経営者による内部統制の無効化は、不正リスク対応の中でも、監査人が最も慎重に扱うべき論点の一つです。
理由は、それほど複雑ではありません。内部統制は、本来、経営者の責任のもとで整備・運用されるものです。その経営者自身が、承認、レビュー、職務分掌、システム制御、決算統制、取締役会報告、監査役等への説明といった統制を意図的に迂回してしまえば、通常の統制依拠を前提とした監査アプローチだけでは対応しきれません。
この点について、監査基準報告書240は、経営者が会計記録を改竄し、不正な財務諸表を作成し、又は他の従業員による不正を防止するための内部統制を無効化できる立場にある場合が多いことを指摘しています。そのため、経営者不正による重要な虚偽表示を発見できないリスクは、従業員不正の場合よりも高いとされています。監査人には、経営者が内部統制を無効化するリスクを考慮し、誤謬を発見するために有効な監査手続が不正の発見には有効でない可能性を認識したうえで、監査の過程を通じて職業的懐疑心を保持する責任があります。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
本稿では、経営者による内部統制の無効化リスクを、仕訳テスト、会計上の見積り、重要な非定型取引、関連当事者、監査証拠、監査調書、監査役等との連携まで接続して整理します。
なお本稿は、2026年7月時点において、日本公認会計士協会が公表する監査実務指針等の一覧で、監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」が2024年9月26日版として掲載されていることを確認したうえで記載しています。
出典:日本公認会計士協会|監査実務指針等
経営者による内部統制の無効化とは何か
経営者による内部統制の無効化とは、経営者が、本来機能すべき内部統制を意図的に無視し、又は迂回して、財務報告に影響を与える行為を指します。
ここでいう「経営者」は、代表取締役だけを意味するわけではありません。財務報告に実質的な影響力を持つ業務執行者、経理・財務を統括する役員、子会社管理を担う上位者、重要な決算判断を承認する者なども、実態に応じて検討の対象になります。
実務では、次のような形で現れます。
- 期末直前に架空又は不適切な仕訳を入力する
- 通常の承認プロセスを経ずに決算修正を行う
- 会計上の見積りに用いる仮定を意図的に楽観化又は悲観化する
- 売上や費用の認識時期を不適切に早める、又は遅らせる
- 重要な取引の経済実態よりも、望ましい会計処理を優先する
- 関連当事者や特別目的会社を利用して取引実態を見えにくくする
- 取締役会や監査役等に十分な説明を行わないまま、重要取引を処理する
- 開示すべき事項を省略、不明瞭化、又は誤って表示する
- 会計記録、契約書、議事録、証憑を改竄又は後付けで整備する
監査基準報告書240も、不正な財務報告が、会計記録や証憑書類の改竄、取引・会計事象・重要情報の虚偽記載又は意図的除外、会計基準の意図的な不適切適用によって行われることがあり、経営者による内部統制の無効化を伴うことが多いと整理しています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
なぜ通常の統制依拠だけでは足りないのか
内部統制監査や財務諸表監査では、統制が適切に整備・運用されていれば、その統制に依拠して実証手続の範囲や深度を調整することがあります。
しかし、経営者による内部統制の無効化は、この前提そのものを揺るがします。
通常の統制は、担当者レベルの誤謬や不正、承認漏れ、入力誤り、証憑不備、権限逸脱などを防止・発見するために設計されています。ところが、経営者や上位管理者が関与する場合、その者は承認権限を持ち、例外処理を認め、システム権限を付与し、決算修正を指示し、監査対応資料を統括し、監査役等への説明内容までコントロールできることがあります。
つまり、形式的には統制が存在していても、実質的には統制が経営者の意向に従属している──そうした状態が生じ得るのです。
内部統制の欠如、既存の内部統制の形骸化、マネジメントレビューの欠如、不健全な経営者の姿勢は、いずれも不正を誘発する内部統制上の弱点として整理されます。とりわけ、統制環境やガバナンスに不全がある場合には、個々の統制活動だけを見ていても、不正リスクを適切に評価できないことがあります。
したがって、経営者による内部統制の無効化への対応では、「承認されているか」だけでは足りません。
- 誰が承認したのか
- 承認者は独立して判断できたのか
- 承認の前提となる情報は正しいのか
- 取締役会や監査役等に実質的に共有されていたのか
- 経済実態と会計処理が整合しているのか
こうした点まで踏み込んで確認する必要があります。
経営者による内部統制の無効化は、全ての監査に存在するリスクである
経営者による内部統制の無効化リスクは、「経営者に不正の疑いがある会社だけ」で検討すればよいものではありません。
監査基準報告書240は、経営者による内部統制を無効化するリスクに対する監査人の評価にかかわらず、一定の監査手続を立案し実施しなければならないとしています。具体的には、総勘定元帳に記録された仕訳入力や、総勘定元帳から財務諸表を作成する過程における修正の適切性を検証する手続、会計上の見積りにおける経営者の偏向の検討、通常の取引過程から外れた重要な取引等の事業上の合理性の評価が求められます。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
ここで重要なのは、「全ての会社で経営者不正がある」と考えることではありません。
そうではなく、「経営者が内部統制を無効化できる立場にある」という構造的なリスクは、どの監査にも存在するということです。だからこそ監査人は、被監査会社の経営者が誠実であるという過去の経験があったとしても、経営者による内部統制の無効化に対応する監査手続を省略することはできません。
対応の入口は、仕訳テスト・見積り・非定型取引の三本柱
経営者による内部統制の無効化への対応は、大きく三つに分けて整理できます。
第一に、仕訳入力及びその他の修正の検証です。
第二に、会計上の見積りにおける経営者の偏向の検討です。
第三に、通常の取引過程から外れた重要な取引、又は通例でない重要な取引の事業上の合理性の評価です。
この三つは、単なる監査手続のメニューではありません。経営者が財務諸表を歪める典型的な経路を押さえたものです。
仕訳入力は、既に記録された取引を決算段階で修正する入口になります。会計上の見積りは、経営者の仮定や判断によって利益や資産・負債を調整できる領域です。そして非定型取引や関連当事者取引は、取引実態を複雑化させ、通常の業務プロセスや統制活動では見えにくい形で財務諸表へ影響を与える可能性があります。
したがって、これら三つを別々のチェック項目として処理するのではなく、財務諸表全体としてどのような不正シナリオがあり得るかを踏まえ、相互に関連づけて検討する必要があります。
仕訳テストは「抽出して証憑を見る」だけでは不十分
経営者による内部統制の無効化への対応として、最も代表的な手続が仕訳テストです。
しかし仕訳テストは、一定金額以上の仕訳を抽出し、証憑を突合すれば足りるというものではありません。問われているのは、「不正な財務報告が仕訳入力又は決算修正を通じて行われる可能性に対して、十分な証拠を得ているか」です。
監査基準報告書240は、不正による重要な虚偽表示が、不適切又は権限外の仕訳を記録するような財務報告プロセスの操作を伴うことが多いとしています。監査対象期間を通じて、あるいは期末に、経営者が連結決算修正や組替えのように正規の仕訳によらずに財務諸表上の金額を修正する可能性もあります。さらに、自動化されたプロセスや内部統制は誤謬リスクを低減することがある一方で、自動処理された金額を個人が変更するような内部統制の無効化リスクには対応しません。監査人は、そのリスクを別途検討する必要があります。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
仕訳入力プロセスの理解が出発点になる
仕訳テストを実効的に行うためには、まず仕訳入力プロセスそのものを理解する必要があります。
- 誰が仕訳を起票するのか
- 誰が承認するのか
- 手入力仕訳と自動仕訳はどのように区別されるのか
- 決算整理仕訳、連結修正仕訳、組替仕訳、消去仕訳は、どのシステム又はスプレッドシートで処理されるのか
- 修正仕訳の承認履歴は残るのか
- 仕訳データの抽出範囲は、総勘定元帳全体を網羅しているのか
- 締切後の修正、過年度修正、トップサイド仕訳、子会社からの修正連絡は、どのように管理されているのか
これらを理解しないまま、金額基準やキーワードだけで抽出条件を設定すれば、仕訳テストは形式的なものになってしまいます。
公認会計士・監査審査会の検査結果事例集でも、仕訳内容の理解だけで「問題のある仕訳ではない」と判断し、不正リスクに対応した手続を実施していない事例が示されています。また、被監査会社の事業環境や、仕訳の入力・修正に係る業務プロセスの理解に基づかないまま、形式的に抽出条件を設定して仕訳テストを実施している事例も見られるとされています。仕訳テストに使用する仕訳データの網羅性についても、十分かつ適切な監査証拠を入手する必要があるとされています。
出典:公認会計士・監査審査会|監査事務所検査結果事例集 令和5事務年度版 Ⅲ.個別監査業務編
仕訳テストで見るべき抽出条件
仕訳テストでは、監査対象会社の事業、決算プロセス、IT環境、不正リスク評価に応じて、抽出条件を設計する必要があります。
監査基準報告書240は、不適切な仕訳入力やその他の修正が持つ特性として、次のようなものを例示しています。取引とは無関係、又はほとんど使用されない勘定を利用した仕訳。入力担当者以外による仕訳。期末又は締切後の仕訳で、摘要欄の説明が不十分なもの。未登録の勘定科目を用いる仕訳。同じ数字が並ぶ数値を含む仕訳。あわせて、複雑又は通例でない取引を含む勘定、重要な見積りと期末修正を含む勘定、過去に虚偽表示に利用された勘定、適時に調整されていない差異を含む勘定、内部取引を含む勘定などにも注意が必要とされています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
実務上は、例えば次のような観点を組み合わせていきます。
- 期末日直前、期末日、締切後、監査指摘後に入力された仕訳
- 売上、売上原価、棚卸資産、固定資産、減損、引当金、税効果など、重要論点に影響する仕訳
- 通常使用されない勘定科目又は摘要を含む仕訳
- 手入力仕訳、トップサイド仕訳、連結修正仕訳、組替仕訳
- 入力者と承認者が同一、又は職務分掌上不自然な仕訳
- 経営者、役員、経理責任者、子会社管理者が直接関与する仕訳
- 丸い金額、同一数字の連続、不自然な端数を含む仕訳
- 過年度に虚偽表示や修正が発生した勘定に関する仕訳
- 取引実態と摘要、証憑、資金移動、会計処理が整合しない仕訳
- 内部取引、関連当事者取引、非連結子会社、特別目的会社に関係する仕訳
重要なのは、抽出条件を「監査法人の標準設定」として処理しないことです。抽出条件は、監査対象会社の不正シナリオに対応していなければ意味を持ちません。
仕訳データの網羅性を確認しなければ、仕訳テストは成立しない
仕訳テストでは、どうしても抽出後の証憑確認に目が向きがちです。しかしその前提として、抽出対象となる仕訳データが網羅的であることを確認しなければなりません。
- 総勘定元帳データが全ての会計単位を含んでいるか
- 子会社、海外拠点、連結修正、組替、消去、決算整理が含まれているか
- 手入力仕訳と自動仕訳が識別できるか
- 締切後修正が別ファイルで管理されていないか
- 連結パッケージ上の修正が元帳データに反映されているか
- 抽出時点以降に仕訳が追加又は修正されていないか
- 管理者権限による変更履歴が残っているか
仕訳データの網羅性が確認されていなければ、どれだけ精緻な抽出条件を設定しても、母集団自体が不完全である可能性が残ります。とりわけ経営者による内部統制の無効化では、通常の業務プロセスを通らない修正や、監査対象データから意図的に除外された修正が問題になり得ます。
したがって仕訳テストの調書では、抽出条件だけでなく、データの入手元、抽出範囲、対象会社・拠点・期間、システムとの整合、総勘定元帳との一致、連結修正の取扱いまで説明できる必要があります。
会計上の見積りは、経営者バイアスが入りやすい領域
経営者による内部統制の無効化は、仕訳だけで行われるわけではありません。会計上の見積りも、重要な経路になります。
減損、繰延税金資産の回収可能性、貸倒引当金、棚卸資産評価、金融商品の時価、退職給付、引当金、偶発債務、継続企業の前提。これらはいずれも、経営者の仮定や判断によって財務諸表に大きな影響を与える領域です。
会計上の見積りは、将来事象の結果に依存するため、そもそも不確実性を伴います。見積額と実績が乖離したとしても、それだけで不正や誤謬になるわけではありません。
問題は、見積り時点で利用可能であった情報を適切に考慮していたか、合理的な仮定に基づいていたか、そして経営者の偏向が存在していたか、という点にあります。会計上の見積りには、経営者の偏向の可能性と見積りの不確実性がつきまとうため、監査上の重要な論点になりやすい領域なのです。
監査基準報告書240は、不正な財務報告が会計上の見積りに関する意図的な虚偽表示によって行われることが多く、利益の平準化又は目標利益水準の達成を目的として、引当金等が過少又は過大に表示されることがあるとしています。また、過年度の重要な会計上の見積りに関連する経営者の仮定及び判断を遡及的に検討する目的は、経営者の偏向の可能性が示唆されているかどうかを判断することにあるとされています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
見積りバイアスは、個別論点ではなく全体傾向で見る
会計上の見積りにおける経営者バイアスは、個々の見積りだけを見ていると、合理的に映ることがあります。
減損テストの事業計画は、単独では説明可能かもしれません。繰延税金資産の回収可能性も、一定の将来課税所得の見込みに基づいているかもしれません。貸倒引当金や棚卸評価損も、過年度実績や管理資料を参照しているかもしれません。
しかし、複数の見積りを横断して眺めたとき、そのすべてが経営者に有利な方向へ偏っている、ということがあります。
- 売上成長率は楽観的である
- 原価率は改善前提である
- 固定費削減は実現可能性の説明が薄い
- 減損兆候の判定は保守的でない
- 貸倒リスクは過小に見積もられている
- 棚卸資産の滞留評価は甘い
- 繰延税金資産の回収可能性は、過年度実績との整合が弱い
- 引当金は発生可能性を低く評価している
- 偶発債務は注記対象外と判断されている
- 継続企業の前提に関する資金繰り見通しが楽観的である
このような場合、個別の見積りごとに「一定の説明がある」と結論づけるだけでは足りません。監査人は、見積り全体として経営者の偏向を示していないかを検討し、必要に応じて会計上の見積りを全体として再評価する必要があります。
とりわけ、業績目標、資金調達、上場維持、財務制限条項、役員報酬、株価、市場期待、金融機関対応といったプレッシャーが存在する場合には、見積りの方向性をより慎重に見る必要があります。
事業計画は「承認済み」だけでは監査証拠にならない
減損、税効果、継続企業、企業結合、のれん、投資評価などでは、事業計画が重要な監査証拠になります。
しかし、事業計画が取締役会で承認されているという事実だけで、その合理性が保証されるわけではありません。経営者が作成し、経営者が承認する事業計画は、内部統制の無効化リスクがある場合、むしろ慎重に評価すべき対象です。
監査人は、事業計画について、次のような観点から検討する必要があります。
- 過年度の予算達成状況
- 当年度実績との整合
- 主要KPIとの整合
- 市場環境、競合状況、価格改定、販売数量の前提
- 人員計画、設備投資、資金調達との整合
- 取締役会での議論内容
- 監査役等への説明内容
- 外部資料、契約、受注残、資金繰り表との整合
- 事業撤退、減損、リストラクチャリング等の意思決定との整合
事業計画の監査で重要なのは、経営者の見通しを否定することではありません。見通しが財務諸表の重要な金額に影響する以上、その前提、裏付け、感応度、過年度の見積り精度を検討し、監査調書上、なぜその計画を監査証拠として利用できると判断したのかを説明できる状態にしておくことです。
重要な非定型取引では、会計処理より先に事業上の合理性を見る
経営者による内部統制の無効化は、重要な非定型取引や関連当事者取引を通じて行われることがあります。
通常の販売、購買、在庫、固定資産、資金管理といった業務プロセスには、一定の内部統制が組み込まれています。しかし非定型取引は、そうした業務フローを通らず、個別稟議、役員決裁、特別契約、期末処理、子会社取引、関連当事者取引、組織再編、資金取引、複雑な金融取引として処理されることがあります。
この場合、監査人がまず確認すべきは、会計処理の形式ではなく、取引の事業上の合理性です。
- なぜこの取引が必要なのか
- なぜこの時期に行われたのか
- なぜこの相手先なのか
- 価格、条件、決済方法は、第三者取引として合理的か
- 取締役会や監査役等に説明されているか
- 相手先は実体を有しているか
- 関連当事者性はないか
- 資金の流れ、物の流れ、役務提供の実態はあるか
- 会計処理を目的として取引が組成されていないか
監査基準報告書240は、企業の通常の取引過程から外れた重要な取引、又は通例でない重要な取引について、その事業上の合理性が、不正な財務報告又は資産の流用の隠蔽を示唆するかどうかを評価することを求めています。兆候としては、複雑な取引、取締役会又は監査役等と十分に討議・文書化されていない取引、経済実態より特定の会計処理の必要性が強調されている取引、非連結の関連当事者との取引、以前識別されていなかった関連当事者や実体のない取引先が関係する取引などが示されています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
関連当事者は、形式的な開示チェックだけで終わらせない
関連当事者取引は、経営者による内部統制の無効化と相性が悪い領域です。
関連当事者取引そのものが不正であるわけではありません。しかし関連当事者は、通常の第三者取引よりも取引条件が歪みやすく、取引実態が見えにくく、会社の意思決定が特定者の利益に影響される可能性があります。さらに、関連当事者性そのものが経営者の説明に依存することも少なくありません。
特に注意したいのは、次のような取引です。
- 実質的に経営者又はその関係者が支配する会社との取引
- 形式上は第三者だが、資金、役員、人員、取引依存度から関連性が疑われる取引先
- 非連結子会社、関連会社、持分法非適用会社、特別目的会社を通じた取引
- 期末日近くの売上、仕入、資産売却、資金貸借、債務保証
- 取引価格の合理性を説明しにくい取引
- 取締役会や監査役等への報告が不十分な取引
- 取引条件が第三者取引と異なるにもかかわらず、その理由が説明されていない取引
- 会計処理又は財務指標への影響が大きい取引
関連当事者取引において、会社から提出された関連当事者一覧だけに依拠することは危険です。登記、役員兼任、株主情報、資金移動、契約書、取引先マスタ、与信資料、メール、取締役会議事録、監査役等とのコミュニケーション、内部通報情報などを組み合わせ、実質的な関係を確認する必要があります。
職業的懐疑心は、手続の深度に反映されなければならない
経営者による内部統制の無効化への対応では、職業的懐疑心が繰り返し強調されます。
しかし職業的懐疑心は、抽象的な心構えではありません。監査手続の種類、時期、範囲、証拠源、質問先、そして調書化に反映されて、初めて意味を持ちます。
監査基準報告書240は、職業的懐疑心について、入手した情報と監査証拠が不正による重要な虚偽表示の存在を示唆していないか継続的に疑問を持つことを必要としています。そこには、監査証拠として利用する情報の信頼性や、情報の作成と管理に関する統制活動の検討も含まれます。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
たとえば、経営者の説明に一貫性がない場合、単に追加質問をしただけでは不十分です。説明の変遷を調書に残し、どの証拠と矛盾しているのかを明確にし、追加でどの外部証拠を入手したのかを示す必要があります。
重要な契約書がある場合も、契約書が存在するというだけでは足りません。契約書の締結日、相手先の実在性、契約条件、取引実態、資金移動、取締役会承認、監査役等への説明、そして会計処理との整合まで確認します。
職業的懐疑心とは、「疑っている」と調書に書くことではありません。疑うべき状況を識別し、それに見合った証拠を取りに行き、矛盾を解消し、解消できない場合には監査上の影響を評価する。その一連の営みそのものです。
監査チーム内討議では、不正シナリオまで落とし込む
経営者による内部統制の無効化リスクは、監査チーム内の討議で具体化する必要があります。
「経営者による内部統制の無効化リスクあり」と結論づけるだけでは、監査手続にはつながりません。必要なのは、どのような経路で財務諸表が歪められる可能性があるかを、会社固有の状況に即して想定することです。
- 売上目標達成のために、どの取引で売上が前倒しされ得るか
- 利益確保のために、どの費用や引当金が先送りされ得るか
- 減損回避のために、どの事業計画や配賦基準が操作され得るか
- 繰延税金資産を維持するために、どの課税所得見込みが楽観化され得るか
- 連結範囲から外すことで、どの損失又は債務が見えにくくなるか
- 関連当事者を使って、どの資金移動又は循環取引が行われ得るか
- 期末日近くに、どの非定型取引が発生し得るか
- 子会社、海外拠点、事業部門、プロジェクト単位で、どこに統制の空白があるか
この討議が具体的であれば、仕訳テストの抽出条件、見積り監査の深度、非定型取引の検証、監査役等への質問、専門家の利用、審査論点が、自然につながっていきます。
逆に、討議が抽象的なままだと、各担当者はそれぞれの勘定科目手続を形式的に実施することになり、不正リスク対応が調書上で分断されてしまいます。
内部統制報告制度との関係を見落とさない
経営者による内部統制の無効化は、財務諸表監査だけでなく、内部統制報告制度にも影響します。
2023年4月に公表された改訂内部統制基準・実施基準では、内部統制がガバナンスや全組織的なリスク管理と一体的に整備及び運用されることの重要性が示されています。また、内部統制の評価範囲の決定にあたり、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮すべきことが、改めて強調されています。
出典:金融庁・企業会計審議会|財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準
同改訂の前文では、「リスクの評価と対応」において不正に関するリスクを考慮することの重要性を明示したこと、また、経営者による内部統制の無効化に関して、内部統制を無視又は無効ならしめる行為に対する全社的又は業務プロセスにおける適切な内部統制の例を示したことが説明されています。
出典:金融庁・企業会計審議会|財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)
したがって、経営者による内部統制の無効化が疑われる場合、監査人は次の点を整理する必要があります。
- 財務諸表監査上の重要な虚偽表示リスクにどう影響するか
- 内部統制の整備評価又は運用評価にどう影響するか
- 統制環境、リスク評価、情報と伝達、モニタリングに不備があるか
- 開示すべき重要な不備に該当し得るか
- 内部統制報告書の記載に影響するか
- 内部統制監査報告書に影響するか
- 監査役等にどのように報告すべきか
- 財務諸表監査の実証手続をどの程度拡大すべきか
経営者による内部統制の無効化は、「一つの統制が効かなかった」という局所的な不備ではありません。統制環境やガバナンスの不全を示す可能性がある、という点を見落とすべきではないでしょう。
監査役等との連携は、経営者不正対応の中心になる
経営者による内部統制の無効化リスクに対応するうえで、監査役等とのコミュニケーションは極めて重要です。
監査基準報告書240では、不正を防止し発見する基本的責任は経営者にある一方、取締役会や監査役等も責任を負っているとされています。そして、取締役会及び監査役等による監視には、経営者が内部統制を無効化する可能性や、財務報告プロセスへの不適切な干渉を考慮することが含まれるとされています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
また改訂内部統制基準でも、監査役等は、取締役及び執行役の職務執行に対する監査の一環として、独立した立場から内部統制の整備及び運用状況を監視・検証する役割と責任を有するとされています。
出典:金融庁・企業会計審議会|財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準
監査役等との連携で確認すべき事項は、監査計画の共有にとどまりません。
- 監査役等は、経営者の財務報告姿勢をどう見ているか
- 内部通報、不正の疑い、コンプライアンス事案を把握しているか
- 重要な非定型取引や関連当事者取引について説明を受けているか
- 会計上の見積りやKAM候補について、経営者と十分に議論しているか
- 内部統制不備や監査指摘への対応状況を、どのように監視しているか
- 内部監査部門から十分な情報を得ているか
- 経営者から独立して意見を述べられる状況にあるか
監査役等とのコミュニケーションは、監査人が経営者の説明を補強するための情報源でもあります。監査基準報告書240も、監査人が、取締役会及び監査役等が不正リスクに対する経営者の管理プロセスや内部統制をどのように監視しているかを理解し、監査役等に対して、不正、不正の疑い又は不正の申立てを把握しているかを質問しなければならないとしています。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
内部監査部門をどう使うか
内部監査部門は、経営者による内部統制の無効化リスクを検討するうえで、重要な情報源になります。
内部監査は、業務プロセス、内部統制、リスク管理、コンプライアンス、子会社管理、改善状況を継続的に見ています。内部監査人は、不正の兆候、現場の違和感、例外処理、監査指摘への対応状況、経営者又は管理者の反応を把握していることがあります。
ただし、内部監査部門が経営者から十分に独立していない場合、その情報には限界があります。内部監査部門が経営者に直接従属し、監査役等への報告経路が弱く、重要な指摘が経営者レベルで止まっているのであれば、内部監査そのものが統制環境の弱点を示している可能性すらあります。
内部監査・内部統制を考えるうえでは、ガバナンス、リスクマネジメント、コントロールの関係、内部監査部門がガバナンスで果たす役割、不正リスク、RCM、統制自己評価といった要素が、一体のものとして整理されます。経営者による内部統制の無効化を検討する場合も、個別統制だけでなく、組織の統制環境とモニタリング機能を見る必要があります。
監査人は、内部監査の結果をそのまま受け入れるのではなく、内部監査部門の独立性、客観性、能力、監査範囲、指摘事項、フォローアップ状況、監査役等への報告状況を踏まえて、利用可能性を判断する必要があります。
経営者の説明をどう評価するか
経営者による内部統制の無効化リスクでは、経営者の説明をどのように扱うかが問われます。
経営者は、会社の事業、資金繰り、取引目的、見積り前提、関連当事者性、決算処理の意図について、最も詳しい立場にあります。したがって、経営者への質問は不可欠です。
しかし、経営者関与が疑われる場面では、経営者の説明は、最も重要な情報であると同時に、最も慎重に評価すべき情報でもあります。
監査人は、次の観点から経営者の説明を評価します。
- 説明が過年度から一貫しているか
- 説明が取締役会資料、予算、事業計画、契約書、資金繰り表と整合しているか
- 説明が外部証拠と整合しているか
- 説明が監査役等、内部監査、現場担当者の説明と整合しているか
- 説明が会計処理の必要性を過度に強調していないか
- 説明の前提が、監査人からの質問後に変化していないか
- 説明が財務諸表利用者への開示と整合しているか
説明に矛盾や変遷がある場合、監査人は、その矛盾を解消するための追加手続を実施しなければなりません。説明を受けたこと自体を証拠として扱うのではなく、説明を裏付ける証拠を入手すること。ここが分かれ目になります。
上級経営者の関与がある場合、証拠の信頼性は再評価される
経営者による内部統制の無効化のなかでも、とりわけ重いのが、上級経営者が関与している場合です。
監査基準報告書240は、他の場合には重要ではない不正であっても、上級経営者が関与している場合には重要となることがあるとしています。その場合、経営者の陳述の網羅性と信頼性、会計記録と証憑書類の真正性が疑わしくなり、これまでに入手した証拠の信頼性にも疑義が生じることがあります。あわせて、従業員、経営者又は第三者による共謀の可能性も考慮する必要があります。
出典:日本公認会計士協会|監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」
これは、監査実務上、非常に重い意味を持ちます。
上級経営者が関与している可能性がある場合、過去に入手した証拠をそのまま信頼してよいとは限りません。契約書、稟議書、議事録、承認記録、管理資料、確認回答、内部監査資料であっても、その作成過程や真正性を改めて検討する必要があります。
この段階では、外部証拠、独立した確認、第三者情報、システムログ、入出金記録、物流記録、取引先実態、法務・税務・評価専門家の利用、そして監査役等との非経営者同席のコミュニケーションが重要になります。
IT環境における無効化リスク
近年の決算・財務報告プロセスでは、ERP、連結会計システム、ワークフロー、販売管理システム、購買管理システム、BIツール、スプレッドシート、RPA、クラウドサービスが組み合わされています。
IT化は、入力誤りや承認漏れを減らします。しかし、経営者による内部統制の無効化リスクを消してくれるわけではありません。むしろ、管理者権限、マスタ変更、締め後修正、システム間連携、ログの欠落、スプレッドシート修正、連結パッケージ上の調整など、IT特有の検討が必要になります。
改訂内部統制基準・実施基準でも、情報と伝達における情報の信頼性確保、IT委託業務に係る統制、サイバーリスクの高まり等を踏まえた情報システムに係るセキュリティ確保の重要性が示されています。
出典:金融庁・企業会計審議会|財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)
IT環境では、次の点を検討します。
- 管理者権限が誰に付与されているか
- 経営者又は上位管理者がシステム承認を迂回できるか
- 締め後の修正が可能か
- 承認ワークフローの代理承認、後承認、差戻し履歴が確認できるか
- マスタ変更の承認とログが残っているか
- 自動仕訳のロジックが変更されていないか
- 連結修正仕訳がシステム外で作成されていないか
- スプレッドシート上の重要な計算にレビュー統制があるか
- ログの保全期間と改竄防止が十分か
IT統制を評価する場合も、「システム上承認されている」という形式だけでは足りません。誰が、どの権限で、どのデータを、いつ、どのように変更できたのか。そこまで確認する必要があります。
経営者による内部統制の無効化を疑うべき兆候
経営者による内部統制の無効化は、最初から明確な証拠として現れるとは限りません。多くの場合、監査人は複数の兆候を組み合わせながら、リスクの水準を高めていくことになります。
注意すべき兆候には、次のようなものがあります。
- 監査指摘への対応が過度に防御的である
- 経営者の説明が担当者の説明と異なる
- 重要な取引について、事業上の合理性より会計処理上の効果が強調される
- 期末日近くに、利益を伴う通例でない取引が集中する
- 営業キャッシュ・フローの傾向と利益の傾向が整合しない
- 締切後仕訳、トップサイド仕訳、連結修正仕訳が多い
- 取締役会又は監査役等への説明が簡略化されている
- 関連当事者性の説明が曖昧である
- 契約書や議事録が、監査依頼後に作成又は修正されている
- 見積りが継続的に経営者に有利な方向へ偏っている
- 内部監査の指摘事項が経営者レベルで止まっている
- 重要な統制不備が長期間是正されていない
- 経理責任者や内部監査責任者が頻繁に交代している
- 現場からの情報が経営層で遮断されている
内部統制の実務において、経営トップによる内部統制の無視・無効化は、統制環境とガバナンスの問題として現れます。目標必達への強いプレッシャー、物を言いにくい企業風土、部門間監視の欠如。これらはいずれも、個別統制以前に、組織としての統制環境そのものを揺るがす要因です。
調書化では「なぜ十分と判断したか」を残す
経営者による内部統制の無効化への対応において、監査調書に残すべきなのは、実施した手続の一覧ではありません。
重要なのは、次の一連の判断過程です。
- どのような不正シナリオを想定したか
- そのシナリオは、どの財務諸表項目とアサーションに関係するか
- 経営者の動機、機会、姿勢・正当化をどう評価したか
- 仕訳テストの母集団をどのように確認したか
- 抽出条件を、なぜそのように設定したか
- 抽出した仕訳のどこに、不正リスクとの関連があるか
- 証憑、承認、取引実態、外部証拠をどのように評価したか
- 見積りの仮定、過年度差異、経営者バイアスをどう検討したか
- 非定型取引の事業上の合理性をどう評価したか
- 監査役等、内部監査、審査担当者と、どのようにコミュニケーションしたか
- 未解消の矛盾や限界がある場合、監査意見や開示へどう影響するか
一方で、調書化において避けたいのは、次のような記載です。
- 「不正リスクについて検討したが、問題なし」
- 「経営者に質問し、問題ないとの回答を得た」
- 「仕訳テストを実施し、例外なし」
- 「取締役会で承認されているため問題なし」
- 「証憑と突合し一致したため問題なし」
- 「過年度と同様のため問題なし」
これらは、結論の記載としては不十分です。経営者による内部統制の無効化リスクでは、なぜその証拠で十分と判断したのか、なぜ追加手続が不要と判断したのか、なぜ不正による重要な虚偽表示リスクが顕在化していないと判断したのか。そこまで説明できなければなりません。
審査・レビューで問われやすいポイント
審査担当者や外部レビューで問われるのは、手続を実施したかどうかだけではありません。
- 経営者による内部統制の無効化リスクを、標準文言で処理していないか
- 仕訳テストの母集団が網羅的か
- 抽出条件が、会社固有のリスクと整合しているか
- 仕訳の内容理解だけで、不正リスク対応を終了していないか
- 見積りバイアスを、個別論点だけでなく全体傾向として評価しているか
- 非定型取引の事業上の合理性を検討しているか
- 関連当事者の網羅性を、会社作成リストだけに依拠していないか
- 取締役会又は監査役等への説明状況を確認しているか
- 矛盾する証拠を、調書上で処理しているか
- 必要な場合に、専門家や審査担当者と早期に協議しているか
公認会計士・監査審査会の検査結果事例集でも、収益認識に係るリスク評価やリスク対応手続について、業種や販売形態の特徴など企業環境の理解を踏まえた検討が不足している事例が示されています。また、想定した不正リスクに対して分析的手続のみで結論づけている事例、帳簿と証憑の形式的な突合だけで、異常な利益率や実態と合致しない契約内容を見落としている事例も挙げられています。
出典:公認会計士・監査審査会|監査事務所検査結果事例集 令和5事務年度版 Ⅲ.個別監査業務編
経営者による内部統制の無効化リスクは、標準的な監査手続を実施していれば自動的に解消される、という性質のものではありません。監査対象会社の状況に応じて、その手続が実効的であったかどうかが問われます。
不正の疑いを識別した場合の初動
経営者による内部統制の無効化を示唆する状況を識別した場合、追加資料を依頼するだけでは足りません。
まず、リスク評価を見直します。財務諸表全体レベルのリスクなのか、特定のアサーションレベルのリスクなのか。内部統制への依拠を変更すべきか。実証手続を拡大すべきか。ここを丁寧に検討します。
次に、監査チーム内で情報を共有します。担当者が違和感を抱えたまま個別手続を進めてしまうと、財務諸表全体の不正シナリオを見落とす可能性があります。重要な兆候は、チーム内の経験あるメンバー、業務執行社員、審査担当者へ早期に共有すべきです。
さらに、コミュニケーション先を慎重に判断します。経営者自身が関与している可能性がある場合、経営者への質問だけで対応を終えることはできません。監査役等、必要に応じて取締役会、内部監査、法務担当、外部専門家との連携を検討します。
監査における不正リスク対応基準では、監査人は、不正リスクに関連して把握している事実を経営者、監査役等及び必要な場合には関連するその他の企業構成員に質問し、経営者に対して、想定される不正の要因、態様、不正への対応策等に関する考え方を質問して、リスク評価に反映することが求められています。あわせて、不正リスク要因を考慮して監査計画を策定することも求められています。
出典:金融庁・企業会計審議会|監査における不正リスク対応基準
経営者による内部統制の無効化への対応を一言で整理する
経営者による内部統制の無効化への対応とは、経営者を疑うための手続ではありません。
経営者が財務報告プロセスに最も強い影響力を持つ以上、その影響力が不適切に行使された場合に財務諸表へ重要な虚偽表示が生じ得る経路を識別し、十分かつ適切な監査証拠によって対応すること。それが本質です。
そのためには、仕訳テスト、見積りバイアス、非定型取引、関連当事者、IT権限、統制環境、監査役等との連携を、個別に見ているだけでは足りません。
監査人は、それらを一つの不正リスク対応としてつなげる必要があります。
- 経営者がどこで財務報告に介入できるか
- その介入は、どの統制を迂回し得るか
- その結果、どの財務諸表項目とアサーションが歪むか
- 通常の統制依拠で対応できるか
- どの外部証拠、又は独立した証拠が必要か
- どの判断を、監査役等、審査担当者、会社、利用者に説明できる状態にすべきか
ここまで整理して初めて、経営者による内部統制の無効化への対応は、形式的な不正対応手続ではなく、監査意見を支える専門的判断になります。
経営者による内部統制の無効化リスクに関するご相談について
経営者による内部統制の無効化リスクは、監査法人側だけの問題ではありません。会社、監査役等、内部監査、経理財務部門にとっても、重い論点です。
仕訳テストの設計、会計上の見積りにおける経営者バイアスの整理、非定型取引・関連当事者取引の検証、内部統制不備の評価、監査役等への説明、開示・訂正対応の前提整理。いずれも、個別事情を踏まえて慎重に検討する必要があります。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、法定監査、内部統制、財務報告、開示、不正リスク、会計上の見積りに関する論点整理について、後から説明できる判断過程の構築を重視して支援しています。
経営者関与リスク、内部統制の無効化、仕訳テスト、見積りバイアス、監査役等への説明、内部統制報告・開示への影響について整理が必要な場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。初回のご相談では、まず論点の所在、監査上のリスク、関係者への説明上の課題、専門家が関与すべき範囲を整理いたします。
重要事項の振り返り
| 論点 | 実務上の要点 |
|---|---|
| 経営者による内部統制の無効化 | 経営者が承認、レビュー、職務分掌、IT統制、決算統制などを意図的に迂回するリスクをいう。 |
| 全ての監査での検討 | 経営者による内部統制の無効化リスクへの対応手続は、監査人のリスク評価にかかわらず実施が求められる。 |
| 仕訳テスト | 金額やキーワードだけでなく、会社固有の不正シナリオ、仕訳プロセス、母集団の網羅性を踏まえて設計する。 |
| 仕訳データの網羅性 | 総勘定元帳、決算整理、連結修正、締切後修正、子会社・拠点データの範囲を確認する。 |
| 会計上の見積り | 個別見積りだけでなく、見積り全体が経営者に有利な方向へ偏っていないかを見る。 |
| 遡及的検討 | 過年度の重要な見積りに関する仮定と判断を見直し、経営者バイアスの兆候を評価する。 |
| 非定型取引 | 通常の取引過程から外れた重要取引は、会計処理より先に事業上の合理性を検討する。 |
| 関連当事者 | 会社作成リストだけに依拠せず、実質的な関係、取引条件、資金移動、承認状況を確認する。 |
| 監査役等との連携 | 経営者の説明を補強又は検証するため、監査役等の監視状況、把握事項、独立性を確認する。 |
| 内部統制報告制度 | 経営者による内部統制の無効化は、統制環境、評価範囲、開示すべき重要な不備、内部統制監査報告に影響し得る。 |
| 職業的懐疑心 | 抽象的な姿勢ではなく、手続の種類・時期・範囲、証拠源、質問先、調書化に反映する。 |
| 調書化 | 実施手続の記録だけでなく、リスク評価、証拠評価、矛盾の解消、結論の根拠を残す。 |