相続が起きたとき、最初に整理しておきたいことの一つが「誰が相続人になるのか」です。
相続税の申告では、どうしても財産の評価や税額の計算に目が向きがちです。しかし、その前提として、相続人の範囲と法定相続分が正しく確定していなければ、遺産分割協議も、相続税の基礎控除も、相続税の総額の計算も、そして申告書の作成も、正しく進めることはできません。
法定相続人の確認は、単なる戸籍上の事務作業ではありません。次のような判断は、すべて法定相続人と法定相続分の確認から始まります。
- 誰が遺産分割協議に参加しなければならないのか
- 誰に遺留分への配慮が必要なのか
- 相続税の基礎控除額はいくらになるのか
- 生命保険金や死亡退職金の非課税枠はどのように計算するのか
- 相続税の総額を計算するとき、どの法定相続分を使うのか
本記事では、相続法務と相続税実務の入口として、法定相続人と法定相続分の基本を整理します。戸籍の具体的な集め方や法定相続情報証明制度の手続きは別の記事で扱うこととし、ここでは「誰が相続人となるのか」「どの割合が基準になるのか」「税務上どこに影響するのか」という三点に絞ってお話しします。
法定相続人とは何か
法定相続人とは、民法の定めによって相続人となる人をいいます。
民法では、配偶者は常に相続人となります。そのうえで、血族相続人については、子、直系尊属、兄弟姉妹という順に相続順位が定められています。
先順位の相続人がいる場合には、後順位の人は相続人になりません。たとえば、子がいる場合には、原則として父母や兄弟姉妹は相続人になりません。父母が相続人になるのは、子や孫といった直系卑属がいない場合です。そして兄弟姉妹が相続人になるのは、直系卑属も、父母や祖父母などの直系尊属もいない場合に限られます。
出典:e-Gov法令検索|民法 出典:政府広報オンライン|知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
実務では、この「誰が相続人か」を、思い込みではなく戸籍で確認します。家族が把握していなかった婚姻や離婚、養子縁組、認知、前婚の子、代襲相続人などが見つかることが、決して珍しくないからです。相続人と相続分を正しく理解しておくことは、遺産分割を円滑に進め、想定外のトラブルを避けるための土台にもなります。
配偶者は常に相続人になる
被相続人に法律上の配偶者がいる場合、その配偶者は常に相続人になります。
ここでいう配偶者とは、法律上の婚姻関係にある配偶者です。内縁関係や事実婚の相手、離婚した元配偶者は、民法上の法定相続人には含まれません。
もっとも、内縁関係の方や事実婚の相手に財産を残したいという場合には、遺言や生命保険、死因贈与といった別の承継手段を検討する余地があります。これは法定相続人の問題ではなく、相続対策・遺言設計の問題として整理すべき論点です。
配偶者がいる場合、配偶者は血族相続人とともに相続人になります。そして、血族相続人が誰になるかによって、配偶者の法定相続分も変わってきます。
血族相続人には順位がある
血族相続人の順位は、次のとおりです。
| 順位 | 相続人となる人 | 相続人になる場面 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子、子の代襲相続人 | 原則として最優先で相続人になる |
| 第2順位 | 直系尊属 | 第1順位の相続人がいない場合に相続人になる |
| 第3順位 | 兄弟姉妹、兄弟姉妹の代襲相続人 | 第1順位・第2順位の相続人がいない場合に相続人になる |
第1順位の「子」には、実子だけでなく養子も含まれます。また、法律上の親子関係がある限り、嫡出子と非嫡出子とで法定相続分に差はありません。胎児についても、死産の場合を除き、相続に関しては既に生まれたものとして扱われます。
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実務で気をつけたいのは、「家族として付き合いがあるかどうか」と「法律上の相続人かどうか」は、必ずしも一致しないという点です。疎遠な子、前婚の子、認知された子、養子縁組をした子は、法律上の相続人となる可能性があります。その一方で、長年同居して介護をしてきた親族であっても、法定相続人に該当しないことがあります。
この差は、遺産分割の参加者、遺留分、相続税の申告、相続登記に、そのまま直結します。
法定相続分とは何か
法定相続分とは、民法で定められた相続分の割合です。
ただし、これは「必ずこの割合で遺産を分けなければならない」という意味ではありません。遺言がある場合には、原則として遺言の内容が優先されます。また、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる内容で遺産分割を行うことも可能です。
法定相続分は、遺産分割協議で合意できなかったときに適用される割合であって、必ずその割合どおりに分けなければならないものではありません。
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とはいえ、法定相続分は実務上きわめて重要です。
相続人どうしの交渉では、法定相続分が話し合いの出発点になります。家庭裁判所での調停・審判でも、法定相続分、特別受益、寄与分などを前提に、具体的な取得分が整理されていきます。相続税の計算でも、課税遺産総額をいったん法定相続分で取得したものと仮定して、相続税の総額を求めます。
つまり法定相続分は、遺産分割の絶対的な結論ではないものの、法務・税務の双方で判断の基準線となるものなのです。
法定相続分の基本パターン
現行民法における主な法定相続分は、次のとおりです。
| 相続人の組合せ | 法定相続分 |
|---|---|
| 配偶者のみ | 配偶者が全部 |
| 子のみ | 子が全部を人数で均等に分ける |
| 直系尊属のみ | 直系尊属が全部を人数で均等に分ける |
| 兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹が全部を分ける。ただし半血兄弟姉妹は全血兄弟姉妹の2分の1 |
| 配偶者と子 | 配偶者2分の1、子全員で2分の1 |
| 配偶者と直系尊属 | 配偶者3分の2、直系尊属全員で3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1 |
民法第900条では、子と配偶者が相続人である場合はそれぞれ2分の1、配偶者と直系尊属の場合は配偶者が3分の2・直系尊属が3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者が4分の3・兄弟姉妹が4分の1と定められています。また、同順位の相続人が複数いるときは原則として均等ですが、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1とされています。
表だけを見ると単純に思えますが、実務では次のような確認が欠かせません。
- 子が先に死亡している場合、孫が代襲相続人になるか
- 養子縁組の時期と、代襲相続人の範囲はどうなるか
- 胎児がいる場合、出生を待って分割を進める必要があるか
- 兄弟姉妹相続で、全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹が混在していないか
- 相続放棄があった場合、次順位者が相続人になるのか
- 古い相続や未登記不動産で、相続開始時の法律が現行法と異ならないか
法定相続分の計算は、単に割合を当てはめるだけの作業ではありません。相続人の確定と一体で行う必要があるのです。
子がいる場合の相続人と相続分
被相続人に子がいる場合、その子が第1順位の相続人になります。
配偶者がいれば、配偶者が2分の1、子全員で2分の1です。子が複数いる場合、子の間では原則として均等に分けます。配偶者がいない場合には、子が相続財産を全体として承継し、複数の子がいるときはやはり均等に分けます。
ここでいう子には、養子、認知された子、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子も含まれます。現在の民法では、嫡出子と非嫡出子とで法定相続分に差はありません。かつては非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定がありましたが、最高裁の決定を受けた民法改正により、現行法では同等に扱われています。現行制度を前提とする限り、非嫡出子であることを理由に法定相続分を減らすことはできません。
ただし、古い相続が未処理のまま残っている場合には、相続開始時点の法律を確認する必要があります。現行法だけを見て処理してしまうと、古い未登記不動産や数次相続で、相続人や相続分を誤ることがあるからです。
この点については、旧民法・応急措置法・現行民法のいずれが適用されるかによって相続人が変わる場面として、改めて整理しておきたい論点です。
直系尊属が相続人になる場合
被相続人に子や孫などの直系卑属がいない場合、直系尊属が相続人になります。
直系尊属とは、父母や祖父母など、被相続人より上の世代で直系の親族をいいます。父母が存命であれば父母が相続人となり、父母がいない場合に祖父母が相続人となるというように、親等の近い人が優先します。
配偶者がいれば、配偶者が3分の2、直系尊属全員で3分の1です。配偶者がいない場合には、直系尊属が全部を承継します。
直系尊属が相続人になる場面では、相続税の税額計算だけでなく、二次相続や将来の承継先にも注意が必要です。親が高齢である場合、一次相続で親に財産が移ると、その後すぐに親の相続が発生することも考えられます。法定相続分どおりに分けるかどうかは、目先の税額だけでなく、財産管理や納税資金、さらには次の相続まで見据えて検討すべき問題です。
兄弟姉妹が相続人になる場合
被相続人に子や孫などの直系卑属がなく、父母や祖父母などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
配偶者がいれば、配偶者が4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1です。配偶者がいない場合には、兄弟姉妹が全部を承継します。
兄弟姉妹相続では、実務上、戸籍調査が複雑になりやすい傾向があります。被相続人だけでなく、父母の婚姻歴、前婚の子、半血兄弟姉妹、兄弟姉妹の死亡、甥姪への代襲相続などまで確認しなければならないからです。
また、兄弟姉妹には遺留分がありません。これは、子や配偶者がいる相続とは大きく異なる点です。兄弟姉妹相続では、遺言を作成しておくことで、財産承継を比較的整理しやすくなる場面があります。ただし、遺言の有効性、遺言執行、不動産登記、相続税申告への影響については、別途確認が必要です。
代襲相続とは何か
代襲相続とは、本来相続人となるはずだった人が相続開始前に死亡している場合などに、その人の子などが代わって相続人になる制度です。
代襲相続が問題となるのは、主に子と兄弟姉妹です。
子が相続人となるはずだった場合、その子が被相続人より先に死亡していると、その子の子、つまり被相続人から見た孫が代襲相続人になります。孫も死亡している場合には、ひ孫が再代襲することがあります。
一方、兄弟姉妹が相続人となるはずだった場合、その兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していると、その兄弟姉妹の子、つまり甥・姪が代襲相続人になります。ただし、兄弟姉妹についての代襲は一代限りであり、甥・姪の子までは代襲しません。
代襲相続の原因は、死亡だけではありません。相続欠格や廃除によって相続権を失った場合にも、代襲相続が問題になります。これに対して、相続放棄は代襲相続の原因にはなりません。相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされるため、その子が当然に代襲相続人になるわけではないのです。
この点は、相続人の数にも税額計算にも影響します。誰かが相続放棄をした場合に、単純にその人の子へ相続分が移ると考えるのは誤りです。相続放棄により、次順位者が相続人になることがあります。
養子がいる場合の注意点
養子は、民法上、被相続人の子として相続人になります。
そのため、被相続人に実子と養子がいる場合、養子も第1順位の相続人として扱われ、原則として実子と同じ法定相続分を持ちます。養子であることだけを理由に、法定相続分が低くなるわけではありません。
ただし、相続税の計算では注意が必要です。
相続税の計算では、基礎控除額、生命保険金の非課税限度額、死亡退職金の非課税限度額、相続税の総額の計算などで、「法定相続人の数」が重要な意味を持ちます。相続人に養子がいる場合、相続税法上、法定相続人の数に含められる養子の数には制限があります。被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで、という制限です。さらに、養子を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる場合には、その原因となる養子を法定相続人の数に含めることはできません。
一方で、特別養子縁組による養子や、配偶者の実子で被相続人の養子となった人など、相続税法上は実子として取り扱われる人もいます。養子がいる相続では、民法上の相続人としての地位と、相続税法上の「法定相続人の数」への算入とを、分けて整理しなければなりません。
さらに、養子が被相続人より先に死亡している場合、その養子の子が代襲相続人になるかどうかにも注意が必要です。養子縁組の前に生まれていた養子の子は、原則として養親の直系卑属にはあたらないため、養親との関係で当然に代襲相続人になるわけではありません。ここは、養子縁組の時期と出生時期を戸籍で確認する必要があります。
胎児がいる場合の注意点
胎児は、相続については既に生まれたものとみなされます。ただし、死産の場合には、この取扱いは適用されません。
出典:e-Gov法令検索|民法 出典:政府広報オンライン|知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
相続開始時に胎児がいる場合、遺産分割協議を急いで進めることには注意が必要です。胎児が出生すれば相続人となるため、出生前に他の相続人だけで分割協議を完結させてしまうと、相続人全員の合意を欠くことになりかねません。
相続税申告の期限との関係でも、胎児の出生、相続人の確定、未成年者の代理、特別代理人の要否などを整理しておく必要があります。胎児の存在は、法定相続人の数、基礎控除額、相続税の総額、遺産分割協議の当事者に影響するため、早い段階で確認しておきたい事項です。
法定相続分と遺産分割は同じではない
法定相続分は、遺産分割の基準となる割合ですが、現実の財産をそのまま機械的に分けるためのものではありません。
相続財産には、不動産、預貯金、有価証券、非上場株式、生命保険、貸付金、債務などが含まれます。法定相続分が2分の1であっても、不動産を物理的に2分の1ずつ分けられるとは限りません。非上場株式を法定相続分どおりに分けると、会社の支配権が分散してしまうことがあります。賃貸不動産を共有にすれば、将来の管理・売却・修繕・次世代への承継で問題が生じることもあります。
そのため遺産分割では、法定相続分を出発点としながら、次のような視点を組み合わせて判断していきます。
- 誰がどの財産を管理できるか
- 不動産を共有にする必要があるか、それとも避けるべきか
- 代償金を支払う資金があるか
- 納税資金をどこから確保するか
- 二次相続で財産が偏りすぎないか
- 過去の生前贈与や特別受益をどう整理するか
- 遺留分への配慮が必要か
相続税申告では、「法定相続分どおりに分けたか」だけでなく、「実際に誰がどの財産を取得したか」が各人の税額に影響します。したがって法定相続分は重要ではあるものの、それだけで承継設計を完結させるべきではないのです。
法定相続分と相続税計算の関係
相続税の計算では、法定相続人の数と法定相続分が大きな役割を果たします。
相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。また、相続税の総額を計算するときは、課税価格の合計額から基礎控除額を控除した課税遺産総額を、各法定相続人が民法上の法定相続分に従って取得したものと仮定して、各人ごとの税額を計算し、その合計額を相続税の総額とします。そのうえで、実際に財産を取得した各人の課税価格に応じて、相続税の総額を按分します。
この仕組みは、しばしば誤解されます。
相続税は、各相続人が実際に取得した財産に直接税率を掛けて計算するものではありません。いったん法定相続分で取得したものと仮定して相続税の総額を求め、その総額を実際の取得割合に応じて各人に割り振る、という構造になっています。制度上も、各人が実際に取得した財産にそのまま税率を乗じる方式ではないことが明確にされています。
そのため、法定相続人を1人誤るだけでも、基礎控除額にとどまらず、課税遺産総額の按分、相続税の総額、各人の税額にまで影響が及びます。相続人の範囲を正確に確定することは、相続税申告の品質管理そのものなのです。
相続放棄があった場合の税務上の注意点
民法上、相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされます。
その結果、相続放棄によって、次順位者が相続人になることがあります。たとえば、第1順位の相続人全員が相続放棄をすると、第2順位の直系尊属が相続人になる可能性があります。さらに直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹が相続人になる可能性もあります。
一方で、相続税の基礎控除額などを計算する際の法定相続人の数については、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数を用いる取扱いがあります。
ここで、民法上の相続人と、相続税法上の計算における法定相続人の数とを、混同しないように気をつけたいところです。
- 誰が遺産を取得する権利を持つか
- 誰が遺産分割協議に参加するか
- 誰が債務を承継するか
- 相続税の基礎控除額を計算する際の法定相続人の数はいくつか
これらは互いに関連していますが、まったく同じ判断ではありません。相続放棄がある場合には、民法上の効果と相続税計算上の取扱いを、分けて確認する必要があります。
法定相続人の確認で見落としやすいポイント
法定相続人の確認では、次のような点を見落としがちです。
前婚の子・認知された子
被相続人に前婚の子がいる場合、その子は現在の家族関係とは別に相続人になります。認知された子も、法律上の親子関係がある限り相続人です。
相続人全員の合意がなければ、遺産分割協議は成立しません。家族が把握していなかった相続人が後から判明すると、遺産分割協議、登記、相続税申告の前提が崩れてしまうことがあります。
養子縁組
養子は民法上、子として相続人になります。ただし、相続税法上、法定相続人の数に算入できる養子の数には制限があります。また、養子の子の代襲相続では、養子縁組の前に生まれた子か、後に生まれた子かが問題になることがあります。
兄弟姉妹相続
兄弟姉妹相続では、被相続人の戸籍だけでなく、父母の戸籍関係までさかのぼる必要があります。半血兄弟姉妹、先に死亡した兄弟姉妹、甥・姪の有無を確認しなければなりません。
胎児・未成年者
胎児がいる場合には、出生を考慮する必要があります。未成年者が相続人になる場合には、親権者との利益相反や、特別代理人の要否も問題になります。
相続開始時期
古い相続、数次相続、未登記不動産が残っている場合には、相続開始時点の法律を確認する必要があります。相続人の範囲や相続分は、常に現在の感覚で判断できるとは限らないからです。
法定相続人・法定相続分を確認する順序
相続発生後に法定相続人と法定相続分を確認する場合、実務上は次の順序で整理していきます。
まず、被相続人の死亡日を確認します。相続開始日が確定しなければ、どの時点の相続人を確認するのかが定まらないからです。
次に、配偶者の有無を確認します。法律上の婚姻関係があるか、離婚していないかを戸籍で確認します。
そのうえで、第1順位の子・代襲相続人を確認します。実子、養子、認知された子、前婚の子、胎児、代襲相続人を、ひととおり押さえます。
第1順位がいなければ、第2順位の直系尊属を確認します。父母、祖父母の存否と親等を確認します。
第2順位もいなければ、第3順位の兄弟姉妹・甥姪を確認します。兄弟姉妹相続では戸籍調査の範囲が広がりやすいため、特に慎重に進めます。
最後に、相続放棄、欠格、廃除、遺言、養子の税務上の算入制限などを確認し、民法上の相続人、遺産分割協議の当事者、相続税計算上の法定相続人の数を整理します。
この順序を踏むことで、相続税申告や遺産分割で前提を誤るリスクを下げることができます。
法定相続分を「税額」だけで見ない
法定相続分は、相続税計算に大きく影響します。しかし、法定相続分を確認する目的は、税額を計算することだけではありません。
実際の相続では、法定相続分どおりに分けることが、必ずしも家族にとって合理的とは限りません。自宅を誰が取得するか、賃貸不動産を共有にするか、事業用資産を後継者に集中させるか、配偶者の生活をどう守るか、納税資金をどう確保するか。こうした事情によって、望ましい分割方針は変わってきます。
その一方で、法定相続分を無視した分割を行えば、不満を持つ相続人との対立、遺留分侵害額請求、代償金の支払負担、二次相続での税負担、申告後の説明の難しさにつながることもあります。
したがって法定相続分は、「その割合で分けるための答え」ではなく、「そこからどのように理由をもって調整していくかを考えるための基準」として扱うべきものなのです。
相談前に整理しておきたい情報
法定相続人と法定相続分について専門家に相談される場合、次の情報を整理しておくと、初期の判断がスムーズに進みます。
- 被相続人の死亡日
- 配偶者の有無
- 子の有無、前婚の子、認知された子、養子の有無
- 子が先に死亡している場合の孫・ひ孫の有無
- 父母・祖父母の存否
- 兄弟姉妹、甥・姪の有無
- 相続放棄を検討している人、すでに放棄した人の有無
- 遺言書の有無
- 胎児、未成年者、判断能力に不安がある相続人の有無
- 海外居住者、行方不明者、疎遠な相続人の有無
- 養子縁組の時期と、養子の子の出生時期
- 未登記不動産や古い相続が残っていないか
これらは、遺産分割だけでなく、相続税の基礎控除、相続税の総額、生命保険金・死亡退職金の非課税枠、相続登記、相続税申告期限内の対応にも関係してきます。
法定相続人の確認は、相続税申告の出発点である
相続税申告は、財産評価や特例適用の前に、相続人の確定から始まります。
不動産評価や小規模宅地等の特例、非上場株式評価、名義預金、生命保険、過去の贈与など、相続税申告には多くの専門論点があります。しかし、どれほど高度な評価や計算を行っても、法定相続人の範囲や法定相続分の前提が誤っていれば、申告全体の信頼性が損なわれてしまいます。
特に、相続人関係が複雑な場合、たとえば養子・前婚の子・代襲相続・相続放棄・兄弟姉妹相続・海外居住者・古い未登記不動産が関係する場合には、早い段階で法務と税務を一体で整理しておく必要があります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、相続税申告や相続対策について、税額計算だけでなく、相続人関係、法定相続分、財産構成、遺産分割、財産評価、納税資金、そして申告後の説明可能性までを踏まえた整理を大切にしています。
誰が相続人になるのか、法定相続分をどう考えるべきか、相続税の基礎控除や申告の要否にどう影響するのか。こうした点に不安がある場合には、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。戸籍や財産資料を前提に、相続税申告・遺産分割・将来の承継を見据えた判断材料を整理いたします。
重要ポイントの振り返り
| 論点 | 基本的な考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 法定相続人 | 民法で相続人となる人 | 思い込みではなく戸籍で確認する |
| 配偶者 | 法律上の配偶者は常に相続人 | 内縁・事実婚・元配偶者は法定相続人ではない |
| 第1順位 | 子、子の代襲相続人 | 実子、養子、認知された子、非嫡出子、胎児を確認 |
| 第2順位 | 直系尊属 | 子や孫などがいない場合に相続人となる |
| 第3順位 | 兄弟姉妹、甥・姪 | 兄弟姉妹相続では戸籍調査が広がりやすい |
| 代襲相続 | 本来の相続人に代わって子などが相続 | 相続放棄は代襲原因ではない |
| 法定相続分 | 民法で定める相続割合 | 遺言や相続人全員の合意で異なる分割も可能 |
| 養子 | 民法上は子として相続人になる | 相続税法上の法定相続人の数には算入制限がある |
| 胎児 | 死産の場合を除き相続人に含まれる | 出生前に分割を進める場合は慎重な対応が必要 |
| 相続税計算 | 基礎控除・相続税総額に法定相続人と法定相続分が影響 | 実際の取得額に直接税率を掛ける計算ではない |
| 相続放棄 | 民法上は初めから相続人でなかったものとみなされる | 税務上の法定相続人の数とは区別する |
| 古い相続 | 相続開始時の法律を確認する | 未登記不動産や数次相続では現行法だけで判断しない |