複数株主から後継者へ株式を承継する場合|事業承継税制で議決権を集約する実務判断

自社株が先代経営者だけでなく、親族や役員、従業員、過去の出資者、名義上の株主などに分散している会社では、事業承継税制の検討は一気に複雑になります。

「先代から後継者へ株式を贈与する」という単純な構図であれば、話はそれほど難しくありません。先代経営者要件、後継者要件、会社要件、対象株式数を順番に確認していけば、制度を適用できるかどうかは、ある程度まで整理できます。

ところが、複数の株主から後継者へ株式を集約する場合には、次のような論点が一度に立ち上がってきます。

  • 誰が先代経営者に該当するのか
  • 先代経営者以外の株主からの贈与は、どのタイミングで行うべきか
  • 後継者は1人なのか、複数なのか
  • 後継者は、贈与後に議決権要件を満たすか
  • 贈与者ごとに、必要な株式数を満たしているか
  • 対象となるのは、議決権株式なのか
  • 名義株、所在不明株主、少数株主、種類株式はないか
  • 贈与ではなく、売買や自己株式取得で整理すべき株式はないか
  • 制度適用後も、株式保有・代表者要件・届出を維持できるか

複数株主からの承継は、単に「株式を集める」だけの手続ではありません。後継者に経営権を集中させるための株主構成の再設計であり、税務、会社法、相続、資金繰り、関係者の合意を、同じテーブルの上で整理していく作業になります。

本記事では、複数株主から後継者へ株式を承継する場合に、事業承継税制上どのような順番で検討すべきかを整理していきます。なお、個別株主との交渉方法や、強制的な株式集約手続、スクイーズアウト、M&A手続の詳細については、本記事では扱いません。

目次

複数株主からの承継は、特例措置で大きく広がった論点である

法人版事業承継税制には、一般措置と特例措置があります。

法人版事業承継税制とは、後継者である受贈者が円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を、贈与により取得した場合に、その株式等にかかる贈与税の納税を一定の要件のもとで猶予し、後継者の死亡等によって猶予税額の納付が免除される制度です。

出典:国税庁|No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

特例措置では、対象株式数の上限撤廃や納税猶予割合の100%化に加えて、承継のパターンそのものが大きく広がりました。従来は、先代経営者一人から後継者一人への贈与・相続だけが対象でしたが、特例措置では、親族外を含むすべての株主から、代表者である後継者最大3人への贈与・相続が対象になっています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

この拡張によって、分散した自社株を後継者へ集約しやすくなったのは事実です。

ただ、ここで気をつけたいのは、「すべての株主から取得できる」という表現を、実務でそのまま単純に受け取ってはいけないという点です。複数株主からの承継には、第一種特例贈与、第二種特例贈与、贈与者ごとの要件、後継者ごとの要件、株式数要件、認定申請、税務申告、担保提供といった要素が、いくつも絡んできます。

制度上の入口が広がったからといって、株主構成の確認を省略できるわけではありません。むしろ、複数株主から承継するときほど、株主名簿、実質株主、議決権割合、贈与者ごとの株式数を、精密に整理しておく必要があります。

特例承継計画と実行期限を、先に確認する

複数株主から後継者へ株式を承継する場合、まず確認したいのは、特例措置の時間軸です。

特例措置については、特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日までとされており、平成30年1月1日から令和9年12月31日までに、贈与・相続によって会社の株式を取得した経営者が対象になります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

また、特例承継計画には、後継者の氏名、事業承継の予定時期、承継時までの経営見通し、承継後5年間の事業計画などを記載し、認定経営革新等支援機関による指導・助言を受ける必要があります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

複数株主からの承継では、特例承継計画を「提出するかどうか」だけでなく、計画の段階で次の点まで整理しておきたいところです。

  • 後継者は1人か、複数か
  • 株式を移す主たる先代経営者は誰か
  • 先代経営者以外の株主からも、贈与を受ける予定があるか
  • どの株主から、いつ、どの程度の株式を移すのか
  • 贈与ではなく、売買や相続で整理する株式はないか
  • 後継者は、贈与後に代表者・議決権要件を満たすか
  • 贈与後の株主構成を、関係者に説明できるか

複数株主からの承継では、計画書を形式的に提出するだけでは足りません。後で第二種特例贈与を行う可能性があるのなら、特例承継計画の段階で、株主構成と承継予定の全体像をつかんでおくべきです。

第一種特例贈与と第二種特例贈与を、分けて考える

複数株主から後継者へ株式を承継するうえで中心になるのは、第一種特例贈与と第二種特例贈与の切り分けです。

大まかにいえば、第一種特例贈与は、先代経営者から後継者への贈与です。これが、事業承継税制における基幹的な承継になります。

これに対して、第二種特例贈与は、先代経営者以外の株主等から後継者への贈与です。すでに先代経営者からの承継が行われた後で、分散している株式を後継者へ集約するための承継だと理解すると、整理しやすくなります。

申請マニュアルでは、第二種特例贈与認定の対象会社要件として、第二種特例贈与認定の前に、その中小企業者が第一種特例贈与または相続の認定を受けていること、そして第二種特例贈与を受ける時点で、その中小企業者の代表者が、当該中小企業者の株式等について第一種特例贈与または相続を受けていることが求められています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

この点が、複数株主承継の順序を設計するうえで、最も重要になります。

つまり、先代経営者以外の株主から先に贈与を受け、その後で先代経営者から贈与を受ける、という順番では、第二種特例贈与の前提を満たせない可能性があるのです。

実務では、まず先代経営者から後継者へ基幹的な株式承継を行い、その後で、親族、役員、従業員、その他の個人株主が保有する株式を後継者へ移していく、という順番で検討するのが基本になります。

先代経営者以外の株主からの贈与では、贈与者要件が異なる

第二種特例贈与では、贈与者は先代経営者ではありません。そのため、先代経営者に求められる代表者経験や同族筆頭株主要件とは、別の整理になります。

マニュアルでは、先代経営者以外の株主等からの贈与について、その贈与者が代表権を持っていた者であること、同族で議決権の過半数を有していたこと、同族内で最も多くの議決権数を有していたこと、特例承継計画に記載された特例代表者であること、これらはいずれも要件とされていません。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

とはいえ、先代経営者以外の株主からの贈与であれば何でもよい、というわけでもありません。

同じマニュアルでは、先代経営者以外の株主等の要件として、先代経営者からの贈与または相続以後に贈与を行った者であること、会社の代表者でないこと、すでに特例措置の適用にかかる贈与をしていないこと、一定数以上の株式等を贈与することなどが示されています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

第二種特例贈与は、「先代以外の株主からも贈与できる」という柔軟な制度です。その一方で、贈与者ごとの順序、代表者に該当するかどうか、過去の贈与実績、株式数要件を、ひとつずつ確認しなければなりません。

特に、親族や役員が株式を持っている場合には、その人が現在の代表者であるか、過去に制度適用にかかる贈与を行っていないか、贈与する株数が要件を満たすかを、株主ごとに確認していく必要があります。

後継者が1人か複数かで、必要な議決権設計が変わる

複数の株主から株式を集める場合でも、後継者が1人なのか、2人または3人なのかで、判断の構造は大きく変わります。

マニュアルでは、第一種特例贈与における後継者要件として、後継者とその親族などで総議決権数の過半数を保有すること、後継者が1人の場合には同族関係者の中で最も多くの議決権数を有すること、後継者が複数の場合には各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ各後継者が同族関係者のうちいずれの者が有する議決権数をも下回らないことが示されています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第1節 第一種特例贈与認定中小企業者

第二種特例贈与でも、後継者が複数の場合には、各後継者が10%以上の議決権を有し、かつ各後継者が同族関係者のうちいずれの者が有する議決権数をも下回らないことが必要とされています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

ここで意識しておきたいのは、「後継者を複数にできる」ことと、「複数の後継者にするのが経営上望ましい」こととは、別の問題だという点です。

複数後継者による承継は、税制上の要件を満たしていても、経営の意思決定が複雑になることがあります。兄弟姉妹、親族内の後継者、親族外の役員などが複数で後継者になる場合には、制度適用後の議決権配分、代表者の関係、意思決定のルール、将来の相続、株式売却の可能性まで、慎重に検討しておくべきです。

後継者が複数いる場合、事業承継税制の上では最大3人まで対象になり得ます。ただ、会社を安定的に運営するという観点からは、誰が最終的な経営責任を負うのか、誰が金融機関や取引先に対して説明するのかを、あらかじめ明確にしておく必要があります。

株式移転の順序を誤ると、第二種特例贈与が使えない場合がある

複数株主から後継者へ株式を承継する場合、実務では株式移転の順序がとても重要になります。

基本的には、次の順序で整理していきます。

第一に、現在の株主構成と議決権割合を確定します。

第二に、特例承継計画に記載する後継者と、承継方針を決めます。

第三に、先代経営者から後継者へ、第一種特例贈与または相続による承継を行います。

第四に、その後で、先代経営者以外の株主から後継者へ、第二種特例贈与による承継を行います。

第五に、都道府県知事への認定申請、税務署への贈与税申告、担保提供、継続管理を進めます。

この順序が重要なのは、第二種特例贈与が、先代経営者からの贈与または相続による基幹的な承継を経た後に行われる制度だからです。

マニュアルでも、第二種特例贈与について、先代経営者からの贈与または相続以後に贈与を行った者であること、また贈与者および後継者が有している議決権数に応じて、株式を一括して贈与する必要があることが示されています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

そのため、複数の株主から少しずつ、都合のよいタイミングで株式を贈与していく、という発想は危険です。

事業承継税制を使うのであれば、誰から、誰へ、いつ、何株を、どの認定区分で移すのかを、あらかじめ設計しておく必要があります。

贈与者ごとに、「必要な株式数」を確認する

複数の株主から承継する場合、株式数要件は、株主全体をざっくり見て判断するのではなく、贈与者ごとに確認していきます。

先代経営者からの第一種特例贈与では、後継者が1人の場合と複数の場合とで、必要となる贈与株式数の考え方が異なります。

マニュアルでは、第一種特例贈与において、後継者が1人の場合、贈与者と後継者の保有議決権数の合計が総議決権数の3分の2以上であれば、贈与後の後継者の議決権数が3分の2以上となるように贈与し、3分の2未満であれば、先代経営者が保有する議決権株式等のすべてを贈与することが示されています。後継者が2人または3人の場合には、贈与後にそれぞれの後継者の議決権数が10%以上であり、最後の贈与の後に、後継者が贈与者よりも多くの議決権数を有するように贈与する必要があります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第1節 第一種特例贈与認定中小企業者

第二種特例贈与についても、後継者が1人の場合、贈与者と後継者の保有議決権数の合計が総議決権数の3分の2以上であれば、贈与後の後継者の議決権数が3分の2以上となるように贈与し、3分の2未満であれば、贈与者が保有する議決権株式等のすべてを贈与することが示されています。後継者が2人または3人の場合には、贈与後にそれぞれの後継者の議決権数が10%以上であり、最後の贈与の後に、後継者が贈与者よりも多くの議決権数を有するように贈与する必要があります。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

ここで大切なのは、複数の株主がいる場合でも、「最終的に後継者が過半数を持つから大丈夫」とはならない、という点です。

贈与者ごとに、贈与前後の議決権数、後継者の取得株数、贈与者の残存議決権、後継者間の議決権順位を、それぞれ確認していく必要があります。

議決権株式を中心に考える

事業承継税制では、対象となる株式が何でもよい、というわけではありません。

特例措置における対象株数は、議決権に制限のない株式等に限られます。

出典:国税庁|No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

中小企業庁も、贈与税の納税猶予制度について、後継者が贈与により取得した株式等のうち、議決権を行使することができない株式を除いた株式等にかかる贈与税の100%が猶予されると説明しています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

複数の株主から承継する場合には、単に発行済株式数を集計するのではなく、議決権ベースで整理する必要があります。

特に、次のような株式がある場合には注意が必要です。

  • 議決権制限株式
  • 拒否権付株式、いわゆる黄金株
  • 単元未満株式
  • 自己株式
  • 相互保有株式
  • 種類株式
  • 名義株
  • 株主名簿と実質所有者が異なる株式

議決権割合は、後継者要件、同族過半要件、筆頭株主要件、対象株式数、さらに相続税・贈与税の評価にも影響してきます。

なかでも、後継者以外の者が拒否権付株式を持っている場合には注意が必要です。マニュアルでは、第一種特例贈与認定中小企業者について、第一種特例経営承継受贈者以外の者が拒否権付株式を保有していないことが、対象会社要件として示されています。第二種特例贈与認定中小企業者についても、特例措置の適用を受ける後継者以外の者が拒否権付株式を保有していないことが、要件として示されています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第1節 第一種特例贈与認定中小企業者
出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

複数株主からの承継では、「何株を移すか」よりも、「どの議決権を誰に集中させるか」が、中心の論点になります。

名義株・所在不明株主を放置したまま、制度適用を進めてはいけない

株主構成が複雑な会社では、株主名簿上の株主と、実際の所有者とが一致していないことがあります。

過去に親族名義で出資した株式、従業員名義の株式、創業時に名義だけを借りた株式、株券の所在が不明な株式、相続が何代も放置されたままの株式。こうしたものがある場合、事業承継税制の検討は、慎重に進める必要があります。

名義株が残っていると、次のような問題が起こります。

  • 後継者の議決権割合を、正しく判定できない
  • 同族過半要件や筆頭株主要件の前提が崩れる
  • 誰から贈与を受けるべきか、確定できない
  • 贈与契約や譲渡承認手続の相手方を、誤ってしまう
  • 相続発生後に、株式の帰属をめぐって争いになる
  • 税務調査で、前提となる株主構成が否認される可能性がある

複数株主からの承継では、株主名簿を見て「この人からこの株式を贈与してもらえばよい」と、すぐに判断してはいけません。

株主名簿、設立時の資料、増資の資料、株券の有無、配当の支払実績、議決権行使の実績、同族会社等の判定に関する明細書、相続関係の資料を確認し、実質的な所有者を整理していく必要があります。

名義株や所在不明株主がある場合には、事業承継税制を検討する以前に、まず株主管理の正常化が必要です。

法人株主からの移転は、贈与税猶予の枠組みと合わない場合がある

複数の株主の中に法人株主がいる場合にも、注意が必要です。

事業承継税制の贈与税納税猶予は、後継者が贈与によって株式等を取得し、その株式等にかかる贈与税が生じることを前提にしています。

マニュアルでは、後継者が法人からの贈与によって株式等を取得した場合、後継者には所得税が課され、贈与税は課されないことになるため、要件を満たさないことが示されています。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)マニュアル 第2章 第3節 第二種特例贈与認定中小企業者

そのため、法人株主が保有する株式を後継者に移す場合には、事業承継税制の贈与税猶予で処理できるかどうかではなく、別の税務・会社法上の整理が必要になります。

たとえば、法人株主から後継者個人への譲渡、発行会社による自己株式取得、グループ内再編、持株会社の整理などが検討の対象になります。ただし、それぞれに所得税、法人税、みなし配当、時価評価、低額譲渡、財源規制といった論点が生じます。

複数株主からの承継で、株主の中に法人が含まれる場合には、「個人株主からの贈与」と同じ表で扱わないことが大切です。

売買・自己株式取得・相続で整理すべき株式もある

すべての株式を、事業承継税制の贈与で移すべきだとは限りません。

複数の株主の中には、贈与に応じる意思がない株主、親族関係が薄い株主、会社との関係がすでに切れている株主、対価を求める株主もいます。そうした場合には、売買、自己株式取得、相続発生時の遺言・遺産分割、相続人等に対する売渡請求、少数株主対策など、別の手法を検討する必要があります。

ただし、本記事で扱うのは、あくまで事業承継税制を活用した株式承継の範囲です。個別株主との交渉、価格交渉、強制取得手続、スクイーズアウトの詳細は、別の論点になります。

ここで大切なのは、贈与で移す株式、売買で移す株式、自己株式取得で整理する株式、相続まで待つ株式を、混同しないことです。

特に、親族間・同族関係者間で低額譲渡を行う場合には、みなし贈与、譲渡所得、法人税、株価の上昇による他の株主への課税関係などが問題になることがあります。

「後継者に株式を集めたい」という目的そのものは正しくても、移転の方法を誤れば、制度適用外の税負担や、後日の紛争を招きかねません。

複数株主承継では、贈与者ごとの管理表を作る

複数の株主から後継者へ株式を承継する場合には、贈与者ごとの管理表を作成しておくことが、実務では有効です。

少なくとも、次の項目は整理しておきたいところです。

  • 株主名
  • 実質所有者
  • 株主名簿上の株式数
  • 議決権株式数
  • 議決権割合
  • 種類株式・拒否権付株式の有無
  • 先代経営者か、先代経営者以外の株主か
  • 個人株主か、法人株主か
  • 贈与、売買、相続、自己株式取得のどれで整理するか
  • 第一種特例贈与か、第二種特例贈与か
  • 贈与予定時期
  • 贈与後の後継者議決権割合
  • 贈与者の残存議決権割合
  • 特例承継計画との整合性
  • 認定申請期限、税務申告期限、担保提供の要否
  • 贈与者の相続・遺留分・納税資金への影響

この管理表を作らずに制度適用を進めると、次のようなミスが起こりやすくなります。

  • 第二種特例贈与の前に、第一種承継が済んでいない
  • 贈与者ごとの必要株式数を、満たしていない
  • 後継者の議決権割合が10%未満、または筆頭要件を満たしていない
  • 後継者以外の者が、拒否権付株式を持っている
  • 株主名簿上の株主と、実質所有者が異なる
  • 法人株主からの移転を、贈与税猶予の対象と誤認する
  • 税務署への申告や担保提供を、失念する
  • 承継後の継続届出を、管理できない

複数株主承継では、制度の知識以上に、事実関係の整理が重要になります。

承継後の株主構成を、説明できるか

複数の株主から後継者へ株式を移す場合には、制度適用の時点で要件を満たすだけでなく、承継した後の株主構成を、あとから説明できる状態にしておく必要があります。

誰が、なぜ株式を移したのか。 後継者には、どの程度の議決権を集中させたのか。 他の株主には、どのような権利が残るのか。 後継者以外の相続人や親族には、どのように説明するのか。 金融機関に対しては、経営権の安定性をどう説明するのか。 将来、売却・再編・廃業の可能性がある場合に、納税猶予へどう影響するのか。

これらを整理しておかなければ、形式の上では制度を適用できても、承継した後の経営が安定しないことがあります。

事業承継税制は、税額を猶予する制度であると同時に、後継者へ経営権を移す制度でもあります。

複数株主からの承継では、税務上の要件を満たすことと、会社法上の株主管理、相続法務上の納得の形成、財務上の安全性を、一体として検討していく必要があります。

複数株主からの承継で、専門家へ相談すべき場面

次のような場合には、早い段階で専門家に相談されることをおすすめします。

  • 先代経営者以外に、複数の株主がいる
  • 親族、役員、従業員、過去の出資者に株式が分散している
  • 株主名簿と実質株主が一致しているか、不安がある
  • 名義株、所在不明株主、相続未了の株式がある
  • 後継者が複数いる
  • 後継者にどの程度の議決権を集中させるべきか、判断できない
  • 先代経営者以外の株主からも、贈与を受けたい
  • 法人株主や従業員持株会が、株式を保有している
  • 種類株式、拒否権付株式、自己株式がある
  • 贈与、売買、自己株式取得、相続のどれで整理すべきか、迷っている
  • 特例承継計画、認定申請、贈与税申告、担保提供を、一体で管理したい

犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継税制を適用できるかどうかだけでなく、株主構成、議決権割合、自社株評価、贈与者ごとの承継方法、先代経営者以外の株主からの承継、そして承継後の継続管理まで含めて整理します。

複数株主からの承継は、株式数だけを見て判断すると危険です。現在の株主構成、実質所有者、後継者の経営体制、税務上の要件、将来の相続・再編の可能性を確認したうえで、あとから説明できる承継設計を行うことが大切です。

自社株が複数の株主に分散していて、事業承継税制を使って後継者へ集約したいとお考えの場合は、株主名簿、定款、登記簿、決算書、過去の申告書、株式移動の履歴を整理したうえで、ご相談ください。

振り返り|複数株主から後継者へ株式を承継する場合の確認ポイント

確認項目実務上のポイント
制度区分特例措置では、親族外を含む複数株主から最大3人の後継者への承継が対象になり得る
特例承継計画後継者、承継時期、承継後の事業計画、複数株主からの承継予定を整理する
第一種特例贈与先代経営者から後継者への基幹的な承継として位置づける
第二種特例贈与先代経営者以外の株主から後継者への承継であり、第一種承継後に行う順序が重要
株式移転順序先代経営者からの承継を先に行い、その後に分散株式を集約するのが基本
後継者が1人の場合後継者が同族内で最も多くの議決権を持つか、必要株式数を満たすかを確認する
後継者が複数の場合各後継者が10%以上の議決権を持ち、同族関係者の議決権数を下回らないか確認する
贈与者ごとの株式数株主全体ではなく、贈与者ごとに必要株式数と贈与後の議決権割合を確認する
議決権株式対象となるのは議決権に制限のない株式等であり、種類株式や単元未満株式に注意する
拒否権付株式後継者以外の者が拒否権付株式を持っていないか確認する
名義株・所在不明株主株主名簿と実質所有者を確認し、制度適用前に株主管理を整理する
法人株主法人からの贈与は贈与税ではなく所得税等の問題となり、事業承継税制の枠組みと合わない場合がある
代替手法贈与だけでなく、売買、自己株式取得、相続、遺言、少数株主対策との切り分けが必要
承継後管理株式保有、代表者要件、年次報告、継続届出、取消事由を継続して管理する必要がある
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