個人版事業承継税制を検討するとき、最初に押さえておきたいのは、「税務署に申告すれば使える制度ではない」という点です。
この制度は、青色申告に係る一定の個人事業について、後継者が特定事業用資産を贈与または相続等によって取得した場合に、贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の事由が生じたときに免除するものです。ただし、その前提として、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定等を受けておく必要があります。
その入口にあたるのが「個人事業承継計画」です。計画を提出したうえで、実際の贈与・相続等に応じて「認定申請」を行い、都道府県知事の認定を受けたあとに、税務署で納税猶予を受けるための申告手続を進めていきます。
つまり、個人版事業承継税制の実務は、少なくとも次の三段階に分かれます。
- 個人事業承継計画を提出する
- 贈与・相続等に応じて都道府県知事の認定を受ける
- 税務署で贈与税・相続税の納税猶予の申告手続を行う
この三つは、提出先も、提出時期も、確認される内容も、果たす役割も、それぞれ異なります。
本稿では、このうち「個人事業承継計画」と「認定申請」が実務のなかでどのような位置づけにあるのかを整理します。申請書の具体的な記載例や、特定事業用資産の細かな判定、適用後の継続要件・取消事由については、別稿で改めて取り上げます。
個人事業承継計画は、納税猶予の「予約」ではない
個人事業承継計画は、この制度を検討するうえで欠かせない手続ですが、提出しただけで納税猶予が確定するわけではありません。あくまで、将来この制度の認定を受けるために必要となる、前提の手続です。
制度の前提となる認定を受けるには、平成31年4月1日から令和10年9月30日までの間に、個人事業承継計画を提出しておく必要があります。この計画には、認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けた旨を記載することが求められます。なお、制度の対象となる贈与・相続等の実行期限は、令和10年12月31日までとされています。
ここで意識しておきたいのは、計画の提出と税務上の適用は別物だということです。
計画を出していても、実際に贈与・相続等が行われる時点で要件を満たしていなければ、認定は受けられません。また、認定を受けたとしても、税務署への申告手続を適切に行わなければ、納税猶予を受けることはできません。
ですから、個人事業承継計画は「出しておけば安心」という書類ではありません。むしろ、後継者、事業内容、承継時期、対象資産、そして事業継続の見通しを整理するための、最初の実務チェックポイントととらえるべきだと考えます。
令和8年度税制改正により、計画提出期限の確認が特に重要になっている
個人事業承継計画の提出期限は、これまでの制度改正によって延長を重ねてきました。
令和8年度税制改正の大綱では、個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、計画の提出期限を2年6か月延長する方針が示されています。これを受けて、中小企業庁の2026年4月24日更新ページでは、提出期限が令和10年9月30日までと案内されています。
出典:財務省|令和8年度税制改正の大綱
出典:中小企業庁|個人版事業承継税制の前提となる認定
一方で、国税庁のタックスアンサーには、令和7年4月1日現在法令等として、提出期限を令和8年3月31日までとする記載が残っている箇所があります。これは情報の更新時点の違いによるものと考えられます。
そのため、実際に制度を利用する際は、中小企業庁の最新ページ、国税庁の最新の手引き、法令・省令、そして都道府県窓口の案内を、あわせて確認しておく必要があります。
出典:国税庁|No.4442 個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除
出典:国税庁|No.4153 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除
事業承継税制では、制度期限、様式、添付書類、押印の要否、認定支援機関の関与内容などが、改正や更新で変わることがあります。過去に確認した資料をそのまま使うのではなく、実行時点の情報で改めて確認しておくことが大切です。
個人事業承継計画で整理すべきこと
個人事業承継計画は、単なる形式的な書類ではありません。
この計画では、誰が事業を引き継ぐのか、どの事業を引き継ぐのか、どの時期に承継するのか、そして承継後の事業をどう継続していくのかを整理します。
個人版事業承継税制では、会社の株式ではなく、個人事業に係る特定事業用資産が対象になります。そのため計画段階では、後継者の検討にとどまらず、事業用資産の範囲、帳簿との整合性、事業の継続可能性まで見ておく必要があります。
事業承継は、狭い意味では代表者の交代や株式の承継として語られがちですが、広い意味では、人・資産・知的資産という経営資源の承継です。個人事業の場合も、土地・建物・設備を移せば承継が終わるわけではありません。取引先、従業員、許認可、屋号、信用、ノウハウ、資金繰りまで含めて引き継げるかどうかを、確認しておく必要があります。
したがって、計画を作成する前に、少なくとも次の論点は整理しておきたいところです。
| 確認項目 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 後継者 | 誰が事業を継続するのか、事業従事の実態があるか |
| 承継時期 | 贈与で移すのか、相続まで待つのか |
| 事業内容 | 青色申告に係る事業か、不動産貸付業等に該当しないか |
| 対象資産 | 特定事業用資産に該当する資産が何か |
| 帳簿との整合性 | 青色申告決算書・貸借対照表・固定資産台帳に計上されているか |
| 所有者 | 先代事業者の所有か、生計一親族等の所有資産を含むか |
| 事業継続 | 後継者が承継後も事業を継続できるか |
| 将来方針 | 法人成り、廃業、資産売却、事業転換の可能性はないか |
計画書を整えること自体が目的ではありません。計画書を作る過程で、制度適用の前提となる事実関係を洗い出していくこと。そこにこそ意味があります。
認定経営革新等支援機関の関与は、形式的な押印ではない
個人事業承継計画には、認定経営革新等支援機関の関与が必要です。
計画には、認定支援機関による指導・助言を受けた旨を記載しておく必要があります。さらに認定申請の際には、その資産が特定事業用資産に該当すること、その事業に係る特定事業用資産のすべてが贈与・相続されていることなどを、認定支援機関が確認することが求められます。
ここでの認定支援機関の関与は、計画書に名前を入れるだけの作業ではありません。
とりわけ個人版では、対象資産の確認が重要になります。たとえば事業用不動産があるなら、その土地・建物が誰の所有か、実際に事業の用に供されているか、青色申告書の貸借対照表に計上されているか、生計一親族等の所有資産が含まれていないか、といった点を確認していくことになります。
設備や車両についても同様です。固定資産税・自動車税等との関係、事業用としての性格、帳簿への計上、減価償却資産としての整理が問題になります。
認定支援機関の役割は、制度の適用を保証することではありません。むしろ、制度適用の前提となる事実関係を確認し、後継者が事業を継続できるように、計画と実態のズレを早い段階で把握しておくことにあります。
認定申請は、贈与・相続等が実際に行われた後の手続
個人事業承継計画を提出しただけでは、認定申請はまだ完了していません。
認定申請とは、実際に贈与または相続等が行われたあとに、その承継内容が制度の前提となる要件を満たしているかどうかについて、都道府県知事の認定を受ける手続です。
現在の様式の整理では、認定申請は贈与の場合と相続・遺贈の場合に分かれ、さらに先代事業者からの承継か、生計一親族等からの承継かによって、次のように区分されています。
| 承継の場面 | 認定類型 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 贈与 | 第一種贈与認定申請 | 先代事業者から後継者への贈与 |
| 贈与 | 第二種贈与認定申請 | 生計一親族等から後継者への贈与 |
| 相続・遺贈 | 第一種相続認定申請 | 先代事業者から後継者への相続・遺贈 |
| 相続・遺贈 | 第二種相続認定申請 | 生計一親族等から後継者への相続・遺贈 |
この区分は、実務のうえでとても重要です。
個人事業では、事業に使っている土地や建物が、先代事業者本人の所有とは限りません。配偶者や親、同居の親族など、生計を一にする親族が所有する土地・建物を、事業に使っているケースもあります。
そうした場合には、先代事業者からの資産承継だけでなく、生計一親族等からの資産承継も検討対象に入ってきます。ただし、どの資産が対象になるのか、第一種と第二種の認定をどう整理するのか、承継の順序や時期が要件に合うのか。これらは慎重な確認が欠かせません。
提出先は、計画提出と認定申請で異なる
個人版事業承継税制では、提出先にも注意が必要です。
個人事業承継計画の提出先は「先代事業者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県庁」、認定申請の提出先は「個人事業承継者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県庁」とされています。
多くの場合、先代事業者と後継者の事業所所在地は同じかもしれません。しかし、事業所の移転、後継者が別拠点で開業するケース、承継後に主たる事務所が変わるケースでは、提出先が問題になってきます。
また、都道府県ごとに、提出方法、必要部数、受付窓口、事前相談の要否、郵送対応、控えの返送の扱いなどが異なることもあります。制度上の大枠は全国共通でも、実務上の受付運用については、都道府県の窓口で確認しておくのが確実です。
提出先を誤れば、期限管理のうえでリスクが生じます。とくに相続の場合は、相続開始後の限られた期間のなかで、遺産分割、認定申請、相続税申告を進めなければなりません。だからこそ、早い段階で提出先を確認しておくことが重要になります。
認定申請の期限管理は、贈与と相続で異なる
認定申請には、提出期限があります。
贈与税の認定申請については、贈与の日が1月1日から10月15日までの場合は認定申請基準日が10月15日、贈与の日が10月16日から12月31日までの場合は認定申請基準日が贈与の日とされ、提出期限はいずれも翌年1月15日とされています。
相続税の認定申請については、認定申請基準日が相続の開始の日の翌日から5か月を経過する日、提出期限が相続の開始の日の翌日から8か月を経過する日とされています。
出典:東京都産業労働局|認定申請について|事業承継税制
出典:東京都産業労働局|事業承継税制の認定
ただし、具体的な提出期限や提出書類は、制度改正や都道府県の案内更新によって変わる可能性があります。実際に申請する際は、必ず提出先となる都道府県の最新案内を確認してください。
認定申請の期限管理で怖いのは、税務申告期限だけに目が向いてしまうことです。
贈与税や相続税の申告期限を意識していても、その前段階にある都道府県認定の申請期限を失念すれば、納税猶予の適用に進めなくなるおそれがあります。届出・申請の提出忘れや期限の徒過は、税務実務でも典型的なリスク領域です。チェック体制とスケジュール管理を、しっかり組み立てておく必要があります。
個人事業承継計画と認定申請で確認される視点は異なる
個人事業承継計画と認定申請は、似ているようでいて、役割が異なります。
個人事業承継計画は、これから承継を進めていくための計画です。後継者、事業内容、承継の見通し、そして認定支援機関の指導・助言を整理します。
一方、認定申請は、実際に贈与・相続等が行われたあとに、その承継が制度要件に合っているかを確認する手続です。後継者が事業に従事しているか、特定事業用資産がすべて承継されているか、対象外の事業ではないか、青色申告との関係は整っているか。こうした実際の事実関係が問われます。
この違いを整理すると、次のようになります。
| 手続 | 主な役割 | 確認の中心 |
|---|---|---|
| 個人事業承継計画 | 承継前の計画整理 | 誰が、いつ、どの事業を承継する予定か |
| 認定申請 | 実際の承継内容の確認 | 贈与・相続等の内容が制度要件を満たすか |
| 税務申告 | 納税猶予の適用手続 | 税額計算、添付書類、担保、申告期限 |
| 継続届出等 | 適用後の維持管理 | 事業継続、資産保有、取消事由の有無 |
個人版事業承継税制では、この一連の流れをまとめて管理していく必要があります。どれか一つだけを専門家に依頼しても、全体の整合性が取れていなければ、制度適用後に問題が表面化することがあります。
税務署への申告手続は、都道府県の認定とは別に必要
都道府県知事の認定を受けても、それだけで贈与税・相続税の納税猶予が適用されるわけではありません。
贈与税・相続税の納税猶予を受けるには、都道府県知事による認定を受けたうえで、税務申告の際に別途の手続が必要になります。
制度そのものの位置づけも、改めて確認しておきましょう。個人版事業承継税制は、青色申告に係る一定の事業を行っていた事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた者が、個人の事業用資産を贈与または相続等により取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等によって免除する制度です。
都道府県の認定は、円滑化法上の認定です。税務署への申告は、贈与税・相続税の納税猶予を受けるための税務手続です。この二つを混同してはいけません。
とくに贈与税・相続税の申告では、納税猶予税額の計算、添付書類、担保の提供、対象資産の評価、他の相続財産や贈与財産との関係を整理する必要があります。認定を受けたあとも、税務申告上の要件を満たさなければ、納税猶予を受けることはできません。
認定申請前に整えておくべき資料
認定申請では、制度要件の確認だけでなく、事業と資産の実態確認が重要になります。
とくに次の資料は、早い段階で確認しておきたいところです。
| 資料 | 確認する目的 |
|---|---|
| 所得税確定申告書 | 事業所得、青色申告、過年度の申告状況を確認する |
| 青色申告決算書 | 事業内容、貸借対照表、損益状況を確認する |
| 貸借対照表 | 特定事業用資産の計上状況を確認する |
| 固定資産台帳 | 建物、設備、車両、備品等の資産内容を確認する |
| 不動産登記事項証明書 | 土地・建物の所有者を確認する |
| 固定資産税課税明細書 | 土地・建物・償却資産の課税状況を確認する |
| 賃貸借契約書・使用貸借関係資料 | 事業用資産の利用関係を確認する |
| 許認可関係資料 | 後継者が事業を継続できるか確認する |
| 借入金・担保・保証資料 | 承継後の資金繰り・金融機関対応を確認する |
| 後継者の事業従事資料 | 後継者要件・事業継続可能性を確認する |
個人事業では、事業用資産と生活用資産の境界が曖昧になりやすい傾向があります。
店舗兼住宅、事務所兼自宅、家族所有の土地、事業用と私用が混在する車両、帳簿に載っていない設備。こうしたものがある場合は、制度を適用する前に整理しておく必要があります。
個人事業承継計画と認定申請は、こうした資料をあとから慌てて集めるための手続ではありません。むしろ、制度を使うべきかどうかを判断するために、早い段階で資料を整えていくプロセスととらえるべきです。
認定申請で特に問題になりやすい論点
認定申請では、次のような論点が問題になりやすくなります。
1. 特定事業用資産の「すべて」が承継されているか
個人版事業承継税制では、対象となる事業に係る特定事業用資産のすべてを取得することが重要です。
一部の資産だけを後継者に移し、残りを先代や他の親族が保有し続ける場合は、制度要件との関係を慎重に確認しなければなりません。とくに、土地は親族所有、建物は先代所有、設備は事業用だが帳簿に計上されていない、といったケースでは、資産の範囲の確認が複雑になります。
2. 生計一親族等の所有資産が含まれるか
先代事業者本人ではなく、生計一親族等が所有する土地や建物を事業に使っている場合は、第二種認定の検討が必要になることがあります。
ただし、第二種認定は、先代事業者からの承継と無関係に、単独で使えるものではありません。先代事業者からの移転が行われていること、その後に一定の範囲で生計一親族等からの承継が行われることなど、制度上の整理が前提になります。
出典:中小企業庁|個人版事業承継税制の前提となる経営承継円滑化法の認定申請マニュアル
3. 青色申告・貸借対照表との整合性
個人版事業承継税制では、正規の簿記の原則による青色申告に係る事業が前提になります。さらに、特定事業用資産が青色申告書の貸借対照表に計上されていることが重要です。
特定事業用資産とは、先代事業者の事業の用に供されていた一定の資産で、贈与または相続開始の時期に応じて、前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていたものをいいます。
出典:国税庁|No.4442 個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除
出典:国税庁|No.4153 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除
帳簿に載っていない資産を、あとから「事業で使っていた」と説明するのは、簡単なことではありません。制度を検討する前に、帳簿、固定資産台帳、利用実態、所有者を整合させておくことが重要です。
4. 不動産貸付業等に該当しないか
個人版事業承継税制は青色申告に係る事業を対象としますが、不動産貸付業等は除外されています。
そのため、不動産を使う事業であっても、それが本業の店舗・工場・事務所として使われているのか、それとも貸付用不動産として保有されているのかを、確認する必要があります。
この判断は、「不動産を持っているかどうか」では決まりません。収入の性質、利用実態、事業内容、帳簿処理、契約関係を見たうえで判断していくことになります。
5. 承継後も事業を継続できるか
個人版事業承継税制では、適用の時点だけでなく、適用後の事業継続が重要になります。
制度を使って納税猶予を受けても、後継者が事業を継続できず、資産を事業の用に供さなくなった場合には、猶予の取消・打切りのリスクが生じます。免除されるまでに特例事業用資産を後継者の事業の用に供さなくなった場合などには、猶予税額の全部または一部について納税の猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければならないとされています。
出典:国税庁|No.4442 個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除
出典:国税庁|No.4153 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除
計画と認定申請の段階で、承継後の事業継続可能性を確認しておくこと。これは税務上のリスク管理であると同時に、経営上のリスク管理でもあります。
計画提出前に「贈与か相続か」を決め切れない場合
個人事業承継計画の段階では、贈与か相続かを完全に決め切れていないこともあります。
ただし、その場合でも、承継時期の見通し、後継者の準備状況、対象資産の整理状況、相続人間の関係、納税資金、事業継続可能性については、検討しておく必要があります。
生前贈与で進める場合は、先代が生前に資産移転を完了させ、後継者が早期に事業を引き継げるというメリットがあります。その一方で、贈与後の事業継続、資産保有、先代死亡時の税務処理、後継者の経営責任が、前倒しでのしかかってきます。
相続で進める場合は、先代が生前に資産を保有し続けられます。ただし相続が発生した際には、遺産分割、相続人間の調整、相続税申告、認定申請を、短期間のうちに進めなければなりません。
計画段階で大切なのは、制度を使うという前提だけを置くことではありません。贈与で進めた場合と相続で進めた場合とで、それぞれの手続、税務、資金繰り、家族関係、事業継続への影響を比較できる状態にしておくことです。
個人事業承継計画は「後から説明できる承継」の起点になる
個人版事業承継税制は、税額を軽くするためだけの制度ではありません。
後継者が事業を引き継ぎ、特定事業用資産を取得し、その資産を使って事業を継続していく。それを前提に、贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。
だからこそ、計画提出と認定申請では、あとから説明できる状態をつくっておくことが重要になります。
具体的には、次のような点を説明できる必要があります。
- なぜこの後継者が事業を引き継ぐのか
- なぜこの時期に贈与または相続で承継するのか
- どの資産が特定事業用資産に該当するのか
- その資産は帳簿と実態の両面で事業用といえるのか
- 事業に必要な資産がすべて承継されているのか
- 後継者は承継後も事業を継続できるのか
- 小規模宅地等の特例など、他制度との比較は済んでいるのか
- 将来の法人成り、廃業、売却の可能性をどう考えているのか
この説明が不十分なまま計画・認定申請だけを進めてしまうと、税務申告や適用後管理の段階で問題が表面化します。
事業承継税制は、提出書類を整えるだけの制度ではありません。事業、資産、税務、家族関係、将来方針を整合させていく制度です。
個人事業承継計画と認定申請でお困りの方へ
個人版事業承継税制を検討する際は、計画の提出期限や認定申請の様式だけを確認しても、十分とはいえません。
本当に確認すべきは、後継者が事業を継続できるか、対象となる特定事業用資産が整理されているか、青色申告書・貸借対照表・固定資産台帳と実態が一致しているか、贈与・相続のどちらで進めるべきか、そして認定後に税務申告と継続管理まで対応できるか、という点です。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、個人版事業承継税制について、制度の適用可能性だけでなく、事業用資産の整理、承継時期の比較、認定申請前の資料確認、税務申告・適用後管理まで見据えた検討を支援しています。
計画の提出前に、自分の事業が制度検討に耐えられる状態かを確認したい方、贈与・相続のどちらで進めるべきか整理したい方は、当事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。最初の段階では、申請書を作ることよりも、制度適用の前提となる資料と判断論点を整理することが重要です。
この記事の振り返り
| 項目 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 個人事業承継計画の役割 | 納税猶予の確定ではなく、認定申請の前提となる計画整理 |
| 提出期限 | 中小企業庁は令和10年9月30日までと案内。実行時点で最新情報を確認する |
| 認定支援機関の関与 | 計画への指導・助言、認定申請時の特定事業用資産等の確認が必要 |
| 認定申請の類型 | 贈与・相続、先代事業者・生計一親族等により第一種・第二種に分かれる |
| 提出先 | 計画は先代事業者の主たる事務所所在地、認定申請は後継者の主たる事務所所在地を管轄する都道府県庁 |
| 税務申告との関係 | 都道府県認定を受けた後、税務署で贈与税・相続税の納税猶予手続が別途必要 |
| 期限管理 | 贈与と相続で認定申請期限が異なるため、都道府県窓口の最新案内を確認する |
| 実務上の注意点 | 特定事業用資産のすべての承継、帳簿計上、所有者、事業用性を確認する |
| 判断軸 | 使えるかだけでなく、承継後も事業を続けられるか、取消リスクを管理できるかを見る |
| 相談前準備 | 確定申告書、青色申告決算書、貸借対照表、固定資産台帳、不動産資料、後継者情報を整理する |