納税猶予を使っても資金繰り検討が必要な理由|事業承継税制と会社財務の注意点

事業承継税制を検討していると、「納税猶予さえ使えば、納税資金の問題は片づく」と考えたくなる場面があります。

たしかに、法人版事業承継税制の特例措置には大きな効果があります。一定の要件を満たせば、非上場株式等にかかる贈与税・相続税について、まとまった額の納税が猶予されるからです。特例措置では対象株式数の上限が撤廃され、猶予割合も100%まで拡大されました。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

ただ、ここで一つ立ち止まっておきたいことがあります。事業承継税制は「納税が一切不要になる制度」ではありません。あくまで「一定の税額について納税を猶予し、一定の事由が生じたときに免除される制度」です。

この点は国税庁の整理とも重なります。円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等について、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡などによって猶予税額の納付が免除される——そういう仕組みとして位置づけられています。

出典:国税庁|No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)
出典:国税庁|No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)

ですから、納税猶予を使う場合でも、資金繰りの検討が不要になることはありません。むしろ猶予を使うからこそ、どの税額が猶予され、どの税額が残り、どのタイミングで資金が必要になり得るのか——そこを適用前に整理しておくことが欠かせないのです。

目次

納税猶予は「税額を消す制度」ではなく「支払時期を止める制度」

事業承継税制を理解するうえで、まず押さえておきたいのは、「猶予」と「免除」は別物だということです。

納税猶予は、一定の要件を満たしている間、納税を待ってもらう制度です。一方の免除は、一定の免除事由が生じたときに、猶予されていた税額の納付義務そのものがなくなる制度です。

つまり制度を適用した直後の段階では、猶予税額は完全に消えているわけではありません。後継者が対象株式を保有し続け、代表者要件や継続届出といった要件を満たし続けることを前提に、納付が先送りされている——そういう状態にあります。

そのため、適用後に要件を満たせなくなれば、猶予されていた税額について猶予期限が確定し、納付が必要になる可能性があります。事業承継税制は非課税制度ではなく、所定の要件を満たさなくなったときには猶予税額と利子税の納付が問題になる制度。実務では、そう捉えておくことが大切です。

資金繰りを考えるときも、「制度を使えば納税はない」という見方ではなく、次の四つに分けて整理しておくとよいでしょう。

  1. 適用時点で、実際に納付が必要な税額
  2. 猶予されるものの、将来の取消しがあれば納付が必要になり得る税額
  3. 税金以外に、承継の時点で必要となる資金
  4. 会社から資金を出す場合に、会社財務へ与える影響

この四つを切り分けて見ておかないと、納税猶予の効果を実際より大きく見積もってしまうことになります。

資金繰り検討が必要となる理由1|相続税の全体が猶予されるわけではない

法人版事業承継税制で猶予の対象になるのは、あくまで非上場株式等にかかる贈与税・相続税です。相続税の全体が一括で猶予されるわけではありません。

相続の場面では、自社株のほかにも、預貯金、不動産、生命保険金、死亡退職金、貸付金など、さまざまな財産が存在します。事業用資産の承継であっても、制度の対象となる資産と対象外の資産を区別する必要があります。

そのため、後継者が自社株について納税猶予を受けたとしても、次のような税額や資金需要は残り得ます。

  • 対象株式以外の財産にかかる相続税
  • 後継者以外の相続人が取得する財産にかかる相続税
  • 遺産分割や代償分割に伴う代償金
  • 遺留分侵害額請求への対応資金
  • 後継者が個人で負担する、相続税・贈与税以外の費用
  • 会社の借入や保証の引継ぎに伴う資金需要

特に注意したいのは、自社株評価額が高い会社です。相続財産の多くを自社株が占める一方で、換金性の高い個人財産が少ない、というケースが少なくありません。

こうした場合、納税猶予を使わなければ納税資金が不足しやすくなります。ただ、納税猶予を使ったとしても、ほかの財産にかかる相続税や代償金の問題までは解消されない——そこが見落とされがちなところです。

自社株承継と相続税の問題は、一見するとオーナー個人の問題に見えます。けれども実際には、後継者の資金繰りや会社からの資金流出につながっていきます。つまり、会社の経営問題として捉えておくべきテーマなのです。

資金繰り検討が必要となる理由2|担保の提供が必要になる

納税猶予を受けるうえでは、担保の提供も重要な論点になります。

非上場株式等にかかる相続税の納税猶予の適用を受けるには、申告期限までに、猶予される相続税額に相当する担保を提供しなければなりません。担保として認められるものには、猶予の対象となる認定承継会社の対象非上場株式等のほか、不動産、国債・地方債、税務署長が確実と認める有価証券、保証人の保証などがあります。

出典:国税庁|非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予(担保の提供に関するQ&A)
出典:国税庁|(問1)非上場株式等についての相続税の納税猶予制度を利用するに当たって、担保を提供する必要があると聞きましたが、どのような財産を担保として提供できるのでしょうか。

ここで見落としてはならないのは、担保提供が単なる形式的な添付書類ではない、という点です。

たとえば対象株式を担保に入れる場合、その株式に譲渡制限があるか、全部を担保提供できるか、株券発行会社か不発行会社か、株主名簿や定款が整っているか——こうした確認が必要になります。不動産を担保にするのであれば、評価、権利関係、抵当権、共有関係などもあわせて見ておかなければなりません。

担保提供の準備が不十分なままだと、申告期限の前に、想定していなかった手続負担が一気に表面化します。相続が起きてから慌てて対応すると、相続税申告、遺産分割協議、認定申請、金融機関対応が同時並行で進むことになり、後継者の負担はどうしても重くなります。

資金繰りの検討とは、現金残高だけを眺めることではありません。どの財産を担保に使えるのか、その担保を提供しても会社経営や金融機関対応に支障が出ないのか。そこまで含めて見ておくことが、実務上の「資金繰り検討」だと考えています。

資金繰り検討が必要となる理由3|取消時には猶予税額と利子税が問題になる

納税猶予を使えば、適用時点の納税負担は大きく軽くなります。ただし、適用後に要件を満たせなくなれば、猶予税額の全部または一部について、納税が必要になる可能性があります。

主な取消リスクとしては、後継者の代表者退任、対象株式の譲渡、議決権要件の喪失、資産保有型会社・資産運用型会社への該当、報告・届出の不備、解散、一定の組織再編などが挙げられます。これらの取消事由は、日々の経営判断とも密接に関わってきます。

たとえば、承継後に会社を売却したい、株式を一部移したい、後継者が代表を退きたい、グループ再編をしたい、事業の一部を廃止したい——こうした場面では、いずれも納税猶予への影響を確認しておく必要があります。

個人版の事業承継税制でも考え方は共通します。免除されるまでの間に特例事業用資産を事業の用に供さなくなった場合など、一定のケースでは納税猶予が打ち切られ、その税額と利子税を納付しなければなりません。法人版・個人版のどちらであっても、猶予が将来の経営判断に影響する制度である点は変わらないのです。

出典:国税庁|No.4153 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除(個人版事業承継税制)

そして、取消時の資金繰りは、適用時点よりも難しくなることがあります。取消しが問題になる局面では、会社の業績悪化、後継者交代、株式譲渡、廃業、再編、資産売却など、会社側にも資金需要や信用不安が生じていることが多いからです。

適用時点で「将来取り消されたら、そのとき考えればよい」としてしまうと、後継者が最も資金に余裕のないタイミングで、猶予税額と利子税の納付を迫られる——そんな事態にもなりかねません。

資金繰り検討が必要となる理由4|後継者個人の資金と会社資金は別である

自社株の相続税・贈与税は、原則として後継者個人の税金です。会社の税金ではありません。

とはいえ、後継者個人に納税資金がない場合、実務上はどうしても会社の資金に目が向きやすくなります。役員報酬、役員退職金、死亡退職金、配当、会社からの貸付、自己株式の取得——こうした手段です。

ここで押さえておきたいのは、会社の資金を後継者個人の納税資金に充てるには、それぞれ別の税務・会社法・財務上の論点が伴うということです。

  • 役員報酬を増やせば、後継者個人には所得税・住民税・社会保険料の負担が、会社には人件費の負担が生じます。
  • 退職金を支給すれば、会社の損益や純資産に影響します。
  • 配当を行えば、分配可能額、源泉税、株主間の公平性を検討する必要があります。
  • 会社貸付を行えば、返済可能性、利息、役員貸付金としての金融機関評価への影響が問題になります。
  • 自己株式取得を行えば、財源規制、みなし配当、株価、既存株主への影響を確認する必要があります。

つまり、「会社にお金があるから納税資金は大丈夫」とは言い切れません。会社の資金は、運転資金、設備投資、借入返済、賞与、納税、取引先への支払いにも回さなければならないからです。後継者個人の納税資金を会社から出すのであれば、その支出が会社の資金繰りを圧迫しないかを、あわせて検討する必要があります。

実際、死亡退職金を納税資金に充てた結果、個人の相続税は払えたものの、会社の損益や純資産が悪化し、金融機関や取引先への説明に苦労した——そういう例も見られます。財務制限条項のある借入では、損益悪化や純資産の減少が、思いがけないリスクになることもあります。

資金繰り検討が必要となる理由5|後継者は税金以外の資金も必要になる

事業承継で必要になる資金は、税金だけではありません。

  • 相続で分散した自社株や事業用資産を、後継者が買い取る資金
  • 後継者以外の相続人に支払う代償金
  • 遺留分への対応資金
  • 先代経営者から引き継ぐ借入・保証に関する資金
  • 承継後の設備投資や運転資金
  • 金融機関や取引先の信用を維持するために必要な手元資金
  • 承継後の役員報酬が安定するまでの生活資金

経営承継円滑化法の枠組みでも、事業承継に伴う資金需要として、相続等で分散した自社株式や事業用資産の買取資金、相続・贈与による取得時の納税資金、代表者交代によって信用状態が悪化した場合の資金繰りなどが想定されています。中小企業庁も、事業承継時の支援策として、株式の買い取りや相続税の支払いなど、承継時に必要となる資金への融資・信用保証を案内しています。

出典:中小企業庁|事業承継の支援策

納税猶予は、あくまで税務上の支払時期を調整する制度です。後継者が会社を安定して引き継ぐための資金計画とは別に、承継後の経営資金まで見ておく必要があります。

事業承継税制を使う前に確認すべき資金繰りの順番

納税猶予を検討するときは、資金繰りを次の順番で整理していくと、判断がしやすくなります。

1. 自社株・事業用資産の評価額を把握する

最初に確認すべきは、承継の対象となる自社株や事業用資産の評価額です。

自社株評価額が分からなければ、相続税・贈与税の試算もできません。評価額が見えなければ、納税猶予を使った場合の効果も、使わなかった場合の負担も、比較のしようがないからです。

非上場株式の評価では、同族株主判定、会社規模、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式、特定評価会社への該当性などを確認します。決算書の純資産を見るだけでは、承継税務上の判断としては不十分です。

2. 猶予される税額と残る税額を分ける

次に、納税猶予の対象となる税額と、対象外として残る税額を分けます。

法人版の特例措置であっても、対象となるのは非上場株式等にかかる税額です。相続全体の税額、ほかの相続人の税額、対象外財産の税額、代償金、遺留分対応資金まで自動的に解決されるわけではありません。

このとき大切なのは、「納税猶予後の税額」だけを見るのではなく、「猶予がなかった場合の税額」も把握しておくことです。将来取消しがあったとき、どの程度の負担が戻ってくるのかを理解しておくためです。

3. 後継者個人で用意できる資金を確認する

後継者個人の預貯金、相続で取得する金融資産、生命保険金、死亡退職金、その他の収入見込みを確認します。

ここでは、相続税の納付だけでなく、生活資金、代償金、借入返済、会社への出資・貸付、承継後の役員報酬の変動まで見ておく必要があります。

特に、後継者が自社株を多く取得する一方で、現預金はあまり取得できない——そうした遺産分割になる場合には、税制を適用したあとも個人資金が不足しやすくなります。

4. 会社から資金を出す場合の方法と影響を整理する

後継者個人の資金だけでは足りない場合、会社からどう資金を出すかを検討します。

ただし、この検討は慎重に進める必要があります。会社から資金を出す方法には、税務・会社法・財務・金融機関対応の論点が、いずれもついて回るからです。

  • 役員退職金を使うのか
  • 死亡退職金を使うのか
  • 配当を行うのか
  • 自己株式取得を行うのか
  • 会社貸付を行うのか
  • 金融機関借入を使うのか

これらはそれぞれ、会社の損益、純資産、キャッシュフロー、税務申告、金融機関評価に影響します。資金繰り表だけでなく、損益計算書・貸借対照表・借入契約・金融機関への説明資料まで含めて確認しておきたいところです。

5. 取消時の資金負担を想定する

最後に、将来の取消時の資金を確認します。

適用の時点では、後継者も会社も「承継後も継続していく」という前提で考えることが多いはずです。けれども現実の経営では、業績悪化、後継者交代、事業売却、廃業、組織再編、資産売却などが起こり得ます。

特例措置では、将来の売却・廃業の際に株価が下落していた場合に備えて、一定の再計算・減免の仕組みも設けられています。売却・廃業時の株価をもとに納税額を再計算し、事業承継時の株価で計算された納税額との差額を減免する——そういう仕組みです。

出典:中小企業庁|法人版事業承継税制(特例措置)

とはいえ、これがあるからといって、取消時の資金検討が不要になるわけではありません。どの事由で、どの税額が、いつ納付になるのかは、個別に確認する必要があります。適用の時点で、出口の可能性まで含めて検討しておくべきだと考えています。

「納税猶予を使えば大丈夫」と判断してはいけない場面

次のような場合には、納税猶予を使うとしても、とりわけ慎重な資金繰り検討が欠かせません。

  • 自社株以外の相続財産が少ない
  • 後継者以外の相続人に渡す財産が不足している
  • 自社株評価額が高く、取消時の猶予税額が大きい
  • 会社の現預金に余裕がない
  • 借入金が多く、金融機関への説明が必要である
  • 役員退職金や死亡退職金を支給すると純資産が大きく減る
  • 後継者が個人保証を引き継ぐ可能性がある
  • 将来、M&A、組織再編、廃業、事業縮小の可能性がある
  • 株主構成が複雑で、ほかの株主からの買取資金が必要になる
  • 相続人間で代償金や遺留分への配慮が必要になる

こうした場面では、事業承継税制の適用可否だけを見ても判断できません。税務上は適用できても、資金繰りの面では無理がある、ということが起こり得ます。逆に、納税猶予を使わないほうが、将来の経営判断の自由度を保ちやすい場合もあります。

資金繰り検討では「個人」と「会社」を同時に見る

事業承継税制の資金繰り検討では、後継者個人の資金だけでなく、会社の財務も同時に見ておく必要があります。

後継者個人の視点では、相続税・贈与税、代償金、遺留分、株式買取資金、生活資金が問題になります。会社の視点では、運転資金、借入返済、役員退職金、自己株式取得、配当、設備投資、金融機関対応が問題になります。

この二つは、決して別々のものではありません。後継者個人の納税資金を会社が支えれば、会社の資金は減ります。会社の資金が減れば、後継者が承継後の経営で使える資金も減ります。金融機関の立場からすれば、承継そのものよりも、承継後に会社が安定して返済を続けられるかどうかが重要になります。

そのため、資金繰りの検討にあたっては、少なくとも次の資料をそろえておきたいところです。

  • 直近数期分の決算書・申告書
  • 直近の試算表
  • 借入金一覧表と返済予定表
  • 株主名簿
  • 自社株評価資料
  • 相続財産の概算一覧
  • 先代経営者の個人財産・債務の概要
  • 生命保険・死亡退職金・役員退職金規程
  • 定款、議事録、株式に関する資料
  • 金融機関との契約書、財務制限条項の有無
  • 承継後の事業計画・資金繰り見通し

数字を整理しないまま制度だけを検討すると、「税制は使えるが、後継者が資金面で苦しくなる」という判断ミスが起こりやすくなります。

納税猶予を使う場合の資金繰り判断の実務的な視点

納税猶予を使うかどうかは、単に税額が少なくなるかどうかではなく、次の問いに答えられるかどうかで判断すべきだと考えています。

  • 猶予される税額はいくらか
  • 猶予されない税額はいくらか
  • 相続税全体として、誰がいくら納付するのか
  • 後継者個人の納税資金はどこから出るのか
  • 会社から資金を出す場合、会社の財務にどの程度影響するのか
  • 担保として何を提供するのか
  • 取消時に、どの程度の税額が戻ってくる可能性があるのか
  • 取消時の納付資金を、どのように確保するのか
  • 代償金や遺留分対応資金は別途必要か
  • 金融機関に説明できる資料は整っているか
  • 後継者が承継後、経営に集中できる資金設計になっているか

これらの問いに答えられない段階では、制度適用の結論を急ぐべきではありません。

事業承継税制は、要件を満たすかどうかだけでなく、後継者が会社を継続できるかどうかまで見て判断する制度です。納税猶予で税負担を軽くできたとしても、そのために会社資金が過度に流出したり、将来の経営判断が縛られたりすれば、承継後の経営をかえって弱くしてしまう可能性があります。

専門家に相談すべきタイミング

事業承継税制の資金繰り検討は、相続が発生してからでは遅い、ということがあります。

相続が起きたあとは、遺産分割、相続税申告、認定申請、担保提供、金融機関対応が同時に進みます。自社株評価や担保資料の整備に時間がかかると、期限管理だけでも大きな負担になります。

できれば、次のような段階で一度整理しておきたいところです。

  • 後継者候補が見えてきた段階
  • 自社株評価額が高くなっていると感じた段階
  • 特例承継計画の提出を検討する段階
  • 先代経営者の退任・退職金支給を検討する段階
  • 株主構成や相続人間の財産配分に不安がある段階
  • 金融機関借入や個人保証の引継ぎが課題になっている段階
  • 将来の組織再編・売却・廃業の可能性も含めて考えたい段階

早い段階であれば、自社株評価、納税猶予の有無、退職金、生命保険、自己株式取得、遺言、代償金、金融機関対応を比較できます。相続が発生したあとよりも、選択肢を広く持つことができるのです。

まとめ|納税猶予は資金繰り検討の代わりにはならない

事業承継税制は、後継者への自社株・事業用資産の承継において、大きな効果を持つ制度です。ただ、納税猶予を使うことと、資金繰り問題が解決することは、決して同じではありません。

納税猶予を使っても、相続税全体のうち猶予されない部分は残ります。担保の提供も必要になります。取消時には猶予税額と利子税の納付が問題になります。後継者個人の資金と会社資金は別であり、会社から資金を出せば、会社財務や金融機関対応にも影響が及びます。

だからこそ、事業承継税制を検討する際は、税額だけでなく、後継者個人の資金、会社の財務安全性、金融機関への説明、将来の経営判断まで含めて整理しておく必要があるのです。

犬飼公認会計士・税理士事務所では、事業承継税制の適用可否だけでなく、自社株評価、納税猶予額、猶予対象外の税額、取消時リスク、会社財務への影響、金融機関への説明まで含めて、後から説明できる形で論点を整理することを大切にしています。

納税猶予を使うべきか、使わない選択肢も含めて比較したい——そうお考えの際は、犬飼公認会計士・税理士事務所HPのお問い合わせページからご相談ください。制度のメリットだけでなく、承継後に会社を守れるかという視点から、必要な検討事項を整理いたします。

振り返り|この記事で押さえるべき重要事項

論点押さえるべきポイント
納税猶予の性格税額が直ちに消える制度ではなく、一定要件のもとで納付が猶予される制度
相続税全体との関係自社株等にかかる税額は猶予されても、他の財産にかかる税額や代償金は残り得る
担保提供申告期限までに、猶予税額に相当する担保提供が必要となる
取消時資金代表退任、株式譲渡、届出漏れ、解散、再編等により猶予税額・利子税の納付が問題になる
後継者個人資金納税、代償金、遺留分対応、株式買取資金などを個人側で検討する必要がある
会社財務への影響退職金、配当、自己株式取得、会社貸付などは会社の損益・純資産・資金繰りに影響する
金融機関対応承継後の返済力、財務安全性、資金使途、事業計画を説明できる状態にしておく必要がある
実務上の判断軸「使えるか」だけでなく、「維持できるか」「取消時に払えるか」「会社を守れるか」で判断する
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