株式や投資信託を売却して損失が出たとき、「確定申告をすれば税金が戻るのだろうか」「配当金と相殺できるのか」「翌年以降に損失を繰り越せるのか」と迷われる方は少なくありません。
ただ、株式等の譲渡損失は、給与所得や事業所得の赤字とは扱いが異なります。損失が出たからといって、あらゆる所得と自由に相殺できるわけではないのです。
なかでも大切なのは、次の点をきちんと切り分けることです。
- 上場株式等の損失なのか
- 一般株式等・未上場株式等の損失なのか
- NISA口座内の損失なのか
- 特定口座か、一般口座か
- 配当等を申告分離課税で申告するのか
- 翌年以後も連続して申告できるか
- 住民税・国民健康保険料・扶養判定などに影響しないか
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡し、そこで生じた損失は、確定申告をすることで、その年分の上場株式等の配当等に係る一定の利子所得・配当所得と損益通算できます。そして、控除しきれなかった損失は、翌年以後3年間にわたって繰越控除できる場合があります。
出典:国税庁|No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
一方で、株式等の譲渡損失は、原則として給与所得や事業所得、不動産所得といった他の各種所得とは損益通算できません。上場株式等と一般株式等の間でも、原則として損失と利益を通算することはできないのです。
出典:国税庁|No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い
この記事では、株式等の譲渡損失について、申告するかどうかを判断するための実務上の確認順序を整理していきます。投資判断や銘柄選定ではなく、あくまで確定申告上の整理に絞ってお話しします。
まず押さえておきたい結論
株式等の譲渡損失について、はじめに押さえておきたい結論をまとめると、次のとおりです。
| 論点 | 基本的な扱い |
|---|---|
| 上場株式等の譲渡損失 | 一定の配当等との損益通算、翌年以後3年間の繰越控除が可能な場合あり |
| 給与所得・事業所得との通算 | 原則として不可 |
| 不動産所得との通算 | 原則として不可 |
| 上場株式等と一般株式等の通算 | 原則として不可 |
| NISA口座内の損失 | 損失がないものとみなされ、通算・繰越不可 |
| 繰越控除 | 損失発生年とその後の年に、必要な付表を添付して連続申告が必要 |
| 配当等との通算 | 配当等について申告分離課税を選択する必要あり |
| 住民税への影響 | 令和6年度分の個人住民税から、所得税と住民税の課税方式は一致 |
この表だけを眺めると、案外シンプルに見えるかもしれません。ところが実務では、複数の証券会社、特定口座と一般口座、NISA口座、外国株式、配当金の受け取り方法、過年度からの繰越損失などが入り混じっているのが常です。
ですから、「損失があるから申告する」と単純に判断するのではなく、まずは口座と所得を整理するところから始める必要があります。
株式等の所得は、上場株式等と一般株式等に分けて考える
株式等を譲渡した場合の所得は、他の所得と区分して税金を計算する「申告分離課税」の対象になります。そのうえで、「上場株式等に係る譲渡所得等」と「一般株式等に係る譲渡所得等」に分けて計算していきます。
出典:国税庁|No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
ここでいう上場株式等には、上場株式だけでなく、ETF、J-REIT、一定の公募投資信託、国債・地方債、一定の公社債、外国金融商品市場で売買されている株式等なども含まれます。
出典:国税庁|No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
一方、未上場株式や非上場会社の株式、一定の出資持分などは、一般株式等として整理することになります。
この区分を取り違えると、損益通算の可否そのものを誤ってしまいます。たとえば、上場株式等の損失を未上場株式の利益から差し引くことは、原則としてできません。また、未上場株式の損失を上場株式等の利益から差し引くことも、一定の特定中小会社株式に関する特例を除き、原則としてできないのです。
つまり、同じ「株式の損失」であっても、税務上は同じ箱に入るとは限らない、ということです。
上場株式等の譲渡損失は、給与所得や事業所得とは通算できない
株式投資で損失が出ると、「給与から差し引けるのではないか」と考えたくなるかもしれません。
しかし、申告分離課税である株式等に係る譲渡所得等の損失は、株式等以外の所得とは損益通算できません。逆に、不動産所得や事業所得などの赤字を、株式等の譲渡益から差し引くこともできないのです。
出典:国税庁|No.2250 損益通算
たとえば、給与所得が800万円あり、上場株式等で200万円の損失が出たとしましょう。それでも、この200万円を給与所得から差し引くことはできません。
この点は、不動産所得や事業所得の赤字と混同しやすいところです。株式等の損失は、あくまで金融所得のなかで、制度が認める範囲に限って活用するものだとお考えください。
配当等と通算できるのは、申告分離課税を選択した場合
上場株式等の譲渡損失は、一定の上場株式等の配当等と損益通算できる場合があります。
ただ、ここで欠かせないのが、配当等について「申告分離課税」を選択する必要があるという点です。
上場株式等の配当等は、大口株主等が受けるものを除き、総合課税に代えて申告分離課税を選択できます。その税率は、所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%を合わせた20.315%です。
出典:国税庁|No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度
一方、配当所得を総合課税で申告する場合には、配当控除を検討できますが、上場株式等の譲渡損失との損益通算はできません。
したがって、配当金がある方は、次の比較が必要になります。
| 選択 | 主な特徴 | 株式譲渡損失との通算 |
|---|---|---|
| 申告不要 | 源泉徴収で完結 | 通算できない |
| 総合課税 | 配当控除を検討できる | 通算できない |
| 申告分離課税 | 20.315%の分離課税 | 一定の譲渡損失と通算できる |
「配当控除を取る方が有利か」「譲渡損失と通算する方が有利か」は、課税所得、配当金額、譲渡損失額、住民税、扶養判定、国民健康保険料などによって変わってきます。
所得税だけを見て判断してしまうと、申告後の負担まで含めた全体像を見誤ることがあるため、注意が必要です。
特定口座内で自動的に通算される場合と、確定申告が必要な場合
特定口座には、源泉徴収ありの口座と源泉徴収なしの口座があります。
源泉徴収ありの特定口座では、口座内の上場株式等の譲渡益に対して、証券会社等が源泉徴収を行います。さらに、その源泉徴収口座に上場株式等の利子等・配当等を受け入れる手続をしている場合には、その口座内で生じた譲渡損失と配当等が、一定の範囲で通算されます。
出典:国税庁|No.1476 特定口座制度
ただし、次のような場合には、確定申告を検討する必要があります。
- 複数の証券会社の口座間で損益通算したい
- 特定口座と一般口座が混在している
- 源泉徴収あり口座の損失を翌年以後に繰り越したい
- 配当等を申告分離課税で申告して譲渡損失と通算したい
- 一般口座の上場株式等の損益を申告する必要がある
- 外国証券会社の口座で取引している
- 過年度から繰り越した譲渡損失を使いたい
特定口座制度は、申告を簡便にするための制度です。とはいえ、口座内で完結する処理と、申告してはじめて使える制度とは、別のものです。
とりわけ譲渡損失の繰越控除は、放っておいて自動的に翌年へ繰り越されるわけではありません。
繰越控除を使うには、損失が出た年から申告が必要
上場株式等の譲渡損失について、配当等と損益通算してもなお控除しきれない金額があるとき、その年分の翌年以後3年間にわたり、確定申告によって、上場株式等に係る譲渡所得等および上場株式等に係る配当所得等から繰越控除できる場合があります。
出典:国税庁|No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
ただし、繰越控除を受けるには、次の手続が欠かせません。
- 損失が生じた年分の確定申告書を提出する
- 「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を添付する
- 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付する
- その後の年も連続して、必要な付表を添付した確定申告書を提出する
- 上場株式等の譲渡がなかった年でも、損失を翌年へ繰り越すために申告する
上場株式等の譲渡がなかった年であっても、譲渡損失を翌年へ繰り越すためには申告が必要であるとされています。
出典:国税庁|No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
ここは非常に大切なところです。
「損失が出た年は申告しなかったけれど、翌年に利益が出たので、去年の損失を使いたい」――実務では、こうしたご相談が起こり得ます。しかし繰越控除は、損失が出た年からの申告手続が前提です。
確定申告の義務がない年であっても、損失を将来に活かすためにあえて申告する、という判断があるわけです。
簡単な計算イメージ
たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
| 年分 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 令和7年 | 上場株式等の譲渡損失 | △100万円 |
| 令和7年 | 上場株式等の配当等(申告分離課税) | 20万円 |
| 令和8年 | 上場株式等の譲渡益 | 50万円 |
| 令和9年 | 上場株式等の譲渡益 | 30万円 |
| 令和10年 | 上場株式等の譲渡益 | 40万円 |
令和7年に確定申告を行い、譲渡損失100万円と、申告分離課税を選択した配当等20万円を通算すると、残る損失は80万円です。
この80万円を翌年以後3年間に繰り越すには、令和8年以後も連続して確定申告を続けることになります。
| 年分 | 控除前の利益等 | 繰越損失の控除 | 翌年へ繰越 |
|---|---|---|---|
| 令和7年 | 配当等20万円 | 20万円 | 80万円 |
| 令和8年 | 譲渡益50万円 | 50万円 | 30万円 |
| 令和9年 | 譲渡益30万円 | 30万円 | 0円 |
| 令和10年 | 譲渡益40万円 | 0円 | 0円 |
この例では、令和9年までに損失を使い切っています。
もっとも実際には、配当等を申告分離課税で申告するか、申告不要にするか、総合課税にするかによって、結果は変わってきます。所得税の還付だけでなく、住民税や保険料への影響もあわせて確認しておく必要があります。
NISA口座内の損失は、通算も繰越もできない
NISA口座では、非課税口座で取得した上場株式等の売却益や配当等が、一定の範囲で非課税になります。
その反面、NISA口座内で損失が出ても、その損失はないものとみなされます。そのため、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の譲渡益や配当等との損益通算、繰越控除はできません。
出典:国税庁|No.1535 NISA制度
これは、新NISAでも変わらない大切なポイントです。
NISAは利益を非課税にする制度であって、損失を税務上活用するための制度ではありません。したがって、損失を申告で使うことを前提に投資口座を考えるのであれば、課税口座とNISA口座はきちんと区別して管理する必要があります。
申告後に配当等の課税方式を変更できないことがある
上場株式等の配当等については、申告不要・総合課税・申告分離課税のいずれを選ぶかが問題になります。
そしてこの選択は、後から自由に変更できるものではありません。確定申告で申告しなかった上場株式等の利子および配当を、修正申告により総所得金額へ算入することは認められないとされています。また、上場株式等の配当等を総所得金額に算入して確定申告した後で、修正申告や更正の請求によって申告不要制度へ変更することもできない、という趣旨が示されています。
出典:国税庁|確定申告で申告しなかった上場株式等の利子及び配当を修正申告により申告することの可否
これは、株式損失の申告判断において非常に重要な点です。
配当控除を受けるために総合課税を選ぶのか、譲渡損失と通算するために申告分離課税を選ぶのか、それとも申告不要で完結させるのか。ここは、申告書を提出する前に整理しておかなければなりません。
住民税・国民健康保険料への影響も確認する
令和6年度分の個人住民税から、上場株式等に係る配当所得等および譲渡所得等の申告における課税方式は、所得税等における課税方式と一致することになりました。以前のように、所得税では申告し、住民税では申告不要を選択するといった、別々の取扱いはできなくなっています。
出典:国税庁|利子・配当 特定口座 譲渡損益
つまり、所得税で上場株式等の配当等や譲渡所得等を申告した場合には、個人住民税でも同じ課税方式になる、ということです。
そのため、確定申告をすることで、住民税の非課税判定、国民健康保険税・後期高齢者医療保険料・介護保険料、各種行政サービスなどに影響が及ぶ場合があります。
出典:さぬき市|上場株式等の配当等に係る課税方式の選択について
「所得税が還付されるから申告する」という判断だけでは、十分とはいえません。
とくに、次のような方は、慎重に確認しておく必要があります。
- 国民健康保険に加入している
- 後期高齢者医療制度に加入している
- 介護保険料の段階が気になる
- 配偶者控除、扶養控除、障害者控除などに関係する
- 家族の扶養判定に影響する可能性がある
- 住民税非課税世帯の判定が関係する
- 各種給付、医療費助成、保育料などの所得判定が関係する
株式等の損失申告は、所得税だけで完結する判断ではないのです。
外国株式・外国証券口座がある場合は、為替換算と国外税務も確認する
国内の証券会社を通じて外国株式を売買している場合でも、外国株式の譲渡損益や配当等は、日本の所得税申告に影響します。
居住者が国外株式を譲渡した場合も、国内株式を譲渡したときと同じく申告分離課税の対象です。国外株式であっても、上場株式等を売却して損失が生じたときには、要件を満たせば、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等との損益通算や、翌年以後3年間の繰越控除の対象になります。ただし、金融商品取引業者等を介した譲渡かどうか、為替換算、外国税額控除、国外口座での源泉徴収の有無まで、しっかり確認しておく必要があります。
外国株式については、次のような資料も必要になります。
- 外国株式の年間取引報告書
- 配当金の支払通知書
- 外国税額の明細
- 約定日の為替レート
- 取得時の為替レート
- 外国証券会社口座の取引明細
- 外国税額控除を検討するための資料
- 国外財産調書、財産債務調書の提出要否に関係する資料
外国株式の損益は、円換算後の金額で整理する必要があります。外貨ベースでは利益が出ていても、円ベースでは損失になる(あるいはその逆になる)ことがあるためです。
一般口座・過去に取得した株式は、取得費の整理が必要になる
特定口座では、金融商品取引業者等が年間の譲渡損益を計算し、特定口座年間取引報告書を交付してくれます。一方、一般口座では、自分で年間の譲渡損益を計算しなければなりません。
出典:国税庁|利子・配当 特定口座 譲渡損益
一般口座、相続で取得した株式、贈与で取得した株式、古くから保有している株式、勤務先の持株会で取得した株式などは、取得費の整理に時間がかかります。
確認しておきたい資料は、次のとおりです。
- 取得時の取引報告書
- 証券会社の取引履歴
- 特定口座年間取引報告書
- 一般口座の売買明細
- 配当金支払通知書
- 相続税申告書、遺産分割協議書
- 贈与契約書、贈与税申告書
- 株式分割、併合、合併、株式移転、株式交換の資料
- 持株会の拠出明細
- 過年度の確定申告書と付表
取得費があいまいなまま損失を計算してしまうと、後から説明のつかない申告になりかねません。金融商品の申告では、証券会社の資料があるから安心、というわけにはいかないのです。口座区分、取得の経緯、相続・贈与の有無まで、丁寧に確認していく必要があります。
よくある判断ミス
1. 損失が出た年に申告せず、翌年に繰り越そうとする
繰越控除は、損失が出た年の申告が起点になります。損失のある年に必要な付表を添付して申告し、その後も連続して申告を続ける必要があります。
2. NISA口座の損失を混ぜてしまう
NISA口座内の損失は、税務上ないものとみなされます。課税口座の損益と混ぜてはいけません。
3. 配当を総合課税で申告しながら、譲渡損失と通算しようとする
上場株式等の譲渡損失と通算できるのは、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等です。配当控除を受ける総合課税とは併用できません。
4. 上場株式等と未上場株式を同じものとして扱う
上場株式等と一般株式等は、原則として別区分です。未上場株式の売却や親族間売買がある場合は、時価、譲渡所得、贈与税、法人税への波及まで含めて検討する必要があります。
5. 特定口座年間取引報告書だけで全体を判断する
複数口座がある場合、一部の口座だけを見ても全体の判断はできません。NISA口座、一般口座、外国口座、配当受入の有無まで含めて確認します。
6. 所得税の還付だけを見て申告する
申告することで、住民税、国民健康保険料、扶養判定、各種行政サービスに影響することがあります。税額だけでなく、申告後の負担まで確認しておきましょう。
申告前に整理すべき資料
株式等の譲渡損失を申告するかどうか検討する際には、次の資料を整理します。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 特定口座年間取引報告書 | 口座ごとの譲渡損益、配当等、源泉徴収税額 |
| 一般口座の取引明細 | 銘柄別の取得価額、譲渡価額、手数料 |
| 配当金支払通知書 | 配当等の金額、源泉徴収税額、申告方式の検討 |
| NISA口座の取引資料 | 課税口座の損益と混在していないか |
| 外国株式の取引明細 | 為替換算、外国税額控除の検討 |
| 過年度申告書 | 繰越損失の有無、連続申告の確認 |
| 確定申告書付表 | 繰越控除の金額、翌年以後への引継ぎ |
| 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 | 譲渡所得等の計算根拠 |
| 相続・贈与資料 | 取得費、取得時期、取得経緯の確認 |
| 扶養・社会保険関係資料 | 申告による周辺影響の確認 |
資料が足りない場合は、証券会社に過去の取引履歴を依頼する、相続・贈与時の資料を確認する、過年度の申告書控えを探すなど、申告書を作成する前の整理が何よりも大切になります。
申告すべきか迷うときの判断フロー
株式等の損失申告は、次の順番で確認していくと整理しやすくなります。
1. 口座を分類する
特定口座の源泉徴収あり、特定口座の源泉徴収なし、一般口座、NISA口座、外国証券口座を分けます。
2. 上場株式等か一般株式等かを確認する
上場株式、ETF、J-REIT、公募投資信託、特定公社債などは、上場株式等に含まれる場合があります。未上場株式や非上場会社株式は別区分です。
3. 損益通算できる相手を確認する
上場株式等の譲渡損失は、他の上場株式等の譲渡益や、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等と通算できる場合があります。
4. 繰越控除を使うか確認する
控除しきれない損失がある場合、翌年以後3年間の繰越控除を使うかどうか検討します。ただし、損失発生年とその後の連続申告が必要です。
5. 配当の課税方式を選ぶ
申告不要・総合課税・申告分離課税のいずれを選ぶか検討します。譲渡損失と通算するなら、申告分離課税が前提になります。
6. 住民税・国保・扶養への影響を確認する
所得税の還付額だけで判断せず、住民税、国民健康保険料、介護保険料、扶養判定などをあわせて確認します。
7. 必要書類を添付できるか確認する
付表、計算明細書、年間取引報告書、配当通知書、一般口座の計算資料を揃えます。
専門家に相談した方がよいケース
次のような場合は、自己判断で申告する前に、専門家へ相談する価値があります。
- 複数の証券会社で取引している
- 特定口座、一般口座、NISA口座が混在している
- 配当金を申告するか迷っている
- 過年度からの繰越損失がある
- 損失が出た年に申告していなかった
- 一般口座の取得費が分からない
- 相続や贈与で取得した株式を売却した
- 未上場株式や親族間売買がある
- 外国株式、外国証券口座、外国税額控除が関係する
- 国民健康保険料や扶養判定への影響が気になる
- 過去の申告で配当の課税方式を誤った可能性がある
株式等の損失申告は、入力作業だけを見れば簡単そうに映ることがあります。しかし実際には、申告する範囲、課税方式の選択、繰越控除の継続、住民税への影響、資料の保存まで含めた判断が求められます。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、株式等の譲渡損失について、単に「申告すれば得か」という視点にとどまらず、口座区分、所得区分、配当等との通算、繰越控除、住民税・国保への影響、過年度申告との整合性まで確認したうえで整理いたします。
株式等の損失を申告すべきか、配当等と通算すべきか、翌年以降に繰り越すべきか。迷っていらっしゃる方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。将来の申告にもつながる数字として、後からきちんと説明できる形に整えてまいります。
主な出典・参考情報
出典:国税庁|No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
出典:国税庁|No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い
出典:国税庁|No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
出典:国税庁|No.1476 特定口座制度
出典:国税庁|No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
出典:国税庁|No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度
出典:国税庁|No.1535 NISA制度
出典:国税庁|No.2250 損益通算
出典:国税庁|利子・配当 特定口座 譲渡損益
出典:国税庁|確定申告で申告しなかった上場株式等の利子及び配当を修正申告により申告することの可否
出典:さぬき市|上場株式等の配当等に係る課税方式の選択について
振り返り
| 項目 | 重要ポイント | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 上場株式等の譲渡損失 | 一定の配当等との通算、3年繰越が可能な場合あり | 確定申告と付表添付が必要 |
| 給与所得との通算 | 原則不可 | 株式損失で給与所得税を直接下げるものではない |
| 事業所得・不動産所得との通算 | 原則不可 | 他の所得の赤字を株式譲渡益から差し引くこともできない |
| 配当等との通算 | 申告分離課税を選択した配当等が対象 | 総合課税を選ぶと譲渡損失とは通算できない |
| 配当控除 | 総合課税で検討 | 譲渡損失との通算との比較が必要 |
| 繰越控除 | 翌年以後3年間 | 損失発生年から連続申告が必要 |
| 取引がない年 | 申告が必要な場合あり | 損失を翌年に繰り越すなら申告を続ける |
| NISA口座 | 損失はないものとみなされる | 通算・繰越は不可 |
| 特定口座 | 申告不要で済む場合あり | 口座間通算や繰越控除には申告が必要 |
| 一般口座 | 自分で損益計算が必要 | 取得費資料の不足に注意 |
| 上場株式等と一般株式等 | 原則として別区分 | 未上場株式の損失とは混同しない |
| 外国株式 | 円換算、外国税額、国外口座を確認 | 外国証券口座では申告不要を選べない場合がある |
| 住民税 | 所得税と課税方式が一致 | 令和6年度分以後、別々の課税方式選択は不可 |
| 国民健康保険料等 | 申告により影響する場合あり | 所得税の還付だけで判断しない |
| 申告方式の変更 | 後から変更できない場合あり | 申告前に配当の扱いを慎重に決める |
| 相談すべき場面 | 複数口座、過年度損失、外国株式、一般口座、扶養・国保影響 | 資料を揃えて早めに確認する |