予定納税・延納・振替納税・納税資金の準備|確定申告後に慌てないための資金管理

確定申告で納税額が出たとき、多くの方が最初にぶつかるのは「税額そのもの」ではありません。「その時点で、手元に現金が残っていない」という現実です。

売上も家賃収入もあった。不動産を売却して利益も出た。副業や事業の利益も増えている。それなのに、いざ申告の時期になると、口座残高が足りない――。

これは、決して珍しいことではありません。所得税は、収入が入ったその瞬間に課されるわけではなく、翌年の確定申告で税額が確定します。しかも、その後には住民税、個人事業税、国民健康保険料、消費税、予定納税といった負担が、時間差で次々と姿を現します。

だからこそ、個人の確定申告では「いくら税金を減らせるか」だけを考えていては足りません。「いつ、どの税金を、どの資金から納めるか」まで整理して、はじめて実務が完結します。特に、個人事業・不動産収入・資産売却・金融所得・副業収入がある方は、申告書を提出して一区切り、とはいきません。納税資金の準備までを見通してこそ、申告実務は本当の意味で終わるのです。

目次

まず押さえておきたい全体像

確定申告後の納税管理は、次の4つを分けて考えると整理しやすくなります。

論点何を確認するか実務上の注意点
納付方法どの方法で納めるか振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード、スマホアプリ、コンビニ、現金納付など
納付時期いつ資金が必要か所得税の納期限、振替日、延納期限、予定納税、消費税、住民税、事業税、国保の時期を分ける
予定納税翌年分の所得税を前払いする必要があるか前年の税額を基に通知されるため、資金繰りに影響しやすい
納税資金税金用の現金をどう確保するか利益と現金残高は一致しない。借入返済、生活費、設備投資を差し引く前に税金分を分ける

納税資金の問題は、「納付書をどこで払うか」という手続の話にとどまりません。むしろ本質は、所得が発生した時点から、税金として残しておくべき資金をどう管理するかという、経営判断であり家計管理の問題だと考えています。

申告と納付は、別の手続です

まず前提として、確定申告書を提出しただけでは、納税は完了しません。

申告書を提出した後、税務署から納付書が送られてきたり、納税通知書のようなお知らせが届いたりすることは、原則としてありません。納付は、あくまで納税者自身が選んだ方法で、期限までに行う必要があります。出典:国税庁|税金の納付

実務の現場では、この点についてよくある誤解があります。

誤解実際の取扱い
申告書を出せば税務署から納付書が届く原則として自分で納付手続を行う
e-Taxで申告すれば自動で引き落とされる振替納税やダイレクト納付等の手続をしていなければ自動納付にはならない
振替納税を申し込めばすべての税金が引き落とされる振替納税は対象税目が限定される
振替日に残高不足でも、すぐ入金すれば問題ない引落しできないと、法定納期限の翌日から延滞税の問題が出る
納付が難しければ、後で分割相談すればよい期限前から延納・猶予・資金繰りを検討する方が安全

確定申告のご相談では、所得区分や経費性だけでなく、「いつ払うのか」「口座に残高はあるのか」「翌年の予定納税は出そうか」まで確認しておく。これが後々の安心につながります。

所得税等の主な納付方法

所得税等の納付方法には、いくつもの選択肢が用意されています。振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング等、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付、現金納付といった方法が案内されています。出典:国税庁|税金の納付

納付方法概要向いている場面注意点
振替納税指定口座から振替日に自動引落し毎年確定申告をする個人事前手続が必要。残高不足に注意
ダイレクト納付e-Taxを利用して届出口座から納付e-Taxで継続管理する事業者利用届出後、利用可能まで時間がかかる場合がある
インターネットバンキング等ネットバンキングやATMで納付期限直前の納付、随時納付納付情報の作成・入力ミスに注意
クレジットカード納付専用サイトでカード決済一時的に口座資金を温存したい場合決済手数料がかかる。納付可能額にも制限がある
スマホアプリ納付スマホ決済アプリで納付少額納付納付税額30万円以下が対象
コンビニ納付QRコード等でコンビニ納付少額かつ現金で納付したい場合納付税額30万円以下が対象
現金納付金融機関または税務署窓口で納付紙の納付書で管理したい場合窓口の営業時間・納付書の準備が必要

クレジットカード納付には、納付税額に応じた決済手数料がかかります。納付できる金額も、1,000万円未満かつカードの決済可能額以下という制限があります。また、スマホアプリ納付とコンビニ納付は、いずれも納付税額30万円以下の方が利用できる手続です。出典:国税庁|税金の納付

納付方法を選ぶ際は、「手数料」「口座残高」「納付完了の確認方法」「領収証書の有無」「納期限までに確実に間に合うか」を見比べて判断します。

振替納税の基本

振替納税とは、納税者本人名義の預貯金口座から、国税を口座引落しで納める手続です。利用するには、e-Taxで依頼書を提出するか、税務署または金融機関へ専用の依頼書を書面で提出しておく必要があります。出典:国税庁|申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付

令和7年分の確定申告について見てみると、所得税等の振替日は令和8年4月23日、個人事業者の消費税及び地方消費税の振替日は令和8年4月30日とされています。出典:国税庁|税金の納付

振替納税の利点は、法定納期限よりも後の日に引落しが行われる点にあります。その分、資金を準備する時間を確保しやすくなります。ただし、見落としてはならない注意点もあります。

振替納税で注意すべきこと

注意点内容
事前手続が必要納期限までに依頼書を提出しておく必要がある
税目ごとの確認が必要所得税等の手続をしていても、消費税等について別途確認が必要
転居・納税地変更に注意所轄税務署が変わる場合、原則として再手続が必要
残高不足に注意引落不能の場合、法定納期限の翌日から延滞税の対象となる
領収証書は出ない納付確認は通帳、ネットバンキング、納税証明等で行う
贈与税・源泉所得税などは対象外別の納付方法を検討する

とりわけ気をつけたいのが、振替日に残高が不足していた場合です。引落しができなかったときは、本税に加えて、所得税等であれば法定納期限の翌日から完納の日までの延滞税を納める必要があります。出典:国税庁|税金の納付

つまり、「振替日までに残高があればよい」という発想ではなく、「延滞税は法定納期限を起点に計算され得る」と理解しておくことが肝心です。

延納は「所得税等を2回に分けて納める制度」

所得税等の確定申告で、一括での納付が難しいときには、延納制度の利用を検討することがあります。

所得税等の延納とは、納期限まで(振替納税の場合は振替日まで)に、納めるべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付を5月31日まで、その日が土日祝日にあたる場合は翌営業日まで延ばせる制度です。延納している期間中は、利子税がかかります。出典:国税庁|税金の納付

具体的には、延納届出額、すなわち確定申告により納めるべき所得税等の2分の1以下の額を記載した申告書を提出し、納めるべき所得税等の2分の1以上を納期限までに納付する。これによって、残額について延納が認められる仕組みです。出典:国税庁|所得税及び復興特別所得税の申告と納付

延納の実務ポイント

項目内容
対象所得税等の確定申告により納付する税額
要件納付税額の2分の1以上を期限までに納付
延納できる額原則として納付税額の2分の1以下
手続確定申告書に延納届出額を記載
延納期限原則5月31日。休日の場合は翌営業日
コスト延納期間中は利子税がかかる
判断軸一時的な資金繰り調整には有効だが、納税資金不足の根本解決ではない

なお、令和8年1月1日から令和8年12月31日までの利子税特例基準割合は、1.3%とされています。出典:国税庁|延滞税の割合

延納は、資金繰りを調整する手段として有効に働く場面があります。ただし、無利息ではありません。そして、延納を使ったからといって税額そのものが減るわけでもありません。あくまで、納付の時期を後ろにずらす制度だと理解しておいてください。

予定納税とは何か

予定納税とは、前年分の所得金額や税額などを基に計算した予定納税基準額が15万円以上となる方について、その年の所得税及び復興特別所得税の一部をあらかじめ納めておく制度です。翌年の確定申告では、申告書で計算した税額から予定納税額を差し引き、過不足を精算します。出典:国税庁|No.2040 予定納税

ここで注意したいのは、予定納税は「任意の前払い」ではないということです。対象となった場合は、税務署から通知された金額を、決められた時期に納める必要があります。

予定納税基準額は、原則として、その年の5月15日現在で確定している前年分の申告納税額を基に計算されます。ただし、前年分に山林所得、退職所得等の分離課税の所得、譲渡所得、一時所得、雑所得といった一定の除外所得が含まれる場合や、外国税額控除・災害減免法の適用がある場合には、一定の調整が加えられます。出典:国税庁|No.2040 予定納税

予定納税の時期と金額

予定納税額は、原則として予定納税基準額の3分の1ずつを、第1期分と第2期分に分けて納めます。第1期分の納期は7月1日から7月31日まで、第2期分は11月1日から11月30日までです。出典:国税庁|No.2040 予定納税

区分一般的な納期内容
第1期分7月1日から7月31日まで予定納税基準額の3分の1
第2期分11月1日から11月30日まで予定納税基準額の3分の1
確定申告翌年3月15日頃年間税額から予定納税額を控除して精算

令和8年分については、予定納税第1期の納期限・振替日が令和8年7月31日、第2期が令和8年11月30日とされています。出典:国税庁|主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日

もし予定納税の納付が遅れたり、振替納税を利用していて残高不足などで引き落とされなかったりすると、それぞれの期限の翌日から納付日まで延滞税がかかります。出典:国税庁|No.2040 予定納税

予定納税が資金繰りに与える影響

予定納税をめぐってよくあるのが、「前年は利益が出たけれど、今年は資金繰りが厳しい」というケースです。

たとえば、前年に次のような事情があった方は、翌年の予定納税に注意が必要です。

前年の状況翌年の注意点
個人事業の利益が大きく増えた翌年7月・11月に予定納税が出る可能性
不動産所得が黒字化した家賃収入の入金時期と納税時期がずれる
副業収入が拡大した給与からの源泉徴収だけでは足りない可能性
株式・不動産などの売却益があった確定申告で大きな納税が発生し得る
経費を抑えて利益が増えた現金が残っていなくても税額は増える
消費税の課税事業者になった所得税とは別に消費税納付資金が必要

予定納税は、税務署からの通知が届いて初めて慌てるようなものではありません。前年の確定申告で納税額が大きくなった段階で、翌年7月・11月に控える支出として、あらかじめ織り込んでおくべきものです。

なお、令和8年度税制改正における基礎控除の見直しについては、予定納税額の計算上は考慮されません。最終的には確定申告の際に、年間の税額で精算されることになります。出典:国税庁|No.2040 予定納税

予定納税の減額申請を検討すべき場面

予定納税は前年の実績を基に計算されるため、今年の所得が大きく下がる見込みの場合などには、予定納税額の減額申請を検討できます。

減額申請の対象となる事情としては、廃業・休業・失業、業況不振により本年分の所得が前年分より明らかに少なくなる見込みの場合、災害・盗難・横領による事業用資産等の損害、所得控除・税額控除の増加などが挙げられています。出典:国税庁|所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

申請の時期にも決まりがあります。第1期分及び第2期分の減額申請は、その年の7月1日から7月15日まで。第2期分のみの減額申請は、その年の11月1日から11月15日までに提出します。いずれも、期限が土日祝日にあたる場合は、その翌日が期限となります。出典:国税庁|所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

減額申請で整理すべき資料

事情整理すべき資料
売上減少月別売上表、請求書、入金明細、前年同月比較
休業・廃業廃業届、休業状況、契約終了資料
失業離職票、源泉徴収票、雇用契約終了資料
経費増加支払明細、契約書、領収書、設備投資資料
所得控除増加医療費明細、扶養関係資料、保険料控除証明書、寄附金受領証
災害・盗難り災証明書、被害明細、保険金資料、修繕見積書
不動産収入減少賃貸借契約終了通知、空室状況、家賃入金明細
事業縮小受注減少資料、主要取引先との契約変更資料

「資金が足りないから減額してほしい」という説明だけでは、残念ながら十分とは言えません。減額申請では、今年の所得や税額が前年より下がることを、資料と数字で具体的に示していく必要があります。

住民税・個人事業税・国保は、所得税の後にやってくる

確定申告で所得税を納めれば、それで一件落着――とはいきません。

所得税の申告内容は、住民税、個人事業税、国民健康保険料などにも波及していきます。しかも、これらは所得税とは別の時期に通知・納付が行われます。申告の時点で資金を使い切ってしまうと、6月以降の資金繰りが一気に苦しくなる。ここに落とし穴があります。

住民税

個人住民税は、前年の所得に基づいて翌年度に課税されます。普通徴収の場合は、市区町村から届く納税通知書により、年4回に分けて納めるのが一般的です。給与所得者については6月から翌年5月まで毎月の給与から徴収され、それ以外の方は区市町村から送られる納税通知書で年4回に分けて納めることになります。出典:東京都主税局|個人住民税と特別徴収について

自営業の方や、副業のある給与所得者など、普通徴収になる部分がある方は、6月以降の納付を資金計画にきちんと入れておく必要があります。

個人事業税

個人事業税は、法定業種に該当する事業を営む個人に課される地方税です。原則として、8月・11月の年2回に分けて納めます。出典:東京都主税局|個人事業税

個人事業税は、所得税の確定申告を済ませた後に通知が来るため、申告の時点ではつい忘れられがちです。事業所得が増えている方は、所得税・住民税・国保だけでなく、この個人事業税まで含めて見込んでおきましょう。

国民健康保険料

国民健康保険料は、自治体ごとの制度によって通知や納付の時期が異なります。たとえば杉並区では、前年の所得状況が判明する6月に年度単位で保険料を計算し、4月から翌年3月までの12か月分を、6月期から翌年3月期までの10回に分けて支払う仕組みになっています。出典:杉並区|国民健康保険料の納め方

国保は「税金」ではありませんが、所得に応じて大きな資金流出になることがあります。所得税の還付や納付だけを見て判断していると、6月以降の国保負担をうっかり見落としてしまいます。

消費税の中間納付も忘れずに

個人事業者で消費税の課税事業者になっている場合は、所得税とは別に、消費税及び地方消費税の確定申告・納付が必要です。場合によっては、中間申告・中間納付も発生します。

令和8年分の個人事業者の消費税について見ると、中間申告が年1回必要な方の法定納期限は令和8年8月31日、振替日は令和8年9月29日です。中間申告が年3回・年11回必要な場合には、別途、複数回の納期限・振替日が設けられています。出典:国税庁|中間申告分の納期限及び振替日について

ここで押さえておきたいのは、消費税と所得税とでは、計算の構造がまったく異なるという点です。所得税で赤字に近い状態であっても、消費税の納付が発生することがあります。消費税は、売上に係る消費税から仕入や経費に係る消費税を差し引いて納付税額を計算する仕組みであり、所得税の利益計算とは一致しません。売上時に預かった消費税から、仕入時に預けた消費税を控除して納める。これが消費税の基本的な考え方です。

個人事業者や不動産オーナーの方は、所得税の資金だけでなく、消費税の資金も別枠で管理しておく必要があります。

納税カレンダーをつくる

納税資金の準備は、「申告時期」だけを見て考えるのではなく、「年間カレンダー」で捉えることが大切です。

たとえば、個人事業者・不動産所得者・副業収入がある方であれば、1年を通して次のような資金流出が想定されます。

時期主な納税・負担
1月源泉所得税の納期特例、法定調書、給与支払報告書、償却資産申告
2月〜3月所得税・贈与税の確定申告、個人消費税の申告準備
3月所得税等の納期限
4月所得税等の振替納税、消費税等の振替納税
5月〜6月所得税延納分、住民税通知、国保通知
6月〜翌年住民税・国保の分割納付
7月所得税予定納税第1期、源泉所得税の納期特例
8月個人事業税第1期、消費税中間納付が出る場合あり
10月〜11月住民税、個人事業税第2期、所得税予定納税第2期
12月固定資産税等の納期がある自治体もある

実務では、源泉所得税、住民税、消費税の予定申告、個人所得税の確定申告、償却資産税の申告など、税目ごとの期限が年度の中で幾重にも重なります。月次管理の際には、申告・納税カレンダーを作り、資料の回収や資金準備の時期を前倒ししておくことが欠かせません。

このカレンダーを持たないまま進めてしまうと、3月に所得税を払った後、6月に住民税・国保、7月に予定納税、8月に事業税・消費税中間納付――という形で、資金不足が後から次々と表面化してしまいます。

納税資金をどう準備するか

納税資金の準備は、利益が確定してから動き始めたのでは、間に合わないことがあります。特に個人事業や不動産所得では、入金の時期と、税金を支出する時期との間に、どうしても時間差が生じるからです。

1. 税金用の口座を分ける

事業用口座・生活費口座・納税資金口座を分けておくと、資金の管理がぐっとしやすくなります。

売上や家賃が入ったら、そのつど一定割合を納税資金口座へ移していく。この割合は、所得水準、消費税の課税事業者かどうか、住民税・国保の負担、借入返済の有無などによって変わってきます。

たとえば、利益率の高い業務委託収入の場合、入金額の20%〜30%程度を、税金・社会保険用として残しておく必要があることもあります。不動産所得であれば、固定資産税、修繕、借入返済、空室リスクまで見込んで組み立てます。

2. 利益と現金の違いを把握する

所得税は、基本的に所得金額を基に計算されます。しかし、手元にある現金は、所得金額とは一致しません。

項目所得計算への影響現金への影響
減価償却費必要経費になる当年の現金支出ではない場合が多い
借入金元本返済原則として必要経費ではない現金は出ていく
借入金利子必要経費になり得る現金が出ていく
売掛金・未収家賃収入計上される場合がある入金はまだ
設備投資一括経費にならない場合がある現金は先に出る
家事関連費必要部分のみ経費家計支出と混在しやすい

「利益は出ているのに、現金がない」――この状態は、不動産所得や設備投資の多い事業で、しばしば起こります。不動産では、固定資産税・都市計画税、経費、借入金返済、空室、修繕などが重なり、収入は多いように見えても資金繰りが厳しくなることがあるのです。

3. 申告前に概算税額を出す

確定申告の時期になって初めて税額を計算すると、納税資金の準備が間に合わないことがあります。

そうならないために、少なくとも次のタイミングで概算税額を確認しておきます。

時期確認内容
6月前年の申告結果を基に、今年の予定納税・住民税・国保を確認
9月上半期の利益、消費税、納税資金を確認
11月年末までの利益見込み、予定納税第2期、節税ではなく資金準備を確認
1月年間所得、控除、納税額の概算を確認
申告前所得税、消費税、住民税・国保見込みまで確認

特に、年末に大きな売上や資産売却がある場合は要注意です。申告期限の直前ではなく、取引の前、あるいは入金の直後に、納税資金を分けておくことをおすすめします。

4. 資産売却時は、売却代金を使い切らない

不動産や株式を売却すると、まとまった売却代金が入金されます。その勢いで、つい借入返済、次の投資、生活費、贈与、リフォームなどに充ててしまうことがあります。

しかし、譲渡所得が発生する場合、翌年3月には所得税、6月以降には住民税が待っています。不動産の譲渡では、取得費や譲渡費用、特例の有無によって税額が大きく変わるため、売却代金のうち税金相当額を、あらかじめ確保しておく必要があります。

資産売却は、契約書、取得資料、譲渡費用、特例、時価などの整理が必要であり、単なる入金管理では終わりません。資産の取得・保有・譲渡それぞれの場面で、所得税、住民税、消費税、固定資産税、不動産取得税、登録免許税など、複数の税目が関わってきます。

納期限までに納付が難しい場合

納期限までの納付が難しいときでも、何もしないまま放置するのは避けてください。

国税を一時に納めることができない方のためには、猶予制度が用意されています。一定の条件を満たして猶予が認められれば、延滞税が軽減または免除されることもあります。出典:国税庁|税金の納付

また、換価の猶予は、国税を一時に納めることで事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがある場合に、申請に基づいて受けられる手続です。提出時期は、納めるべき国税の納期限から6か月以内とされています。出典:国税庁|換価の猶予の申請手続

ただし、猶予は「資金繰りが苦しいから自動的に認められる」というものではありません。納付が困難な事情、収支の状況、財産の状況、分割納付の計画などを、きちんと整理して示す必要があります。

納付困難時に整理すべき資料

資料内容
直近の預金残高すべての口座残高
売掛金・未収入金入金予定日、金額、回収可能性
買掛金・未払金支払予定、優先順位
借入返済予定表毎月返済額、残高
生活費家計支出、扶養家族の状況
事業資金繰り表今後3か月〜12か月の収支
納付可能額いつ、いくら納付できるか
納付困難の理由災害、病気、休廃業、売上減少、取引先倒産等

税務署へ相談する場合でも、感情的に「払えません」と伝えるだけでは足りません。数字で説明できる状態を整えておくこと。これが、話を前に進めるための第一歩になります。

よくある失敗例

1. 所得税だけを見て、住民税・国保を忘れる

確定申告で所得税を納めた後、6月に住民税と国保の通知が届いて驚く。これはよくあるケースです。特に、前年まで給与所得が中心だった方が、独立や副業拡大、不動産売却をした場合、翌年度の負担は大きく変わります。

2. 予定納税の通知を、単なる案内だと思い込む

予定納税は、対象者に通知される制度であって、任意の納付ではありません。今年の所得が大きく下がる見込みがあるなら、期限内に減額申請を検討しましょう。

3. 振替納税の残高確認を忘れる

振替納税は便利な仕組みですが、残高が不足すると、法定納期限の翌日から延滞税の問題が生じます。振替日の前日には、他の引落しも含めて残高を確認しておく必要があります。

4. 消費税を「利益が出たときの税金」と誤解する

消費税は、所得税とは性質が異なります。利益が少なくても、売上規模や課税取引の状況によっては、消費税の納付が発生します。インボイス登録をした個人事業者の方は、特に、納税資金の別管理が欠かせません。

5. 借入返済後の残高で税金を払おうとする

借入金の元本返済は、原則として所得税の必要経費ではありません。返済後に資金が残らなかったとしても、所得税は発生することがあります。

6. 延納を「無料の分割払い」と考える

延納は資金繰りの調整に使える制度ですが、利子税がかかります。しかも、延納分の期限を過ぎれば、今度は延滞税の問題になります。

7. 税額が確定してから、資金を探し始める

資金繰りに余裕がない場合、申告期限の直前に税額が判明しても、打てる手は限られてしまいます。年の途中から概算税額を把握し、納税資金を分けておくことが何より重要です。

納税資金を整えるための実務チェックリスト

チェック項目確認内容
前年の確定申告書を確認したか申告納税額、予定納税基準額、所得区分
今年の利益見込みを作成したか事業所得、不動産所得、副業、譲渡所得
予定納税通知を確認したか第1期・第2期の金額と納期限
減額申請の必要性を検討したか業況不振、廃業、控除増加、災害等
振替納税の手続状況を確認したか所得税・消費税それぞれの登録状況
振替日の残高を確保したか他の引落しも含めた残高確認
延納の利用を検討したか2分の1以上の納付、延納届出額、利子税
消費税の納付資金を別に確保したか確定申告分、中間申告分
住民税・国保を見込んだか6月以降の負担
個人事業税を見込んだか法定業種、事業主控除後の所得
固定資産税・償却資産を見込んだか不動産、事業用資産
資産売却代金を使い切っていないか所得税・住民税相当額を別管理
納付困難時の資料を整理したか資金繰り表、預金残高、納付計画

専門家に相談すべき場面

次のような場合は、申告期限の直前ではなく、できるだけ早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。

  • 前年より大きく利益が増え、予定納税が出そう
  • 今年は売上が減っており、予定納税の減額申請を検討したい
  • 不動産所得はあるが、借入返済と税金の資金繰りが苦しい
  • 資産売却により、大きな納税が発生しそう
  • 副業収入が増え、給与からの源泉徴収だけでは足りない
  • インボイス登録後、消費税の納税資金をどう準備すべきか分からない
  • 住民税・国保・個人事業税まで含めた年間負担を把握したい
  • 振替納税、延納、猶予制度のどれを使うべきか判断できない
  • 納期限までに納付できない可能性がある
  • 税務署や金融機関に説明できる資金繰り資料を作りたい

納税資金のご相談は、「税金を払いたくない」という相談ではありません。むしろ、正しく申告し、必要な税金を期限内にきちんと納めるために、早い段階で数字と資金の流れを整えていく相談です。

まとめ

確定申告は、申告書を提出すれば終わり、というものではありません。

所得税の納付、振替納税、延納、予定納税、住民税、個人事業税、国民健康保険料、消費税、固定資産税――個人の税務は、1年を通じて資金に影響を及ぼします。

特に、個人事業・不動産収入・資産売却・副業収入がある方は、次の順番で整理していくことが大切です。

  1. 今年の所得区分と所得金額を見込む
  2. 所得税・住民税・国保・事業税・消費税の概算を把握する
  3. 予定納税が出るか確認する
  4. 振替納税・延納・納付方法を選ぶ
  5. 納税資金を別口座で確保する
  6. 納付が難しい場合は早めに猶予制度を検討する
  7. 翌年以降の資金繰りまで見据える

税額を下げることばかりに気を取られていると、納税時期の資金不足を見落としてしまいます。逆に、納税資金まで含めて整えておけば、確定申告は年に一度の作業にとどまらず、事業・不動産・資産形成を管理していくための、確かな判断基盤になります。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、個人事業、不動産所得、資産売却、副業収入のある方について、申告書の作成だけでなく、予定納税、消費税、住民税・国保、納税資金、そして翌年以降の資金繰りまでを含めて整理いたします。

「今年の納税額がどれくらいになるか不安」「予定納税の通知が来たが、資金繰りが厳しい」「不動産収入や事業収入はあるのに、現金が残らない」――そう感じている方は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。納期限が迫ってからでは選べる手段が限られてしまいます。だからこそ、早い段階で年間の納税カレンダーと資金計画を整えておくことが大切です。

主な出典・参考情報

振り返り

項目重要ポイント実務上の確認事項
確定申告と納付申告書提出だけでは納税は完了しない納付方法を自分で選び、期限までに納付する
振替納税所得税等・個人事業者の消費税等で利用可能事前手続、税目ごとの登録、納税地変更、残高不足に注意
延納所得税等を2回に分けて納める制度納付税額の2分の1以上を期限までに納め、延納届出額を申告書に記載
利子税延納期間中に発生年ごとの割合を確認する
予定納税前年の所得・税額を基に翌年7月・11月に納付予定納税基準額15万円以上で対象
予定納税の減額申請今年の所得が大きく下がる場合などに検討7月申請・11月申請の期限と資料を確認
住民税所得税申告後、6月以降に通知・納付普通徴収か特別徴収かを確認
個人事業税法定業種の個人事業者に課税される場合あり原則8月・11月の納付を見込む
国民健康保険所得に応じて翌年度の保険料が決まる6月以降の通知・分割納付を見込む
消費税所得税とは別に資金管理が必要確定申告分・中間納付分を確認
納税カレンダー年間を通じて税金が発生する所得税、住民税、国保、事業税、消費税を月別に整理
納税資金口座税金用の現金を分ける売上・家賃・売却代金から一定額を確保
利益と現金所得金額と手元資金は一致しない借入元本返済、設備投資、未収入金に注意
納付困難時放置せず早めに相談する猶予制度、資金繰り表、納付計画を準備
専門家相談税額計算だけでなく資金繰りまで整理申告前から予定納税・住民税・国保・消費税を見込む
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