青色事業専従者給与・家族への支払の注意点|家族に給与を払えば経費になるとは限らない

個人事業や副業が軌道に乗ってくると、配偶者、親、子、兄弟姉妹といった家族に仕事を手伝ってもらう場面が増えてきます。

受付や経理、請求書の作成、発送、SNS運用、店舗対応、現場の補助、資料整理、予約管理、顧客対応。こうした業務を家族が実際に担い、事業を支えているというケースは、決して珍しくありません。そこで多くの方が一度は考えるのが、「家族に給与を払えば、その分を経費にできるのではないか」という点だと思います。

ただ、個人事業における家族への支払は、第三者に対する給与や外注費とまったく同じようには扱われません。

理由は、それほど複雑ではありません。家族の間では、仕事の実態も、勤務時間も、給与額も、支払の事実そのものも曖昧になりやすく、結果として事業主の所得を家族に形式的に移し替えるだけの処理になりやすいからです。

税務上で本当に大切なのは、「家族だから経費にできる」という発想でも、逆に「家族だから一切経費にならない」という決めつけでもありません。その家族が、どの事業に、どの程度、どのような職務で従事しているのか。そして、その給与額が労務の対価としてきちんと説明でき、届出や記録が整っているのか。問われているのは、この一点に尽きます。

本記事では、個人事業・副業における青色事業専従者給与、白色申告の事業専従者控除、家族への支払、源泉徴収、資料の保存、そして税務調査で見られやすいポイントを、順を追って整理していきます。

目次

この記事で扱う範囲

ここでは、個人事業者・副業者が配偶者や親族に給与等を支払う場合の、所得税上の判断を中心に取り上げます。

扱う内容主な論点
家族への給与の基本生計を一にする親族への支払は原則として制限される
青色事業専従者給与青色申告者が、一定要件を満たす親族に支払う給与
白色申告の事業専従者控除実際の給与支払額ではなく、一定額を控除する制度
専従性「手伝っている」ではなく、事業に専ら従事しているか
届出青色事業専従者給与に関する届出書の期限・記載内容
金額の相当性職務内容、勤務時間、事業規模、同種同規模の給与水準
支払実態給与明細、振込、タイムカード、業務日報、賃金台帳
扶養控除等との関係専従者は同一生計配偶者・扶養親族になれない
源泉徴収給与支払者としての義務、納期の特例、年末調整
家族への外注費等給与以外の名目で支払う場合の注意点

一方で、労働基準法や社会保険、雇用保険、家族従業員の労務管理、あるいは医療法人化・法人成り後の役員報酬といった詳細には、本記事では深く立ち入りません。これらは、外注費・給与・報酬の区分と源泉徴収、給与・外注・専従者に関する源泉徴収、個人事業が拡大したときの税務判断と法人成り前の整理といった、別のコラムで整理すべき領域だからです。

家族への給与は、なぜ普通の給与と同じに扱われないのか

個人事業には、事業主本人と家計とを完全には切り離しにくい、という構造的な特徴があります。

家族が事業を手伝っていても、実際には次のような点が曖昧になりがちです。

曖昧になりやすい点税務上の問題
いつ働いたか分からない専従性や労務提供の実態を説明できない
何を担当したか分からない給与額が職務内容に見合うか判断できない
給与を実際に払っていない所得分散だけに見える
家計口座内で資金移動している支払実態が不明確になる
他の仕事や学校がある事業に専ら従事しているか疑義が生じる
給与額を利益に応じて後から決める労務の対価ではなく所得調整に見える

所得税の基本的な考え方では、生計を一にする配偶者その他の親族が事業に従事していても、その人に支払う給与は原則として必要経費になりません。ただし、その例外として、青色事業専従者給与と、白色申告の事業専従者控除という二つの特別な取扱いが用意されています。
出典:国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

つまり家族への支払は、通常の従業員給与と同じ感覚で処理してよいものではありません。まずは、「家族間の支払について認められた特別ルールに、そもそも当てはまるのか」を確認する必要があるのです。

まず押さえるべき制度の全体像

家族が事業を手伝う場合の所得税上の扱いは、大きく次の3つに分かれます。

申告・関係事業主側の処理家族側の扱い
青色申告で要件を満たす青色事業専従者給与として必要経費を検討給与所得
白色申告で要件を満たす事業専従者控除として一定額を控除みなし給与的に扱われる
要件を満たさない原則として必要経費にできない支払名目だけでは判断不可

青色申告であれば、要件を満たしたうえで届出を行い、その届出内容に従って支払った給与のうち、相当と認められる額を必要経費にできる可能性があります。

白色申告の場合は、少し性質が異なります。実際に支払った給与をそのまま必要経費にする制度ではなく、一定の計算による事業専従者控除を適用する形になります。

そして要件を満たさないときは、たとえ家族に実際にお金を渡していたとしても、事業主側の必要経費としては認められない可能性があります。

青色事業専従者給与とは

青色事業専従者給与とは、青色申告者が、生計を一にする配偶者その他の親族で、その事業に専ら従事している人に支払う給与のうち、一定の要件を満たすものを必要経費に算入できる制度です。

具体的には、青色申告者が、生計を一にする配偶者その他の親族(15歳未満の人を除きます)で、専らその事業に従事している人に給与を支払っている場合、その支払額のうち相当と認められる金額を必要経費にできる、という仕組みになっています。
出典:国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

青色事業専従者給与として認められるには、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。

要件確認すべきこと
青色申告者であること青色申告承認申請が有効か
生計を一にする親族であること配偶者、親、子などで同一生計か
年齢要件その年12月31日現在で15歳以上か
専従性その年を通じて6か月超、一定の場合は従事可能期間の2分の1超、専ら事業に従事したか
届出青色事業専従者給与に関する届出書を期限内に提出したか
届出内容との一致職務内容、給与額、支給期、賞与等が届出の範囲内か
金額の相当性労務の対価として過大でないか
支払実態実際に給与として支払われているか

言い換えれば、青色事業専従者給与は「青色申告さえしていれば家族給与を自由に経費にできる」という制度ではないということです。届出、勤務実態、金額、支払方法。この4つがそろって、はじめて検討の土俵に乗る制度だと考えてください。

青色事業専従者給与の3つの基本要件

青色事業専従者となる人については、次の3つが基本要件とされています。青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること、その年12月31日現在で15歳以上であること、そしてその年を通じて6か月を超える期間(一定の場合には事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)、その事業に専ら従事していることです。
出典:国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

生計を一にする親族であること

「生計を一にする」とは、同居しているかどうかだけで機械的に決まるものではありません。

同じ家計で生活しているか、生活費や学資金、療養費などの負担関係があるか。こうした実態から総合的に判断します。

一般的には、配偶者や同居の子は生計一と判断されやすい傾向にあります。一方で、独立して生活している兄弟姉妹や、別生計の子については、単に親族であるというだけでは該当しません。

ここで押さえておきたいのは、青色事業専従者給与はあくまで「生計を一にする親族」についての特別ルールだ、という点です。

もし別生計の親族が、独立した事業者として仕事を請け負っているのであれば、青色事業専従者給与ではなく、外注費や業務委託費として検討する余地が出てきます。ただしその場合も、契約の内容、成果物、請求書、支払の実態、価格の相当性、そして源泉徴収や消費税の扱いまで、あわせて確認しておく必要があります。

15歳以上であること

その年の12月31日現在で15歳以上であることが求められます。

15歳以上で実際に事業へ従事していれば、未成年であっても直ちに排除されるわけではありません。ただし学生の場合は、どうしても専従性が問題になりやすくなります。

たとえば、学校に通いながら週末だけ手伝っている子に、毎月まとまった給与を支払う。こうした処理は、専従性という観点から慎重に見ておく必要があります。

事業に専ら従事していること

3つの要件のなかで、最も重要なのが「専ら従事」しているかどうかです。

単なる手伝いや、繁忙期だけの補助、月に数回の入力作業、あるいは家族としての協力。この程度では、青色事業専従者として説明するのが難しい場合があります。

実務のうえでも、学校に通っている場合、他の職場で働いている場合、病気や入院で従事できない期間がある場合などは、専従性の確認が欠かせません。とりわけ、他の勤務先で相当な時間働いている配偶者や親族については、それでも事業に専ら従事していると説明できるのかを、慎重に検討する必要があります。

状況判断上の注意点
毎日、受付・経理・顧客対応を担当している専従性を説明しやすい
週1回だけ入力作業をしている専ら従事とは言いにくい
他社でフルタイム勤務している原則として専従性に疑義
夜間学校に通い、日中は事業に従事個別確認
家事の合間に時々手伝う専従者給与としては慎重
繁忙期だけ集中的に手伝う事業の性質と従事期間を確認
退職後、年の中途から事業に従事従事可能期間の2分の1超の確認

参考になるのが、会社勤務をしていた親族が8月に退職し、その後、父の個人事業に従事したという事例です。この場合、退職時から年末までを従事可能期間ととらえ、そのうち2分の1を超える期間、専ら事業に従事していれば、支払った給与を青色事業専従者給与として必要経費に算入できるとされています。
出典:国税庁|年の中途で事業に従事した親族に係る青色事業専従者給与

このように、単に「6か月」という数字だけを追うのではなく、その人が実際に事業に従事できた期間はどれだけあり、そのうち専ら従事した期間がどれだけだったのか。そこを丁寧に整理することが大切です。

届出書を出していなければ、原則として青色事業専従者給与にはできない

青色事業専従者給与で、特に見落としてはいけないのが届出です。

青色事業専従者給与に関する届出書は、原則として、その年の3月15日までに提出しなければなりません。年の途中で開業した場合や、新たに専従者がいることになった場合は、その開業の日、あるいは専従者がいることになった日から2か月以内に提出します。
出典:国税庁|A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続

届出書には、おおむね次のような事項を記載します。

記載事項実務上の意味
専従者の氏名・続柄誰に支払う給与か
年齢15歳以上か
仕事の内容受付、経理、販売、制作、発送など
従事の程度毎日何時間、週何日、どの時期に従事するか
資格等業務に関係する資格・経験
給料の支給期毎月何日に支払うか
給料の月額必要経費にする上限の基準
賞与支給時期・支給基準
昇給の基準どのような基準で増額するか
他の職業・就学等専従性に影響する事情
類似する使用人の給与金額の相当性を説明する材料

届出書の様式そのものにも、仕事の内容や従事の程度、資格等、給料、賞与、昇給の基準、他の職業の併有、類似する使用人の給与水準などを記載する欄が設けられています。

出典:国税庁|青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

この届出書は、単なる形式的な書類ではありません。後になって、「どのような職務に対して、どの程度の給与を支払う予定だったのか」を説明するための、いわば基礎資料です。だからこそ、丁寧に書いておく意味があります。

届出書に書いた金額は「経費にできる上限」であって、安全圏ではない

青色事業専従者給与について、実務でよく耳にする誤解があります。「届出書に月額30万円と書いておけば、30万円までは必ず経費になる」というものです。

これは、正しくありません。

必要経費となる青色事業専従者給与の額は、支給した給与が、専従者の労務に従事した期間、労務の性質と程度、他の使用人や同種同規模事業の給与水準、事業の種類・規模・収益状況などからみて相当と認められ、しかも届出書に記載した金額の範囲内であるものに限られます。
出典:国税庁|A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続

つまり届出書に記載した金額は、あくまで必要経費として認められる可能性のある上限にすぎません。その金額まで無条件に認められる、という保証ではないのです。

観点確認すべきこと
勤務時間実際の従事時間に見合うか
職務内容受付、経理、営業、制作、管理などの難易度
責任範囲単純作業か、責任者としての業務か
資格・経験専門資格や実務経験が給与額に反映されているか
他の従業員との比較同じ仕事をする第三者より高すぎないか
同業他社との比較同種同規模の事業の給与水準と大きく乖離しないか
事業規模売上・利益に対して過大でないか
支払能力事業の収益状況から見て不自然でないか

たとえば、月に数時間だけ領収書の整理をしている配偶者に、月額30万円を支払う。これは、労務の対価として説明するのが難しいでしょう。

反対に、毎日店舗に立ち、予約管理、現金管理、仕入管理、顧客対応、さらにはスタッフの管理まで担っている配偶者に、事業規模や同種業務の給与水準に見合う金額を支払うのであれば、説明できる余地は十分にあります。

実務上も、専従者給与は税務調査で確認されやすい項目です。給与明細、タイムカード、業務日報といった客観的な資料を残しておくことが、何よりの備えになります。

賞与・手当・増額にも届出と相当性が必要

青色事業専従者給与で注意が必要なのは、月額給与だけではありません。賞与や手当についても、同じように配慮が求められます。

届出書には、給料だけでなく、賞与の支給期や支給基準を記載する欄があります。賞与を支払う予定があるのなら、届出の段階で、その支給時期や基準を整理しておくべきです。

支払項目注意点
月額給与届出金額の範囲内か、実態に合うか
賞与届出に支給期・基準が記載されているか
昇給通常の昇給基準を超える増額なら変更届出が必要
時間外手当実際の勤務記録が必要
通勤手当通勤実態、金額の合理性を確認
役職手当職責や権限があるか
退職金個人事業の専従者への扱いは慎重な確認が必要

届出書の書き方としても、給与規程を変更する場合、通常の昇給の枠を超えて給与を増額する場合、新たに専従者が加わった場合には、遅滞なく変更届出書を提出することとされています。
出典:国税庁|青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

利益が出たからと年末に急いで家族の給与を増やす、賞与を後付けで決める、届出にない支払を行う。こうした処理は、どうしても所得調整と見られやすくなります。避けておくのが賢明です。

白色申告の場合は「実際に支払った給与」を経費にする制度ではない

白色申告の場合、生計を一にする配偶者その他の親族に支払った給与等を、そのまま必要経費に算入することはできません。

ただし、その親族が専ら事業に従事しているのであれば、事業専従者控除として、一定額を必要経費として差し引くことができます。

具体的には、配偶者であれば最高86万円、15歳以上のその他の親族であれば最高50万円を、必要経費として差し引ける仕組みです。
出典:国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

事業専従者控除額は、次のいずれか低い金額となります。

区分控除額
配偶者86万円
配偶者以外の親族1人につき50万円
所得制限による上限控除前の事業所得等の金額 ÷ 事業専従者数+1

白色申告の事業専従者控除もまた、家族が専ら事業に従事していることが前提です。「白色申告なら届出も不要で、家族給与を自由に経費にできる」という制度ではない点に、注意してください。

専従者は配偶者控除・扶養控除の対象にならない

家族への給与を検討するとき、意外と見落としやすいのが、扶養控除等との関係です。

青色事業専従者として給与の支払を受ける人、あるいは白色申告者の事業専従者である人は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。
出典:国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

これは、給与額が少ない場合でも変わりません。

たとえば、配偶者が青色事業専従者として年間84万円の給与を受けているケースでも、別の所得者の控除対象配偶者にはできない、という取扱いになります。
出典:国税庁|青色事業専従者である妻

家族の状態控除との関係
青色事業専従者給与を受ける配偶者同一生計配偶者・控除対象配偶者になれない
白色事業専従者扶養親族等になれない
専従者ではない配偶者所得要件等を満たせば配偶者控除等を検討
別生計の親族扶養控除・外注費等は実態により別判断

専従者給与で事業所得を下げることだけに目を向けていると、配偶者控除や扶養控除、住民税、国民健康保険、社会保険上の扶養といった周辺への影響を見落としがちです。家族全体の税負担や社会保険負担まで見渡したうえで、判断することが欠かせません。

不動産所得では「事業的規模」かどうかにも注意する

本記事は個人事業・副業を中心に扱っていますが、不動産所得がある方も、注意しておきたい点があります。

不動産所得の場合、青色事業専従者給与や白色申告者に係る事業専従者控除額は、不動産の貸付けが事業として行われているときには適用があります。しかし、それ以外の場合には適用がありません。
出典:国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

ですから、アパート数室、駐車場数台、小規模な賃貸といった規模で、配偶者が入金確認や清掃手配をしている場合でも、直ちに青色事業専従者給与を適用できるとは限らないのです。

不動産の状況専従者給与の注意点
事業的規模の不動産貸付要件を満たせば検討余地あり
小規模な不動産貸付専従者給与の適用は慎重
家族が管理業務をしている管理実態・時間・報酬相当性を確認
管理会社に委託している家族の労務実態が薄くなりやすい
共有不動産誰の事業か、誰が支払うかも確認

不動産所得に関する専従者給与は、事業的規模かどうかに加えて、管理の実態、共有関係、管理委託契約、そして家族の職務内容まで、あわせて確認する必要があります。

家族への支払を「外注費」にすればよいわけではない

青色事業専従者給与の要件が厳しいため、家族への支払を「外注費」「業務委託費」「手数料」として処理したい、と考える方もいらっしゃいます。

しかし、名目を変えれば経費になる、というものではありません。

税務上は、支払の名目ではなく、あくまで実態を見ます。

支払名目確認すべき実態
給与指揮命令、勤務時間、継続的労務提供
外注費独立性、成果物、契約、請求書、危険負担
業務委託費契約内容、業務範囲、報酬計算、再委託可否
手数料具体的な成果や役務提供の内容
地代家賃使用場所、賃貸借契約、相場、支払実態
借入利息金銭消費貸借契約、利率、返済実態

とりわけ、生計を一にする配偶者や親族が、事業主の指示のもとで日々の業務をこなしている場合。形式的に請求書を発行して外注費にしたとしても、実態としては給与、あるいは家族労務の提供と見られる可能性があります。

反対に、別生計の親族が独立して事業を営み、他の取引先にも同じサービスを提供していて、契約書・請求書・成果物・入金記録がきちんと整っているのであれば、外注費として検討できる場面もあります。

この境界をどう見極めるかは、外注費・給与・報酬の区分という論点へとつながっていきます。

家族への給与は、源泉徴収・年末調整の対象になる

青色事業専従者給与は、事業主の側では「必要経費になるかどうか」が問題になります。ですが、支払を受ける家族の側から見れば、それは給与所得です。

つまり事業主は、「給与の支払者」として、源泉徴収、給与明細、源泉徴収簿、扶養控除等申告書、年末調整、給与支払報告書といった実務まで確認しておく必要があるということです。

源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。
出典:国税庁|No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

給与支払者として確認すべき事項を整理すると、次のとおりです。

項目確認内容
給与支払の開始給与支払事務所等の届出、開業届との関係
扶養控除等申告書家族従業員から提出を受けるか
源泉徴収税額表月額表・日額表、甲欄・乙欄の確認
源泉徴収簿毎月の給与・控除・源泉税を記録
納付原則翌月10日、納期の特例なら年2回
年末調整要件を満たす給与所得者について実施
源泉徴収票年末調整後または退職時に交付
給与支払報告書市区町村への提出
法定調書提出対象者の確認

なお、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請により、1月から6月分を7月10日に、7月から12月分を翌年1月20日にまとめて納付する「納期の特例」を受けられる場合があります。
出典:国税庁|A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

また、給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設・移転・廃止した場合には、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出が必要かどうかを確認します。個人事業の開業届との関係で、別途の提出が不要となる場面もあります。開業時や給与の支払開始時に、あわせて確認しておくとよいでしょう。
出典:国税庁|A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

給与は消費税の課税仕入れではない

青色事業専従者給与は、所得税上の必要経費になるかどうかが中心の論点ですが、消費税の処理も混同しやすいところです。

結論から言えば、給与等の支払は、消費税の課税仕入れにはなりません。

給与等の支払が課税仕入れにならない一方で、加工賃や人材派遣料のように、事業者が行う労働やサービス提供の対価は消費税の課税対象になります。ここは、線を引いて理解しておく必要があります。
出典:国税庁|No.6451 仕入税額控除の対象となるもの

支払消費税上の扱い
青色事業専従者給与課税仕入れではない
従業員給与課税仕入れではない
外注費内容により課税仕入れになり得る
人材派遣料課税仕入れになり得る
税理士報酬課税仕入れになり得る
家族への形式的外注費実態確認が必要

消費税の負担を軽くしたいからと、家族給与を外注費にしたい。この発想は、危険です。給与なのか外注なのかは、消費税の有利不利ではなく、契約の実態、独立性、指揮命令、成果物、支払の実態から判断すべきものだからです。

支払実態を残すための資料

青色事業専従者給与で最も避けたいのは、「申告書には給与を入れているのに、実際にどう働き、どう支払ったのかを説明できない」という状態です。

そのために、少なくとも次の資料は残しておきましょう。

資料役割
青色事業専従者給与に関する届出書対象者、職務内容、給与額、支給期の確認
変更届出書増額・賞与・専従者追加の確認
給与明細毎月の支給額、控除額の確認
賃金台帳給与支払の継続記録
源泉徴収簿源泉所得税・年末調整の記録
タイムカード・出勤簿勤務日・勤務時間の確認
業務日報担当業務・業務量の確認
職務分掌表家族の役割と責任範囲の確認
振込明細実際の支払実態の確認
事業用口座の通帳事業資金から給与を払った記録
給与規程昇給・賞与・手当の基準
他の従業員の給与資料金額の相当性の比較
同業の給与水準資料過大給与でないことの補助資料
年末調整関係書類扶養控除等申告書、源泉徴収票等

給与計算については、勤怠から給与計算、給与明細、振込、会計連動まで、一連の流れをデータで行えるクラウドシステムも増えてきました。実務としては、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、扶養控除等申告書などを整えたうえで、給与明細や年末調整書類と会計データをつないで保存しておく。これが、後から説明できる給与処理へとつながっていきます。

税務調査で確認されやすいポイント

青色事業専従者給与や家族への支払は、税務調査でも確認されやすい項目です。

なかでも、次のような点はよく問われます。

確認ポイント問われる内容
専従者の勤務実態本当に事業に従事していたか
専従性他の勤務、就学、家事、私用との関係
職務内容何を担当していたか
勤務時間給与額に見合う時間働いているか
給与額労務の対価として相当か
届出書期限内提出、記載内容との一致
支払方法現金手渡しか、振込か、記録があるか
源泉徴収税額計算、納付、年末調整
扶養控除専従者を扶養に入れていないか
外注費処理家族への支払を外注費にしていないか
事業規模利益に比べて給与が過大でないか
事業と家計家計費の移転になっていないか

税務調査で問題になるのは、給与を支払ったこと自体ではありません。労務の実態、金額の根拠、支払の記録、そして届出との整合性。これらを説明できないことが、問題になるのです。

とりわけ、次のような処理には慎重な確認が必要です。

処理リスク
年末にまとめて家族給与を計上実際の勤務・支払実態が疑われる
現金手渡しで記録がない支払事実を説明しにくい
タイムカードがない勤務時間を説明しにくい
職務内容が曖昧給与額の相当性を説明しにくい
他社勤務と並行専従性が否認されやすい
届出金額を超えて支給超過部分が必要経費にならない可能性
配偶者控除と併用控除の誤りにつながる
外注費名目に変更実態との不一致が問題になる
事業規模に比べて高額過大部分が否認される可能性

よくある誤解

誤解1:家族が手伝っていれば給与を経費にできる

手伝っているだけでは足りません。青色事業専従者給与には、専従性、届出、金額の相当性、そして支払実態が必要です。

誤解2:配偶者だから当然に専従者にできる

配偶者であることは、要件の一部にすぎません。実際に事業へ専ら従事しているか、他の仕事や家事との関係、勤務時間、職務内容まで確認します。

誤解3:届出書に書けば、その金額は必ず経費になる

届出書の金額は上限であって、安全の保証ではありません。労務の対価として相当でない部分は、必要経費になりません。

誤解4:給与を払っても扶養に入れられる

青色事業専従者給与の支払を受ける人や、白色事業専従者は、同一生計配偶者や扶養親族になれません。

誤解5:白色申告でも支払った給与をそのまま経費にできる

白色申告は、実際の給与額ではなく、事業専従者控除として一定額を控除する制度です。

誤解6:家族への支払を外注費にすればよい

外注費として認められるかどうかは、独立した事業者としての実態、契約、成果物、請求、支払記録から判断します。家族というだけで否定されるわけではありませんが、形式だけの外注費にはリスクが伴います。

家族給与を検討する前の実務チェックリスト

家族に給与を支払う前に、次の事項を一度整理しておいてください。

チェック項目確認内容
申告区分青色申告か白色申告か
青色申告承認青色申告承認申請が有効か
所得区分事業所得か、不動産所得か、雑所得か
不動産の場合事業的規模か
対象者生計を一にする親族か
年齢15歳以上か
従事期間6か月超または従事可能期間の2分の1超か
他の職業会社勤務、アルバイト、役員、学校等がないか
職務内容何を担当するか具体的に説明できるか
勤務時間出勤日・時間を記録できるか
給与額労務、事業規模、他従業員と比較して相当か
支払方法振込など客観的に確認できる方法か
届出書期限内に提出できるか
賞与支給基準を届出できるか
源泉徴収源泉徴収・納付・年末調整の体制があるか
扶養控除配偶者控除・扶養控除との重複がないか
住民税等家族側の住民税・国保等への影響を確認したか
消費税給与は課税仕入れでないことを理解しているか
記録保存給与明細、出勤簿、業務日報を残せるか

家族への支払は、単年の節税ではなく事業運営の設計で考える

青色事業専従者給与は、適切に使えば、家族が実際に事業へ貢献している実態を、税務上もきちんと反映できる制度です。

しかし安易に使うと、税務調査で否認されるだけでは終わりません。家族内の役割、給与水準、扶養、社会保険、納税資金、さらには将来の法人化の判断にまで、影響が及びます。

とりわけ、次のような事業者の方は、早めに整理しておく価値があります。

状況早めに整理すべき理由
配偶者が日常的に事業を支えている給与化するなら届出と記録が必要
副業から本業化しつつある家族の役割と事業規模が変わる
家族が経理・入金管理をしている資金管理と内部牽制の整理が必要
家族に外注費を払っている給与・外注の区分を確認すべき
利益が大きくなってきた所得分散ではなく労務対価として設計すべき
不動産所得がある事業的規模かどうかが影響する
法人成りを検討している専従者給与と役員報酬の比較が必要
税務調査が不安勤務記録・支払記録・届出内容を整えるべき

家族への給与は、単に「所得を分ける」ための処理ではありません。家族が事業のなかでどのような役割を担い、その対価をどう支払い、事業と家計をどう分けていくのか。それは、事業運営の設計そのものだといえます。

税理士に相談する前に整理しておくとよい資料

青色事業専従者給与や家族への支払について相談する際は、次の資料を用意しておくと、判断がぐっと具体的になります。

資料確認する目的
青色申告承認申請書青色申告の適用状況
青色事業専従者給与に関する届出書届出内容・提出時期
変更届出書給与増額・賞与・専従者追加の確認
過年度申告書・決算書過去の処理との整合性
給与明細支給額・控除額の確認
振込明細・通帳実際の支払記録
タイムカード・出勤簿勤務日・勤務時間の確認
業務日報職務内容・業務量の確認
職務分掌表家族の役割の整理
給与規程昇給・賞与・手当の基準
他の従業員の給与資料相当性の比較
同業給与水準資料過大給与でないことの補助
家族の他の勤務資料専従性の確認
扶養控除等申告書源泉徴収・年末調整の確認
源泉徴収簿源泉所得税の計算確認
納付書控え源泉所得税の納付状況
不動産所得資料不動産所得の場合の事業的規模確認
外注契約書・請求書家族への外注費がある場合の実態確認

「家族に給与を払いたい」というご相談は、金額だけでは判断できません。誰が、どの事業で、どのように働き、どのような資料で説明できるのか。そこを整理しておくことが、確かな判断の出発点になります。

犬飼公認会計士・税理士事務所へのご相談について

青色事業専従者給与や家族への支払は、個人事業の確定申告のなかでも、特に誤りやすい論点です。

家族が実際に事業を支えているのであれば、その労務に見合った給与を適切に処理することには、大きな意味があります。

その一方で、勤務実態が曖昧なまま給与を計上したり、届出を出さずに後から経費にしたり、扶養控除と重複させてしまったり。こうした処理をすると、申告後に説明することが難しくなってしまいます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、個人事業・副業の確定申告について、単なる申告書の作成にとどまらず、所得区分、必要経費、家事関連費、家族への支払、青色申告、源泉徴収、帳簿・資料の保存まで含めて、後からきちんと説明できる数字づくりをご支援しています。

「配偶者に給与を払ってよいか判断したい」 「青色事業専従者給与の届出を出すべきか相談したい」 「家族への支払が外注費か給与か分からない」 「過去の専従者給与の処理に不安がある」 「税務署や金融機関に説明できる帳簿・資料を整えたい」

こうしたお悩みをお持ちの方は、犬飼公認会計士・税理士事務所ホームページのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。

この記事の振り返り

重要論点押さえるべき考え方実務上の注意点
家族への給与生計を一にする親族への給与は原則として制限される特別ルールに該当するか確認
青色事業専従者給与青色申告者が一定要件を満たす親族に支払う給与届出・専従性・相当性・支払実態が必要
生計一同居だけでなく家計実態で判断別居でも送金等により該当する場合あり
年齢要件その年12月31日現在で15歳以上学生の場合は専従性に注意
専従性事業に専ら従事していること他社勤務、就学、短時間手伝いは慎重
6か月超要件原則は年を通じて6か月超退職等がある場合は従事可能期間で判断する場合あり
届出期限原則3月15日、開業・新専従者は2か月以内期限徒過は致命的になりやすい
届出内容職務内容、給与額、支給期、賞与等を記載後から説明する基礎資料になる
給与額の相当性労務の対価として相当な金額のみ経費届出額=無条件に経費ではない
賞与・増額届出内容や変更届出を確認利益調整的な後付け支給は危険
白色申告実際の給与ではなく事業専従者控除配偶者86万円、その他親族50万円等の上限
扶養控除等専従者は同一生計配偶者・扶養親族になれない給与額が少なくても重複不可
不動産所得事業的規模でないと専従者給与等は適用不可小規模不動産では特に注意
外注費名目名目ではなく実態で判断家族への形式的外注費はリスク
源泉徴収専従者給与も給与所得源泉徴収・納付・年末調整が必要
消費税給与は課税仕入れではない外注費との混同に注意
支払記録給与明細、振込、賃金台帳を保存現金手渡しのみは説明が弱い
勤務記録出勤簿、タイムカード、業務日報が重要専従性と給与相当性の根拠になる
判断姿勢節税ではなく実態と説明可能性を重視家族間取引ほど資料と一貫性が必要
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