連結財務諸表は、親会社と子会社の財務諸表を単純に足し合わせたものではありません。
IFRS第10号は、連結財務諸表を、親会社と子会社の資産、負債、資本、収益、費用、キャッシュ・フローを、単一の経済的企業体のものとして表示する財務諸表と定義しています。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
この「単一の経済的企業体として表示する」という発想こそ、連結財務諸表を作成するうえでの出発点です。
親会社と子会社は、法的には別個の企業です。それでも、親会社が子会社を支配している場合には、グループ内の資産・負債・収益・費用・キャッシュ・フローを、外部の利用者に対して一つの報告単位としてまとめて示すことになります。
そのため、IFRS第10号の連結処理では、次の二つを同時に進める必要があります。
| 観点 | 実務上の意味 |
|---|---|
| グループ全体を一つの経済的企業体として表示する | 親会社と子会社の同種項目を合算し、外部に対する資産・負債・損益・キャッシュ・フローを表示する |
| グループ内取引を財務諸表から取り除く | グループ内部の債権債務、売上仕入、配当、貸付、利息、未実現損益などを消去する |
連結で大切なのは、連結精算表に仕訳を機械的に入れることではありません。
どの取引が外部取引で、どの取引がグループ内取引なのか。どの利益がすでに外部に実現し、どの利益がグループ内部にとどまっているのか。そして、どの持分が親会社の所有者に帰属し、どの持分が非支配持分に帰属するのか。こうした切り分けの精度が、そのまま財務報告の説明可能性を左右します。
連結財務諸表作成の基本手続
IFRS第10号の適用指針は、連結財務諸表の作成手続として、親会社と子会社の同種項目の合算、親会社の子会社に対する投資と子会社資本の相殺、グループ内の資産・負債・資本・収益・費用・キャッシュ・フローの全額消去を定めています。あわせて、棚卸資産や固定資産などに認識されたグループ内取引から生じる損益も全額消去し、これによって生じる一時差異にはIAS第12号を適用します。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
実務では、作成手続を次のように並べて把握しておくと、論点を見失いにくくなります。
| 手続 | 中心論点 |
|---|---|
| 連結範囲の確定 | どの投資先を子会社として連結するか |
| 報告日・会計期間の整合 | 親会社と子会社の決算日・対象期間をどう合わせるか |
| 会計方針の統一 | 同様の取引・事象に同じ会計方針を適用しているか |
| 同種項目の合算 | 資産・負債・資本・収益・費用・キャッシュ・フローを合算する |
| 投資と資本の相殺 | 親会社の子会社投資と子会社資本のうち親会社持分を消去する |
| グループ内取引の消去 | 内部債権債務、売上仕入、配当、貸付、利息、キャッシュ・フローを消去する |
| 未実現損益の消去 | 棚卸資産・固定資産等に含まれる内部利益を消去する |
| 非支配持分の表示 | 親会社に帰属しない子会社持分を資本の中で区分表示する |
| 所有持分変動の処理 | 支配を維持したまま持分比率が変動した場合の資本取引処理を行う |
| 開示への接続 | IFRS第12号にもとづき、子会社・非支配持分・制限等を説明する |
この一連の流れは、会計処理だけの話にとどまりません。グループ決算プロセス、子会社の報告パッケージ、監査証拠、内部統制、開示資料まで、そのまま連動していきます。
連結は「支配を獲得した日」から始まり、「支配を喪失した日」で終わる
連結財務諸表の作成に入る前に、まず連結期間を正しく確定しておく必要があります。
IFRS第10号では、子会社の収益および費用は、企業が子会社に対する支配を獲得した日から支配を喪失した日までの間、連結財務諸表に含めます。取得日後の減価償却費なども、取得日に連結上で認識した資産・負債の金額を基礎として算定します。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
この点は、実務上、企業結合会計と深く結びついています。
子会社を取得した場合、取得日前の損益は原則として連結損益に含めず、取得日以後の損益だけを取り込みます。一方で、取得日に識別した資産・負債の公正価値測定は、その後の連結上の損益認識に影響し続けます。たとえば、取得日に固定資産を公正価値で測定したのであれば、その後の連結上の減価償却費は、子会社個別財務諸表の帳簿価額ではなく、取得日の公正価値を基礎として計算することになります。
そのため、連結処理では次の切り分けが重要になります。
| 論点 | 実務上の確認事項 |
|---|---|
| 支配獲得日 | いつから子会社の損益・キャッシュ・フローを連結するか |
| 取得日公正価値 | 取得日に識別した資産・負債の金額が、その後の償却・減損・税効果に反映されているか |
| 支配喪失日 | いつまで子会社として連結し、いつから持分法・金融商品等へ切り替えるか |
| 期中取得・期中売却 | 月次・日次・実務上の近似計算が、重要性を踏まえて合理的か |
| 子会社の決算修正 | 取得日以後の損益を正しく切り出せる情報があるか |
支配の獲得・喪失の時点は、株式譲渡契約の締結日や取締役会決議日と、いつも一致するとは限りません。クロージング、規制当局の承認、株主間契約の効力発生日、経営権の移転日などを踏まえ、実際に支配が移転した日を見極める必要があります。
報告日をそろえる|決算日差異がある子会社の取扱い
連結財務諸表に用いる親会社と子会社の財務諸表は、原則として同じ報告日で作成されている必要があります。
親会社と子会社の報告期間末日が異なる場合、子会社は連結目的で、親会社と同じ日付の追加的な財務情報を作成します。それが実務上どうしても難しいときには、子会社の直近財務諸表を用い、両日付の間に生じた重要な取引または事象を調整します。ただしこの場合でも、日付の差は3か月を超えてはならず、その差および報告期間の長さは継続して同じでなければなりません。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
これは、「3か月以内ならよい」という意味ではありません。
IFRS第10号の基本的な考え方は、あくまで親会社と子会社の報告日を一致させることにあります。決算日差異が許されるのは、同日現在の追加財務情報を作成することが実務上不可能な場合に限られます。
したがって、決算日の異なる子会社を連結するときには、少なくとも次の事項を整理しておきたいところです。
| 確認事項 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 同日現在の追加財務情報を作成できるか | 子会社の月次決算・ローカル決算体制・監査対応を確認する |
| 直近財務諸表を使う理由 | 実務上不可能と判断する根拠を明確にする |
| 重要な後発取引の有無 | 配当、増減資、借入、M&A、固定資産売却、減損、訴訟、災害等を確認する |
| グループ内取引の期間差 | 親会社側と子会社側で取引認識期間がずれていないか確認する |
| 為替換算 | 在外子会社の場合、どのレートを使うかをIAS第21号と整合させる |
| 開示 | 子会社の財務諸表日が異なる場合、IFRS第12号上の開示が必要か確認する |
IFRS第12号では、連結に用いた子会社の財務諸表の日付または期間が連結財務諸表と異なる場合、その子会社の報告期間末日と、異なる日付または期間を用いる理由の開示が求められます。出典:IFRS Foundation|IFRS 12 Disclosure of Interests in Other Entities
決算日差異は、連結パッケージ上の作業論点であると同時に、開示論点でもあるわけです。
会計方針を統一する|ローカル基準の数字をそのまま合算しない
IFRS連結では、同様の状況における同様の取引および事象について、グループ内で統一した会計方針を適用する必要があります。IFRS第10号は、グループ内の企業が連結財務諸表で採用している会計方針と異なる方針を用いている場合、連結財務諸表の作成時に適切な修正を行うことを求めています。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
この会計方針の統一は、IFRS連結実務のなかでもとりわけ重要です。
海外子会社が現地基準で財務諸表を作成しているとき、日本基準や米国基準で個別財務諸表を作成しているとき、あるいはIFRSを適用していてもグループ会計方針と異なる判断をしているとき。いずれの場合も、連結目的での修正が必要になります。
統一の対象は、単なる表示科目の組替えにとどまりません。たとえば次のような領域は、グループ会計方針との差異が生じやすいところです。
| 領域 | 連結上確認すべき点 |
|---|---|
| 収益認識 | 履行義務、変動対価、本人・代理人、一定期間認識の判断 |
| リース | リース識別、リース期間、割引率、短期・少額リースの取扱い |
| 金融商品 | 分類、測定、ECL、ヘッジ会計、公正価値測定 |
| 固定資産 | 構成部分アプローチ、耐用年数、残存価額、再評価モデル |
| 無形資産 | 研究開発費、ソフトウェア、耐用年数を確定できない資産 |
| 減損 | CGU、のれん配分、使用価値、割引率、戻入れ |
| 税効果 | 一時差異、繰延税金資産の回収可能性、未分配利益 |
| 引当金 | 現在の義務、発生可能性、最善の見積り、割引 |
| 従業員給付 | 確定給付制度、数理計算、OCI処理 |
| 株式報酬 | 持分決済・現金決済分類、付与日公正価値、権利確定条件 |
会計方針の統一が難しいのは、子会社の個別財務諸表を「IFRSに変換」するだけでは足りない点にあります。
IFRSに準拠した処理であっても、グループが選んでいる会計方針、判断の前提、重要性の考え方、見積りの方法と整合していなければ、連結上の修正が必要になることがあります。たとえば、同じIFRS第16号を適用していても、リース期間の判断に用いる経済的インセンティブの評価、延長オプションの取扱い、割引率の設定方針がグループ内でばらついていれば、財務諸表の比較可能性は損なわれてしまいます。
ですから実務では、グループ会計方針マニュアルと連結パッケージを連動させ、子会社から数値を集めるだけでなく、主要な判断・見積り・会計方針差異まで報告させる仕組みが欠かせません。
同種項目の合算と投資・資本の相殺消去
連結手続の最初の技術的な処理は、親会社と子会社の資産、負債、資本、収益、費用、キャッシュ・フローの同種項目を合算することです。
もっとも、合算しただけでは連結財務諸表にはなりません。親会社が子会社株式を保有していれば、親会社の個別財務諸表には「子会社投資」が計上され、子会社の財務諸表には資本金、資本剰余金、利益剰余金などの資本項目が計上されています。連結財務諸表では、親会社が子会社を通じて保有する資産・負債を直接取り込むため、親会社の子会社投資と子会社資本のうち親会社持分は相殺消去します。
この相殺消去も、企業結合会計と密接に関わります。
子会社を取得した場合には、取得日において、移転対価、非支配持分、段階取得であれば従前保有持分の公正価値、識別可能資産・負債の公正価値、のれんまたは割安購入益を整理します。PPAによって識別した無形資産、公正価値修正、繰延税金、偶発負債などは、その後の連結財務諸表に継続的に影響していきます。
したがって、投資・資本の相殺消去では、次の点を確認しておく必要があります。
| 論点 | 実務上の確認事項 |
|---|---|
| 取得日 | 支配獲得日と会計上の取得日が一致しているか |
| 移転対価 | 現金、株式、条件付対価、補償資産等を正しく識別しているか |
| 取得資産・引受負債 | PPAにより公正価値測定すべき項目が漏れていないか |
| のれん | 取得日以後の減損テスト、CGU配分、外貨換算と整合しているか |
| 非支配持分 | 取得日にどの測定方法を採用したか、取得後の帰属計算と整合しているか |
| 取得後剰余金 | 取得日前後の損益を適切に切り分けているか |
ここでの誤りは、単年度の連結仕訳では収まりません。のれん、減価償却費、無形資産償却、減損、税効果、非支配持分、為替換算差額へと、継続的に波及していきます。PPAでは、取得企業が取得対価を、取得した資産・引き受けた負債へ取得日公正価値で配分し、識別可能無形資産なども評価の対象となります。連結開始時点の測定が、その後の連結実務全体の基礎になるのです。
グループ内取引は全額消去する
IFRS第10号では、グループ内の資産・負債・資本・収益・費用・キャッシュ・フローを全額消去します。親会社と子会社を単一の経済的企業体として示すためです。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
消去の対象は、損益項目にとどまりません。財政状態計算書、包括利益計算書、キャッシュ・フロー計算書、持分変動計算書の全体に及びます。
| グループ内取引 | 主な消去対象 |
|---|---|
| 売掛金・買掛金 | 内部債権債務 |
| 貸付金・借入金 | 内部金融資産・金融負債 |
| 受取利息・支払利息 | 内部金融収益・金融費用 |
| 売上・仕入 | 内部売上・内部仕入 |
| 役務提供・管理料 | 内部収益・内部費用 |
| ロイヤルティ | 内部収益・内部費用、税効果、移転価格との関係 |
| 配当 | 親会社側の受取配当、子会社側の利益剰余金処分 |
| 固定資産売買 | 内部売却益、固定資産帳簿価額、減価償却費 |
| 棚卸資産売買 | 内部売上、内部仕入、期末棚卸資産に含まれる未実現利益 |
| グループ内保証 | 金融保証、保証料、注記、リスク開示 |
| グループ内リース | 使用権資産・リース負債、貸手・借手会計、内部損益 |
| グループ内ヘッジ | 連結上のヘッジ指定可否、純投資ヘッジとの切り分け |
| グループ内キャッシュ・フロー | 営業・投資・財務キャッシュ・フローの内部消去 |
内部取引消去の狙いは、グループ内の取引を「なかったこと」にすることではありません。外部の利用者にとって意味のある、グループ外部との取引だけを連結財務諸表に残すことにあります。
この考え方を徹底しないと、売上高、利益率、営業キャッシュ・フロー、資産回転率、負債残高、EBITDA、セグメント情報などが、グループ内部の取引によって歪んでしまいます。
未実現損益の消去|棚卸資産と固定資産で論点が異なる
グループ内取引から生じた利益または損失が、期末時点で棚卸資産や固定資産などの資産に含まれている場合、その損益は連結上まだ実現していません。IFRS第10号は、グループ内取引から生じ、棚卸資産や固定資産などの資産に認識されている利益または損失を、全額消去することを求めています。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
ただし、棚卸資産と固定資産とでは、消去後の実務処理が異なります。
棚卸資産に含まれる未実現利益
グループ内で販売された棚卸資産が、期末時点でまだ外部に販売されていない場合、売手側で認識した内部利益が、買手側の棚卸資産に含まれたままになります。連結上は、グループ外部への販売がまだ行われていないため、その利益は未実現です。
このとき、実務では次の情報が必要になります。
| 必要情報 | 内容 |
|---|---|
| 内部販売額 | グループ会社間で販売された棚卸資産の金額 |
| 内部利益率 | 売手側の粗利率または個別取引ごとの利益額 |
| 期末在庫残高 | 買手側に残っている内部仕入在庫 |
| 外部販売状況 | 期末までに外部販売された部分と残存部分 |
| 税効果 | 未実現利益消去に伴う一時差異 |
| 非支配持分 | 売手または買手に非支配持分がある場合の帰属 |
棚卸資産の未実現利益は、数量情報、単価情報、内部利益率、在庫回転情報がそろっていなければ、正確には算定できません。連結決算の段階で慌てて調整しようとしても、子会社側で内部仕入在庫を識別できなければ、見積りや簡便的な計算に頼らざるを得なくなります。
グループ内の棚卸資産取引が重要である場合には、連結パッケージのなかに、内部仕入在庫を識別する項目をあらかじめ設けておくことが実務上の要になります。
固定資産に含まれる未実現利益
グループ内で固定資産を売却した場合、売手側で売却益が認識され、買手側では取得原価が引き上がることがあります。連結上は、グループ内部で資産を移転したにすぎませんから、内部売却益を消去し、固定資産の帳簿価額を、グループ外部から取得した場合の金額に戻す必要があります。
さらに固定資産の場合は、売却した年度だけでなく、その後の減価償却費にも影響が及びます。
内部売却益によって買手側の帳簿価額が高くなっていると、買手側の個別財務諸表では、その高い帳簿価額をもとに減価償却費が計上されます。連結上は、内部売却益を除いた取得原価をもとにした減価償却費へ修正しなければなりません。固定資産の内部移転では、内部売却益の消去に加えて、その後の減価償却超過額の調整まで必要になる点が肝心です。実務でも、固定資産のグループ内移転にあたっては、売却益を消去したうえで、取得原価と減価償却累計額を連結上で修正するという整理がなされます。
固定資産の内部取引では、次の事項を管理しておく必要があります。
| 必要情報 | 内容 |
|---|---|
| 売手側の帳簿価額 | 内部売却前の取得原価、減価償却累計額、帳簿価額 |
| 内部売却額 | グループ会社間の移転価格 |
| 内部売却益・損 | 連結上消去すべき損益 |
| 買手側の取得原価 | 個別財務諸表上の帳簿価額 |
| 残存耐用年数 | 連結上の減価償却費調整に必要 |
| 減損の兆候 | 内部損失の場合、減損の兆候を示す可能性 |
| 税効果 | 内部利益消去に伴う一時差異 |
| 非支配持分 | 売手または買手にNCIがある場合の帰属 |
とりわけ固定資産の内部移転は、税務上の譲渡損益、移転価格、固定資産台帳、償却費予算、減損テスト、セグメント損益にまで影響します。連結仕訳だけで片づけるのではなく、取引を設計する段階から会計影響を把握しておきたいところです。
グループ内損失は、単純に消去すればよいとは限らない
IFRS第10号は、グループ内取引から生じる利益または損失を全額消去する一方で、グループ内損失については、連結財務諸表で認識すべき減損を示している可能性があるとしています。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
これは、実務で見落とされやすい論点です。
たとえば、グループ内で棚卸資産や固定資産を帳簿価額より低い価格で売却した場合、売手側では損失が認識されます。連結上は内部取引ですから、形式的には内部損失を消去する処理が考えられます。しかし、その内部売却価格が、市場価格や回収可能価額の低下を反映しているのであれば、単なる内部取引の消去ではなく、棚卸資産の評価減や固定資産の減損の検討が必要になることがあります。
つまり、内部損失には二つの性格があり得ます。
| 内部損失の性格 | 連結上の考え方 |
|---|---|
| グループ内価格設定による形式的な損失 | 内部取引として消去する |
| 資産の回収可能性低下を示す損失 | 減損・評価減の認識要否を検討する |
「内部取引だから消す」という処理だけで済ませると、資産の回収可能性に関する重要な兆候を見逃しかねません。とくに、事業再編、在庫処分、海外子会社への資産移転、不採算事業への固定資産移管、撤退予定事業への資産譲渡といった場面では、内部損失が経営上のシグナルを含んでいないかを確かめる必要があります。
内部取引消去に伴う税効果
グループ内取引から生じた未実現損益を連結上で消去すると、会計上の資産・負債の帳簿価額と、税務上の基礎との間に差異が生じることがあります。この場合はIAS第12号にもとづき、一時差異に対する繰延税金を検討します。IFRS第10号も、グループ内取引から生じる利益または損失の消去によって生じる一時差異には、IAS第12号を適用するとしています。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
税効果は、「未実現利益の消去額に税率を掛ける」だけでは足りません。
次の点を確認しておく必要があります。
| 論点 | 実務上の確認事項 |
|---|---|
| 税務上の基礎 | 買手側の税務上の取得価額が内部取引価格で認められているか |
| 税率 | どの企業・どの税管轄の税率を用いるか |
| 回収可能性 | 繰延税金資産を認識できる十分な将来課税所得があるか |
| 外貨建取引 | 税効果と為替換算差額の関係をどう整理するか |
| 内部利益の実現時期 | 外部販売、減価償却、減損、処分による実現時期 |
| 税務調整 | 移転価格税制や各国税制との関係 |
税効果会計は、会計上の資産または負債と、課税所得計算上の資産または負債との相違を調整し、税金費用を合理的に期間配分する手続です。日本基準の文脈でも、会計と税務の目的の違いから資産・負債の額に相違が生じ、将来の税金負担や減額効果を財務諸表に反映するという考え方が整理されています。
IFRS連結では、内部利益の消去と税効果の整合を取ることが、連結損益、繰延税金資産・負債、実効税率差異、注記の説明へと直結します。
非支配持分の表示と損益帰属
子会社に親会社以外の株主が存在する場合、連結財務諸表には非支配持分が表示されます。
IFRS第10号は、非支配持分を、親会社に直接または間接に帰属しない子会社の資本と定義しています。そして親会社は、非支配持分を連結財政状態計算書上、資本の中で、親会社所有者に帰属する資本とは区分して表示します。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
非支配持分で押さえておきたいのは、単に期末純資産のうち少数株主持分相当額を表示するだけではない、という点です。
IFRS第10号では、純損益およびその他の包括利益の各構成要素を、親会社の所有者と非支配持分に帰属させます。その結果、非支配持分が借方残高となる場合であっても、総包括利益を親会社所有者と非支配持分に帰属させます。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
このため、非支配持分の処理では、次のような整理が必要です。
| 項目 | 実務上のポイント |
|---|---|
| 期首非支配持分 | 前期末残高、取得時NCI、持分変動を確認する |
| 当期純損益の帰属 | 子会社損益のうち非支配持分に帰属する部分を計算する |
| OCIの帰属 | 為替換算差額、FVOCI、ヘッジ、退職給付再測定等を帰属させる |
| 配当 | 非支配株主への配当を反映する |
| 所有持分変動 | 支配を維持したまま持分比率が変わった場合の資本取引を反映する |
| 欠損 | 非支配持分がマイナスになる場合も帰属計算を行う |
| 開示 | 重要な非支配持分についてIFRS第12号の開示を検討する |
日本基準の「非支配株主持分」と用語は似ていますが、IFRSでは、資本内での表示、損益・OCIの帰属、所有持分変動の資本取引処理を、IFRS第10号の体系に沿って整理していくことになります。
未実現利益の消去と非支配持分
グループ内取引に未実現利益が含まれ、なおかつ売手または買手が100%子会社ではない場合、非支配持分への帰属をどう扱うかが実務上の論点になります。
たとえば、非支配持分の存在する子会社がグループ内で固定資産を売却し、売却益を認識したとします。連結上は未実現利益を消去しますが、このとき、消去した未実現利益をすべて親会社所有者に帰属させるのか、非支配持分にも比例的に帰属させるのか、という問題が生じます。
IFRS第10号は、グループ内取引から生じる損益の全額消去を求めていますが、非支配持分への未実現利益消去の配分方法については、実務上、会計方針としての判断が求められる場合があります。実務でも、100%子会社ではない売手が固定資産を移転した場合について、未実現利益の消去を非支配持分へ比例配分する会計方針と、配分しない会計方針の双方が検討されます。
この論点では、次の点を確認します。
| 確認事項 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 売手は親会社か子会社か | 未実現利益がどの企業で発生しているか |
| 子会社に非支配持分があるか | 消去損益をNCIに帰属させる可能性があるか |
| 内部利益の発生源 | 売手側の損益に含まれる利益か、買手側の資産に含まれる利益か |
| 連結上の会計方針 | NCIへ比例配分する方針かどうか |
| 継続適用 | 同様の取引に一貫して適用しているか |
| 開示影響 | NCIが重要な場合、IFRS第12号開示と整合しているか |
ここで大切なのは、計算上の便宜だけで判断しないことです。連結財務諸表において、非支配持分が子会社の純資産・損益・OCIにどの程度関与しているかを適切に表示するという観点から、会計方針を整理し、継続して適用していく必要があります。
支配を維持したまま所有持分が変動した場合
連結財務諸表では、親会社が子会社に対する支配を維持したまま、子会社株式を追加取得したり、一部売却したりすることがあります。この場合、取引の相手は非支配株主であり、グループ外部との取引ではあるものの、支配関係そのものは変わりません。
IFRS第10号では、親会社が子会社に対する支配を喪失しない所有持分の変動は、資本取引として会計処理します。すなわち、所有者としての立場での所有者との取引であり、純損益には認識しません。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
また、非支配持分の比率が変化した場合には、支配持分と非支配持分の帳簿価額を、子会社に対する相対的な持分変化を反映するように調整します。調整後の非支配持分の金額と、支払対価または受取対価の公正価値との差額は、資本に直接認識し、親会社所有者に帰属させます。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
この処理は、企業結合会計や損益取引とは性格が異なります。
| 取引 | 支配の有無 | 会計処理の方向性 |
|---|---|---|
| 子会社株式の追加取得 | 支配継続 | 非支配持分との資本取引 |
| 子会社株式の一部売却 | 支配継続 | 非支配持分との資本取引 |
| 子会社株式の売却により支配喪失 | 支配喪失 | 子会社の資産・負債を認識中止し、残存持分を再測定 |
| 段階取得で支配獲得 | 支配獲得 | 企業結合として取得法を適用 |
この区分を誤ると、損益に計上すべきでない差額を損益に計上してしまったり、逆に支配喪失時の再測定損益を認識し損ねたりするおそれがあります。
支配喪失時の処理は、支配継続時の持分変動と切り分ける
支配を維持したままの所有持分変動は資本取引ですが、支配を喪失した場合には、処理が大きく変わります。
IFRS第10号では、親会社が子会社に対する支配を喪失した場合、旧子会社の資産および負債を連結財政状態計算書から認識中止し、残存投資があるときはこれを支配喪失日の公正価値で認識し、支配喪失に関連する利得または損失を認識します。出典:IFRS Foundation|IFRS 10 Consolidated Financial Statements
支配喪失時には、次の処理が必要になります。
| 処理項目 | 内容 |
|---|---|
| 旧子会社の資産・負債の認識中止 | のれんを含む資産・負債を支配喪失日の帳簿価額で除外する |
| 非支配持分の認識中止 | 旧子会社に関するNCI残高を除外する |
| 受取対価の認識 | 売却等により受け取った対価を認識する |
| 残存持分の再測定 | 残存投資を支配喪失日の公正価値で測定する |
| OCIの組替・振替 | 関連するIFRSが要求する基礎に従い、純損益または利益剰余金へ振り替える |
| 損益認識 | 差額を親会社に帰属する利得または損失として認識する |
| 後続分類 | 残存持分を関連会社、共同支配企業、金融資産等として処理する |
支配喪失は、単なる連結範囲の変更ではありません。投資の性質が、子会社に対する支配から、関連会社・共同支配企業・金融資産などへと変わる転換点です。だからこそ、支配喪失日、公正価値、OCI、残存持分、税効果、開示を、一体のものとして整理する必要があります。
在外子会社の連結と為替換算
在外子会社を連結する場合には、IFRS第10号の連結手続に加えて、IAS第21号「外国為替レート変動の影響」にもとづく換算処理が必要になります。
IAS第21号は、外貨建取引および在外営業活動体を財務諸表にどのように含めるか、また財務諸表を表示通貨へどのように換算するかを定めています。出典:IFRS Foundation|IAS 21 The Effects of Changes in Foreign Exchange Rates
在外子会社の連結では、少なくとも次の論点を整理しておく必要があります。
| 論点 | 実務上の確認事項 |
|---|---|
| 機能通貨 | 子会社の主たる経済環境にもとづいて決定されているか |
| 表示通貨への換算 | 資産・負債、損益、資本、OCIを適切に換算しているか |
| 為替換算差額 | OCIに認識し、資本の累計額として管理しているか |
| のれん・公正価値修正 | 在外営業活動体の資産・負債として扱い、機能通貨で表示しているか |
| 処分時の組替 | 在外営業活動体の処分または部分処分時に累計換算差額をどう処理するか |
| 純投資ヘッジ | IFRS第9号・IFRIC第16号との関係を整理しているか |
IAS第21号では、在外営業活動体の取得により生じたのれん、および取得時の公正価値修正は、在外営業活動体の資産・負債として扱われ、その機能通貨で表示され、決算日レートで換算されます。実務上も、在外営業活動体に対する純投資ヘッジや、その純資産に対する為替エクスポージャーは、連結財務諸表レベルで扱う論点として整理しておくことになります。
在外子会社の連結では、連結処理と外貨換算処理を分けて理解しておくことが大切です。
まず、子会社の財務諸表をIFRSおよびグループ会計方針に合わせます。次に、機能通貨から表示通貨へ換算します。そのうえで、内部取引、内部債権債務、未実現損益、非支配持分、OCI、税効果を整理していきます。この順序があいまいになると、為替差額、未実現利益、税効果、NCIの帰属計算が混乱しやすくなります。
キャッシュ・フロー計算書におけるグループ内取引消去
連結財務諸表では、キャッシュ・フロー計算書も単一の経済的企業体として表示します。そのため、グループ内の貸付、返済、配当、利息支払、資産売買代金の支払いなどは、連結キャッシュ・フローから消去します。
キャッシュ・フロー計算書の内部消去で重要なのは、損益計算書や財政状態計算書の消去と整合させることです。
たとえば、グループ内の貸付金と借入金を財政状態計算書で消去しているのに、貸付実行額や返済額が連結キャッシュ・フロー計算書に残っていれば、グループ外部との資金移動を誤って示すことになります。グループ内の配当を受取配当金や支払配当金として残してしまえば、外部株主への配当や外部投資からの回収と混同されかねません。
実務では、次のような内部キャッシュ・フローを識別する必要があります。
| 内部キャッシュ・フロー | 連結上の取扱い |
|---|---|
| グループ内貸付・借入 | 投資・財務キャッシュ・フローから消去 |
| グループ内利息 | 営業・投資・財務区分にかかわらず内部取引として消去 |
| グループ内配当 | 受取配当・支払配当を消去 |
| グループ内固定資産売買 | 投資キャッシュ・フローを消去 |
| グループ内リース支払 | 借手・貸手双方の内部キャッシュ・フローを消去 |
| グループ内ロイヤルティ・管理料 | 営業キャッシュ・フローを消去 |
| グループ内資本取引 | 連結グループ内の資金移動として消去 |
キャッシュ・フローの内部消去は、財政状態計算書や損益計算書に比べると後回しにされやすい領域です。しかし、資金繰り、外部借入、配当余力、資本市場への説明に直結するため、内部資金取引の多いグループでは、とりわけ慎重な管理が求められます。
連結パッケージと内部統制
IFRS連結財務諸表の品質は、最終的な連結仕訳だけで決まるものではありません。子会社から集める情報の粒度、グループ会計方針の徹底、内部取引照合の精度、見積り・判断の報告体制によって、大きく左右されます。
連結パッケージには、少なくとも次の機能が求められます。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| IFRS調整 | ローカル基準からIFRS・グループ会計方針への修正を収集する |
| 勘定科目マッピング | 子会社ローカル科目をグループ勘定科目へ正しく対応させる |
| 内部取引照合 | グループ会社間の債権債務・収益費用・キャッシュ・フローを照合する |
| 未実現利益情報 | 棚卸資産・固定資産に含まれる内部利益を把握する |
| 取得時公正価値情報 | PPA修正、償却、減損、税効果を継続管理する |
| NCI情報 | 非支配持分、配当、OCI、所有持分変動を計算する |
| 外貨換算情報 | 機能通貨、換算レート、為替換算差額を管理する |
| 開示情報 | IFRS第12号、関連当事者、制限、重要な判断等を収集する |
| 承認証跡 | 子会社・親会社・連結担当・監査対応のレビュー証跡を残す |
内部取引の消去でよく問題になるのは、親会社側と子会社側で取引の認識が一致しないことです。原因としては、決算日差異、締日差異、為替レート差、税抜・税込処理の違い、請求書発行時期の違い、収益認識時点の違い、ローカル会計基準の差異、子会社側の勘定科目誤りなどが考えられます。
したがって内部統制の観点からは、差異を調整するだけで終わらせず、差異の原因を分類し、再発防止につなげることが重要になります。会計上の見積りについても、見積額と実績の乖離そのものだけでなく、その乖離が、見積時点で考慮すべき事項の漏れや内部統制上の改善点を示していないかを検討する必要があります。
IFRS第12号の開示へ接続する
連結処理が終わっても、IFRS実務はそこで完結しません。子会社、非支配持分、重要な制限、組成された企業、所有持分の変動、支配喪失については、IFRS第12号にもとづく開示が必要になる場合があります。
IFRS第12号は、他の企業への関与の性質およびリスク、ならびにそれらが財務諸表に及ぼす影響を、財務諸表利用者が評価できるようにすることを目的としています。出典:IFRS Foundation|IFRS 12 Disclosure of Interests in Other Entities
とくに子会社については、財務諸表利用者がグループ構成、非支配持分がグループ活動およびキャッシュ・フローに有する関与、グループ資産へのアクセスや負債決済能力に対する重要な制限、連結された組成された企業に関するリスク、支配を喪失しない所有持分変動、支配喪失の影響を評価できる情報を開示する必要があります。出典:IFRS Foundation|IFRS 12 Disclosure of Interests in Other Entities
開示へ接続すべき代表的な論点は、次のとおりです。
| 開示論点 | 実務上の接続 |
|---|---|
| グループ構成 | 主要子会社、所在地、持分比率、支配関係を整理する |
| 重要な非支配持分 | NCIが重要な子会社について損益・累計NCI・要約財務情報を整理する |
| 決算日差異 | 異なる報告日を用いる理由を説明する |
| 重要な制限 | 配当制限、資金移動制限、規制上の制限、借入契約上の制限を整理する |
| 連結された組成された企業 | 関与の性質、リスク、支援提供の有無を整理する |
| 所有持分変動 | 支配を維持したままの持分変動による資本への影響を整理する |
| 支配喪失 | 子会社除外、残存持分、損益影響、OCIの組替を整理する |
IFRS第12号では、重要な非支配持分を有する子会社ごとに、子会社名、主たる事業所在地、NCIの所有持分割合、議決権割合が異なる場合の議決権割合、NCIに配分された純損益、期末の累計NCI、要約財務情報などの開示が求められます。出典:IFRS Foundation|IFRS 12 Disclosure of Interests in Other Entities
また、企業集団の資産へのアクセスまたは負債の決済能力に重大な制限がある場合には、その内容、非支配持分の防御的権利、制限が適用される資産・負債の帳簿価額などを検討する必要があります。実務上も、企業集団内の資金移動や配当、貸付・前渡金の実行・返済能力に影響する制限、そして非支配持分の防御的権利については、開示の観点から整理しておくことになります。
そのため連結財務諸表の作成実務では、連結仕訳と開示情報を別々に管理するのではなく、同じ論点管理表の上でつないでおくことが望まれます。
監査対応で問われる連結処理の証拠
IFRS連結財務諸表の監査対応では、最終的な連結数値だけでなく、その数値に至る判断と証拠が問われます。
とくに、次の領域は監査上の重要論点になりやすいといえます。
| 領域 | 監査上問われやすい事項 |
|---|---|
| 連結範囲 | 支配判定、支配獲得日・喪失日、投資企業例外 |
| 会計方針統一 | グループ会計方針との差異、IFRS修正の網羅性 |
| 決算日差異 | 追加財務情報の作成可否、重要な後発取引の調整 |
| 内部取引消去 | 債権債務差異、収益費用差異、キャッシュ・フロー差異の原因 |
| 未実現利益 | 計算根拠、内部利益率、在庫残高、固定資産償却調整 |
| 税効果 | 一時差異、税率、回収可能性、実効税率差異 |
| 非支配持分 | 損益・OCIの帰属、マイナスNCI、持分変動 |
| PPA修正 | 取得日公正価値、償却、減損、税効果 |
| 外貨換算 | 機能通貨、換算レート、CTA、処分時組替 |
| 開示 | IFRS第12号、重要な判断、制限、NCI要約財務情報 |
監査対応で問われるのは、「連結仕訳を入れた」という事実ではありません。なぜその連結仕訳が必要で、どの根拠資料にもとづき、どの会計基準の要求事項に対応し、どの開示に反映されているのかを、説明できるかどうかです。
連結処理の証拠としては、次の資料が役立ちます。
| 資料 | 目的 |
|---|---|
| 連結範囲判定メモ | 支配判定、連結開始・終了時点を説明する |
| グループ会計方針マニュアル | 会計方針統一の基準を明確にする |
| 連結パッケージ | 子会社数値、IFRS調整、内部取引、開示情報を収集する |
| 内部取引照合表 | 債権債務・収益費用・CF差異の原因を説明する |
| 未実現利益計算表 | 棚卸資産・固定資産に含まれる内部利益を算定する |
| PPA管理表 | 取得日公正価値修正、償却、税効果、減損を継続管理する |
| NCI計算表 | 純損益・OCI・配当・所有持分変動を整理する |
| 外貨換算表 | 換算レート、CTA、純投資、処分時組替を整理する |
| 開示チェック表 | IFRS第12号等の開示要求と連結処理を接続する |
| 重要論点メモ | 判断、代替案、未解決事項、監査人協議事項を整理する |
連結決算は、会計基準の知識だけで完結する領域ではありません。グループ内の情報収集、子会社管理、内部統制、税務、法務、M&A、財務、開示が交差する場です。だからこそ、論点が重要であるほど、早い段階で事実関係と必要資料を整理しておくことが効いてきます。
連結財務諸表の作成で実務上見落としやすい論点
IFRS第10号の連結手続では、次のような論点が見落とされがちです。
| 見落としやすい論点 | 実務上の注意点 |
|---|---|
| 連結範囲を前期踏襲する | 契約変更、持分変動、支配喪失、組成された企業を毎期確認する |
| 子会社の現地基準数値をそのまま使う | IFRS修正とグループ会計方針への調整が必要 |
| 決算日差異を形式的に処理する | 重要な取引・事象の調整と開示を確認する |
| 内部債権債務だけを消去する | 収益費用、資本、キャッシュ・フロー、未実現損益まで確認する |
| 内部損失を単純消去する | 減損・評価減の兆候を示していないか確認する |
| 固定資産内部売却後の償却調整を忘れる | 売却年度だけでなく残存耐用年数にわたり調整が必要 |
| 税効果を後回しにする | 未実現利益消去に伴う一時差異と回収可能性を確認する |
| NCIを単純な持分比率で計算する | OCI、配当、所有持分変動、潜在的議決権を確認する |
| 在外子会社の換算と連結消去を混同する | 機能通貨、表示通貨、内部取引消去、CTAを順序立てて処理する |
| 開示情報を最後に集める | IFRS第12号の開示情報は連結パッケージ段階で収集する |
連結財務諸表の作成は、作業としては反復的でも、判断としては毎期更新されるものです。前期と同じ連結仕訳を入れるだけでは、当期の取引実態や契約変更、子会社の状況変化を反映しきれないことがあります。
IFRS連結実務で専門家に相談すべき場面
IFRS連結財務諸表の作成には、通常のグループ決算として定型化できる部分もあります。とはいえ、次のような状況では、連結処理、開示、監査対応を早めに整理しておくことをおすすめします。
| 相談を検討すべき状況 | 理由 |
|---|---|
| 新規子会社の取得・売却がある | 支配獲得日・喪失日、PPA、NCI、残存持分の処理が必要 |
| 子会社の決算日が異なる | 追加財務情報、重要な後発取引、IFRS第12号開示が必要 |
| 海外子会社が多い | 会計方針統一、外貨換算、税効果、内部取引照合が複雑になる |
| グループ内取引が多額である | 内部利益、キャッシュ・フロー、税効果、移転価格との整合が必要 |
| 固定資産や棚卸資産の内部売買がある | 未実現損益とその後の償却・外部販売時の戻入管理が必要 |
| 非支配持分が重要である | 損益・OCI帰属、持分変動、IFRS第12号開示が必要 |
| 子会社株式の追加取得・一部売却がある | 支配継続か支配喪失かにより処理が大きく変わる |
| グループ内保証・貸付・資金集中がある | 金融商品、開示、重要な制限、キャッシュ・フローへの影響がある |
| 連結パッケージを見直したい | IFRS調整、内部取引、開示情報の収集設計が必要 |
| 監査人との見解調整が必要 | 判断根拠、証拠、開示への接続を資料化する必要がある |
連結財務諸表は、グループ全体を一つの報告単位として外部に説明するための仕組みです。内部取引の消去や非支配持分の計算は、連結精算表上の技術というより、グループの経済実態を財務諸表にどう反映するかという判断そのものです。
犬飼公認会計士・税理士事務所では、IFRSにもとづく連結財務諸表の作成、グループ内取引の消去、会計方針の統一、非支配持分、在外子会社の連結、M&A後の連結処理、IFRS第12号開示、監査対応資料の整理を支援しています。
連結範囲、グループ内取引、非支配持分、海外子会社、M&A後の連結処理について、社内での判断や監査対応に不安がある場合は、当事務所HPのお問い合わせページよりご相談ください。取引実態、契約条件、既存の連結パッケージ、監査上の論点を踏まえ、説明可能なIFRS連結実務として整理いたします。
振り返り|連結財務諸表の作成とグループ内取引の要点
| 論点 | 重要ポイント |
|---|---|
| 連結財務諸表の目的 | 親会社と子会社を単一の経済的企業体として表示する |
| 連結開始・終了 | 支配を獲得した日から連結し、支配を喪失した日まで連結する |
| 報告日 | 原則として親会社と子会社の報告日を一致させ、差異がある場合は重要な取引を調整する |
| 会計方針統一 | 同様の取引・事象にはグループで統一された会計方針を適用する |
| 投資と資本の相殺 | 親会社の子会社投資と子会社資本の親会社持分を相殺消去する |
| グループ内取引消去 | 内部債権債務、収益費用、資本、キャッシュ・フローを全額消去する |
| 未実現利益 | 棚卸資産・固定資産等に含まれる内部利益は全額消去する |
| 内部損失 | 単純消去ではなく、減損・評価減の兆候を示していないか確認する |
| 税効果 | 内部損益消去により生じる一時差異にはIAS第12号を適用する |
| 非支配持分 | 資本内で親会社所有者持分と区分表示し、純損益・OCIを帰属させる |
| 所有持分変動 | 支配を維持したままの持分変動は資本取引として処理する |
| 支配喪失 | 子会社の資産・負債を認識中止し、残存持分を公正価値で再測定する |
| 在外子会社 | IFRS第10号の連結手続とIAS第21号の外貨換算を整合させる |
| 開示 | IFRS第12号にもとづき、子会社、NCI、制限、所有持分変動等を説明する |
| 監査対応 | 連結仕訳だけでなく、判断根拠、証拠、開示への接続を資料化する |