法人版事業承継税制を検討するとき、多くの経営者がまず気にされるのは、「後継者が要件を満たすか」「株式をいつ贈与するか」「特例承継計画の期限に間に合うか」といった点です。
もちろん、いずれも欠かせない論点です。
ただ、制度の入口で見落とされがちなのが、「会社そのものが対象会社に該当するか」という視点です。
法人版事業承継税制は、後継者が、経営承継円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与・相続等によって取得した場合に、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について納税猶予・免除を受けられる制度です。言い換えれば、後継者や先代経営者の要件をいくら満たしていても、会社側の要件が整っていなければ、制度を使う前提そのものが崩れてしまいます。
この対象会社要件は、単なる形式的なチェックではありません。資本金や従業員数だけでなく、業種、上場の有無、事業実態、収入、資産構成、さらには子会社・関係会社の状態まで、ひととおり確認しておく必要があります。
特に、グループ会社を抱える会社、不動産や有価証券を多く保有する会社、休眠に近い会社、海外子会社を持つ会社、過去に資本政策や組織再編を行った会社などは要注意です。表面上は「中小企業」に見えても、認定要件の観点からは、一歩踏み込んだ確認が求められます。
対象会社要件は、制度適用の「入口」であり「継続管理」の出発点でもある
法人版事業承継税制における対象会社要件は、大きく次のように整理できます。
| 区分 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 中小企業者該当性 | 業種ごとの資本金基準又は従業員数基準を満たすか |
| 非上場会社等 | 上場会社等に該当しないか |
| 除外業種 | 性風俗関連特殊営業を営む会社に該当しないか |
| 事業実態 | 総収入金額が零を超えているか |
| 従業員要件 | 常時使用従業員数が1人以上か。一定の外国特別子会社がある場合は5人以上か |
| 資産構成 | 資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないか |
| 特別子会社等 | 特定特別子会社が大会社、上場会社等、風俗営業会社に該当しないか |
| 拒否権付株式 | 後継者以外の者が拒否権付株式を保有していないか |
制度上、対象会社に求められるのは、中小企業者であること、上場会社等や風俗営業会社に該当しないこと、資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないこと、総収入金額が零を超えていること、常時使用従業員数が一定数以上であること、そして特定特別子会社が大会社・上場会社・風俗営業会社に該当しないこと、といった点です。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)第2章 都道府県知事の認定について
ここで意識しておきたいのは、対象会社要件は認定申請時だけを見ればよいものではない、ということです。
事業承継税制は、適用後も年次報告や継続届出を通じて、要件の維持が求められます。資産構成の変化、組織再編、子会社化、従業員数の増減などは、いずれも承継後の取消リスクにつながりかねません。
つまり、対象会社要件の確認は、「制度を使えるか」を見極める作業であると同時に、「承継後も制度を維持していける会社か」を見極める作業でもあるのです。
まず確認すべきは「中小企業者」に該当するか
法人版事業承継税制は、中小企業者の円滑な事業承継を支援するための制度です。したがって対象会社は、経営承継円滑化法上の中小企業者に該当している必要があります。
ここでいう中小企業者は、私たちが日常的にイメージする「中小企業」とは必ずしも一致しません。法人税法上の「中小法人」、中小企業基本法上の整理、自治体の補助金制度における中小企業区分とも、常に同じ意味になるわけではない点に注意が必要です。
事業承継税制では、経営承継円滑化法の定義に基づき、主たる事業の業種ごとに、資本金又は従業員数の基準を確認していきます。
出典:e-Gov法令検索|中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
中小企業者の主な判定基準は、次のとおりです。
| 業種 | 資本金基準 | 従業員数基準 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 製造業のうち一定のゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| サービス業のうちソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| サービス業のうち旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)第2章 都道府県知事の認定について
この表を読むうえでのポイントは、「資本金基準と従業員数基準の両方を満たさなければならない」と誤解しないことです。一般には、資本金又は従業員数のいずれかの基準を満たしているかどうかで判定します。
ただし、実務では次のような確認が欠かせません。
- 主たる事業がどの業種に該当するか
- 複数事業を営んでいる場合、売上・利益・人員・事業実態から主たる事業をどう整理するか
- 資本金だけでなく、常時使用する従業員数を正しく把握できているか
- グループ会社、出向者、役員、パート・アルバイト等をどう整理するか
- 直近の組織再編や事業譲渡により、業種や従業員数が変動していないか
「資本金が小さいから大丈夫」「従業員が少ないから対象になるはず」と感覚で判断するのではなく、あくまで制度上の中小企業者該当性として確認していく姿勢が大切です。
業種判定は、会社の実態を見て整理する
中小企業者該当性のなかでも、実務で判断に迷いやすいのが業種判定です。
登記上の目的や定款上の事業目的だけで機械的に決めるのではなく、実際にどの事業を主として営んでいるのかを確認していく必要があります。
たとえば、製造・卸売・小売・サービスが混在している会社では、どの事業を主たる事業とみるかによって、資本金基準・従業員数基準が変わってきます。実際のご相談では、決算書の売上区分、事業別損益、従業員配置、主要取引、許認可、定款、会社案内などを突き合わせながら確認していくことになります。
ここで意識しておきたいのは、税制適用のために業種を都合よく説明するのではなく、後から見ても筋の通る整理にしておく、ということです。
事業承継税制は、認定申請から税務申告、継続届出、さらには将来の税務調査や関係者への説明にまでつながっていく制度です。業種判定の根拠が曖昧なまま進めてしまうと、入口でつまずくだけでなく、後になって説明に窮する場面も出てきかねません。
「非上場会社」であることが前提になる
法人版事業承継税制は、非上場会社の株式等を対象とする制度です。したがって、上場会社等に該当する会社は対象外となります。
国税庁の説明でも、この制度は、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与又は相続等によって取得した場合に、その非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税を猶予するものと位置づけられています。
ここでいう非上場会社要件は、単に「現在は上場していない」ことを確認すれば足りる、という話ではありません。
将来の上場、資本政策、株式移転、株式交換、持株会社化、外部資本の受入れなどを視野に入れている会社では、税制の適用後にどのような資本政策をとり得るのかを、あらかじめ整理しておくことをおすすめします。
対象会社要件は制度適用時の入口要件ですが、適用後の株式異動や組織再編は、納税猶予の継続に影響を与える可能性があります。上場や外部資本の受入れを将来の選択肢として残しておきたい会社であれば、事業承継税制を使うことが、その後の意思決定をどこまで制約するのかを見極めておく必要があります。
風俗営業会社に該当しないこと
対象会社には、風俗営業会社に該当しないことも求められます。
ここで気をつけたいのは、「風俗営業」という言葉から受ける一般的な印象と、事業承継税制上の除外対象とが、必ずしも一致しないという点です。
制度上、ここで除外されるのは、風営法第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業を営む会社です。バー、パチンコ、ゲームセンターなどは、風営法の規制対象ではあっても性風俗関連特殊営業には当たらないため、この点では認定要件を満たすものとされています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)第2章 都道府県知事の認定について
したがって、許認可や営業の実態を確認しないまま「風営法の対象だから不可」と早合点するのも、「ふつうの飲食業だから関係ない」と軽く見るのも、どちらも適切ではありません。
確認すべきは、会社が実際に営んでいる事業内容が、制度上除外される性風俗関連特殊営業に該当するかどうかです。許認可、営業内容、店舗形態、売上構成、事業目的などを確認し、必要に応じて行政書士や弁護士とも連携しながら整理していくことになります。
総収入金額が零を超えていること
対象会社要件には、総収入金額が零を超えていることも含まれます。
制度上は、第一種特例贈与認定申請基準事業年度における損益計算書上の総収入金額が零の場合には、認定を受けられないものとされています。なお、この総収入金額からは、営業外収益と特別利益が除かれます。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)第2章 都道府県知事の認定について
この要件は、実務上かなり重みのある論点です。
事業承継税制は、あくまで事業を継続していく会社の承継を支援する制度です。そのため、実質的に事業活動のない会社、休眠状態に近い会社、すでに事業を停止している会社などについては、制度の趣旨との関係で問題になり得ます。
注意したいのは、営業外収益や特別利益があるだけでは足りない、という点です。たとえば、事業活動による売上がなく、受取利息、雑収入、資産売却益だけが計上されているような状態では、総収入金額の要件を満たすかどうか、慎重に確認する必要があります。
会社を守るための制度である以上、「決算書上、何らかの収入があるか」ではなく、「継続すべき事業実態があるか」という視点を欠かさないことが大切です。
常時使用従業員数が1人以上であること
対象会社は、常時使用従業員数が1人以上であることが必要です。
制度上も、常時使用従業員数が1人以上であることが対象会社要件として定められています。さらに、その会社の特別子会社が外国会社に該当し、かつ、その会社又は支配関係法人がその特別子会社の株式等を保有している場合には、常時使用従業員が5人以上必要とされています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)第2章 都道府県知事の認定について
この要件も、ただ人数を数えれば済むものではありません。
実務上は、次のような確認が必要になります。
- 役員のみの会社になっていないか
- 常時使用従業員に該当する者がいるか
- 社会保険・雇用保険の加入状況と整合しているか
- 出向者、兼務者、パート、アルバイトをどう扱うか
- 海外子会社や関係会社を持つ場合、5人要件に該当しないか
- 申請時点だけでなく、承継後も雇用や事業実態を説明できるか
事業承継税制は、雇用や地域経済を含めた事業の継続を意識した制度です。従業員要件は、単なる人数の要件というより、その会社が実際に事業を営んでいるかどうかを確認するための、重要な入口といえます。
資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないこと
対象会社には、資産保有型会社又は資産運用型会社に該当しないことも求められます。
これは、事業承継税制が、あくまで事業を営む会社の承継を支援する制度であり、実質的に資産管理会社や投資運用会社に近い会社まで無条件に対象とするものではないためです。
制度上、認定を受けようとする中小企業者は、贈与の日の属する事業年度の直前の事業年度の開始の日以後において資産保有型会社に該当しないこと、また、一定の基準事業年度において資産運用型会社に該当しないことが必要とされています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)第2章 都道府県知事の認定について
この論点は、本来であれば別の記事で詳しく扱うべき重要なテーマですが、対象会社要件を確認する段階でも、最低限、次の視点は持っておきたいところです。
- 会社が不動産、有価証券、現預金等を多く保有していないか
- 本業収益よりも、賃料収入、配当収入、利息収入、売却益等が中心になっていないか
- 事業会社としての実態を示す従業員、事務所、取引、設備、許認可があるか
- 承継前に資産構成を変えた場合、その合理性を説明できるか
- 承継後に資産管理会社化する可能性はないか
特にオーナー企業では、長年の内部留保によって現預金や有価証券が厚くなっているケースが少なくありません。また、事業用不動産を会社が保有している場合には、不動産賃貸収入や遊休資産の状況によって、資産保有型会社等の判定が問題になることもあります。
ここで大切なのは、資産を持っていること自体が直ちに問題になるわけではない、ということです。要は、会社の実態を「事業会社」として説明できるかどうか、という点に尽きます。
特別子会社・特定特別子会社の確認は、会社法上の子会社判定とは異なる
グループ会社がある場合には、対象会社単体だけを見て判断してしまうと危険です。
法人版事業承継税制では、特別子会社や特定特別子会社の状態も、対象会社要件に影響します。制度上、特定特別子会社が上場会社等、大会社又は風俗営業会社に該当する場合には、認定を受けることができません。しかも、認定を受けようとする会社の子会社だけでなく、兄弟会社が特定特別子会社に該当するケースもあります。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)第2章 都道府県知事の認定について
このあたりは、実務上、特に見落としやすいところです。
会社法上の子会社に該当するかどうかと、事業承継税制上の特別子会社・特定特別子会社に該当するかどうかは、必ずしも一致しません。後継者、後継者の親族、生計を一にする親族、特別の関係がある者、その関係法人などを含めて、議決権関係を確認していく必要があります。
したがって、対象会社単体の株主名簿を眺めるだけでは足りません。
具体的には、次のような資料を合わせて確認していくことになります。
- 対象会社の株主名簿
- 子会社・関連会社の株主構成
- 兄弟会社・親族会社の株主構成
- 後継者及び親族の保有株式
- 議決権の有無、種類株式、拒否権付株式
- グループ内の資本関係図
- 海外子会社の有無
- 過去の組織再編・株式移転・株式譲渡の履歴
特に、親族で複数の会社を保有している場合には、事業用会社、不動産保有会社、販売会社、製造会社、海外子会社などに分かれていることがあります。こうしたケースでは、制度上どの会社が特定特別子会社に該当するのかを確認しておかないと、思わぬところで対象会社要件に抵触してしまう可能性があります。
後継者以外の者が拒否権付株式を持っていないか
対象会社要件では、後継者以外の者が拒否権付株式を保有していないかどうかも、確認すべき論点です。
拒否権付株式は、いわゆる黄金株として、特定の重要事項に拒否権を持たせるために使われることがあります。事業承継の場面でも、先代経営者が一定期間影響力を残すため、あるいは経営上の重要事項をコントロールするために検討されるケースが見られます。
しかし、事業承継税制は、後継者に経営権を承継させることを前提とした制度です。形式的に株式を後継者へ移していても、後継者以外の者が拒否権付株式を保有していれば、後継者が実質的に経営判断を行える状態といえるのかが問われることになります。
ここでは、次のような確認が必要です。
- 種類株式を発行しているか
- 拒否権付株式の内容は何か
- 誰がその株式を保有しているか
- 定款に種類株式・属人的定めがないか
- 議決権制限株式や特殊な株式設計が、税制要件に影響しないか
- 先代の関与を残す設計と、後継者への経営権移転が矛盾していないか
種類株式や拒否権付株式は、事業承継において有効に機能する場面もあります。ただし、税制要件、会社法、相続、株式評価への影響を合わせて検討しておかないと、後から制度適用や経営権の安定性に影響が及ぶおそれがあります。
対象会社要件で特に注意すべき会社
対象会社要件は、どの会社でも確認が必要ですが、なかでも次のような会社では、いっそう慎重な検討が求められます。
1. 不動産・有価証券・現預金を多く保有している会社
資産保有型会社・資産運用型会社の判定が問題になりやすい会社です。
本業で利益を上げた結果として内部留保が厚くなった会社なのか、それとも実質的に資産管理会社化している会社なのかを、丁寧に整理しておく必要があります。承継前に資産を動かす場合には、その合理性、時期、税務上の説明可能性にも目を配らなければなりません。
2. グループ会社・兄弟会社・海外子会社がある会社
特別子会社・特定特別子会社の判定が必要になる会社です。
会社法上の子会社だけを見れば足りるわけではないため、後継者、親族、関係法人を含めた資本関係図の整理が欠かせません。海外子会社がある場合には、常時使用従業員数の5人要件にも注意が必要です。
3. 休眠に近い会社・売上が少ない会社
総収入金額が零を超えているか、実際に事業活動があるかを確認すべき会社です。
一時的な業績悪化と、事業実態がない状態とは、区別して整理しておきたいところです。制度適用のためだけに形式的な売上を作るような進め方は、後から説明が難しくなります。
4. 複数事業を営む会社
業種判定が重要になる会社です。
資本金基準・従業員数基準は業種によって異なります。製造、卸売、小売、サービス、不動産、情報処理などが混在している場合には、主たる事業をどう判断するのかを、資料に基づいて整理しておく必要があります。
5. 種類株式・拒否権付株式を発行している会社
後継者以外の者が拒否権付株式を保有していないか、議決権の設計が後継者要件や株式評価に影響しないかを確認すべき会社です。
先代の関与を残す設計は、事業承継の観点からは理解できる場合もありますが、税制上は、後継者への経営権移転との整合性が問われます。
対象会社要件の確認に必要な資料
対象会社要件を確認するには、会社の概要だけでなく、数字・登記・株主関係・事業実態を裏づけられる資料が必要になります。
少なくとも、次の資料を早い段階で整えておくと、検討がぐっと進めやすくなります。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 直近数期の決算書・申告書 | 資本金、売上、収入、資産構成、従業員数、事業実態 |
| 株主名簿 | 株主構成、議決権、後継者・親族の保有状況 |
| 定款 | 種類株式、拒否権付株式、譲渡制限、属人的定め |
| 登記事項証明書 | 資本金、役員、目的、組織再編履歴 |
| 会社案内・事業別資料 | 主たる事業、業種判定、事業実態 |
| 従業員関係資料 | 常時使用従業員数、社会保険・雇用保険、出向者の整理 |
| グループ資本関係図 | 特別子会社・特定特別子会社の判定 |
| 子会社・関係会社の株主名簿 | 特定特別子会社該当性、上場会社等・大会社・風俗営業会社の確認 |
| 許認可資料 | 業種判定、風営法関連、事業実態 |
| 固定資産台帳・有価証券明細 | 資産保有型会社・資産運用型会社の予備確認 |
対象会社要件は、書類を集めて初めて見えてくる論点が、決して少なくありません。
特に、古い株主名簿、名義株、過去の相続未了株式、親族間の株式移転、会社法上の子会社と制度上の特別子会社とのズレなどは、経営者の記憶だけでは正確に把握しきれないことがあります。
対象会社要件を満たしても、「使うべきか」は別問題
ここまで対象会社要件を整理してきましたが、最後にひとつ、強調しておきたいことがあります。
対象会社要件を満たすことは、あくまで事業承継税制を使うための入口にすぎません。
中小企業者に該当し、非上場会社であり、総収入金額や従業員数の要件を満たし、資産保有型会社等にも該当しない。たとえそうであっても、それだけで「事業承継税制を使うべき」とは限らないのです。
実際の判断にあたっては、さらに次のような論点を確認する必要があります。
- 後継者が代表者として経営を継続できるか
- 株式をどこまで移せば経営権が安定するか
- 自社株評価額と納税猶予額はどの程度か
- 他の相続人との関係をどう整理するか
- 納税猶予が取り消された場合の資金負担に耐えられるか
- 将来、組織再編、売却、廃業を行う可能性はないか
- 年次報告・継続届出を管理する体制があるか
- 金融機関や関係者に説明できる承継計画になっているか
対象会社要件は、「制度に入れるか」を判断するための条件です。一方で、事業承継税制を使うべきかどうかは、会社の将来をどう設計するかという、より大きな経営判断にほかなりません。
入口要件を満たしたことに安心せず、承継後の管理、経営権、財務の安全性、将来の選択肢まで含めて検討していくことが大切です。
まとめ
法人版事業承継税制の対象会社要件では、中小企業者該当性、非上場会社要件、風俗営業会社の除外、総収入金額、従業員数、資産保有型会社・資産運用型会社、特別子会社・特定特別子会社、拒否権付株式といった項目を確認していきます。
これらは、単なる申請書上のチェック項目ではありません。
会社が本当に制度の対象となる事業会社なのか、後継者が承継後も経営を維持していけるのか、グループ会社や資産構成が将来の取消リスクにつながらないか。そうした点を見極めるための入口といえます。
対象会社要件で迷われる場合には、早い段階で、決算書、株主名簿、定款、登記事項証明書、グループ資本関係図、従業員資料などを整理しておくことをおすすめします。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、法人版事業承継税制の適用可否だけでなく、会社要件、株主構成、自社株評価、後継者体制、承継後の管理負担まで含めて、制度を使うべきかどうかの整理をお手伝いしています。自社が対象会社に該当するか、グループ会社や資産構成に不安があるという場合は、お問い合わせページよりお気軽にご相談ください。
振り返り
| 確認項目 | 重要なポイント |
|---|---|
| 中小企業者該当性 | 業種ごとの資本金基準又は従業員数基準を確認する。法人税法上の中小法人とは別に考える |
| 業種判定 | 定款だけでなく、実際の事業内容、売上、利益、人員配置から主たる事業を整理する |
| 非上場会社要件 | 上場会社等は対象外。将来の上場・外部資本・資本政策との関係も確認する |
| 風俗営業会社 | 除外されるのは性風俗関連特殊営業を営む会社。風営法対象事業すべてが除外されるわけではない |
| 総収入金額 | 営業外収益・特別利益を除いた総収入金額が零の場合は認定を受けられない |
| 従業員数 | 常時使用従業員数が1人以上必要。一定の外国特別子会社がある場合は5人以上が必要 |
| 資産保有型・資産運用型会社 | 不動産、有価証券、現預金等が多い会社では、事業実態と資産構成を慎重に確認する |
| 特別子会社・特定特別子会社 | 会社法上の子会社判定とは異なる。子会社だけでなく兄弟会社が問題になる場合もある |
| 拒否権付株式 | 後継者以外の者が拒否権付株式を保有していないか確認する |
| 実務判断 | 対象会社要件を満たすことと、事業承継税制を使うべきことは別。承継後の維持可能性まで確認する |