住宅ローン控除は、給与所得者の方にとっても確定申告が必要になる、代表的な制度のひとつです。
もっとも、初年度の申告は「住宅ローンを組んだのだから税金が戻る」といった単純な手続ではありません。確認すべきことは、借入金の年末残高だけにとどまらないのです。
その住宅は、制度上の対象住宅に該当するのか。入居の時期は要件を満たしているのか。登記上の床面積は足りているのか。新築、既存住宅、買取再販、増改築のうち、どの区分にあたるのか。省エネ性能や認定住宅の証明書は必要になるのか。土地と建物の取得価額、補助金、贈与資金、共有持分、連帯債務をどう整理するのか。自宅兼事務所や賃貸併用住宅、親族間売買、過去のマイホーム売却特例との関係に問題はないか。
こうしてみると、住宅ローン控除の初年度申告は単なる還付申告ではなく、住宅の取得・借入・居住実態・資金の流れ・他の税務判断を、一体として確認していく手続だとお分かりいただけると思います。
住宅ローン控除は「税額控除」であり、初年度は確定申告が必要になる
住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれる制度です。
個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築・取得・増改築等を行い、一定の要件を満たした場合に、所得税額から一定額を差し引けるしくみになっています。所得から差し引く所得控除ではなく、所得税額そのものから直接差し引く税額控除であるため、適用の可否や控除額が税額に与える影響は、決して小さくありません。
はじめて住宅ローン控除を受ける場合には、住宅の区分に応じた書類を添付して確定申告をする必要があります。2年目以後は、給与所得者であれば年末調整で適用を受けられる場合もありますが、最初の年分だけは確定申告が欠かせません。
出典:国税庁|住宅ローン控除を受ける方へ 令和7年分 確定申告特集
ここで気をつけていただきたいのは、「会社員だから年末調整で終わる」と早合点しないことです。
住宅ローン控除は、2年目以降は年末調整に移行できることが多い制度です。ただ、初年度に限っては、住宅の取得内容や添付書類を税務署に確認してもらう入口として、確定申告というかたちを取ることになります。
まず確認すべきは「入居年」と「住宅の区分」
住宅ローン控除は、入居した年、住宅の種類、住宅性能、取得方法によって、適用要件も控除期間も、控除限度額も必要書類も変わってきます。
とりわけ近年の制度では、省エネ性能や認定住宅の区分が大きな意味を持つようになりました。
令和4年以降に居住の用に供した住宅については、住宅の区分ごとに制度が整理されており、新築住宅、買取再販住宅、中古住宅、増改築等で、参照すべき要件が異なります。国税庁の確定申告特集でも、住宅を新築・取得した場合、買取再販住宅、中古住宅、増改築等を、それぞれ分けて案内しています。
出典:国税庁|住宅ローン控除を受ける方へ 令和7年分 確定申告特集
さらに、令和8年度税制改正により、住宅ローン減税は令和8年1月1日から令和12年12月31日までに入居した場合について、5年間延長されました。国土交通省は、この令和8年度改正にあわせて、省エネ性能の高い既存住宅への支援拡充、床面積要件の緩和、令和10年以降の一部省エネ基準適合住宅や災害レッドゾーン内新築住宅に関する取扱いなどを公表しています。
出典:国土交通省|住宅ローン減税
こうした事情があるため、申告にあたっては「住宅ローン控除」とひとまとめに考えるのではなく、次の順番で整理していくことをおすすめします。
| 確認順序 | 確認する内容 |
|---|---|
| 1 | いつ入居したか |
| 2 | 新築、既存住宅、買取再販、増改築等のどれか |
| 3 | 認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅、その他住宅のどれか |
| 4 | 床面積、居住割合、所得要件、借入期間を満たすか |
| 5 | 必要な証明書・契約書・登記事項証明書がそろうか |
| 6 | 共有、連帯債務、補助金、贈与、土地借入があるか |
| 7 | 過去または同時期のマイホーム売却特例との関係がないか |
この整理を飛ばして申告書の作成画面へ進んでしまうと、書類不足や区分の誤りが起きやすくなります。
共通の適用要件
住宅ローン控除を受けるには、住宅の区分ごとの要件に加えて、どの住宅にも共通する基本的な要件を確認しておく必要があります。
令和4年以降に居住の用に供した新築住宅等について、国税庁は、住宅の新築等の日から6か月以内に居住すること、その年の12月31日まで引き続き居住していること、原則として床面積が50平方メートル以上で、その2分の1以上を自己の居住用に供していること、合計所得金額が2,000万円以下であること、10年以上にわたって分割返済する一定の借入金等があることなどを、要件として示しています。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
実務のうえで、とりわけ確認しておきたい要件は次のとおりです。
| 要件 | 確認すべき資料・事実 |
|---|---|
| 入居時期 | 引渡日、住民票異動日、実際の居住開始日 |
| 年末居住 | その年12月31日時点で引き続き居住しているか |
| 床面積 | 登記事項証明書上の床面積 |
| 居住割合 | 自宅部分と店舗・事務所・賃貸部分の割合 |
| 所得要件 | 合計所得金額、給与以外の所得、不動産所得、譲渡所得 |
| 借入要件 | 10年以上の分割返済か、対象となる借入先か |
| 住宅区分 | 認定住宅等、省エネ住宅、その他住宅、既存住宅等の区分 |
| 取得先 | 親族・生計一親族・特別関係者からの取得でないか |
| 贈与取得 | 贈与による住宅取得でないか |
| 他制度との関係 | 居住用財産の譲渡特例等を使っていないか |
このように、住宅ローン控除では、住宅の購入価格や借入残高だけでなく、入居、登記、所得、取得の相手方、他の特例との関係まで、幅広く確認していくことになります。
床面積は「登記事項証明書」で判断する
住宅ローン控除で判断を誤りやすいのが、床面積です。
広告資料、パンフレット、売買契約書、建築確認書、マンションの販売資料に記載された面積と、登記事項証明書上の床面積とが一致しない、というケースは珍しくありません。
床面積は、登記事項証明書に表示されている数値によって判断します。マンションの場合は、階段や通路といった共用部分を含めず、登記事項証明書上の専有部分の床面積で判断します。店舗や事務所などとの併用住宅であれば、店舗・事務所部分も含めた建物全体の床面積で判断し、夫婦や親子などで共有する住宅であれば、共有持分を乗じるのではなく、建物全体の床面積で判断します。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
これは、とくにマンションを購入された方にとって見過ごせない点です。
販売資料の上では50平方メートルを超えているように見えても、登記事項証明書上の専有部分面積では50平方メートル未満となることがあります。住宅ローン控除の適用を判断する際には、広告上の「壁芯面積」ではなく、登記上の面積を必ず確認してください。
なお、令和8年度改正後は、床面積要件の扱いにも変更が加えられています。国土交通省は、この改正により、新築住宅・既存住宅ともに床面積要件を40平方メートル以上へと緩和しつつ、合計所得金額1,000万円超の方や、子育て世帯等への上乗せ措置を利用する方については50平方メートル以上とする旨を公表しています。
出典:国土交通省|住宅ローン減税
したがって申告にあたっては、入居年ごとの制度を確認しておくことが欠かせません。
借入金は「住宅取得のための借入」かつ「10年以上の分割返済」が基本
住宅ローン控除の対象となる借入金は、住宅取得に関連していれば何でもよい、というわけではありません。
対象となる一定の借入金・債務としては、金融機関、住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や、都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務が挙げられます。ただし、勤務先からの借入金でも無利子または0.2%に満たない利率によるものは対象外となり、親族や知人からの借入金は、いずれも対象になりません。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
また、借入期間は、10年以上にわたって分割して返済する方法であることが基本になります。
そのため、次のような形態については、慎重な確認が必要です。
| 借入・支払の形態 | 注意点 |
|---|---|
| 親族からの借入 | 住宅ローン控除の対象借入金にならない |
| 知人からの借入 | 住宅ローン控除の対象借入金にならない |
| 勤務先借入 | 利率が一定水準未満だと対象外 |
| 繰上返済 | 返済期間が短くなり要件を満たさなくなる可能性 |
| 借換え | 借換後の借入金が要件を満たすか確認 |
| 土地のみのローン | 建物に係る対象借入金の有無を確認 |
| 連帯債務 | 各人の負担割合、所有割合、返済実態を確認 |
| ペアローン | 各人ごとに借入金残高、所有持分、所得税額を確認 |
住宅ローン控除は、借入金の年末残高証明書さえあれば当然に使える、という制度ではありません。借入の目的、返済期間、借入先、所有関係、返済の実態が制度要件に合っているかどうかを、ひとつずつ確認していくことになります。
土地のローンも対象になり得るが、土地だけでは判断しない
土地を購入してから建物を建てる場合には、土地に係る借入金も、住宅ローン控除の計算対象に含まれることがあります。
ただし、土地の借入があるからといって、土地ローンだけで住宅ローン控除が使えるわけではありません。
国税庁の質疑応答では、自宅を建築する前に土地取得のための住宅ローンを組み、建物のほうは住宅ローンを組まずに自己資金と親からの資金贈与で建築した場合について、建物の新築に係る住宅ローンがなければ住宅ローン控除は受けられない、とされています。土地取得に係る住宅ローンが控除対象になるのは、建物を住宅ローンで取得し、その建物について控除対象となる住宅ローンの年末残高がある場合に限られます。
出典:国税庁|No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等 質疑応答事例
土地先行取得、建築条件付き土地、注文住宅といったケースでは、土地と建物の契約書、登記事項証明書、抵当権の設定、建築条件、借入金の使途を、丁寧に整理しておく必要があります。
土地と建物とで取得の時期が異なる場合、申告書の作成時に混乱しがちです。契約書や登記事項証明書を単にそろえるだけでなく、「土地の借入が、制度上どの建物取得と結びついているのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。
初年度申告で必要になる基本書類
住宅ローン控除の初年度申告では、住宅の区分に応じた書類を添付します。
令和4年以降に居住の用に供した新築住宅等について、国税庁は、共通の提出書類として、住宅借入金等特別控除額の計算明細書、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、家屋の登記事項証明書など床面積を明らかにする書類、工事請負契約書または売買契約書の写しなど取得対価を明らかにする書類、土地借入がある場合の土地登記事項証明書・土地売買契約書の写し、補助金等を受けた場合の補助金決定通知書、住宅取得等資金の贈与特例を受けた場合の贈与税申告書等を示しています。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
これらを整理すると、基本となる書類は次のとおりです。
| 書類 | 確認する内容 |
|---|---|
| 確定申告書 | その年の所得・控除・税額全体 |
| 住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 控除額の計算、住宅区分、取得価額、借入残高 |
| 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 | 年末時点の住宅ローン残高 |
| 家屋の登記事項証明書 | 床面積、取得日、所有者、持分、不動産番号 |
| 工事請負契約書または売買契約書の写し | 取得価額、契約日、相手方、対象不動産 |
| 土地の登記事項証明書 | 土地取得日、所有者、持分、敷地権 |
| 土地の売買契約書の写し | 土地取得価額、契約日、対象土地 |
| 補助金等の通知書 | 取得価額から控除すべき補助金等の額 |
| 贈与税申告書等 | 住宅取得等資金の贈与特例の適用額 |
| 住宅性能に関する証明書 | 認定住宅、ZEH水準、省エネ基準適合等の区分 |
給与所得者については、平成31年4月1日以後、給与所得の源泉徴収票を確定申告書へ添付または提示することは不要とされています。とはいえ、確定申告書を作成する段階では、源泉徴収票の内容そのものが必要になります。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
つまり、「添付が不要」であることと、「確認が不要」であることは別の話です。源泉徴収票は、所得金額、源泉徴収税額、社会保険料控除、年末調整済みの控除を確認するための資料として、手元に用意しておきましょう。
住宅性能に応じた証明書が必要になる場合
住宅ローン控除では、住宅の省エネ性能や認定区分によって、控除限度額や適用の可否が変わります。
国税庁は、認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅などの区分を定義したうえで、それぞれに応じた提出書類を示しています。たとえば、認定長期優良住宅では認定通知書や住宅用家屋証明書等が、ZEH水準省エネ住宅では住宅省エネルギー性能証明書または建設住宅性能評価書の写しが、省エネ基準適合住宅でも同様の証明書が、それぞれ必要になる場合があります。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
ここで誤りやすいのは、販売会社や施工会社の説明だけで住宅の区分を判断してしまうことです。
「省エネ住宅」「ZEH仕様」「長期優良住宅相当」といった説明があったとしても、税務上の区分に必要な証明書がそろわなければ、申告のうえでその区分として扱えないことがあります。
住宅ローン控除の初年度申告では、住宅性能の区分を「パンフレット上の表現」ではなく、「制度上必要な証明書」で確認する。この姿勢が欠かせません。
令和6年・令和7年入居の新築住宅では「その他の住宅」に注意する
令和6年・令和7年に入居した新築住宅では、省エネ性能の確認がとりわけ重要になります。
国税庁は、令和6年または令和7年に居住の用に供した新築等について、認定住宅等の控除期間・控除限度額を区分ごとに示す一方、「その他の住宅」については原則として控除期間0年、控除限度額0円としています。ただし、令和5年12月31日までに建築確認を受けたもの、または令和6年6月30日までに建築されたものについては、控除限度額14万円として10年間の控除が受けられるとされています。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
つまり令和6年・令和7年入居の新築住宅では、住宅ローンがあり、床面積や所得の要件を満たしていても、省エネ性能や建築確認の時期によって、控除の可否や控除額が変わることがあるのです。
申告の前に確認しておきたい資料は、次のようなものです。
| 確認資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 建築確認済証 | 建築確認日 |
| 検査済証 | 建築時期、完成時期 |
| 登記事項証明書 | 建築年月日、床面積、所有者 |
| 住宅省エネルギー性能証明書 | ZEH水準・省エネ基準適合の確認 |
| 建設住宅性能評価書 | 断熱等性能等級、一次エネルギー消費量等級 |
| 認定通知書 | 長期優良住宅、低炭素住宅の認定内容 |
大きな税額控除だからこそ、「対象になるはず」という思い込みではなく、入居年と証明書によって確認していただきたいところです。
控除額は「年末残高」だけで決まらない
住宅ローン控除額は、住宅ローン等の年末残高を基礎に計算されますが、年末残高だけで決まるものではありません。
国税庁は、住宅ローン控除額について、住宅ローン等の年末残高の合計額と、住宅の取得等の対価の額または費用の額とを比較し、少ないほうの金額をもとに、居住年分の計算方法によって算出するとしています。さらに、住宅取得等に関して補助金等を受けた場合にはその額を控除し、住宅取得等資金の贈与の特例を適用した場合には、その適用を受けた住宅取得等資金の額を控除するとされています。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
このため、次の金額を整理しておく必要があります。
| 金額 | 申告上の確認ポイント |
|---|---|
| 住宅ローン年末残高 | 金融機関等の残高証明書で確認 |
| 建物取得価額 | 売買契約書・請負契約書で確認 |
| 土地取得価額 | 土地売買契約書で確認 |
| 補助金等 | 取得価額から控除が必要になる場合がある |
| 住宅取得等資金の贈与特例額 | 控除計算上、取得対価から差し引く必要がある |
| 共有持分 | 各人の取得対価・借入負担と整合させる |
| 連帯債務割合 | 実際の負担割合と申告内容を整合させる |
| 自宅兼事務所部分 | 居住用部分の割合を確認する |
住宅ローン控除は、年末残高証明書の金額をそのまま入力すれば終わり、という制度ではありません。取得価額、補助金、贈与、共有、居住割合を確認したうえで、制度上の「年末残高等」を整理していくことになります。
共有・連帯債務・ペアローンは、所有と返済の実態をそろえる
夫婦や親子で住宅を購入する場合には、共有、連帯債務、ペアローンが問題になりやすくなります。
住宅ローン控除では、誰が住宅を所有しているか、誰がローンを負担しているか、そして誰が実際に返済しているかを確認します。
たとえば、住宅は共有だがローンは一方だけ、ローンは連帯債務だが所有は単独、返済は一方が全額行っている、頭金は親族から出ている――こうした場合には、住宅ローン控除だけでなく、贈与税や、名義と実質負担のずれといった問題にもつながっていきます。
共有や連帯債務があるときには、次の資料をそろえておきましょう。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 所有者、共有持分 |
| 金銭消費貸借契約書 | 借入人、連帯債務者、借入額 |
| 年末残高証明書 | 各借入の年末残高 |
| 返済口座の通帳 | 実際の返済者、返済資金の流れ |
| 売買契約書・請負契約書 | 取得価額 |
| 頭金の出所資料 | 自己資金、親族からの贈与、借入 |
| 贈与税申告書 | 住宅取得等資金の贈与特例を使った場合 |
住宅ローン控除の初年度申告では、税務署に提出する書類だけでなく、将来説明を求められたときに、所有・借入・返済の関係をきちんと説明できる資料を残しておくことが大切です。
自宅兼事務所・店舗併用住宅・賃貸併用住宅は居住割合を確認する
個人事業主やフリーランスの方、不動産収入のある方は、自宅の一部を事業用として使うことがあります。
こうした場合には、住宅ローン控除と必要経費の判断とが重なり合ってきます。
住宅ローン控除では、床面積の2分の1以上を、もっぱら自己の居住の用に供していることが要件になります。一方で、個人事業や不動産所得では、事業用部分に対応する支出を必要経費として処理することがあります。
つまり、自宅を住宅ローン控除の対象として申告しながら、同じ住宅の一部を事業用・賃貸用として経費化する場合には、居住用部分と事業用・賃貸用部分とを区分する必要が生じます。
とくに注意したい支出は、次のとおりです。
| 支出・税務処理 | 注意点 |
|---|---|
| 住宅ローン控除 | 居住用部分が要件を満たすか確認 |
| 借入金利子 | 事業用・賃貸用部分を経費にする場合、住宅ローン控除との整合性を確認 |
| 固定資産税 | 事業用・賃貸用部分を経費処理する場合、按分根拠が必要 |
| 減価償却費 | 事業用・賃貸用部分のみ対象になる場合がある |
| 水道光熱費・通信費 | 家事関連費として合理的按分が必要 |
| 住宅ローン控除の計算明細書 | 居住割合や取得価額との整合性を確認 |
住宅ローン控除を最大限使いたいからといって、実際には事務所や賃貸部分として使っている箇所まで、すべて居住用として扱うことはできません。逆に、事業用の経費を計上しているのに、住宅ローン控除では全体を居住用として扱っているとすれば、申告全体の整合性に疑問が残ります。
個人の税務では、家計と事業とが混ざり合いやすいものです。見せたい結論に数字を合わせるのではなく、利用の実態から居住用部分と事業用部分を説明できるよう、整理しておくことが肝心です。
過去のマイホーム売却特例との関係を確認する
住宅ローン控除は、マイホームの売却特例と重複しては使えない場合があります。
国税庁は、令和4年以降入居の新築住宅等について、居住年およびその前2年、その後3年の計6年間に、居住用財産の譲渡所得の特別控除や、特定の居住用財産の買換え特例といった一定の譲渡所得の課税特例の適用を受けていないことを、要件として示しています。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
これは、買換えや住み替えをされた方にとって、非常に重要なポイントです。
以前住んでいた自宅を売却して3,000万円特別控除などを使った場合には、新居の住宅ローン控除と両立できないことがあります。売却益が出た年だけの判断ではなく、新居の住宅ローン控除期間にも影響してくるため、住み替えの際には、あらかじめ確認しておきたい論点です。
とくに、次のような方は注意が必要です。
| 状況 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 旧自宅を売却した | 3,000万円特別控除、買換え特例等を使ったか |
| 自宅売却と新居購入が近い | 居住年、その前2年、その後3年の関係 |
| 売却損が出た | 譲渡損失の損益通算・繰越控除との関係 |
| 相続した空き家を売却した | 被相続人居住用財産の特例との区別 |
| 共有不動産を売却した | 誰がどの特例を使ったか |
| 夫婦それぞれが旧自宅を所有していた | 各人ごとの特例適用状況 |
住宅ローン控除の初年度申告では、取得した住宅だけでなく、過去や同時期の資産売却まで視野に入れて確認していくことになります。
2年目以後は年末調整に移行できるが、管理は続く
給与所得者の場合、住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要ですが、2年目以後は年末調整で適用を受けられるのが一般的です。
国税庁は、給与所得者について、控除を受ける最初の年分は確定申告書の提出が必要である一方、2年目以後は年末調整で適用を受けられ、その際には税務署から送付される住宅借入金等特別控除証明書兼申告書と、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書を勤務先に提出する必要がある、と説明しています。
出典:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
また、国税庁の質疑応答によれば、初年度の確定申告によって住宅ローン控除を受けると、翌年以後の住宅ローン控除申告書や証明書が税務署から送付され、その時期は確定申告をした年の10月頃とされています。
出典:国税庁|住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)質疑応答事例
ただし、2年目以後に年末調整へ移行した後でも、次のような場合には、確定申告や追加の確認が必要になることがあります。
| 状況 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 副業収入がある | 確定申告義務、雑所得・事業所得の区分 |
| 不動産収入がある | 不動産所得、必要経費、減価償却 |
| 株式売却・配当がある | 申告要否、申告分離、住民税への影響 |
| 2か所給与がある | 年末調整だけで控除しきれない場合 |
| 借換えをした | 借換後の借入が要件を満たすか |
| 繰上返済をした | 償還期間が10年未満にならないか |
| 転勤・転居があった | 居住継続要件、単身赴任、再居住の取扱い |
| 離婚・財産分与があった | 共有持分、債務負担、所有関係 |
| 自宅の一部を賃貸・事業利用した | 居住割合と経費処理の整合性 |
| 年末残高証明書が間に合わない | 確定申告または年末調整再計算の可否 |
住宅ローン控除は、初年度の申告が終わればすべて完了する、という制度ではありません。控除期間の途中でも、居住実態、借入金、所得、事業利用、転勤、売却といった変化には、引き続き目を配っていく必要があります。
初年度申告のために整理しておきたい資料
住宅ローン控除のご相談の前に、次の資料をあらかじめ整理しておくと、判断がスムーズに進みます。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 源泉徴収票 | 給与所得、源泉徴収税額、年末調整済み控除 |
| 売買契約書・工事請負契約書 | 契約日、取得価額、対象物件、消費税、相手方 |
| 登記事項証明書 | 床面積、所有者、持分、建築年月日、不動産番号 |
| 借入金年末残高証明書 | 年末残高、借入先、借入区分 |
| 金銭消費貸借契約書 | 借入人、連帯債務者、返済期間、利率 |
| 建築確認済証・検査済証 | 建築確認日、完成時期 |
| 住宅性能証明書 | 認定住宅、ZEH水準、省エネ基準適合の確認 |
| 住宅用家屋証明書 | 認定住宅等の追加資料 |
| 補助金決定通知書 | 取得価額から控除すべき補助金等 |
| 贈与税申告書・贈与契約書 | 住宅取得等資金贈与の特例、資金の出所 |
| 通帳・資金移動資料 | 頭金、借入、贈与、返済の流れ |
| 旧自宅の売却資料 | 譲渡所得特例との重複確認 |
| 事業・不動産所得資料 | 自宅兼事務所・賃貸併用の按分確認 |
住宅ローン控除の初年度申告で問われるのは、書類を「添付するかどうか」だけではありません。それぞれの資料に記された数字が、互いに整合しているかどうかが重要になります。
売買契約書の取得価額、登記事項証明書の床面積、借入金残高証明書の残高、補助金や贈与の金額、共有持分――これらがひとつの線でつながっていなければ、申告内容の説明力は弱くなってしまいます。
よくある誤り
住宅ローン控除の初年度申告で、よく見受けられる誤りは次のとおりです。
| 誤りやすい点 | 確認すべき判断軸 |
|---|---|
| 初年度も年末調整で済むと思っている | 初年度は原則として確定申告が必要 |
| 販売資料の面積で判断している | 登記事項証明書上の床面積で確認 |
| 住宅性能の証明書がない | 認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合の証明書を確認 |
| 年末残高だけで計算している | 取得価額、補助金、贈与特例額との比較が必要 |
| 土地ローンだけで控除できると思っている | 建物に係る対象借入金の有無を確認 |
| 親族からの借入を対象にしている | 親族・知人からの借入金は対象外 |
| 共有持分とローン負担が合っていない | 所有・借入・返済実態を確認 |
| 自宅兼事務所を全体居住用として扱っている | 居住用部分と事業用部分を区分 |
| 旧自宅売却特例との重複を確認していない | 居住年の前後期間の譲渡特例を確認 |
| 2年目以後の証明書を紛失している | 税務署への再交付手続を確認 |
| 控除しきれない額を見落としている | 所得税・住民税への影響を確認 |
住宅ローン控除は、金額が大きく、適用期間も長い制度です。それだけに、初年度の判断の誤りが、翌年以降にまで影響していきます。
住宅ローン控除のための確定申告をすると、他の所得も整理が必要になる
住宅ローン控除だけを目的として確定申告をする場合であっても、その年に申告すべき他の所得や取引がないかを、あわせて確認しておく必要があります。
たとえば、副業収入、不動産収入、株式売却、配当、暗号資産取引、一時所得、退職所得、保険金、事業所得などがある場合には、住宅ローン控除の申告とともに、申告の要否や所得区分を整理していくことになります。
確定申告は、住宅ローン控除だけを付け加える手続ではありません。その年の所得と控除を、一体として申告する手続なのです。
とくに、次のような方は注意が必要です。
| 状況 | 住宅ローン控除とあわせて確認すべき論点 |
|---|---|
| 副業収入がある | 事業所得・雑所得・給与所得の区分 |
| 個人事業をしている | 自宅兼事務所、家事関連費、青色申告 |
| 不動産収入がある | 不動産所得、借入金利子、減価償却 |
| 旧自宅を売却した | 譲渡所得、3,000万円特別控除、買換え特例 |
| 株式を売却した | 特定口座、申告分離、損益通算 |
| 親から資金援助を受けた | 贈与税、住宅取得等資金贈与の特例 |
| 退職・転職があった | 年末調整未了、源泉徴収票、社会保険料 |
| 海外転勤がある | 居住者・非居住者、単身赴任、家族居住 |
| 災害・転居がある | 居住継続、再適用、災害特例 |
住宅ローン控除は、給与所得者の方にとっても身近な制度です。ただ、他の収入や資産取引がある場合には、申告全体の整合性を確認しておくことが欠かせません。
住宅ローン控除初年度の申告に不安がある方へ
住宅ローン控除の初年度申告は、必要書類を集めて入力するだけの作業ではありません。
入居年、住宅区分、省エネ性能、登記事項証明書上の床面積、取得価額、補助金、贈与、借入金残高、共有持分、連帯債務、居住割合、そして旧自宅の売却特例との関係――これらを整理したうえで、制度要件に合った申告内容へと仕上げていく必要があります。
とりわけ、個人事業や副業がある方、不動産収入のある方、自宅兼事務所として使用している方、親族から資金援助を受けた方、住み替えで旧自宅を売却した方、共有・連帯債務で住宅を取得した方は、住宅ローン控除だけにとどまらず、所得区分、必要経費、贈与税、譲渡所得、住民税への影響まで含めて整理していくことが大切です。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、住宅ローン控除を単なる還付申告として扱うのではなく、住宅の取得、資金の流れ、所得、控除、そして将来の申告・年末調整までを含めた、ひとつの税務判断として整理してまいります。
住宅ローン控除の初年度申告に不安をお持ちの場合、また、副業・不動産収入・資産売却・贈与・自宅兼事務所といった他の論点とあわせて確認したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。
振り返り
| 重要事項 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 初年度の手続 | 初年度は原則として確定申告が必要 |
| 2年目以後 | 給与所得者は年末調整で適用できる場合がある |
| 正式名称 | 住宅借入金等特別控除 |
| 控除の性質 | 所得控除ではなく税額控除 |
| 入居要件 | 取得等の日から6か月以内に居住し、年末まで引き続き居住 |
| 床面積 | 登記事項証明書上の床面積で確認 |
| 所得要件 | 原則として合計所得金額2,000万円以下 |
| 小規模住宅 | 入居年・住宅区分により40㎡以上50㎡未満でも対象となる場合がある |
| 借入要件 | 原則として10年以上の分割返済 |
| 対象外借入 | 親族・知人からの借入金は対象外 |
| 住宅区分 | 認定住宅、ZEH水準、省エネ基準適合、その他住宅などを確認 |
| 令和6・7年入居 | 新築のその他住宅は省エネ要件・建築確認時期に注意 |
| 令和8年度改正 | 令和8年から令和12年入居分まで制度延長、床面積要件等に変更あり |
| 必要書類 | 計算明細書、残高証明書、登記事項証明書、契約書、性能証明書等 |
| 補助金・贈与 | 控除計算上、取得価額から差し引く必要がある場合がある |
| 共有・連帯債務 | 所有持分、借入負担、返済実態を整合させる |
| 自宅兼事務所 | 居住用部分と事業用部分を区分する |
| 売却特例との関係 | 旧自宅の譲渡特例と重複できない場合がある |
| 他所得の確認 | 住宅ローン控除の申告時も副業・不動産・譲渡所得等を確認する |