戸籍・法定相続情報で相続人を確定する流れ|相続税申告・遺産分割・登記の前提を整える実務手順

相続税申告や遺産分割に取りかかるとき、私が最初に手をつける資料のひとつが戸籍です。

「家族構成は把握しているから大丈夫」と思いたくなるお気持ちはよく分かります。けれども相続の実務では、家族の認識だけで相続人を確定することはできません。相続人は、戸籍・除籍・改製原戸籍といった公的資料を丁寧にたどり、法律上の親族関係を確認したうえで確定していきます。

ここを軽く見てしまうと、後になって前婚の子、認知された子、養子、代襲相続人、先に亡くなった相続人の子、兄弟姉妹や甥姪などが判明することがあります。その結果、遺産分割協議書を作り直すことになったり、相続登記が止まってしまったり、相続税申告を修正する必要が生じたり、税務調査で十分な説明ができなくなったりと、影響は思いのほか広がります。

相続人の確定は、単なる手続書類の収集ではありません。

  • 誰が遺産分割協議に参加する必要があるのか
  • 誰が相続税申告書に記載されるのか
  • 法定相続人の数はいくつになるのか
  • 生命保険金や死亡退職金の非課税枠にどう影響するのか
  • 不動産の相続登記を誰の名義で進めるのか
  • 相続人の住所や連絡先をどう確認するのか

こうした前提を、ひとつずつ整えていく作業だとお考えください。

本記事では、戸籍・除籍・改製原戸籍・戸籍の附票・法定相続情報一覧図を用いて、相続人を確定していく流れを整理します。個別の戸籍取得代行の手順ではなく、相続税申告・遺産分割・登記の前提として「何を確認し、どこで判断を誤りやすいのか」に重心を置いて解説していきます。

目次

相続人確定の目的は「戸籍を集めること」ではない

相続人確定の目的は、戸籍を大量に集めることそのものではありません。

本来の目的は、相続開始の時点で法律上誰が相続人であるかを確定し、その確認結果を、遺産分割・相続税申告・名義変更・相続登記にそのまま使える状態へ整理しておくことです。

戸籍は、人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録・公証する制度であり、日本国民について編製されます。相続では、この戸籍制度を用いて、被相続人の親族関係を過去にさかのぼって確認していきます。

出典:法務省|戸籍

相続人を一人でも見落としてしまうと、その遺産分割協議は「相続人全員の合意によるもの」とはいえなくなります。実務の感覚としても、相続人確定は戸籍をさかのぼって行う難度の高い作業です。相続人を落とせば遺産分割の有効性そのものに影響しかねないため、慎重な確認が欠かせません。

相続人確定で作るべき成果物は、おおむね次のとおりです。

成果物目的
戸籍一式相続人の範囲を証明する基礎資料
相続関係図家族関係・代襲関係・法定相続分を整理する資料
法定相続情報一覧図法務局の認証を受け、各種相続手続で利用する資料
相続人の住所資料連絡、遺産分割協議書、登記、金融機関手続に使う資料
判断メモ養子、代襲、相続放棄、胎児、認知、廃除などの論点整理

大切なのは「書類がそろっているか」ではなく、「その書類から相続人を漏れなく確認できているか」です。

戸籍・除籍・改製原戸籍・戸籍の附票の違い

相続人確定の場面では、戸籍・除籍・改製原戸籍・戸籍の附票といった資料がよく登場します。名称こそ似ていますが、それぞれ果たす役割は異なります。

書類主な役割
戸籍謄本・戸籍全部事項証明書現在の戸籍に記載されている親族関係を確認する
除籍謄本死亡、婚姻、転籍などにより全員が除かれた戸籍を確認する
改製原戸籍法令改正や戸籍の電算化により作り替えられる前の戸籍を確認する
戸籍の附票その戸籍に在籍していた期間の住所の履歴を確認する
住民票の除票被相続人の最後の住所などを確認する

戸籍謄本だけでは、被相続人の出生から死亡までの親族関係をすべて確認しきれないことがあります。婚姻・離婚・転籍・戸籍の改製などによって、現在の戸籍には過去のすべての身分関係が載っているわけではないからです。そのため相続人確定では、現在戸籍から過去の戸籍へとさかのぼり、除籍や改製原戸籍を取得していきます。

戸籍の附票は、住所の履歴を確認するための資料です。本籍地の市区町村で戸籍とともに管理され、その戸籍に入っていた期間の住所変更の履歴が記録されています。相続人の現在住所を確認したいとき、疎遠な相続人に連絡を取りたいとき、不動産登記上の住所と本籍・住所のつながりを確かめたいときに、重要な手がかりとなります。

出典:福井市|戸籍の附票

なお、除籍や改製原戸籍には保存期間の問題があります。現行では、除籍・改製原戸籍の保存期間は原則として150年間とされています。ただし、古い戸籍や過去の取扱いとの関係で、必要な戸籍が取得できない場面もあり得る点には留意が必要です。

相続人確定の基本的な流れ

相続人確定は、次の順序で進めていくと整理しやすくなります。

1. 被相続人の死亡日・最後の本籍・最後の住所を確認する

まず確認するのは、被相続人の死亡日、最後の本籍、最後の住所です。

死亡日は相続開始日にあたります。相続人は、この相続開始の時点で判定します。相続税申告の期限、準確定申告の期限、相続放棄の熟慮期間なども、すべて死亡日を起点として検討していきます。

最後の本籍は、戸籍をたどる出発点になります。最後の住所は、住民票の除票・戸籍の附票・相続登記・不動産登記上の住所とのつながりを確認するうえで欠かせません。

被相続人名義の不動産がある場合には、登記簿上の住所と死亡時の住所が食い違っていることもあります。そうしたときは、住民票の除票や戸籍の附票を使って、住所の連続性を確認していく必要があります。

2. 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集める

続いて、被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍を集めます。

ここで確かめたいのは、被相続人に法律上の子がいるかどうかです。現在の家族が把握している子だけでなく、前婚の子、認知された子、養子縁組をした子、若い頃に別の戸籍に入っていた期間の子など、見落としがちな存在まで確認します。

相続では、第1順位である子がいるかどうかが、大きな分岐点になります。子がいる場合には、原則として直系尊属や兄弟姉妹は相続人になりません。子がいない場合には、確認の範囲が直系尊属へ、さらに兄弟姉妹へと広がっていきます。

被相続人の出生から死亡までの戸籍がそろっていなければ、そもそも「子がいない」とは判断できません。

3. 相続人全員の現在戸籍を確認する

被相続人の戸籍から相続人候補が見えてきたら、次は各相続人の現在戸籍を確認します。

現在戸籍では、相続人が相続開始時に生存していたか、婚姻や転籍によって別戸籍になっていないか、氏名が変わっていないかなどを確かめます。相続人がすでに亡くなっている場合には、代襲相続や数次相続の確認へと進みます。

金融機関の手続、相続登記、相続税申告では、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書・住民票などが求められることがあります。相続税申告の実務でも、被相続人の戸籍・除籍・改製原戸籍、相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、相続関係図、遺産分割協議書などが基礎資料となります。

4. 先に死亡した相続人がいないか確認する

相続人となるべき人が、被相続人より先に亡くなっている場合には、代襲相続を確認します。

被相続人の子が先に亡くなっていれば、その子、つまり被相続人から見た孫が代襲相続人になる可能性があります。孫も先に亡くなっている場合には、さらに下の世代が問題になることもあります。

一方、兄弟姉妹が相続人となる場面で、その兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子、つまり甥・姪が代襲相続人になる可能性があります。ただし、兄弟姉妹についての代襲は一代限りです。

代襲相続がある場合には、被代襲者の死亡の記載がある戸籍と、代襲相続人の戸籍を確認します。なお、相続放棄は代襲相続の原因ではありません。放棄した人の子が、当然に代襲相続人になるわけではない点には注意が必要です。この点については、相続放棄と遺産分割の違いを扱う別記事であらためて整理します。

5. 子がいない場合は直系尊属を確認する

被相続人に子や孫などの直系卑属がいない場合には、父母・祖父母などの直系尊属を確認します。

直系尊属が相続人になるかどうかを判断するには、子がいないことを戸籍上で確認したうえで、父母や祖父母の生死を確かめる必要があります。父母が亡くなっている場合には、祖父母が相続人になる可能性も出てきます。

この場面では、被相続人の戸籍だけでなく、父母・祖父母側の戸籍確認まで必要になることがあります。

6. 直系尊属もいない場合は兄弟姉妹・甥姪を確認する

子も直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹相続は、戸籍収集がとりわけ複雑になりやすい場面です。被相続人の父母の婚姻歴、前婚の子、認知、半血兄弟姉妹、兄弟姉妹の死亡、甥・姪への代襲など、確認すべき事項が一気に増えるためです。

兄弟姉妹相続では、相続人の人数が多くなり、住所地が広い範囲に分散していることもあります。遺産分割協議が長期化しやすく、不動産の相続登記や相続税申告の期限管理にも影響が及びます。

7. 相続放棄・廃除・欠格・胎児・認知を確認する

戸籍から相続人候補が見えても、それで終わりではありません。

  • 相続放棄をした人がいるか
  • 推定相続人の廃除がないか
  • 相続欠格に該当する事情が争われていないか
  • 相続開始時に胎児がいないか
  • 死亡後に認知がされた、または認知の訴えがあるか

これらは、いずれも相続関係に影響を及ぼします。

特に、法定相続情報一覧図を作成した後に、認知・胎児の出生・相続人の廃除・相続放棄などがあると、一覧図に記載された相続関係と実際の相続関係がずれてしまうことがあります。法定相続情報一覧図は便利な制度ですが、その後の事情変更まで自動的に反映してくれるものではありません。

戸籍証明書等の広域交付で何が変わったか

令和6年3月1日から、戸籍法の一部改正により、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できる「広域交付」が始まりました。

出典:法務省|戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

これは、相続手続にとって大きな意味を持つ改正です。

従来は、本籍地が転々としている場合、それぞれの市区町村に対して個別に戸籍を請求する必要がありました。広域交付の開始により、一定の戸籍証明書等については、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求しやすくなっています。

ただし、広域交付は万能ではありません。請求できる人、請求できる証明書、請求方法には、それぞれ制約があります。たとえば、戸籍の附票や一部の証明書は対象外とされることがあり、郵送請求や代理人請求ができないものもあります。具体的な運用については、法務省および請求先の市区町村の案内を確認する必要があります。

出典:向日市|戸籍証明書等の広域交付について

つまり広域交付は、あくまで「戸籍を集めやすくする制度」であって、「相続人を自動的に確定してくれる制度」ではありません。集めた戸籍を読み解き、相続人の範囲を判断する作業は、引き続き必要になります。

法定相続情報証明制度とは何か

法定相続情報証明制度は、法務局に戸除籍謄本等と法定相続情報一覧図を提出し、登記官の認証文が付された「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受ける制度です。

平成29年5月29日から、全国の登記所で利用できる制度として始まりました。この一覧図の写しを使うことで、相続登記、預貯金の相続手続、保険、証券、相続税申告などの場面で、戸籍一式を何度も提出する負担を軽減できます。

出典:法務局|法定相続情報証明制度の具体的な手続について

手続の基本は、次の3段階です。

手順内容
STEP1必要書類を収集する
STEP2法定相続情報一覧図を作成する
STEP3申出書とともに登記所へ申し出る

申出人となれるのは、被相続人の相続人またはその相続人です。代理人に依頼することもでき、委任による代理人には、親族のほか、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士などが含まれます。申出先の登記所は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所から選べます。

出典:法務局|法定相続情報証明制度の具体的な手続について

法定相続情報一覧図を作るための主な資料

法定相続情報一覧図を作成するには、通常、次の資料を整理します。

資料目的
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍相続人の範囲を確認する
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票最後の住所を確認する
相続人全員の現在戸籍相続人の生存・氏名・戸籍上の地位を確認する
申出人の本人確認資料申出人の住所・氏名を確認する
相続人の住民票等一覧図に住所を記載する場合に確認する
委任状代理人が申出をする場合に必要となる

法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載するかどうかは任意です。ただ、住所を記載しておくと、その後の相続登記や一部の手続で、住所確認資料の提出を省略できる場面があります。とはいえ提出先ごとに運用差があるため、金融機関・保険会社・証券会社・税務署・法務局などへの事前確認は欠かせません。

法定相続情報一覧図は便利だが、限界もある

法定相続情報一覧図は、相続手続を効率化してくれる有用な資料です。

もっとも、一覧図があるからといって、相続実務上の確認がすべて終わるわけではありません。

第一に、法定相続情報一覧図には法定相続人のみが記載されます。相続人ではない親族、婚姻歴、離婚歴、相続財産調査に関係する親族関係などは、一覧図からは分からないことがあります。相続財産の調査、名義財産の確認、過去の贈与の整理にあたっては、一覧図だけでなく戸籍そのものを確認すべき場面が出てきます。

第二に、一覧図を作成した後で事情が変わることがあります。認知、胎児の出生、相続放棄、廃除などがあると、一覧図と実際の相続関係に不一致が生じる可能性があります。

第三に、相続税申告では、法定相続人の数、養子の取扱い、相続放棄があった場合の税務上の取扱いなど、民法上の相続人確定だけでは終わらない論点があります。

法定相続情報一覧図は「戸籍確認の結果を使いやすくした証明資料」であって、「税務判断まで含めて完結させる資料」ではない、ということです。

相続税申告との関係

相続税の計算では、法定相続人の数が重要な意味を持ちます。

相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。また相続税の総額は、課税遺産総額を各法定相続人が民法上の法定相続分で取得したものと仮定して計算します。

出典:国税庁|No.4152 相続税の計算

そのため相続人を一人誤れば、基礎控除額、相続税の総額、各相続人の税額、生命保険金・死亡退職金の非課税限度額などに、すべて影響が及びます。

相続税申告では、戸籍等の相続関係を証明する書類に代えて、法定相続情報一覧図の写しを提出できる場合があります。ただし、申告年分、添付書類の種類、養子の有無、一覧図の記載内容によって確認すべき点が変わるため、国税庁の申告年分ごとの案内を確認する必要があります。

出典:国税庁|相続税の申告のしかた(令和7年分用)

相続税申告で特に注意したいのは、次のような場面です。

場面注意点
養子がいる民法上の相続人と、相続税法上の法定相続人の数への算入を分けて確認する
相続放棄がある民法上の相続人と、相続税計算上の法定相続人の数を混同しない
前婚の子がいる遺産分割協議・申告書・税額計算の前提に含める
代襲相続がある法定相続分、基礎控除、税額計算に影響する
兄弟姉妹相続相続人が多く、戸籍確認と住所確認が複雑になりやすい
海外居住者がいる住所証明、署名証明、納税義務者判定などが別途問題になる
古い未登記不動産がある相続開始時の法律、数次相続、共有関係の整理が必要になる

相続税申告において、戸籍確認はあくまで入口にすぎません。戸籍で確定した相続人を前提に、財産調査、評価、分割方針、納税資金、特例適用、添付資料を組み立てていく必要があります。

遺産分割協議との関係

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。

戸籍確認が不十分なまま協議を進めてしまうと、後から相続人が判明した場合に、協議の有効性が問われることになります。不動産、非上場株式、同族会社への貸付金、名義預金、生命保険、過去の贈与などが関係する相続では、相続人の一人を見落とした影響は、非常に大きなものになります。

特に注意したいのは、次のような事案です。

  • 再婚しており、前婚の子がいる
  • 被相続人に認知した子がいる可能性がある
  • 長年連絡を取っていない子や兄弟姉妹がいる
  • 相続人の一部が海外に居住している
  • 相続人に未成年者や判断能力に不安がある人がいる
  • 兄弟姉妹相続で、甥・姪が多数いる
  • 古い相続が未登記のまま残っている

遺産分割事件では、相続人の範囲、遺産の範囲、遺言の有効性、特別受益、寄与分、遺産の評価、分割方法など、多くの前提問題が争点になります。戸籍確認を早い段階で終えておくことは、その後の論点整理を進めるうえで、とても重要です。

相続登記との関係

令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。

相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、自分のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務を負います。正当な理由なく申請を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となることがあります。令和6年4月1日より前に開始した相続も対象となり、一定の経過措置が設けられています。

出典:法務省|相続登記の申請義務化について

相続登記を行うには、誰が相続人であるかを戸籍で確認し、遺産分割協議書や遺言書など、取得原因に応じた資料を整える必要があります。

なお、期限内に相続登記をすることが難しい場合に備えて、「相続人申告登記」という制度があります。これは、必要な戸除籍謄本等を添付して、自分が登記記録上の所有者の相続人であること等を法務局に申し出ることで、相続登記の申請義務を簡易に履行できる制度です。ただし、相続人申告登記は権利関係を公示するものではないため、不動産を売却したり抵当権を設定したりするには、別途、相続登記が必要になります。また、遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行するものでもありません。

出典:法務省|相続人申告登記について

税理士が相続税申告のために戸籍を確認することはありますが、相続登記の代理申請や登記申請書の作成は、司法書士・弁護士などの専門領域です。相続税申告と相続登記を同時に進める場合には、税理士、司法書士、必要に応じて弁護士が連携していくことが重要になります。

出典:法務省|相続登記の申請義務化特設ページ

戸籍確認で見落としやすい実務上の注意点

現在戸籍だけで判断しない

現在の戸籍には、過去の婚姻・離婚・転籍・養子縁組・認知などのすべてが表示されているとは限りません。被相続人の出生から死亡までを、連続して確認していく必要があります。

「死亡時の戸籍だけを見て、子がいない」と判断してしまうのは、危険です。

相続人の死亡時期を確認する

相続人候補が亡くなっている場合、その人が被相続人より前に亡くなったのか、後に亡くなったのかで、結論が変わってきます。

被相続人より前に亡くなっていれば、代襲相続が問題になります。被相続人の後に亡くなっていれば、その亡くなった相続人の相続人が権利を承継する、数次相続が問題になります。

養子縁組の時期を確認する

養子は民法上、子として相続人になります。

ただし、養子の子が代襲相続人になるかどうかは、養子縁組の時期と養子の子の出生時期が関係することがあります。また相続税法上は、法定相続人の数に算入できる養子の数に制限が設けられています。

兄弟姉妹相続は戸籍範囲が広がる

兄弟姉妹相続では、被相続人本人だけでなく、父母の戸籍、父母の婚姻歴、兄弟姉妹の死亡、甥・姪の有無まで確認します。半血兄弟姉妹がいる場合には、法定相続分にも注意が必要です。

兄弟姉妹相続では、相続人の数が多くなり、連絡や署名押印の取得に時間がかかります。相続税申告期限や相続登記義務化の期限も意識して、早めに動いておきたいところです。

法定相続情報一覧図だけで安心しない

法定相続情報一覧図は、相続手続を効率化してくれる資料です。ただ、相続人以外の親族関係や、財産調査に必要な婚姻歴・離婚歴などまでは、十分に把握できないことがあります。

特に、名義預金、過去の贈与、生命保険、同族会社との取引、親族間貸付などを確認する場合には、一覧図だけでなく、戸籍そのものや財産資料まで確認する必要があります。

古い相続では相続開始時の法律を確認する

未登記不動産があったり、何代も前の相続が残っていたりする場合には、現在の民法だけで相続人や相続分を判断できないことがあります。相続開始の時期によって、適用される法律が異なるためです。

これは通常の相続人確定よりも難度が高く、旧民法、応急措置法、現行民法、数次相続、共有不動産の整理が絡み合います。古い不動産がある場合には、早い段階で司法書士や弁護士との連携を検討すべきです。

相続人確定後に整理すべきこと

相続人が確定したら、次に整理したいのは「その相続人が、どの手続に、どの立場で関与するのか」です。

  • 遺産分割協議に参加する人
  • 相続税申告書に記載する人
  • 財産を取得する人
  • 財産を取得しないが相続人である人
  • 相続放棄をした人
  • 遺言で財産を取得する受遺者
  • 生命保険金の受取人
  • 未成年者や成年被後見人がいる場合の代理人
  • 海外居住者で、署名証明・住所証明が必要な人

法定相続人と実際の取得者は、必ずしも一致しません。相続税の課税対象者には、相続人だけでなく、遺贈により財産を取得した人、生命保険金を受け取った人、相続時精算課税の適用を受けていた人などが含まれることがあります。

ですから、戸籍で相続人を確定した後は、財産の取得関係、遺言、保険、贈与履歴、債務、分割方針を組み合わせて整理していく必要があります。

相談前に準備しておきたい資料と情報

相続人確定について専門家に相談する際、次の資料と情報を準備しておくと、初期の判断がぐっと進めやすくなります。

資料・情報確認する目的
被相続人の死亡日が分かる資料相続開始日を確認する
被相続人の最後の戸籍戸籍収集の起点を確認する
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式相続人の範囲を確認する
相続人全員の現在戸籍相続人の生存・氏名・戸籍上の地位を確認する
住民票の除票・戸籍の附票最後の住所、住所のつながり、連絡先を確認する
家族関係のメモ戸籍収集前の全体像を把握する
遺言書の有無遺産分割の前提を確認する
相続放棄の有無民法上の相続関係を確認する
前婚・養子・認知・代襲に関する情報見落としやすい相続人を確認する
不動産登記簿登記名義人・住所・未登記の有無を確認する
海外居住者の有無署名証明・住所証明・国際相続の要否を確認する

戸籍がまだそろっていない段階でも、家族関係のメモ、分かっている本籍地、死亡日、相続人候補、不動産の有無を整理しておくだけで、必要な確認範囲はずいぶん見えやすくなります。

戸籍確認は「相続税申告の前処理」ではなく、判断の土台である

戸籍確認は、相続税申告の添付資料をそろえるためだけの作業ではありません。

戸籍によって相続人を確定することで、遺産分割協議の当事者が決まり、法定相続分の基準が定まり、相続税の基礎控除が決まり、相続登記や金融機関手続の前提が整っていきます。

不動産、非上場株式、名義預金、保険、過去の贈与、同族会社への貸付金などがある相続では、相続人の確定が遅れるほど、財産評価、分割方針、納税資金、申告期限の管理が難しくなります。

相続人関係が一見シンプルに見える場合でも、まずは戸籍を確認し、必要に応じて法定相続情報一覧図を作成したうえで、税務・法務・登記の手続を進めていくことが大切です。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、相続税申告や相続対策において、戸籍・法定相続情報による相続人確定、財産構成、遺産分割、財産評価、納税資金、申告後の説明可能性を、一体として整理することを大切にしています。

戸籍の集め方が分からない、相続人が複雑で不安がある、法定相続情報一覧図を作るべきか迷っている、相続税申告や不動産登記にどうつながるのか整理したい――そうしたときは、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。司法書士・弁護士等との連携が必要な論点も含め、相続税申告と手続全体を見据えた確認事項を整理いたします。

重要ポイントの振り返り

論点基本的な考え方実務上の注意点
相続人確定の目的法律上の相続人を漏れなく確認する戸籍収集そのものが目的ではない
戸籍謄本現在の戸籍関係を確認する現在戸籍だけでは過去の子や婚姻歴を確認しきれない
除籍謄本全員が除かれた戸籍を確認する死亡、転籍、婚姻などで過去戸籍が必要になる
改製原戸籍作り替え前の戸籍を確認する電算化・法令改正前の情報を確認する
戸籍の附票住所の履歴を確認する相続人の連絡先、不動産登記上の住所確認に使う
出生から死亡までの戸籍被相続人の子の有無を確認する前婚の子、認知、養子を見落とさない
相続人全員の現在戸籍相続人の生存・氏名を確認する先死亡者がいれば代襲・数次相続を検討する
兄弟姉妹相続父母側の戸籍まで確認範囲が広がる半血兄弟姉妹、甥姪の代襲に注意する
広域交付本籍地以外でも一定の戸籍証明書を取得しやすくなった対象者・対象書類・請求方法には制約がある
法定相続情報一覧図戸籍一式の提出負担を軽減する税務判断や財産調査をすべて代替するものではない
相続税申告法定相続人の数が基礎控除・税額計算に影響する養子・相続放棄・代襲相続の税務上の扱いを確認する
相続登記令和6年4月1日から申請義務化期限、相続人申告登記、司法書士等との連携を意識する
専門家相談戸籍・税務・登記・分割を一体で整理する複雑な相続人関係では早期相談が有効
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