税務署への継続届出書|事業承継税制の納税猶予を維持するための実務管理

事業承継税制を適用したあと、後継者と会社が必ず向き合うことになる手続が「継続届出書」です。

法人版事業承継税制は、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を、後継者が贈与または相続等によって取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。その後、後継者の死亡等が生じれば、猶予されていた税額の納付が免除されます。平成30年度税制改正では、従来の一般措置に加え、対象株式数の上限撤廃や猶予割合の引上げ等を盛り込んだ特例措置が設けられました。

出典:国税庁|法人版事業承継税制

ここで押さえておきたいのは、この制度が「一度申告すれば終わり」というものではない、という点です。

納税猶予を受けたあとも、後継者が対象株式を保有し続けているか、会社が制度上の要件を維持できているか、認定の取消事由が生じていないか。これらを継続的に税務署へ届け出ていく必要があります。その中心にあるのが、税務署へ提出する「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出書」です。

この記事では、法人版事業承継税制の特例措置を中心に、税務署への継続届出書について整理します。都道府県への年次報告との違い、提出時期、添付書類、提出漏れのリスク、5年経過後の管理、そして実務上の確認ポイントを、「制度を適用したあとの管理」という観点からお話しします。

なお、電子申告の操作手順や、様式ごとの逐条的な記入方法までは本稿では扱いません。個別の申告・届出にあたっては、その時点の法令や通達、国税庁・中小企業庁の最新様式、所轄税務署・都道府県の運用を、必ずご確認ください。

目次

継続届出書とは何か

継続届出書とは、事業承継税制による贈与税・相続税の納税猶予を引き続き受けるために、後継者が税務署へ提出する届出書です。

この継続届出手続は、納税猶予の適用を継続して受けるための手続として位置づけられています。そして見落とせないのが、期限までに提出しなかった場合の取り扱いです。提出期限の翌日から2か月を経過する日に、納税猶予に係る期限が確定することになります。

出典:国税庁|B1-66 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出手続(特例措置)

ここでいう「納税猶予に係る期限が確定する」とは、猶予されていた税額をいよいよ納付しなければならない状態になる、ということです。単なる書類の不備として処理される話ではなく、猶予税額と利子税の納付リスクに直結する。ここが何より重要です。

継続届出書は、いわば制度適用後の税務管理そのものです。申告のときに認定書や担保をきちんと整えて納税猶予を受けられたとしても、その後の継続届出を怠ってしまえば、制度は維持できません。

都道府県への年次報告と税務署への継続届出は役割が違う

適用後の管理で最も混同しやすいのが、都道府県への年次報告と、税務署への継続届出書の関係です。

都道府県への年次報告は、経営承継円滑化法上の認定を維持するための報告です。一方、税務署への継続届出書は、贈与税・相続税の納税猶予を税務上継続するための届出です。

認定後の手続を時間軸で整理すると、次のようになります。税務申告後5年以内は、都道府県庁へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を、いずれも年1回提出します。そして税務申告後6年目以後は、税務署にのみ、継続届出書を3年に一度提出していきます。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

つまり、年次報告と継続届出書は、提出先も目的も異なる別々の手続だということです。

年次報告は、都道府県知事に対して、認定の取消事由に該当していないことを確認してもらうための手続。継続届出書は、税務署長に対して、納税猶予を引き続き受けたい旨を届け出るための税務手続。役割が違います。

実務では、おおむね次の順序で管理していくとよいでしょう。

  1. 会社と後継者の状況を確認する
  2. 都道府県へ年次報告書を提出する
  3. 都道府県知事の確認書を受ける
  4. 税務署へ継続届出書を提出する
  5. 提出控え、確認書、添付資料を保管する

この流れを理解しないまま、「都道府県に年次報告を出したのだから、税務署にも届いているはずだ」と考えてしまうのは危険です。税務署への継続届出書は、あくまで後継者側で、別途提出しなければなりません。

継続届出書の提出時期

継続届出書の提出時期は、大きく二つの局面に分かれます。

一つは、申告期限後の5年間。もう一つは、その5年間を経過したあとの期間です。

特例措置の継続届出手続では、贈与税または相続税の申告期限後5年間は毎年、5年経過後は3年ごとに提出することとされています。

出典:国税庁|B1-66 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出手続(特例措置)

もう少し具体的に見ていきます。特例経営承継期間内については、毎年、第1種基準日の翌日から5か月を経過する日までに、一定の書類を添付して所轄税務署へ継続届出書を提出します。あわせて認定会社側では、第1種基準日の翌日から3か月を経過する日までに、都道府県知事へ年次報告書を提出して確認を受ける必要があります。

出典:国税庁|法人版事業承継税制の適用を受けられている方に~継続届出書の提出について~

この「3か月」と「5か月」の違いこそ、実務上の管理ポイントです。

先に到来するのは、都道府県への年次報告の提出期限です。その年次報告を経て都道府県から確認書の交付を受け、これを税務署への継続届出書に添付して提出する。こうした順序になっています。したがって、税務署への届出期限だけを見ていると、都道府県側の確認書が間に合わなくなるおそれがあります。

贈与の場合の提出時期

贈与により非上場株式等を取得し、贈与税の納税猶予を受けた場合は、通常、贈与税の申告期限を起点に管理します。

贈与税の申告期限は、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日です。したがって特例経営贈与承継期間中は、おおむね毎年3月15日を基準日として意識し、都道府県への年次報告はその後3か月以内、税務署への継続届出書はその後5か月以内、という流れになります。

ただし、災害等によって申告期限が延長された場合には、その延長後の申告期限が基準になります。年次報告書および継続届出書を作成・提出するにあたっては、非上場株式等の納税猶予制度の適用に係る贈与税または相続税の申告期限が延長されていないかを確認し、延長後の申告期限を基にした報告基準日に基づいて準備するよう案内されています。

出典:中小企業庁・国税庁|年次報告書・継続届出書の「報告基準日」について

実務では、毎年同じ月日に機械的に提出すればよい、とは限りません。災害等による申告期限の延長があると、基準日を取り違えてしまう可能性があるのです。

相続の場合の提出時期

相続により非上場株式等を取得し、相続税の納税猶予を受けた場合は、相続税の申告期限を起点に管理します。

相続税の申告期限は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。贈与のように、毎年3月15日が基準になるとは限りません。

そのため相続税納税猶予の場合は、被相続人の死亡日、相続開始を知った日、相続税の申告期限、認定申請、相続税申告、担保提供、年次報告、継続届出書の期限を、一つの時系列として管理する必要があります。

相続が起きたあとは、遺産分割、株式の承継、相続税申告、金融機関への対応、代表者の変更などが同時並行で進みます。その渦中で継続届出書の期限管理まで見据えておかないと、初回の申告には対応できても、その後の管理で漏れが生じかねません。

5年経過後も継続届出書は続く

事業承継税制では、申告期限後5年間の事業継続期間が強調されがちです。しかし、5年が経過したからといって、納税猶予そのものが自動的に終わるわけではありません。

特例経営承継期間の経過後は、3年ごとに、第2種基準日の翌日から3か月を経過する日までに、一定の書類を添付して継続届出書を所轄税務署へ提出します。なお、この期間を過ぎたあとは、都道府県知事への年次報告書の提出は不要となります。

出典:国税庁|法人版事業承継税制の適用を受けられている方に~継続届出書の提出について~

この点は、本当に大切です。

5年を過ぎると、都道府県への年次報告がなくなる分、会社側の管理意識はどうしても薄れがちになります。ところが、税務署への継続届出書は、3年ごとに続いていきます。

しかも、毎年の報告サイクルから3年ごとの届出へと変わるため、かえって忘れやすくなる。毎年の定型業務であれば管理しやすいのですが、3年に一度の手続は、担当者の交代、顧問契約の変更、役員体制の変更、保管資料の散逸といった事情で、すり抜けてしまいやすいのです。

5年経過後こそ、継続届出書の管理台帳を残しておく必要があります。

継続届出書に添付する主な書類

継続届出書は、届出書を一枚提出すれば足りる、というものではありません。

特例措置の様式としては、「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出書(特例措置)」のほか、「特例認定(贈与・相続)承継会社に関する明細書(特例措置)」、一定の場合の明細書別紙、猶予税額・免除税額等に関する明細書が用意されています。

出典:国税庁|B1-66 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出手続(特例措置)

特例措置の添付書類としては、特例認定承継会社に関する明細書、定款の写し、株主名簿の写し等、年次報告書の写しおよび都道府県知事の確認書の写し、雇用確保要件を満たさない場合の報告書・確認書の写し、会社分割・組織変更があった場合の契約書等、合併・株式交換・株式移転があった場合の一定書類などが整理されています。なお、令和3年7月1日以後に提出する継続届出書については、会社の登記事項証明書の添付は不要とされています。

出典:国税庁|法人版事業承継税制の適用を受けられている方に~継続届出書の提出について~

実務上は、少なくとも次の資料を確認していきます。

  • 継続届出書
  • 特例認定承継会社に関する明細書
  • 該当する場合の明細書別紙
  • 会社の定款の写し
  • 株主名簿の写し
  • 議決権数が確認できる資料
  • 都道府県へ提出した年次報告書の写し
  • 年次報告に係る都道府県知事の確認書の写し
  • 雇用確保要件に関する報告書および確認書の写し
  • 会社分割、組織変更、合併、株式交換、株式移転に関する書類
  • 納税猶予の期限が到来した税額や免除税額がある場合の明細書
  • そのほか、税務署から確認を求められる可能性のある資料

添付書類が必要かどうかは、事業継続期間内か、5年経過後か、会社の状況に変化があったかによって変わってきます。過去と同じセットを毎回そろえれば済む、とは限らないのです。

継続届出書で実質的に確認すべきこと

継続届出書は形式的な届出書ではありますが、その裏側では、制度要件をきちんと維持できているかを確認していく必要があります。

特に重要なのは、次の項目です。

後継者が対象株式を保有しているか

まず、納税猶予の対象となった株式を、後継者が引き続き保有しているかを確認します。

株式の一部譲渡、贈与、自己株式の取得、組織再編、株式交換、株式移転、種類株式化など。こうした動きは、納税猶予に影響する可能性があります。これらを実行したあとで、「継続届出書の時期になって初めて気づいた」という事態は、なんとしても避けなければなりません。

株式に関わる会社の行為を検討する、まさにその時点で、納税猶予への影響を確認しておく必要があります。

同族過半・筆頭株主要件に影響がないか

事業承継税制では、後継者本人だけでなく、同族関係者全体の議決権関係が重要になります。

株主名簿、自己株式、種類株式、議決権制限株式、相続未了の株式、名義株の整理状況。これらの状態によって、議決権割合の見え方は変わってくることがあります。

継続届出書の添付資料として株主名簿等が必要になる以上、税務署への届出の前に、株主構成と議決権数を正確に確認しておかなければなりません。

代表者や役員体制に変化がないか

後継者が代表者として経営を継続できているか。これは、制度の維持に関わる重要な論点です。

代表取締役の交代、共同代表制、後継者の代表権喪失、病気・死亡・退任、次世代後継者への承継。これらは継続届出書だけでなく、免除届出、随時報告、猶予継続贈与、取消事由の判断にも関係してきます。

代表者の変更は、登記だけの問題ではありません。事業承継税制を利用している会社では、代表者を変更する前に、税制上の影響を確認しておく必要があります。

雇用確保要件への対応が必要か

特例措置では、雇用が8割を下回った場合でも、直ちに認定取消・納税となるわけではありません。ただし、その理由の報告は求められます。

特例の認定を受けた場合、雇用が8割を下回ったとしても認定取消・納税にはならないものの、その理由について都道府県に報告しなければなりません。また、認定経営革新等支援機関が雇用減少の理由について所見を記載し、必要に応じて経営改善の指導・助言を行うこととされています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

この報告書と確認書は、継続届出書の添付資料にも関わってきます。雇用が減少している場合には、人数を確認するだけでは足りません。減少の理由、経営状況、採用努力、事業構造の変化、認定支援機関の所見まで、ひととおり整えておく必要があります。

資産管理会社化のリスクがないか

継続届出書に添付する明細書では、会社の資産構成や運用収入に関する情報が問題になることがあります。

承継後に不動産、有価証券、貸付金、遊休資産などが増えている場合には、資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないかを確認しておく必要があります。財務上は安全資産の保有であっても、事業承継税制の上では取消リスクとして表れてくることがあるのです。

継続届出書は、会社の財務行動を、税制維持という観点から振り返るよい機会でもあります。

提出漏れのリスクは重い

継続届出書の提出漏れは、単なる事務上のミスでは済みません。

継続届出書を期限までに提出しなかった場合には、その提出期限の翌日から2か月を経過する日に、納税猶予に係る期限が確定することとされています。

出典:国税庁|B1-66 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出手続(特例措置)

そして、継続届出書の提出がない場合には、猶予されている贈与税・相続税の全額と利子税を納付する必要があります。

出典:国税庁|法人版事業承継税制の適用を受けられている方に~継続届出書の提出について~

つまり提出漏れは、「あとで出せばよい」といった軽い問題ではないのです。

猶予税額が大きい場合、提出漏れはそのまま後継者個人の納税資金に跳ね返ります。会社が納税資金を直接負担できるわけではありません。結果として、役員報酬、配当、自己株式の取得、会社からの貸付、金融機関からの借入など、会社財務にまで影響が及んでいきます。

制度の適用時に大きな税負担を猶予できたとしても、継続届出書の管理漏れで猶予が打ち切られれば、後継者の資金繰りと会社の財務の安全性に、大きな負担がのしかかることになります。

継続届出書の管理で起こりやすい実務ミス

継続届出書をめぐる実務でつまずきやすいのは、制度を知らないからというより、管理体制が曖昧であることに起因します。

都道府県への年次報告と税務署への継続届出を同一視する

年次報告を提出したことで安心してしまい、税務署への継続届出書を出し忘れる。これがまず一つ目のリスクです。

年次報告と継続届出書は連動はしますが、同じ手続ではありません。提出先も、提出期限も、添付書類も異なります。

都道府県知事の確認書の取得が遅れる

継続届出書には、年次報告書の写しと確認書の写しが必要になる場面があります。

年次報告の準備が遅れると、都道府県から確認書が交付されるまでの時間が足りなくなり、税務署への継続届出書に影響します。税務署の期限から逆算するのではなく、都道府県への年次報告から逆算して準備していく。この発想が大切です。

5年経過後の3年ごとの届出を忘れる

5年を経過すると、都道府県への年次報告は不要になる一方で、税務署への継続届出書は3年ごとに残ります。

この「3年ごと」が、最も忘れやすいところです。担当者が変わる、顧問契約が変わる、後継者自身が制度を把握していない、過去の提出控えが見つからない。こうした理由から、届出漏れが起こります。

株主名簿と実際の株主関係が一致していない

継続届出書の添付書類として株主名簿等を確認する際、過去の株式移動、名義株、未処理の相続、自己株式、種類株式の内容が整理されていないと、正確な議決権関係を説明できません。

事業承継税制の適用後は、株主名簿を単なる会社法上の書類としてではなく、納税猶予を支える基礎資料として管理していく必要があります。

組織再編・資本政策を実行後に確認する

会社分割、組織変更、合併、株式交換、株式移転などがあった場合、継続届出書の添付書類や、納税猶予を継続できるかどうかに影響することがあります。

組織再編は、実行したあとに継続届出書の添付資料として処理すればよい、という性質のものではありません。実行する前に、認定承継、取消事由、税務上の猶予継続、株式・議決権関係への影響を検討しておくべきです。

継続届出書を「提出作業」ではなく「年次レビュー」として扱う

継続届出書は、毎年または3年ごとに届出を出すだけの作業ではありません。

むしろ、納税猶予を維持するための年次レビューとして扱うべきものです。

確認すべき事項は、次のように整理できます。

  • 後継者が対象株式を保有しているか
  • 対象株式に譲渡、贈与、担保変更、自己株式取得等がないか
  • 後継者が代表者としての地位を維持しているか
  • 同族関係者全体で議決権の過半を維持しているか
  • 後継者が同族内筆頭株主等の要件を満たしているか
  • 株主名簿と実態が一致しているか
  • 雇用確保要件に関する報告が必要か
  • 資産保有型会社・資産運用型会社への該当リスクがないか
  • 会社分割、組織変更、合併、株式交換、株式移転がないか
  • 都道府県への年次報告と確認書の取得が済んでいるか
  • 過去の継続届出書、添付書類、提出控えが保管されているか
  • 次回の提出期限が管理台帳に反映されているか

これらを確認して初めて、継続届出書は意味を持ちます。

制度の維持に必要なのは、提出期限をカレンダーに入れることだけではありません。会社の経営判断、株主構成、財務行動、相続の発生、組織再編の可能性を、納税猶予の観点から毎年確認していくこと。そこにこそ本質があります。

継続届出書の提出前に整えるべき管理体制

継続届出書の提出を安定して続けていくためには、次のような管理体制を整えておくとよいでしょう。

提出期限管理表を作る

贈与税または相続税の申告期限、特例経営承継期間、各基準日、都道府県への年次報告期限、税務署への継続届出期限、そして5年経過後の3年ごとの届出期限。これらを一覧にまとめます。

特に相続税の納税猶予では、死亡日によって基準日が異なるため、個別に管理する必要があります。

提出資料の保管場所を固定する

認定申請書、認定書、特例承継計画、贈与税申告書、相続税申告書、年次報告書、確認書、継続届出書、提出控え、株主名簿、定款、議事録、明細書。これらを年度ごとに整理して保管します。

継続届出書は、長期にわたる管理です。担当者が変わっても追跡できる状態にしておくことが欠かせません。

株式・議決権の異動を事前承認制にする

対象株式、自己株式、種類株式、名義株、相続による株式の取得、株式移転・株式交換などは、納税猶予に影響します。

事業承継税制を利用している会社では、株式や議決権に関わる事項について、実行する前に税務・会社法の確認を行う、という社内ルールを設けておくべきです。

代表者変更・組織再編を事前検討事項にする

代表者の変更、会社分割、合併、株式交換、株式移転、組織変更は、継続届出書の添付書類だけでなく、認定の継続や取消事由にも関わる可能性があります。

こうした経営判断は、登記や契約だけで進めるのではなく、事業承継税制への影響を事前に検討しておく必要があります。

専門家レビューのタイミングを固定する

専門家のレビューは、継続届出書の期限直前ではなく、都道府県への年次報告を準備する段階で入れておくのが望ましいでしょう。

年次報告の内容、都道府県知事の確認書、継続届出書の添付書類、株式・議決権、雇用、資産構成、組織再編の有無。これらをまとめて確認しておくことで、税務署へ提出する際の不備を減らすことができます。

継続届出書を軽く見てはいけない理由

事業承継税制を検討している段階では、どうしても納税猶予額や特例措置のメリットに目が向きがちです。

しかし実際に制度を利用したあとは、継続届出書を中心とする管理こそが、制度維持の要になっていきます。

継続届出書を軽く見るべきでない理由は、三つあります。

一つ目は、提出漏れが、そのまま猶予税額の納付リスクに直結すること。二つ目は、届出書の裏側で、株式・議決権・代表者・雇用・資産構成・組織再編を確認していく必要があること。三つ目は、5年を経過しても3年ごとの届出が続き、長期にわたる管理が求められること。

つまり、継続届出書は「税務署に出す一枚の書類」ではないのです。後継者が、事業承継税制を使い続ける覚悟と管理体制を備えているか。それを毎年、あるいは3年ごとに確認していく手続なのだと考えています。

継続届出書に不安がある場合

事業承継税制を利用している会社では、次のような不安が生じやすいものです。

「年次報告は出しているが、税務署への継続届出書まで正しく出せているか分からない」 「過去の確認書や提出控えが整理されていない」 「5年経過後の、3年ごとの届出期限を管理できていない」 「株式移動や代表者変更を予定しているが、納税猶予への影響が分からない」 「雇用が減っており、報告書や認定支援機関の所見が必要か確認したい」 「会社分割、合併、株式交換、株式移転を検討している」 「先代経営者や後継者に相続が発生した場合の届出・免除手続が不安だ」

こうした場合は、提出期限が迫ってから動くのではなく、早い段階で継続管理の状況を棚卸ししておくことが大切です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継税制を単なる申請・申告の手続としてではなく、後継者の経営権、株式・議決権、会社財務、継続届出、取消リスク、将来の組織再編の可能性までを含めた、長期管理の問題として整理することを重視しています。

税務署への継続届出書について、提出期限、添付書類、年次報告との関係、過去の提出状況、今後の管理体制を確認したいという場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。認定書、過去の年次報告書、都道府県知事の確認書、継続届出書、株主名簿、決算書等をもとに、納税猶予を維持するために必要な確認事項を整理いたします。

重要事項の振り返り

項目内容実務上の注意点
継続届出書の役割贈与税・相続税の納税猶予を税務上継続するために税務署へ提出する届出書都道府県への年次報告とは別の手続
提出先後継者の所轄税務署都道府県庁ではない
提出時期申告期限後5年間は毎年、5年経過後は3年ごと5年経過後も届出は続く
事業継続期間中の期限基本的に第1種基準日の翌日から5か月を経過する日まで年次報告は原則3か月以内のため、先に都道府県手続を進める
5年経過後の期限第2種基準日の翌日から3か月を経過する日まで年次報告が不要になるため、届出漏れが起こりやすい
年次報告との関係年次報告書と都道府県知事の確認書が添付書類となる場面がある確認書の取得が遅れると継続届出に影響する
主な添付書類明細書、定款、株主名簿、年次報告書・確認書、該当時の組織再編書類等提出時点の最新様式・添付書類を確認する
提出漏れのリスク提出期限の翌日から2か月経過で納税猶予期限が確定する可能性がある猶予税額と利子税の納付リスクにつながる
確認すべき実体事項株式保有、議決権、代表者、雇用、資産構成、組織再編の有無届出作業ではなく年次レビューとして扱う
管理体制期限管理表、提出控え、確認書、株主資料、専門家レビューを整える担当者交代や5年経過後の管理漏れに注意する
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