認定経営革新等支援機関の指導・助言|事業承継税制で専門家に確認すべき実務論点

法人版事業承継税制の特例措置を検討する際、「認定経営革新等支援機関の指導・助言を受ける必要がある」と説明されることがあります。

このとき誤解されやすいのが、認定支援機関の関与を「特例承継計画に押印や記載をしてもらうための形式的な手続」と捉えてしまうことです。

特例承継計画には、後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などを記載します。そして、その内容について認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けることが求められます。中小企業庁が公表している現行情報によれば、法人版事業承継税制の特例措置を利用するには、平成30年4月1日から令和9年9月30日までに特例承継計画を都道府県庁へ提出し、確認を受けておく必要があります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ただ、認定支援機関の関与は、計画書の空欄を埋めるためだけのものではありません。

事業承継税制は、税額の猶予にとどまらず、後継者への経営権移転、株式・議決権の集中、会社財務、相続関係、納税資金、承継後の継続管理にまで影響が及ぶ制度です。認定支援機関の指導・助言は、こうした論点を制度適用の前に整理し、特例承継計画を会社の実態に合ったものへと近づけるための、重要なプロセスだと考えています。

本記事では、認定経営革新等支援機関の役割について、単なる制度説明にとどめません。事業承継税制を使う前に何を確認し、どこまでを専門家に依頼すべきか――その実務判断の観点から整理してまいります。

目次

認定経営革新等支援機関とは何か

認定経営革新等支援機関とは、中小企業に対して専門性の高い支援を行うため、税務・金融・企業財務に関する専門的知識や、支援実務の経験が一定レベル以上ある個人・法人・中小企業支援機関等を、国が認定する制度です。中小企業庁は、認定支援機関による支援の流れとして、経営状況の把握、財務分析、経営課題の抽出、事業計画作成に向けた支援・助言、事業計画実行に必要な支援・助言、モニタリング・フォローアップなどを挙げています。

出典:中小企業庁|認定経営革新等支援機関

法人版事業承継税制の特例措置では、認定支援機関の関与が特に重要になる場面があります。

ひとつは、特例承継計画の作成・提出時です。

もうひとつは、事業承継税制の適用後5年間の従業員数の平均が、贈与・相続時と比べて8割を下回った場合の報告時です。

中小企業庁は、特例認定にあたって、特例承継計画に認定支援機関の指導・助言を受けた旨を記載することが必要だとしています。また、適用後5年間の従業員数の平均が8割を下回った場合には、その理由の記載とともに、認定支援機関による所見の記載が求められます。経営悪化等が原因である場合には、認定支援機関の指導・助言を受けた旨の記載も必要です。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

つまり認定支援機関は、入口の計画確認だけにとどまらず、承継後の経営変化にも関与し得る存在なのです。

認定支援機関の指導・助言は何のためにあるのか

特例承継計画は、会社が作成し、都道府県に提出する計画です。

しかし、会社自身が作成した計画だけでは、制度上・税務上・財務上の重要論点が十分に整理されないまま残ってしまうことがあります。

認定支援機関の指導・助言は、会社が作成する計画について、外部専門家の視点から、次のような点を確認するためにあります。

確認領域認定支援機関が確認すべき視点
後継者後継者が実際に経営を担える体制にあるか
承継時期贈与・相続・株価・代表交代の時期が整合しているか
経営見通し承継時までに会社が整えるべき課題が見えているか
承継後5年間の計画後継者が経営を継続できる計画になっているか
株主構成後継者の議決権確保、株式分散、少数株主問題を確認しているか
財務・資金繰り借入、退職金、納税資金、設備投資に無理がないか
継続管理年次報告、継続届出、取消リスクを見据えているか
説明可能性後から家族・株主・金融機関・税務署に説明できる資料が残るか

実務上も、特例承継計画は、後継者や承継時までの経営見通しを記載し、認定支援機関が所見を記載するものとして整理されています。

したがって、認定支援機関の指導・助言は、形式的な確認ではなく、税制適用の前提となる経営判断を点検する機会だと捉えるべきでしょう。

「認定支援機関に頼めば安心」とは限らない

認定支援機関は、国の認定を受けた公的な支援機関です。

しかし、認定を受けていることと、事業承継税制・自社株評価・相続税申告・会社法・株主管理のすべてに精通していることは、必ずしも同じではありません。

認定支援機関には、商工会、商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士など、さまざまな主体があります。中小企業庁の法人版事業承継税制ページでも、商工会・商工会議所などの中小企業支援者、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が、主な認定支援機関として認定されていると説明されています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

そのため、認定支援機関へ相談する際には、「認定されているか」だけでなく、「この案件で必要な判断に対応できるか」までを確認しておく必要があります。

事業承継税制では、少なくとも次の専門領域が重なり合います。

領域必要となる主な判断
税務贈与税・相続税の納税猶予、猶予税額、申告、担保、取消時の税務
自社株評価非上場株式評価、同族株主判定、会社規模、特定評価会社、配当還元方式
財務資金繰り、役員退職金、借入、経営者保証、金融機関説明
会社法株式譲渡、自己株式、種類株式、株主名簿、少数株主対応
相続法務遺言、遺留分、遺産分割、代償財産、親族間合意
継続管理年次報告、継続届出、雇用未達時の報告、認定取消リスク

これらすべてが、認定支援機関の指導・助言だけで当然に解決するわけではありません。

むしろ、どの論点を誰が担当するのかを整理しておくことこそが、認定支援機関を活かすうえで重要になります。

税理士・公認会計士が関与する意味

事業承継税制では、税理士・公認会計士が認定支援機関として関与する場面が数多くあります。

その理由は、特例承継計画が単なる経営計画ではなく、自社株評価、贈与税・相続税、納税猶予額、会社財務、税務申告と深く結びついているためです。

特例承継計画の提出後、実際に贈与または相続が発生した場合には、都道府県知事の認定を受け、その後、税務署への贈与税または相続税の申告において、納税猶予の適用を受ける手続が必要になります。中小企業庁も、贈与税・相続税の納税猶予を受けるためには、都道府県知事の認定を受けたうえで、税務申告時に別途手続が必要になると説明しています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

また、法人版事業承継税制は、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を、後継者が贈与・相続等により取得した場合に、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもとで納税を猶予する制度です。後継者の死亡等によって、猶予税額の納付が免除される仕組みになっています。

出典:国税庁|法人版事業承継税制

つまり、特例承継計画の段階で、後の税務申告や株価評価と矛盾する前提を置いてしまうと、実行段階になって問題が表面化する可能性があるのです。

税理士・公認会計士が関与する場合には、次のような確認が重要になります。

確認事項実務上の意味
現状株価の概算評価制度効果、納税猶予額、猶予対象外税額を把握する
株価変動要因利益、純資産、退職金、不動産、配当方針を確認する
贈与・相続の比較承継時期と税務負担を比較する
納税猶予対象外税額自社株以外の相続税、贈与税、納税資金を確認する
担保提供猶予税額に対する担保の見通しを確認する
税務申告との整合性特例承継計画、認定申請、申告書の前提を一致させる
継続届出適用後の税務署への届出管理を見据える

特例承継計画の作成段階から税務・会計の視点を入れておくことは、単に申告をスムーズにするためだけではありません。

そもそも制度を使うべきかどうかを、数字に基づいて判断するために欠かせない作業なのです。

認定支援機関が確認すべき「計画確認」の中身

認定支援機関の指導・助言では、特例承継計画の記載内容が会社の実態と合っているかを確認する必要があります。

ここで確認すべき内容は、大きく次の4つに分けられます。

1. 後継者の確認

特例承継計画には、後継者の氏名を記載します。

しかし、後継者欄に名前を書くことと、後継者として経営を担えることは、別の問題です。

認定支援機関は、少なくとも次の観点を確認すべきでしょう。

確認事項確認の意味
後継者が代表者として経営できるか制度要件と実際の経営継続に関わる
先代経営者の退任方針があるか権限移譲、役員退職金、金融機関説明に関わる
後継者が経営数字を理解しているか承継後5年間の計画実行に関わる
後継者が株式を取得する資金・税務負担を理解しているか納税猶予対象外税額や取消時リスクに関わる
後継者以外の親族・役員との関係が整理されているか承継後の意思決定や相続紛争に関わる

事業承継は、後継者を決めるだけでは完了しません。

後継者が経営権と責任を引き受けられる状態を整えることまでが必要になります。

2. 承継時期の確認

特例承継計画では、事業承継の予定時期も重要な要素です。

生前贈与で進めるのか。相続まで待つのか。先代経営者以外の株主からの承継も行うのか。複数の後継者へ承継するのか。株式承継と代表者交代を同時に行うのか、それとも段階的に進めるのか。

これらの判断は、税務だけでなく、会社経営、株主構成、相続関係にまで影響します。

特に特例措置では、特例承継計画を提出した事業者であって、平成30年1月1日から令和9年12月31日までに、贈与・相続により会社の株式を取得した後継者が対象になるとされています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

承継時期を決める際には、次の点を同時に確認しておく必要があります。

確認事項実務上の意味
現状株価と将来株価贈与・相続のタイミングに影響する
先代経営者の退任時期代表者要件、役員退職金、金融機関説明に影響する
後継者の経営準備実際に代表者として経営できる時期に影響する
相続人間の調整遺留分、代償財産、遺言の必要性に影響する
株式分散の状況株式集約の順序や承継対象に影響する
将来の売却・再編可能性納税猶予の取消・再計算リスクに影響する

認定支援機関の助言では、「期限までに計画を出せるか」だけでなく、「その承継時期で会社と後継者に無理が生じないか」までを確認しておきたいところです。

3. 経営見通し・事業計画の確認

特例承継計画では、承継時までの経営見通しや、承継後5年間の事業計画を記載します。

ここで大切なのは、事業計画を見栄えのよい成長計画に仕立てることではありません。

後継者が承継後に会社を維持し、必要な改善を進め、制度適用後の管理にも対応できるかを確認することこそが本質です。

認定支援機関の指導・助言では、次のような内容を確認しておく必要があります。

確認事項確認の意味
主要事業の収益性承継後の経営継続可能性を確認する
資金繰り借入返済、納税資金、設備投資、退職金支給の影響を確認する
管理体制月次決算、予実管理、経理体制、内部管理を確認する
従業員体制後継者を支える幹部・従業員体制を確認する
取引先・金融機関対応承継後の信用維持を確認する
不採算事業・遊休資産承継後の改善課題や資産管理会社化リスクを確認する
投資計画財務安全性と将来株価への影響を確認する

実務上も、認定支援機関の指導・助言の内容としては、株式分散への対応、原材料価格上昇による収益力への影響、業務フロー改善、価格交渉、投資計画の見極めなど、税務にとどまらず経営・財務に踏み込んだ助言が記載例として示されています。

特例承継計画は、税制適用のための書類であると同時に、承継後の経営計画の入口でもあるのです。

4. 株主構成・議決権の確認

事業承継税制を使ったとしても、株主構成が不安定なままでは、後継者の経営権は安定しません。

認定支援機関が事業承継計画を確認する際には、株主名簿、議決権割合、名義株、自己株式、少数株主、種類株式といった点まで確認しておく必要があります。

確認事項実務上の注意点
株主名簿実際の株主と一致しているか
名義株実質的な所有者に争いがないか
議決権割合後継者が安定して経営判断できるか
少数株主会社法上の権利行使や株式買取請求リスクがないか
自己株式議決権判定や株価評価に影響しないか
種類株式議決権制限や拒否権付株式が税制要件に影響しないか
先代以外の株主複数株主からの承継設計が必要か

事業承継は、経営者の交代だけでなく、会社の支配権を裏づける株式の移転を伴うものです。後継者が経営者に就任しても、議決権を安定して確保できなければ、安心して経営に専念できないという問題が残ってしまいます。

したがって認定支援機関の指導・助言では、税制上の要件確認だけでなく、後継者が実際に経営権を安定して持てるかどうかまで確認しておくことが欠かせません。

認定支援機関の関与と、都道府県・税務署手続の違い

認定支援機関の指導・助言を受けたからといって、事業承継税制の適用が確定するわけではありません。

法人版事業承継税制では、次の手続が段階的に関係してきます。

手続主な役割主な関係者
特例承継計画特例措置を使うための事前計画会社、認定支援機関、都道府県
都道府県知事の認定申請贈与・相続後に円滑化法上の認定を受ける手続会社、後継者、都道府県
税務署への申告贈与税・相続税の納税猶予を受ける税務手続後継者、税理士、税務署
年次報告認定後5年間の都道府県への報告会社、後継者、都道府県
継続届出税務署に対する納税猶予継続の届出後継者、税理士、税務署
雇用未達時の報告従業員数が8割を下回った場合の報告・所見会社、認定支援機関、都道府県

中小企業庁は、認定後には都道府県庁へ年次報告書を、税務署へ継続届出書を提出する必要があるとしています。税務申告後5年以内は毎年、6年目以後は税務署にのみ3年に一度、継続届出書を提出する流れが示されています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

認定支援機関は、制度適用に必要な計画や経営面の確認に関与します。

しかし、税務署への申告、添付書類、担保提供、継続届出の管理については、税務実務として別途整理しておく必要があります。

「認定支援機関に見てもらったから、税務申告も問題ない」と考えてしまうのは、危うい発想です。

雇用未達時に認定支援機関が関与する意味

法人版事業承継税制の特例措置では、雇用要件が弾力化されています。

中小企業庁は、事業承継後5年間平均で雇用の8割維持が必要とされていた雇用要件を抜本的に見直し、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予が継続可能になったと説明しています。ただし、経営悪化等が理由である場合には、認定支援機関の指導・助言が必要です。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ここで気をつけたいのは、「8割を下回っても必ず問題ない」という意味ではない、という点です。

特例措置では、雇用が8割を下回った場合でも、直ちに認定取消・納税になるわけではありません。とはいえ、その理由については都道府県へ報告を行う必要があります。報告に際しては、認定支援機関が雇用減少の理由について所見を記載し、理由が経営悪化または正当でないものである場合には、経営改善のための指導・助言を行うことが求められます。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

実務上は、次のような準備が必要になります。

状況必要となる整理
従業員の自然減少退職、採用難、高齢化、事業規模との関係を整理する
業績悪化による人員減経営悪化の原因、改善策、資金繰りを整理する
事業縮小不採算事業の整理理由、今後の事業計画を整理する
採用難採用活動、地域事情、処遇改善策を整理する
組織再編・事業譲渡従業員数への影響と制度上の届出・報告を確認する

雇用要件の弾力化は、会社の実態に配慮するための制度です。

しかし、記録や説明が一切不要になる、というわけではありません。

認定支援機関の関与は、雇用未達の事実を単に追認するためのものではなく、会社の状況を整理し、必要な改善策を示すためのものです。実務上も、雇用確保要件を充足できなかった理由について認定支援機関が所見を記載し、その理由が経営悪化または正当な理由と認められない場合には、経営力向上に係る指導・助言とその記載が必要になると整理されています。

特例承継計画の変更時にも認定支援機関の助言が必要になる

事業承継は、計画どおりに進むとは限りません。

後継者が変わる。承継時期が変わる。株式承継の方法が変わる。先代経営者以外の株主からの承継が追加される。会社の合併・組織再編を検討することになる。経営環境が変わり、承継後の事業計画を見直す必要が出てくる。

こうした場合には、特例承継計画の変更が必要になることがあります。

中小企業庁は、特例承継計画の確認を受けた後に計画内容へ変更があった場合や、確認を受けた会社が消滅する等の一定の組織再編があった場合には、変更申請書または報告書を都道府県へ提出し、再度確認を受けることができるとしています。その際には、変更事項等を反映した計画を記載し、改めて認定経営革新等支援機関の指導・助言を受ける必要があります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

この変更手続は、実務上とても重要です。

当初の計画と実際の承継がずれた場合、変更の理由や変更後の計画が整理されていなければ、後の認定申請や税務申告に影響を及ぼす可能性があります。

認定支援機関に相談すべきなのは、計画提出時だけではありません。承継方針に変化が生じた時点でも、早めに確認しておくことが大切です。

認定支援機関に相談する前に準備すべき資料

認定支援機関の指導・助言を有効に受けるには、会社側で必要資料を整理しておくことが重要です。

資料が不十分なまま相談しても、一般的な説明にとどまり、実際の判断に必要な論点まで踏み込めないことがあります。

資料確認する目的
直近数期の決算書・法人税申告書業績、純資産、株価、資金繰りを把握する
月次試算表直近の業績変化を確認する
株主名簿株主構成、議決権、株式分散を確認する
定款譲渡制限、種類株式、機関設計を確認する
登記事項証明書代表者、役員、会社基本情報を確認する
借入金一覧・担保保証資料金融機関対応、経営者保証、返済負担を確認する
役員報酬・退職金方針会社財務と税務影響を確認する
相続関係資料他の相続人、遺留分、遺言の必要性を確認する
事業計画・資金繰り表承継後の経営継続可能性を確認する
過去の株式移転資料贈与、売買、名義株、株券発行の有無を確認する

事業承継の相談では、会社の現状把握が出発点になります。実務上も、事業承継に向けた準備として、会社の現状、経営者個人の情報、財務関連情報、契約・許認可、事業関連情報、後継者選定などを把握しておくことが重要だと整理されています。

認定支援機関の助言を実効性のあるものにするには、「制度を使えるか」だけを尋ねるのではなく、「会社の現状を踏まえたうえで、どの承継方法が無理のない選択か」を検討できる資料をそろえておく必要があります。

認定支援機関に確認すべき質問

認定支援機関へ相談する際には、単に「特例承継計画を作れますか」と尋ねるだけでは不十分です。

次のような質問を通じて、助言の範囲と深度を確認しておくことが大切です。

確認したいこと認定支援機関に確認すべき質問
制度適用の前提自社は法人版事業承継税制の特例措置を検討できる状況か
後継者後継者要件と実際の経営体制に問題はないか
株式どの株式を、誰から、誰に、どの順番で承継すべきか
株価現状株価と将来株価の見通しをどう見るべきか
税額猶予される税額と、猶予されない税額はどの程度か
資金納税資金、担保、退職金、借入返済に無理はないか
株主構成少数株主、名義株、自己株式、種類株式に問題はないか
相続遺留分、遺言、代償財産、親族間合意をどう整理すべきか
適用後年次報告、継続届出、雇用未達、取消リスクを誰が管理するか
役割分担認定支援機関、税理士、弁護士、司法書士、金融機関の分担はどうするか

認定支援機関の助言は、制度の入口を整えるだけでなく、承継後に問題化しやすい論点を前倒しで把握するためにこそ活用したいものです。

認定支援機関の助言に含めたい論点

特例承継計画に関する指導・助言では、次の論点を含めて確認しておくことが望ましいといえます。

論点なぜ重要か
後継者の経営能力税制要件を満たしても、経営を継続できなければ制度維持が難しい
株式移転の順序先代以外の株主からの承継、複数後継者、議決権に影響する
自社株評価税額、納税猶予額、相続関係、株式集約に影響する
会社財務退職金、自己株式取得、借入返済、投資計画に影響する
金融機関説明後継者の信用、返済原資、保証解除に影響する
相続人対応遺留分、代償財産、遺言、親族間紛争に影響する
継続届出体制適用後の手続漏れが取消リスクにつながる
将来の再編・廃業可能性納税猶予の取消・再計算・一部納付に影響する
記録管理後から説明できる判断資料が必要になる

事業承継税制は、書類を提出する制度であると同時に、長期にわたる管理を前提とする制度でもあります。

そのため認定支援機関の助言は、提出時点の要件確認で終わらせるのではなく、将来の管理負担や取消リスクまで含めて受けておくべきものといえます。

認定支援機関に依頼する業務範囲を明確にする

認定支援機関へ相談する際には、どこまでを依頼するのかを明確にしておく必要があります。

同じ「事業承継税制の相談」であっても、業務範囲は大きく異なるからです。

業務範囲内容
初期相談制度概要、適用可能性、検討の進め方を確認する
現状分析株主構成、財務、後継者、相続関係を整理する
株価試算非上場株式評価を行い、税額・制度効果を把握する
特例承継計画作成支援計画内容の整理、指導・助言、所見記載を行う
認定申請支援贈与・相続後の都道府県認定申請を支援する
税務申告支援贈与税・相続税申告、添付書類、担保提供を支援する
継続管理年次報告、継続届出、雇用未達時の対応を管理する
高度論点レビュー名義株、資産管理会社、組織再編、少数株主、遺留分を検討する

特例承継計画の指導・助言だけを依頼するのか。株価評価や申告まで依頼するのか。承継後の継続届出まで管理してもらうのか。相続法務や会社法手続は、別の専門家と連携するのか。

この整理をしないまま進めてしまうと、「計画は出したものの、認定申請や税務申告で誰が責任を持つのか分からない」という状態になりかねません。

認定支援機関に依頼する際の注意点

認定支援機関へ依頼するときは、次の点に注意しておく必要があります。

1. 認定支援機関の所見は税務上の適用保証ではない

認定支援機関の指導・助言を受けたことは、特例承継計画に必要な手続の一部です。

しかし、それだけで納税猶予の適用が保証されるわけではありません。

事業承継税制の適用には、都道府県知事の認定、税務署への申告、添付書類、担保提供、適用後の継続届出などが必要になります。

認定支援機関の所見を受けたからといって、会社要件、後継者要件、先代経営者要件、株式要件、自社株評価、税務申告のすべてが当然に確認済みになるわけではない、という点は押さえておきたいところです。

2. 認定支援機関の得意領域を確認する

認定支援機関には、それぞれ得意領域があります。

金融機関であれば、資金繰りや事業計画に強いことがあります。商工会・商工会議所であれば、地域支援や相談窓口に強みがあります。税理士・公認会計士であれば、税務申告、自社株評価、財務分析に対応しやすい傾向があります。弁護士であれば、株主紛争、相続法務、会社法手続に強いといえます。

ただし、いずれの専門家であっても、事業承継税制の全領域を単独で完結できるとは限りません。

必要に応じて、複数の専門家で役割を分担することが重要になります。

3. 書類作成だけで終わらせない

特例承継計画を提出すること自体は、もちろん重要です。

しかし、計画提出後には、贈与・相続があり、認定申請があり、税務申告があり、その後も継続管理が続いていきます。

実務上も、特例承継計画の提出、都道府県への認定申請、税務署への申告、認定後5年間の年次報告・継続届出、5年経過後の継続届出という一連の流れが整理されています。

したがって、認定支援機関の指導・助言は、計画提出だけを目的とするのではなく、その後の実行・申告・管理まで見据えて受けることが大切です。

4. 期限管理とレビュー体制を確認する

事業承継税制は、期限と書類の多い制度です。

特例承継計画、認定申請、税務申告、担保提供、年次報告、継続届出、雇用未達時の報告など、漏れの許されない手続が続いていきます。

税務実務では、優遇税制の適用漏れ、届出書の提出失念、株式評価の誤り、資料受領の遅れなどが税賠リスクになり得るため、チェック体制やレビューが重要になります。

認定支援機関へ依頼する際には、次のような点も確認しておくべきでしょう。

確認事項実務上の意味
提出期限の管理方法期限徒過を防ぐ
必要書類一覧の有無書類不備を防ぐ
レビュー担当者の有無判断漏れ・記載誤りを防ぐ
税務申告との連携認定と申告の前提不一致を防ぐ
継続届出の管理体制適用後の取消リスクを防ぐ
リスク説明の記録後から説明できる状態を作る

高付加価値の事業承継支援では、書類を作ること以上に、判断過程とリスク説明を残しておくことが重要になります。

認定支援機関の指導・助言を受けるべきタイミング

認定支援機関への相談は、特例承継計画の提出直前では遅すぎる場合があります。

特に、次のような会社では、早めに相談しておくことをおすすめします。

状況早期相談が必要な理由
後継者が未確定計画に記載する後継者と実際の経営体制を整理する必要がある
株式が分散している議決権、少数株主、先代以外株主からの承継を確認する必要がある
自社株評価が高い税額、納税猶予額、納税資金、相続人対応を確認する必要がある
不動産・有価証券が多い資産管理会社判定、株価評価、取消リスクを確認する必要がある
役員退職金を予定している会社財務、株価、資金繰り、金融機関対応に影響する
相続人間の調整が難しい遺留分、遺言、代償財産、親族間合意が必要になる
将来の売却・廃業可能性がある納税猶予の取消・再計算リスクを確認する必要がある
組織再編を検討している承継税制の要件・取消リスク・届出を確認する必要がある

特例承継計画は、期限内に提出すればよいというものではありません。

会社の実態を整理し、後継者が経営を続けていけるかを確認したうえで提出することが大切です。

認定支援機関の関与を「会社を守る仕組み」に変える

認定支援機関の指導・助言は、制度上必要な手続です。

しかし、それを形式的な確認で終わらせるのか、会社を守る仕組みへと変えていくのか――その分かれ目は、相談の仕方にあります。

特例承継計画を作る段階で、次のような整理をしておくと、承継後の管理にもつながっていきます。

整理すべき事項残しておくべき内容
後継者選定なぜその後継者にするのか
承継時期なぜその時期に贈与・相続で承継するのか
株式承継範囲どの株式を、誰から、誰に移すのか
税務判断納税猶予を使う理由と、使わない場合との比較
株価評価評価方法、前提資料、変動要因
資金計画納税資金、退職金、借入、担保、取消時資金
関係者説明親族、株主、金融機関への説明資料
継続管理年次報告、継続届出、雇用未達時対応
リスク説明取消事由、将来再編、廃業、売却可能性

認定支援機関に相談する目的は、計画書に所見をもらうことではありません。

後から説明できる事業承継の判断を、形として残していくことにあります。

まとめ

認定経営革新等支援機関の指導・助言は、法人版事業承継税制の特例措置を利用するうえで重要な手続です。

特例承継計画には、後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などを記載し、その内容について認定支援機関の指導・助言を受ける必要があります。

しかし、認定支援機関の役割を「計画書に記載してもらうこと」だけに限定してしまうと、事業承継税制の本質を見誤ってしまいます。

認定支援機関に確認すべきなのは、制度の入口だけではありません。後継者が経営を担えるか、株式・議決権が安定するか、自社株評価と税額の見通しは立っているか、納税資金や会社財務に無理はないか、相続人・少数株主・金融機関に説明できるか、承継後の年次報告・継続届出を管理できるか――こうした点まで含めて確認しておく必要があります。

また、事業承継税制の適用後5年間の従業員数平均が8割を下回った場合には、理由の報告や、認定支援機関の所見・指導助言が必要になる場面があります。

つまり認定支援機関の関与は、計画提出時だけでなく、承継後の管理にも関わってくるのです。

事業承継税制は、非課税制度ではなく、納税猶予・免除を前提とする制度です。

制度を使えるかどうかだけでなく、使うべきか、維持できるか、後から説明できるかを、認定支援機関・税理士・公認会計士・弁護士・金融機関等と適切に役割分担しながら検討していくことが重要です。

振り返り

項目重要ポイント
認定経営革新等支援機関税務、金融、企業財務等の専門知識・実務経験を有する者として、国が認定する支援機関
特例承継計画での役割後継者、承継時期、経営見通し、承継後5年間の計画について指導・助言を行う
関与が必要な場面特例承継計画の作成時、雇用8割未達時の報告・所見等
注意点認定支援機関の所見は、納税猶予適用の保証ではない
税理士・会計士の重要性自社株評価、贈与税・相続税、納税猶予額、申告・継続届出との整合性を確認できる
確認すべき論点後継者、株式、議決権、株価、資金繰り、相続関係、金融機関説明、承継後管理
雇用未達時8割を下回っても直ちに納税とは限らないが、理由報告と認定支援機関の所見等が必要
計画変更時後継者や計画内容に変更がある場合、改めて認定支援機関の指導・助言が必要になる
相談前資料決算書、申告書、株主名簿、定款、借入資料、相続関係、事業計画、株価試算資料等
実務上の到達点特例承継計画を、形式的な提出書類ではなく、後から説明できる承継判断資料にする

認定支援機関の指導・助言をどこまで受けるべきかは、会社の株主構成、後継者体制、自社株評価、相続関係、資金繰りによって変わってきます。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継税制の適用可否だけでなく、自社株評価、株主構成、承継シミュレーション、税務申告、承継後の管理負担まで含めて、後から説明できる形で論点を整理する支援を行っています。

特例承継計画の作成前に、認定支援機関へ何を相談すべきか、自社の承継計画にどの程度の専門家レビューが必要かを確認したい場合は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。

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