則として共用資産に配分されます。ただし、共用資産の帳簿価額と正味売却価額との差額を超えることが明らかな場合には、超過額を各資産または資産グループに合理的に配分します。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
のれんについては、のれんを認識した取引において取得された事業の単位が複数ある場合、のれんの帳簿価額を合理的な基準で分割します。のれんを含むより大きな単位に減損の兆候がある場合には、のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた単位で、認識判定と測定を行います。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 対象 | 測定上のポイント |
|---|---|
| 本社建物 | 関連する複数事業に共用資産を加えた単位を検討 |
| 共通システム | 利用事業への配分基準、廃止・移行計画を確認 |
| 物流センター | 対象店舗群・事業群との関連性を確認 |
| 研究開発施設 | 関連製品群・技術群との将来CFを確認 |
| のれん | 買収時計画、取得事業単位、シナジー、事業別業績を確認 |
| 顧客関連無形資産 | 顧客離脱率、契約更新率、売上予測を確認 |
| 技術関連無形資産 | 技術陳腐化、製品ライフサイクル、代替技術を確認 |
のれんを含む減損測定では、買収時のPPA資料や事業計画との整合が、とりわけ重要になります。
PPAでは、取得原価を取得した資産・負債の時価に配分し、残余としてのれんまたは負ののれんが認識されます。買収後の減損測定においては、買収時に想定した超過収益力や識別無形資産の価値が、その後の実績・計画と整合しているかが問われます。
使用権資産を含む資産グループ
2024年9月13日にASBJは、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および企業会計基準適用指針第33号を公表し、関連して企業会計基準第35号「固定資産の減損に係る会計基準」の一部改正等も公表しています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表
改正後のリース会計では、店舗、オフィス、工場、物流施設などの使用権資産が、減損会計上の資産グループに含まれる場面が増えます。
適用指針でも、使用権資産および使用権資産を含む資産グループに関する減損の兆候、認識判定、測定は通常の資産に準じて行うこと、資産グループについて認識された減損損失は合理的な方法で各構成資産へ配分することが示されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 論点 | 実務上の確認 |
|---|---|
| 使用権資産の帳簿価額 | 資産グループの帳簿価額に含める範囲 |
| リース期間 | 使用価値の見積期間、閉店・撤退計画との整合 |
| 将来支払リース料 | 使用権資産が減損対象に含まれる場合のCFとの整合 |
| 原状回復義務 | 資産除去債務、退店費用、処分費用との整合 |
| 短期・少額リース | 簡便処理適用資産の取扱い |
| サブリース | 借手側・貸手側のCFの混同に注意 |
| 店舗閉鎖 | 使用権資産、リース負債、解約不能期間、違約金を確認 |
使用権資産を含む資産グループでは、リース期間の判断と減損測定の前提が矛盾しやすくなります。
リース会計上は延長オプションの行使を合理的に確実としている一方で、減損測定では短期閉鎖を前提にしている、といった場合です。こうしたときには、両者の整合性を説明する必要があります。
減損処理後の会計処理
減損処理後は、減損損失を控除した帳簿価額に基づいて減価償却を行います。また、日本基準では減損損失の戻入れは行いません。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 項目 | 減損処理後の取扱い |
|---|---|
| 減価償却 | 減損後帳簿価額を基礎に、残存耐用年数で償却 |
| 残存価額 | 減損後の回収可能性を踏まえ、必要に応じ見直し |
| 耐用年数 | 使用計画変更がある場合は見直しを検討 |
| 減損損失の戻入れ | 日本基準では行わない |
| 遊休資産の償却費 | 原則として営業外費用として処理 |
| 処分予定資産 | 流動資産振替の場合を除き、残存価額まで償却 |
減損後に業績が改善したとしても、日本基準では減損損失を戻し入れません。だからこそ、測定時点での仮定と根拠資料が重要になります。
後から「見積りが保守的すぎた」「楽観的すぎた」と言われないよう、期末時点で利用可能な情報に基づき、合理的かつ説明可能な見積りを行っておく必要があります。
減損損失の表示と注記
重要な減損損失を認識した場合には、特別損失に係る注記事項として、資産または資産グループの概要、認識に至った経緯、減損損失の金額、グルーピング方法、回収可能価額の種類と算定方法等を注記します。回収可能価額が正味売却価額の場合は時価の算定方法、使用価値の場合は割引率の注記が必要です。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
| 注記事項 | 実務上の記載検討 |
|---|---|
| 資産・資産グループの概要 | 用途、種類、場所、事業セグメント |
| 認識に至った経緯 | 収益性低下、閉鎖、撤退、市場価格下落、計画未達 |
| 減損損失の金額 | 特別損失計上額、主な固定資産種類別内訳 |
| グルーピング方法 | 店舗単位、工場単位、事業単位、共用資産の扱い |
| 回収可能価額 | 正味売却価額か使用価値か |
| 時価算定方法 | 鑑定評価、取引事例、査定、収益還元法等 |
| 割引率 | 使用価値を採用した場合の割引率 |
| まとめ記載 | 多数の資産グループで重要な減損が発生した場合の集約方法 |
減損注記は、単なる定型文では不十分です。投資家が知りたいのは、「どの資産で、なぜ回収できなくなり、どの程度損失を認識し、今後の事業にどう影響するのか」という点にあります。
また、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」は、見積りの不確実性の発生要因に係る注記情報の充実を背景に公表されています。
出典:企業会計基準委員会|企業会計基準第31号 会計上の見積りの開示に関する会計基準
減損損失を計上した場合だけではありません。重要な兆候があり、翌期の仮定変動によって重要な影響が生じるリスクがある場合には、重要な会計上の見積りの注記についても検討する必要があります。
適時開示・業績予想修正との関係
減損損失は、金額規模によっては、決算短信や有価証券報告書だけでなく、適時開示や業績予想修正にも影響します。
JPXの実務要領では、決定または発生した事実の内容が経営成績等に与える影響の程度を踏まえて予想値を新たに算出した場合、「業績予想の修正等」の開示が必要となる場合があるとされています。また、複数の開示項目に該当する場合には、それぞれ軽微基準への該当性を検討する必要があります。
出典:日本取引所グループ|適時開示に関する実務要領
| 減損関連事象 | 開示上の確認 |
|---|---|
| 多額の減損損失 | 業績予想修正、特別損失、決算短信 |
| 店舗・工場閉鎖 | 事業撤退、固定資産除却、リース解約、原状回復 |
| 固定資産譲渡 | 固定資産売却、特別損益、資金使途 |
| のれん減損 | 買収事業の計画未達、M&A後の投資回収 |
| 災害・事故 | 復旧費用、減損、保険収入 |
| 継続企業前提 | GC注記、資金繰り、金融支援 |
| 財務制限条項 | 借入契約、期限の利益、開示影響 |
「減損額が確定してから開示担当に共有する」のでは、間に合わない場合があります。減損測定の過程で、業績予想への重要な影響が見込まれるのであれば、経理、経営企画、開示、IR、監査人が早期に情報を共有しておく必要があります。
KAMとの関係
減損損失の測定は、KAMになりやすい論点です。
金融庁は、KAMについて、2018年7月公表の監査基準改訂により日本の監査実務に導入され、2021年3月期から一部を除く金融商品取引法監査適用会社に対して監査報告書への記載が求められていると説明しています。また、KAMの記載は、監査人が実施した監査の透明性を高め、監査報告書の情報価値を高める意義があるとされています。
出典:金融庁|「監査上の主要な検討事項(KAM)」の実務の定着と浸透に向けた取組みについて
減損測定がKAMになりやすいのは、次の理由によります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 金額的重要性 | 固定資産、のれん、使用権資産、無形資産の残高が大きい |
| 見積り不確実性 | 将来CF、成長率、割引率、処分価額に経営者判断が入る |
| 評価専門性 | 不動産評価、事業価値評価、無形資産評価が関与する |
| 経営判断との近さ | 事業継続、撤退、売却、再編、M&A戦略と直結する |
| 開示影響 | 減損注記、重要な会計上の見積り、業績予想修正に影響する |
| 利用者関心 | 減損額は投資回収失敗や事業計画未達を示す場合がある |
KAM対応では、監査人がどの仮定を重要と見ているかを早期に確認しておくことが有効です。
売上成長率、利益率、稼働率、割引率、キャップレート、処分価額、閉鎖時期、設備更新投資など、監査人が重点的に検証する仮定については、会社側の説明資料でも明確にしておくべきです。
監査対応で問われる事項
減損損失の測定では、監査人から次のような事項を確認されることが多くなります。
| 監査上の問い | 会社側が準備すべき資料 |
|---|---|
| 回収可能価額の種類は妥当か | 正味売却価額・使用価値の選択理由 |
| 使用価値のCFは合理的か | 中期計画、予算、実績推移、受注資料、外部市場データ |
| 計画数値をどう補正したか | 期末時点の情報、計画修正資料、経営会議資料 |
| 成長率は合理的か | 市場成長率、過去実績、競合情報、価格転嫁資料 |
| 割引率は妥当か | WACC、類似会社、リスクプレミアム、国債利回り、評価資料 |
| 不動産評価は妥当か | 鑑定評価書、査定書、取引事例、評価手法 |
| 処分費用は含まれているか | 解体見積、仲介手数料、原状回復見積、撤去費用 |
| 共用資産・のれんの扱いは妥当か | 配分基準、PPA資料、買収時計画、事業別業績 |
| 使用権資産の扱いは妥当か | リース契約、リース期間、閉鎖計画、リース負債資料 |
| 減損損失の配分は合理的か | 配分計算、個別資産の時価、正味売却価額 |
| 注記は十分か | 減損注記、見積り注記、KAM説明資料 |
| 開示タイミングは適切か | 業績予想修正、適時開示検討メモ |
監査対応では、計算シートだけでは不十分です。測定に使った前提が、経営者の意思決定資料、事業計画、開示資料、税効果資料、資金繰り計画と整合しているかを確認しておく必要があります。
実務で誤りやすい判断
減損損失の測定では、次のような誤りが生じやすくなります。
| 誤りやすい判断 | 問題点 |
|---|---|
| 認識判定と測定を混同する | 割引前CFと回収可能価額の役割が曖昧になる |
| 事業計画をそのまま使用価値に使う | 期末時点の情報や外部環境を反映していない可能性 |
| 税金・利息をCFに含める | 適用指針上のCF範囲と整合しない可能性 |
| 会社全体のWACCを機械的に使う | 資産グループ固有リスクを反映していない可能性 |
| 正味売却価額で処分費用を控除しない | 回収可能価額を過大に算定する可能性 |
| 鑑定評価額を無調整で使う | 評価目的・価格時点・処分費用との整合が不足する |
| 減損損失を資産グループ全体で処理し続ける | 構成資産への合理的配分が不足する |
| 土地の時価だけに着目する | 資産グループ全体の回収可能価額との関係を見失う |
| 減損後帳簿価額を個別時価に一致させようとする | 減損会計の目的を誤解している |
| 使用権資産を含め忘れる | 新リース基準適用後の帳簿価額を誤る可能性 |
| のれんを買収時の期待だけで維持する | 買収後実績・シナジー未達を反映していない可能性 |
| 注記を定型文で済ませる | 投資家に測定の不確実性が伝わらない |
減損測定は、結論だけでなく「なぜその測定額になるのか」を説明する領域です。見せたい数字を作るのではなく、説明できる数字を整える。この姿勢が欠かせません。
決算前に整備すべき資料
減損損失の測定を後から説明できるようにするためには、次の資料を整備しておくことが有効です。
| 資料 | 目的 |
|---|---|
| 減損判定メモ | 兆候、認識判定、測定、結論の全体整理 |
| 資産グルーピング資料 | 測定対象単位を明確化 |
| 固定資産台帳 | 帳簿価額、取得日、耐用年数、残存簿価 |
| 使用権資産一覧 | リース関連資産の帳簿価額確認 |
| 中期計画・予算 | 将来CFの基礎資料 |
| 計画実績比較 | 見積り仮定の合理性確認 |
| 月次実績 | 期末時点の最新情報反映 |
| 受注残・契約資料 | 売上見込みの裏付け |
| 市場データ | 成長率、価格、需要、賃料、空室率 |
| 不動産鑑定評価書・査定書 | 正味売却価額の根拠 |
| 処分費用見積 | 解体費、撤去費、原状回復費、売却費用 |
| 割引率算定資料 | WACC、リスクプレミアム、類似会社、国債利回り |
| 感応度分析 | 主要仮定の変動影響 |
| 評価専門家報告書 | 事業価値、不動産、無形資産等の評価根拠 |
| PPA資料 | のれん・識別無形資産との整合確認 |
| 税効果資料 | 減損損失に係る一時差異と回収可能性 |
| 開示検討メモ | 減損注記、見積り注記、業績予想修正 |
| 監査人協議メモ | 争点、会社判断、監査人コメント |
これらの資料は、監査対応のためだけのものではありません。
減損測定は、投資継続、撤退、売却、再編、追加投資といった経営判断とも直結します。会計上の測定資料を、経営判断に耐える資料として整えておくことが重要です。
専門家に相談すべき場面
減損損失の測定は、社内だけで完結できる場合もあります。もっとも、次のような場合には、早期に外部専門家を交えて整理しておくことが有用です。
| 相談を検討すべき場面 | 理由 |
|---|---|
| 回収可能価額の算定額が業績に大きく影響する | 見積りの妥当性が監査・開示上の重大論点になる |
| 正味売却価額と使用価値のどちらを採用すべきか迷う | 回収シナリオの整理が必要 |
| 不動産鑑定評価や事業価値評価が必要 | 評価目的、価格時点、評価手法の確認が必要 |
| のれん・無形資産が大きい | 買収時計画、PPA、シナジーとの整合が必要 |
| 使用権資産を含む店舗・拠点で減損が生じる | リース期間、リース負債、閉鎖計画との整合が必要 |
| 減損損失の配分が複雑 | 土地、建物、共用資産、建設仮勘定への配分判断が必要 |
| 税効果・GC・業績予想と前提がずれている | 複数見積り間の整合性を確認する必要 |
| KAM候補として監査人から示されている | 監査報告まで見据えた資料整備が必要 |
| 適時開示の要否が不明確 | 会計処理と開示時期を同時に検討する必要 |
犬飼公認会計士・税理士事務所では、上場企業・IPO準備企業・大規模グループの固定資産減損会計について、回収可能価額、正味売却価額、使用価値、割引率、不動産評価、評価専門家の利用、のれん、使用権資産、税効果、注記・監査対応まで、一体で整理する支援を行っています。
減損損失の測定額、割引率、不動産評価、評価専門家の利用、監査人への説明資料に不安がある場合は、固定資産台帳、グルーピング資料、認識判定資料、中期計画、評価資料、監査人からのコメントを整理したうえで、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。
重要ポイントの振り返り
| 論点 | 実務上の要点 |
|---|---|
| 減損損失の測定 | 帳簿価額を回収可能価額まで減額し、差額を減損損失とする |
| 回収可能価額 | 正味売却価額と使用価値のいずれか高い方 |
| 正味売却価額 | 時価から処分費用見込額を控除した金額 |
| 使用価値 | 継続使用と使用後処分による将来CFの現在価値 |
| 回収シナリオ | 継続使用か、売却・処分かを実態に基づき整理する |
| 不動産評価 | 評価目的、価格時点、正常価格、処分費用控除を確認する |
| 将来CF | 中期計画をそのまま使わず、外部・内部情報と整合的に修正する |
| CF範囲 | 支払利息、法人税等は原則として含めない |
| 割引率 | CFのリスク反映方法と整合させ、資産グループ固有リスクを検討する |
| 外貨建CF | 通貨、割引率、測定時為替相場の整合に注意する |
| 評価専門家 | 依頼しただけでは足りず、会計目的に合う評価かを会社側で検証する |
| 減損損失の配分 | 帳簿価額比例配分、時価考慮配分など合理的な方法で配分する |
| 土地・不動産 | 減損後帳簿価額が正味売却価額を下回らないよう配分に注意する |
| 建設仮勘定 | 測定時には配分せず、完成時に合理的に配分する取扱いがある |
| 共用資産 | より大きな単位で認識判定・測定し、増加額の配分を検討する |
| のれん | のれんが帰属する事業単位と買収時計画との整合が重要 |
| 使用権資産 | 新リース基準対応後、資産グループとリース期間の整合が重要 |
| 減損後処理 | 減損後帳簿価額を基礎に償却し、減損損失の戻入れは行わない |
| 注記 | 重要な減損損失では、経緯、金額、グルーピング、回収可能価額、割引率等を注記 |
| 適時開示 | 業績予想修正や他の適時開示項目に該当する可能性を早期に検討する |
| KAM | 金額的重要性、見積り不確実性、評価専門性からKAMになりやすい |
| 監査対応 | 計算結果だけでなく、仮定、資料、経営判断、開示影響まで説明する |