生前贈与によって自社株を後継者へ移し、法人版事業承継税制による贈与税の納税猶予を受けている。そうした場合でも、承継の手続がそこで完結するわけではありません。
先代経営者、すなわち贈与者に相続が発生すると、猶予されていた贈与税は一定の手続を経て免除の対象となります。その一方で、贈与を受けた自社株は、今度は相続税の課税関係へとつながっていきます。
そして、その自社株に係る相続税について納税猶予を受け続けるためには、都道府県への切替確認、相続税申告、税務署への届出、承継後の継続管理を、改めて整理しなければなりません。
このとき「贈与税が猶予されているのだから、先代死亡時も自動的に処理されるだろう」と受け止めてしまうと、期限の徒過、申告漏れ、届出漏れ、要件確認の漏れにつながりかねません。
贈与税猶予から相続税猶予への切替えは、単なる税務上の形式手続ではありません。後継者が先代の死亡後も会社を継続して経営できるか、議決権や株主構成、会社要件、資産構成を維持できるか。これらを相続発生の時点で再確認する、重要な局面なのです。
贈与税猶予は、先代死亡時にそのまま終わるわけではない
法人版事業承継税制における贈与税の納税猶予は、後継者である受贈者が、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与により取得した場合に、その株式等に係る贈与税の納税を一定の要件のもとで猶予する制度です。そして、後継者の死亡等によって、猶予されていた税額の納付が免除されます。
特例措置については、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの贈与等が対象とされています。
出典:国税庁|No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)
ただし、ここでいう「免除」は、制度上の事由と手続を満たして初めて認められるものです。
贈与税の納税猶予を受けたあとに、贈与者である先代経営者が亡くなった場合、猶予されていた贈与税について免除届出を行うことで、その死亡時点で猶予されている贈与税の全部または一部が、納付を免除されます。この死亡免除の手続については、先代経営者である贈与者の死亡があった日から10か月を経過する日までに、免除届出書を提出する必要があるとされています。
出典:国税庁|B1-67 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の免除届出(死亡免除)手続(特例措置)
つまり先代死亡時には、まず贈与税側で「猶予されていた贈与税をどう免除するか」を確認しなければなりません。
しかし、これだけで終わるわけではないのです。
事業承継税制の贈与税猶予は、先代経営者の死亡時に、相続税の課税関係へと接続する制度です。生前贈与によって後継者がすでに自社株を所有していても、税務上は、その自社株を相続または遺贈によって取得したものとみなして相続税を計算する場面が生じます。
そのため先代死亡時には、次の二つを分けて整理する必要があります。
一つは、贈与税の納税猶予を免除する手続です。
もう一つは、みなし相続取得された自社株に係る相続税について、相続税の納税猶予へ切り替える手続です。
この二つを混同しないこと。それが、切替え実務の出発点になります。
「みなし相続取得」とは何か
生前贈与で株式を取得した後継者は、会社法上も実体上も、すでに株主です。先代経営者の死亡時に、同じ株式を改めて相続するわけではありません。
ところが事業承継税制では、贈与税猶予の対象となっている非上場株式等について、贈与者が死亡した場合、一定の範囲で相続または遺贈により取得したものとみなし、相続税の課税価格に取り込む仕組みが設けられています。
特例措置については、措置法第70条の7の7第1項により相続または遺贈により取得したものとみなされる特例対象受贈非上場株式等の価額について、特例対象贈与の時における価額を基礎とする算定の関係が示されています。
出典:国税庁|措置法第70条の7の7(非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例)関係
この点は、実務判断のうえでとても重要です。
生前贈与を行った時点では、後継者は「贈与税を猶予できた」と考えがちです。しかし先代死亡時には、その贈与株式が相続税計算へと戻ってくる構造があります。したがって、生前贈与を実行する段階から、先代死亡時にどのように相続税へ接続するのかまで、見ておかなければなりません。
贈与時の株価、贈与後の株式保有状況、贈与後に一部譲渡や組織再編があったかどうか、猶予税額の一部について期限確定があったかどうか。こうした事情によって、相続税側の整理は変わってきます。
「贈与したのだから相続税とは無関係になる」という理解は誤りです。事業承継税制において、贈与税の納税猶予と相続税の納税猶予は、連続した制度として設計されているのです。
相続税猶予へ切り替えるには「切替確認」が必要になる
贈与税猶予を受けていた後継者が、先代経営者の死亡後、その株式に係る相続税について納税猶予を受けるためには、一定の要件を満たしたうえで、都道府県知事の確認を受ける必要があります。これが「切替確認」です。
切替確認とは、贈与税の納税猶予制度の特例の適用を受けている後継者について、その贈与をした贈与者の相続が開始した場合に、相続により取得したものとみなされた非上場株式等に係る相続税につき、相続税の納税猶予制度の特例の適用を受けるための前提となる手続とされています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第6章 贈与者に相続が開始した場合
切替確認を受けることで、贈与税の納税猶予の対象となっていた非上場株式等について、相続税の納税猶予制度の特例の適用を受ける前提が整います。
ただし、切替確認を受けただけで相続税の納税猶予が完了するわけではありません。贈与者の相続税の申告期限までに、相続税の納税猶予制度の特例の適用を受ける旨を記載した相続税の申告書等を、税務署へ提出する必要があります。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第6章 贈与者に相続が開始した場合
この点は、実務上の事故が起きやすいところです。
都道府県の切替確認は、税務署への相続税申告とは別の手続です。行政手続と税務申告を一体のものとして考えてしまうと、どちらかの期限や添付書類を落とすリスクが生じます。
先代死亡時の実務では、「都道府県への確認」「税務署への相続税申告」「贈与税猶予の免除届出」「承継後の継続届出」を、それぞれ別のタスクとして管理する必要があります。
切替確認で確認される主な要件
切替確認では、相続開始時点の会社・後継者・株式保有状況が、改めて確認されます。
切替確認を受けるための要件としては、次のような点が整理されています。資産保有型会社・資産運用型会社に該当しないこと、総収入金額が零を超えること、常時使用従業員数が1人以上であること、後継者が代表者であること、後継者とその親族等で総議決権数の過半数を保有していること、後継者が同族関係者のうち筆頭株主であること、後継者以外の者が黄金株を保有していないこと。これらが求められます。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第6章 贈与者に相続が開始した場合
この確認は、単なる形式要件ではありません。
贈与時点では要件を満たしていても、先代死亡の時点までに、会社の状況が変わっていることがあります。たとえば、後継者が代表者を退任している、株式の一部を移動している、同族関係者の議決権割合が変動している、不動産や有価証券の保有割合が増えて資産管理会社化の懸念がある、黄金株や種類株式の設計が変わっている、といった場合です。
贈与税猶予の適用時には問題がなかったとしても、切替えの時点で要件を満たさなければ、相続税猶予へ円滑に接続できない可能性があります。
つまり、贈与税猶予を受けたあとは、先代経営者の死亡時までの期間も、決して「待機期間」ではないのです。後継者の代表者としての地位、議決権、株式保有、会社の資産構成、従業員数、収入状況を、相続税猶予へ切り替えられる状態に保っておく必要があります。
贈与税猶予から相続税猶予への切替えで起きやすい誤解
贈与税が免除されれば相続税も自動的に猶予される、という誤解
先代死亡により贈与税の猶予税額が免除されるとしても、それはあくまで贈与税側の処理です。
相続税側では、贈与を受けた株式が相続または遺贈により取得したものとみなされるため、相続税の課税関係が新たに発生します。その相続税について納税猶予を受けるには、相続税の納税猶予制度の適用を受けるための要件確認と、申告手続が欠かせません。
したがって先代死亡時には、「贈与税猶予の免除」と「相続税猶予への切替え」を、必ず分けて検討します。
贈与税側の免除だけを確認し、相続税側の申告や切替確認を後回しにすると、相続税の納税猶予を受けられないリスクが生じます。
贈与時に認定を受けているから、切替時の確認は不要という誤解
贈与時に都道府県知事の認定を受けていても、先代死亡時には、切替確認が別途必要になります。
贈与時の認定は、贈与税の納税猶予を受けるための入口です。一方の切替確認は、贈与者死亡後に、その株式について相続税の納税猶予へ接続するための手続です。目的も、時点も異なります。
特に、贈与後に会社の状況が変化している場合には、切替確認の時点で改めて要件を確認する意味が大きくなります。
相続税申告期限までに何とかすればよい、という誤解
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。しかし事業承継税制の切替実務では、「10か月あるから余裕がある」とは考えない方が安全です。
相続が発生したあとには、通常の相続税申告のための財産調査、相続人確認、遺言確認、遺産分割、債務確認、相続税試算が必要になります。事業承継税制では、これに加えて、自社株評価、贈与時の資料、過去の認定資料、年次報告資料、継続届出資料、株主名簿、議決権確認、会社要件確認、切替確認の申請、担保提供、相続税申告書への特例適用の記載まで求められます。
相続発生後に資料を集め始めると、期限内に正確な判断を行うことは難しくなります。
切替えは、先代死亡後に始まる手続です。しかし、その実務準備は、生前贈与を実行した時点から始まっている。そう考えておくべきです。
特例措置の適用期限と切替えの関係
法人版事業承継税制の特例措置は、特例承継計画の提出期限や株式取得期限が定められた制度です。
特例措置の対象となるのは、特例承継計画を平成30年4月1日から令和9年9月30日までに都道府県へ提出し、平成30年1月1日から令和9年12月31日までに贈与・相続によって会社の株式を取得した経営者とされています。
では、特例措置で贈与税の納税猶予を受けたあと、先代経営者の相続が令和10年以後に発生した場合は、どうなるのでしょうか。
この点については、特例措置で贈与税の納税猶予を受けている場合、経営承継贈与者の相続の発生が2028年以降になったとしても、特例措置で相続税の納税猶予を受けることができるとされています。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第6章 贈与者に相続が開始した場合
これは、生前贈与の実行時点で特例措置の対象となっている場合、後の先代死亡による相続税猶予への切替えが、単純に令和9年12月31日で遮断されるわけではない、という点で重要です。
ただし、これは「何年後でも何もしなくてよい」という意味ではありません。贈与税猶予を受けたあとの継続届出、会社要件、後継者要件、株式保有、切替確認、相続税申告が、いずれも適切に行われていることが前提となります。
制度の期限を確認するだけでなく、将来、先代死亡時に切替えできる状態を維持しておくこと。これが大切です。
複数後継者・複数贈与者がいる場合は、切替えの単位を誤らない
特例措置では、複数の株主から、最大3人の後継者への承継が想定されています。これは承継設計の柔軟性を高める一方で、先代死亡時の切替実務を複雑にします。
切替確認は、その贈与をした贈与者の相続が開始した場合に、その贈与者に係る認定ごとに手続を行うものとされています。また、複数の後継者がいる場合には、後継者ごとに切替確認の申請書が必要になります。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第6章 贈与者に相続が開始した場合
たとえば、先代経営者から複数の後継者へ株式を贈与している場合、先代死亡時には、後継者ごとにどの認定に係る株式かを整理します。先代経営者以外の株主から贈与を受けている場合には、その贈与者ごとに相続の発生時期が異なってきます。
ここで重要なのは、「会社単位」だけで考えないことです。「贈与者」「後継者」「認定」「対象株式」の組み合わせで管理する。この視点が欠かせません。
株主構成が複雑な会社では、誰から誰へ、何株を、いつ、どの制度区分で移転したのかを記録しておかなければ、先代死亡時の切替えに支障が生じます。
生前贈与を実行した時点で、将来の相続発生に備え、次の資料を整理しておくべきです。
- 贈与者ごとの贈与株式数
- 後継者ごとの取得株式数
- 認定番号、認定日、認定区分
- 贈与税申告書、添付書類、担保資料
- 年次報告書、継続届出書の提出履歴
- 株主名簿、議決権割合の推移
- 種類株式、自己株式、黄金株の有無
- 贈与後の株式移動履歴
切替えの段階になってこれらを一から確認するのは、時間のうえでも、リスク管理のうえでも望ましくありません。
猶予継続贈与が行われている場合の切替え
贈与税猶予を受けている後継者が、さらに次の後継者へ株式を贈与し、その次の後継者が納税猶予を受ける。こうした場合があります。これが、いわゆる猶予継続贈与です。
後継者である2代目経営者が、先代経営者である1代目の生前に、次の後継者である3代目へ猶予継続贈与を行った場合、先代経営者に相続が発生したときには、猶予対象株式等を3代目が取得したものとみなして相続税を計算します。そのため、切替確認の手続を行うのは3代目になります。
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第6章 贈与者に相続が開始した場合
この取扱いは、三世代承継を考えるうえで非常に重要です。
事業承継税制は、単に先代から後継者へ一度だけ株式を移す制度ではありません。一定の条件のもとで、次の世代への承継まで見据えた制度設計が可能です。ただし、その分だけ、誰がどの時点で納税猶予を受けるのか、誰の死亡時にどの株式がみなし相続取得されるのか、誰が切替確認を行うのか、という関係が複雑になります。
猶予継続贈与を検討する際には、税額だけでなく、次の後継者の経営能力、代表者要件、議決権要件、親族・株主関係、会社の将来方針までを整理しておく必要があります。
一代目から二代目への承継が終わったように見えても、税務上は、一代目の死亡時に再び重要な手続が発生することがあります。この点を見落とすと、三世代承継の設計全体が崩れてしまう可能性があるのです。
相続税猶予へ切り替えたあとも、管理は続く
相続税の納税猶予へ切り替えることができたとしても、それで制度対応が終わるわけではありません。
法人版事業承継税制の相続税の納税猶予は、後継者である相続人等が、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を相続または遺贈により取得した場合に、その株式等に係る相続税の納税を一定の要件のもとで猶予する制度です。そして、後継者の死亡等によって、猶予税額の納付が免除されます。
出典:国税庁|No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)
納税猶予を維持するには、申告後も継続届出が必要です。特例措置の継続届出は、贈与税または相続税の申告期限後5年間は毎年、5年経過後は原則として3年ごとに提出する必要があり、期限までに提出しなかった場合には納税猶予の期限が確定するとされています。
出典:国税庁|B1-66 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の継続届出手続(特例措置)
相続税猶予へ切り替えたあとは、次のような事項を継続的に管理する必要があります。
- 後継者の代表者としての地位
- 対象株式の継続保有
- 同族関係者による議決権の過半数
- 後継者の同族内における筆頭株主性
- 黄金株や種類株式の保有状況
- 資産保有型会社・資産運用型会社への該当可能性
- 年次報告、継続届出、随時報告
- 合併、会社分割、株式交換等の組織再編
- 株式譲渡、自己株式取得、廃業、解散の可能性
相続税猶予への切替えは、制度の出口ではありません。次の管理期間への、入口なのです。
切替えを見据えて、生前贈与時から残しておくべき資料
贈与税猶予から相続税猶予への切替えで重要なのは、先代死亡後に慌てて資料を探すような事態を避けることです。
生前贈与を実行した時点から、将来の先代死亡時に備えて、次の資料を保存し、更新しておくべきです。
- 特例承継計画
- 認定申請書、認定書、添付書類
- 贈与契約書または株式移転の根拠資料
- 贈与税申告書、納税猶予関係書類
- 担保提供関係資料
- 株主名簿
- 議決権割合の計算資料
- 定款、登記事項証明書
- 種類株式、黄金株、自己株式に関する資料
- 年次報告書、継続届出書、提出控え
- 決算書、税務申告書
- 資産保有型会社・資産運用型会社の判定資料
- 従業員数の確認資料
- 代表者変更、役員変更、組織再編に関する議事録
- 相続人関係図、遺言、遺産分割方針
- 相続税試算、納税資金試算
これらは、単なる保管書類ではありません。
切替確認の要件確認、相続税申告、自社株評価、関係者への説明、税務調査への対応、専門家によるレビュー。その一つひとつの基礎資料になります。提出控えや判断のメモが残っていない場合、後から「なぜこの制度を使ったのか」「どの株式が対象なのか」「要件をどう確認したのか」を説明できなくなることがあります。
事業承継税制は、後から説明できる管理があって、初めて安全に運用できる制度です。
切替えを検討する際の、実務判断の軸
贈与税猶予から相続税猶予への切替えでは、次の観点から整理していきます。
第一に、贈与税猶予が先代死亡の時点で有効に継続しているかを確認します。すでに一部取消や期限確定が生じていないか、株式譲渡や代表者退任などの取消事由が発生していないかを見ます。
第二に、贈与税猶予の死亡免除手続を期限内に行えるかを確認します。贈与者死亡による免除届出と、相続税申告・切替確認は、別の管理になります。
第三に、みなし相続取得される株式の範囲と価額を整理します。贈与時の価額、対象株式数、贈与後の株式移動、猶予継続贈与の有無を確認します。
第四に、切替確認の要件を満たすかを確認します。後継者が代表者であるか、同族関係者で議決権の過半数を保有しているか、後継者が筆頭株主であるか、会社が資産保有型会社等に該当しないか、従業員数や総収入金額の要件を満たすか。これらを見ていきます。
第五に、相続税申告で納税猶予の適用を受けるための記載、添付書類、担保提供、他の相続財産との関係を整理します。
第六に、切替え後の継続届出と管理体制を整えます。相続税猶予へ切り替えたあとも、代表者要件、株式保有、届出、資産管理を継続して確認する必要があります。
これらの論点を一つずつ確認していくことで、「切替えできるか」だけでなく、「切替えたあとも維持できるか」までを判断できます。
まとめ|切替えは、贈与承継の最終確認ではなく、相続後管理の始まり
生前贈与で自社株を後継者へ移し、贈与税の納税猶予を受けた場合でも、先代経営者の死亡時には重要な手続が発生します。
贈与税の猶予税額については、死亡免除の手続を確認します。それと同時に、贈与を受けた自社株は相続税の課税関係へと接続し、相続税の納税猶予を受けるためには、切替確認と相続税申告が必要になります。
この切替えは、自動的に行われるものではありません。
贈与時の認定、贈与税申告、年次報告、継続届出、株主構成、後継者の代表者としての地位、会社の資産構成、相続税申告、担保提供。これらがつながって初めて、贈与税猶予から相続税猶予へと円滑に接続できます。
事業承継税制を使った生前贈与は、先代死亡時までを見据えて設計する必要があります。贈与の時点で税負担を抑えられるかだけではありません。先代死亡時に切替えできるか、切替え後も継続して管理できるか、将来の組織再編・売却・廃業の可能性をどう扱うか。そこまで整理しておくことが大切です。
贈与税猶予から相続税猶予への切替えは、贈与承継の終点ではありません。相続後の経営継続と、納税猶予の管理を始めるための、重要な再確認の場面なのです。
贈与税猶予から相続税猶予への切替えで、専門家へ相談すべき場面
次のような場合には、先代死亡の前、あるいは相続発生の直後という早い段階で、専門家に全体の整理を依頼することをおすすめします。
- 贈与税の納税猶予を受けたあと、先代経営者の相続が発生した
- 贈与税猶予の免除届出と、相続税猶予への切替えの関係が分からない
- 過去の認定書、申告書、届出書、提出控えが整理されていない
- 複数の贈与者、複数の後継者、猶予継続贈与が絡んでいる
- 株主構成、種類株式、自己株式、黄金株、名義株に不安がある
- 会社に不動産や有価証券が多く、資産管理会社の判定が気になる
- 相続税申告期限までに、切替確認、申告、担保提供を進められるか不安がある
- 切替え後の継続届出や取消リスクを管理できる体制を作りたい
犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継税制の適用可否だけでなく、贈与税猶予から相続税猶予への接続、過去資料の確認、自社株評価、相続税申告、株主構成、承継後の管理まで含めて整理いたします。
すでに生前贈与を実行している場合でも、先代死亡時の切替えで何を確認すべきかを早めに把握しておくことで、期限管理や要件確認のリスクを大きく下げることができます。贈与税猶予を受けたあとの管理や、先代死亡時の切替えにご不安がある場合は、まずは現在の認定資料、申告資料、株主名簿、決算書を整理するところから、ご相談ください。
振り返り|贈与税猶予から相続税猶予への切替えの確認ポイント
| 判断項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 贈与税猶予の位置づけ | 生前贈与時の贈与税は猶予されているだけで、先代死亡時に免除手続が必要になる |
| 先代死亡時の基本処理 | 贈与税猶予の免除と、相続税猶予への切替えを分けて整理する |
| みなし相続取得 | 贈与を受けた株式が、相続税計算上、相続または遺贈により取得したものとみなされる |
| 切替確認 | 相続税猶予へ接続するため、都道府県知事の確認を受ける必要がある |
| 税務署への申告 | 切替確認とは別に、相続税申告書等で納税猶予の適用を受ける手続が必要 |
| 主な要件 | 代表者要件、同族過半、筆頭株主、黄金株、資産保有型会社等、従業員数、総収入金額を確認する |
| 特例措置の期限 | 特例承継計画や株式取得期限と、贈与者死亡時の切替えの関係を整理する |
| 複数後継者・複数贈与者 | 贈与者、後継者、認定、対象株式ごとに手続単位を管理する |
| 猶予継続贈与 | 2代目から3代目へ承継済みの場合、誰が切替確認を行うかを確認する |
| 切替後の管理 | 相続税猶予へ切り替えたあとも、年次報告・継続届出・株式保有・取消事由の管理が続く |
| 事前準備 | 認定書、申告書、届出書、株主名簿、議決権資料、決算書、相続関係資料を継続保存する |