加算税・延滞税・不納付加算税の基本
副業収入の申告漏れに気づいた。不動産所得の必要経費を多めに計上していた。期限を過ぎてから確定申告をした。給与や税理士報酬から差し引いた源泉所得税を、納め忘れていた――。
いずれも、本来の税額とは別の負担が生じ得る場面です。ただし、そこで適用される制度は同じではありません。
判断の出発点は、問題が「申告」にあるのか「納付」にあるのか、そして対象が「自分自身の所得税」なのか「支払者として納める源泉所得税」なのかを、まず切り分けることにあります。
期限内に申告はしたものの税額が少なかった場合は、主に過少申告加算税が問題になります。申告期限までに申告書を出していなければ、主に無申告加算税です。税金そのものを期限までに納めていなければ、納付の遅れた日数に応じて延滞税が生じます。
さらに、給与や報酬の支払者として源泉所得税を期限までに納めなかったときには、不納付加算税という、これらとは別の加算税が問題になります。
本稿は、2026年6月25日現在の国税通則法と、国税庁および財務省の公表情報を前提としています。古い年分を扱う場合には、その年分に適用される改正前の税率や経過措置を、別途ご確認ください。
最初に整理したい全体像
| 起きていること | 主に問題となる附帯税 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 期限内申告はしたが、申告税額が少なかった | 過少申告加算税・延滞税 | 修正申告の時期、調査通知の有無、追加本税 |
| 申告期限までに申告書を出していなかった | 無申告加算税・延滞税 | 申告義務の有無、期限後申告の時期、納付額 |
| 申告税額は正しいが、納付が遅れた | 延滞税 | 法定納期限、実際の納付日 |
| 給与・報酬等の源泉所得税を納め忘れた | 不納付加算税・延滞税 | 源泉徴収義務、支払日、納付期限 |
| 隠蔽・仮装を伴う申告・納付漏れがある | 重加算税・延滞税 | 単なる誤りか、隠蔽・仮装があるか |
重加算税は、単なる計算違いや判断誤りとは性質が異なり、隠蔽・仮装があったかどうかが問われる制度です。本稿では通常の加算税と延滞税を取り上げ、重加算税の詳しい判断については、別稿「重加算税と隠蔽・仮装の考え方」に譲ります。
加算税と延滞税は役割が異なる
過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、そして重加算税は、申告・納付の義務が適正に果たされなかった場合に課される、行政上の制裁的な性格を持つ負担です。
一方の延滞税は、税金を期限までに納めなかった期間について生じる、遅延利息に相当する負担です。
両者は役割が異なるため、同じ本税に対して加算税と延滞税が同時に生じることがあります。
たとえば、期限内申告をした後に売上漏れが発覚し、税務調査を経て修正申告をした場合を考えてみます。このときは、追加本税に対する過少申告加算税が課されるだけでなく、その追加本税を実際に納める日までの延滞税も生じ得ます。
ただし、延滞税が対象とするのは本税だけです。過少申告加算税や無申告加算税といった加算税そのものに、さらに延滞税が重ねて課されるわけではありません。附帯税のうち、延滞税は遅延利息的な性格を、各種加算税は行政制裁的な性格を持つものとして区別されます。
出典:e-Gov法令検索|国税通則法
出典:財務省|納税環境整備に関する基本的な資料
過少申告加算税|期限内申告をした後に税額不足が判明した場合
過少申告加算税が問題になる場面
過少申告加算税は、期限内申告書を提出していたものの、その後の修正申告や税務署による更正で、追加して納める税金が生じた場合に問題となります。
代表的な原因としては、次のようなものが挙げられます。
- 副業収入、事業売上、家賃収入の計上漏れ
- 必要経費の過大計上
- 家事関連費の事業割合を過大にしていた
- 修繕費として一括計上した支出が、資本的支出と判断された
- 所得区分を誤り、損益通算できない損失を通算していた
- 源泉徴収税額や税額控除を多く記載していた
- 還付金を本来より多く受けていた
もっとも、一つの誤りだけを取り出して加算税を判断するわけではありません。申告書全体を正しく再計算したうえで、最終的な追加本税がいくらになるかを確定させる必要があります。
過少申告加算税の基本税率
| 修正申告・更正の時期 | 基準額までの部分 | 基準額を超える部分 |
|---|---|---|
| 税務署からの調査通知前に自主的に修正申告 | 課されない | 課されない |
| 調査通知後、調査による更正を予知する前 | 5% | 10% |
| 更正を予知した後の修正申告、または税務署による更正 | 10% | 15% |
ここでいう「基準額」とは、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を指します。追加本税がこの基準額を超える場合、超えた部分に高いほうの税率が適用されます。
たとえば、当初の申告納税額が30万円、追加本税が100万円だったとします。このときの基準額は50万円です。
調査通知後・更正予知前の修正申告であれば、概算では次のようになります。
- 50万円までの部分:50万円×5%=2万5,000円
- 50万円を超える部分:50万円×10%=5万円
- 過少申告加算税の合計:7万5,000円
更正予知後であれば、同じ追加本税100万円でも、概算額は12万5,000円となります。
実際の賦課額は、税額の端数処理、加算・軽減措置、正当な理由が認められる部分の有無などによって変わってきます。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき
出典:財務省|加算税制度の概要①(基本情報)
自主的な修正申告でも延滞税は別に生じる
調査通知の前に自主的に修正申告をすれば、原則として過少申告加算税は課されません。
しかし、追加本税の納付が法定納期限より後になる以上、延滞税までなくなるわけではありません。
「自主的に直せば追加の負担は何もない」のではなく、過少申告加算税は不適用でも、追加本税と延滞税は必要になる、と整理しておくとよいでしょう。
なお、修正申告による追加本税は、修正申告書を提出した日が納期限です。修正申告書だけを提出して、税務署から納付書や通知が届くのを待っていると、その間も延滞税の計算が続いてしまうおそれがあります。
帳簿を提示できない場合等の加重措置
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については、加重措置にも注意が必要です。税務調査で帳簿の提示・提出を求められたにもかかわらず応じなかった場合や、帳簿への売上記載が著しく不足している場合には、過少申告加算税に追加の加重が適用されることがあります。
具体的には、帳簿の不提示等があった場合や、本来記載すべき売上の2分の1以上が記載されていない場合には10%、3分の1以上2分の1未満が記載されていない場合には5%が加算される仕組みです。
申告書の税額だけでなく、日々の記帳と資料保存の状況までもが、申告後の負担に直接影響する制度だといえます。
出典:国税庁|No.2026 確定申告を間違えたとき
出典:財務省|加算税制度の概要②(加重・軽減措置)
無申告加算税|申告期限までに申告しなかった場合
過少申告加算税との分岐点は「期限内申告の有無」
無申告加算税は、法定申告期限までに申告書を提出せず、期限後申告をした場合や、税務署から税額の決定を受けた場合に問題となります。
過少申告加算税との基本的な分かれ目は、当初の申告書を期限内に提出していたかどうかです。
当初申告が期限後申告であった場合、その後さらに申告漏れが見つかって修正申告をしても、原則として無申告加算税の計算体系が引き続き適用されます。「一度申告書を出したのだから、その後は過少申告加算税になる」とは限らない、という点に注意が必要です。
無申告加算税の基本税率
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について、一般的な税率は次のとおりです。
| 期限後申告等の時期 | 50万円以下の部分 | 50万円超300万円以下の部分 | 300万円超の部分 |
|---|---|---|---|
| 調査通知前に自主的に期限後申告 | 5% | 5% | 5% |
| 調査通知後、決定を予知する前 | 10% | 15% | 25% |
| 決定を予知した後、または税務署による決定 | 15% | 20% | 30% |
無申告が前年・前々年にも繰り返されている場合や、過去5年以内に一定の無申告加算税・重加算税を課されている場合には、さらに10%の加重措置が適用されることがあります。
帳簿を提示しない場合や、帳簿への売上記載が大幅に不足している場合にも、過少申告加算税と同様の加重措置が設けられています。
したがって、複数年にわたる無申告や、帳簿がほとんど残っていない事案では、基本税率の表だけで負担額を判断することはできません。
出典:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき
出典:財務省|加算税制度の概要①(基本情報)・②(加重・軽減措置)
1か月以内なら必ず免除されるわけではない
期限後申告であっても、次の要件をすべて満たす場合には、無申告加算税が課されないことがあります。
- 法定申告期限から1か月以内に、自主的に期限後申告をしている
- 納付すべき税金の全額を、原則として法定納期限までに納付している
- 期限後申告書の提出日前5年間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがない
- 同じ無申告加算税の不適用制度を、その5年間に受けていない
単に「申告期限から1か月以内に提出した」というだけでは足りません。納付の状況と過去の申告履歴まで、あわせて確認することになります。
また、そもそも確定申告義務がなければ、無申告加算税の前提となる本税は生じません。副業、複数の給与、株式、不動産の売却などがある場合は、まず申告義務の有無と正しい本税を確定させることが先決です。
出典:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき
延滞税|納付が遅れた日数に応じて生じる負担
申告しただけでは延滞税は止まらない
延滞税は、国税を定められた期限までに納めなかった場合に、原則として法定納期限の翌日から完納日までの日数に応じて、自動的に生じます。
主な対象場面は、次のとおりです。
- 確定申告は期限内に行ったが、納付をしていない
- 期限後申告により納付税額が生じた
- 修正申告により追加本税が生じた
- 税務署から更正・決定を受けた
- 源泉所得税を法定納期限までに納付していない
- 予定納税を期限までに納付していない
延滞税は、税務署が賦課決定をして初めて発生する加算税とは異なります。要件を満たすと、法律上、自動的に確定する性質を持つ点が特徴です。
2026年中の延滞税率
2026年1月1日から2026年12月31日までの期間に適用される割合は、次のとおりです。
| 対象期間 | 2026年中の割合 |
|---|---|
| 納期限までの期間および納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年2.8% |
| 納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 年9.1% |
延滞税の基本的な計算イメージは、次のとおりです。
未納本税額 × 適用年率 × 延滞日数 ÷ 365
もっとも実際には、本税額や延滞税額の端数処理、年をまたぐ場合の年率変更、納期限の種類、計算期間から除かれる期間など、さまざまな要素を考慮します。
なお、期限後申告・修正申告の場合の納期限は、原則として申告書を提出した日です。更正・決定を受けた場合は、通知書を発した日から1か月後の日が納期限となります。
出典:国税庁|No.9205 延滞税について
過年度修正では計算期間の特例がある
期限内申告から1年以上経過した後に修正申告や更正が行われた場合には、一定期間を延滞税の計算期間に含めない特例があります。
期限後申告をした後、さらに1年以上経過してから修正申告や更正が行われた場合にも、同様の特例が設けられています。
ただし、偽りその他不正の行為により税を免れた場合などには、この特例が適用されないことがあります。
このため、過去5年分を修正するようなケースでも、単純に「追加本税×現在の年率×5年間」と計算するのは適切ではありません。年分ごとに、法定納期限、当初申告日、修正申告日、そして延滞税計算の除外期間を、丁寧に整理していく必要があります。
出典:国税庁|No.9205 延滞税について
不納付加算税|源泉所得税を期限までに納めなかった場合
自分の確定申告税額の納付遅れに課されるものではない
不納付加算税は、給与や一定の報酬等を支払う際に源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税を、支払者が法定納期限までに納付しなかった場合に問題となる加算税です。
自分自身の確定申告による所得税を納め忘れた場合に課されるのは、通常、不納付加算税ではなく延滞税です。この点は混同しやすいので、あらかじめ切り分けておきたいところです。
不納付加算税が関係しやすいのは、たとえば次のような支払を行う個人事業者や不動産オーナーです。
- 従業員や青色事業専従者への給与
- 税理士、弁護士等への一定の報酬
- 原稿料、講演料、デザイン料など一定の報酬・料金
- 非居住者への一定の国内源泉所得の支払
源泉徴収は、原則として対象となる所得を現実に支払う時に行います。そして源泉徴収した所得税等は、通常、その支払月の翌月10日までに納付します。
なお、給与等の支給人員が常時10人未満である場合には、税務署長の承認を受けることで、一定の源泉所得税を年2回にまとめて納付できる「納期の特例」があります。
出典:国税庁|新たに源泉徴収義務者になられた方へ
不納付加算税の基本税率
| 納付の状況 | 基本的な取扱い |
|---|---|
| 税務署の納税告知を受けた場合、または告知があるべきことを予知して納付した場合 | 10% |
| 納税告知を受ける前に、告知を予知せず自主的に納付した場合 | 5% |
| 正当な理由がある場合 | 課されない |
| 法定納期限から1か月以内に納付し、期限内納付の意思があったと認められる所定の要件を満たす場合 | 課されない |
法定納期限から1か月以内に納付すれば、それだけで自動的に免除されるわけではありません。過去の納付状況など、政令で定められた要件もあわせて確認する必要があります。
また、源泉所得税を支払先から差し引くこと自体を忘れていた場合でも、源泉徴収義務があれば、支払者側に本税の納付義務と不納付加算税が生じる可能性があります。
不納付加算税とは別に、源泉所得税の法定納期限の翌日から納付日までの延滞税も生じ得ます。つまり源泉所得税の納付漏れでは、本税・不納付加算税・延滞税の三つを分けて把握しておく必要があります。
出典:財務省|加算税制度の概要①(基本情報)
出典:国税庁|源泉所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)
「正当な理由」は単なる事情説明ではない
過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税には、それぞれ「正当な理由」がある場合の不適用規定が置かれています。
ただし、ここでいう正当な理由は、「悪気はなかった」「忙しかった」「制度を知らなかった」といった主観的な事情だけで認められるものではありません。
過少申告加算税に関する判例上の考え方では、正当な理由が認められるのは、おおむね次の二つを満たす場合と整理されています。
- 真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情がある
- その事情の下で加算税を課すことが、不当または酷になる
無申告加算税についても、基本的には同様の厳格な考え方が採られています。
不納付加算税について、国税庁の事務運営指針では、正当な理由が認められ得る例として、次のような事情が挙げられています。
- 支払後に税法上の取扱いが新たに公表され、それ以前の解釈に相当な理由があった
- 従業員から提出された扶養控除等申告書等に基づく処理について、支払者に責任がない
- 十分な余裕をもって金融機関へ納付を依頼したにもかかわらず、金融機関の事務処理誤りにより遅れたことが証明された
- 災害、交通・通信の途絶など、期限内納付が真に不可能であった
一方で国税庁は、単なる税法の不知・誤解や事実誤認は、正当な理由には当たらないと明示しています。
資金不足、会計担当者への任せきり、税理士に資料を渡したつもりだった――こうした事情も、それだけで当然に正当な理由になるわけではありません。納税者本人、あるいは源泉徴収義務者に、どのような確認・管理の行動があったかまで検討されることになります。
正当な理由を主張する場合には、口頭の説明だけでなく、次のような客観資料を整えておくことが欠かせません。
- 税務署や専門家との連絡記録
- 金融機関への依頼日と処理経過を示す証明
- システム障害の記録
- 災害・通信障害等の公的記録
- 医療記録や入院期間
- 申告・納付の準備状況を示す帳簿、メール、作業履歴
- いつ誤りに気づき、いつ是正作業を始めたかを示す時系列表
出典:国税庁|源泉所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)
「調査通知」と「更正・決定の予知」で税率が変わる
加算税を見積もるうえでは、単に「税務署から連絡があったかどうか」だけを見ていては足りません。
実務上は、少なくとも次の三段階に分けて考えます。
1.調査通知前
税務署から調査を行う旨等の通知を受ける前に、自ら誤りを把握して修正申告をした場合、過少申告加算税は原則として課されません。
無申告の場合は、調査通知前に自主的に期限後申告をしても、原則として5%の無申告加算税が課されます。
2.調査通知後・更正等の予知前
税務署から調査通知を受けた後であっても、調査による更正・決定を予知する前に是正した場合には、通常税率より低い税率が適用されます。
これは「実地調査の当日より前なら自主申告扱いになる」という意味ではありません。実際に税務署が訪問する前でも、調査通知が行われた時点で段階が切り替わります。
3.更正・決定を予知した後
調査が進み、具体的な申告漏れ等が把握され、更正・決定を受けることを認識したと評価される段階では、通常税率が適用されます。
「予知」がいつ生じたかは、調査官がどのような質問・指摘をしたか、どの資料を確認していたか、納税者が何を認識していたか、といった事情から判断されます。単に税務署から電話があった日と、機械的に一致するものではありません。
行政指導による連絡か、税務調査かも確認する
税務署から「申告書に誤りがないか確認してほしい」と電話が来た場合でも、それが国税通則法上の税務調査であるとは限りません。
計算誤り、転記誤り、記載漏れなどについて、自発的な見直しを求める行政指導であることもあります。
行政指導に基づいて自主的に修正申告をした場合、当初申告が期限内申告であれば、原則として過少申告加算税は課されません。ただし、追加本税と延滞税は生じることがあります。
国税庁は、税務署担当者が調査または行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、そのどちらに当たるかを納税者へ明示するとしています。
税務署から連絡を受けたときは、感情的に対応したり、その場で数字を回答したりする前に、次の事項を記録しておくことをおすすめします。
- 連絡を受けた日時
- 税務署名、部署、担当者名
- 行政指導か税務調査か
- 対象税目
- 対象年分・対象期間
- 確認を求められた取引・資料
- 調査通知が行われた日時
- 回答期限
- 税理士への連絡の可否・時期
誤りや納付漏れに気づいたときの実務手順
1.税目・年分・納期を特定する
まず最初に、何の税金に問題があるのかを切り分けます。
所得税の確定申告だけでなく、次の税目も確認しておきます。
- 消費税および地方消費税
- 源泉所得税および復興特別所得税
- 予定納税
- 住民税・個人事業税への波及
- 国民健康保険料等の所得連動負担
一つの売上漏れが、所得税と消費税の両方に影響することもあります。給与や外注費の区分誤りから、所得税、消費税、源泉所得税が同時に問題になる場合もあります。
2.まず正しい本税を再計算する
加算税を先に計算しても、本税が正しくなければ意味がありません。
対象年分について、次の事項を改めて確認します。
- すべての収入
- 所得区分
- 売上計上時期
- 必要経費
- 家事関連費の按分
- 減価償却
- 所得控除・税額控除
- 源泉徴収税額
- 損益通算・繰越損失
- 消費税の課税・非課税区分
- 給与・外注・報酬の区分
このとき、誤りを税額が下がる方向だけで拾うのではなく、増額要因と減額要因の双方を洗い出すことが大切です。
3.税務署との接触経過を時系列にする
加算税率は、調査通知や更正等の予知の時期によって変わります。
そこで、次の時点を時系列表に落とし込みます。
- 自分が誤りに気づいた日
- 帳簿や資料の再確認を始めた日
- 税理士へ相談した日
- 税務署から最初に連絡を受けた日
- 調査または行政指導と明示された日
- 調査通知を受けた日
- 具体的な非違事項を指摘された日
- 修正申告・期限後申告を提出した日
- 本税を納付した日
後から記憶だけで整理しようとすると、加算税率の判断に必要な事実があいまいになりがちです。早めに書き出しておくとよいでしょう。
4.本税・加算税・延滞税を分けて資金準備する
必要になる資金は、追加本税だけではありません。
概算では、次の順で整理します。
追加本税
+過少申告加算税または無申告加算税
+延滞税
+源泉所得税の不納付加算税
+住民税・個人事業税等の後続負担
申告書を提出できても、納付資金がなければ延滞税の負担は続きます。申告内容の再計算と並行して、納税資金の確認も進めておく必要があります。
5.申告と本税納付を同時に進める
期限後申告書や修正申告書を提出する場合、その提出日が追加本税の納期限となります。
本税を納付できる状態にしたうえで提出し、e-Taxの受信通知、納付記録、振込記録等を保存しておきます。
加算税については、後日、税務署から賦課決定通知書が届くことがあります。本税の納付は、その通知を待つものではない、という点に注意してください。
6.再発防止を翌年の運用へ反映する
附帯税への対応を、その年分の修正だけで終わらせないことも大切です。
- 事業用口座と家計口座を分ける
- 売上入金と請求書を毎月照合する
- 年末ではなく月次で未収入金を確認する
- 給与・報酬の支払時に源泉徴収の判定を行う
- 源泉所得税の納付期限をカレンダーで管理する
- 納税資金を別口座へ積み立てる
- 電子取引データと紙資料を、同じルールで保存する
- 申告前に、前年申告書との比較レビューを行う
原因が所得区分や契約実態にある場合は、入力ミスの修正だけでは再発を防げません。契約、請求方法、口座、帳簿科目、証憑保存まで、あわせて見直す必要があります。
加算税・延滞税でよくある誤解
「故意ではないから加算税はかからない」
通常の過少申告加算税や無申告加算税は、隠蔽・仮装がなくても課され得ます。
故意や不正行為の有無が大きな意味を持つのは、主に重加算税との関係です。単なる誤りであれば何の負担もない、という制度ではありません。
「修正申告を提出すれば延滞税は止まる」
延滞税は、原則として本税を完納した日まで計算されます。
申告書を提出しただけでは、未納の状態は解消されません。
「税務署から納付書が届いてから払えばよい」
修正申告・期限後申告による本税は、原則として申告書の提出日が納期限です。
通知を待っている間にも、延滞税が増えていく可能性があります。
「税理士や家族に任せていたので正当な理由になる」
申告や納付を他者に任せていたという事情だけで、正当な理由が認められるとは限りません。
誰に何を依頼し、どの資料をいつ渡し、本人がどこまで確認していたか――そこまでが問われます。
「確定申告の納付遅れにも不納付加算税がかかる」
不納付加算税は、主に源泉徴収等による国税の納付漏れを対象とする制度です。
自分自身の確定申告税額の納付遅れでは、通常、延滞税が問題になります。
専門家への相談を早めに検討したい場面
次のような状況では、申告書の作り直しだけでなく、附帯税の適用関係、税務署との接触時期、関連する年分・税目まで、あわせて整理する必要があります。
- 複数年分に申告漏れがある
- 税務署から調査または行政指導の連絡を受けている
- 調査通知の前後が分からない
- 「更正・決定を予知した後」に当たるか判断しにくい
- 期限内申告か期限後申告かを確認できない
- 売上漏れと経費漏れが同時にある
- 所得区分や損益通算の判断から見直す必要がある
- 消費税の申告漏れも疑われる
- 給与・外注・報酬の区分に誤りがあり、源泉所得税も関係する
- 源泉所得税を複数月にわたり納めていない
- 帳簿や通帳、契約書、請求書が不足している
- 正当な理由に該当し得る客観的事情がある
- 追加本税と附帯税の納税資金に不安がある
早期相談の目的は、加算税を必ず減らすことにあるのではありません。正しい本税を確定し、適用される手続と税率を誤らず、説明に必要な資料を保全し、納付までの時間を無用に延ばさないことにあります。
重要事項の振り返り
| 論点 | 基本的な整理 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内申告後に追加本税が生じた場合 | 調査通知前・通知後・更正予知後で税率が変わる |
| 無申告加算税 | 申告期限までに申告しなかった場合 | 追加本税300万円超には高い税率があり、連年無申告等の加重もある |
| 延滞税 | 税金を期限までに完納しなかった場合 | 申告書提出ではなく、本税を完納するまで計算される |
| 2026年の延滞税率 | 一定期間は年2.8%、その後は年9.1% | 年をまたぐ場合や過年度修正では計算が複雑になる |
| 不納付加算税 | 源泉所得税等を期限までに納めなかった場合 | 通常10%、自主納付は5%、所定の不適用制度がある |
| 正当な理由 | 納税者の責めに帰せない客観的事情等が必要 | 忙しさ、制度の不知、単なる誤解だけでは認められにくい |
| 調査通知 | 加算税率が変わる重要な時点 | 実地調査日より前でも、通知時点で段階が変わる |
| 更正・決定の予知 | 調査により是正処分を受けることを認識した段階 | 具体的事実から判断され、単純な日付だけでは決まらない |
| 行政指導 | 税務調査とは異なる自主的見直しの要請 | 修正申告では延滞税が生じても、過少申告加算税は原則不適用 |
| 帳簿・資料 | 加算税の判断と正当な理由の立証に必要 | 帳簿不提示や著しい記載不足には加重措置がある |
| 納税資金 | 本税だけでなく附帯税も含めて準備 | 住民税・事業税等の後続負担も見込む |
| 重加算税 | 隠蔽・仮装がある場合に通常の加算税に代えて問題となる | 単なる誤りとの区別は別途慎重に判断する |
申告漏れや納付遅れを、事実と資料から整理したい方へ
申告や納付の遅れに気づいたときは、「何%の加算税がかかるか」だけを先に調べるのではなく、申告義務、正しい本税、当初申告の時期、税務署との接触経過、源泉徴収義務、帳簿・証憑の状態を、一つずつ確認していく必要があります。
特に、複数年分の申告漏れ、税務署からの連絡、源泉所得税の納付漏れ、所得区分や必要経費の再検討などが重なっている場合は、自己判断で一部だけを修正すると、別の年分や税目に不整合が残ってしまうことがあります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、当初申告書、帳簿、通帳、契約書、請求書、給与・報酬の支払資料、税務署との連絡記録等を確認し、本税・加算税・延滞税を分けながら、どの事実をどの資料で説明すべきかを整理します。
「自主的な修正として扱われるのか確認したい」「税務署から連絡が来たが、調査か行政指導か分からない」「源泉所得税の納付漏れを含めて全体を見直したい」といった段階でも、当事務所HPのお問い合わせページからご相談いただけます。