家賃・礼金・更新料・敷金等の収入計上|不動産所得で入金額だけを見てはいけない理由

不動産所得の申告で、私がまず立ち止まって確認していただきたいのは、「通帳に入金された金額を、そのまま収入としてよいのか」という一点です。

不動産収入は、家賃だけで成り立っているわけではありません。礼金や更新料、名義書換料、承諾料、共益費、敷金や保証金のうち返還しない部分、管理会社が差し引いた管理料、滞納家賃、前受家賃など、契約と入出金を突き合わせなければ正しく整理できない項目がいくつも含まれています。

不動産所得では、「入金されたかどうか」だけを見ていては足りません。契約上いつ収入すべき権利が確定したのか、返還義務のある金銭なのか、管理会社が差し引く前の総額はいくらか、住宅賃貸なのか事業用賃貸なのか、消費税は課税か非課税か。ここまで確認して、はじめて収入の姿が見えてきます。

この記事では、不動産所得における家賃、礼金、更新料、敷金、保証金、共益費などの収入計上について、申告書を作成する前段階で整理しておきたい実務上の判断軸を、順を追って解説します。

目次

不動産所得の収入は「家賃の入金額」だけではない

不動産所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。この総収入金額には、貸付けによる賃貸料収入のほか、名義書換料、承諾料、更新料、頭金などの名目で受け取るもの、敷金や保証金のうち返還を要しないもの、そして共益費などの名目で受け取る電気代・水道代・掃除代なども含まれます。
出典:国税庁|No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

そのため、不動産所得の収入を整理するときは、次のように分けて考える必要があります。

  • 毎月または定期的に発生する家賃、地代、共益費
  • 契約時や更新時に一時的に発生する礼金、権利金、更新料、名義書換料、承諾料
  • 預り金として受け取る敷金、保証金
  • 敷金、保証金のうち、返還しないことが確定した部分
  • 管理会社を経由して入金される賃料、共益費、駐車場代、その他の精算金
  • 滞納、前受、未収、返金、相殺があるもの

ここで大切なのは、収入の名称だけで判断しないことです。「敷金」と書かれていても、一部が返還不要であればその部分は収入になります。「共益費」と書かれていても、実質的には貸付けに付随する収入として整理すべきものがあります。

反対に、入金があっても、返還義務のある敷金や保証金であれば、受け取った時点では通常、収入ではなく預り金として整理します。

収入計上は「入金日」ではなく、契約上の権利確定を確認する

不動産所得の収入計上で最も誤解されやすいのが、「入金があった年の収入にすればよい」という考え方です。

所得税では、収入金額を、実際に受け取った金額だけでなく、その年において「収入すべき金額」として判断します。不動産所得についても同じで、家賃や共益費は、契約や慣習によって支払日が定められていればその支払日、支払日が定められていなければ実際に支払を受けた日、請求があったときに支払うべきものであれば請求の日を基準に整理します。
出典:国税庁|No.1376 不動産所得の収入計上時期
出典:国税庁|所得税基本通達36-5

この点を押さえずに通帳だけを見て申告すると、たとえば次のようなズレが生じます。

  • 年末に未入金の家賃を収入から漏らしてしまう
  • 翌年分の家賃を前年中に受け取っているのに、契約上の支払日を確認していない
  • 管理会社の送金日だけで判断し、賃借人の支払日や精算期間を確認していない
  • 更新料や礼金を入金日だけで処理し、契約の効力発生日や引渡日を確認していない
  • 敷金や保証金の償却部分を、通帳に動きがないために見落としてしまう

不動産所得の収入計上では、「いつ入金されたか」だけでなく、「契約上いつ収入すべきものになったか」を確認する。この視点が欠かせません。

家賃・地代・共益費の基本的な計上時期

家賃、地代、共益費などは、まず賃貸借契約書を確認するところから始まります。

契約書に支払日が定められている場合は、その支払日の属する年分の収入として計上するのが原則です。契約書に支払日がなく、慣習上も支払日が定まっていない場合は、実際に支払を受けた日で判断します。請求があったときに支払うものとされている場合は、その請求の日が基準になります。
出典:国税庁|No.1376 不動産所得の収入計上時期
出典:国税庁|所得税基本通達36-5

ここで見落としやすいのが、家賃の対象期間と支払日がずれる場合です。

たとえば、翌月分の家賃を前月末に支払う契約であれば、家賃の対象期間は翌月であっても、契約上の支払日は前月末です。このとき、「何月分の家賃か」だけで年分を判断してしまうと、収入計上時期を誤りかねません。

一方、不動産の貸付けを事業的規模で行っており、継続的な帳簿記録、期間対応による収入計算、前受収益・未収収益の経理、一定の明細書添付などの要件を満たす場合には、貸付期間の経過に応じて、その年中の貸付期間に対応する部分を収入に計上する方法が認められることがあります。ただし、この取扱いには、一時に受ける頭金、権利金、名義書換料、更新料、礼金等は含まれません。
出典:国税庁|不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について

したがって、前受家賃があるときに、「翌年分だから翌年の収入」と機械的に処理してしまうのは危険です。契約上の支払日、帳簿の処理方法、事業的規模の有無、継続適用の状況を、あわせて確認しておく必要があります。

共益費・水道光熱費・清掃代は「実費精算」という名前だけで除外しない

共益費や水道代、電気代、清掃代などは、一見すると実費精算のように見えることがあります。

しかし国税庁の整理では、共益費などの名目で受け取る電気代、水道代、掃除代なども、不動産所得の総収入金額に含まれるものとして示されています。
出典:国税庁|No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

ですから、賃借人から受け取った共益費や水道光熱費相当額を、貸主が支払う管理費や水道光熱費、清掃費などと相殺し、差額だけを収入にする処理には注意が必要です。

不動産所得の申告では、原則として次のように整理します。

  • 賃借人から受け取る共益費、水道代、清掃代等は、収入側で把握する
  • 貸主が実際に支払う水道光熱費、清掃費、管理費等は、必要経費側で把握する
  • 管理会社の精算書で相殺されている場合も、収入総額と費用総額を確認する
  • 物件ごと、用途ごと、賃借人ごとに、何の対価なのかを契約書や精算書で確認する

「実費だから収入ではない」と考えるのではなく、貸主が受け取る金銭の性質と、貸主が負担する支出の性質を、それぞれ分けて整理することが大切です。

管理会社からの入金額だけを収入にすると漏れやすい

不動産所得の収入漏れが起きやすい典型が、管理会社の精算書です。

管理会社から通帳に入金される金額は、賃借人から受け取った家賃や共益費の総額から、管理料、修繕費、振込手数料、広告料、清掃費などを差し引いた後の金額であることがあります。

この場合、通帳に入った金額だけを収入にしてしまうと、収入も経費も過少に計上されてしまいます。

確認したいのは、管理会社との契約がどのような性質のものかという点です。

単なる管理委託・集金代行であれば、賃借人からの家賃等は貸主の収入であり、管理会社へ支払う管理料等は貸主の必要経費として整理します。この場合は、管理会社からの純入金額だけでなく、賃借人からの家賃総額、共益費、駐車場代、その他収入、差し引かれた管理料や修繕費を、総額で把握する必要があります。

一方、サブリース契約や一括借上げのように、管理会社等が賃借人となり、貸主が管理会社等から一定の賃料を受け取る契約であれば、貸主側の収入は、契約上の相手方から受け取る賃料として整理することになります。

つまり、同じ「管理会社からの入金」でも、管理委託なのか、集金代行なのか、サブリースなのかによって、収入の把握方法が変わってくるのです。

インボイス制度のもとでも、管理会社が集金代行等を行う場合には、媒介者交付特例や精算書の保存が論点になることがあります。不動産管理会社が賃貸人に代わってインボイスを発行する場面では、委託者に交付する精算書等の記載内容と保存が重要になります。

礼金・権利金・更新料・名義書換料・承諾料の計上時期

礼金、権利金、更新料、名義書換料、承諾料、頭金などは、毎月の家賃とは異なり、契約時や更新時などに一時的に発生する収入です。

家屋または土地を賃貸することで一時に受け取る権利金や礼金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものは契約の効力発生の日に収入計上します。名義書換料、承諾料、頭金などの名目で受け取るものも、同様に取り扱われます。
出典:国税庁|No.1376 不動産所得の収入計上時期
出典:国税庁|所得税基本通達36-6

この論点でも、入金日だけを見ていると誤りが起きます。

たとえば、契約の効力発生日、賃貸開始日、物件引渡日、更新日、請求日、入金日が、それぞれ異なることがあります。収入計上時期を判断するには、契約書、更新合意書、請求書、管理会社精算書、入金明細を照合しなければなりません。

とりわけ更新料は、毎月の家賃と同じ通帳に入金されるため、見落とされやすい項目です。管理会社の年間精算書に「更新料」「更新事務手数料」「更新時精算金」などの名称で記載されている場合は、それが貸主の収入なのか、管理会社の手数料なのか、賃借人からの入金をどのように配分しているのかを確認しておく必要があります。

敷金・保証金は、受け取っただけでは通常収入にならない

敷金や保証金は、本来、賃借人の債務を担保するために預かる金銭です。

したがって、返還義務のある敷金や保証金は、受け取った時点では通常、不動産所得の収入にはなりません。国税庁も、敷金や保証金は本来預り金であり、受け取っても収入にはならないものの、返還を要しないものについては、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入に計上する必要があると整理しています。
出典:国税庁|No.1376 不動産所得の収入計上時期
出典:国税庁|返還を要しない敷金等に係る提出時期

そこで、敷金や保証金を受け取ったときは、まず次の点を確認します。

  • 契約終了時に全額返還するものか
  • 契約時点で一部が返還不要と決まっているか
  • 一定期間の経過により一部が償却される契約か
  • 退去時の原状回復費等を差し引いて残額を返還する契約か
  • 返還しない金額が、礼金・権利金・更新料と同じ性質を持つものか
  • 預り金として管理すべき金額と、収入計上すべき金額が区分されているか

「敷金」という名前だから収入ではない、と断定するのは危険です。契約書のうえで、返還しない部分があるかどうかを、必ず確認しておきたいところです。

敷金・保証金のうち返還しない部分の計上時期

敷金や保証金のうち返還しない部分については、いつ返還不要になるかによって、収入計上時期が変わります。

所得税基本通達36-7では、敷金・保証金等のうち返還を要しなくなった金額について、次のように整理されています。貸付期間の経過に関係なく返還不要となっている部分は、頭金・権利金等の収入すべき時期に従います。貸付期間の経過に応じて返還不要となる部分は、契約に定められたところにより返還不要となった日です。そして、貸付期間が終了しなければ返還不要が確定しない部分は、貸付けが終了した日となります。
出典:国税庁|所得税基本通達36-7

ここで実務上よく問題になるのが、いわゆる「保証金償却」です。

契約書に「一定期間ごとに保証金の一部を償却する」と記載されている場合、その償却部分は、返還しないことが確定した時点で収入計上の対象になります。通帳には新たな入金がないため、会計処理のうえで漏れやすい項目です。

保証金償却については、契約内容を確認し、スタート時点で課税対象に組み込まれる家賃、共益費、礼金等を拾い出すだけでなく、保証金償却額をどの時点で売上・収入に計上すべきかまで確認しておく必要があります。保証金償却は現預金の移動を伴わないため、通帳だけでは見つけにくいという点にも、あわせて注意が必要です。

保証金の経済的利益も見落としやすい

敷金や保証金は、返還義務がある限り、元本そのものは通常、収入にはなりません。

しかし、一定の保証金については、返還義務がある場合でも、その運用や経済的利益が問題になることがあります。国税庁は、保証金が金融資産で運用されている場合にはその運用による所得が課税対象となり、それ以外の場合には、保証金につき適正な利率により計算した利息相当額を、保証金を返還するまでの各年分の不動産所得等の収入金額に算入するとしています。
出典:国税庁|No.1377 保証金の経済的利益に係る課税関係

この論点は、住宅賃貸の一般的な少額敷金では大きな問題になりにくいこともあります。ただし、事業用建物、定期借地権、大型テナント契約などで高額の保証金を受け取っている場合には、注意が必要です。

確認したいのは、次の点です。

  • 保証金の金額
  • 返還時期
  • 利息の有無
  • 保証金をどのように管理・運用しているか
  • 契約上、据置期間や分割返還があるか
  • 返還不要部分と返還義務部分が明確に区分されているか

保証金を「預り金だから税務上は関係ない」と整理してしまうと、返還不要部分や経済的利益を見落としてしまう可能性があります。

原状回復費や退去時精算は、敷金の返還だけで終わらせない

退去時には、敷金から原状回復費、未払家賃、クリーニング代、修繕費などを差し引いて返還することがあります。

このときも、単に「敷金を一部返さなかった」と処理するだけでは不十分です。

確認したいのは、その差し引きがどのような性質を持つのかという点です。

  • 未払家賃の回収なのか
  • 原状回復費の賃借人負担分なのか
  • 契約上の敷引き、償却、返還不要部分なのか
  • 損害賠償的な性質なのか
  • 貸主が実際に修繕費を支払っているのか
  • 修繕費と収入が対応しているか
  • 住宅賃貸か事業用賃貸か
  • 消費税の課税関係が生じるか

とりわけ消費税では、事務所・店舗など事業用建物の賃貸と、住宅賃貸とで扱いが異なります。事業用の建物の賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金、権利金、敷金、更新料などのうち返還しないものは課税対象となる一方、住宅に係るこれらの返還しないものは非課税とされています。
出典:国税庁|No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など

保証金や敷金から差し引いた原状回復費についても、消費税上の課税売上として整理すべき場面があり得ます。実務上は、原状回復費を修繕費のマイナスとして処理するのではなく、収入側・費用側を分けて確認すべき場合があるため、契約内容と退去精算書を突き合わせて確認しておく必要があります。

所得税の不動産所得と消費税は、同じ資料を使っていても判断軸が異なります。退去精算は、所得税だけでなく、消費税の観点からも確認しておきたい論点です。

滞納家賃は「入っていないから収入なし」とは限らない

家賃が滞納されている場合、通帳には入金がありません。そのため、自己流の申告では、未収家賃を収入から漏らしてしまうことがあります。

しかし、契約上支払日が定められている家賃は、原則としてその支払日に収入計上します。未入金であっても、収入すべき権利が発生していれば、その年分の収入として整理する必要があります。
出典:国税庁|No.1376 不動産所得の収入計上時期
出典:国税庁|所得税基本通達36-5

もちろん、後に回収不能となった場合には、貸倒れや過年度の取扱いを別途検討します。ただし、滞納があるからといって、最初から収入計上しなくてよいとは限りません。

滞納がある場合は、次の資料を整理してください。

  • 賃貸借契約書
  • 請求履歴
  • 入金履歴
  • 滞納一覧
  • 督促記録
  • 保証会社とのやり取り
  • 退去・解除の状況
  • 回収不能と判断する根拠
  • 過去に収入計上した年分

滞納家賃は、収入計上、貸倒れ、敷金相殺、保証会社入金、退去精算が複雑に絡み合います。通帳だけで判断せず、入居者別・物件別に整理していくことが大切です。

係争中の賃料・明渡し・和解金は別途確認する

賃貸借契約の存否や明渡し、使用関係をめぐって争いがある場合には、通常の家賃とは異なる収入計上時期になることがあります。

所得税基本通達36-5では、賃貸借契約の存否の係争等に係る判決、和解等により、不動産の所有者等が受けることとなった既往期間に対応する賃貸料相当額については、その判決、和解等のあった日を基準にする旨が示されています。
出典:国税庁|所得税基本通達36-5

このような場合、入金の名称が「和解金」「解決金」「使用損害金」「賃料相当損害金」「明渡し精算金」などになっていることがあります。

名称だけで雑所得や一時所得と判断するのではなく、実質的に過去の賃貸料相当額なのか、損害賠償金なのか、立退料や譲渡所得に関係するものなのかを、丁寧に確認する必要があります。

この論点は、通常の家賃収入計上よりも判断が難しくなります。契約書、訴訟資料、和解調書、判決書、弁護士精算書、入金明細を確認したうえで整理するのが確実です。

住宅賃貸・事業用賃貸・土地貸付けで消費税の扱いが変わる

不動産所得の申告では、所得税の計算だけでなく、消費税の扱いにも注意が必要です。

消費税では、土地の譲渡や貸付けは原則として非課税です。ただし、貸付期間が1か月に満たない場合や、駐車場その他の施設利用に伴って土地が使用される場合は、非課税になりません。事務所などの建物を貸し付ける場合の家賃は課税対象であり、住宅の貸付けは、貸付期間が1か月に満たない場合などを除いて非課税とされています。
出典:国税庁|No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など

そのため、同じ「家賃」「更新料」「敷金」「保証金」でも、消費税の扱いは次のように変わります。

  • 住宅家賃は、原則として非課税
  • 事務所、店舗、倉庫などの建物賃貸は、課税対象
  • 土地貸付けは原則非課税だが、短期貸付けや駐車場利用などは別途確認
  • 事業用建物の返還不要保証金、権利金、敷金、更新料等は、課税対象
  • 住宅に係る返還不要保証金、権利金、敷金、更新料等は、非課税

所得税では不動産所得の収入に含まれるものでも、消費税では課税・非課税・不課税の区分が別途必要になります。不動産収入がある方は、所得税の確定申告だけでなく、消費税の納税義務判定やインボイス登録への影響もあわせて確認しておく必要があります。

収入計上で確認すべき資料

不動産所得の収入計上を正しく行うには、通帳だけでは足りません。

少なくとも、次の資料をそろえて確認する必要があります。

  • 物件一覧
  • 賃貸借契約書
  • 更新契約書、更新合意書
  • 覚書、承諾書、名義変更書類
  • 管理会社との管理委託契約書
  • サブリース契約書、一括借上契約書
  • 年間家賃明細
  • 管理会社の月次精算書、年間精算書
  • 賃借人別の入金一覧
  • 滞納一覧
  • 敷金、保証金の預り台帳
  • 退去精算書
  • 原状回復工事の請求書、領収書
  • 共益費、水道光熱費、清掃費の請求・精算資料
  • 通帳、入出金明細
  • 過年度の青色申告決算書、不動産所得の収支内訳書

とりわけ重要なのは、物件別・契約別・賃借人別に収入を整理することです。

不動産所得では、複数物件をまとめて管理していると、更新料、礼金、共益費、滞納、敷金精算、管理料控除、修繕費控除が混ざり合いやすくなります。

税務実務のうえでも、売上・収入については、計算基準、決済基準、入金管理状況から計上漏れがないかを検討し、決算後の入金や期間損益の確認、請求書・領収書等との整合性を確認する視点が欠かせません。

よくある収入計上ミス

不動産所得の収入計上では、次のようなミスがよく起こります。

管理会社からの純入金額だけを収入にしている

管理料、修繕費、広告料、振込手数料などを控除した後の入金額だけを収入にしているケースです。

管理委託契約であれば、賃借人からの家賃等の総額を収入にし、管理会社に支払う管理料等を必要経費にする整理が基本になります。サブリース契約とは扱いが異なるため、契約形態の確認が必要です。

礼金・更新料を家賃に埋もれさせている

礼金や更新料が管理会社精算書の中に含まれているにもかかわらず、毎月の家賃と区別せずに処理しているケースです。

更新料は一時的な収入であり、発生時期や消費税区分もあわせて確認したい項目です。

敷金・保証金を全額収入にしている

返還義務のある敷金や保証金を、受け取った年に全額収入計上してしまうケースです。

返還義務がある限り、通常は預り金として整理します。返還しない部分がある場合には、その部分だけを収入として認識します。

保証金償却を計上していない

契約上、一定期間ごとに保証金の一部を償却するにもかかわらず、通帳に入金がないために見落としているケースです。

保証金償却は、現金の動きではなく、契約上の返還不要確定によって収入計上します。そのため、契約書と保証金台帳の確認が欠かせません。

前受家賃を対象期間だけで翌年に回している

契約上の支払日を確認せず、「翌年分の家賃だから翌年収入」と処理しているケースです。

原則は、契約上の支払日を確認します。期間対応による処理を行う場合には、事業的規模、帳簿、継続処理、前受・未収経理などの要件を確認する必要があります。
出典:国税庁|不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について

滞納家賃を収入から除外している

入金がないから収入にしない、という処理です。

契約上の支払日が到来していれば、原則として収入計上の対象です。後に回収不能となった場合の処理は、別途検討します。

消費税区分を確認していない

住宅賃貸、事務所賃貸、駐車場、土地貸付け、返還不要保証金などを同じ扱いにしているケースです。

所得税では同じ不動産所得でも、消費税では課税、非課税、不課税の区分が異なります。

不動産所得の収入整理は、金融機関説明や将来の売却にも影響する

不動産収入を正しく整理する目的は、税額計算だけではありません。

物件ごとの家賃収入、共益費、礼金、更新料、管理料、修繕費、借入返済、空室損失、滞納状況を正しく整理しておくことは、金融機関への説明、物件の収益性判断、将来の売却、相続・承継の検討にもつながっていきます。

不動産オーナーは、表面的には資産や収入が多く見えても、固定資産税、都市計画税、修繕費、借入返済、空室リスクなどによって、資金繰りに悩むことがあります。不動産活用では、収入が増えても、所得税、消費税、事業税、借入金返済によって手元資金が残りにくくなることがあるため、収入と資金の流れを分けて見ておく必要があります。

つまり、不動産所得の収入計上は、単なる確定申告の入力作業ではありません。

「どの物件から、どの契約に基づき、いつ、何の性質の収入が発生しているのか」を整理すること。それが、不動産活用全体の判断基盤になっていきます。

専門家に相談した方がよい場面

次のような場合は、不動産所得の収入計上について、専門家に相談されることをおすすめします。

  • 管理会社からの入金額だけで申告している
  • 礼金、更新料、承諾料、名義書換料の処理に不安がある
  • 敷金や保証金の返還不要部分がある
  • 保証金償却の契約がある
  • 退去時の原状回復費を敷金から差し引いている
  • 滞納家賃、未収家賃、保証会社入金がある
  • 前受家賃、翌年分家賃の処理が分からない
  • 住宅、事務所、店舗、駐車場が混在している
  • 不動産収入に消費税やインボイスが関係しそうで不安がある
  • 複数物件を所有しており、物件別収支が整理できていない
  • 共有不動産や相続直後の賃料収入がある
  • 過年度の申告で収入漏れに気づいた

不動産所得の収入計上は、契約書、通帳、管理会社精算書、敷金台帳、退去精算書を照合しなければ判断できません。とりわけ、保証金償却、前受家賃、滞納家賃、管理会社控除後入金、消費税区分は、自己流の申告で誤りやすい部分です。

不動産収入の整理でお悩みの方へ

家賃、礼金、更新料、敷金、保証金、共益費の収入計上は、単に金額を集計するだけでは正しく判断できません。

契約上の支払日、引渡日、契約効力発生日、返還義務の有無、保証金償却、管理会社との契約形態、消費税区分、物件別の収支。これらを整理して初めて、税務署や金融機関、そして将来の自分に説明できる申告になります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、不動産収入のある個人の方について、申告書の作成だけでなく、賃貸借契約書、管理会社精算書、敷金・保証金、未収家賃、消費税区分、物件別収支まで含めた整理を支援しています。

「管理会社からの入金額だけで申告してよいか不安」「敷金や保証金の扱いが分からない」「更新料や前受家賃をどう計上すべきか確認したい」という方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページより、お気軽にご相談ください。

重要ポイントの振り返り

論点基本的な考え方確認すべき資料注意点
家賃・地代契約や慣習で支払日が定められていれば、その支払日を基準に収入計上賃貸借契約書、入金明細、管理会社精算書入金日だけで判断しない
共益費・水道光熱費・清掃代共益費等として受け取るものは、総収入金額に含めて整理契約書、請求書、精算書、支払資料実費精算という名称だけで除外しない
管理会社入金管理委託かサブリースかで、収入の把握方法が変わる管理委託契約書、サブリース契約書、月次精算書純入金額だけを収入にすると漏れやすい
礼金・権利金資産の引渡しが必要なものは引渡日、不要なものは契約効力発生日を基準に整理賃貸借契約書、請求書、入金明細入金日だけで判断しない
更新料・名義書換料・承諾料礼金・権利金等と同様に、一時収入として契約内容から判断更新契約書、覚書、承諾書、管理会社精算書家賃収入に埋もれやすい
敷金・保証金返還義務がある部分は、通常、受取時点では収入ではない敷金台帳、保証金契約、賃貸借契約書名称ではなく返還義務を確認する
返還不要の敷金・保証金返還不要が確定した日に収入計上契約書、退去精算書、保証金償却表通帳に動きがないため漏れやすい
保証金の経済的利益一定の場合、利息相当額を不動産所得等の収入に算入保証金契約、運用状況、返還予定表高額保証金では特に確認が必要
滞納家賃未入金でも、契約上支払日が到来していれば原則収入計上滞納一覧、請求履歴、保証会社資料回収不能処理は別途判断する
前受家賃原則は契約上の支払日を確認。一定要件で期間対応処理が認められる場合あり契約書、帳簿、前受・未収明細「翌年分だから翌年収入」と単純処理しない
退去時精算未払家賃、原状回復費、返還不要敷金を区分して整理退去精算書、工事請求書、敷金台帳所得税と消費税の両面で確認する
消費税区分住宅、事務所、土地、駐車場、返還不要保証金等で扱いが変わる契約書、用途、請求書、精算書所得税上の収入と消費税区分は別判断

出典・参考情報

出典:国税庁|No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
出典:国税庁|No.1376 不動産所得の収入計上時期
出典:国税庁|所得税基本通達36-5、36-6、36-7
出典:国税庁|不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について
出典:国税庁|返還を要しない敷金等に係る提出時期
出典:国税庁|No.1377 保証金の経済的利益に係る課税関係
出典:国税庁|No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など
出典:国税庁|消費税基本通達9-1-23

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