医療機関を「診療の場」であると同時に「経営管理すべき事業体」として見る

医療機関は、患者さんに医療を提供する場です。この点に異論はありません。

ただ、クリニックや診療所、病院、医療法人を長く安定して続けていこうとすれば、それだけでは足りないのも事実です。医療機関は、診療の場であると同時に、人を雇い、設備を使い、資金を回し、制度に対応し、税務・会計・労務・法務上の責任を負いながら継続していく事業体でもあります。

この視点を持てるかどうかで、院長や理事長の判断は大きく変わってきます。

たとえば、売上が伸びているのに資金が残らない。患者数は多いのに、スタッフが疲弊している。利益は出ているものの、設備更新や借入返済に不安が残る。法人化はしたが、理事会や社員総会、議事録、届出が形式的なものになっている。あるいは、承継やM&Aを考え始めたとき、過去の数字や契約書、労務資料、法人運営資料が整理されていない——。

これらはいずれも、「診療の質」だけでは解決できない、経営管理上の問題です。

医療機関経営を考える第一歩は、自院を「診療の場」として大切にしながら、同時に「経営管理すべき事業体」として冷静に見ることだと、私は考えています。

目次

医療機関は「営利企業」ではないが、「経営管理が不要な組織」でもない

医療機関経営を語るとき、まず整理しておきたいことがあります。医療機関は、一般の営利企業と同じではない、という点です。

医療は公共性の高いサービスであり、医療法上も、病院や診療所等の開設について営利目的性が問題となる場面があります。また、医療法人については剰余金の配当が禁止されており、利益を出資者等に分配することを前提とする株式会社とは、その性格が大きく異なります。
出典:厚生労働省|医療法
出典:厚生労働省|医療法人の剰余金の使途の明確化について

とはいえ、だからといって医療機関に経営管理が不要だということにはなりません。

むしろ、公共性があるからこそ、医療を継続できる財務基盤が欠かせないのです。地域の患者さんを受け入れ続けるためには、医師・看護師・事務スタッフを確保し、設備を更新し、診療報酬改定や施設基準に対応し、必要な資金を確保しなければなりません。

医療機関にとっての利益は、単に院長や理事長の手残りを増やすためのものではありません。

利益とは、次の診療を続けるための体力です。設備を更新する原資であり、スタッフを採用し、処遇を改善する余力でもあります。借入を返済し、金融機関に説明する根拠にもなりますし、在宅医療、分院、移転、承継、M&Aといった将来の選択肢を持つための基盤にもなります。

ですから、医療機関を「経営管理すべき事業体」として見ることは、医療を営利化することではありません。医療を継続するために、数字と仕組みを整えること。私はそう理解しています。

医療機関経営は、制度に強く影響される

医療機関の経営判断が難しいのは、売上や価格を自由に決められる一般事業とは異なり、制度の影響が非常に大きいからです。

保険診療を中心とする医療機関では、診療報酬、施設基準、保険医療機関としての指定、審査支払機関からの入金、返戻・査定、医療広告規制、個別指導、医療法人制度といった複数の制度が、経営に直接影響します。診療報酬は定期的に改定され、令和6年度診療報酬改定についても、省令・告示・通知・疑義解釈等が厚生労働省から順次示されてきました。
出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定について

この制度依存性こそ、医療機関経営の大きな特徴だといえます。

たとえば一般企業であれば、コストが上がったときに価格改定で吸収するという選択肢があります。しかし保険診療では、医療機関側が自由に診療単価を引き上げることはできません。材料費、人件費、家賃、光熱費、医療機器の更新費用が上昇しても、診療報酬上の評価や患者数、診療構成、業務効率、さらには自由診療・健診・在宅医療などの組み合わせで、経営を調整せざるを得ない場面が出てきます。

つまり医療機関経営では、「頑張って診療すれば自然に経営が安定する」とは限らないのです。

診療報酬改定の影響を読む。施設基準の維持に必要な人員・記録・体制を確認する。保険収入と自由診療収入を分けて把握する。返戻・査定・未収金を管理する。そして、制度変更が利益や資金繰り、人員体制にどう影響するかを検討する——。

こうした取り組みを継続して初めて、医療機関は制度環境のなかで安定して経営を続けることができます。

医療機関は「専門職組織」である

医療機関は、専門職によって成り立つ組織です。

医師、歯科医師、看護師、医療事務、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、リハビリ職、管理栄養士など、職種ごとに専門性は異なります。小規模なクリニックであっても、診療、受付、会計、レセプト、検査、看護、在庫管理、患者さん対応、予約管理、電話対応、院内清掃、採用、労務管理と、業務は細かく分かれています。

院長がそのすべてを把握し、すべてを判断することは、現実にはなかなか困難です。

とりわけ近年は、医療従事者の確保、医師の働き方改革、スタッフの定着、院内コミュニケーション、ハラスメント対応、メンタル不調への対応など、組織運営の論点が重みを増しています。医師の働き方改革については、2024年4月から新制度が施行され、医療機関側にも労働時間管理や勤務環境整備が、より強く求められるようになりました。
出典:厚生労働省|医師の働き方改革

医療機関を経営管理すべき事業体として見るとき、人件費は単なる削減対象ではありません。人件費は、診療体制を維持し、患者さんの満足を支え、医療安全を守るための重要な経営資源です。

ただし、人件費を「必要だから仕方がない」とだけ捉えるのも、また不十分です。

どの職種に、どの業務を任せるのか。受付・会計・レセプト・電話対応の業務負荷は適正か。院長が本来担うべきでない業務を抱え込んでいないか。採用したスタッフが定着する仕組みはあるか。人件費率は、診療単価や患者数、診療時間と整合しているか。スタッフを増員することで、どの売上・品質・効率改善を見込むのか。

こうした点を見なければ、その人材投資が「必要な投資」なのか、それとも「固定費の増加」なのかを判断できません。

経営管理とは、売上を見ることではなく、構造を見ることである

医療機関経営でもっとも分かりやすい数字は、売上と患者数です。

しかし、売上と患者数だけを見ても、自院の経営状態を十分に説明することはできません。

売上が増えていても、利益率は下がっていることがあります。利益が出ていても、借入返済や設備投資で資金が不足していることがあります。患者数が多くても、診療単価が低く、スタッフの負荷だけが高まっていることもあります。自由診療が伸びていても、広告規制、消費税、説明責任、返金対応の管理が追いついていないことがあります。在宅医療を始めても、移動時間、24時間対応、人員体制、算定要件、同意書、記録管理まで含めると、想定した採算と異なってくることもあります。

経営管理とは、数字を眺めることではありません。数字の背後にある構造を読むことです。

医療機関でまず確認すべき構造は、大きく分けて次の6つだと考えています。

1つ目は、収益構造です。 患者数、診療単価、初診率、再診率、来院頻度、保険診療と自由診療の割合、健診・予防接種・産業医報酬などの収入区分を確認します。

2つ目は、費用構造です。 人件費、医薬品・材料費、検査委託費、家賃、リース料、減価償却費、広告費、システム費用などを分けて見ます。

3つ目は、資金構造です。 利益だけでなく、現預金、借入金、返済予定、税金支払、賞与、設備更新、未収金の回収状況を確認します。

4つ目は、組織構造です。 院長依存度、スタッフ配置、事務長・幹部スタッフの役割、会議体、承認フロー、教育・評価・定着の仕組みを確認します。

5つ目は、制度・法務・税務構造です。 医療法、医療法人制度、施設基準、医療広告、税務処理、源泉徴収、消費税、固定資産、役員報酬、関係事業者取引などを確認します。

6つ目は、将来構造です。 設備更新、法人化、分院、在宅医療、移転、承継、相続、M&A、そして廃業の可能性まで含めて、自院が将来どの選択肢を持てるかを確認します。

この6つは、別々の論点ではありません。たとえば分院を検討する場合には、患者数や診療圏だけでなく、人材、借入、資金繰り、法人運営、税務、院長の稼働、将来の承継可能性までを、同時に見ていく必要があります。

年1回の決算書だけでは、経営判断には遅い

医療機関の数字は、税務申告のためだけに作るものではありません。

もちろん、正確な申告は重要です。税務上の処理を誤れば、税務調査で問題になります。医療法人であれば、事業報告書等や経営情報等の報告も大切です。厚生労働省は、医療法人および地域医療連携推進法人について、毎会計年度終了後3か月以内に事業報告書等を都道府県知事に届け出ること、また医療法人について経営情報等の報告が義務付けられていることを示しています。
出典:厚生労働省|医療法人に関する情報の調査及び分析等について

しかし、年1回の決算書だけでは、経営判断には遅いことがあります。

たとえば、患者数の減少が3か月続いている。人件費率がじわじわと上がっている。未収金が増えている。自由診療の広告費は増えているのに、来院につながっていない。借入返済後の資金残高が、毎月少しずつ減っている。賞与や納税の支払月に、資金が不足しそうである。新しい医療機器を導入したものの、投資回収の見込みが立っていない——。

こうした兆候は、決算時に初めて分かったのでは遅い場合があります。

医療機関経営で必要なのは、月次で、同じ前提の数字を確認することです。毎月の試算表、現預金残高、借入残高、資金繰り、患者数、診療単価、人件費率、未収金、設備投資予定、税金支払予定。これらを確認できる状態にしておくことが、経営判断の前提になります。

月次決算は、単なる会計事務ではありません。

院長・理事長が「今月の利益はなぜ増えたのか」「資金はなぜ減ったのか」「次の投資に耐えられるのか」「採用してよいか」「広告を続けるべきか」「借入を増やしてよいか」を考えるための、経営資料そのものなのです。

公共性と経営性は対立しない

医療機関経営では、ときに「経営を考えること」そのものに、心理的な抵抗が生じることがあります。

患者さんのための医療をしているのに、利益や採算を考えることに違和感がある。医療を数字で見ることに抵抗がある。スタッフに経営数字を共有すると、医療の現場らしくなくなるのではないか。広告や集患を考えると、商売のように見られるのではないか——。

この感覚は、医療の公共性を大切にしているからこそ生まれるものです。決して軽視すべきではありません。

ただ、公共性と経営性は、対立するものではありません。

採算を把握しなければ、赤字部門をいつまで支えられるかを判断できません。資金繰りを把握しなければ、設備更新や人材採用のタイミングを誤ります。人件費を管理しなければ、スタッフを守るための処遇改善も継続できません。内部管理を整えなければ、不正、誤請求、情報漏洩、施設基準違反のリスクが高まります。承継準備をしなければ、患者さんやスタッフの行き場を、突然失わせてしまう可能性もあります。

医療を継続するには、経営が必要です。地域医療を守るには、医療機関自身が潰れない体力を持たなければなりません。そして、患者さんに説明できる医療機関であるためには、金融機関、行政、後継者、買い手、スタッフにも説明できる数字と資料が必要になります。

地域医療構想も、中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進めることを目的としています。医療機関は、地域のなかで自院がどの機能を担うのかを、診療面だけでなく経営面からも考えていく必要があります。
出典:厚生労働省|地域医療構想

「院長の頭の中」から「説明できる仕組み」へ

小規模な医療機関では、院長の判断力と経験が経営を支えているケースが多くあります。

どの患者層が増えているか。どのスタッフに負荷がかかっているか。どの設備が限界に近いか。どの金融機関とどう付き合っているか。どの業者との契約に注意が必要か。どの患者さん対応がトラブルになりやすいか——。

院長が肌感覚で把握しているこうした情報は、確かに重要です。

しかし、院長の頭の中にある情報だけでは、組織として再現することができません。事務長や幹部スタッフに引き継ぐことも、金融機関に説明することも、後継者に渡すことも、M&Aの買い手に見せることもできません。税務調査や行政対応の場面でも、後から説明できる資料になっていなければ、不十分なのです。

医療機関を経営管理すべき事業体として見るとは、院長の感覚を否定することではありません。むしろ、その感覚を数字と資料に落とし込み、組織で共有できる状態にすることです。

たとえば、次のような状態を目指します。

患者数の変化を、診療科別・曜日別・時間帯別に確認する。診療単価の変化を、保険診療・自由診療・健診等に分けて見る。人件費の増減を、職種別・常勤非常勤別に、診療時間との関係で見る。設備投資を、診療価値、資金繰り、借入返済、償却期間で判断する。税務処理を、証憑、契約、議事録、支払実態と結びつける。法人運営を、理事会・社員総会・監事監査・届出と連動させる。承継やM&Aを、財務・税務・法務・労務・医療法務の資料整備から考える——。

このように、院長の頭の中にある判断材料を外に出し、継続的に確認できる仕組みにすること。それが、経営管理の出発点になります。

医療機関で最初に整えるべき経営管理の順番

経営管理といっても、すべてを一度に整える必要はありません。現場の負荷や人員体制を考えれば、むしろ一気に理想形を押しつけても続きません。

最初に整えるべき順番は、おおむね次のとおりです。

1. 毎月の数字を早く確認できる状態にする

まずは、月次試算表、現預金残高、借入残高、売上、主要経費を、毎月確認できるようにします。完璧な管理会計よりも、まずは遅れない月次確認が重要です。

2. 売上を分解する

売上総額だけでなく、患者数、診療単価、初診率、再診率、保険診療、自由診療、健診、予防接種、在宅医療などに分けて見ます。売上が増減した理由を、説明できる状態にしておきます。

3. 資金繰りを見える化する

利益と資金は一致しません。借入返済、税金、賞与、設備投資、未収金、リース料を含めて、少なくとも数か月先までの資金繰りを確認します。

4. 人件費と組織体制を確認する

人件費率だけを見るのではなく、スタッフ数、職種別配置、業務負荷、離職、採用予定、生産性を確認します。そのうえで、増員すべきか、業務設計を見直すべきかを判断します。

5. 重要な契約・証憑・議事録を整理する

賃貸借契約、リース契約、業務委託契約、雇用契約、就業規則、役員報酬決議、理事会・社員総会議事録、税務関係届出、医療法人の届出書類を整理します。これは、税務調査、金融機関対応、承継、M&Aのすべてに影響します。

6. 将来の投資と承継可能性を確認する

設備更新、移転、分院、在宅医療、法人化、承継、M&Aは、突然判断できるものではありません。現在の数字と資料の整備水準が、将来の選択肢を決めます。

この順番で整えていくと、医療機関の経営管理は「面倒な事務」ではなく、「次の判断をしやすくする基盤」へと変わっていきます。

税務申告だけでは見えない経営課題がある

税務申告は重要です。しかし、税務申告だけでは、医療機関の経営課題は見えてきません。

税務申告は、基本的には過去の結果を申告する手続です。もちろん、その過程で会計処理の適否、必要経費、役員給与、消費税、固定資産、源泉徴収、医療法人税務などを確認します。とはいえ、税務申告が終わったからといって、次のような問いに答えられるとは限りません。

来期の資金繰りは安全か。借入を増やして設備投資をしてよいか。スタッフを増やす余力はあるか。自由診療を伸ばすべきか。在宅医療を始めるべきか。法人化すべきか。医療法人の持分や退職金をどう考えるべきか。承継やM&Aに向けて、何を整えるべきか。金融機関にどのように説明すべきか——。

これらはいずれも、申告書を作るだけでは答えられません。経営判断の前提となる数字を継続的に整理して、初めて検討できる論点です。

医療機関に必要なのは、単なる税務処理ではなく、会計・税務・資金繰り・法人運営・内部管理・将来設計をつなげて考える視点だと、私は考えています。

短期的な節税より、後から説明できる数字を整える

医療機関経営では、節税の相談も数多く寄せられます。

もちろん、適法な範囲で税負担を適正化することは重要です。過大な税負担を避けることも、資金繰りの一部だといえます。

しかし、短期的な節税だけを優先すると、かえって経営判断を誤ることがあります。

節税を目的に、不要な設備投資をしてしまう。役員報酬を税率差だけで決めてしまう。MS法人との取引を、実態や価格の妥当性を検討せずに行ってしまう。福利厚生費や交際費を、証拠や規程なしに処理してしまう。税務上の説明だけを整え、医療法上・法人運営上の手続を軽視してしまう——。

こうした処理は、短期的には税負担を下げるように見えても、税務調査、医療法人運営、金融機関対応、承継、M&Aの場面で問題化することがあります。

重要なのは、税金を多く払えばよいということではありません。また、節税をすればよいということでもありません。

事実に基づき、証憑があり、契約があり、議事録があり、会計処理と税務処理が整合し、後から第三者に説明できる数字になっていること。これこそが重要なのです。

医療機関を守るのは、都合のよい数字ではありません。説明できる数字です。

成長戦略は、守りの仕組みがあって初めて機能する

医療機関経営における成長戦略には、さまざまな選択肢があります。

患者数を増やす。公式サイトや広報を見直す。自由診療を強化する。在宅医療を始める。分院を出す。移転する。医療法人化する。病院や有床診療所を承継する。他院と連携する。M&Aで事業を引き継ぐ、あるいは譲渡する——。

しかし、これらは勢いだけで進めるべきものではありません。

成長投資には、必ず固定費が伴います。採用には、人件費と教育期間が伴います。設備投資には、借入返済と償却負担が伴います。在宅医療には、体制整備と記録管理が伴います。分院には、院長依存からの脱却と管理体制が必要です。M&Aには、財務・税務・法務・労務・医療法務のデューデリジェンスが伴います。

守りの仕組みが弱いまま攻めに出ると、成長がそのまま負担に変わってしまいます。

月次決算が遅い。資金繰り表がない。契約書が整理されていない。スタッフの役割分担が曖昧である。法人議事録が整っていない。税務リスクが未整理である。未収金や在庫、固定資産が管理されていない——。

この状態で投資や承継を進めると、後から修正する負担が大きくなります。

反対に、守りの仕組みが整っていれば、攻めの判断はしやすくなります。金融機関に説明できます。スタッフにも方針を共有できます。後継者に引き継げます。買い手に資料を提示できます。外部専門家とも、具体的な議論ができます。

「守りを仕組みに、攻めを戦略にする」とは、成長を止めることではありません。根拠ある成長を可能にすることです。

医療機関経営者がまず自問すべきこと

この記事は、シリーズの入口にあたります。個別の税務処理、医療法人設立手続、M&Aの詳細手続には踏み込みません。ここで確認したいのは、自院を経営管理すべき事業体として見るための、基本姿勢です。

まずは、次の問いを自院に当てはめてみてください。

  • 今月の売上が増減した理由を、患者数と診療単価に分けて説明できるでしょうか。
  • 利益が出ているのに資金が減っている場合、その理由を説明できるでしょうか。
  • 借入金の返済原資を、利益とキャッシュ・フローから確認しているでしょうか。
  • 人件費率だけでなく、スタッフ配置と業務負荷を見ているでしょうか。
  • 設備投資を、税務上のメリットではなく、投資回収と資金繰りで判断しているでしょうか。
  • 医療法人の議事録、届出、事業報告書等を、形式ではなく説明責任として管理しているでしょうか。
  • 税務処理について、証憑・契約・実態・法人手続が整っているでしょうか。
  • 院長が急に診療できなくなった場合、資金、スタッフ、患者さん、契約、法人運営を引き継げるでしょうか。
  • そして将来、承継やM&Aを検討するとき、第三者に見せられる資料が揃っているでしょうか。

これらすべてに即答できる医療機関は、多くありません。

しかし、どこが答えられないのかを把握すること。それこそが、経営管理の出発点です。

専門家の役割は、経営者の代わりに答えを決めることではない

医療機関経営の最終判断は、院長・理事長・経営者が行うものです。

どの診療を重視するか。どの患者層に向き合うか。どのスタッフと組織をつくるか。どの投資を行うか。どの時期に承継を考えるか。どのリスクを許容するか——。

これらは、外部の専門家が代わりに決めることではありません。

一方で、判断に必要な材料を整えることには、専門家が関与する価値があります。

月次の数字を、同じ前提で整理する。資金繰りと借入返済を見える化する。税務上の論点と証拠を確認する。医療法人運営の手続を整える。内部管理の弱い部分を指摘する。投資判断に必要な採算と資金の前提を整理する。承継やM&Aで問われる資料を、早めに整える——。

医療機関の経営者が納得して判断するために、事実、数字、制度上の制約、将来リスク、説明可能性を整理すること。これが、財務・会計・税務の専門家が果たすべき役割だと考えています。

医療機関は、診療の場です。同時に、継続的に経営管理すべき事業体でもあります。

この両方を見失わないことが、医療機関を長く、強くしていくための第一歩になります。

この記事の振り返り

論点重要な考え方自院で確認すべきこと
医療機関の位置づけ医療機関は診療の場であり、同時に経営管理すべき事業体である診療以外の経営課題を定期的に確認しているか
公共性と経営性利益は医療を継続するための体力であり、公共性と対立しない利益・資金・設備更新・人材確保を一体で見ているか
制度依存性診療報酬、施設基準、医療法人制度などが経営に直接影響する制度変更が収益・人員・資金に与える影響を確認しているか
専門職組織医療機関は院長だけでなく、専門職と事務体制で成り立つ院長依存になっている業務はないか
数字の見方売上総額ではなく、患者数・単価・費用・資金・借入まで分解して見る売上増減や資金残高の変化を説明できるか
月次管理年1回の決算だけでは経営判断には遅い毎月の試算表、現預金、借入、未収金を確認しているか
税務との関係税務申告は重要だが、経営判断の終点ではない税務処理と実態・証憑・契約・議事録が整合しているか
守りと攻め守りの仕組みは、成長投資・採用・承継・M&Aの前提である成長判断の前に、数字と資料の整備ができているか
専門家の役割専門家は結論を代行するのではなく、判断材料を整える存在である外部専門家と具体的な数字・資料をもとに議論できているか
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